すてっぷ・じゃんぷ日記

今日の活動

「これ、なんだったっけ?」

 トランプは一番身近なテーブルゲームと言っても過言ではないでしょう。修学旅行にトランプをもっていって、友だちと遊ぶなんてことも、今でもまだ見られる光景かもしれません。

 トランプで友だちと遊ぶなら、最も有名なゲームの一つが「ババ抜き」です。他にも「神経衰弱」や、中学生になれば「大富豪」がよく遊ばれます。すてっぷやじゃんぷでも、友だちに誘われたときに「したことない」とならないよう、狙って遊ぶことで、ルールや勝ち方(負け方)を学ぶこともありますし、子どもから「ババ抜きしたい」と提案されることもあります。基本的にはトランプを混ぜて遊ぶのでランダム性があり、またシンプルなゲームが多いです。

 ただし、シンプルだからこそ実力差が出やすいものもあります。神経衰弱はそういったゲームの一つで、ランダムに伏せられたカードをめくっていくので運要素があるものの、一番大事なのはめくったカードの数字を覚えておく短期記憶の力になります。そしてすてっぷやじゃんぷに来ている子は、その短期記憶の力が弱いことが多いです。そのため、「神経衰弱」と聞くだけで、「絶対しない!」と大きな声で主張する子も少なくありません。

 逆に言えば、そういったゲームをする中で、短期記憶にチャレンジする場面を作ることができるかもしれません。そこで「ナナ」というゲームを紹介することにしました。「ナナ」は簡単に言えば、プレイヤーの手札と場に伏せられているカードで神経衰弱をするというゲームです。ただし手札のカードはどれでも出せるかというと、そこにルールがあり、自分や他のプレイヤーの手札からは一番大きな数字か一番小さな数字を出す(出してもらう)ことしかできないのです。

 先日はじゃんぷの子どもたちが、この「ナナ」にチャレンジしました。みんなで手札を配り、残ったカードをテーブルに伏せます。あとは「神経衰弱」と同じように、順番を回していきます。自分の番が回ってきたRくん。「Sくん、一番低い数字を見せて」とSくんに伝えます。Sくんが1のカードを出すと、「やった!」とRくんは喜び、自分の手札から1のカードを続けて2枚出して、3枚そろった1のカードはRくんのものになりました。最初は運要素で数字を揃えるRくんやSくん。ですが外れたときはその数字を覚えて手札や場に伏せて戻します。「これ、なんだったっけ」や、「Sくんの一番高い数字、なんだったかな」と悩むRくん。手札に同じ数があることを手掛かりに思い出し、「Sくん、一番高い数字を出して」と言って、Rくんは見事その数字を3枚そろえることができました。

 今では休憩時間でも「ナナがしたい」とリクエストする子も少なくありません。「神経衰弱は苦手」という子どもも、「やってみようかな」と参加することが増えています。もちろん中には、「苦手でやってみたけど、やっぱり外してしまうことがくやしい!」と、1回で終わってしまう子もいます。そういったときはあとで職員との1対1の場面を作り、リベンジすることで次につなげようとしています。楽しめる友だちがいるからこそ、集団作りに向けて個別にも丁寧に対応していきます。

「ぼくもやりたい!」

 「1+1は何?」 大学時代に私が数学教育課程の先輩から尋ねられた問いです。子どもならいじらしく「田んぼの田!」と答えるかもしれません。大人なら当たり前に「2」と答えるでしょう。このとき私も「2」と答えました。続けて先輩が問います。「どうして2になるか分かる?」さて、みなさんはどう思われるでしょうか?

 「そう決まってるから?」「そうそう」このときの私の答えを、先輩はよしとしました。つまり2というものは「1+1」、3は「1+1+1」、10進法なら同じように9まで続きます。10からはその規則通りに増えていきますが、1から9に関しては、そう定義されているものなので、そのまま覚えるしかありません。

 小学校1年生のOくんはじゃんぷに通い始めて1ヶ月。工作や公園遊びが大好き。宿題はやらない!と初めは言っていましたが、スケジュールで見通しを持つことで、楽しみにできる事を励みに学習に取り組めるようになってきました。ただ見通しを持てても、算数の宿題を渋ることがたびたびありました。他の職員に聞くと、どうやら数唱が5までも出来ていないのでは、というのです。それで宿題を見てみると、バスに乗り降りする動物たちの絵が描いてあり、その動物たちを数えるというプリントでした。数唱が出来ないのでは、何を書けばいいかさえもわからなかったでしょう。このときは全部したくないと言うOくんと、1問はじゃんぷでやって、残りは家ですると約束し、「まる」で終われるようにしました。同時に1から9まで書いた表を用意して、それを使って1問解き、残りの問題も同じ表を持ち帰ることで、家で取り組んでもらえるようにしました。

 さて、Oくんの算数への支援をどうしようか考えていた矢先のことです。Oくんが公園遊びから帰ってくると、お兄さんたちが遊んでいた「街コロ通」というボードゲームが机の上に置いてありました。「これ、やりたい!」とOくんが先生に伝えます。Oくんには難しいかも…。待てよ、数唱の学習にいいかもしれない、と考え、いっしょに遊ぶことにしました。「街コロ通」はサイコロの目を数えたり、お金を数えたりと、数唱がいろんな場面で出て来ます。最初に1コイン5枚をもらい、値段に注目して買うお店を決めていくOくん。準備ができて早速サイコロを振ると、自分からサイコロの目を数えようとします。数が出てこない時は先生に教えてもらいながら、Oくんもいっしょに数を数えます。もらって貯まったお金が10を超え、12コインのお店を買うときは数えるのをあきらめかけますが、先生が10コインを見せると喜んで1コインを10枚数え両替。両替したお金で12コインを数えて、お店を買うことができました!

