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障害ある子の通学、支援制度を

障害ある子の通学、支援制度を 保護者の付き添い「負担大きい」西宮の当事者団体、市に要望

2021/07/11 【神戸新聞】

障害の有無にかかわらず、同じ学校や教室で学ぶ「インクルーシブ教育」(包容する教育)。その広がりに向けて課題となっているのが、子どもの通学だ。発達障害や肢体不自由など一人での通学が難しい場合、地域の学校では保護者が付き添わなければならない。市民団体「インクルネット西宮」(兵庫県西宮市)はこのほど、当事者らに実施したアンケートの結果を公表。保護者らの声を踏まえ、通学支援制度の創設を市に求めた。(鈴木久仁子)

西宮市の角裕美さんは、人工呼吸器を必要とする小学4年の長男(9)を近くの市立小学校に通わせている。長男は看護師のケアを受けながら、通常学級で、同級生と一緒に授業を受ける。

「息子は学校が大好きで、幼稚園からの“仲間”に囲まれ、表情が豊かになった。一人離れて遠くの支援学校に行くより地域で育てたい」と裕美さんは語る。

一方で登下校は裕美さんが付き添わなければならず、体調を崩すと子どもが元気でも欠席させざるを得ない。また、裕美さんは看護師の資格を持つが、毎日の送迎がある現状では復職もほぼ不可能だ。

特別支援学校に通学する児童生徒は福祉タクシーや送迎バスを利用できるが、地域の学校を選択した場合は利用できない。「大変さは認識しているが、登下校は保護者の責任」と西宮市教育委員会。裕美さんは「一人親や幼いきょうだいを抱える家庭など、さらに負担は大きい」とため息をつく。

「インクルネット西宮」は医療的ケアが必要な子どもが地域の友だちと学べるようにと5年前に発足。現在は教員や保護者ら20人で活動する。

代表の目良知美さんは「親が送迎するのは当たり前と思い込み、これまで声を上げる発想もなかった。でも、どこの学校を選択しても子どもがきちんと学校に通えるためには通学支援は不可欠」と話す。

実態把握のため、同団体は5月にアンケートを実施。地域の学校に通う、市内の障害児の保護者ら109人が回答を寄せた。

結果、86%にあたる94人が子どもの登下校に付き添い、うち半数の47人は学校から付き添うよう求められていた。保護者の体調が悪いときには38人(40%)が学校を休ませ、教育の機会を損なっていることも分かった。

登下校に付き添う94人の回答を見ると、半数以上の53人が就労しておらず、うち39人(74%)は仕事をしたいと考えていた。また24人が、放課後等デイサービスを利用しているが、その理由を61%が「自宅までの送迎機能を利用するため」としていた。

地域の学校に在籍する、支援の必要な児童生徒は年々増加傾向にある。兵庫県の調べによると、2020年度、地域の小中学校・義務教育学校の特別支援学級に通う児童生徒数は8150人。前年度に比べ589人増えた。

今年6月には保育所や学校への看護師配置などを柱とする「医療的ケア児支援法」も成立した。目良さんは「子どもの学びを保障する観点からも、きちんとした制度として導入してほしい」と話している。

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「登下校は保護者の責任」と言うけれど、子どもの移動能力の差は保護者の責任ではありません。障害によって自立通学ができないことは親の責任ではないのですから社会が支援するべきです。西宮市教育委員会は子どもの障害は親の責任だと言っているに等しいと知るべきです。ただ、人工呼吸器使用の子どもの場合は、親が離れれば呼吸器利用は医療行為ですから看護師が管理する必要があるので、ハードルは一つ上がります。しかし、考え方は同じで、子どもが人工呼吸器をつける必要があるのは保護者の責任ではないのですから、社会が支援すべきです。

障害のある子どもの通常学校への通学について、移動支援等福祉制度を使う話は子どもの入学前になるとあちこちで出てきます。福祉の目的を達成するために様々な工夫をして行政施策として実現している自治体は、京都市をはじめいくつかあります。行政施策のない自治体でも既存のサービスを運用して頑張っている自治体もあります。しかし、支給決定をする側の行政担当官が運用は「目的外使用」だから認められないと言い続けている自治体の方がはるかに多いです。登下校の僅かな時間のために、働きたくても働けない保護者は少なくありません。

通学支援のない地域で保護者が就労している場合、放デイなら送迎がついているので下校時は学校に迎えに行き夕方自宅まで送ってくれるという理由で利用する人もいます。保護者が送迎ができないと言う理由で、地域の学童保育所が利用できない障害児も少なくないと思われます。ダイバーシティ社会だのインクルーシブ教育だのお役所の掲げるお題目は立派ですが足元がおぼつきません。子どもは社会で育てるものだと、ヘルパーや移動支援事業の運用をもっと広げて、子どもが子どもらしく生活できるようにしたいものです。

コロナ辞退の米子松蔭“再出場”の可能性

コロナ辞退の米子松蔭「再出場」の可能性  主将の悲痛ツイートに米子市長「各方面に働きかける」

2021年7月19日 【スポーツ報知】

春の鳥取大会を制した米子松蔭が17日に学校関係者の新型コロナ感染で鳥取大会(第1シード)の出場を辞退し、境との初戦が不戦敗となった問題について18日、伊木隆司米子市長(47)がツイッターで「試合が再調整されるよう、各方面に働きかけます」と投稿。一転“再出場”の可能性が浮上した。

発端は、この日の午後1時半頃、ツイッターで主将の西村虎之助中堅手(3年)とみられるアカウントが「部員から陽性者は出ていません。試合もできずに、このまま終わってしまうのは、あまりにも辛いです。何とか出場する道を模索していただけませんか?」(原文ママ)などと訴えかけた。

これに、各界の著名人がツイッターで反応。弁護士の橋下徹氏(52)は「この高校生の声を無視するのか!彼らの後の人生を想像しろ!オリパラを開催した執念をここでも見せろ!」「高野連と政治家たちはアホ、ボケ、カスの極みや!」など“援護射撃”。国際政治学者の三浦瑠麗さん(40)も「あまりに理不尽」など出場を求めるツイート。作家・乙武洋匡氏(45)も自身のツイッターで疑問を投げかけた。

また、不戦敗の再検討を求めるオンライン上の署名活動も実施されている。前代未聞の“敗者復活”はあるのか。

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全国高校野球 鳥取大会 米子松蔭が出場辞退 学校関係者がコロナ感染 /鳥取

2021/7/18【毎日新聞】

第103回全国高校野球選手権鳥取大会に出場していた米子市の米子松蔭高は17日、学校関係者が新型コロナウイルスに感染したため出場を辞退したと発表した。野球部員に濃厚接触者はおらず、同日朝に実施した抗原検査でも全員が陰性だったが、大会の感染防止対策要領と、抗原検査だけでは安全を保てないとする保健所の判断に従った。同校は春季県大会で優勝し、第1シードで大会に臨んでいた。

辞退は17日朝に決まり、長崎成輝校長が記者会見を開いて経緯を説明した。16日深夜に学校関係者の感染が判明し、野球部が大会に出場できないか早朝まで協議したが、感染拡大防止のため辞退を決めたという。野球部員は17日朝、球場へ出発するため学校に集まっており、その場で辞退を伝えられ、泣き崩れたという。

長崎校長は「今、生徒たちが気持ちの整理をすることは不可能で、かなり日にちが必要だと思う。教職員で卒業やその後につながるようサポートしたい」と述べた。同校は22日まで臨時休校し、校舎を消毒する。【野原寛史】

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日本は先進国の中でもトップクラスの感染予防ができているのに、首相も東京都知事も「安心・安全」が第一と陽性者数が欧米に比べればわずかに増えているだけで、オリパラの無観客試合を決めてしまいました。自分に降りかかるリスクを避けているだけにしか見えない今回の措置は、一体誰のための安心安全なのかわかりません。こんなことをすれば、日本中の「責任者」が思考停止に陥るに決まっています。「学校関係者」は生徒でも職員でもなく野球部と関係のない人ならばそれこそ臨時休校ですらやりすぎだと思います。

抗体検査も全員無抗体だったが、保健所から安全は担保できないと言われたから辞退した、だから俺たちには責任がないというふうにしか聞こえません。高野連の「感染防止対策要領」は、昨今の若年者の7割は無症状で症状のある人も鼻かぜ程度と分かったはるか前に作られたものでそもそも実効性がありません。結局、公式には誰も辞めろとは言っていないのに、校長が集団感染とその後のバッシングを恐れ、高野連に「迷惑」をかけないように出場を辞退したとしか見えません。

この規則は、毎日行われているプロ野球やJリーグがチームや球場の「関係者」が感染する度に休場するとを考えれば、どれだけバカげた規則か理解できると思います。例え感染者がでても校長へのバッシング以外の実害はほとんどないのですから、これくらいのリスクは校長先生が背負って欲しいものです。そして感染をゼロに抑えることなど、科学的な見地からすれば妄想に過ぎないことだと、世の責任者と名つく方々は、テレビの無責任な煽り報道に流されずに正しい判断をしてほしいと思います。

 

米子松蔭の夏が復活 主将の叫びが政府も動かした

米子松蔭の夏が復活 主将の叫びが政府も動かした 学校関係者コロナで一度は出場辞退も

2021年7月20日 【スポニチアネックス】

鳥取県高野連は19日、どらドラパーク米子市民球場内で会見を開き、学校関係者1人に新型コロナウイルス感染が判明したため出場を辞退し、17日の境との2回戦が不戦敗となった米子松蔭の“復活”を決めた。21日の午前10時30分から、境と2回戦を戦う。周囲の波紋を呼んだ決定が、わずか2日間で覆された。

悲痛な叫びが世論を動かし、最後は鳥取県高野連までを動かした。一度は鳥取大会への出場を辞退した第1シードの米子松蔭について、急転直下、出場容認を決定。田辺洋範会長は経緯について、難しい判断を迫られたことを明かした。

「本大会でも感染防止に努めて、ルールに基づいて対応してまいりましたが、米子松蔭高校が21日から学校を再開できる、という状況になりました。不戦勝となっておりました境高校にも説明し、ご理解をいただきまして、試合を開催するということになりました」

きっかけはツイッターへの投稿だった。出場辞退を受け、西村虎之助主将が18日「試合もできずに、このまま終わってしまうのは、あまりにも辛いです。何とか出場する道を模索していただけませんか?」と無念の思いをつづった。これに、各界の著名人が続々と反応。橋下徹元大阪府知事や、吉村洋文大阪府知事が対応を痛烈に批判し、大騒動に発展していった。

この日午前には米子松蔭の関係者が同高野連に嘆願書を提出した。午後には西村康稔経済再生担当相までもが「先週末から平井鳥取県知事に試合ができないか対応をお願いしています」と投稿。加藤勝信官房長官はこの日の記者会見で、出場機会を確保するよう県高野連に要請したと明かした。政府までが動き、撤回が避けられない情勢に。田辺会長も「県民、全国からもいろんな多くの声が届いております」と、世論が後押しとなったことを認めた。

大会の感染対策要領は、生徒や教職員に感染者が出た場合はその学校は臨時休校になるため参加できないが、保健所の調査を踏まえて専門家と協議すれば参加できることもあると定めている。野球部内の感染者がいないことを確認するための保健所が、不戦敗となっていた試合前に開いていなかったことも問題を大きくしていた今回の騒動。西村主将もツイッターを更新し「多くの方々の声援を胸に感謝の気持ちを忘れず試合に臨みたいと思います。本当にありがとうございました」とつづった。完全燃焼したいという球児たちの最後の夏にかける熱い思いは、すんでのところで救われた。

《21日に境と2回戦》鳥取県高野連は境との2回戦が21日に設定された理由として、新型コロナによる米子松蔭の臨時休校が20日までで終了することを挙げた。対戦相手である境の了承も得たという。これに伴い、以降の日程は2日ずつ延期。当初26日に予定されていた決勝戦は、28日に開催される。

▼米子松蔭・長崎成輝校長 寛大な措置に感謝している。生徒には全力を出し切ってもらいたい。

【米子松蔭経過】
▽7月16日深夜 学校関係者1人の新型コロナウイルス感染が判明。野球部員、野球部関係者らとの接触はなく、独自の抗原検査で陰性を確認
▽17日 感染者、濃厚接触者なしを証明できず、9時開始の境との2回戦を出場辞退。メンバー表交換が8時10分で、保健所が開くのが8時30分だった
▽18日 西村主将が悲痛な叫びを自身のツイッターに投稿。各界の著名人も続々と反応
▽19日午前 米子松蔭の関係者が大会復帰を求める嘆願書を鳥取県高野連に提出。米子松蔭が21日から学校を再開することも決定
▽19日午後5時 鳥取県高野連が会見

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ほんとうに良かったです。これで、勝っても負けても悔いはないし、正しい世論の力を高校生たちは感じて生涯の糧にしていくはずです。ツイッターがあって良かったです。SNSの普及を煙たがる人も少なくはないですが、これが本来のSNSに求められていた力です。大メディアの支配を受けず、大メディアをも動かす力を持つのがSNSです。この間、組織的にSNSを使い感染恐怖を煽って政局に影響させようと言う動きも看過できませんが、正しく使えば大きな力になります。

SNSは人種・性別・年齢に関係なく発信できます。もちろん有力なフォロワー(インフルエンサー)がその発信をピックアップしてくれなければ、小さなつぶやきのままですが、内容がタイムリーで共感性の高い発信なら、呟きは瞬く間に世界を駆け巡ります。ネット界に課題は多いけど、それでも良い時代になったなぁと昭和生まれは思います。

※ソーシャルグラフ=リアルソーシャルグラフの略 現実世界での人間関係に基づく関係
※バーチャルグラフ=バーチャルソーシャルグラフの略 ネット上で知り合った者同士の仮想的な関係

水泳授業中止でも子供の水難事故防げ 体育館で指導

水泳授業中止でも子供の水難事故防げ 体育館で指導

2021/7/20 【産経新聞】

新型コロナウイルスの感染拡大で、感染リスクの軽減のため、学校の水泳授業を中止する自治体が増えている。一方で、児童生徒が水に触れる機会が減ることで水難事故防止という側面が見過ごされることを懸念する声も。コロナ禍でプールでの指導ができない中で、専門家が工夫を凝らしながら事故を防ぐ取り組みを続けている。

「浮いて待てー」。今月15日、大阪府富田林市の市立喜志(きし)小学校の体育館で、あおむけに横たわる児童に別の児童が大きな声で呼びかけ、浮輪の代わりになる空のペットボトルを放り投げた。

水難救助の専門家らでつくる「水難学会」(新潟県長岡市)による「ういてまて教室」の一場面だ。本来は、溺れた際の対処法をプールで教えるが、同小は昨年に続いて水泳の授業を中止したため、体育館へと場所を移しての実施となった。

教室では、水難学会の斎藤秀俊会長(長岡技術科学大大学院教授)が子供だけで水辺に近づかないよう注意しつつ、もし溺れたときには、力を抜いてあおむけに浮いた姿勢で救助を待つよう指導。「体いっぱいに空気を吸えば浮かぶ。『助けて』と声を上げると息が抜けて沈んでしまう」などと説明した。同小の徳富豊教諭は「学校の近くにも川があるので事故が心配だった。実体験として学ぶいい機会になった」と意義を強調する。

教室は例年、全国で開催されていたが、昨年はコロナ禍でほぼ中止に。今年は同小のように水泳の授業がなくなったことで、体育館で教室を行う学校も増えているという。

水泳の授業について、スポーツ庁と文部科学省は地域の感染状況を踏まえ、対策を講じた上で実施を検討するよう求めている。しかし、十分な対策を取れないことを理由に授業を見合わせた学校は少なくない。

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先日利用者の4年生の子が「俺泳げないねん」と残念そうに言っていました。水泳指導があれば4年生で泳げない子は、ほぼいなくなります。前には進めなくても水に浮くスキルは最低身についています。昨年は子どもへの感染の実態が把握しきれなかったのでプール指導中止は仕方がないにしても、今年は状況が違います。

ほとんどの子どもは無症状、発症しても頭痛と鼻水程度であることが分かっています。しかも、プールサイドは殺菌用の塩素水の飛沫で満たされており、屋外で換気も最高の状態ですから感染可能性はゼロに近いです。更衣の段階で接触感染があると言いますが、それなら体操服に着替える体育の更衣は問題がなく水着更衣に問題があるという事になり筋が通りません。

学校が恐れているのは心無い保護者を含めた大人からの感染したら責任取れのバッシングです。もしも、自校から感染クラスターが出たら水泳を認めた校長以下の教員が叩かれるという恐怖感がプール指導を中止している本音でしょう。それでも子どものためにといくつもの心ある自治体と学校がこの夏からプールを再開をしています。

科学的な根拠もないことで叩かれることを恐れるより、子どもたちの教育を進めたいという、学校の意気込みに頭が下がります。そして、水難事故防止教育は、実際に着衣して靴も履いて水に浮かんだ感覚こそが子どもには重要です。子どもには百の言葉より一つの体験が理解を進めます。浮くトレーニングは年齢が早ければ早いほど定着しやすいです。2年間プール指導がないのは先の子どもの例のように泳げない子どもを固定化してしまう恐れがあります。

熱中症の危険がある時期に、戸外でマスクを外す指示をせず子どもに「選択させた」と言う指導者も、今年も感染「予防」のためプール指導を中止する学校も、他者の目ばかりを気にして、子どもの利益を考えているとは思えないです。しかし、個人の責任にしても同調圧力に弱い人には解決はできません。昨日の高校野球試合復活に動いた萩生田文科相のように、トップが動かない限り決めたことを変えることができないのです。萩生田文科相、プール復活とプールでの水難事故防止授業実現にも一肌脱いでくれませんか。

 

「不登校に悩む子どもらの励みに」

「不登校に悩む子どもらの励みに」・・・自宅で過ごした6年、恩師らと乗り越え大舞台に挑む

2021年7月26日【読売新聞】

不登校を乗り越えたスイマーが、初めての五輪に挑む。28日に競泳男子200メートル背泳ぎの予選に出場する砂間敬太選手(26)(イトマン東進)。自宅で過ごした6年間は水泳と距離を置いた時期もあったが、才能を惜しんだ恩師らの励ましでプールに戻った。「不登校に悩む子どもらの励みに」。目標はメダル獲得だ。(山口佐和子)

なぜ不登校になったのか、自分でもはっきりわからないという。奈良県大和郡山市立小学校4年の時、急に学校に足が向かなくなった。「何かで休んだ後に理由を聞かれたり、久しぶりに登校して注目されたりするのが嫌になった」。中学卒業まで多くを自宅で勉強するなどして過ごした。

好きだったはずの水泳さえ嫌になった。川遊びに夢中になる姿を見たカヌー好きの父親に連れられ、3歳で近くのスイミングスクールに通い始めたのが水泳との出会い。順調に記録を伸ばし、ジュニア選手の中で目立つ存在だったが、不登校になるとともにプールからも足が遠のいた。

「君なら絶対に五輪に行ける」。小学5年の時、コーチから声をかけられてプールに戻った。中学3年時には国体選手に選ばれるほどの活躍ぶりだったが、学校には通えないまま。そんな生活への葛藤から、国体を最後に水泳をやめる決意を固めていた。

翻意したのは、天理高(奈良県天理市)水泳部の山本良介監督(65)の一言があったからだ。国体への出場を終え、帰りの新幹線を待っていると声をかけられた。「君は日本の宝になるような選手なんだ」。水のつかみ方やキックのタイミングに天性の才能を感じていた山本監督からの誘いに心が動き、進学を決めた。

高校では陸上やホッケーなど様々な競技に励む仲間から刺激を受けた。寮生活では支えてくれる仲間ができ、普通に学校に通えるようになった。水泳でもジュニア強化選手に指定され、国際大会に出場。山本監督は「マリモみたいな選手。水につけているだけで大きく成長した」と笑う。

高校3年の時、天理市の依頼で、不登校の子どもを抱える保護者らに体験を話した。その時に口にした目標がある。「五輪でメダルを取り、不登校に悩む子どもらの支えになる」。ひきこもりの少年時代を笑い飛ばす、お笑いコンビ「千原兄弟」の千原ジュニアさんの活躍に励まされた自身の経験が根底にあった。

中央大に進学。5年前のリオデジャネイロ五輪では代表入りが確実視されていたが、代表選考会を兼ねた日本選手権で0・24秒の僅差で出場を逃した。悔しさで2か月ほど泳ぐことができなかったが、この経験をバネに成長を遂げ、今年4月の日本選手権で2位に入り、五輪出場を射止めた。

「決勝に残り、五輪を楽しんできますよ」。7月に奈良県で最終調整した際、山本監督にそう決意を語った。自分の泳ぎを通じ、不登校の子どもらに勇気を与えたいと誓う。

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アスリートの紹介では、人生の転機のきっかけとなる言葉が紹介されます。その多くが、子ども時代に関わった親を含めた大人たちの言葉です。様々な言葉がありますが、共通するのは二つです。君ならできる、好きなことをとことんやればいい、です。

子どもは好きでやっているだけで、自分にどんな力があるのかは気づいていません。それを大人が見出して、できるできると励まし続けます。山本監督は、水につけるだけで育つ「マリモ」に砂間選手を喩えましたが、その水の養分は子どもをその気にさせる大人の言葉です。

スケボーでメダルラッシュを迎えている日本のアスリートはスケボー2世です。スケボーの楽しさを知っている親だからこそ、アメリカで、世界で、とことん楽しんで来いと言えるのでしょう。その機会を得た子どもたちは、トップアスリートの直向きさと底抜けの明るさに直に触れて自分の未来をイメージします。

もちろん、大人から才能があると言われたけれど、日の目を見なかった子どもや、トップアスリートの凄さに圧倒されて挫けてしまう子どものほうがはるかに多いのが現実です。それを才能の差と言う人がいますが、それは結果論だと思います。マリモを大きく育てるには、才能の花を咲かせるには、君はできると信じて励まし続ける養分の量が大事だと思います。

東京五輪、茨城県の小学生らが観戦

東京五輪、茨城県の小学生らが観戦

2021年7月27日 【日本教育新聞】

新型コロナウイルス対策として多くの会場が無観客となった東京オリンピックだが、茨城県では、学校連携プログラムで小学生らが観戦に訪れている。開幕に先立つ7月22日には、鹿嶋市の小学校の児童らが、茨城カシマスタジアム(鹿嶋市)で、男子サッカー予選の試合に見入った。

茨城県では、5日まで男女サッカーの試合が行われる予定。いずれも無観客だが、学校が主体となって児童・生徒が観戦する「学校連携プログラム」は実施可能とした。県内の44市町村のうち、鹿嶋、つくばみらい2市が参加を選択。他に、このプログラムを利用する私立高校がある。

22日にはニュージーランド対韓国戦が午後5時から始まった。その1時間ほど前に、バスで会場そばの駐車場に着くと、ボランティアの案内の下、徒歩でスタジアムに移動。試合開始前には、スクリーンで両国の選手の紹介や、手拍子を使った応援方法の説明などがあった。

試合では選手らが会場の外まで響く声を出しながら勝利を目指した。前半終了後、低学年の児童らが会場を後にした。午後7時には、他の児童がバスへと向かった。7時過ぎに、市立三笠小学校の代表児童が取材に応じた。「みんなで遊べない中、みんなでオリンピックを見られて楽しかった」などと話した。

同小学校では、試合に先立ち、韓国の国旗をあしらったうちわを用意。当日の応援に備えた。

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1964年から57年ぶりの東京五輪です。まさに一生に一度の機会ですが、IOCから招待されていた関東や東北の学校は、感染予防を理由に軒並み辞退していきました。このブログで何度も書いたように、本音は子どもの感染を恐れたからではないと思います。連日繰り返された、「コロナ怖いぞ」のメディアの大合唱の中で、児童の感染例は無症状か鼻水程度の軽症だと分かっていても、プロ野球やサッカーが連日スタジアムで開催されていても、感情的な人達のバッシングが怖くて断らざるを得なかった学校がほとんどでしょう。大勢と違う事を言ったら身の危険を感じるファシズム社会のようです。

結局、東京五輪は、東京都と神奈川、千葉、埼玉の首都圏3県、北海道、福島県の会場は全て無観客となりました。一方で、宮城、静岡両県は収容定員50%以内・1万人を上限として有観客で開催する方針です。茨城と千葉県でも学校連携観戦プログラムのみですが、観客を入れて開催します。宮城県や静岡県、そして子どもたちは招待した茨城と千葉県も知事が良く持ちこたえています。ところが、この中で感染者が最も少ない福島は、知事自らが無観客試合を選択してしまいました。人流という新しい言葉ができましたが、有観客にすることで都会からの人流で福島県の感染が拡大すると言うのです。

科学的な根拠は何もないまま、被災地復興のオリパラを無観客としただけでなく学校観戦もやめたのです。来場するのは地域の子どもたちなのですから茨城千葉のようにしても何の問題もなかったはずです。昨日13年ぶりの金メダルを獲得したソフトボール日本チーム。このオーストラリア戦もメキシコ戦も多くの小中学生が招待されていたはずです。そして今日は野球のドミニカ共和国戦が始まります。この福島での無観客試合でどれほどの予防効果があるのか、茨木千葉と何が違うのか、子どもたちに科学的に説明できる大人はいるのでしょうか。

スマホ利用増 悩む学校…子供視力低下 「1日2時間」制限も

スマホ利用増 悩む学校・・・子供視力低下 「1日2時間」制限も

2021/07/29 【読売新聞】

子供の視力低下が止まらない。新型コロナウイルスによる一斉休校や外出自粛で、スマートフォンなどデジタル端末に触れる時間が長くなったことが一因とみられ、専門家は屋外での活動や端末の利用制限などの必要性を訴えている。


東京都文京区の「こひなた眼科」では昨春の一斉休校後、近視の子供が例年より2割増えたという。藤巻拓郎医師(53)は「自宅でのスマホゲームや動画視聴、オンライン学習などが増えたためでは」とみており、「1日2時間を目安に学校で屋外活動を行うことや、端末の利用時間の制限が必要だ」と指摘する。

総務省によると、スマホでのネット利用率は年々増えており、昨年8月末時点で6~12歳が40・6%、13~19歳は81・4%に上った。

学校現場は、子供のスマホ利用に歯止めをかけようと頭を悩ませる。東京都内のある公立中では、各生徒にスマホなどの利用時間を「1日2時間まで」などと目標を決めさせ、自制を促している。スマホなどを使わない「ノーメディアデー」を設ける学校もある。

一方、コロナ禍で全小中学生への学習用端末の配備が前倒しされた。今年度からは大規模なデジタル教科書の実証事業が行われており、全国の約4割の小中学校(約1万2200校)で利用されている。授業で端末を使う時間が増えると見込まれる中、学校現場からは「授業中、端末の画面に目を近づけて集中している児童が何人もいて驚いた。視力に影響しないか」(東京都内の公立小学校長)など、心配する声も聞かれる。

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「スマホ脳」でのデジタルデバイス叩きもそうですが、何でもスマホや電子媒体が悪いという単純な帰結が多いので気になります。現代社会でデジタルデバイス(ICT機器)抜きに学習や仕事が成り立つのでしょうか?この手の報道は科学的な根拠はなく心配だけを煽ります。予防法も「時間制限」だけに単純化していますが、正しい使い方に触れていないので注意が必要です。眼から近い距離での作業は、紙の本を読むことも、電子デバイスを使って文を読むことも、極端なことを言ってしまえば机に向かって勉強をすることも、基本的には近視が進む原因になります。

スマホが問題視されているのは、長時間手元を見続けているとか、電子書籍のように文字を読むだけじゃなく、ゲームのようにチカチカするものをやっていることが多いからだと思います。デジタルデバイスが眼にとってどう影響があるのかは、デジタルデバイスを使って、「何を」「どうやって」見ているかにもよるので、デジタルデバイス自体が眼に悪い、と結論づけることはできません。