 遊びを通じて数を数えることの抵抗感がなくなって来たのか、最近のOくんは、学習の時間でも表を使って算数の宿題をやり切れるようになってきました。学習と同時に遊びや生活のなかでも、数を数えることが意欲的にでき、成功体験ができたことが、学習の場面にも生きてきたのでは、と思います。

「あの隠すやつ、ください」

 小学校で定番の宿題と言えば、漢字ドリル。ドリル内に漢字を書き込むページもありますが、印象に残りやすいのは短文をノートに写すことの方ではないでしょうか。学年が上がるにつれて短文の数が増え、またノートのマス目も小さくなっていきます。そして短文を書き終わると余りのマスに、その短文で新しく習った漢字を書くことまでセットなことが多いです。

 漢字ドリルをノートに写すことが苦手な子のなかには、ノートとドリルとを交互に見るときに、今どこを書いていたのか分からなくなる子がいます。今書いていたところをすぐに忘れてしまったり、見る情報が多くて視点が定まらなかったり、その子によって要因は様々です。

 先日も漢字ドリルに取り組んでいたLくん。ノートからドリルに目線を戻すたび、「えーっと…」と目が泳いでいました。そこでドリルをスタンドで立たせるとともに、今書いている行だけが見えるように、厚紙の真ん中を縦長な四角形で切り抜いたものを、ドリルの上に重ねました。するとMくんはすぐにやりやすさを実感したようで、「ありがとう!」と言ってスムーズに書き進めていきました。

 また向かいに座っていたNさん。「漢字嫌だー」と職員にずっと話しかけ、手が進みません。そこで同じように切り抜いた厚紙をドリルの上に重ね、その行が書けたら次の行に厚紙を移動して書く、と手順を教えました。すると「いやだ」の声は減っていき、3行目からは自分で厚紙を移動させ、静かに書き進めることができました。

 上で紹介した支援は、学習支援の場ではよくある支援の一つだと思います。ただ大事なのは、その道具を使ってよかったと実感すること、さらに言えば、自分から使おうと思い、使ってスムーズにできるかどうかではないでしょうか。実際に次にMくんが漢字ドリルをするとき、職員は声をかけずにいたのですが、Mくんは「あの隠すやつ、ください」と職員に伝えに来ました。そして厚紙を使いながら、漢字をスムーズに書いていきました。中学生のOくんにいたっては、その厚紙を使って漢字ドリルを書き終わった後で、「先生、これ持って帰っていい?」と職員に伝えました。「いいよ」と答えると、喜んで筆箱にしまったOくん。以来、Oくんの筆箱にはその厚紙がずっと入っています

ゲームでも「寄せて」

 すてっぷに来ている子は、社会性やコミュニケーションの課題がある子が少なくありません。距離感が近かったり、自分の物と他人の物の区別がつかなかったり…。トラブルの元をたどれば、その子たちの課題に繋がっていることがほとんどです。そして現代の子どもらしく、トラブルがゲーム(昔で言うテレビゲーム)の中で起こることもあります。

 ゲームにもいろんな種類がありますが、大別すると一人用ゲーム、多人数ゲームに分かれ、多人数の中には集まっている人同士で遊ぶものや、ネット上の顔も知らない人と遊ぶものもあったり、また対戦ゲームや協力ゲームなどもあります。すてっぷでは相互コミュニケーションが取れるゲームとしては、パソコンでのマインクラフトがあります。

 先日、Jくんが困ったような、半分泣いているような顔で職員に相談に来ました。Jくんが言うには「先生、Kくんがマインクラフトに寄せてくれない」。マインクラフトにもいろいろなモードがあるのですが、Kくんや他の友だちが協力してサバイバルをしているところに寄せてくれないと言うのです。そこで職員がKくんに理由を尋ねました。するとKくんはこう答えました。「だってJくん、人のものを取ったり、自分だけクリエイティブモード(好きなものを出し放題、壊し放題できるモードです)に変えるんやもん」

 確かにマインクラフトで友だちといっしょに同じ世界で遊ぶときは、友だちがアイテムを入れた箱から、違う人がそのアイテムを取り出すことができます。またモードを変更し、冒険を楽しむのか、モノづくりを楽しむのかと遊び方を変えることもできます。ですがそれは協力したり、同じ遊び方で楽しもうと決めたりするなど、便利なようで実はコミュニケーション・社会性が求められる場面になります。

 ですが、だからこそコミュニケーション・社会性の課題に挑戦する絶好のチャンス! 職員はKくんが言ったことをJくんに確認します。Jくんも悪気があったのではなく、衝動的にしてしまったこともあったようです。そこで「ホワイトボードに約束を書いたら、約束を守れるかな?」と聞くと、Jくんは「うん」と答えたので、Jくんと一緒にKくんのもとへ。Kくんにも「ホワイトボードを見て約束を守れたら寄ってもいい?」と聞くと、「それならいいよ」と答え、Jくんも参加していっしょにマインクラフトで遊ぶことができました。

 ゲームにより制約はありますが、一緒に遊ぶものだからこそ、コミュニケーション・社会性が求められる場面があります。そういった場面では楽しいゲームをいっしょにしたい!だからがんばりたい…!と思う子が少なくありません。そういった機会は逃さず、課題にチャレンジできるよう、また失敗を繰り返さないよう支援をしていきます。

「じゃあそっちは分配法則ってこと?」

じゃんぷでは、中学生も授業後や部活後にやってきて、学習に取り組んでいます。多くの中学校では、来週から1学期の中間テスト。じゃんぷの中学生たちも、自分に合わせた勉強方法を職員と相談しながら、テスト勉強に取り組んでいます。

 先日、数学ドリルに取り組んでいたIくんが手を止めました。見ると、多項式の因数分解の問題です。職員がその問題をホワイトボードに書いて、解き方を教えます。「そうなんだけど…」と納得のいかない様子で、答えまでは書きましたが、以降の問題は同じように解けません。様子を見ていると、どうやら解き方を全く知らないわけではなさそうです。続きのページにあった、足したら○、かけたら△になる数字は?という問題はすらすら解いていました。ですが、続けてまた因数分解の問題になると、多項式をさらに細かく書こうとして、()すら出てきません。

 そこで職員が大きなホワイトボードに、展開と因数分解について書いていると、同級生の友だちや他の職員も参加して、ミニ講義のような形になりました。友だちが「因数分解は…」と先生と話していると、Iくんも会話に参加。「素因数分解のときは…」と友達に言います。ここで初めて、素因数分解と因数分解で解き方が混ざってしまっているのではと職員が気づきました。そこで「因数分解というのは数×数の形にすること。素因数分解は素数×素数にしているよ」と伝えると、Iくんは少し納得したようで、「じゃあそっち(展開)は分配法則ってこと?」と尋ねます。職員が「そう。分配法則を使って()を外しているよ」と答えると、納得したようでドリルに戻りました。

 じゃんぷに来ている子の中には、授業で聞いたことや昔教えてもらったことが大きく残っていたり、1対1の状況では緊張が増してしまう子もいます。Iくんも初め、職員から因数分解を教えてもらっても、頭に入っていないようでした。ですが友だちや他の職員も入り、みんなで自由に話せる機会が持てたことで、1対1では言えなかったことを言うことができたり、友だちや職員がホワイトボードを見て考えているのと同じように考えて自分の意見を言うことができました。1対1の学習にこだわらずに、同級生を交えて一緒に考える雰囲気を作ることで、自分の考えや思っていることを言いやすいこともあると感じた場面でした。

「サーカスを見に行ったよ」

 すてっぷの小学生グループの外出で、サーカスの観覧に行ってきました! 会場は大阪と少し遠い場所で、電車で片道約1時間。いつもより長い時間ですが、行くメンバーがすてっぷでお出かけを何回も経験してきた子ども達だったので、その時間で計画を立てました。
朝は少し余裕をもって出発。この間、小学生グループはICOCAで電車に乗る練習をしています。券売機でのチャージもスムーズにできるようになってきました。 乗車駅と降車駅、それぞれの時間をスケジュールで確認します。1つ終わったら職員が赤字でチェックし、次の確認。「次に乗る電車のホームはこっちかな」「〇〇行に乗るよ!」と、子ども同士でも会話が飛び交います。


 昼前に無事最寄り駅に到着。やよい軒で昼食を食べてから、徒歩でサーカス会場へ。待ち時間が長いのもサーカスを見るため、仕方ないとばかりに、子ども達はいつも以上に我慢強く待ってから、会場内に入りました。


 会場内に入ると薄暗い中、照明がたかれ、音楽も静かながら響いています。一人の子どもはボソッと「思ってたのと違った」と言いました。職員が声をかけると、その子は「大丈夫」と答えましたが、隣りの子は「音がしんどそう」と答えました。そんなときに役立つのがイヤーマフ! 事前にサーカスに行ったことのある職員に聞き、イヤーマフが必要だろうと準備していました。イヤーマフを付けると、その子も「大丈夫」と答え、いざ開演! 10分ほどの休憩を挟んで、合計2時間。途中「あと何分?」と確認する子に時間の見通しを持たせながらでしたが、全員がしっかりと上演を見終わることが出来ました!


 帰り客の多さや電車の送りで少しバタバタしての帰路にはなりましたが、「サーカス、楽しかった」「何が楽しかった?」「僕は――」とみんなで感想を言い合いながら帰りました。楽しみのために我慢して待ち、2時間ほどの上演を楽しみ、「~だったけど、楽しかった」で無事終われたことに、子ども達の成長を強く感じた職員でした。

「かけっこしよう!」

 少し遅めの桜が咲き誇り、2024年度が始まりました。春休みは「もう6年?」「学校始まってないから、まだ5年やで!」などと子ども同士で盛り上がっていましたが、あっという間に始業式。1日時点で6年生になるみたいだよと大人からわざわざ言わずとも、新たな学校・学年になりました。

 すてっぷの小学生グループも新しい6年生のGくんがリーダーとして引っ張ってくれています。新しいメンバーも増えてきて、集団を盛り上げたり、ケンカを仲裁したりと大忙しです。

 先日もGくんをはじめとした小学生グループ5人で公園へ出かけました。公園に着くと職員はあえて指示を出さず、様子を見守ります。すると自然と全員でかけっこをすることになりました。Gくんがはりきって提案します。「こっちからあっちの橋げたまでかけっこしよう!」Gくんや他の高学年生が「よーい、スタート!」と合図を出し、一斉にかけっこ! 何度も繰り返して遊びました。