デジタルデバイスで文字を読むことが、紙の本を読むことに比べて、ことさらに眼に悪いということはありません。勉強をがんばることと、近視にならないことはなかなか両立しないことです。必要であれば紙の本であろうと、電子媒体の文字であろうと読むべきだと思います。電子書籍、電子媒体が今後主流になることは間違いないと思いますので、それを「眼に悪そう」という先入観で止めるのではなく、正しく使えばいいと思います。アメリカでは以下のようにしてデジタルデバイスによる近視予防法が提唱されています。

1.適切な距離を保つ
適切な距離とは、60センチくらいです。これは大体大人の腕の長さに保つということです。あまり近すぎたり、遠すぎたりするとピント調節に労力を要し非常に眼が疲れます。
2.グレア(眩しさ)を調節する
モニターが明るすぎたり、暗すぎたりすると眼が疲れます。光の量を調節する事が大切です。
3 .休憩を取る
長時間本を読んだり、モニターを見続けると眼精疲労になります。これ対しては「20-20-20ルール」というものがあり、20分ごとに20フィート(6メートル)先のものを20秒間見るという作業です。遠くのものを見ることによって、眼の緊張が取れます。
4.ドライアイ対策
モニターを見続けると眼が渇き、ドライアイの症状が悪化します。自覚のないドライアイの方も少なくありません。ドライアイ点眼薬をこまめに点し、保湿をしましょう。
5.部屋を明るくする
モニターを見る際に、周囲が暗いと余計に疲れます。周囲の照明を調節することが大切です。

このように5つのポイントを守ることで、モニターによる眼精疲労を防ぎ、延いては眼を守る行動をとることができます。日本近視学会の「親子で学ぶ近視サイト」というHPもあるので正しい知識を持ってICT機器を使うことが大切だと思います。

すべての先進国で男子よりも女子の成績が高い科学的理由

「驚愕の事実」すべての先進国で男子よりも女子の成績が高い科学的理由

7/30(金) 【プレジデントオンライン】

最先端の科学では人間の脳=こころの謎が次々明らかになってきている。著書『スピリチュアルズ「わたし」の謎』(幻冬舎)でその全貌を紹介した作家の橘玲氏は「すべての先進国では男子よりも女子のほうが成績が高い。男女に知能の差はないので、成績の差が生まれるのは『堅実性パーソナリティ』の性差が影響していると考えられる」という──。

※本稿は、橘玲『スピリチュアルズ「わたし」の謎』(幻冬舎)の一部を再編集したものです。

■歴史上の英雄には「多動力」タイプが多い
イギリスの心理学者ダニエル・ネトルは、「今日では障害とされている注意欠陥・多動性障害(ADHD)こそが、かつては強さだったかもしれない」と述べる(※1)。

ADHDと診断される子どもは堅実性スコアがきわめて低く、男の子の発症率は女の子の5倍と明らかに性差がある。

これは、(男の役割とされた)旧石器時代の狩猟で、目の前の刺激に対して素早く反応した方が有利だったことの名残だと考えられている。事実、プロスポーツの世界ではADHDの若者が成功している例がいくつもある。

堅実性が低いと「衝動的」「不真面目」「いい加減」などネガティブなレッテルを貼られるが、つねに不利なわけではなく、異性から「ぶっ飛んでいて魅力的」と思われたり、革命家やアジテーター、あるいは芸術家として成功することもある。

歴史上の英雄には、現代ならADHDと診断されるであろう「多動力」タイプが多い。

このことは、そもそもADHDが「病気」ではないことを示している。それは人類が進化の大半を過ごしてきた(旧石器時代の)環境では、きわめて有利なパーソナリティだった。

それが「発達障害」とされるようになったのは、わたしたちが生きているのが、人類の進化が想定しないほど「とてつもなく安定した社会」だからだ。その結果、本来であれば「正常」なパーソナリティが「不適応」になってしまったのだ。
※1 ネトル『パーソナリティを科学する』白揚社

■「女の方が男より真面目だ」といわれる理由
安定した現代社会では、「いま、ここの自分」より「いつか、あそこでの自分」に配慮できた方が有利なことは間違いない。とはいえ、堅実性スコアが高ければ高いほどいいというわけではない。

精神医学で強迫性パーソナリティ障害(OCPD)と呼ばれる症状は堅実性が極端に高く、全成人のおよそ2%がこの診断基準にあてはまる。

興味深いことに、OCPDと診断されるのは男性が女性の2倍で明らかな性差がある。特定のジャンルの商品を大量に入手し、完全なコレクションをつくることに人生を懸けたりする熱狂的コレクターも男に多い。

堅実性が極端に低いADHDは男が女の5倍で、堅実性が極端に高いOCPDは男が女の2倍ということは、堅実性の分布のばらつきが男の方が大きいことを示している。

その結果、(男が両極にばらついているのだから)堅実性の平均近くでは女の割合が高くなる。これが、「女の方が男より真面目だ」といわれる理由ではないだろうか(図表1)。

■男の子が劣化していく
アメリカにおいては、女子は小学校から大学まで、すべての学年で男子より成績がいい。

13歳と14歳の中学生で作文や読解が熟達レベルに達している男子は4分の1にも満たないが、女子は41%が作文で、34%が読解で達している。

2011年には男子生徒のSAT(大学進学適性試験)の成績は過去40年で最低だった。また、学校が渡す成績表の最低点の70%を男子生徒が占めていた。

これはアメリカだけの現象ではなく、OECD(経済協力開発機構)の調査によると、先進国のすべてで男子は女子より成績が悪く、落第する生徒も多く、卒業試験の合格率も低い。

スウェーデン、イタリア、ニュージーランド、ポーランドといった国々では、PISAテスト(15歳を対象とした国際学習度到達調査)の読解力部門で女子が男子をはるかに上回り、1学年から1学年半も先を行っているという結果が出た。これでは同い年の男女を同じクラスで教えるのは困難だろう。

カナダとオーストラリアでは、すでに大卒者の60%が女性だ。イングランドでは大学の入学申込者は女子4人に対し男子は3人以下、ウェールズとスコットランドでは、女子の申し込みが男子より40%も上回り、恵まれない家庭ではこのギャップがよりいっそう大きくなっている。

■知能が高いほど堅実性は低くなる
日本でも「女の子の方が男の子より優秀」と当たり前のようにいわれるが、男女の知能に(平均としては)差はない(男は論理・数学能力に優れ女は言語的知能が高いとか、知能のばらつきは女より男の方が大きいという研究はある)。

だとすればこれは、堅実性パーソナリティの性差が影響しているのではないだろうか。女の子の堅実性は平均付近に集まるのに対し、男の子は堅実性が高い方にも低い方にもばらついている。

その結果、堅実性が低い男子生徒が学校教育から脱落しはじめていると考えればこうした現象に説明がつく。

現代社会では、「賢くて真面目な子どもは成功する」と信じられている。これは間違いとはいえないが、奇妙なことに、知能と堅実性には(わずかに)ネガティブな関係があるらしい。知能が高いほど堅実性は低くなるというのだ。

これは常識に反するようだが、頭が切れるひとは前もって準備しなくてもうまくやれてしまうため、わざわざ手間暇をかけて訓練を積む必要がないと考えれば理解できるだろう。高すぎる知能は堅実性を引き下げる効果があるのかもしれない。

最後に「勤勉な日本人」と堅実性の関係だが、いまのところ人種別に堅実性スコアを比較した研究はないようだ。だが、ヒト集団で生得的なちがいがないとしても、日本人の堅実性のレベルが高く見える理由はシンプルに説明できる。

外向的なひとは欲望に向かう強力なエンジンをもっており、内向的な性格はエンジンの出力が弱い。これはアクセルを思いきり踏んでもスピードが上がらないのと同じだ。

大馬力のエンジンを制御するには強力なブレーキが必要だが、出力の弱いエンジンなら簡易なブレーキでもなんとかなる。内向的な(エンジンの馬力が小さい)日本人は、平均的なブレーキ(前頭葉の活動)でも堅実性スコアが高くなり、高い神経症傾向の影響もあって、電車の時間を1秒単位で管理するようになるのではないだろうか。

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ADHDは危険を恐れずに獲物を求めて新しい土地を探し続ける石器時代は有能であった人類の名残だと言われます。学習障害の中心的な問題である読み書き障害は、視空間記憶処理の良い人が生き残るのに有利だった狩猟時代の名残だと言います。文字文化を築いた農耕以降の社会は500万年の人類史のわずか数千年で0.2%に満たないのです。現代の発達障害は人類が生き残った証でもあり、進化の途中の姿でもあるわけです。

公立高校受験で問題なった、男女同数にするために男子に下駄をはかせる事はけしからんと言ったけど、サバイバル能力の両端に分布した男子よりも中央部に多く分布する女子の方が高得点を得るのは自明の理なので、男子が学力で負けるのは当たり前となんだか妙に納得してしまいます。しかも、男子のその両極端の分布があったから人類は進化してきたと言われれば、下駄をはかせることぐらいに目くじらをたてるのもいかがなものかと思ってしまうのです。

日本人はサバイバル能力のエンジンが小さいから前頭前野の働きが普通でも調整が効きやすく堅実性スコアが上がるが、一方で神経症的な気質を生むと言う話は、昨今の「コロナゼロ」「ステイホーム」に導こうとする集団神経症的な動きにも妙に一致しているように思います。・・・と書いている筆者などは堅実性スコアの低い、死をも恐れぬ石器時代人間ということになるのでしょうか。

なぜ何もかもうまくいかない? わたしは「境界知能」でした

なぜ何もかもうまくいかない? わたしは「境界知能」でした

2021年7月30日 【NHK】

「勉強も仕事も結婚もすべてうまくいかず、気づいたら20年ひとりぼっちで過ごしていました」及川奈穂さん、57歳。これまでの人生は、苦労の連続でした。

勉強は小学校低学年からついていけず。仕事の覚えが悪く何度も職場から解雇される。人間関係もうまくいかず、結婚生活も長く続かなかった-
なぜ何もかもうまくいかないのか?検査を受けて告げられたのは「境界知能」でした。(大阪拠点放送局 ディレクター 磯貝健人)

「境界知能」とは、知能指数の「境い目」の部分
「境界知能」とは、いったい何なのか。「境界知能」は、知能指数(=IQ)に関係して、専門家の間で用いられている言葉です。「知能指数」で、「平均的」とされる部分と、「障害」とされる部分の「境い目」にあたるところが、「境界知能」と呼ばれています。当事者の及川さんは、「その実態を知って欲しい」と、今回取材に応じてくれました。

すべてがうまくいかなかった人生
及川さんは、群馬県高崎市で1人暮らしをしています。料理や洗濯、掃除などの家事はすべて自分で行っています。私たちの質問にも、ひとつひとつ丁寧に受け答えをしてくれ、何十年も前の出来事を細かく覚えているのが印象的でした。

一見、何の不自由もないように見える日常生活。何もかもうまくいかないとはどういうことなのか。「実は買い物で困ることが多いんです」と及川さん。私たちは、スーパーでの買い物に同行させてもらいました。この日、買いに来たのは乾電池。値段の異なる2種類の乾電池を手に取ると、及川さんはその場でしゃがみ込んでしまいました。2本で329円と4本で398円、どちらが割安か…

外出時には常に持参しているというメモ帳を使って、計算を始めました。
「2本で329円だから、4本だと600円と…」
電池の購入を決めるまでに、約8分かかりました。

及川奈穂さん
「何かを素早くするということが、どうも苦手で…。時間を気にしないでいいなら、出来るんですが…」

障害者のクラスに入るも 通常クラスへ戻され…
及川さんが、周囲との違いに最初に気づいたのは、小学校低学年のころ。算数が苦手で、授業についていくことができなくなりました。そのため、障害のある子どもたちのクラスに入ることになった及川さん。しかし、周りに比べると、学習に支障がないと見なされ、すぐに通常のクラスに戻されました。

及川奈穂さん
「普通にできることもあって、周囲からはやる気がない、怠けていると見られることが多かったんです。私は私なりに一生懸命やっているのに、なんで怒られなきゃいけないのかなとか、悲しくなりました」

パンの名前覚えられず 数字も弱く
当時を思い返しながら語る及川さん。その目には涙が浮かんでいました。不自由さを抱えながらも、通常の教育を受け、高校へと進学。専門学校を卒業した後に社会に出ると、新たな壁が立ちはだかりました。

パン屋で働いていたときのことです。何度教えられても、商品を決められた場所に並べることができません。カタカナの多いパンの名前の覚えられないことが原因でした。数字にも弱く、レジ打ちでのミスも目立ちました。周囲からの冷たい視線に耐えられず、退職を余儀なくされました。

及川奈穂さん
「これ以上、わたしがここにいてはいけない空気を感じとってしまい、自分から申し出て辞めることにしました。職場全体がそういう雰囲気になったことに耐えられませんでした」

検査の結果「知能指数が境界レベル」
その後に就いた仕事も長続きせず、10以上の職を転々とした及川さん。32歳のときに出会った男性と結婚しましたが、ほどなくして離婚。なぜうまくいかないのか-

35歳となった2000年、初めて病院で検査を受けることを決めました。そこで告げられたのは、思いもよらない結果でした。
「IQ73 境界レベル」
知能指数(=IQ)が、平均的ではないが、障害でもない「境界知能」だとわかったのです。

及川奈穂さん
「初めてみたときには、何が何だか意味がわからなかったです。本なんか読んでみると、確かに正常値ではないんだけれども、低いわけじゃないみたいな、そういう分かりにくいところなんです」

「境界知能」だと分かり 腑に落ちた
自分の知能指数が平均を下回っていたことにショックを受けたという及川さん。その一方で、結果がわかったことで“安堵した”ともいいます。

及川奈穂さん
「これまで勉強や仕事がうまくいかないと、『私の努力不足なんじゃないか』と感じていたし、親や周囲からもそう言われてきました。でも、境界知能だとわかり、腑に落ちたというか、サボっていたわけじゃないんだと救われた気がしました」

“生きづらさ” 周囲に気づいてもらえぬまま
「境界知能」とは何なのか、もう少し詳しく見ていきます。知能指数(=IQ)は、一般にIQ85-115が「平均的」とされています。おおむね70以下は、「知的障害」の可能性が考えられる範囲です。(※「知的障害」の基準は、自治体によって異なります)

その境い目にあたるのが、「境界知能」と呼ばれる領域です。その数は、統計学上は人口の約14%、1,700万人に上るとされています。専門家によりますと、この中には、知能指数とは別の指標で発達障害と認められる人もいるということですが、「境界知能」は「平均的とは言えないが、障害とも言えない」とされることが多いといいます。このため、その“生きづらさ”に、周囲に気づいてもらうことができないまま、人生を過ごしてきた人が多くいるとみられるということです。

「境界知能」は社会の認識不足が問題
医師として「境界知能」の人たちを診てきた青山学院大学・古荘純一教授は、「境界知能」は広く社会に認識されていないことが問題だと言います。

青山学院大学・古荘純一教授
「境界知能の人たちは、知能検査の結果だけでは知的障害とも発達障害とも診断されないため、教育や福祉の支援につながりにくいのです。また、自分自身も周囲の人も気づかないことが多々あります。こうした理解のなさが、当事者の人たちを苦しめてきました」

「境界知能」にあたることを初めて知った及川さん。
求職活動中の採用面接で、ある企業の人事担当者から言われたことを、いまも忘れることができません。

及川奈穂さん
「『あなたが障害者だったなら、受け入れられたんだけど、そうじゃないとわかったので、雇用することはちょっと厳しいですね』って言われました」

その企業は、法律に基づいて障害者を雇用していましたが、「境界知能」の及川さんは障害者に該当しないため、雇用できないと言われたのです。

及川奈穂さん
「私は私なりにすごく一生懸命仕事しているのに、障害者じゃないからだめと言われると、何をみて仕事をさせてもらえないのかと思いました。中途半端な人は、会社ではダメなのかと。境界知能の私は、一体何者なんでしょうか」

“負の連鎖”に陥っている可能性も
「境界知能」にあたる人たちが直面している困難に、もっと目を向けるべきだと訴えている専門家もいます。立命館大学の宮口幸治教授は、児童精神科医として、精神科病院や医療少年院で勤務した経験をもとに、そこで出会った境界知能の子どもたちの実態を書籍にまとめました。

2019年に発行されて以来、70万部を売り上げ、「境界知能」に関心が寄せられるきっかけとなりました。宮口さんが懸念しているのは、「境界知能」の人たちの間で、“負の連鎖”に陥っているケースもあるのではないかということです。

宮口さんが着目したのは、法務省が公開している令和元年の新受刑者の能力検査値のデータ。境界知能に該当する人(IQ70-84)は、人口の約14%。対して新受刑者の場合、「IQ70-79」だけで21%以上に上ります。

宮口さんは、次のような“負の連鎖”が起きていないか懸念しています。
『日常生活や勉強、仕事、人間関係などで困難を抱え、生きづらさを感じているにも関わらず、教育や福祉の支援を受けられずに社会的な孤立や経済的な困窮に陥り、罪を犯してしまうケースもあるのではないか。さらにはうつ病になって自殺をしてしまう、そういった悪循環も起きていないか』

立命館大学・宮口幸治教授
「境界知能の人たちの大多数は、社会規範を守って、普通に生活している。ただ、中には“負の連鎖”に陥っている人がいる可能性があり、そこにはしっかりと目を向けなければいけない」こうした“負の連鎖”に陥らないために、何よりも重要なのは、「早期発見・早期支援」だと宮口さんは指摘します。そのためには、「境界知能」や「障害」についての知識や理解が、社会全体に浸透していくことが欠かせないといいます。

早い段階から“トレーニング”で改善を
では「境界知能」の人たちに、早い段階からどんな支援ができるのでしょうか。

宮口さんは、小学校の子どもたち向けのトレーニング法を開発しています。
大阪の和泉市立国府小学校では、宮口さんが開発したトレーニング法を実践しています。

具体的にどのようなものかというと…
例えば、ひらがなや漢字が苦手な子どもが行うのは、「点つなぎ」というトレーニングです。点と点を結んで作られた絵を同じように描き写します。

なぜこうしたトレーニングをするのか?
字の習得が苦手な子ども場合、なぜ苦手なのかを分析すると、目で見たものの形を捉え、書き写す力が弱いからではないかと考えられています。このため、「点つなぎ」のトレーニングを毎日10分程度続けることで、ひらがなや漢字を習得する力を少しでも高めようとしています。

計算が苦手な子どもたちが取り組むのは、星のマークを5つずつ囲んでいくトレーニング。数をまとめながら足していく作業を繰り返すことで、計算するスピードを少しでも速めようとしています。この教室では、子どもの苦手な部分に合わせて、約30種類のトレーニングを行っています。

取り組みをはじめて5年。
この学校では、トレーニングを受けた子どもの約3割が、通常の授業にもついて行けるようになったといいます。宮口さんは、境界知能の人も、学習の土台となる「認知機能」の強化に取り組めば、状況を少しでも改善できると指摘します。

立命館大学・宮口幸治教授
「認知機能とは、見たり、聞いたりした情報を理解し、記憶する力のことです。国語や算数など学習の基盤になるこの力を伸ばすことで、伸びていく可能性があります。少しでも早くトレーニングを受ければ、改善する可能性は高くなります。出来ることが多くなると、自分に自信を持って成長していくことができます。周囲の人が、気づき、理解してあげることが大切だと思います」

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知能検査は、標準的な視覚や聴覚の力(視力や聴力の事ではなく視知覚や音韻意識という力)がある子どもを前提にして作られている検査です。従って知能に遅れがなくてもIQが低く出る子どもがいます。境界知能の子どもの中には、本来の知能は高くても、見え方や聞こえ方、数量感覚の弱さがある子どもが含まれています。これに大人が気付いて低学年のうちに専門的で適切なサポートをすることによって、3割程度の子どもが高学年になって知能検査をすると標準域にまで上がることが知られています。

知的障害(知的発達症)は能力の全般的な遅れを指しますが、軽度知的障害と言われる子どもの中は、部分的な弱さが原因で自信を失い学習性無力感に陥っている学習障害の子どもが含まれていると言われます。学習障害で効果の上がりやすい支援は人によって違いますが、宮口先生のコグトレ(認知機能トレーニング)は、視知覚が弱い人には効果があるトレーニング法なのだと思います。ドリル形式なので専門的な支援力量は必要としないので広がりやすいのだと思います。

ただ、文字を読むデコーディング(復号化)機能や文字を書くエンコーディング(記号化)機能に弱さがある人、発達性読み書き障害(ディスレクシア)のアセスメントや支援については、我が国ではまだまだ広がっていません。これは、我が国の読み書きの殆どが一音一文字という英語圏とは違う分かりやすさ(復号化・記号化の負荷が軽い)を持っているために、年齢の早い段階で発見できなかったことにあります。最近の我が国の調査では、ディスレクシアの比率は他人種と変わらず、軽度まで含めて知的障害のない人の1割程度を占めていることが分かってきました。

我が国の発達障害はADHDとASDという行動の問題は着目されやすいですが、学習障害は勉強の問題と勘違いされ軽視されがちです。学習障害の子どもたちの支援は、多様性社会を進めていくためにも、もっと重視されてもよいと思います。軽度知的障害の中に学習障害を抱えた人たちが多数いて、自尊心を失い就労も続かず負の連鎖・貧困の連鎖を世代間で作っていく話は宮口先生の言われる通りだと思います。及川さんの時代は知的障害を数値だけで厳格に決めていたのだと思いますが、今はIQが少々高くても生活全般に支障をきたしているなら障害を認めるようになっています。また、知的障害で診断が出せない時でも医師が学習障害などの発達障害を診断すれば精神障害手帳が出せるようになっています。

政府が乗り出した「ギフテッド教育」の功罪

政府が乗り出した「ギフテッド教育」の功罪 業界の権威は「方向を間違えると危険」

2021/08/03 【デイリー新潮】

〈「突出した才能の子(ギフテッド)」国が支援へ〉。そんな見出しが躍ったのは7月13日付の朝日新聞。記事によると、突出した才能を持つ“ギフテッド”と呼ばれる子どもは記憶力や言語能力などに優れながら、学校での学習に困難を抱えて不登校になる例もあり、文部科学省が支援を検討するという。

才能あれど学習困難とはこれいかに。文科省いわく、

「今年1月に中央教育審議会から出された答申に『特定分野に特異な才能のある児童生徒に対する指導』への言及があり、これに基づいて有識者会議を設け、7月14日に初会合を行ったばかり。どんな子どもを対象に、どんな支援をするか、すべてこれから検討します」

要は一切白紙だそうだが、念頭には米国の「ギフテッド教育」があると見られる。この分野の米国における権威であるスタンフォード大学・オンラインハイスクールの星友啓校長は、
「ギフテッド教育において特定の分野とは、学校での数学、国語などの課目やスポーツ、芸術などの分野で、上位10%に入る層を適切にサポートすることを目的とするものです。何万人に一人の天才を育てるというものではありません」

確かに、ギフテッドの子どもたちには“頭が良すぎるがゆえに周りから理解されない”などのケースも少なくないそうで、特別なサポートが必要であることもしばしばらしい。だが、星校長は「ここで誤解してはいけません」と注意する。

「ギフテッド教育について取り上げる日本の報道などを見ると、これまでの日本の教育制度の中で十分にサポートを受けられなかった学習・発達障害の子どもたちへの特別支援を単に『ギフテッド』の新しいラベルで呼び変えるニュアンスを感じます。しかし、ギフテッド教育は“支援”だけでなく、子どもの能力を“伸ばす”ことに目を向けたもので、方向を間違えると、ギフテッド教育も特別支援もどちらもサポートできなくなってしまう危険性があると思います」

うちの子は学校になじまないがゲームは上手い、発想力がすごい。これで認めてもらえる!そんなふうに喜ぶ親たちの声も聞かれるが、どこまで理解しているやら。

「週刊新潮」2021年7月29日号 掲載

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ギフテッドについてはこのブログでも毎日新聞の記事を取り上げてコメントしています「ギフテッド」の子、進まぬ理解 高い知能:07/15 )。ギフテッドには2種類あって、他者からも信頼を得る「英才型」の子どもと、「2E型」(twice-exceptional=二重に例外)と言って才能も飛びぬけているが社会的な障害もある凸凹な子どもがいることを前回コメントしました。この2E型の子どもには発達障害について理解をしてないとそもそも支援が始まりません。

先日もブログで、境界知能といわれる人の中に発達障害の方が含まれていると書いたように、ギフテッドではないけれど適切な支援が得られなくて本来の力が出せない能力が凸凹な子どももたくさんいるのです。ギフテッドの中には発達障害の人もいるけれど、ギフテッドではないが支援が受けられないことが原因で通常以下の学力しか発揮できない発達障害の子どもは多いです。

もちろん、才能の高い子どもを早い段階から見出して、公的に支援することは大事なことです。小学校からの飛び級だって認めればいいと思います。ただ、その一方で、本来の力も出し切れずにいる発達障害の子どもへの支援が、週1回の通級で間に合わなければ特別支援学級の在籍でしか対応できていない問題や、発達障害支援を専門としていない教員が支援学級を担当している現実について調査し解決する必要があります。

四十住さくらが「金」・開心那は「銀」

四十住さくらが「金」・開心那は「銀」、岡本碧優4位・・・スケボー女子・パーク

2021/08/04 【読売新聞】

東京五輪の新競技・スケートボードは4日、有明アーバンスポーツパークで女子パーク決勝が行われ、 四十住よそずみ さくら(19)(ベンヌ)が60・09点でこの種目の初代女王に輝いた。夏季五輪で史上最年少の日本代表の12歳・ 開ひらき心那ここな (WHYDAH GROUP)が2位、岡本 碧優みすぐ (15)(MKグループ)が4位。

7月26日にスケートボードの女子ストリートで西矢椛(もみじ)(13)(ムラサキスポーツ)が「金」で日本勢史上最年少のメダルに輝いたが、今月13歳になる開はこれを更新した。開と同じ2008年生まれで、母親が日本人、宮崎県出身のスカイ・ブラウン(13)(英)が3位。

パークはおわんを複数組み合わせたような複雑なコースを舞台にして滑り、技の難易度や速さ、全体の構成、独創性などを競う。スノーボードのハーフパイプのように、傾斜を利用し、空中に飛び出すエア・トリックが見所。

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「12歳の頃は学校帰りに雑草食べてたぞ」・・・躍動する10代選手と比べため息

8/4(水)【読売新聞】

東京五輪は4日、スケートボード女子パークが行われ、10代の日本人選手が3人とも予選を通過し、決勝に進出した。ツイッターでは、華麗な技に驚く声と「それに比べて自分は…」とため息を漏らす投稿が相次いでいる。

この種目には、夏季の日本人選手で史上最年少出場の12歳、開(ひらき)心那(ここな)のほか、15歳の岡本碧優(みすぐ)、19歳の四十住(よそずみ)さくらが出場。開は、競技後のインタビューで、練習で未挑戦の技を予選で成功させたことを明かすなど、強心臓っぷりにも注目が集まっている。

ツイッターでは「おっさん12歳の頃は学校帰りに雑草食べてたぞ」「12歳の時なんてクワガタ捕りと釣りしかしてなかったで。まあ、今も変わらんけど」など、12歳の頃を思い返す投稿があふれている。

予選を2位で通過したのは、英代表のスカイ・ブラウンで、こちらも7月7日に13歳になったばかり。日本人の母とイギリス人の父を持ち、スケートボード中の事故で頭蓋骨骨折の大けがから復活しての五輪出場だ。

今大会から採用されたスケートボードは、7月26日に行われた女子ストリートでも、13歳の西矢椛(もみじ)が日本史上最年少の金メダルを獲得し、16歳の中山楓奈(ふうな)も銅メダル。銀メダルのライッサ・レアウ(ブラジル)も13歳と、10代選手が表彰台を独占。SNSでは「表彰台に上がった3人の年齢の合計(42歳)と俺の年齢が大して変わらないという事に気付き戦慄(せんりつ)を覚えた」「13歳が金メダルか。それに比べて俺は何してるんだよ」と、若い選手と自身を対比して嘆く声が渦巻いた。

新種目に限らず、体操男子では19歳の橋本大輝が個人で金2つ、団体で銀の、計3つのメダルを獲得。同じく体操で団体銀メダル、個人総合で5位に入賞した北園丈琉(たける)選手は18歳。競泳男子200メートルバタフライで銀メダルを獲得した本多灯(ともる)選手は19歳で、陸上3000メートル障害で日本人初の7位入賞となった三浦龍司選手も同じく19歳と、今大会では若い世代の活躍が目立っている。スケートボードでさらに10代のメダリストが増えるか注目だ。

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10代の選手がゴールドラッシュを起こしています。昭和のおじさんがアソビと蔑んだスケボですが、その凄さ今回余すところなく見せてもらい、おじさんは正直ノックダウンです。スノーボードはボードとシューズがくっ付いているから跳べるのはわかるけど、ボードと靴がくっ付いてないスケボはなんで自在に空中が跳べるのと驚いています。身体とボードの動きを完全に同期させるなんてそれだけでビックリマークの連続です。

しかも、女子がコンクリート上で跳び回っているのです。メイクを失敗したら大けがするようなトリックを次々に跳んでメイクしていきます。子どもだからできるというけど、誰でも落ちたことはあるはずだからその恐怖感を乗り越える必要があります。それは、子どもだろうが大人だろうが同じです。喝さいを浴びているメイクは何度も何度も練習して恐怖感を乗り越えてきた賜物です。みんなおめでとう!

発達障害児らの裸動画撮影、暴行の放課後デイ職員に懲役3年判決

発達障害児らの裸動画撮影、暴行の放課後デイ職員に懲役3年判決

2021/8/5 【神戸新聞NEXT】

兵庫県尼崎市内の放課後等デイサービス施設に通う発達障害児らを裸にして動画を撮影したり、暴行を加えたりする行為を、元職員の男(28)=兵庫県宝塚市=が繰り返していた。子どもを虐待から守るはずの職員が、なぜ道を踏み外したのか。神戸地裁尼崎支部であった公判で、動機と経緯が語られた。

7月5日、男は強制わいせつや児童買春・ポルノ禁止法違反、暴行などの罪に問われて判決公判に立ち、裁判官に懲役3年の実刑判決を言い渡された。

「警察の方から確認のために写真を見せられた時、涙があふれ出た」
公判で被害児童の親が代理人を通じ、事件を知った時の衝撃を伝えた。愛する息子が下着を脱がされ、おもちゃのように扱われている様子が映っていた。

「その日の送迎でも、被告と普通に会話していたことが、信じられない」
男は社会福祉士の資格を持ち、施設ではセンター長という責任ある立場で保護者からの信頼も厚かった。

判決によると昨年3~8月、施設の同僚と共謀するなどし、利用者の男児4人にわいせつ行為や暴行を繰り返してきた。検察によると、2019年12月ごろ、男は裸の男児の下半身をスマートフォンで撮影し、共謀した同僚と笑い合うと行為はエスカレートしていった。

20年4月には、当時9歳の男児の下着を脱がせた後、右足をつかんで無理やり開脚させ、動画を撮影した。当時11歳の別の児童には、三角座りをした背後から同僚が膝を持って抱え上げ、尻を突き上げるようにした上で、男がズボンや下着をまくり上げていた。頭部を平手でたたいたり、足で踏みつけたりもした。

動画には小さい体で必死に抵抗し、嫌がる表情が映っていたという。男は逮捕後、「泣いて嫌がる反応を見て欲求が満たされた」「動画を撮る方が反応がよかった」などと話した。

児童たちは精神的に追い込まれても、助けを求められなかった。1人は髪の毛をむしり始め、別の児童は自宅で無心に児童虐待の動画を検索するようになった。「SOS」を出し続けていたのだ。発覚経緯の詳細は明らかにされなかったが、通学する小学校が異変に気付いた。

法廷で歩きづらそうに証言台に向かう男はつえを握っていた。拘留のストレスで適応障害になり、手足がしびれるようになったという。

「自分がなぜこんなに重い罪を受けないといけないのかと思っていた」と当初は反省の色もなかったが、保釈後にニュースで大きく取り上げられる自分の名前を見て、事件の重大さに気付いたという。

男は被告人質問で、妻から1冊の本を受け取ったことを打ち明けた。

タイトルは「おかあさん、お空のセカイのはなしをしてあげる」。一人の少女が母親に、胎児の時の記憶を話すというエッセー漫画だ。なんで私は生まれたんだろう-。子どもの目線から、生まれてきた奇跡と喜びが描かれている。

妻からの「罪の大きさに気付いてほしい」というメッセージに、男はうつむきながら「自分たちに子どもができて、もし同じことをされたら絶対に許せないと思った」と漏らした。

裁判官は判決の最後に付け加えた。「(誰しも)子どもの行動を見て笑うことはある。しかし、あなたの行為は子ども本人、彼ら自身を笑っている。これは絶対に許されない」

なぜ男は児童たちを「人」として見ることができなかったのか。公判が終わり、足を引きずりながら法廷の奥へと消えていった。

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施設や学校での児童虐待の報道を扱うのは気分が悪いものですが、この事件はどこでも起こりうると考えています。物言えない弱者である児童や障害者、老人、病人を相手にした卑劣な犯罪ですが、当事者は露にも犯罪とは考えていないから、次から次に起こっているのです。記事のように保護者からの信頼があったからと言って虐待のリスクが低いとも言えません。

虐待は世代を超えて連鎖すると言います。専門家は、家庭で虐待を経験していることが当事者の虐待行為の「引き金」になっていると分析しています。子ども時代に親の力で支配され続けて、自分を大切にする気持ちが育たなかったことが、虐待行為につながっているというのです。「自分を大切にできなければ他者も大切にできないわけで、そこに暴力の連鎖の問題とか、思春期以降は性の問題と出てきて、力で支配する、あるいは力で支配された者が力で支配する、そういう循環が起こりうるのだろうと思います」と話しています。

誰もが100%親の愛情を受けてきたかどうかの保障がないのは仕方がないことです。それは、その人が成人したあと子どもに対してどういう感覚を持つかと言う結果論だからです。しかし、虐待の様々な事実と先に述べたような心理的なメカニズムを知ることによって、自分にもリスクがあると知ることが予防法になるはずです。

このような虐待の当事者を生んでしまうのは、周囲の大人、「行動しない傍観者」の問題だと考えます。虐待など自分は加担しないと思っていても、暴言や暴力の前に竦んでしまい告発が遅れてしまうのは、それを見ている職員もその虐待に傍観者として加わるリスクがあったと考えるべきです。

子どもに関わる人誰もが良い人であってほしいという願いは大事にされるべきですが、現実には何の保証もありません。傷ついた子どもの心は、簡単には癒すことはできません。自分の職場で虐待や傍観をどう防ぐのかは、記事ような虐待の事実を直視し、自分にも同僚にもそのリスクがないかどうか常に問い続ける具体的な取組が求められます。

「パラリンピックは学校観戦を」選手団長らが千葉県に要望

「パラリンピックは学校観戦を」選手団長らが千葉県に要望

08月05日 【NHK】

東京パラリンピック日本選手団の代表らが5日、競技会場のある千葉県の熊谷知事のもとを訪れ、学校連携観戦チケットによる子どもたちの観戦を実現させるよう要望しました。

東京パラリンピック日本選手団の河合純一団長とJPC=日本パラリンピック委員会の鳥原光憲会長は5日、千葉県の熊谷知事のもとを訪れました。

東京パラリンピックで千葉市の幕張メッセでは4つの競技が行われることになっていますが、河合団長らは無観客での開催となった場合も学校連携観戦チケットによる子どもたちの観戦を実現させるよう求める要望書を熊谷知事に手渡しました。

河合団長が「限界に挑戦するパラアスリートの活躍を見ることで子どもたちに気づきを与えたい」と述べたのに対し、熊谷知事は「コロナの収束が見通せない状況が続くが、当事者の声として要望を重く受け止めて今後の大会組織委員会との協議にあたっていきたい」と応じました。

会談の終了後、河合団長は記者団に対し、「コロナが厳しい状況で安全・安心は確保されなくてはならないが、パラアスリートの姿を子どもたちがライブで見ることが、彼らの未来に貢献できるということを訴えていきたい」と話しました。

河合団長らは今後、東京都など競技会場があるほかの自治体や大会組織委員会にも同様に要望を伝えるということです。

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パラ選手団は,沈着冷静な熊谷知事だからこそ目を付けたのでしょう。2019年9月千葉県を襲った台風15号で千葉県内のライフラインがズタズタになったときも,市長でありながら県知事よりも素早く首長間で連絡を取り復旧に尽力したことが思い出されます。それでも,物資が不足して市民生活は自粛を余儀なくされます。そんな時に,みんなが我慢しているのに支援学校の子どもが水遊びをして不謹慎だと市役所に苦情が入ったのです。熊谷市長はそんな自粛は求めていないし,しなくていいとSNSで一蹴した経過があります(自粛はご遠慮下さい: 2019/09/17) 。

今の状況とよく似ています。大変だ大変だと大騒ぎをして,被害を受けていない関係のない人まで騒ぎに巻き込んでいく風潮を打破するのは東京都でもなく政府要人でもなく,熊谷知事だと白羽の矢を立てたのだと思います。現に千葉県は無観客試合と決めた後でも,感染予防をしながらサッカーなどを子どもたちに観戦させています。以前,人口比で東京の5%しか陽性者のいない陽性率順位45位の岩手県が,子どもにソフトボール女子の観戦もさせなかったことについて非難しましたが,千葉県の陽性者は東京の50%,陽性率全国4位にもかかわらず,知事はぶれずに観戦させています。

今回も,ロックダウンしか方法がないと嘆く専門家ばかりをテレビに登場させ,軽症者を自宅で待機させるとは何事かと怒る人は映すが,政府予算のコロナ医療支援の1.5兆円を厚労省が使わずに余らせているサボりの事実は報じない偏向報道を,きちんと見抜いている首長がどれだけいるのか疑問です。政府には難癖をつけながら,これから始まる甲子園での夏の高校野球大会やプロ野球を感染予防のために中止しろと言うメディアは聞いたことがありません。スポンサーには頭が上がらないとは言え,あまりにもの二枚舌に辟易します。そんな中で,パラ観戦を熊谷知事はどう考えていくか見守りたいと思います。

パラリンピックで子どもの観戦検討 学校連携プログラムで政府ら

パラリンピックで子どもの観戦検討 学校連携プログラムで政府ら

2021年8月7日 【東京新聞】

24日開幕の東京パラリンピックを巡り、一般観客を入れない場合でも、自治体や学校単位でチケットを購入してもらう「学校連携観戦プログラム」で子どもたちの観戦機会を確保する案が関係機関で検討されていることが6日、分かった。複数の関係者が明らかにした。会場がある自治体の児童や生徒に限れば「直行直帰」で、新型コロナウイルス感染拡大防止との両立を図ることができるとの見方が出ている。

組織委によると、パラの会場は東京都のほか、埼玉、千葉、静岡各県にあり、実施には組織委や自治体間の調整が必要になる。

政府筋は6日、会場での観戦は子どもたちにとって貴重な経験になるとして、パラの学校連携観戦を検討したい意向を示した。組織委関係者も、入場を子どもたちに限り、往復の交通手段などを工夫すれば、会場での観戦は可能との見方を示している。

パラの観客対応は8日の五輪閉幕後、政府、東京都、組織委、国際パラリンピック委員会(IPC)などの代表による5者協議で判断される見通し。

東京パラリンピック日本代表選手団の河合純一団長は5日、千葉県庁で熊谷俊人知事と面会し、学校連携観戦による観戦機会確保を求めた。(共同)

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菅首相 東京五輪「感染拡大につながっていない」 パラリンピック観客は「5者協議で判断」

2021年8月6日 【東京新聞】

菅義偉首相は6日、広島市内で記者会見し、東京五輪開催が新型コロナウイルス感染者の急増に関係しているという見方について「これまでのところ、五輪が感染拡大につながっているという考え方はしていない」と重ねて否定した。水際対策や選手・関係者らの行動管理を徹底していることを理由に挙げ、「東京都の繁華街の人流は五輪開幕前と比べて増えていない」とも指摘した。

一部の専門家などが主張する緊急事態宣言の全国拡大に関しては「地方の事情を判断する必要がある。独自の感染対策もある」と、慎重な姿勢を示した。

24日開幕のパラリンピックを有観客で開くかどうかは、五輪閉幕後に国際パラリンピック委員会(IPC)などと行う5者協議で決めると説明。31日まで東京都などに緊急事態宣言が発令されていることを踏まえ、「宣言下でのスポーツイベントの一般ルールや、今後の感染状況が判断材料になる」と述べるにとどめた。(井上峻輔)

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それなら,なんで五輪前に言わないのか,熊谷知事が学校連携観戦を決断した後でも,いくらでも子どもの観戦計画はできたはずです。「柳の下の二匹目のドジョウを狙う」諺にもあるように,主体性のない模倣はすぐにぶれそうな気もしますが,方向性は間違っていないと思います。そもそも「無観客試合」は人流が感染を広げるというエビデンスのない感情論の高まりに押されて決まったようなものです。本気で言っているなら,毎日に何百万人も通勤に使う山手線や甲子園の高校野球やプロ野球観戦こそ止めなければなりません。

無観客試合にしても,盛り場を閉じても陽性者数の増加は止まりませんでした。若者に陽性者が多いのは老齢者がワクチンを打ち終えた証です。重症者ベッド数が足りないと何度も報道されますが,重症者のベッド数を増やしていないことは報道されません。この原因は1.4兆円ものコロナ医療予備費に手を付けなかった役人と医師会のサボタージュです。子どもの重症化例は例外1例を除いて全て無症状か鼻水程度の軽症です。何より世界の陽性者数より二桁少ない我が国の現状を見れば,子どもの観戦を止める理由が見つかりません。

東京2020+1:ホンジュラスがんばれ! 児童らゴール裏で観戦 鹿嶋 /茨城 | 毎日新聞

夏の甲子園大会、2年ぶり開幕

夏の甲子園大会、2年ぶり開幕 決勝は26日予定

2021年8月10日【朝日新聞】

第103回全国高校野球選手権大会は10日、兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で開会式があり、17日間の熱戦が始まる。昨夏は新型コロナウイルスの影響で中止となったため、開催は2年ぶり。参加3603チームの頂点をかけて49代表が戦う。

開会式は感染拡大防止のため一部を簡素化、グラウンドを1周する入場行進はとりやめた。選手らはマスクを着用、隣のチームと約1・5メートルの間隔をとって外野に整列した。冒頭、俳優・歌手の山崎育三郎さん(35)が大会歌「栄冠は君に輝く」を独唱した。

市立西宮高の女子生徒が代表校のプラカードを掲げて先導し、選手らは北から南の順に1校ずつ本塁方向へ行進した。吹奏楽、合唱の人数は従来の半数以下とした。

選手宣誓は、36年ぶり2回目出場の小松大谷(石川)の木下仁緒(にお)主将(3年)が務めた。「2年ぶりの夏の甲子園。人々に夢を追いかけることの素晴らしさを思い出してもらうために、気力・体力を尽くしたプレーで、この夢の甲子園で高校球児の真(まこと)の姿を見せることを誓います」と力強く宣誓した。

開会式後の第1試合は、4年ぶり18回目出場の日大山形(山形)と、中止となった昨夏を挟んで2大会連続15回目出場の米子東(鳥取)の顔合わせ。始球式は、関西医科大医学部1年の吉田裕翔さん(19)と大阪大医学部1年の嘉村太志さん(19)が行う。ともに兵庫・甲陽学院高の野球部出身。昨夏の中止により、甲子園への夢がなくなった全ての球児の代表として、また、医療従事者への感謝とエールを込めて選ばれた。

今大会から休養日が1日増え、3日となる。台風9号接近の影響で9日の開会式と3試合が順延されたため、日程は1日ずつ延び、決勝は26日の予定。

入場は各代表校の生徒や保護者ら学校関係者に限られ、吹奏楽部は各校50人を上限にアルプス席に入場できる。一般客向けのチケット販売は行わない。

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【甲子園】山崎育三郎が開会式冒頭で「栄冠は君に輝く」独唱 美声響かせる

2021年8月10日【日刊スポーツ】

<全国高校野球選手権:開会式>◇10日

俳優で歌手の山崎育三郎(35)が甲子園に美声を響かせた。

開会式冒頭、二塁ベースと中堅の間に立ち、大会歌「栄冠は君に輝く」を1番から3番まで独唱した。伸びやかな歌声に、出場する選手やコロナ禍で闘う全ての人たちへのエールを込めた。歌い終わると、場内から拍手が起きた。

山崎は昨年放送されたNHKドラマ「エール」でも同歌を熱唱した。「エール」の主人公は、同歌を作曲した古関裕而氏がモデル。山崎は、主人公の小学校時代の同級生で歌手となる役で出演した。終戦後は堕落した生活を送っていたが、「栄冠は君に輝く」を歌うことで、歌手として再生するエピソードが描かれた。

山崎は「昨年朝ドラ『エール』で、『栄冠は君に輝く』を歌われた伊藤久男さんをモデルとした役を演じ、今年、甲子園で歌う機会を頂けたご縁に震えるほど感動しています。選手の皆さんには、昨年コロナの影響で大会が中止になり、出場出来なかった先輩方の思いも胸に、全力で楽しんでプレーして欲しいです」とコメントしていた。

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開催できてほんとうによかったです。観客は各代表校の生徒や保護者ら学校関係者に限られ、吹奏楽部は各校50人とは言え、選手にとってみれば仲間の応援こそ自分を奮い立たせる大事なパワーです。そもそも、昨年8月の1日の陽性者数は1300人程度で今の1割でした。それでも中止判断したのは地方予選から大会までの計画が困難であったことや第2波が必ず来るという予防対策からでした。そして秋が過ぎ冬が来て予想通り第2波はやってきましたが、夏の甲子園の中止の効果については検証もされませんでした。甲子園大会中止は感染予防のためのスケープゴートになった感もあり、今年の開催は昨年の轍を踏まないように決断されたとも言えます。

今年度になり、今年こそは各校は県大会で熱戦を繰り広げました。そんな中で起こったのが、「コロナ辞退の米子松蔭」事件(コロナ辞退の米子松蔭「再出場」の可能性: 07/19)でした。主将西村君のツイートで全国の有名人や文科大臣までを動かして、再試合を実現しましたが、松陰の校長が一言、「誰も陽性者はいないから出場する。責任は私がとる」と宣言すれば、こんな大事にはならなかったとも考えられます。トップが叩かれるのを恐れて断念した事件とも言えます。結局、再試合を認めてくれた境高校は破りましたが、準々決勝の八頭高校とは壮絶な打撃戦の末、九回、八頭打線につかまり3点を失い逆転され、米子松蔭野球部の夏は終わりました。

出場辞退からの一連の出来事について、西村君は「多くの方々のおかげで試合ができた。対戦してくれた境にも感謝の思いしかなく、負けてしまって申し訳なさでいっぱい」と振り返っています。高校生がこんなことで申し訳ないと思わなければならない理不尽、優柔不断な風見鶏の大人のおかげで子どもが翻弄されただけの話で、彼らに申し訳ないと言わないといけないのは大人です。ここに、今回の様々なコロナ騒動の本質があるように思います。トップが逃げる事ばかり考えていて確かな決断ができなくては、下々は右往左往するばかりです。「大人の事情」の世相を、「栄冠は君に輝く」の歌詞で洗い流したいと思います。

「栄冠は君に輝く」

雲は湧き 光あふれて
天高く 純白の球 今日ぞ飛ぶ
若人よ いざ
まなじりは 歓呼に答え
いさぎよし 微笑む希望
ああ 栄冠は 君に輝く

風を打ち 大地を蹴りて
悔ゆるなき 白熱の力ぞ技ぞ
若人よ いざ
一球に 一打に賭けて
青春の 讃歌を綴れ
ああ 栄冠は 君に輝く

空を切る 球の命に
通うもの 美しく匂える健康
若人よ いざ
緑濃き 棕櫚(しゅろ)の葉かざす
感激を 目蓋に描け
ああ 栄冠は 君に輝く

「昆虫採集」「絵日記」「自由研究」は“昭和”で終わり?! 

「昆虫採集」「絵日記」「自由研究」は「昭和」で終わり?! 令和の子どもたちの夏の宿題について調べてみた

8/10(火) 【FNNプライムオンライン】

今年はコロナの影響で学校や家庭のイベントが中止となり、寂しい夏休みを過ごしている子どもたちが多いのではないか。さらに様々な宿題が出されて、夏休み終盤に入るいま子どもたちは気が重くなっているはず。では最近の夏休みの宿題事情はどうなっているのか?取材を通じて見えてきたのは、子どもたちのいまだった。

「昆虫採集は昭和です」と爆笑される
まず文部科学省に最近の夏休みの宿題の傾向を聞いてみると、担当者は「各学校の判断なので把握していない」と調査もデータ集めもしていなかった。

そこでよく取材をしている埼玉県戸田市の戸ヶ﨑勤教育長に「最近昆虫採集とかやっているんですかね?」と聞いたら「鈴木さん、それ昭和ですよ」と爆笑された。
そして戸ヶ﨑さんは「最近戸田市の児童は、通常授業で行っているPBL(※)を夏休み中に深めてオンライン提出していますね」と語った。
(※)Project Based Learningという課題解決型学習

そこで戸田市立戸田東小学校の小高美恵子校長にいまどきの宿題事情について聞いてみると、「戸田市を取材していまの日本のスタンダードだと認識されるとたぶん違うと思います」という答えが返ってきた。戸田市では小学校3年生以上は端末の持ち帰りが可能で(各家庭のWi-Fi環境整備も支援)、それを前提にした宿題が出されているという。

宿題は端末でデジタル活用が当たり前
「たとえば昔は漢字や計算の基礎ドリルを全児童一律に反復練習していました。しかしいまはそれぞれの児童が端末に装備されたドリルで、自分の不得意なところや伸ばしたいところを自主的にやるようにしています。先生はその履歴を見るというかたちですね」(小高校長)
GIGAスクールの普及によって今後端末を活用した宿題は、全国でスタンダードとなっていくことが期待される。

では絵日記はいまどうなっているのか聞いてみる。
「昔はほぼ毎日描きましたね。しかしいまは多様な家庭があるので、夏休み中に1,2枚程度しか描かないですよね。しかも絵日記を紙で提出するのは低学年だけで、上の学年になると日記というかたちではなく、夏休みの自分の生活を絵や写真も編集してプレゼンテーションするという感じですね。デジタルを使うのは当たり前になっています」

子どもたちが”自由研究”をオンライン会議
さらに筆者は「読書感想文や図画コンクールといった夏休みの定番はどうなっています?」と聞いた。
「学校から一応案内して『やりたいならやっていいよ』くらいの感じです。昔は自由研究がありましたが、戸田市では5,6年生になるとPBLの授業で行っている身近な課題解決について、夏休みはその調査やデータ収集を行いますね。今年は緊急事態宣言で子どもが集まって話し合うことがなかなかできないので、オンライン会議をやっているようです」

そして小高校長は「今年はコロナの影響で、音楽の授業で吹奏楽器や歌うことができなかった」と続けた。
「なので夏休みは家で歌ったり演奏するのを動画に撮ってそれをオンラインで提出することもします。家庭科の調理実習もいま学校内で制限されているので、家庭で調理したのを動画に撮ってプレゼンテーションすることもやりますね」

端末持ち帰り禁止の自治体は昔ながらの宿題を
また都内八王子市立浅川小学校の清水弘美校長はこう語る。
「1人1台端末になったので、大抵どの学校でもオンラインの宿題はあります。しかしWi-Fiの無い家庭もありますから、すべてオンラインでとはなりませんね。八王子市は児童が端末を持ち帰るのはOKですが、近隣の市では持ち帰らせないところもあって、そうすると夏休みの間端末を全く使わないことになりますね。そういうところは昔ながらの宿題を出しているようです」

では夏休みの定番の宿題について清水校長に聞いてみた。
「夏の宿題本があって中に様々な教科が入っています。また東京都が作ったドリルがタブレットに装備されていて、それを宿題に出している学校が多いようです。オンラインによる宿題提出はありませんが、記録=ログが残るので先生も各児童の進み具合がわかります。読書感想文はあります。小学校3年生までは植物観察がありますが、昔は絵を描いていましたけど最近はタブレットで写真撮影です。昆虫採集は昭和でほぼ終わりましたね」

夏のプール遊びは熱中症予防で無し
夏休みの宿題にはいまの子どもたちを取り囲む複雑な事情も反映される。
「絵日記の提出はなくなりましたね。タブレットで一行日記を書かせますが、子どもによって体験格差がはっきり出てしまうので毎日は書きません。日記については『海や山に行かなくてもいいんだよ。おうちでお母さんとホットケーキを作りましたとか、掃除をしましたとかでいいんだよ』と必ず指導します。学習塾の夏期講習に行く子どもが多い地域では、学校が夏の宿題を減らしていますね」(清水校長)

そしてかつて子どもたちの夏の楽しみと言えば、プール遊びだった。しかし「いまはプールがない」と清水校長は言う。
「いまは夏のプールもないんですよ。プールの水温が30度を超えてしまうので、泳いでいる間に熱中症になる危険性があるからです。プールは1学期で終わりです。朝のラジオ体操も緊急事態宣言になっているので中止です。だから子供たちはクーラーの効いた部屋でゲームをするしかないですね。子どもが昔のように麦わら帽子を被って走り回るのは、いま夏では無理です」

夏休みの宿題にはまさに子どもたちのいまが見えてくるのだ。

【執筆:フジテレビ 解説委員 鈴木款】

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利用者の子どもたちに聞いてみると、学校で配布されたタブレットを夏休みに持ち帰った子どもは一人もいませんでした。「ACアダプターがない」「家庭にWIFI環境のない子どもがいる」「紛失や破損の管理ができない」「セキュリティーが不十分」「使用限度を親が管理できない子がいる」どんなことでもできない理由はあげればきりがありません。工夫しなければ新しいことはできないことばかりですから、結局やる気がないという事です。

記事を読んでいると、タブレット持ち帰りの学校の子どもと、持ち帰らない学校の子どもとでは、ひと夏でICTスキルは大きく水があくと思われます。しかし、夏休みの宿題までこんなに違ってしまうとは思いませんでした。筆者にも思い当たる節がありますが、絵日記と言うのは絵の上手な子どもはいいのですが、下手な子は絵を描く課題があるだけで憂鬱なのです。人に見られること以前に、自分の思い通りに描けない絵の下手さに自尊心が傷つくのです。これが写真や動画になれば、やる気が出る子どももいると思います。

先生たちが、タブレットアプリの使用ログで子どもたちの学習の様子を掴むと言うのも、働き方改革には大きな意味があります。筆者にも経験がありますが、提出された夏休みの宿題を2学期初めに目を通すだけでも膨大な時間が必要になります。「良くできました」ハンコのインクがなくなるくらいあるのです。デジタルログならどこまでやったか何が間違いやすいか一目瞭然です。

昆虫採集やプール指導が熱中症予防のために無くなったとは初耳です。乙訓地域では聞いたことがないのですが、こんな事になっていたとは知りませんでした。朝のラジオ体操が無くなったのは、感染症に関係なく共働きが増えお世話する人がいなくなったからと聞きますが、近所の高齢の方は夏だろうが冬だろうが早朝に公園に集まってラジオ体操しているので、これに合流すれば自然に多様性社会が見通せるのでもったいないなぁと思ったりもします。

プールで熱中症になるのは水温が上がるからと言いますが、使用中くらいはろ過した循環水でなく「水道水かけ流し」にすれば少しはましかと思います。それでも水温と気温を合わせて65度を超えると危険域ですから、40度に迫る最高気温では25度以下のプール水が必要なので昼間は不可能です。また、乙訓地域でのプールは雷注意報で例年3割程度が中止になると言います。気候変動時代には室内プールへ移行すべきなのかもしれません。ただ、すてっぷの子どもたちは、毎日川に行って遊んでいます。こんな姿は、もう昭和だという事ですが、できる限り川遊びに取り組んでいこうと思います。