 ただ何度か繰り返していく中で、「ビリの人は一番端っこに行って、もう1回!」と、だんだんシステマチックに。すると2回連続でびりになったHくんが少し落ち込んでしまいました。Hくんはこの日のグループの中では一番年下で、すてっぷ歴も一番浅い子です。Gくんが気づくかな、Hくんが自分で言うかな、と少し見守っていた職員ですが、今日は職員から遊びの提案をすることにしました。

 Gくんがもう一度ビリの人から並ぶよう言ったときに、職員が「じゃあ(ビリ側)こっち側の人は少しゴールに近づこう!」とハンデを提案しました。Hくんはハンデを受け入れ、やる気に。「よーい、スタート!」でまたみんなといっしょにかけっこしていきます。最後には子どもリレーVS職員1人で勝負することに! Hくんも含めみんな笑顔でかけっこを終えることが出来ました。

 今回は職員がアイディアを出すことにしました。Gくんが気づくのを待つ、Hくんが言い出すのを待つ、などいろいろな支援が考えられましたが、この日は見本を見せることに。Gくんにはどのように映ったでしょうか。また振り返りの中で、職員の思いや考えを紹介しながら、リーダーとしてのGくん自身の思いや気持ちを育てられるよう支援していきたいと思います。

もう一人の卒業生

 「3人の卒業生」(2024/3/16)

で紹介した卒業生3人に加え、すてっぷではもう一人のお子さんが卒業されました。

 小学校を卒業したEくんは、すてっぷで6年、つまり1年生の始めからずっとすてっぷを利用されました。まだ年長さんの時に見学に来て、見学時間が終わってもまだ遊びたいと泣いてお母さんに訴えていたのが昨日の事のようです。

 でも実際はこの6年でEくんは大きく成長しました。活動に見通しを持つことで、安心して過ごせることが増えました。すてっぷではしばらく最年少で、あこがれのお兄さんお姉さんといっしょに遊びたい、いっしょに過ごしたいとがんばってきて、自然とお兄さんお姉さんのいいところ、すごいところを学んできました。上級生のみんなが卒業し、最高学年になることが不安で泣いていた3月。6年生になった4月には覚悟を決め、リーダーとしてがんばり始めました。先輩に教わったことを思い出して、同じようにやってみるとうまくいった!と自信を積み、様々な形で持ち前のやさしさや思いやりを発揮するようになりました。

 そんなEくんの集大成の活動が、最後の外出計画です。調べるという事、電車など公共交通機関を使う事、集団をリードすることなど、Eくんの力となることを願い、職員が支援して取組んできました。まずは外出とは関係なく(取り組んだみんなは意識していたかもしれませんが)、日本や世界で行ってみたいことをタブレットを使って自分で調べることに取り組みました。Eくんは電車で行ける範囲のLOFTや中華街、飲食店(かに)を挙げ、理由もいっしょに友だちに発表することができました。そして2回目では、実際に行ける場所としてLOFTを調べる事にしました。LOFTの近辺を調べると猫カフェの文字が。実はすてっぷの後輩のFくんが猫好きなことを知っていたEくん。「ここ気になるな。Fくん、猫好きだし喜びそう。河原町はたくさんお店あるからいろいろ見たいなぁ。」と調べを進め、外出計画をまとめました。そしていざ当日、LOFTのある町まで電車を使い、みんなで移動しました。LOFTへの道中も気になったお店をみんなで相談しながら、ディズニーストアなどを巡りました。LOFTでウィンドウショッピングをした後、例の猫カフェへ。Fくんを含めた希望者で入店し、猫と一緒に少しの時間でしたがくつろぎの時間を過ごしました。

 Eくんはこの6年間をどのように振り返るでしょうか。できなかったことの方が先に思いつくでしょうか。でもこの2、3年でその姿はぐっと変わりました。マイナスの事が思いついても、「でも、こういうことができるようになってきたしな」と続けて、自信を積み上げてきたことを自分で思いつけるようになりました。卒業後Eくんは、じゃんぷに通うことになりました。これからも「できた!」をいっぱい積み上げていきましょう!

 卒業、おめでとうございます。

ぼくの「恐竜園」!

 すてっぷやじゃんぷでは、定期的に新しいボードゲームにチャレンジしています。先日遊んだ中で「これ、おもしろい!」となったゲームが「ドラフトザウルス」です。「ドラフトザウルス」はみんなで順番に恐竜を選び、自分の動物園ならぬ「恐竜園」のオリに恐竜を入れていきます。このとき、オリのテーマ(同じ種類を入れる、全部違う種類を入れるなど)に沿って恐竜を入れることができると得点が増えていき、最終的に得点が高い=テーマに沿って恐竜を集められた人が勝利するというゲームです。

 このゲームのおもしろいところは、恐竜を選ぶときに自分の手の中で隠しながら1匹選ぶのですが、選ばなかった残りの恐竜は次の人に回すことです。つまり自分が選ばなかった恐竜を他の人が選ぶかもしれないということも考えられますし、次に自分に回ってくるのがどんな恐竜かわからない中で考えないといけないということです。そのことにいち早く気づいた小学生のDくん。「他の人の恐竜園を見るのがコツやな!」とみんなに伝えました! 気づき自体も素晴らしかったですが、それを友だちや職員に確認しながら共有しようという行動自体も、とても素晴らしい!と目を見張るものでした。

 次々に恐竜を選び、自分の恐竜園に置いてから、選ばなかった恐竜たちを次の人に回していく子どもたち。回ってきた恐竜たちに大喜びしながら、自分の恐竜園をテーマに沿って完成させていきます。他の人の恐竜園を見て「あの人が緑の恐竜集めてるから、緑をそろえるのはあきらめよう」と自分で決めることができた子がいれば、職員と一緒に「あの人が黄色の恐竜を集めてないから、自分に黄色の恐竜が回ってくるかも。それならこっちのオリに入れた方が…」と考える子もいました。1人でのゲームとはまた違い、駒やボードを使うことで友だちや職員と考えや予想を共有しながら、他の人の選択や考えを読もうと頑張る姿が見られました。
 

 また既存のものも含めてボードゲームにチャレンジし、取り組んだゲームの狙いをお伝えしながら、子どもたちのがんばりを紹介したいと思います。

3人の卒業生

 先週の3月8日(金)は支援学校高等部生の卒業式。すてっぷでは3人のお子さんが卒業を迎えました。おめでとうございます!

どの子も5年以上すてっぷに通い、友だちとふれあって笑顔な日も、時間をかけて取り組んできたことが実を結び喜んだ日も、自分の思い通りにならず怒った日も、たくさん経験してきました。

 Aくんは友だちや先生が大好き。一緒に過ごすだけでもうれしい気持ちがあふれ出すかのように、声を出して喜びます。どうやったら気持ちが伝えられるかな。コミュニケーション練習にこつこつ取り組みながら、なるべく友だちといっしょの活動、過ごしの場を共有できるように積み重ねてきました。

 Bくんはすてっぷで過ごせることがなかなか見つけられませんでしたが、塗り絵やペーパークラフトなど一人でできることを少しずつ増やし、編み物はコツコツと取り組んで何mもの生地を作り上げました。またコミュニケーション練習にも日々取り組んだり、がんばり表の目標を先生と相談しながら自分で決めたりして、できることを積み上げてきました。

 Cくんは友だちと関わるのが大好き。関わり方をコントロールできるよう、ずっとがんばってきました。疑問に感じたことを先生に確認しながら、自分なりに友だちや学校、社会についての理解を深め、今では年下の子も慕う優しいお兄さんになりました。また同級生のAくんとは散歩をいっしょに楽しんだり、Bくんとはバスケでお互いに励ましながら目標の得点目指して頑張るなど、お互いのかけはしになりました。

 3人とも、次の進路は決まっています。3月末まですてっぷに通いますが、4月からはお子さんではなく大人として、また会える日を楽しみに、がんばってほしいと思います。さて来週は小学校の卒業式。すてっぷでも一人のお子さんが卒業されます。どんな姿を見せてくれるのでしょうか。楽しみです。

「落ち着く時間だね」

 すてっぷでは、小学校と支援学校の子どもたちがいっしょに放課後を過ごしています。個別対応が必要な時間も子どもによって大小なりとありますが、一方で狙いをもって集団での過ごし、集団での活動に取り組んでいます。
 先日も小学校の子どもと支援学校の子どもの4人グループで近くの公園に行く予定をしていました。一緒に行くメンバーの1人、支援学校のUさんは友だちとのお出かけが大好き。ですが、日によって一緒に行きたい人が変わったり、逆に今日は行きたくないと言う日があるなど、気持ちの調整が課題でした。一緒に行くメンバーを予告したり、日によっては選択できるようにするなど支援していく中で、少しずつ受け入れられることが増えてきたUさんでしたが、この日はひさびさの爆発。別グループの職員と一緒に行きたいとパニック状態になって泣いて暴れてしまいました。
 Uさんが気持ちを落ち着けるようになるまで待っていたのですが、天気が悪くなり雨が降り出してしまいました。職員の判断で公園遊び自体は中止したのですが、このままだとUさんが『泣いて暴れたら、行きたくないという要求が叶った!うれしい!」と誤解してしまうかもしれません。そこで一緒に行く予定だったメンバーといっしょにドライブすることにしました。小学校グループのVくん、Wくん、Xくんに、Uさんが誤解しないようにという理由を説明します。すると3人とも理解を示し、Vくんが「俺も一年生のころ、何度も泣いて暴れまわってた。Uさんも落ち着く時間があったほうがいい。」と答えました。Wくんも「そやな。すぐに帰ったらあれやし少しだけドライブやな。」と続けます。Xくんも「そうやなぁ、Uさん暴れすぎや。Uさん、しっかり落ち着いたほうがいい。」と答え、いっしょに10分ほどドライブしました。
 ドライブから帰ってきてしばらくして、Uさんは徐々に落ち着きを取り戻し、おやつ、休憩に切り替えていつも通りにやさしい言葉で要求を伝えられることができました。小学生グループも帰ってから集団遊びを保障し、いつもの休憩に入っていきました。
 この日はUさんにとっては決して万全とは言えなかったと思いますが、職員の支援で誤学習することなく、徐々にパニックを抑えることができました。そこには理解を示してくれ、いっしょに付き合ってくれた小学校の友だちたちの存在があったからかもしれません。小学校グループの子どもたちも、職員の話を聞いて、友達を理解しようと努め、ひいては自分のことの気づきにもつながっているかもしれません。いっしょに過ごす場だからこそ、学びあえる機会がいくつも生まれているように思います。