「子供を守る」教育・福祉・心理 専門職スクラム

「子供を守る」教育・福祉・心理 専門職スクラム

2021/8/12 【産経WEST】

虐待、貧困、不登校、発達障害・・・。子供たちの抱える困難は近年、さまざまな要因が複雑に絡み合うようになった。心理的アプローチや福祉的支援を要する場合、教員だけで対応するのは難しい。文部科学省は、教員と教員以外の専門職が連携し、学校を中心に一つの「チーム」として子供たちをサポートするよう求めている。

「最近は家にお金がなく、友達の家で夜ご飯を食べさせてもらうこともあると話していました」

7月上旬の午後、大阪市立中学校の会議室。校長、教頭、養護教諭、学年主任に加え、スクールカウンセラー(SC)やスクールソーシャルワーカー(SSW)ら専門職が額を合わせ、問題を抱える生徒7人の支援策を考えていた。

1人の生徒はひとり親家庭で、母親が定職に就かず家にもほとんどいない。「体重は?」。SCが尋ねると養護教諭が「ぎりぎり標準の範囲。これを証拠に虐待の通告はできない」と険しい表情を浮かべた。学年主任教諭は「給食をよく食べますからね…」。

緊急の課題は夏休みになれば給食がなくなり、生徒が命の危険にさらされかねないことだ。食事の支援をしている地域のNPO法人を紹介することをSSWが提案し、当面の解決策とすることになった。

家族から暴力を受けている可能性がありながら、教員がかかわることを言外に拒む生徒もいる。別の生徒は、自らを傷つけるリストカットを繰り返しており、専門職らは精神科の治療が必要だと考えているが、保護者の関心は低い。

生徒を守り支えるために何ができるか、会議ではそれぞれの立場から意見を出し合う。一つのチームとして最善の策を考える。

国の方針として
大阪市は昨年度から、各学校に対しこうした会議を定期的に開き、支援策を講じるよう要請している。

教員は学校での子供の様子や保護者の対応を説明。SCは子供の言動から心理状態を解説し、教員に対応の仕方をアドバイスする。SSWは貧困などの課題を抱える家庭について、行政やNPO法人などの福祉サービスを提案する。メンバーそれぞれの専門的な知見から、迅速かつ効果的なサポートを行うのが狙いだ。

こうした連携は国全体の方針でもある。文部科学省は平成26年、複雑化する子供たちの課題に対応するため、専門職が参画する「チームとしての学校」をどう実現すればよいかを中教審に諮問。翌年の答申を受け、29年には学校教育法施行規則を改正した。学校でのSCとSSWの役割について、児童生徒の「心理、福祉に関する支援に従事する」と明記された。

前向きな変化も
冒頭の学校は支援を要する生徒や家庭が多く、月に1回、会議を開いている。すぐに問題が解決する例はほとんどなく、継続的に協議しながら改善を目指す。

たとえば、母親が恋人に経済的に依存し、恋人が変わるたびに生活が困窮したり改善したりする生徒。母親の自立を促したいが、学校側には、保護者の行動を制限したり強制したりする権限はない。ある生徒は、体調を崩しても病院にかかれない。保護者が治療費を払えないためなのか、その確認すら容易ではない。

事態がこれ以上悪化しないよう注意深く見守りながら、状況次第で虐待として児童相談所に通告する。だが、通告を生徒が望まない場合もある。「児童養護施設に入ることになれば生活環境が大きく変わる。『今のままでいい』と考える生徒もいる」と校長は話す。

経済的な困窮も、行政の支援で直ちに解消されるわけではない。会議ではメンバーがこう指摘する場面もあった。「自立支援金を受給しても、おそらく母親の遊びに消えてしまう…」

厳しい家庭環境の中で、前向きな変化を見せる生徒もいる。「登校回数が増えて勉強も頑張っている」「高校進学を話題にしたりと、自分に対して欲が出てきた」。こうした報告に、会議の空気が和らいだ。

「いつも、子供たちが安定した生活を送るためにはどうするのが一番いいかを考えている」と校長。一人一人の生徒が人生をより良く歩んでいくために。「チーム学校」の奮戦は続く。

支援が必要な家庭 客観的に判断
大阪市立小中学校に専門職が集まる検討会議は、支援の必要な子供や家庭を学校で発見し、福祉につなげる「こどもサポートネット」事業の一環として行われている。同市の平成28年度の調査で、経済的な困窮などで市の福祉サービスの対象なのに、支援を受けていない家庭が少なくないことが判明。解決策として「学校との連携が必要」(担当者)と判断した。

教員の経験値によらず客観的に判断するため、遅刻数や欠席数▽虫歯の状況▽身だしなみ▽発育状況-など、20以上のチェック項目で課題を点数化する「スクリーニングシート」を作成。点数が高い児童生徒は必ず会議にかけるよう要請している。

会議で支援計画を作り、民生委員や精神保健福祉士らから採用する「こどもサポート推進員」が各家庭を訪問する。地域のNPO法人などにも積極的につなげ、地域全体で家庭を支えることが特徴だ。

一体的な連携で担任サポートを 梶田叡一氏
学校に通う子供の不安や悩みの原因は、学業不振や友人関係だけではない。年齢が低いほど親との関係や家庭の状況が子供の心理に影響する。ひとり親で経済的に困窮していたり、外国籍で母語が日本語ではなかったりする家庭は昔より増えた。保護者の子供への関わりが薄くなれば、愛着に問題が生じて子供が不安定になるケースもある。

苦しんでいる子供がいれば、担任教諭は本人にさりげなく話しかけたり、保護者と接触を図ったりして問題を分析し、解決しようと奔走するだろう。だが、生活環境の改善方法の提案や、子供の心理面のフォローまですべて担任が担うことは難しい。専門的な人材が学校に加わり、チームとして取り組む必要がある。

専門職をそろえてチームの形を整えても、うまく連携するのは簡単ではない。大前提として、専門職が関与することで、担任と子供の関係が希薄になるようなことがあってはならない。専門職は担任をサポートする立場にある。

チームが一体感を持てるようにするのは校長の仕事だ。教諭や専門職とコミュニケーションを取り、掛け算の効果を上げてほしい。専門職を各学校に配置する役割を担う教育委員会には、学校の状況に応じて力量のある人材を重点的に配置するなど、きめ細かな対応が求められる。(藤井沙織)

かじた・えいいち 聖ウルスラ学院(仙台市)理事長。昭和16年生まれ。兵庫教育大、桃山学院教育大などの学長を歴任。平成13~23年に中央教育審議会委員、その後は同臨時委員などとして教育行政に携わった。

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特別支援教育でも、家庭・教育・福祉の連携「トライアングル」プロジェクトと言って連携支援が言われてきました。その課題としては、教育と福祉では、学校と放課後等デイサービス事業所において、お互いの活動内容や課題、担当者の連絡先などが共有されていないため、円滑なコミュニケーションが図れておらず連携できていない。保護者支援に係る主な課題は、乳幼児期、学齢期から社会参加に至るまでの各段階で、必要となる相談窓口が分散しており、保護者は、どこに、どのような相談機関があるのかが分かりにくく、必要な支援を十分に受けられないことが言われてきました。この解決策は前者は連携の場の設定、後者は窓口一本化と言われています。

しかし、言うは易し行うは難しです。障害福祉サービス等報酬改定で拡充した連携加算を活用し、学校との連携を更に推進するとありますが、事業所で連携会議を開催した時は2000円、別の場所で連携する時は1時間以上で2900円で、月4回まで実施できます。ただ、この金額は会議出席の職員が空いたところの人件費補填というわけですが、利用者によっては補填ができません。従って、事業所は子どもの指導時間外に連携をしたいのですが、学校も同じ理由で指導時間外しか会議を設定してくれません。放デイの指導時間は隔日の放課後の2~3時間です。学校も事業所も時間のない中で他の業務を押しのけてまで簡単に会議を実施する気にはなりにくいのです。

連携と簡単に言っても、意見が一致する場合は良いのですが考え方が異なるときは一致させるのは至難の業です。組織が違えばお互いの取組に注文を付けることは越権行為と嫌がられる事もあるので、正しいとわかっていても波風を立ててまで主張するメリットが見えてきこないので、お互いが嫌な気分にならないように忖度し合って形だけの会議にもなりやすいです。

連携が必要なことは以前から現場では分かってはいるのですが、同じ学校の中に専門職を入れても権限が明確でないので、戸惑っている心理士やソーシャルワーカーは少なくありません。ましてや組織を超えた連携は、公平な調整役とその権限を明確にすることが求められます。しかし、学校長や所長を飛び越えた権限を与えることもできず、オラがムラ社会の連携はストレスフルで結局お鉢は自分に回ってくると、ケースにあげることすら躊躇する職員も少なくありません。

この手の制度は性善説で成り立っていますが、一人一人の職員は熱心な方が多くても、制度的にはこれまでの領地主義を前提にしたものですからどうしても「組織利益」や「同調圧力」を優先しやすいのです。担任に過度な負担がかからないようにし、連携会議で良く見られる「船頭多くして舟山上る」状況などの現場課題を解決するには、どのセクションにも属さない独立した立ち位置でどのセクションにも要請権限を持ち財政的にもオーダーがかけられる相談事業所制度が必要だと思います。

通級指導生徒に自立心(大阪府立高校)

通級指導生徒に自立心

2021/08/17 【読売新聞】

府立高校導入3年、ニーズ高まる府教委は増設検討

発達障害などで生きづらさを感じる生徒が通常学級に在籍しながら必要に応じて別室で指導を受ける通級指導が、高校で導入されてから3年が過ぎた。府内では府立4高校で実施され、今年度は計26人が利用。障害に合わせた指導で生徒の自立をサポートするのが特徴で、年々ニーズが高まっている。(北瀬太一)

「見通しを立てたつもりだったが、時間がない」
大阪市東淀川区の府立柴島高の通級指導教室。大学入試に向けた学習計画を考えていた3年の生徒が悩んでいた。見守っていた担当の建林敬子教諭は「英語の勉強時間を増やそうか」などと優しくアドバイスした。

生徒は、計画を立てて実行したり、コミュニケーションを取ったりするのが苦手。昨年から通級指導を受け、計画的な行動を身に付ける目的で調理実習を行ったり、周囲になじめるように友達の輪に加わるロールプレイングを体験したりしている。「先生からアドバイスを受けながら、予定を立てて行動するなど事前の対策に努めてきたので、色んなことに前向きに取り組めるようになった」と手応えを語る。

柴島高では現在、2、3年生5人が週2~4時間利用している。学校生活の状況から支援の必要性を見極めるほか、保護者や本人の意向を踏まえ、対応する。建林教諭は「高校は生徒に支援が行き届く最後のとりで。卒業後に苦労しないよう、知識やスキルを身に付ける後押しをしたい」と気を引き締める。

通級指導は1993年度から小中学校で始まったが、高校については「義務教育ではない」などの理由で見送られてきた。しかし、通常学級に適応できず不登校や退学に至る例があり、文部科学省が2018年度に導入した。

府内では18年度に柴島高など2校で始まり、19年度から4校となった。利用する生徒は18年度の6人から20人増。一方、文科省の調査によると、受けられなかった生徒が19年度に224人いたという。

府教委の山崎彩首席指導主事は「通級指導が必要だという現場の意識は高まっているが、予算の制約もあって高校での受け皿を十分に作れていない。教員の専門性を高めつつ、導入する学校を増やせないか検討していきたい」と話している。

<通級指導> 発達障害や言語障害などのある児童・生徒が通常学級に通いながら、障害に応じた特別な指導を別室で受ける制度。高校では授業の一環として位置付けられ、卒業に必要な単位となる。文部科学省によると、全国で通級指導を利用した高校生は2019年度1006人。

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京都府立高校での通級指導は、清明高校と清新高校だけです。2007年度から特別支援教育に関する文部科学省委嘱・委託事業が、朱雀高校、城陽高校、網野高校、田辺高校と引き継がれて10年以上委託事業が展開され、通級指導に取り組んだ学校もありましたが現在は行われていません。

京都府では、教育相談活動が活発に行われていたためか、特別支援教育は教育困難校の保健室や保健部を中心に進められてきた経過があります。その結果、不登校や怠学、神経症的行動や問題行動という、職員の目に見える学校生活上の困難に対応するのが特別支援教育と勘違いされてきた経過があります。それならば、わざわざ通級指導などしなくても伝統的な教育相談活動や進路指導で事足りるという誤解が生じたと考えられます。

もちろん、特別支援教育に関する研究事業の結果、全生徒にソーシャルスキルトーニングに取組んだり、授業のユニバーサルデザイン化(誰にでも分かる授業づくり)を推進したりキャリア教育に力を入れるなどの成果はありました。しかし、通級指導に求められているものは、個々の生徒に自己の特性に気づかせ、強みを生かして自ら学びを進め、弱いところは支援を求めて良いという考えに基づいて、高校生活を担当者と共に実践していくことなのです。

また、行動の問題や対人関係の問題は目立ちやすいので、比較的支援を得やすいですが、学習の問題は怠学と同じように扱われて自己責任に帰されやすいのです。学習の問題もまた個人の認知特性と学習環境から生じているという考え方は、勉強が得意だった先生方の間ではなかなか定着しません。学習障害が診断された高校生が「英語が皆よりできないのは、皆はもっと時間をかけて勉強していて、自分は努力が足りないと中学からずっと思ってきた」「でも、英語が読めなかったのは僕の努力が足りないせいではないと分かってほっとしました」と笑顔で語ってくれたことを思い出します。

高校の通級指導が、当たり前になるには委員会トップの見識と決断が必要です。そして、成功の秘訣は教育困難校や発達障害に配慮した単位制高校などへの設置だけではなく、偏差値中堅ランクの高校に設置するべきです。そのことで、学習障害や極度の不注意から評価上損をしている高校生や教員の気づき作っていくことができるのではないかと思います。そして、他の授業単位を自立活動の単位に読み替えるのは良いのですが、生徒によっては、通級が週1回(一単位)必要な人もいれば、月1回(四分の一単位)で良い生徒もいるし毎朝10分始業前に必要な生徒もいてそのニーズは多様です。使いやすい通級ならば生徒は利用しようとするので通級担当者が「学習相談・通級」と言うネーミングで実施したり、単位の習得についても柔軟な扱いがもっともっと必要だと思います。

東京パラ 学校観戦 千葉県熊谷知事「授業とリスク変わらず」

東京パラ 学校観戦 千葉県熊谷知事「授業とリスク変わらず」

2021年8月17日 【NHK】

東京パラリンピックが原則として、すべての会場で観客を入れずに開催することが決まったことについて、競技会場のある千葉県の熊谷知事は17日朝、記者団に対して「やむをえないと思う。残念だが、いたしかたない」と述べました。

東京パラリンピックで千葉市の幕張メッセでは4つの競技が開催される予定です。
原則、無観客での開催が決まったことについて熊谷知事は17日朝、記者団に対し「やむをえないと思う。会場を満員にしようと何年もかけて取り組んできた身とすれば大変残念だが、いたしかたない」と述べました。

また、安全対策を講じたうえで実施することになった、学校観戦チケットによる子どもたちの観戦については「しっかり評価する。世界中のパラアスリートのプレーを通して、パラリンピックの意義を子どもたちが受け取り、共生社会を実現してくれると信じている」としたうえで「各学校の実情を踏まえて各自治体が判断していくが、県としてもできるかぎりサポートしていきたい」と述べました。

また、感染対策の徹底呼びかけと矛盾しないかという質問に対しては「私たちは家から出るな、学校に来るなとは言っていないので、矛盾していない。バスで教員の引率で移動するので、学校で授業を受けることと基本的にリスクは変わらず、科学的根拠にもとづいて判断していくことが必要だ」と述べました。

千葉県では約230校が観戦を希望
東京パラリンピックで4つの競技が開催される千葉県では17日、現在で公立と私立の小・中・高校など合わせておよそ230校が観戦を希望していて、およそ3万5000枚のチケットが配布される予定です。
配布される枚数は教職員のものも含めて、千葉市で2万8409枚、我孫子市で1389枚、成田市で513枚など8つの市と町の207校で3万1436枚となっています。
このほか、私立が12校で2097枚、県立が12校で1867枚となっています。

観戦の対象は今月25日から幕張メッセで行われる4つの競技で、大声を出さない、座席を消毒するなどの感染防止対策を徹底するとしていますが、県によりますと、学校によっては改めて保護者の意向を確認することにしていて、今後希望者は減る可能性があるとしています。
このうち県内のチケットの8割が配布される予定の千葉市では、167のすべての市立学校で今月20日までに改めて意向調査を行い、希望者が観戦する予定です。

記者団の取材に応じた神谷俊一市長は「高い教育効果が期待でき、一生の財産として心に残る機会にしてもらうため実施を決めた。批判はあると思うが学校から市内の会場まで貸し切りバスで直行直帰するため、通常の学校での教育活動と感染リスクは変わらない。無観客で行われることで、会場内での密も避けることができる」と前向きな考えを示しました。

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パラの学校観戦現場の判断任せでは困る

2021/8/18【毎日新聞】

24日に開幕する東京パラリンピックについて、政府や大会組織委員会などが原則無観客にすると決めた。「学校連携観戦プログラム」は予定通り実施する。新型コロナウイルスの感染が急拡大し、競技会場のある東京など4都県すべてに緊急事態宣言が発令される中での開催となる。無観客にしたのは妥当だ。

学校単位で子どもたちを会場に招くプログラムを維持するのは、パラ競技の観戦に教育的意義があるからだという。選手が自らの限界に挑む姿は、多くの子どもに感動や勇気を与えるだろう。

各校は5年前から、障害者への理解を深める教育に取り組んできた。観戦はその集大成ともなる。ただし、感染防止にも配慮し、対象は会場の近隣の学校にとどめ、参加するかどうかは自治体や学校の判断に任せた。

これに対し、学校などからは戸惑いの声が聞かれる。
参加の是非を決めるには、教育効果だけでなく、感染リスクがどの程度あるのか、どのような対策が有効なのかの評価が欠かせないからだ。だが、学校側にそうした知見は乏しい。

集団感染が発生した場合の責任の所在もあいまいだ。保護者の間には不安が根強く、同じ地域で参加と不参加に分かれることになれば子どもたちに不公平感が生じる可能性もある。

組織委の立場について、武藤敏郎事務総長は「学校観戦は希望に基づいて実施するもの。希望があればサポートする用意がある」と述べた。だが、本来は組織委が専門家の意見を踏まえ、宣言下でも安全に実施するための対策を早めに示すべきだった。

開幕まで1週間を切った。責任をもって早急に詳しい対策をまとめる必要がある。感染状況が大きく変われば対応を検討するというが、どういう状況になれば中止するかの基準も公表すべきだ。

五輪では、茨城県が会場を原則無観客とし、学校観戦だけを認めた。各校は貸し切りバスで移動し、会場では十分な間隔を取って座るなど感染防止策を講じた。こうした経験も参考になるだろう。学校観戦を実施するのなら、子どもたちを守る対策を徹底しなければならない。

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「家から出るな、学校に来るなとは言っていない。バスで教員の引率で移動するので、学校で授業を受けることと基本的にリスクは変わらず、科学的根拠にもとづいて判断していくことが必要だ」熊谷知事のコメントは明快でした。「感染対策の徹底呼びかけと矛盾しないか」と質問している記者こそ自分の質問の矛盾に気づいてほしいものです。

知事も言うように、どこにいても感染のリスクはあるのです。その証拠に、感染経路別では家庭や職場が最も感染割合が高く、さらには感染経路不明の事例の方が多くなってきているのですから学校観戦だけをやり玉に挙げているのはおかしな話です。メディアの収入源である甲子園大会やプロ野球観戦には物言わず、批判しても自分に火の粉がかからないオリパラだけをスケープゴートにして観戦中止を煽る報道には、信憑性がなく付き合う必要はないと思います。

「現場に丸投げするな」というだけで、メディアの無責任な煽り報道には何一つ注文を付けないのでは、建設的な批判とは言えません。保護者の不安は、メディアの煽り報道に原因があり、オリパラ委員会や行政の責任ではありません。あえて批判をするならば、熊谷知事のように事実に基づいて沈着冷静に決断する姿勢がトップに足りないと思います。世間の風評に現場が惑わされずに学校観戦を実現してほしいと思います。

 

タリバンは女性の権利守るのか、アフガンに渦巻く疑心暗鬼

タリバンは女性の権利守るのか、アフガンに渦巻く疑心暗鬼

8月17日【ロイター】

アフガニスタンでイスラム主義組織・タリバンの支配が終わった20年前、同国の女性と少女らは夢のまた夢だった自由を得た。タリバンが再び政権を掌握した今、彼女らはその自由を失わないため懸命に闘おうとしている。

タリバン指導者らは権力掌握の過程と今も、女性と少女は労働と教育の権利を維持するだろう、と強調してきた。しかし、それは「ただし書き」付きだ。

ここ数日、タリバンが国内を進攻して行く混乱の中、既に離職を命じられた女性たちもいる。戦闘員らが何を言おうと現実は異なるかもしれない、とおびえている女性もいる。

しかし、「時代は変わった」と話すのは、アフガンで少女向けの宗教学校を運営するカーディジャさんだ。

「タリバンは、私たちを黙らせることができないことに気付いている。彼らがインターネットを閉鎖すれば、世界は5分もしないうちに、それを知るだろう。彼らは私たちが何者なのか、どんな存在になったのかを受け入れるしかない」と話す。

こうした毅然とした態度が映し出すのは、学校や大学に通えて就職もできる環境で育った、特に都市中心部の新たな世代の女性像だ。

タリバンが最初にアフガンを支配した1996年から2001年にかけて、イスラム法の厳格な解釈によって女性は就労できず、少女は通学を認められていなかった。時として残酷な方法で法が執行されることもあった。

女性は顔を覆わなければならず、あえて外出したいなら男性の親族が付きそうことが義務付けられていた。規則を破った者は辱めを受け、タリバンの宗教警察によって公衆の面前で、むち打ちをされることもあった。

外国の部隊がアフガンからの撤退を計画していることが次第に明らかになった過去2年間、タリバン指導者らは西側諸国に対し、女性はイスラム法に則り、雇用や教育へのアクセスなどで男性と平等な権利を得ると約束してきた。

タリバンは17日、カブール制圧後初めて記者会見を開いた。ザビウラ・ムジャヒド報道担当者は、女性は教育、医療、雇用に関する権利を維持し、イスラム法の枠内で「幸せ」に暮らすだろうと述べた。

メディアで働く女性の権利に関しては、カブールの新政権が導入する法律によって決まると説明した。

アフガンの民間テレビ局・トロでは17日、女性アンカーが生放送でタリバンの報道担当者にインタビューした。

<女性に離職を命令>
アフガンの少女教育を推進する活動家、パシュタナ・デュラニさん(23)は、タリバンの約束に警戒の目を向けている。

デュラニさんは、タリバンが少女の通学を認めると請け合っていることに触れ「有言実行でなければならない。現時点では言ったことを実行していない」と、ロイターの取材に答えた。

「彼らが学校のカリキュラムを制限するなら、私はオンライン図書館にアップロードする本を増やす。インターネットを制限するなら、家庭に本を送る。先生を制限するなら、地下学校を始める。つまり私は、彼らの問題を解決する答えを持っている」とも述べた。

タリバンが女性に政治や政策立案の仕事を許すかどうかが、彼らが約束する権利の平等の真価を問う試金石になる、と言う女性もいる。

2012年にパキスタンの武装勢力に銃撃されて重傷を負い、その後、女子が教育を受ける権利を求める活動を行ってノーベル平和賞を受賞したマララ・ユスフザイさんは、アフガンの情勢を深く憂慮していると述べた。

マララさんは、BBCの番組で「女性の権利を訴える活動家を含め、アフガニスタンにいる活動家数人と話す機会があった。この人たちも今後、生活がどうなっていくか分からなくて不安だと話している」と語った。

国連児童基金(ユニセフ)は、タリバン当局者らとの協力について、慎重ながらも楽観的な見方を示した。タリバンが今のところ、女子の教育を支援すると表明していることが一因だ。

ユニセフは今もアフガンの大半の地域に支援を行っており、カンダハルやヘラート、ジャララバードなどタリバンが最近制圧した都市で、新たなタリバン代表者らと最初の会談を持った。

ユニセフのアフガニスタン現地活動責任者、ムスタファ・ベン・メサウド氏は、国連の記者説明会で「われわれは協議を続けている。こうした協議に基づき、かなり楽観的な見解を抱いている」と述べた。

しかし、国連のグテレス事務総長は16日、タリバン支配下での「冷酷な」人権侵害と、女性と少女に対する暴行の増加に警鐘を鳴らした。

タリバンの戦闘員は7月初め、カンダハルにある商業銀行の支店に入って従業員の女性9人に対し、不適切な仕事をしているので立ち去れと命じた。ロイターが先週報じた。戦闘員らは、男性の親族が彼女らと交代することは認めた。(Rupam Jain記者 Lucy Marks記者)

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世界大戦中は中立国として群雄割拠の荒波を乗り越えてきたアフガニスタン王国。ようやく立憲君主制を自国の力で成し遂げようとした矢先に、冷戦中のソ連が手引きした共産主義者のクーデターによって民主国家を流産してしまいます。

それ以降は、大国の利益のために振り回され、暗殺やクーデターの繰り返しで国力は衰弱していくばかりでした。貧困に浸透していくのは宗教と相場が決まっています。ムスリムのジハードは異教者への戦い、つまり「聖戦」の名のもとに、異民族や異国家への武力行使とテロリズムを正当化し、内戦が30年も続きます。

この内戦の中で一時的にタリバーンがカーブルを占領し、アフガニスタン・イスラム首長国を設立します。イスラムの教えに女子の差別や教育の否定はありませんが、追い詰められた原理主義者は、宗教者であろうが共産主義者であろうが過激な差別選別等の反知性主義を統治に利用します。

中国の文化大革命しかりカンボジアのポルポト派の大虐殺しかり、同じ現象です。そして、そんな無茶苦茶が通用するのは国民全体が貧困のために教養が極めて低く文盲率が高い中で生じやすいと言われます。

919NY貿易センタービルを破壊したアルカイーダを匿ったタリバーンは、多国籍軍の報復で一夜にしてカブールを放棄します。西側諸国は民主国家を樹立させようと、米軍によるテロリストの撲滅と経済復興の資本投入を20年間続けました。しかし、米軍が撤退した途端にタリバーンがあっという間に全土を武力制圧してしまいました。民主主義やその国の統治は自国民が自力で困難を乗り越えてしか育たないという証です。

ただ20年前のアフガンと違うのは、SNSの普及とSNSで発信できる国民の教養の向上もありますし、人権弾圧の蛮行は世界中の人々の監視下にあり、隠すことができないことです。ミャンマーも軍部のクーデターに民主主義が流産させられそうですが、一度獲得した教育権や男女同権は暴力で再び奪うことはできません。軍政や宗教独裁、共産党一党支配による全体主義の壁は厚いですが、教育権保障や男女同権の確かな土台の上で、思想信条・表現の自由は少しづつ広がり熟成して、やがて権力交代の臨界点を必ず迎えることを信じています。

デルタ株で子供の感染状況は? 静岡市の小児科医に聞く

デルタ株で子供の感染状況は? 静岡市の小児科医に聞く

2021.08.19【日テレNEWS24

静岡県内では第5波になって学校などでのクラスターが増えていて、夏休み後の学校再開に不安の声も上がっている。

子どもたちのコロナ感染の現状について小児科の医師に聞いた。
新型コロナの感染が急拡大する中、県内では7月から学校や幼稚園でのクラスターが7件確認されるなど子どもたちが感染するケースが増えている。緊急事態宣言を受けた対処方針として、県は学校に対して「部活動の制限」や「オンライン授業」「時差通学などの工夫」を求めているが、学校再開を前に親たちは。
(小学生の母親)
「ちょっと行かせづらい。休ませた方がいいとは思いつつ、そうすると学習面が不安になってくるので上手にやってくしかないと思う」