「怖くないよ」

 すてっぷでは2月までに、ありがたいことに多くのお子さんが体験に来られました。今年は近隣の児童発達支援事業に通われている方にも来ていただき、グループ体験を学校時間中に行いました。普段過ごしている利用者がおらず、またいっしょに児発に通っている友だちもいる中で、比較的スムーズに体験に参加できたお子さんもいらっしゃったかと思います。
 一方で個別に体験を希望された方は、放課後の利用者が過ごしている時間に体験に来ていただきました。普段の施設内の様子も見ていただけるので、自分がその場で過ごす姿や環境をよりリアルに感じていただけると思います。ただ、自分の知らない子どもや大人が多いという状況は、体験されるお子さんによってはより緊張が増してしまうかもしれません。先日、体験に来ていただいたお子さんも、見てわかるほどに緊張されていました。そんなときに頼りになるのが、いっしょに体験に参加するすてっぷのメンバーたちです。
 この日、いっしょに体験に参加したのは、小学生グループのRくん、Sくん、Tくん。3人とも同じ学年で、すてっぷに来始めて2年ほど。この半年ほどで、それぞれ違う形ながらも、リーダーとして引っ張ったり、役割を果たそうとしたりするなど、上級生としてのがんばりを見せてくれるようになってきました。この日いっしょに取り組んだ遊びは「ワニワニパニック」。普段は職員がワニを出して、子どもがピコピコハンマーで出てきたワニを叩き、叩けた回数を競う遊びです。この日はワニを出す役、タイマーで時間を測る役をメンバーで役割交代することに。さっそくRくんがワニを出す役になり、Tくんがタイマーで測る中、見本を見せるSくんにワニを出します。するとRくんは自分から、ワニを出す時にワニの声を出したり、出す動きに変化をつけたりするなど、遊びをより盛り上げる働きかけをしたのです! 見本が終わり、次は体験の子が叩く番に。ですがやはり、とても緊張しているようです。それを見てRくんはSくんやTくんに「知らないとこに来たら緊張するよな」と共感を求めます。そして体験の子に「怖くないよ」と声をかけました。 それを聞いて体験の子も無事に遊びに加わることができました!
 その後、SくんがTくんに「ワニを早く出していい?」と遊びを盛り上げるなど、最後まで楽しみながらいっしょに遊んだ体験の子とメンバーたち。体験の子は笑顔で帰っていきました。もうすぐ新年度。最高学年のメンバーが卒業し、新1年生を含めた新規利用のメンバーが数名ほど入ってくることになります。この3人は次期高学年のリーダーとして、年下のメンバーたちを引っ張っていってくれることでしょう。メンバーたちが持ち前のリーダー力や優しさを発揮できるよう、普段の支援を積み重ねていきたいと思います。

「自分で注文できたよ」

 すてっぷに通う支援学校の子どもたちは、おやつやおもちゃで遊ぶ時間など、動機付けがしやすい機会でPECS(絵カード交換式コミュニケーション・システム)の練習に取り組んでいます。そして、よりコミュニケーションを取る機会を増やせるよう、それ以外の場面でPECSに取り組むことがあります。その一つが買い物学習です。

 普段から買い物学習に取り組んでいるコンビニやスーパーなどでも、「温めますか?」「おはしをつけますか?」などのコミュニケーションの機会はあります。ただ事前に練習し、また「○○ください」と伝えやすいのはやはり、食べ物を注文するお店です。その中でも多くの子どもが大好きなのがマクドナルドです。

 先日も支援学校のQくんが、トークンを貯めたごほうびに、職員と一緒にマクドナルドに行きました。事前に何を注文するか、メニューで確認していたQくん。ブックから「ソフトツイスト」「ポテト」「メロンソーダ」を文カードに貼り、最後に「ください」を貼って、レジカウンターに置きます。そして一つずつ指差しをして、「ソフトツイスト、ポテト、メロンソーダ、ください」と店員さんに伝えることができました!

 店員さんはQくんの注文したものを確認し、「サイズはどうされますか?」と聞いてきます。このときの対応は子どもによって、また状況によって変わってきます。事前に値段を計算したうえで「ポテトMサイズ」「メロンソーダMサイズ」などのカードを用意した方がいい場合もありますし、職員がメニュー表を見ながらどれにするか子どもに尋ね、子どもが答える場合もあります。後ろに並んでいる人がいるときなど、職員で答えることもやむを得ない場合もあります。

 このときは職員がメニュー表のМサイズを指差し、Qくんが「Мサイズください」と伝えて、無事商品を受け取ることができました。アイスから一つずつ、ゆっくり味わったQくん。次のトークンの目標は買い物学習にしたいそうです。いろんな場面でコミュニケーションができた経験を積み上げていきます。

ホップすてーしょんよりお知らせ(2月からの事業所のご案内)

 平素より格別のご愛顧を賜り厚くお礼申し上げます。特定非営利活動法人ホップすてーしょんは2018年に「育ちの広場 すてっぷ」、2020年に「学びの広場 じゃんぷ」を開業し、保護者様・関係機関のご理解・ご協力の元、利用者様・保護者様への過ごし・支援のサービスを行ってまいりました。

 このたび、鶏冠井町稲葉にあります「学びの広場 じゃんぷ」は、放課後等デイサービス事業のみ(小~中学生)が独立し、上植野町薮ノ下に移転することになりました。また、児童発達支援事業(未就学児)は鶏冠井町稲葉に残り、名前を「あゆみの広場 いっぽ」と改めることとなりました。