デルタ株の拡大で子供たちの感染の現状は?
これまで子供のコロナ患者の診療を続けてきた静岡厚生病院の田中敏博医師に聞いた。
(静岡厚生病院 田中敏博医師)
「8月に入ってから僕の立場で対応する子どもの陽性者は着実に増えている。ただ、それに伴って重症者が増えているかというとそうではないので、子供が感染したけれど順調に良くなったケースがほとんど」
全体の感染者の増加に伴い10代の感染も増えているものの、他の年代と比べて少なく、8月10日までの一週間の全国の感染状況でも20代以下の重症者はいない。

子供の陽性者の症状については?
(静岡厚生病院 田中敏博医師)
「熱が出る、頭痛を訴えるケースやせき、鼻水。デルタ株だからといってすごく強い症状とは感じていない」
一方、7月までは静岡市内の子供の患者は無症状が6割だったものの8月に入ると軽い症状が出ている子どもが増えている印象という。

また、最近は家族内で子ども一人だけ陽性で、どこからうつったのかわからないケースが増えてきているという。
(静岡厚生病院 田中敏博医師)
「例えば子どもと大人が一緒に療養していても、家庭内でお父さん、お母さんが子どもから感染したことはあまりないので、子どもから(大人に)感染しにくいという原則は保たれていると思う」
親の世代である30代から50代の感染や重症者が増えている中、まずは大人が感染対策とワクチン接種をすることが重要だと指摘する。

県内で学校関係のクラスターが起きていることについては?
(静岡厚生病院 田中敏博医師)
「仮にクラスターが発生しても、子どもに関しては重症になる確率が非常に低いこともあって、ただちに心配を深める必要はないし、園や学校を責め立てるような雰囲気は社会としてつくってはいけないと思う」

学校再開を前に一番、注意すべきことは?
(静岡厚生病院 田中敏博医師)
「朝調子が悪そうだったけれど何かの活動に出てしまった。部活動に行ってしまったケースはある。熱があるとか調子が悪いということがあるなら、その日は大事をとってお休みをしていただくのが一番大事かなと思う」
症状がある時やいつもと調子が違うと思った時は、お子さんのためにも周りのためにも休ませることが大切だという。

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米で子どものコロナ感染入院が最多に、デルタ株拡大で

2021.08.14【ロイター】

米国で14日、新型コロナウイルス感染症で入院した子どもの数が過去最多の1902人となった。南部では感染力の強いデルタ型変異株による感染拡大で、医療体制が逼迫している。

デルタ型は主にワクチン未接種者の人口の間で急速に拡大しており、ここ数週間で入院者が急増。厚生省によると12歳未満の子どもの入院が急増して過去最多に達した。

現在、小児の感染者は全米の入院者の2.4%程度。12歳未満の子どもはワクチン接種対象となっておらず、感染力の強い変異型に対して脆弱な状態だ。

米疾病対策センター(CDC)によると、今週には18─29歳、30─39歳、40─49歳の新規入院者も過去最多の水準に達している。
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最近、オリパラで学校観戦を認める向きで行政が動き出すと、メディアが一斉にデルタ株が広がって医療崩壊しかけているのにけしからんと集中砲火を浴びせています。また、メディアはNHKまで政府と専門家の意見の食い違いを報道しますが、医療業界の代表のような専門家と政治家の意見は違って当たり前です。

そもそも、医療関係者を一番先にワクチン接種した理由は、全ての医療が感染対応できるようにと優先接種したはずですが、いつまでたっても治療対応する医療施設が増えないことについては誰も報道しません。

時折、最も過酷な医療現場の映像と関係者を登場させて全体が危機に瀕しているようにも見せます。BSニュースでも米国の小児感染者の入院が相次いでいると報じ次は日本だとばかりに報道し、教員のワクチンやマスク装着の義務が米国全土で社会問題になっているかのように描きます。

しかし、最近はNHK以外の局によっては、今回の日テレのようにまともな現場医師の意見を取材して報道している様子もちらほら見かけるようになり始めました。日本小児学会デルタ株感染の子どもの症状はこれまでと大きな変化はないと公式に発表しています。

それにしても、ロイターが報じている子どもの感染入院増加(米国人口は3億3千万人)日本の現状とあまりにもかけ離れていますが、原因は二つ考えられます。一つは欧米人に比べて日本人の感染しにくさ重症化しにくさの「ファクターX」です。もう一つは、子どもの肥満やそれに付随する基礎疾患の違いだと思われます(米国児童肥満率42%、日本児童肥満率12% 世界子供白書2019)。

最近のメディアの流す情報の偏向ぶりは日米ともあまり変わらなくなってきました。疑問を感じたら実際のデータをネットで調べるしかないという人もいます。いつの間にか社会の公器が、視聴率さえ上げればいいという煽り報道に汚染されてきている現状を残念に思います。

「児相で抱え込まず、多機関で子どもを守って」 大津・女児暴行死

「児相で抱え込まず、多機関で子どもを守って」 大津・女児暴行死でNPOが要望書

2021年8月18日 【京都新聞】

大津市の無職少年(17)が自宅で小学1年の妹(6)を暴行し死亡させたとされる事件を受け、子どもの虐待防止に取り組むNPO法人「シンクキッズ」(東京都)は18日、虐待が疑われる事案について、児童相談所(児相)や市、警察などの関係機関が情報を共有し連携体制を整えることを求める要望書を、滋賀県や県教育委員会などに提出した。

兄妹は7月21日未明、自宅近くのコンビニにおり、警察が保護。連絡を受けた大津・高島子ども家庭相談センター(県の児相)は「ネグレクト(育児放棄)の疑いがある」として、母親と8月4日に面談予定だったが、妹は同1日に死亡。兄は7月下旬~8月1日ごろ、妹に暴行し死亡させたとして、傷害致死容疑で逮捕された。

要望書では、今回の事件で、児相は兄妹の保護後、直ちに警察に家族の情報を提供し、早急に合同で家庭訪問して妹への暴行の有無を確認するべきだったと指摘。事件を教訓に、疑いを含む全ての虐待案件の情報を、児相と警察、市町、学校などの関係機関が共有し、子どもの安全確保を図る体制を、県に構築するよう求めた。

同法人代表理事の後藤啓二弁護士(62)は「児相だけで案件を抱え込んでは虐待は防げない。常に多機関と情報を共有し、ベストな体制で子どもを守ってほしい」と話した。

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「全て私が悪い。ネグレクトというならそう。私の責任」大津女児暴行死、母親が取材に

8/14(土) 【京都新聞】

大津市の自宅で小学1年の妹(6)を暴行し死亡させたとして、兄の無職少年(17)が傷害致死容疑で逮捕された事件で、兄妹の母親が13日、同市内で京都新聞社の取材に応じた。事件について「全て私が悪い。兄に妹の面倒をみさせてしまった。私の責任だと思っている」などと述べ、親としての責任を初めて口にした。

捜査関係者らによると、兄妹と母親は4月から同居していたが、母親は家を留守がちにしていたといい、滋賀県警は、ネグレクト(育児放棄)も背景にあるとみて、3人の生活状況の解明を進めている。少年の逮捕から同日で10日が過ぎた。

母親は、娘(妹)の名前の書かれた植木鉢などが並ぶ自宅前で、兄妹の名前を挙げながら、「全部、私が悪い。兄に妹(の面倒)をみさせてしまった」と話し、「それをネグレクトというならそう。私の責任やと思っている」と、途切れ途切れに話した。

捜査関係者らによると、母親は事件当時、家を留守がちで、事件が発覚した今月1日までの数日間は一度も家に帰らず、その間は兄妹は事実上2人だけで暮らし、一日に千円ほどで生活することもあったという。

兄妹は京都と大阪の別々の児童養護施設で育ち、妹が小学校に入学した4月以降、3人は同居を開始。当時の生活状況について、母親は、仕事で大阪に行くことがあったと言い、外出時には兄妹からは「早く帰ってきて」とせがまれたと明かした。幼い妹は「いかんといて」「一緒に行く」とすがることがあったといい、「(2人とも)一日(自宅を)離れても言うてたし、一日以上離れたらやっぱり…」とうつむいた。

そして、少年に対しては「申し訳なかった。まだ子どもやったんやな。妹をちょっとかわいがり過ぎた」と、自責の念を吐露した。

少年の逮捕容疑は、7月下旬~8月1日ごろ、自宅で、妹を殴ったり蹴ったりし、右副腎破裂やろっ骨骨折などを負わせ、死亡させた疑い。県警のこれまでの調べに対し、少年は容疑を認め、「妹の世話をするのがつらかった」「妹からちょっかいを出され、かっとなった」との趣旨の供述をしているという。少年は1日、市内の公園で「妹がジャングルジムから転落した」と救助を求め、事件が発覚した。

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大津女児暴行死、母子3人同居は適切だったのか児童相談所の対応検証へ

2021年8月14日【京都新聞】

大津市の無職少年(17)が自宅で小学1年の妹(6)を暴行し死亡させた事件で、滋賀県子ども・青少年局は13日、大学教授や弁護士、医師など専門家7人による「児童虐待事例検証部会」を今月内にも立ち上げる方針を明らかにした。

大津・高島子ども家庭相談センター(県の児童相談所)の説明では、3人の同居後、センターは月に1回程度、家庭や学校を訪問。その中で、虐待など家庭内トラブルの話は出ず、母親は兄妹について「関係は悪くなく、兄は面倒見が良くて頼りになる」と話していたという。

しかし、結果として事件が起きたため、同部会は原因を究明し、再発防止策を検討する。委員7人が児童相談所や大津市など関係機関の家庭への関わりが適切だったかなど課題を抽出し、再発防止策をまとめる。母子3人の同時期の同居を決定した判断が適切だったかも、議題となる可能性があるという。

少年の逮捕容疑は、7月下旬~8月1日ごろ、自宅で、妹を殴ったり蹴ったりし、右副腎破裂やろっ骨骨折などを負わせ、死亡させた疑い。県警のこれまでの調べに対し、少年は容疑を認め、「妹の世話をするのがつらかった」「妹からちょっかいを出され、かっとなった」との趣旨の供述をしているという。少年は1日、市内の公園で「妹がジャングルジムで転落した」と救助を求め、事件が発覚した。

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死亡女児の兄「妹の世話がつらかった」暴行認める供述滋賀・大津

2021年8月7日 【京都新聞】

大津市の無職少年(17)が自宅で小学1年の妹(6)を暴行し死亡させたとされる事件で、傷害致死の疑いで逮捕された少年が、滋賀県警の調べに対し、容疑を認め、「妹の世話をするのがつらかった」との趣旨の供述をしていることが6日、関係者への取材で分かった。母親は留守がちだったといい、県警は家庭状況や暴行の動機などを詳しく調べている。

大津・高島子ども家庭相談センター(児童相談所)の説明では、兄妹は家庭の経済的な理由などで県外の別々の児童養護施設で育ち、妹が小学校に入学した4月から母親と3人暮らしの生活となった。

少年は母親の代わりに妹の面倒をみて、近所の住民は妹とボールなどで仲良く遊ぶ姿をたびたび目にしていた。一方、暴行があったとされる時期に近い7月21日未明、兄妹が自宅近くのコンビニを訪れたため、同センターは「ネグレクト(育児放棄)の疑いがある」などとして、今月4日に母親と面談する予定だった。

少年は7月下旬~8月1日ごろ、大津市内の自宅で妹を殴ったり蹴ったりし、右副腎破裂やろっ骨骨折などを負わせ、外傷性ショックで死亡させた疑いで、4日に逮捕された。関係者によると、少年は、だだをこねるなどした妹にかっとなった、との趣旨の供述もしているという。県警は当時の詳しい状況を調べている。

事件が発覚したのは1日。少年はこの日午前、妹が同市内の公園のジャングルジムで転落した、と近隣住民に助けを求め、意識不明だった妹は搬送先の病院で死亡が確認された。県警は司法解剖の結果などから転落した事実はないと判断している。

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無職少年は、高校も行けずに家で暮らし、その少年が二人で一日1000円の食費で妹を見ています。この少年は広義ではヤングケアラーです。未明とは午前0時から午前3時頃、小1の妹を連れ出す時間ではないことくらい兄は分かっていたはずです。

それでも連れ出しているのは、尋常ではない事がこの子たちの家庭に起きており、保護すべきだと素人でも判断できます。或いは、兄が非常識が分かっていないと担当者が判断した場合も、そんな兄と一緒に家に帰してはまずいと考えるはずです。どちらにしても家に帰してはいけないと判断できたはずです。

「母子3人の同時期の同居を決定した判断が適切だったかも、議題となる可能性がある」から、「児童虐待事例検証部会」を今月内にも立ち上げるとのことですが、そんな会議を持たなくても不適切な判断であったのは自明の理です。

いったい誰のために会議を持つのでしょうか。役人の言い訳の場を作っているようにしか見えません。会議を持つことを発表するより、所長や市長が担当者の判断の非を認めて謝罪し、速やかに担当者や責任者の更迭措置を発表する事が第一に必要です(これは世間の常識です)。大津はいじめ事件でも第3者会議で担当者が責任を免罪されているとの批判がありました。行政が絡む深刻な事故の場合は、行政自らが招集する第3者会議で公平性が担保できているとは、とても思えません。行政の未必の故意※は、違法行為だと自らを厳しく律する姿勢がないと、いくら第3者会議をしても役人を守るだけで、担当者の脇の甘さから起こる重大事件がなくなるとは思えないからです。

※未必の故意
未必の故意は法律用語であり、「行為者が自らの行為から罪となる結果が発生することを望んいるわけではないが、もしそのような結果が発生した場合それならそれで構わないとする心理状態」を意味する概念である。「未必的故意」ともいう。

旭川中2死亡 尾木直樹氏「市長の立ち位置が重要」

旭川中2死亡尾木直樹氏「市長の立ち位置が重要」

2021/8/22 【毎日新聞】

北海道旭川市で今年3月、中学2年だった女子生徒(当時14歳)が遺体で見つかった問題で、生徒の母親の手記が報道機関に公表された。学校を訪れ、いじめを訴える母親に対し学校側は「10人の加害者の未来と、1人の被害者の未来、どっちが大切ですか」と迫っていたことが明かされるなど、その内容に批判が広がっている。「1人の被害者」はないがしろにされていいのか。長年いじめ問題に取り組んできた教育評論家の尾木直樹さんに聞いた。【山下智恵/デジタル報道センター】

概要は次のようなものだった。北海道旭川市で今年3月、中学2年の広瀬爽彩さん(当時14歳)の遺体が見つかった。死因は低体温症だった。


広瀬さんは2019年6月には旭川市を流れる川に飛び込み教師らに保護されていた。母親は、いじめがあったとして学校側に度々相談していたが、学校や旭川市教委は19年9月に「いじめと認知するまでに至らなかった」と結論づけていた。

今年4月、「文春オンライン」が一連の経緯を報道。全国から学校などへの批判が殺到し、市教委は学校からの報告と報道内容が大きく食い違っていたとして、いじめ防止対策推進法の「重大事態」にあたると認定。5月に第三者委員会を設置し、いじめの有無などについて調査している。


――いじめを訴える母親に学校側は、いじめを否定したうえで「10人の加害者の未来と、1人の被害者の未来、どっちが大切ですか。10人ですよ。1人のために10人の未来をつぶしていいんですか。どっちが将来の日本のためになりますか。もう一度、冷静に考えてみてください」(手記引用)と言ったとされ、批判が広がりました。

◆手記の内容がそのままだとすると、学校側は勘違いをしています。加害者か被害者かではありません。もちろん、一番不幸なのは亡くなった被害者です。一方で、加害者も価値観がゆがんでしまい、人の気持ちに共感する能力を持たないまま大人になってしまう。そのまま成長して通用するほど社会は甘くはありません。

加害者を、人の心に共感できないまま大人にしてはいけない。また、大勢いる傍観者にも苦しんでいる子を救えなかったという思いを抱かせたまま大人にしてはいけない。それが加害者側の学び、成長する権利を学校が保障することになるんです。自ら行ったことから目をそらさせ、触らないことが加害者を守ることではありません。

いじめ問題で得をする人はいません。そこの学びに責任を持っていることを教育関係者には自覚してほしいです。

手記によると学校側は、いじめを訴えて何度も助けを求めた被害生徒や母親に対し、いじめを否定し続けた。なぜそんなことをと思います。教員の多忙化や学校現場の閉鎖性、さまざまな要因が推測されるが、発言者個人を責めるより、なぜ学校社会がそういうことを言ってしまうかを考える必要がある。

――手記には母親がいじめを訴え、それが否定されたことが明かされています。対応の問題点はどこにあるのでしょうか。

◆いじめとは何かという出発点の定義がおかしいのです。この学校では定義がかつての古いままで更新されていないように見えます。

国が定めるいじめの定義ですが、1986年度からは「①自分より弱い者に対して一方的に、②身体的・心理的な攻撃を継続的に加え、③相手が深刻な苦痛を感じているものであって、学校としてその事実を確認しているもの」としています。主語は加害者で、学校が認知したものがいじめです。

06年度から「いじめとは、当該児童生徒が、一定の人間関係のある者から、心理的、物理的な攻撃を受けたことにより、精神的な苦痛を感じているもの」として、主語が被害者になりました。被害者が訴えたらいじめと認定しましょうと180度変わり、その後の定義にも引き継がれています。本人がいじめられたと認知し訴えたら、そのまま受け止めて、学校は動きましょうと、こういう定義に変わりました。

ですが、手記によれば学校側の対応は86年度のままですね。学校が「いじめはない」と言うのですから。特に今回は生徒が川に飛び込むという異常事態の直後です。加害生徒について、あの子がそんなことをするはずがないと思うのは自由ですが、加害生徒にも被害生徒にも、話をしっかり聞かなければならない。第三者委員会を設置して真相を究明していかなければいけない。

定義の変化だけでなく、13年度に成立・施行した「いじめ防止対策推進法」や文部科学省が17年に定めた「いじめ防止ガイドライン」の把握ができていないと思います。

――手記からは、旭川市が5月に設置した調査のための第三者委員会への不信感も読み取れます。

◆11年10月に大津市で中学2年の男子生徒がいじめによる自殺をした件の第三者調査委員会に、遺族側推薦の委員として参加しました。調査報告書の中に、第三者委員会のあり方も盛り込みました。公正・中立・独立の観点から自治体と関係の無い団体に推薦を依頼する必要があることなどです。

ですが、旭川市が公表した第三者委員会のメンバーは、地元の旭川や北海道に関わりのある方ばかりです。地元に影響があるとバイアスが掛かってしまうのは人間の必然です。最低限、地元の旭川の人は除外しないといけない。大津市の第三者委員会は滋賀県の出身者は一人もいませんでした。地元の人がいれば必ず被害者や加害者とどこかでつながりが出てきますから、客観的な調査になりません。

また、母親の手記で「第三者調査委員会は、だれが、どこで、どんな調査をしているのか、全く公にしていません。貴重な情報を持っている人がいても、これでは、情報を提供する先がないに等しいと懸念しています」との不信感が出るのも、遺族に寄り添うことに立脚できていない深刻な問題です。

――今後の調査のあり方はどうあるべきでしょう。

◆大津市の教訓から言うと、実は市長の立ち位置はすごく重要です。市長が遺族に寄り添って真相を解明するぞという姿勢に立てるか立てないか。いま、遺族には第三者委員会への不信感がある。だったら、例えば遺族側から担当弁護士など2人でも3人でも推薦してくださいと、市長が提案するだけでも建設的に前進していくと思います。

そして、生徒への調査について、私の経験では、2時間3時間でも向き合えば生徒には話が通じると思いました。加害者の親にはなかなか話が通じない場合が多いですが。大津市の調査では多くの生徒たちがすごく協力的で、勇気を出して次々と教えてくれた。この協力に応えなくてはという強い思いが第三者委員会のメンバー全員の出発点でした。そういった気持ちで、旭川市の調査も進んでくれたらと思います。

(※インタビュー直後の8月20日に旭川市の西川将人市長は市教育委員会に、調査の進捗=しんちょく=状況を遺族に伝えるよう要請しました)

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多大なコストと時間を投入しながら、結果として、不祥事からの脱却や社会正義を回復できなかった第三者委員会の事例は、枚挙にいとまがありません。それは、第三者委員会の委員選任の不透明性や委員自体の不適格性、的外れの調査目的の設定、さらには、真因にたどり着けない調査手法の不当性等、課題が山積みされたままだからです。

不祥事を起こした行政が委員を指名する場合、直接間接に利害関係のない人を指名する事こそ、そもそも無理があります。不透明な委員選出や会議をするくらいなら、民事で裁判を行う方が批判と擁護の関係がはっきりして、内容もすべて公開されるので誰にも理解しやすいです。

執行権限のない第3者委員会の意見があっても、強制力のない意見に、従うも従わないも行政の長の胸一つであるなら、最初から行政の長が決断すればいいのです。首長の判断の社会的責任は、投票と言う形で問われると言う帰結がありこのほうが明快です。

大津の女児死亡事件で担当者と責任者の更迭発表が先だと書きましたが、直接にせよ間接にせよ損害を起こした関係者を最高責任者の指示で更迭人事を行うのは社会では当たり前です。民間がそうするのは、放置すれば自社の信頼が失われ企業の存続にかかわるからです。

行政機関の責任の不感症はこの違いから生じます。だからこそ、部署全体の人事を入れ替えるほどの厳しい人事更迭を行う規律をもつべきだと思います。尾木直樹氏の意見は、個人を責めても解決しないと言いますが、尾木氏も関係した第3者委員会を開いた大津市で部署こそ違うとはいえ、同じ自治体管轄内で女児が死亡しているのは、個々の役人の姿勢とは関係のない不可抗力でしょうか。少なくともいじめ事件での第3者委員会の「予防的な対処」という提言が児童福祉の現場で生かされていないから事件が起こったのだと思います。

そもそも地方自治体には行政と議会という場所があるのに、この行政と議会が癒着し議会が機能しないから、民間を真似して第三者委員会が重宝されているとも考えられます。しかし、第三者委員会はこれまでに述べたように課題が多すぎます。尾木氏のいう市長次第というのはその通りですが、第3者委員会への市長の関与を言うなら筋違いです。市長は速やかに組織責任を果たすのが第一です。個別の事実関係は司法で明らかにしたほうが良いです。議会は再発防止を行政に正せばよいと思います。

「学校に行きたくない」大人は受け止めて

新学期 いま、あなたへ
山崎聡一郎さん 「学校に行きたくない」大人は受け止めて

2021/8/24 【毎日新聞】

小学校高学年の時、友人をかばったことで同級生に悪口を言われ、暴力を受けました。下校中に後ろから蹴られて歩道から農道に落ち、左手首を骨折しましたが、ほぼ毎日学校へ通いました。休めば自分が悪いような気持ちになりました。行かない選択肢はないも同然。「学校に行かなければ」というプレッシャーが一番つらかった。

同級生と離れたくて中学は私立に進みましたが、今度は加害者になりました。部活で部長を務めていた3年生の頃に後輩の一人が来なくなり、活動に支障が出たため全員で話し合う場を設けました。後輩は来ませんでしたが、退部させることを決めました。後で先生はこう言いました。「大勢で1人を追い詰める、いじめだよね」。後輩に謝り、関係は修復できました。加害者にはならない自負がありましたが、いとも簡単に、なり得ると知りました。

いじめの経験を経て、小学校の時に「人権って何だろう」と考えるようになりました。さまざまな法律が載っている本が読みたくて六法全書を手に取るようになりました。法律で、殴ってけがをさせることは傷害罪にあたる、などと書かれているからといっていじめが起こらないかといえば、それほど単純ではありません。ただ、法律を守れば起こりにくくなる可能性はあります。「いじめ防止対策推進法」は加害者を被害者とは別の場所で勉強させるなどして、被害者が安心して学べる環境を整えるよう明記しています。子どもも大人もそういう法律の知識を持つことも大切です。

もし、子どもに「学校に行きたくない」と言われたら「いいんじゃない?」と受け止めてあげてください。勉強が遅れることや将来に響くかもしれないことに、親は不安になるかもしれません。学校は理不尽さを学ぶ場だという意見もあります。でも、殴られる、ののしられるといった理不尽さなら、そんなことを体験する場所ではありません。

新型コロナウイルスの感染が広がるまでは、子どもたちに「助けを求めて」と伝えてきました。今は大人のケアも必要だと感じます。ストレスやつらさを抱えたままでは子どもに当たってしまい、追い詰めてしまう。大人も周りに助けを求めていい。それは子どもの安定にもつながるはずです。【聞き手・田中理知】

いじめ防止対策推進法
2011年に大津市の中学2年の男子生徒がいじめを苦に自殺した問題を受けて成立し、13年9月に施行された。いじめを「児童生徒が心身の苦痛を感じているもの」と定義し、防止対策について国や自治体、学校の責務を明記している。

山崎聡一郎さん略歴
1993年、東京都生まれ。慶応大で「法教育を通じたいじめ問題解決」をテーマに研究。在学中に法教育副教材「こども六法」を製作し、書籍化された。教育研究者や俳優など幅広く活動し、子どもに法教育を教える学習塾を今年開校した。
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発達障害のある子どもたちは新学期をどう感じているのでしょう。利用者の小学生に夏休みの宿題の進捗を聞くと、「まだ半分しかできてない」と言う子もいました。「やばい。でも、テレビで夏休み延長するって言ってた」と、目を輝かせて言うので「あれは高校だけやで」と返すと、「まじかー」とうなだれていました。本当は学校行きたくないんじゃないのと聞くと、こくりと頷きます。

ASDの子どもは社会性の発達が遅れるので、中学年以降にちょっと自分は集団から浮いているなーとか、友達から嫌われているんじゃないかなーと感じて登校渋りが始まります。集団の前でも、それまではみんなのアイドル「不思議ちゃん」だった彼らが、少し自信を失い友達への反応も悪くなって、それを周囲がいじるという形でいじめの芽が出てくる場合もあります。

ある利用者の女子は、中学年以降登校渋りが起こり、高学年になってからは教室ではほとんど話さなくなったと言います。いじめる奴らもそれを見ぬふりする人も馬鹿だから話さないというのが理由です。読み書き障害もあり知的な遅れはないのに、じりじりと学力は落ちていきました。授業中は漫画を描いて一日を過ごします。何が目的で学校に行くのか聞くと、学校が嫌だと言えば親が悲しむし、中間休みや昼間休みの男子とのドッチボールは、話さなくても楽しめるのでそれだけを楽しみに登校していると、聞いているだけで私の胸が張り裂けそうでした。

子どもへのソーシャルディスタンスの要請は、遊びの共感性を薄め、笑い合ったりぶつかったりして育む友情の機会を狭め、マスク利用はただでさえ表情の読み取りの弱い彼らの人への誤解を増やします。日本中がマスクをしていたのに感染が増加しています。つまり、飛沫感染を理由にしたマスク予防の効果はなかったのです。学校内でのマスク使用についてアメリカでは義務化にしてはどうかという州もあるようですが、対人理解発達のデメリットが大きいという議論に何故ならないのか不思議です。

一方で、ソーシャルディスタンスやマスクのおかげで、対人交渉の頻度が減り、いじられることが少なくなって助かっているASDの子どももいます。マスクは感覚過敏で嫌がる子もいますが、大きなマスクで顔を覆う事で安心感を得ている子どももいるので、発達障害の子どもにとってはどちらがいいとは一概に言えないようです。乙訓は明後日から始業式。学校に行きにくくなった子どもが出てきてもそんな時もあるよと、子どもの言葉に耳を傾けたいと思います。

養護教諭 子供を守る駆け込み寺の癒し役

チーム学校
養護教諭 子供を守る駆け込み寺の癒し役

2021/8/25【産経WEST】

教員と教員以外の専門職が連携し、学校を中心に一つのチームとして子供たちをサポートする「チーム学校」において、心身に問題や悩みを抱えた子供たちが出入りする保健室は核となる存在だ。教室に入れない子供がいれば戻るきっかけを模索し、虐待やいじめなどの深刻な問題の端緒をもつかむ。昨年からは新型コロナウイルスの感染対策も担う。体調を崩した子も、一見元気そうな子も-。養護教諭は、平穏な日常を守る砦となっている。

7月上旬の平日、午前11時。大阪府内の公立中学校の保健室は2つあるベッドが埋まり、離れた場所にあるソファや椅子に4人の生徒が座っていた。

さらに1人、男子生徒が戸を開けて「休ませてください」と小さな声で訴えた。「次の時間まで椅子で休んでもらってもいいかな」。そう言って男子生徒に体温計を手渡したのは養護教諭の佐藤あゆみさん(34)=仮名=だ。

「全然教室に行ってなかった人が、いきなり行ったらびびらん?」。別の男子生徒が佐藤さんにさりげない様子で尋ねると、「『来てくれたんや』っていう気持ちが勝つと思うよ」と笑顔を向けた。持病があって教室から足が遠のき、現在は保健室にだけ登校する生徒だと、後に佐藤さんが教えてくれた。

様子を見に来た担任が生徒に声をかけて立ち去ると、佐藤さんは走って廊下まで追いかけ、保健室での様子や訴えなどを伝えた。「教室に入りにくくなった子供が戻るための足掛かりは、担任の先生の協力なしには作れないんです」

教室に入れない事情
保健室は、新型コロナウイルスの影響も色濃く受けている。佐藤さんは「一時は保健室に来る生徒がもっと多かった。発熱した生徒とそうでない生徒を分けるゾーニングもできず、苦労した」と振り返る。

そんなコロナ下の今春、佐藤さんが気にかけていた卒業生の女子生徒が保健室に姿を見せた。現在は高校生。家庭状況が厳しく、中学2年から教室に入れなくなった。頭痛や腹痛を訴え、登校すると保健室で時間を過ごし、佐藤さんに少しずつ家庭事情を打ち明けた。

父親は大声で生徒や母親を罵倒し、「俺の金で生活してるんやろ」と威圧していた。生徒は母親に離婚してほしいと訴えたが、母親には一人で子育てをする自信はなく、離婚に踏み切ることはなかった。

家では父親の顔色をうかがい、学校でも無理に元気に振る舞う。佐藤さんは「周囲への配慮でエネルギーを使い果たし、へとへとになっているようだった」と振り返る。

女子生徒の望む進学先は、父親の方針とは違っていた。安易に口にすれば、殴られるかもしれない。佐藤さんは母親と連絡を取り、父親の説得に知恵を絞った。生徒をスクールカウンセラーにつなぎ、校長や生徒指導の教諭らも参加する学校内の会議で毎週生徒の状況を取り上げ、対応策を検討した。

そして生徒は希望していた高校に進学した。だが再び、高校卒業後の進路選択が目前に迫っていた。「大学に行ったら家を出たい。でもお母さんが心配」。佐藤さんはそんな生徒の話に耳を傾け、最後にそっと背中を押した。「お母さんは大人だから大丈夫」

生徒と一緒に考える
学校教育法は「養護教諭は児童の養護をつかさどる」とのみ書く。だが、その職務の幅は広い。肥満や痩身(そうしん)、生活習慣の乱れ、アレルギー、性の問題、いじめ、虐待…。子供の健康上の問題は多様化し、精神状態とも密接にからみあう。

現在、大阪府立吹田東高校で指導養護教諭を務める鈴木秀子さん(58)は30年以上、各地で世相を映すさまざまな問題に直面してきた。覚醒剤を使用した生徒もいれば、女子生徒が個室で男性客をマッサージする「JKリフレ」にかかわったケースもあった。親族の介護を担う「ヤングケアラー」もいた。本音をなかなか打ち明けない生徒も多い。

鈴木さんは入学してきた一人一人の生徒について、中学校の資料を基に家庭状況を整理している。支援が必要な生徒は顔や名前を覚え、職員室に出向いて情報を収集することもある。若い頃は生徒の困難を前に右往左往したが、「一生懸命考えてくれているとわかったから、私も頑張ろうと思えた」という生徒もいた。

保健室は、医務室でも家でも、ただの居場所でもないと鈴木さんはいう。「最後に答えを見つけるのは生徒自身。私にできるのは生徒と一緒に『次の一手』を考えることです」(地主明世)

子供のSOS、いち早く気づく力 小山健蔵氏
大阪教育大の小山健蔵名誉教授(健康生理学)は「養護教諭にとって、大切な力の一つが『みる力』だ」と指摘する。「患者を診る、注意して観る、面倒を看るなどの言葉があるが、すべて養護教諭の職務にいえること」だからだ。

国は子供たちのさまざまな困難に対応するため、教員と教員以外の専門職が連携するよう求めている。その「チーム学校」の中で、養護教諭は児童生徒が助けを必要としているサインにいち早く気づき、学校と専門職をつなぐ窓口となる役割を担う。

もともと養護教諭の始まりは、明治時代に目の感染症への対策として岐阜県が「学校看護婦」を採用したことだった。その後全国に広がり、昭和16年に教職員として位置付けられ、同22年に制定された学校教育法で「養護教諭」となった。

アレルギーやメンタルヘルスなど、子供たちが保健室を訪れる理由が複雑化、多様化する一方、多くの学校で養護教諭は変わらず1人だ。子供たちの学校における健康や安全管理の基礎を学ぶ「学校保健」についても、養護教諭や保健体育の教員以外は養成課程上の必修ですらない。

小山教授は「養護教諭の仕事を一人でこなすのは困難な状況だ。一般の教員も知識を持ち、養護教諭の複数配置も進めて負担を減らすことが望ましい」と指摘。「学校保健は教員になるための必修とすべきだ」と訴えている。

児童虐待・いじめ…存在感増す
公益財団法人「日本学校保健会」が平成28年度に行った調査では、保健室の1日の平均利用者数は小学校で22人▽中学校19人▽高校19・8人。保健室を訪れた子供に継続した支援を行ったとする学校の割合は、小学校から中学校、高校と学校段階が上がるごとに増加し、高校では9割に上る。養護教諭が対応した「いじめに関する問題」は小学校で前回(23年度)の3倍に増え、保健室利用の背景に児童虐待を指摘した割合は中学校で前回から倍増するなど深刻さを増している。

新型コロナウイルスの影響の分析はまだこれからだ。ただ、昨年3月の一斉休校直後から継続的に養護教諭にアンケートを行ってきた埼玉大の戸部秀之教授(学校保健)の今年の全国調査では、コロナ禍で不登校や保健室登校になったり、不安定な精神状態の児童生徒が増加したという回答が全体の4割を超えた。栄養バランスや生活リズムの乱れなどを指摘する声が減少傾向なのに対し、この項目は減っていないという。

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保健室や養護教諭の事を悪く言う子どもはいません。担任の先生たちは忙しそうにしているのでゆっくり話しかける機会がありません。また、先生の居場所は教室か職員室なので落ち着いて話すことができません。学校で静かな空間を占有しているのは校長室か保健室、学校用務員室です。

養護教諭は、身体測定や健康診断、怪我の時にも軽く身体に触れることが多いので皮膚感覚の安心感が生まれるのかも知れません。また、白衣を着ている養護の先生は、他の教員とは一線を画したように子どもには見えるのかも知れません。中には校長先生や用務員さんの部屋を好んで休憩場所にしている子どももいますが、圧倒的に保健室と養護教諭が人気です。

事業所利用の子どもたちに、私達は、担任の先生に話しにくければ保健の先生に話せばいいし、用があってからでは話しにくいので、用がなくてもちょくちょく話に行くといいと助言しています。養護教諭は外傷や内臓疾患だけでなく、学校精神保健の要でもあるので、発達障害の子どもたちの様子も知って欲しいのです。学校連携で話をしに行くと、最も発達障害の理解が早いのは養護教諭の先生です。教員は集団適応を求めがちですが、養護教諭は適応よりも子どもの目線で安心や安全を第一に考えるからだと思います。

支援学校の養護教諭は複数配置です。支援学校は通常学校の小児科、眼科、耳鼻咽喉科、歯科の4校医以外に整形外科医や精神科医も校医にして対応しています。相談できる医師が多い方が心強いとは思いますが、ここに学校看護師やスクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーといった専門家も束ねて、教員との橋渡しの役割もあるので連携ストレスの負荷が一番たくさんかかる部署でもあります。子どもには暇そうに見せながらも、頭脳はフル回転の養護教諭に頭が下がります。

※座高測定は2015年に「測定の意味がない」と廃止された

東大先端研のプロジェクトは、子供を変えるのではなく社会を変える挑戦<前編>

東大先端研のプロジェクトは、子供を変えるのではなく社会を変える挑戦・・・中邑賢龍教授インタビュー<前編>

2021.8.24 【リセマム】

才能に恵まれても個性が強くて仲間外れにされたり、問題児扱いされて不登校になってしまったり…そんな「生きづらさ」を抱える子供たちに、学びの場を提供する東京大学 先端科学技術研究センターの異才発掘プロジェクト「ROCKET」。そのディレクターを務める中邑賢龍教授が2021年6月、「どの子も違う -才能を伸ばす子育て 潰す子育て」(中公新書ラクレ)を上梓した。
今回は中邑教授に、子供ひとりひとりがもつ多彩な才能を潰す子育て、伸ばす子育てについて話を聞いた。

東大の異才発掘プロジェクトへの誤解
~「ROCKET」は神童を輩出する集団ではない~

--東大先端研の異彩発掘プロジェクト「ROCKET」(Room Of Children with Kokorozashi and Extra-ordinary Talents)には、強いこだわりとユニークさゆえに不適応を起こした子供たちが集まりました。才能を「潰す」から「伸ばす」へ、子育てのまさにパラダイムシフトですが、このプロジェクトは、どんな思いから始められたのでしょうか。

ユニークな個性をもっているのに、働けない大人がたくさんいます。その背景には、子供のころからその特性をすべて否定された、深い心の傷があります。なぜ彼らは傷つき、その傷が深くなったのか。それは「学校に行くのが当たり前だと思っていた」から。そこで無理をし続けたことで、傷が深くなってしまったのです。

きっと今も同じように苦しんでいる子供たちがいるはず。だったら「学校なんて行かなくていい」というプロジェクトをやれば良いじゃないか、と。それが「ROCKET」の始まりでした。

--アカデミックな世界の基礎研究や、新しい価値を生み出す革新的なモノづくりなどに没頭する異才児が集まり、メディアからも大きな注目を集めましたね。

注目して頂けたのはありがたかったですが、本来僕らが目指していたのは、あくまでもこだわりが強く、異質扱いされて生きづらさを感じている子供たちの「能動性」を、それぞれのペースに合わせてじっくりと引き出していくことでした。

その結果として、「Extra-ordinary Talents(特異な才能)」という言葉どおり、既存の枠を超えて才能を開花させ、一流大学に進学するなど、「ROCKET」をキャリアパスとして羽ばたいていった子もいます。けれどその一方で、今も自室に引きこもり、ドア越しに「おーい、そろそろ出てこないか?」と僕らが声をかけ続けている子供たちもいる、というのもまた現実です。

成長のペースは子供によって違うので、こうした結果は僕らにとっては想定どおりなのですが、世間からは「ROCKET=神童を輩出する集団」のように見られるようになり、最近は勉強がずば抜けてできる子たちが多く集まるようになってしまいました。

オール1でも、懸命に生きている子供たちを支援する新プロジェクト「LEARN」

--そうしたサクセスストーリーを目にすると、親はついわが子と比べてしまい、「そうやって突き抜けられる子はごく一握り」「うちの子があんなふうにうまくいくとは思えない」「社会で自立してやっていけるのか」といった不安をかき立てられます。私もこの仕事をしていて、活躍にばかりフォーカスした記事を書くことで、新たな格差を生むことに加担していないか。傷つけ、絶望させてしまっている人たちがいるのではないかと反省することがあります。

そうですね。確かに、発達障害や不登校など、生きづらさを抱えている子供たちの中にも成長差はあります。その強いこだわりや個性をうまく伸ばし、大学まで行けるような子供は何も問題はないのですが、僕らが本当に支援しなければいけないのは、そこまで突き抜けられないものの、必死にもがき、懸命に生きている子供たちです。そこでいったん「ROCKET」の看板を下ろし、プロジェクトとしてのベクトルが「神童」だけに偏らないよう、もっとマルチに広げたいと思い、新たに「LEARN」というプロジェクトを立ち上げることにしました。

このプロジェクトは、ニトリの会長である似鳥昭雄さんから声をかけてもらいました。似鳥さんは70歳を過ぎてから、自身が発達障害、ADHD(注意欠如・多動症)であることがわかったそうです。子供時代の成績はオール1。小学校4年生になっても漢字で自分の名前が書けず、全然勉強ができずにいじめられ、本当に辛い経験をした、と。だからこそ、同じような思いで苦しんでいる子供たちを応援したいと言ってくださったのです。

「LEARN」では、学校の成績がオール1の子でももらえる奨学金をつくります。勉強ができる子ではなく、勉強したい子に奨学金を出したいのです。他にも、これまで「ROCKET」ではサポートしきれなかった、医療的ケアの必要な重度重複障害と呼ばれる子供たちや、そういった障害など生きづらさを抱える子を育てる親御さんたちにもフォーカスを当てたプログラムを展開していきたいと思っています。

大人から褒められるのが大好き。外発的な動機付けで動く子供が増加

--ご著書の中で、「そもそも日本社会は集団志向で、異質な人に対して寛容とは言えなかったものの、社会はもう少し緩く穏やかにまわり、その分、ユニークな人たちにも生きる道が残されていた」という指摘がありました。昔はもっと大雑把で、おおらかな社会だった、と。ところが今は、「何が正しいのか」「何が間違っているのか」を明確に求めるようなコンプライアンス(*1)意識が高まり、大人たちは出る杭にならないように怯え、萎縮している。そして、そうした意識は子供にまで浸透し、小学校でも低学年から、同調圧力がいじめや不登校の原因にもなっているようですね。(前回の不登校新聞・石井氏インタビュー「低学年からマウンティング・同調圧力に苦しむ子供たち」はこちら
*1「コンプライアンス」:法令や規則、社会的規範や倫理などを遵守すること

子供というのは、生まれつきもった特性に応じて行動していきます。けれどそれを放っておくと、社会の中でコントロールしきれません。だから特に日本の教育では、枠にはめることで金太郎飴のように均質化された人材を育て、効率的に働かせて、戦後の高度成長を支えてきました。さらに、「ゆとり教育」を否定した反動で、学校がますます杓子定規な社会になってしまっているように感じます。

中邑賢龍教授と加藤紀子さん
--小学校では、プログラミングや英語が加わり、現場の先生達はやることが増えて大忙しです。また、家庭でも「小1プロブレム(*2)」を避けるべく早期教育に頼るなど、子供たちも幼い頃からとても忙しくなっています。こうした変化についてはどう受け止めていますか。
*2「小1プロブレム」:小学校に入学したばかりの1年生が、黙って座って授業を受けられない現象。スムーズに小学校生活へ移行させるため、小学校入学前に読み書きや計算などに一定時間集中させる練習などを行う保育園・幼稚園や習い事などがある。

都内の小学校でも関わっているプロジェクトがいくつかありますが、とにかく子供たちに時間がないことに驚きます。先生方はやることが多くて授業数が足りないと嘆いているし、子供たちは放課後も塾や習い事でびっしり。これじゃ、ぼーっとする時間もありません。

でも子供たちはそれで満足しているんですよ。なぜなら子供って、大人から褒められるのが大好きだから。こうして、外発的な動機付けばかりで動かされて成長する子供が増えているのです。

「明るく仲良く元気よく」という標語を掲げているうちはダメ

--先生は「成績が良ければ優秀」な時代は終わった、とも仰っています。真面目で、友達も多く、テストの成績が良く、悩みがなく、親も教師もまったく心配していない。そうやって「問題が顕在化していない子」の方が心配だ、と。

そう遠くない未来に、AIやロボットが既存の仕事を代替するようになります。ところが未だに、「問題が顕在化していない子」が追い求めているのは、このAIやロボットに奪われる対象となる能力なのです。これから人間は、余暇を充実させたり、自分で仕事をつくり出したりする能力が求められるようになるでしょう。けれど彼らは、外発的な動機付けで楽しいと感じているだけで、「これは本当に自分の人生か」「自分が好きなこと、やりたいことは何か」と自分の内側に問うことがなく、同調圧力に流されてしまう。そこが心配です。

--歴史を振り返れば、社会に革命を起こしたり、新たな道を切り拓いたりした「異才」たちの幼少期は、必ずしも学校に適応して、成績が優秀だったとは限りません。確実にその人たちは変わり者だったけれど、芽が出るまで放っておかれたから、「異才」たり得たわけですよね。

最近、発達障害がブームのようになっていますが、周囲から変わり者と見なされるユニークな子供たちを安易に「障害」と認定し、性急に治療するという考え方は非常に危ういと感じます。落ち着きがなく、空気が読めず、成績も悪く、学校に行き渋っている子でも、その子の特性を理解し、周囲の大人が見守ってやれば、彼らは自分の力で動き出せます。

学校で「明るく仲良く元気よく」という標語を掲げているうちはダメですね。「ひとり静かに大人しく」っていうクラスがあっても良いじゃないですか。全然喋らず、人の話もまともに聞かず、「一体こいつは何を考えてるんだ?!」って思ったら、結構面白いこと考えている子っていっぱいいますよ。テストや学校の勉強が苦手でも、じっくりと物事を深掘りして探究できる。そういう才能も潰さない社会にしなければいけません。さまざまなイノベーションのタネを撒きたければ、凸凹で多様な特性をそのまま包み込める社会に変える必要があるのではないでしょうか。

苦手なことを無理に克服しようとしなくて良いじゃないですか。子供を変えるのではなく、社会の制度を変える。僕は今、そこに挑戦しているのです。

インタビュー後編「子供たちに必要なのは『リアリティ』と『自分の無力さを気付かせる時間』」へ続く。

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中邑先生のお話を読んでいると、坂本龍馬を思い出します。「日本を今一度せんたくいたし申候」と言って、これからの世の中に必要なものが幕府にないなら自分たちが海援隊をおこして新しい経済の仕組みを作ればいいと、「時勢に応じて自分を変革しろ」「何の志もなきところに、ぐずぐずして日を送るは、実に大ばか者なり」と大勢を非難して自らを奮い立たせます。中邑先生も、学校で「明るく仲良く元気よく」という標語を掲げている限り、ユニークな人が育つわけがないと大勢を敵に回すような発言をされます。

転ばぬ先の杖のような教育や発達支援をしていて、今後の未曽有の世界が乗り切れるか?中邑先生は、AIが得意とするものは素早く検索できる知識と、枠組にはまり込んだ既知の思考パターンだと言います。それをAIに奪われた「エリート」に残されるものは皆無だと言って、既成の価値観や評価軸を疑ってかかります。

龍馬は、「わずかに他人より優れているというだけの知恵や知識が、この時勢に何になるか。そういう頼りにならぬものにうぬぼれるだけで、それだけで歴然たる敗北者だ」として既存の知性を笑い飛ばします。

そして、時代の変革者龍馬自身の人生については「人生は一場の芝居だというが、芝居と違う点が大きくある。芝居の役者の場合は、舞台は他人が作ってくれる。なまの人生は、自分で自分のがらに適う舞台をこつこつ作って、そのうえで芝居をするのだ。他人が舞台を作ってくれやせぬ」と独立独歩を尊重します。これは凸凹の子どもたちを含む全ての子どもたちに向けた中邑先生のメッセージと瓜二つです。

子供たちに必要なのは「リアリティ」と「自分の無力さを気付かせる時間」中邑賢龍教授インタビュー<後編>

子供たちに必要なのは「リアリティ」と「自分の無力さを気付かせる時間」・・・中邑賢龍教授インタビュー<後編>

2021.8.26 【リセマム】

才能に恵まれても個性が強くて仲間外れにされたり、問題児扱いされて不登校になってしまったり…そんな「生きづらさ」を抱える異才児たちに、学びの場を提供する東大・異才発掘プロジェクト「ROCKET」。そのディレクターを務める中邑賢龍教授が6月、「どの子も違う -才能を伸ばす子育て 潰す子育て」(中公新書ラクレ)を上梓した。

中邑教授に、子供ひとりひとりがもつ多彩な才能を潰す子育て、伸ばす子育てについて話を聞いたインタビューの前編では、外発的な動機付けで楽しいと感じているだけで、「これは本当に自分の人生か」「自分が好きなこと、やりたいことは何か」と自分の内側に問うことがなく、同調圧力に流されてしまう子供たちが増加している背景と、学校の枠に収まることができず、生きづらさを抱えた子供たちの支援について語っていただいた。後編は、子供たちの「生きる力」が弱まっている背景と、子供のために親ができることについてお話しいただいた。

便利が当たり前の子供たちに必要な「18禁デザイン」

--中邑教授は「人間支援工学」と呼ばれる分野の第一人者です。「ROCKET」のほか、障害や病気を抱えた子供たちのための大学・社会体験プログラム「DO-IT Japan」や、身の回りのテクノロジーを教育に活用する「魔法のプロジェクト」、医療的ケアの必要な重度障害児のコミュニケーション支援プロジェクトなどに携わってこられました。さまざまな子供たちとの関わり合いを通じて、最近感じる変化はありますか。

近年では発達障害のグレーゾーン(境界型)と呼ばれるタイプが増え、重度の障害や病気だけではなく、幅広くいろいろな子供たちと付き合うことが増えてきました。そこで僕が気づいたのは、日本の子供はすべてディスアビリティ(*1)ではないか、ということです。子供たちから如実に「生きる力の弱さ」を感じるのです。これは本当にまずいぞ、と。この本を書いたのも、今、改めて子育てのあり方、子供との向き合い方を考え直すべきときではないかと思ったからです。
*1「ディスアビリティ」:心身の機能上の能力障害

--子供たちの生きる力が弱くなった理由は何だと思いますか。

今の日本は高齢化社会なので、高齢者向けにバリアフリーやユニバーサルデザインが行き届き、何事も安心・安全に使いやすくつくられています。食べ物のパッケージひとつとっても、指先の力が弱くても簡単に開けられるきめ細やかな仕様で、高齢者にはとても優しい社会です。子供たちもその便利さを当たり前のように享受しています。すると、逆に不便なもの、粗悪なものに出くわした時に、手も足も出ないどころか、出そうともしない。ハサミを使ったり、歯で噛みちぎったりして何とかしようともがきもせず、「ハサミを持ってくるのがめんどくさい」「袋に口を付けるなんて不潔」などと言い訳ばかりで、簡単に諦めてしまう子が少なくないのです。

--高齢化に合わせた社会のデザインが、子供たちを「茹でガエル」にしてしまっている、と。「茹でガエル」のまま大人になってしまうと考えると…ちょっと恐ろしくなりますね。

僕は、18歳以下は使ってはいけない「18禁」のデザインがあっても良いと思っています。これ、冗談じゃなく本気でね。あえて使いにくいもの、すぐ壊れるようなものを子供に与えていかないと、普段生活する中で学べることが少なすぎるのです。

本来学校の役割とは、僕らが生活の中で学んだことを授業で補完することにあると思うのですが、今も子供たちが向き合っている学びの多くは、知的反射神経を鍛えるようなドリル的な学習です。中でも早期教育という名の下、幼少期から訓練されてきた子供たちは、生きる力がとても弱いと感じます。これでは今、社会で声高に叫ばれているイノベーションなど起こるはずがありません。

「ギフテッド教育」は早期教育ではない

--特異な才能を伸ばす教育法として「ギフテッド教育」があります。中邑教授はこれについて、世間で誤った解釈があると指摘されていますが、本当の意味での「ギフテッド教育」とは何でしょうか。

ギフテッドとは生まれつきもつ、突出した能力を表した言葉です。ギフテッド教育とは、そうした能力が伸びていくのを阻害せず、のびのびと育てていこうとするものであり、けして大人が作為的に道を敷いていこうとする教育ではありません。ところが日本では、ギフテッド教育が早期教育と取り違えられることがよくあります。

たとえば小学校受験のための訓練や勉強は、知的反射神経を鍛えるような課題が中心で、IQを調べる知能検査の問題にも類似しています。したがって、早期教育を施せば必然的に成績が高くなり、IQも高く出る可能性があるのですが、これだけを根拠にギフテッドと判断できるかどうかは疑問です。幼児期に高いIQを叩き出し、神童扱いされてきた子供が、小学校高学年になると他の子に追い抜かれ、周囲の期待に応えられなくなって苦しむケースは少なくありません。

すべての子供には天賦の才能がある。だから芽が出るまで放っておきましょうというのが「ギフテッドの本質」です。

STEAM教育に必要なのはダイナミックでリアルな原体験

--文部科学省も大きく舵を切り、学校ではアクティブ・ラーニングやSTEAM教育といった活動の中で、子供たちひとりひとりの個性を伸ばし、考える力や主体性などを育もうとしています。こうした教育活動を行うにあたり、一番重要なことは何でしょうか。

東大の学生たちを見ても、考える力や主体性がないわけではありません。自分から進んで多くの論文を読み、本やネットで貪欲に知識を習得するなど、さまざまなことに詳しい勉強熱心な学生はたくさんいます。ただし、彼らの知識にはリアリティがない。このリアリティのなさが今の子供たちの特徴です。

今、多くの学校で実施されているアクティブ・ラーニングやSTEAM教育は、安全に管理された状況で行われる実験や、周到に準備されたプログラムなど、先生が想定したアウトプットに向かっているものが大半です。ダイナミックさやリアルさがなく、子供たち自身が何か問題にぶち当たって考えるというプロセスが抜け落ちています。

もちろん、先生が生徒に対し、構造的に知識を授ける役割は引き続き重要だと思います。けれど子供たちにはその前に、自由に気の向くまま過ごしてきた、ダイナミックでリアルな原体験が必要なのです。僕はこれを「Pre-STEAM」と呼んでいます。じーっとアリの行列を眺めていたり、穴の中にひたすら石を落とし続けたり、大人から見れば一見無駄と思えるような単調な行動こそが、子供時代にはとても大事なのです。

遠回りで非効率でも、教えない。体を動かし、汗をかいて、気づかせる

--大人がお膳立てをした予定調和ではなく、子供が自由に気の向くまま過ごせる時間が必要だ、と。その他、コロナ禍で親子が過ごす時間が増える今、「生きる力が弱い」「ダイナミックでリアルな原体験が足りない」子供たちに、家庭でできることは何でしょうか。

コロナ禍では在宅時間が増えて、子供たちがゲームやタブレットといった道具を使う時間も増えました。未曾有の危機の中、現実世界を体験しにくい状況ですが、空気や湿気、匂いなど、リアルな経験を失っていくのはとても恐ろしいことです。

中邑賢龍教授と加藤紀子さん
「子供が夢中になれることをどうやって探せばいいか」とよく聞かれるのですが、デジタル機器から完全に離れて、何もないところに連れていって好きにさせてみてください。GPSに頼らず目的地を目指してみたり、畑で野菜や果物を育ててみたり、動物や自然に触れ合ったり。情報や労働はタダではないこと、生き物は人間の思うようにならないことなど、子供たちに体験を通じて気づかせることがとても大事です。

それには親にも覚悟が入ります。親もデジタル機器を手放し、遠回りで非効率でも、一緒に体を動かし、汗をかいて、知恵を絞る。子供に何かを「教える」のではなく、リアルな経験を徹底的に体に染み込ませて、子供に「気づかせる」のです。今、親が子供に授けるべきものは、子供に自分の無力さを気づかせる時間だと思います。

すべての子供たちが、心に傷を残すことなく育つ社会

--すべての子供に天賦の才能がある。でも、どうしても社会でうまく立ち回れず、振り落とされてしまう子たちもいます。すべての子供たちの才能を潰さず、伸ばしていくために、社会はどう変わるべきだと思いますか。

社会の中に、新しい評価軸、多様な枠組みをつくっていくべきです。今の社会は、「ありのままでいい」と言いながら、ひとつの枠組みの中に、既存の評価軸で、個性の強い子も十把一絡げに押し込めようとしています。「インクルージョン」「ダイバーシティ」という標語を掲げていても、当事者に聞いてみると、足手まといになってしまうからと仕事が与えられなかったり、コミュニケーションの難しさからいじめにあったり、必ずしもうまく共存できていないのが実情です。