 2月からは「あゆみの広場 いっぽ」、「育ちの広場 すてっぷ」、「学びの広場 じゃんぷ」の3事業所でスタートします。今後も職員一同、利用者様・保護者様へのよりよい過ごし・支援に努めてまいります。皆さまの変わらぬご支援・ご協力を賜りますよう、お願い申し上げます。

「そんなこと言わないでよ」

 「ぼく、卒業しようかな」(2023/10/20)で紹介した小学生のIくん。この数か月で目まぐるしい成長を見せてくれています。

 Iくんはすてっぷに来始めて、もうすぐ2年になります。怒りっぽく、人の話を誤解しやすいところもあり、来始めた頃はトラブルがあればその中心にいることがよくありました。自分のしたいこと、したくないことがはっきりしていて、友だちと相談したり譲り合ったりということが難しく、「じゃあ遊ばない!」と友だちから離れることも珍しくありませんでした。

一方で賢いところがあり、大人が以前話したことを覚えていて、「こういうときはこうしたらいいんやんな」と確認しながら、よりよい行動をしようと意識することがありました。そしてこの1年間は特に、年下の小学生メンバーが増え、また支援学校の友だちとの活動も活発になってきました。そんな中でIくんは、持ち前の優しさを年下の子や支援学校の友だちに発揮したのです。

 この時期にはみんなで決めた遊びにほぼ入れるようになってきていたIくん。参加する友だちのことを考えて職員がおにごっこのルールを決めたりする中(もちろんIくんを考慮したこともありました)、次第にIくんは自分から「○○さんはタッチ返しありがいいよね」など、友だちをおもんばかった提案をしてくれるようになりました。また帰宅時の送迎車の中では、誰もが前の席(助手席)に乗りたがります。Iくんも初めは自分が助手席に乗りたい!と口論になることもしばしばありました。ですが今では、「前は○○さんが後ろだったから、今日は○○さんが前ね。僕たちは後ろ!」と自分から提案します。運転する職員がOKを出すと、Iくんは友だちにも提案し、友だちも受け入れられるようになりました!

 衝突しがちだった同級生や年上の友だちにも、最近は優しい言葉を返せることが増えてきたIくん。友だちが違う友だちとの雑談で「死ね」と(もともとよくない言葉ですが)言ったとき、Iくんは自分に対して言ってきたと勘違いしてしまいます。昔なら怒って叫んだIくんですが、今は違います。「そんなこと言わないでよ」と友だちに落ち着いて伝えました。友だちがキャラクターに対して言ったんだよと説明すると、「そうなんだ」と切り替えられたIくん。確かに卒業が近づいているかもしれません。

2024年新年のご挨拶

 新年あけましておめでとうございます。

 昨年は大変お世話になりました。

 新年から衝撃的なニュースが続いています。直接の被害がなくても、ニュースを見てショックを受けるお子さんもおられるかもしれません。ニュースでは決まったフレーズや映像が繰り返し流される場合があります。特性によっては、そういったフレーズや映像が焼き付いてしまい、スリップしてしまうことがあります。もし不安を訴えるお子さんがおられたら、その気持ちを受け止めながら、気分を変えられるもの(好きな遊びやDVDなど)を提案するのも一つの方法かと思います。ご家庭で悩まれることがありましたら、お子さんを知っておられる学校や関係機関にご相談ください。すてっぷやじゃんぷも、お子さんやご家庭と寄り添いながら、よりよい過ごしができるよう努めてまいります。

 本年もよろしくお願いいたします。

 

2023年度年末年始休業のお知らせ

 平素より格別のご愛顧を賜り厚くお礼申し上げます。本年は大変お世話になりました。来年もすてっぷ・じゃんぷ職員一同、利用者・保護者の皆様へのよりよい支援・活動を心がけてまいります。来年も保護者の皆様の変わらぬご理解・ご協力を賜りますよう、お願い申し上げます。

 すてっぷ、じゃんぷともに、2023年12月29日から2024年1月3日まで、年末年始休業となります。すてっぷは4日から通常営業、じゃんぷは4日放デイのみ営業、5日から通常営業となります。

 来年もよろしくお願いします。良い年末をお過ごしください。

「ありがとう!助かったよ」

 チェックリストで忘れ物確認(2023/12/16)で紹介したチェックリストですが、使い慣れていない子へは職員が子どもに提示することでルーチン化を図ってきました。ただ、中には使うことをめんどくさがる子もいます。

 小学生のPくんも、その一人。使い始めたころは、チェックリストに対し「なんでこんなの、しないといけないんだよ」と面倒くさがっていました。もともとPくんは忘れ物をしてしまうことがあり、本人もその意識があってか、連絡帳などすてっぷで必要なものは手提げ袋に入れて持って来ています。忘れ物をしやすいPくんにとっては、チェックリストを使うこと自体を忘れてしまうのかもしれません。

 そこでルーチン化を図りながら、Pくんにチェックリストを使う意味を繰り返し伝えました。またPくんが忘れ物をしてしまった時は、落ち込んだり怒ったりするPくんの気持ちを受け止めながら、「次はこうしよう」とチェックリストを示すなどの支援を行ってきました。