多様な枠組みと新しい評価軸をつくり、環境さえ整えてあげれば、どんな人にも自分の居場所ができ、落ち着けるはずです。でも今はひとつの枠組みしかなく、そこからはみ出てしまった人たちを福祉の対象とし、エクスクルード(排除)してしまっているのです。

鹿児島市にあるしょうぶ学園は知的障害者向けの福祉施設ですが、職員は福祉の専門家だけでなく、アートや音楽など、さまざまな専門家がいます。こうした専門の目利きが、作業場で障害者が作ったものに価値を見出し、作品として販売しています。一見して価値があるかわからないものでも、プロデュースによって見事に高値が付く作品に変えられる。まさに新しい評価軸です。畑で作った野菜を使い、洒落たレストランで美味しい食事を提供したり、パンを焼いたりと、地域コミュニティの住民の憩いの場にもなっています。

新しい評価軸をプロデュースできる人々を介して、障害のある人達のコミュニティが外の環境と分離されず、地域と結びつく。ひとりの人間としては難しくても、そのコミュニティごと地域と共存できれば良い。「社会がおかしい」ってことに気づく人が増えて、「社会を変えよう」と動けば、それによって生きやすくなる人たちはたくさんいるのです。

--最後に、生きづらさを抱える子供たちへ、そしてその子供を見守る親たちへ、メッセージをお願いします。

子供は何も悪くない。だから、子供を変えようとする必要はありません。ものすごく抵抗する子供がいますが、それもその子の特性なのです。その特性を親や周りの大人が力尽くで潰してしまうと、子供は必ず心に傷を残します。トラウマになり、一生苦労する子もいます。すべての子供たちが、心に傷を残すことなく育っていく。僕はそれが一番大事だと思います。今、辛いかもしれないですけど、どんな子供も必ず動き出しますから。どうか目の前の子供を信じて、見守ってあげてください。

--ありがとうございました。

「苦手なことを無理に克服しようとしなくていい」「子供は何も悪くない」「すべての子供には天賦の才能がある」中邑先生の言葉を改めて噛み締めると、私たちの社会はどれだけのギフトをみすみす失っているのだろうという悔しさを感じずにはいられない。

目の前にいるわが子のギフトは何か。私たち大人こそ依存状態になっているさまざまな道具を手放し、ダイナミックにリアルに、親子で今この瞬間を一緒に過ごすことで、その本質が見えてくるのかもしれない。

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今回のインタビューは示唆に富んでいます。ユニバーサルデザインではなく「18禁デザイン」とは面白い発想です。何でも便利ではなくあえて不便を提供する、いわゆる野外活動のようなことを、日常スタイルにも教育として求めるということです。すてっぷもそのことはとても大事なことだと考えています。できるだけ野外に出かけ、水や土、火や風、生き物や草花を対象にして遊ぶことが重要だと考えています。確かに公園遊びは子どもを管理しやすいですが、遊具遊びとボール運動程度で変化に乏しい物ばかりです。働きかければ変化するもの、工夫すればするほど変化するものはタブレット中にもありません。

何でも便利なものを与えてはいけない、不便だから便利にしようと考える、知らないことだから知ろうとする。こうした動機を子ども時代から奪ってはならぬと中邑先生は警鐘を鳴らします。こうした子どもたちの体験の上にSTEAM教育は成り立つのであって、その逆はないと思います。「S」(SCIENCE 科学)「T」(TECHNOLOGY 技術)「E」(ENGINEERING 工学)「A」(ART 芸術)「M」(MATHEMATICS 数学)これらを結びつけた教育が必要だと専門家は唱えますが、土台になるカルチャー(文化)が貧しくては成立しません。

中邑先生は、自発的に学んだり遊んだりする環境と付き合う大人だけ準備して、あとは放置せよと言っているようにも思えます。「インクルージョン」も「ダイバーシティ」という標語も息苦しいという当事者の声に私たちは耳を傾けなくてはなりません。ただ、世の中は皆で生きているのですから、どこかで折り合いをつける必要があります。それは少数者の当事者だけに求められるものではなく、多数者の我々にも求められるべきものです。その双方の折り合いのつけ方を、「支援」と呼ぶべきだろうと思います。折り合いと言うからには、お仕着せではなく当事者の意見もあるという事です。従って、支援はいらないのではなく、その折り合いの境界線は人によって違うので、支援も人によって違うのだと思います。

分け隔てない支援教育 モデル実施へ 大阪

分け隔てない支援教育 モデル実施へ 大阪

8/30(月) 【産経新聞】

大阪府教育庁は30日、軽度の知的障害や発達障害のある高校生らが必要な支援を受けながら他の生徒と一緒に学べるよう、新たな教育課程に基づく教育を令和5年度からモデル校で実施すると発表した。今後、カリキュラムなどの具体的な検討を始める。

府教育庁が掲げるのは「『ともに学び、ともに育つ』多様な教育実践校(仮称)」。モデル校は府立西成高校と同岬高校で、いずれも小中学校の内容から学び直せる「エンパワメントスクール」に指定されており、支援の必要な生徒が多い。習熟度別の授業や少人数指導など、両校で実践している支援のノウハウや課題をもとに新しい教育課程や学級編成を庁内で検討。6年度からは指定校を増やして本格実施する予定だ。

また、府の教育委員会議は同日、島本、茨田(まった)、泉鳥取高校の3校を、今年度の入試を最後に募集停止する方針を固めた。府条例では、3年連続で入学志願者が定員割れし改善の見込めない高校を再編整備の対象と規定しており、今年度の検討対象は13校。エンパワメントスクール全8校のうち岬、西成、箕面東高校も定員割れが続いている。

受け入れ体制に課題も
大阪府教育庁が今回、高校で新たな教育を導入する背景には、中学の特別支援学級から高校への進学率の高まりがある。令和元年度の卒業生の進学率は全国平均を大きく上回り、約8割に達した。現在は現場の工夫で支援しているが、適切なカリキュラムや学級編成を制度化し、卒業後の自立に向けてより充実した教育を実践するのが狙い。外部有識者による審議会が提案したもので、全国的にも珍しい取り組みという。

公立の小中学校には、学校教育法施行規則などに基づき支援学級が設置されているが、高校にはない。このため、支援学級の在籍生徒の進学先は特別支援学校高等部か一般の高校となる。

文部科学省によると、近年は全国的に中学の支援学級から高校への進学率が高まっており、令和元年度の卒業生では半数を超える。特に大阪府では以前からその傾向が顕著で、元年度は8割超の2035人が高校(高等専門学校含む)に進んだ。要因の一つとして、定員割れした府立高には成績にかかわらず入学できるという、大阪特有の事情もある。

府教育庁は、知的障害のある生徒を対象にした「自立支援コース」を府立高9校に設置しているが、定員は1校3~4人。課題に応じて一部の授業を別室で受ける「通級指導教室」も4校にしかなく、高い進学ニーズに対応しきれていない。また、支援学級に在籍していなくても学習やコミュニケーションに課題を抱える生徒も増え、入学時の調査で「配慮を要する」と回答する生徒は2年度で3174人と、平成20年度の2倍超となった。生徒の状況によって年度途中で新たに教員を配置するなどの対応が必要となる学校もあり、「現場に任せるには限界がある」(府教育庁幹部)という。

こうした問題について、大学教授らでつくる府学校教育審議会が今年1月から協議。8月下旬にまとめた中間報告の中で、こうした教育システムの導入を提案した。

目指すのは「『ともに学び、ともに育つ』多様な教育」の実践であり、対象は支援を必要とする生徒だけでない。橋本正司教育長は「さまざまな生徒が一緒に学び、誰もが意欲を持って自分の力を伸ばせる魅力ある学校にしたい」と話す。(藤井沙織)

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大阪府だけでなく都市を抱える自治体では少子化に伴い、私学志向が高まる一方、公立校は定員割れを起こして試験が0点でも氏名が書ければ入学できる状況が一部で起こっています。サイエンス校とかグローバル校等の高機能公立高校を作って一部の「高学力」生徒を集める施策は、それ以外の高校に「低学力」の子どもが集まります。そうした高校では中堅大学も目指せないと、中間層の生徒も私学志向になって、さらに公立校の定員割れが進みます。

さらに国の就学支援金と大阪府独自の授業料支援補助金を合わせれば、世帯収入が800万円以下の家庭なら年間平均50万円以上の補助があるので、これまでの学費の半額程度の負担で私学に行けるので「教育環境の良い私学へ」という流れをさらに後押しします。

こうした中で、低学力生徒の多い高校への支援としてエンパワメントスクールに指定して、読み書き計算の基礎基本から教える取り組みを始めましたが、それは大学には行けそうにない高校だと、逆に定員割れを起こす皮肉な結果となっています。これは、ハイタレント(高学力者)囲込みの高校教育施策の矛盾を、泥縄式に手立てを打っている対症療法としかいえず、かえって発達障害のある生徒などを特定の高校に囲い込む施策にも見えます。

今回は、これを打破しようとした高校教育の起死回生をかけた教育システムですが、橋本教育長が言うように「さまざまな生徒が一緒に学ぶ」学校にするには、一点豪華主義の公立高校設置を改め、どの学校でも有名大学が狙え、どの学校でも基礎基本に戻る教育課程も行う公立学校本来の姿、多様性社会を校内で実現していく姿勢がベースに求められると思います。そうすることで、中学校の進路指導や特別支援の姿も変わってくるものと思われます。特別支援学級在籍者の報告書(内申書)を本人の実力に関わらずオール1にするなど※旧態依然として、多様な学びを認めない中学校の改革にも一石を投じるものになると思います。

※例えば、「令和3年度京都府公立高等学校入学者選抜要項」の「4 出願の要領(全日制・定時制共通) (3) 中学校長の手続  エ 報告書(様式Cの1及び様式Cの3)について b(a)」には、「なお、特別支援学級(中略)生徒等については、(a) 「中学校学習指導要領」に示す目標に照らして、その実現状況を5段階の評定点により記入すること。」とある。「支援学級生はオール1」という申し合わせが存在するならば絶対評価の公平性が失われていることになる。

 

ICT機器 児童生徒の9割が期待も 学校は半数以上が十分活用せず

ICT機器 児童生徒の9割が期待も 学校は半数以上が十分活用せず

2021年9月1日 【NHK】

小中学生に1人1台配られているタブレット端末などのICT機器について、児童生徒の9割が「勉強の役に立つ」と期待を寄せる一方、十分活用していない学校が半数を超えていることが文部科学省の調査でわかりました。

文部科学省は、ことし5月、全国の小学6年生と中学3年生、200万人以上を対象に「全国学力テスト」を実施し、あわせてタブレット端末などICT機器の活用状況についても調査して、31日、公表しました。

この中で児童や生徒に、タブレット端末などICT機器の使用が勉強の役に立つと思うか聞いたところ、「役に立つと思う」、「どちらかといえば役に立つと思う」という回答が小中学生ともに90%を超えました。

一方で、学校に対し、教職員と児童生徒がやりとりをする場面でどの程度ICT機器を活用しているか尋ねたところ、「全く活用していない」、「あまり活用していない」という回答が、小学校で55%、中学校で57%でした。

また、児童生徒に1人1台配備されたタブレットなどの端末をどの程度家庭で利用できるようにしているか聞いたところ、小中学校ともに「持ち帰らせていない」もしくは「持ち帰ってはいけないことにしている」があわせて60%以上となり、毎日もしくは時々持ち帰り利用させている学校は20%程度にとどまりました。

文部科学省の浅原寛子 学力調査室長は「ICT機器の学習への活用について子どもたちの期待が非常に高いことがわかった。休校など非常時に備える意味でも1人1台の端末を積極的に活用してもらいたい」と話しています。

端末の持ち帰り 学校の対応に差
感染の急拡大で今後、臨時休校も想定される中、文部科学省は小中学生に1人1台整備しているタブレット端末などの最新の活用状況も公表しています。

ことし7月末の時点で1人1台の端末の整備は全国の96%にあたる1742の自治体で終えていますが、3.9%にあたる70の自治体では完了していないと答えたということです。

家庭に端末を持ち帰ることについては、全国の公立小中学校などおよそ3万校のうち、感染拡大や災害など非常時に対応できるよう「準備済み」と回答した学校は64%、「準備中」と答えたのは32%、「実施・準備をしない」が4%と、対応に差があることがわかりました。

文部科学省は夏休み明けに登校できないケースや休校などが想定されるとして、「実施・準備をしない」と回答した自治体に対し、速やかに準備をするよう促したということです。

専門家「平常時から教室で使い、持ち帰って練習を」
ICT教育に詳しい東北大学大学院の堀田龍也教授は、タブレット端末などに対する子どもたちの期待は高い一方、活用は十分広がっていないという調査結果を受け、「自治体によっては、オンライン授業の取り組み事例を徐々に近隣の学校に広めているところもあるが、中にはすべての学校が一斉にできるようになるまで活用を始めない自治体もある。できること、できるところから進めていくことが大事だ」と話しています。

そして、感染拡大が収まらない中で新学期が始まることから、「学校でも十分使い方がなじんでいないのに、非常時にタブレット端末を家に持ち帰ったところで活用は容易ではない。平常時のうちから教室で使い、持ち帰って練習をするなど備えておくことが学習を保障するうえでも非常に重要だ」と指摘しています。

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端末持ち帰り調査: 05/27)でもコメントしましたが、すてっぷで把握する限り、全児童分のタブレットが配備された乙訓の小学校で、夏季休暇中に家庭に端末を持帰らせた学校はなかったようです。大阪では環境が整っていないのに市長のオンライン授業発言はけしからんと校長先生の市長あての提言がSNSで拡散される事件も起こりました。ただ、実際の提言は現在の教育を憂う個人的な感想が多く、オンライン学習に触れたのは全文の1割もなく、しかも具体的な指摘もないままに一方的に校長の感想が書かれているだけで、事実に基づいた内容がありません。恐らくは、これはメディアが大阪市長批判のためにする政治的に煽った事件であり、子どものオンライン学習の具体的な推進には何の役にも立たない話だと思います。

けれども、「全体が揃うまで実施しない」というのは、公平性を大事にしているかのように聞こえますが、このフレーズを使う人によって意味合いは変わるのです。サービスを受ける人が使うと同じ税金を払っているのだからサービスは公平にしてくださいと言う意味になります。しかし、サービスを供給する側が使うと、全体が揃わないのだからサービスできるところもやらないし、もう少し努力すればできるところも全体の足並みがそろうまでやらなくていいという言い訳になるのです。つまり、公平と言う言葉が努力しない事を免罪し、個々で努力したり工夫することを抑制してしまうのです。

年金や給付金などの公平性と、設備や技術格差の可能性を内包しているサービスの公平性とでは意味合いが違います。前者は一律平等ですが、後者はできるところから実施し、遅れたところは公平性を目指して全力で追いつく努力するのが公的サービスのあり方です。そういう意味では、オンラインができないと言う前に何か努力をしたのかという疑問が残ります。

前回も紹介しましたが、民間のリモート用サーバーを使ってオンライン授業を実現している学校(学校つなぎ学習支援: 06/03)もあるのです。できない理由を並べるのは簡単ですが、子どものためにICT教育を実現しようとする前向きな姿勢がなければ、できるものもできないのです。世の先生方は公的サービスの公平性とは何かを再考され、タブレット持帰りを実現してほしいと思います。

学校ではマスク着用なしで抗原検査を徹底──英国

米国とは反対の施策を進める
学校ではマスク着用なしで抗原検査を徹底──英国のコロナ感染対策は「有効」と示唆

2021.9.2【クーリエ・ジャポン】

日本では新型コロナウイルスに感染する子供が増加し、すでに夏休みの延長やオンライン授業を検討する小中学校が増えている。新学期を迎え、不安を感じる家庭も多いだろう。

デルタ株が蔓延する英国では、休校措置やマスク着用の義務なく、抗原検査の徹底によって校内のクラスターを抑えようという動きがある。感染拡大を防ぐのは可能なのだろうか──。

子供たちがマスクを着用し続けるリスクは大きい
米紙「ニューヨーク・タイムズ」は、マスク着用を義務付けずに、無償配布した抗原検査キットを活用することで、校内の感染率を抑える英政府の事例を紹介した。記事には「英国では子供たちは学校でマスクをしていない」と驚きを込めた見出しが付けられた。

英セント・ジョージ病院の小児感染症の専門家シェームズ・ラダーニは「人と人との交流において顔を合わせることは重要で、子供たちがマスクを着用し続けることは潜在的なリスクが大きい」と話す。また、英政府は回避可能であれば「子供がマスクで顔を覆う必要はない」という姿勢を当初から明確にしているとも述べた。

英国では6月以降にデルタ株が蔓延し、7月中旬に感染のピークを迎えた。しかし、パンデミック中に開校を続けた英国の学校内の感染率は、社会全体の感染率を上回らなかった。英政府も「大規模なクラスターは起きなかった」と調査後に結論づけたことを、ニューヨーク・タイムズは報じている。

抗原検査を徹底すれば、隔離時と変わらない陽性率に
英政府は以前から、家庭に検査キットを無償提供し、子供に週2回の検査を要請。学校のバブル(安全圏とされるグループ)内で陽性者が出た際には、10日間の隔離が求められていた。実際、英国では7月中旬に公立校生徒の14%にあたる100万人以上が隔離を強いられ、子供たちや親の混乱を招いたことも事実だ。

しかし、隔離の代替策になると期待されているのが、徹底した抗原検査だという。英国ではデルタ株の感染拡大時に、対象となる中学校から大学までを「隔離型」と「検査型」のどちらかに無作為に振り分けて、感染状況を比較した。検査型の学校では、関係者は感染の発覚から1週間は抗原検査を受けることを条件とし、陽性反応が出た子供だけを隔離する方法をとった。

結果、どちらのグループでも陽性反応が出た接触者の割合は2%に留まった。また、教員の抗体検査結果をみても、陽性率は地域の成人と同等以下であり、学校が「感染のハブ」ではないことが示されたという。

二極化する校内の感染対策
英紙「ガーディアン」は、英国の学校における最新の感染対策を次のようにまとめる。
・子供たちを少人数のグループやバブルに入れるという要件は取りやめ。マスク着用の義務化も廃止され、感染した生徒の連絡先の追跡なども必要なし(登下校時などふだん会わない人と接触する閉鎖空間ではマスク着用を推奨)。
・10日以内に濃厚接触した5人の生徒や職員が陽性となるなど、一定の条件を満たす場合、学校はマスク着用などの助言を教育省に求めることができる。しかし、いかなる施策も期間限定であること。
・政府が求める対策は前年度に比べて少なく、手洗いなどの基本的な衛生管理と換気のモニタリング、生徒と教職員への抗原検査の実施が求められる。

対して、米国ではCDC(米国疾病予防管理センター)が、予防接種の有無にかかわらず学校内では全員がマスクをすることを推奨。加えて、バイデン大統領が学校でのマスク着用義務に抵抗する州に対して、法的措置を検討するよう教育省に要請したことが明らかになっている。

英米を見ると、学校内での感染対策は二極化している。日本でも、文部科学省が全国の幼稚園や小中学校に抗原検査キットを配布する方針を明らかにしたが、今後は英米の学校における対策事例が参考になるかもしれない。

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同じアングロサクソンでも、風評や感情に揺れる米国と人権とエビデンスを大事にする英国では国家が誘導する感染対策でもこんなに違うのかと思いました。この記事内容が事実なら、まともに読めば英国が正しいということになります。学校が「感染のハブ」かどうかを確認するために「隔離型」と「検査型」を感染拡大期にすぐに調査する等、行政のエビデンスベースの素早い動きには感心します。いつまでたっても、感染者数と重症者数の発表だけで、エビデンス調査をしようとしない日本とはえらい違いです。

翻って米国CDCは政府と独立して機能する専門集団ですが、この権威のあるセンターが全員がマスクをすることを推奨しています。ただ、今回のCDC推奨の科学的な根拠は英国のようには明確に示されておらず、政治力が働いている印象がぬぐえません。確固たる根拠がないのに、マスク拒否者を法的に強制するコメントを大統領が出すなど、冷静な判断とは思えないです。感染拡大はマスク拒否が原因とマスク拒否者をスケープゴートにして、政権批判をかわす為に、世論を誘導しているようにしか見えません。

我が国でも、GOTOやら飲食店やら、オリパラを何の科学的な根拠もなくスケープゴートにして、政争の具にしています。真面目な日本人は、誰が勧めたわけでもないのに、いつのまにか熱中症のリスクまで冒して戸外でマスクをつけています。それに乗っかって厚労省の感染予防リーフには戸外でも2mの距離が取れないならマスクをしなければならないかのように推奨しています。

日本人はそれに従って真面目に戸外でマスクを装着し、飲食店を閉め、盛場での飲酒まで控えてきました。感染拡大が収まらない事実を目の前にしても、同じことを続けて平気というのは、お人好しならばまだいいのですが、全体主義を受け入れやすい性質が日本人にあるのではないかと心配になります。科学や学問を尊ぶ学校教育の場で、科学的根拠を示した予防策が先進国日本として展開されることを願わずにはいられません。

山口、世界新で金メダル 涙の母「人生最高の日」

東京パラ競泳男子100平
山口、世界新で金メダル 涙の母「人生最高の日」

2021年8月30日【愛媛新聞】

「すごい、やった」―。29日の東京パラリンピック男子100メートル平泳ぎ(知的障害)決勝。今治市の山口尚秀(20)が世界新で金メダルを決めた瞬間、同市南大門町2丁目の四国ガス本社で社員ら約30人と中継を見守っていた母由美さん(52)は、手に持つバルーンをちぎれんばかりに振った。そばには、山口を水泳好きにさせてくれた祖父母の写真。お祭り騒ぎの中「人生最高の日」と流れる涙を抑えられなかった。

由美さんによると、山口選手は3歳で知的障害を伴う自閉症と診断され、祖父母と温水プールに歩行浴に行くうちに水泳が大好きになった。トップ選手と泳ぐようになり「障害があっても勇気や希望を人々に届けられる」と実感。四国ガスでガスメーターの管理業務に携わる傍ら、週5日の練習に励んできた。

決勝は圧巻だった。最後までリードを守り、5月に出した世界記録1分4秒00を0秒23縮めてゴール。目に涙をため祈っていた父峰松さん(55)は相好を崩し「うれしいの一言。苦しい練習にめげず、よく頑張った」。姉智子さん(24)は「弟が必死で頑張る姿を見て励まされた。姉でいられて本当に幸せ」と赤くした目で話した。

四国ガスの片山泰志社長も「大変な誇り」。上司の片上幹雄今治支店長も「真面目で丁寧な仕事ぶりの一方、泳ぎはダイナミックで別人のよう」とたたえた。

「尚秀は予定通りにいかないとパニックになる傾向がある。大会延期や練習中止に加え、大きな期待はかなりの重圧だったはず」と由美さん。山口は笑顔を2年間見せなかったという。10日に無言で握手して送り出した息子の快挙に「まっすぐ突き進んで勝った。人生を明るく楽しく送ろうと教えてくれた」と感激する。

「尚秀」は、生まれた2000年のシドニー五輪女子マラソン金メダリスト高橋尚子さんと、プロ野球の松井秀喜さんから名付けたと明かし「ふかふかの布団と好物の焼き肉を用意して待つ」と一日も早い帰郷を待望。「周囲に感謝し、人間としても成長し続けてほしい」と願った。

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パラリンピックの表彰式の映像はオリンピック以上に泣けてしまいます。というか、パラの場合ずっと泣いています。ボッチャの杉村英孝選手や水泳の鈴木孝幸選手の金メダル、車いすラグビーの銅メダル。表彰式だけでなく、水泳の東海林大選手が泳いでいる姿だけで泣けてしまい、テレビの前のティッシュペーパーが足りません。

泣けてしまう背景は、障害を乗り越えた人生、さらにアスリートとして世界の壁を乗り越えていく姿に感動することもあるのですが、やはり家族の苦労を思うから泣けるのだと思います。山口選手も東海林選手も知的障害のある自閉症です。二人とも20代ですから、20年前の日本の自閉症支援はというと、絵カードなんて社会には用意されてないから学校で教えても意味がないと言われた事を思い出します。自閉症児がわがままなのは親のせいだと平気で言う人がまだこの業界にいたころです。

家族は心無い人たちの言葉や後ろ指にどれだけ傷ついたか知れません。感動するのは山口選手を水泳好きにさせてくれたのは祖父母だと言う話です。平成の時代でも、祖父母が自分の家系には障害者はいないと、支援学級や支援学校に行くことに反対されているという母親の話をたくさん聞いてきました。

山口選手の祖父母は、水が好きならと孫と歩行浴に通い水に親しませてくれたのです。祖父母が子育てに協力してくれることでどれだけ家族は心強かったことかと思います。山口選手が水泳競技に取り組んだのは高校からですが、この祖父母のサポートがなければ今の彼はいないと思います。パラリンピックで家族の話を聞いていると、我が国の障害者の理解の歩みと、それを推し進めてきた人々の熱い思いを感じます。このコメントを書いているだけで、胸が熱くなって、また泣いてしまいそうなのでこの辺にしておきます。

9月1日、4300人超が「休み」 3割は「感染が不安」

2学期初日の9月1日、4300人超が「休み」 3割は「感染が不安」を理由に新型コロナ・鹿児島

2021/09/04 【南日本新聞】

新型コロナウイルスの子どもへの感染が拡大する中、鹿児島県内の多くの学校で2学期の始業式があった1日に少なくとも4300人以上の児童生徒が学校を休んだことが3日、南日本新聞の調べで分かった。「まん延防止等重点措置」が適用されている鹿児島市の市立校の児童生徒は前年比の約2倍に当たる2266人が休んだ。そのうち約3割の671人が「感染への不安」を理由に挙げた。

臨時休校中の薩摩川内市を除く42市町村教委に調査。回答した35市町村の市町村立の学校で、少なくとも4345人が休んでいた。県教委は「県立校のデータは未集計」と答えた。

鹿児島市教委によると1日、小学校で1256人(前年比906人増)、中学校で962人(前年比254人増)、高校で48人(前年比9人増)が休んだ。全児童生徒の4.4%に上った。「感染への不安」から休んだのは1.3%で、小学生が567人で大半を占めた。

そのほか鹿屋市で休んだ児童生徒は496人、霧島市302人(出席停止を除く)など。昨年9月1日と比べて2倍以上になったのは12自治体で、9倍になった自治体もあった。

児童生徒が学校を休む場合、「欠席」と「出席停止」の区分がある。鹿児島市などの多くの学校が(1)ワクチンの副反応がある(2)風邪症状がある-といった場合は「出席停止」で、「感染への不安」を理由とする場合も「欠席」とせず「出席停止」としている。

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以前にも鹿児島の感染がらみの記事を掲載しました(感染情報、身内にも秘密に 鹿児島市教委が口止め: 01/29)。なるほど、情報を公開したら混乱するという前回の鹿児島市教委の思惑は当たっていたとも言えます。まさに大混乱です。昨日の時点での陽性率は、全国平均で1.2%、トップの東京で2.5%、鹿児島は0.5%です。東京の5分の1、全国の半分未満で、鹿児島市の子どもは陽性になって学校を休む推定値の2~4倍以上(子どもの陽性率は低い)の子が、感染恐怖から休んでいることになります。

感染報道は都市部のものが地方局にダイレクトに流されることと、実際には感染者の実態を目にしたことがないので余計に恐怖感を抱いてしまうと言う理由から、学校は感染するところ通学路はウィルスが飛び交っていると子どもがイメージしても不思議ではありません。都市部であれば実際に身の回りに感染した子の様子がリアルに伝わってくるので、普通はそれほど恐れるものではないことが分かるのです。

メディアから流されてくる感染者の情報は重症化したかその一歩前まで進行した人の体験談ばかりですから、怖がるのは無理もないのです。テレビは子どもも見るのですから、もう少し実態に合わせた報道はできないものかと思います。とはいっても、テレビは見てもらってなんぼですから、テレビは怖さを煽るお化け屋敷みたいなもんだと子どもに言って聞かせるべきかもしれません。そして、正しい情報を大人が学んでおく事が一番大事です。小児科学会資料.pdf