 次第に、忘れ物をしてしまいやすい自分のことを落ち着いて受け入れられるようになっていったPくん。先日は、チェックリストで忘れ物確認もOKと自分でチェックしてから送迎車に乗ったのですが、車中で水筒を忘れてしまったことに気付きました。以前なら怒ったり人のせいにしたりしていたPくんですが、運転者の職員に「僕が(忘れ物確認にチェックしながらも)忘れ物確認で棚を見なかったのが悪かったんだね」と言ったのです! そして別の日も、買い物学習で買ったゼリーが冷蔵庫に入ったままで、職員が「ゼリーは持った?」と聞くと、Pくんは「ありがとう! 僕は忘れやすいから助かったよ」と落ち着いて答えることができました。

 忘れ物をする=失敗経験を増やさないように取り組んでいるチェックリストですが、使う意味が分からない子どもにとっては面倒くさいものです。自分で使えるようになるためには、それを使うことで成功したという経験を積んでいくことが大事ですが、そこには大人の適度な手助けが必要です。適度、というのが難しい所で、職員も模索しながら日々の支援に取り組んでいます。

チェックリストで忘れ物確認

 すてっぷに来ている子どもは、程度や方法によっての違いがありますが、覚えることが苦手な子が少なくありません。仲のいい友だちでも名前を覚えられず、つい「お前」と言ってひんしゅくを買ってしまう子もいれば、伏せられたカードの数を覚えられず、「神経衰弱で遊ぼう」となると「ぜったい嫌だ!」と参加できない子もいます。そして覚えることが苦手な子が特に失敗体験を積んでしまうことが忘れ物です。

 忘れ物をしてしまうのは、上記の覚えられないことが要因の一つですが、それ以外にも(あるいはそれと関連したり、重複したりですが)、他のことに気を取られてしまう、雑音などで気が散ってしまう、書いたり読んだりが苦手でメモの習慣がつかないといったことが挙げられます。いずれにせよ、他人(大人)からの「忘れ物あるよ!」という声掛けが続けば、おのずと忘れ物への恐怖感がつのっていきます。

 それを防ぐ方法の一つは、自分で忘れ物に気づけるようになることです。そのためにすてっぷでは、帰る前にチェックリストを自分で使えるように取り組んでいます。チェックリストには、すてっぷで使う(または置いておく)基本的なものがイラストといっしょに書かれています。また自由欄を作り、その人の(その日の)持ち物に合わせて記入できるようにしました。そしてルーチン化して自分で使えるようにするために、帰る準備ができたら自分が乗る送迎車の職員に、チェックリストを見せるようにしました。

 この1年ほどの取り組みで、多くの子は自分でチェックリストを使い、自分で忘れ物確認ができるようになってきました。買い物学習で買った大好きなゼリーを家で食べたいからと、すてっぷの冷蔵庫に入れたまま忘れて帰ってしまった子も、次の時にはチェックリストに書いてあるゼリーの文字に気づき、帰る前に「ゼリー出してください」と言えるようになりました。

 自立的にできるということが、何よりも自信につながっていきます。そのためには大人からの声掛けだけでなく、「視覚優位」「ルーチン化に強い」といった、その子の強みを生かした支援が役立つのではないでしょうか。「忘れ物をした」という失敗体験からでは次のチャレンジがしにくいからこそ、「忘れ物確認が自分でできた」という成功体験を積んでいってほしいと思います。

「楽しかった」よりも「ドキドキ」

 小学生のOさんはすてっぷに来始めてもうすぐ1年。少しずつですが、友だちと談笑するなど、笑顔を見せることが増えてきました。遊びのこだわりがあり、来た当初はしないことは絶対にしないと固いところもありましたが、最近は苦手な遊びでも参加するようになっています。

 そんなOさんの課題の一つがコミュニケーション表出、つまり自分の思いや気持ちを他人(職員や友だち)に伝えようとすることがまだまだ少ないことです。上記の通り、「しない」ことは伝えられますが、どうしてしないのかという理由や、では代わりに何をするかという代案を、自分から伝えることはまだできません。他にも感想を聞かれても「楽しかった」と答えるのみで、他の感想、特に自分の気持ちを他の言葉で表現することはなかなか見られませんでした。

 そこで活動選択からコミュニケーションの表出に少しずつ取り組み始めました。Oさんは好きな活動は「する」、したくない活動は「しない」と答えるので、好きな活動を保障しながら、「しない」と答えた活動を一部だったりルールを変えたり(おにごっこをふえおににするなど)といった交渉をしました。そして少しずつ見えてきたOさんが「しない」という理由を、職員からOさんに聞いてみて、うなずいたことを言語化して伝えていきました。

 また同時に、感情カードを使って振り返りをすることも始めました。言葉で聞いても「楽しかった」と答えるだけだったOさんですが、感情カードはイラストと文字とを見てマッチングできるので、他の感情も少しずつ分かるようになってきたようです。先日初めて行った公園で友だちといっしょに、遊具やボールでアグレッシブに遊んできたOさん。すてっぷに帰ってきた後、感情カードで振り返りをすると、初めて「楽しかった」ではなく、「ドキドキ」を選びました! そして別の日は、宿題をしているところに「その問題はこう解くんだよ!」としきりに声をかけてきた友だちに、初めて「イヤ」と言うことができたのです。まだまだ「ドキドキ」の理由が言えたり、自分から「イヤ」と伝えたりすることは難しいですが、感情カードを使うことで、少しずつ表出が増えてきたOさん。「伝わってよかった」「伝えてよかった」となることで、より表出を増やしていけるよう、丁寧に支援していきます。