辞退者が続出した学校連携観戦現場は苦悶

辞退者が続出した学校連携観戦現場は苦悶「イメージで批判」の声も

2021年9月5日 【朝日新聞】

5日に閉幕する東京パラリンピック。新型コロナの感染急拡大で、一般客の観戦は断念したのに実施に踏み切った学校連携観戦プログラムには「矛盾している」「感染のリスクがある」「テレビ観戦でも学べる」などと批判が集中した。

対象は競技会場がある1都3県の小中学生ら。国や都などは開幕約1週間前の8月16日に希望者の受け入れを決めた。

都では、都教育委員会臨時会で教育委員5人中4人が反対を表明。江東区や港区なども中止に転じ、参加を決めた自治体でも辞退者が続出した。開幕日の24日時点の観戦予定者数は約2万4千人だったが、組織委によると、5日までの入場者数は約1万2千人にとどまった。

参加を決めた区市の学校も、希望者の把握や事前のPCR検査など対応に追われた。

千葉県では7市町207校の約2万6千人が観戦を予定していたが、8月29日に観戦を引率した教員2人の感染が明らかになったことで、熊谷俊人知事は「保護者の不安を払拭(ふっしょく)する(事前のPCR検査などの)施策の実施が困難」などとして途中で中止を決めた。県によると、観戦者は同30日までに6市町92校の計3292人だった。

国や都が実施にこだわったのは、多様性や共生社会の大切さを知る教育効果が高いと考えたからだ。

都教委によると、参加者からは「障害を乗り越えてパラの舞台で活躍する姿に感動した」「ボランティアやコーチを見て、支え合う大切さを感じた」「人生に一度だと思う東京でのパラリンピックを観戦できてよかった」などの感想が寄せられた。担当者は「共助の意識につながる感想を持ってくれた」と手応えを語る。

選手からも「子どもたちの応援がうれしかった」「(感染対策で)声は出せないが、応援する心は十分に伝わってきた」と一様に喜びの声が上がった。

参加したある学校長は相次いだ批判について、「PCR検査を受け、定員の半分以下でバスを利用し、競技会場もほぼ貸し切り。正直、普段の学校生活よりも感染リスクは低いと思う。イメージで『感染を広めるのか』と批判されているようだった」と振り返る。

別の校長は「様々な考えがあることは承知しているが、数年来行ってきたオリパラ教育の集大成。子どもの学びを止めないことを大切にした」と話した。(荻原千明、真田香菜子)

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オリパラで感染が広まる不安を煽ったのはメディアです。学校観戦に一貫して不安をあおったのは朝日新聞をはじめとしたメディアでした。そんな中でも千葉県知事などは一貫して「会場も移動過程も部外者と接触しないなら学校環境下の授業と変わりはない」として、子どもたちにオリパラから学んでほしいと推進してきましたが、観戦者の中の教員と児童に、数名陽性者が出た時点で、不安を払しょくできないとして中止したのです。

結局、パラリンピックを参観した児童は1万5千人程度でした。ただ、朝日新聞の記事だからと言うわけではありませんが、パラリンピックの前に開催された夏の甲子園は1試合4000人で1日5試合程度ですから2万人。15日間で30万人が観戦したのです。もちろんこの中には陽性が判明して涙をのんだ不戦敗高校もありましたが、観戦は中止されません。どのメディアも陽性者が出てけしからんなどとは書き立てずスルーしているのです。陽性率は現在全国平均で1.2%です。観戦者は3000人以上に陽性反応が出るはずですから、陽性者がでないはずがありません。メディアが取材をしなかっただけのことです。

プロ野球も同じです。オリパラのない毎日、1試合5000人の観客が6試合3万人近くが観戦するのです。メディアのスポンサー企業が関わる試合開催には何も言わず、TV中継さえすれば損害の出ないオリパラ観戦には執拗に感染不安を煽っているのは、2枚舌メディア、Wスタンダード(二つの基準をもって自分の都合で使い分ける)と言われても仕方ないです。オリパラはテレビ観戦で十分と言う方もいますが、勝ち負けだけではないのです。それを支えている関係者やボランティアの様子を目にするだけでも教育効果は全く違います。「正直、普段の学校生活よりも感染リスクは低い」と校長先生、オリパラが始まる前に言って欲しかったです。

閉会式は素晴らしい演出でした。そして何より衝撃的なのはフランスパリの観客の映像でした。「手のパフォーマンス」こそ室内でのオールマスクでしたがパリ市街でウェルカムイベントをしている主催者も観客もノーマスクです。密密の野外会場にマスク者を見つけるのに一苦労するくらいノーマスクの大歓声状況です。日本のメディアはパリ五輪委員会やフランス政府をどう描くのでしょう。今のところ二枚舌メディアはこれもスルーしています。

 

 

精神科医が教える「対人関係のしんどさ」を減らすコツ

【発達障害を専門とする日本屈指のスペシャリスト!】精神科医が教える「対人関係のしんどさ」を減らすコツ

9/7(火) 【ダイヤモンド・オンライン】

仕事、人間関係…周囲に気を使いながらがんばっているのに、なかなかうまくいかず、心をすり減らしている人も多いのではないだろうか。注意しているのに何度も同じミスをしてしまう、上司や同僚といつも折り合いが悪い、片付けが極端に苦手・・・。こうした生きづらさを抱えている人の中には、「能力が劣っているとか、怠けているわけではなく、本人の『特性』が原因の人もいる」と精神科医の本田秀夫氏は語る。

本田氏は1988年に東京大学医学部医学科を卒業。横浜市総合リハビリテーションセンターで20年にわたり発達障害の臨床と研究を重ね、現在は信州大学で臨床・教育・研究に従事している。2019年にはNHK『プロフェッショナル仕事の流儀』に出演して話題になった。
本田氏は、「生きづらさを感じている人は『苦手を克服する』ことよりも、『生きやすくなる方法をとる』ほうが、かえってうまくいくことも多い」と言う。

2021年9月初旬に、本田氏が精神科医として30年以上のキャリアを通して見つめてきた「生きづらい人が自分らしくラクに生きられる方法」についてまとめた書籍、『「しなくていいこと」を決めると、人生が一気にラクになる』が発売となる。今回は特別に本書の中から、対人関係のつらさを減らす方法について、一部内容を抜粋、編集して紹介する。

●「協調性」よりも「ルール」を優先しよう
対人関係には、会話が苦手、挨拶がうまくできない、飲み会がストレスになっている、人の顔色を気にしすぎてしまうなど、さまざまな悩みがあります。対人関係の悩みを解決するためには、「協調性」よりも「ルール」を優先することが大切です。ここでいう「協調性」とは、「相手に合わせて行動しよう」とすることです。協調性は一定ではなく、相手次第で変わるものです。

協調性を意識しすぎると、常に相手の話すことや表情、行動などを気にして、「やりたくないことを相手に合わせて無理してやっている」という状態が長く続き、心が落ち込む原因になります。それに対して「ルール」というのは、一定の決まりごとです。常に一定で、相手によってぶれることがありません。ルールにも社会のルールから家庭のルール、マイルールまでさまざまなものがありますが、大切なのは、社会のルールから大きく逸脱しなければ、自分の生きやすいスタイルを選んでいいということです。

●人の評価を気にしすぎない。受け流すことも大切
対人関係で「しなくていいこと」を手放すには、「人の評価を気にしすぎない」という点も大切になります。対人関係で悩んでいる人は「自分がこういうことをしたら、相手はどう思うだろう」「嫌われるかもしれない」と考えがちです。

そんなときは、「協調性よりもルールを優先」という原則を思い返してみてください。社会のルールを守っていれば、少しくらいやり方を変えたからといって、人に嫌われたり怒られたりすることは、基本的にはありません。もしも、ルールを守っているのにネガティブな反応をする人がいたら、その人とは距離をとったほうがいいというだけのことです。

誰かに合わせるやり方ではなく、社会のルールを守りながら、自分自身に合ったスタイルをつくっていきましょう。そうすることで、対人関係のつらさは軽減していきます。

(本原稿は、本田秀夫著『「しなくていいこと」を決めると、人生が一気にラクになる』より一部抜粋・改変したものです)
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書いてあるのは、いちいちもっともなことですが、発達障害の中でピュアなASDの人では、こういう悩み方をする人は少ないです。本田先生の言われているケースは、うつ病になるメランコリータイプの人に多く、ピュアなASDの方の悩み方ではないように思います。ASDの方はどちらか言うと、協調性を気にせず、周囲の人に不快になるマイルールを押し付けてくるので、周囲が本人と口をきかなくなり、必要な情報が当事者に届かなくなって初めて「ハブられている」ことに当事者が気付き、何故だか意味が分からず悩むというパターンが多いです。

人の評価も、仕事上の特定のスキルの事では気になりますが、職場内で協調性がない自分に気が付く人は少ないです。或いは、当事者は協調性を大事にしているつもりで、誰にでも同じ距離感で接したり、逆に必要以上に距離を取り、誤解される事があります。他者の事がわかっているつもりになり、妙な気遣いをしてしまって迷惑がられることもあります。つまり、「そのマイルールーが周囲には痛い」場合が多いのです。

これは当事者むけの本なので、比率としては一番多いソフトな境界域の発達障害の方の事なのだろうと思います。協調性の必要性を知ってるが故に苦痛、対人上の良い評価を得たい故に苦痛、なのだと思います。もちろん、そういう方には、社会性を逸脱しないマイルールかどうかを、職場の信頼できる人に聞いてみて、それで「まぁ、まぁ」ならあとはマイルールで行動して気にしないというのが大事と言うのは書いてある通りです。発達障害と言っても、最も多い境界域から一番端の方に偏在している少数の人までいろいろなので、どういう人を対象にしているかで、かなり対応が変わってくるので、気になって書きました。

苦行じゃ意味がない 障害児の「療育」はほどほどに

苦行じゃ意味がない 障害児の「療育」はほどほどに 自分らしく、生き生きと暮らす

7/4(日) 【オトナンサー】

「療育」とは、障害のある子どもが社会的に自立できるようになるために行う教育のことです。わが子に発達障害があると分かると、療育を受けさせる親御さんも多いと思います。

しかし、療育を「定型発達児に近づけること」と勘違いし、苦手を克服させようと必死に努力させたり、「やればできる」と過度な期待を抱き、何でも1人でやらせようと試みたりする「熱心な無理解者」と化している親御さんや支援者がいるのも事実です。こうなると、子どものためであるはずの療育が、子ども本人にとっては苦行となってしまいます。

子どものための「療育」
療育は子どもが日常生活を送りやすくするために、こだわりの緩め方を学んだり、コミュニケーションの取り方を学習したりする場です。「一つでも、普通の子と同じことができるように」と定型発達児に近づけようとすればするほど、本人の自己肯定感を下げるだけになってしまいます。もし、そうなってしまったら、「やらない方がよかった」ということにもなりかねません。

一方で、親にとって、療育はどのような意味があるでしょうか。それは、周りが定型発達児の親ばかりで孤立無援の状態だったところから、同じ障害を持つ子を育てる保護者との交流が持て、居場所が見つかることです。また、療育の様子を見学して、親が支援の仕方を学ぶことができるなどのメリットもあります。ただし、周りのママ友が熱心すぎて“才能の温泉掘り”に必死になっていたり、「熱心な無理解者」の支援者がいたりしたら、その人は良い手本ではないので気を付けなくてはなりません。

音が怖いなら…
私の息子は知覚障害のある自閉症児です。聴覚過敏のある息子は幼児期、公衆トイレのハンドドライヤーの音を怖がっていたため、外出先でトイレに行けませんでした。そのため、療育施設ではこれに慣れるための訓練を受けていました。

実際、ハンドドライヤーを怖がる自閉症の子は多いようで、ママ友の中には「家庭での練習も必要だ」と思い、自宅のトイレにハンドドライヤーを設置し、親が“療育の先生”となって練習をしている人もいました。しかし、これでは子どもにとって、家が“恐怖の館”になってしまいます。

息子が次第に療育を拒むようになってしまった中、当時通っていた児童専門の精神科の主治医に、ハンドドライヤーを使う練習をしていることを伝えました。すると、「そんなことをしていると将来、2次障害を起こして入院することになりますよ。そんな練習は今すぐやめなさい。お母さんがハンドドライヤーのないトイレを探してあげて、そこを使えば済むことです」と叱られたのです。

さらに「障害児なんだから、堂々と多目的トイレを使えばいいんです。そこだったら、急に誰かが入ってきて、ハンドドライヤーを使うことはないでしょう。息子さんも安心してトイレが使えるはずです」と言われました。実際、この病院には、親がわが子を思って、「定型発達児と同じことができるように」と引っ張り回した結果、うつの発症やリストカットなどの深刻な2次障害を起こしている子どもが多く入院していました。

私は主治医に言われた通り、ハンドドライヤーがない公衆トイレを探して使うようにしました。駅やデパート、ファミリーレストランなど、外出時に利用する機会が多い場所のトイレはハンドドライヤーの有無、設置個数について特によく調べました。

やがて、外出時はいつも、トイレを我慢している様子だった息子が、私と一緒のときは公衆トイレに入れるようになったのです。中学生の頃、ボウリング場に行ったときには、かつて、あんなに怖がっていたハンドドライヤーをうれしそうな顔をして使っていました。

なぜ、息子は苦手だったハンドドライヤーを怖がらなくなったのか。それは主治医の助言以降、安心・安全を確保した状態でトイレを利用できるようにしたから、そして、息子自身が14年という人生経験を積み、3歳の頃と違って苦手なものにも挑戦できるようになったからだと思います。

息子にとって、いつしか、トイレは恐怖の場所ではなく、「こだわりの場所」になっていったようで、公衆トイレは今や、息子が一番好きなものになりました。特に便座のメーカーや型番をチェックするのが大好きで、文字を書くのも絵を描くのもトイレのことばかり。外出先でトイレを見つけると吸い込まれるように入っていきます。

成人した息子を見てしみじみと思うのは、幼い頃に「この世界は怖くない。安心、安全だ」「先生や親は自分を脅かす存在ではない」「大人は自分を守ってくれる人間だ」ということを体験させれば、子ども本人の力で自然に乗り越えられるようになるということです。世の中は定型発達の人が生活しやすいようにできています。そのため、社会になじめるように練習していく必要はあります。しかし、それが行き過ぎるとデメリットもあると私は思うのです。

障害のある子どもは定型発達の子どもと同じやり方では学びづらいです。療育とは、その子に合ったやり方でできることを増やし、自分らしく、生き生きと暮らせるようになるために行うものです。何のための療育なのか。誰のための療育なのか。「療育はほどほどに」という考え方も大切にしたいものですね。

子育て本著者・講演家 立石美津子
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掃除機の音が怖い自閉症児の事を思い出しました。小1のA君は体育館に入れず、誘導すると逃げ出したり泣きだしたり、誘導する大人を激しく蹴りに来たりするのでした。聴覚過敏のASD児が多いことは知っていたので、体育館の反響音とか喧騒が怖いのだろうと、無理強いはせずに声かけはしますが入場は本人の主体性を尊重していました。。その後に、T君の就学前通所施設(今の児童発達支援事業にあたる)の話を聞いて、原因が分かりました。

確かにT君は聴覚過敏で、園児が集まるプレイルームの喧噪が嫌で入れなかったそうです。ところが、それではT君が集団性を学べないと言う理由で、プレイルームに入れるために、T君が嫌いな掃除機でプレイルームの入り口のT君を追い立てて入れていたと言うのです。掃除機音に追い立てられるわ怖いプレイルームに入れられるわで、T君がPTSDを抱えてしまったと言うわけです。

小さい子は、力が弱いですから、大人の強制力で簡単に屈服させられます。しかし、やがて身体が大きくなり幼少の期のトラウマを抱えたままの場合は、衝動的に暴れたり暴力をふるったりするようになることがあります。言語発達に遅れがある場合は、恐怖の原因を大人に語る事すらできません。こうして、発達障害とは何の関係もない行動障害を抱えることになります。無論、当時の大人はそんな事を知るすべもなく「集団性」を優先したのです。ASDの事を知らない事業所に療育を受けに行ったばかりに、PTSDを負わせてしまったのです。

熱心な療育が間違っているのではなく、障害特性も良く把握しないまま、「慣らそう」としたり「できるように」しようとするのは療育ではありません。ただの、お節介で迷惑行為なのです。他にも、思春期に荒れるのは、受動型のASDで絵カード支援をした子どもに多い等というデマ説がありますが、これは、理解コミュニケーションばかり教えて、表出コミュニケーションや交渉を教えなかった結果です。療育者が、コミュニケーション支援を正確に学ばずに、絵カード支援を見よう見まねで「熱心」に実施した結果です。私たちが絵カード支援で、安くはないPECSマニュアルの熟読を勧め、高額だけど支援者トレーニングを受けて欲しいと言うのはこういう理由があるのです。

しかし、療育技術はその時代の限界性はあるとは言え、支援者が子どもと養育者をリスペクトして、子どもの発達や障害特性に支援者がアンテナを張っていれば、効果的な療育が見つからない場合はあっても、間違った療育を強いることはないと思います。それを筆者は「ほどほどの支援」と呼んでいるのかも知れません。

 

 

出場逃したアスリートは東京パラをどう見たか

「感動ポルノと違った」出場逃したアスリートは東京パラをどう見たか

9/9(木) 【朝日新聞】

スポーツの奥深さを見る者に感じさせてくれた東京パラリンピック。その舞台にわずか「1センチ」の差でたどり着けなかった選手がいる。2016年リオデジャネイロ大会の陸上男子400メートルリレー銅メダリストで、前回12位に終わった走り幅跳び(上肢障害T47)への出場を目指した芦田創(はじむ)(27)。彼の目に東京大会はどう映ったのか。閉幕の日、記者が話を聞いた。

■あと「1センチ」で逃した出場
――代表選考期間に残した記録は6メートル87。内定の条件となる期間中の世界ランキング6位まで、1センチ足りませんでした。

「パラリンピックに選手として出られなかったことが、やっぱり、めちゃくちゃ悔しくて……。これは一生、悔いとして残るんだろうなと思います」

――自分がいない大会を、どんな気持ちで見ていましたか。

「意外と、客観的に見ることができた。純粋に競技として『面白いな』と思う部分だったり、種目によっては『まだまだ、これからレベルが上がっていくんだろうな』という部分だったり、すごく考えさせられながら向き合ったパラリンピックでした」

――これまでの大会との違いを感じましたか。

「パラアスリートを障害者としてではなく、よりアスリートとして評価する時代になってきたんだなと感じました。メディアの報じ方に、その傾向が表れていた。きっとメディアの方々も、議論を重ね、勉強を重ね、どう報道するか、すごく考えてこられたのでしょう」

■「感動ポルノ」とは違う報道
――パラアスリートとして、その変化をどう思いますか。

「純粋なスポーツ報道になっていて、感動を誘う題材として障害者を描く『感動ポルノ』とは全く違った。それはすごいことだなと。パラアスリートがアスリートとして評価されることで、本当の意味で社会って良くなっていくというのが私の意見です」

――競技レベルの高まりが続くパラスポーツには、どんな未来が待っているでしょうか。

「もっとハイパフォーマンスが生まれるスポーツになるためには、ある種のヤジやバッシングが飛ぶくらいでないと。例えば『この障害だったら、もっとやれるんじゃないの?』といった観客の声が出始めたら、本当の意味でスポーツとして確立されるというのが私の感覚。何大会か後のパラリンピックには、そんな世界観が現れると思っています」

――出場を目指した走り幅跳び(上肢障害T47)も、メダルラインは5年前から23センチ伸び、7メートル34になりました。

「正直なところ、出ていても勝負にならなかった。8番(記録は6メートル89)以内には入れたとしても、メダルを狙うには厳しかった。それくらいレベルが上がっています。これから3年後のパリ大会を目指す上で、相当な覚悟を持ってトレーニングに励まないと。競技全体のレベルアップに貢献できる選手になれるよう、頑張るつもりです」(聞き手・松本龍三郎)

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パラリンピックの走り幅跳びは凄いです。両足義足のヌタンド・マラング選手(南アフリカ)は7.17mも跳びました。オリンピックはミルティアディス・テントグルー(ギリシャ)が8.41mですからまだ差はありますが、小学6年生でよく跳んで4m位ですから倍近くを跳んでいく義足のパラ選手はまさに超人です。

パラリンピックの学校観戦については、当初想定した2割も観戦できず大事な教育機会を逃したと思います。オリンピックには見向きもしない小さな子どもでも、手足がない人や目が見えない人が走ったり泳いだりしている姿は注目して見るものです。そして、誰かが障害についてあれこれ説明しなくても、障害のある人が凄い記録を出している姿には多くの子どもが驚き、感動をします。

子どもにとっては、感動ポルノの演出は必要ありません。見たまま、そのままで十分です。ただ、知的障害の競技でのハンディーキャップは分かりにくいかも知れません。それでもダウン症の人が楽しそうに踊っている閉会式はきっと伝わるものがあると思います。そして、こうした取り組みが4年に一度ではなく日常的に積み重ねていけるなら、芦田選手のいう「もっと頑張れ!」という檄が飛ぶパラの世界がやってくるのだろうと思います。

ラグビーの聖地「花園」で育む東京パラのレガシー

ラグビーの聖地「花園」で育む東京パラのレガシー

2021/9/10 【産経WEST】

障害者アスリートたちが無限の可能性を世界中に発信した東京パラリンピック。東京五輪からのテーマである多様性を認め合う社会の実現へ、いち早く取り組んでいるのがラグビーの聖地「花園」で知られる大阪府東大阪市だ。国内初の車いす専用の屋外スポーツ施設が今年2月、花園ラグビー場の隣にオープン。障害者と健常者がともに同じコートで汗を流す。五輪・パラの熱狂を一時のものに終わらせず、レガシー(遺産)として未来へつなぐ。

「(車いすを)こいで! こいで!」
「ナイスキャッチ!」
東京五輪開幕翌日の7月24日。ラグビー場のある花園中央公園内の「市立ウィルチェアスポーツコート」で、車いすソフトボールの体験会が開かれた。同地で合宿中の車いすソフトボール日本代表が企画し、健常者も参加。車いすに乗ってボールを追う姿に、選手から檄(げき)とエールが飛んだ。

ウィルチェアは、車いすの英訳。コートには「ハ」の字形の車輪が付いた競技用車いすが22台備えられ、誰でも使える。

「障害者の方だけが集い、使う施設では時代に合わないのではないか、という考えがありました」。コートの整備に携わった東大阪市都市魅力産業スポーツ部長の栗橋秀樹さん(59)は施設の意義をこう語った。

栗橋さんによると、コートの完成まで東大阪市は2つの「宿題」を抱えていたという。
1つは、約1・5キロ南東にあった「ウィルチェアースポーツ広場」。市内に拠点を置く車いすソフトボールチーム「関西アンバランス」から練習場所の確保が難しいとの相談を受け、平成29年に開設された。

スポーツ広場といっても、大阪広域水道企業団ポンプ場の駐車場の空きスペース。水道施設内で、障害者が使える多目的トイレは新設できない。近くのコンビニが協力に応じてくれたが、栗橋さんは「選手たちも気を使い、トイレを借りるときは買い物をしていくようなこともあった」と明かす。練習はできたが、トイレはネックだった。

もう1つの宿題が「聖地・花園」のあり方だ。2019年のラグビーW杯の会場に選ばれた際、会場の整備費用の協力を求めて企業回りをする中で、栗橋さんは義肢メーカーの社長からこう問われた。

「聖地という言葉の意味は分かっていますか」

栗橋さんは「恥ずかしい話、衝撃を受けました。車いすラグビーもあるわけです。市長とも、誰でもスポーツを楽しめる場所にしなければという話になった」。日本に前例のない、車いすスポーツ専用のコート造りが動き出した。

花園に障害者用施設を造るのではなく、障害者も使える花園に-。その思いを、関西アンバランスのメンバーで日本代表の赤井正尚さん(46)は、コートのすぐ横に造られた駐車場から感じた。

「花園のような大きな施設は広い駐車場も多いが、車いすを使う人にとっては試合や練習会場まで荷物を運ぶのに苦労するんです」と話し、駐車場の場所まで配慮された点を評価する。

赤井さんは「スポーツでは障害者と健常者で注目度の差がある」と指摘し、「身近に障害者スポーツを見る機会はなかなかない。花園でやっているといえばみんな場所が分かるし、障害者スポーツを見てもらえるかもしれない。花園にあるというのがいいんです」

7月24日の車いすソフトボールの体験会には、足を止めて様子をながめる散歩やジョギング中の人がいた。障害者スポーツが日常の景色に溶け込む姿に、栗橋さんは「スポーツはみんな好きですから」と笑顔を見せ、「車いすソフトの日本一を決める大会をここでやれたらいいですね」と語った。(渡部圭介)

※東大阪市立ウィルチェアスポーツコート
2月にオープンした広さ約4500平方メートルの競技場で、多目的トイレと電動ベッドもある救護棟が設けられた。テニスコートなどで使われるものと同じ素材を使用し、地面からの反射熱を和らげるための塗装が施されている。車いすソフトボールのほか、パラリンピック種目のラグビーやバスケットボール、ボッチャなどのラインが引いてあるが、テニスなど健常者の利用も可能。1時間千円。

※車いす=wheelchair=ウィルチェア 車輪=wheel ホイールは日本語発音

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スポーツ苦手な子どもが心置きなく使えるコートも欲しいです。発達障害の子どもの場合、発達性協調運動障害(Developmental Coordination Disorder =DCD)といって不器用な子が多くて、学校でも地域でもスポーツの楽しさを味わう事ができません。上手な子の中に入っていてもパスも回ってこないし、お地蔵さん状態でいても何も楽しくないので、「スポーツ嫌い!」な子はとても多いです。上手な子にしてみれば、敵味方間違えてパスしたりする子にはゲームがしらけるのでパスを回しません。そういうことで、ただでさえ少ないゲームコートから障害のある子は追い出されてしまいます。

もっとたくさんコートがあれば、下手な人でもスポーツが楽しめるのにと思います。有料道路や鉄道の高架下にはたくさんの空き地があります。所有権は各会社にありますが、自治体は管理することを条件に無料で借りる事ができます。ところが、コロナ禍ではせっかく障害者用トイレまで作った公園でも、感染予防に責任が持てないと閉鎖してしまうのです。高架下に発達障害の子どもが遠慮なく使えるスポーツコートが欲しいです。ついでに、発達障害のある子にスポーツの楽しさを教えてくれる、様々なスポーツコーチも地域で養成してほしいと思います。

例えば、高架下の障害者用のコートとトイレ、駐車場(車いすが使える仕様)は行政が作るが、その管理はNPO団体等を作って、利用団体が管理費を出し合う形で任せるなどやり方は色々あると思うのです。ぺんぺん草が生え、フェンスで囲まれた高架下空き地を、指をくわえて見ているスポーツ愛好家や子どもの支援者は少なくないと思います。障害のある人もない人もスポーツが楽しめるように、高架下の空き地全面有効利用の政策を掲げて立候補する政治家が出てこないものでしょうか。

 

障害児手当 地域差なくし公平な運用を図れ

障害児手当 地域差なくし公平な運用を図れ

2021年9月14日(火)【愛媛新聞】

20歳未満の障害児のいる家庭に支給される国の「特別児童扶養手当」で、人口当たりの支給対象児童数や申請件数に自治体間で最大約5倍もの差があることが分かった。

国の制度であるにもかかわらず、住んでいる地域によって支給状況が異なることは不公平と言わざるを得ない。申請基準が曖昧な上、判定医の裁量で可否が左右されることが指摘されている。長年自治体任せにしてきた国の責任は重い。早急に現状を把握し、基準の明確化や判定方法の見直しなど制度の適正な運用を図らねばならない。

手当は障害児を育てる経済的な負担を補うことを目的とし、保護者の申請に基づいて都道府県と政令指定都市の判定医が審査する。2021年度の支給額は1級で月5万2500円、2級で3万4970円。全国で約24万人が受給している。

厚生労働省の19年度統計データを共同通信が分析したところ1万人当たりの対象児童は全国平均で121人。最も多い沖縄県の269人と、53人と最少の東京都で5・1倍の差。申請件数でも1万人当たり40件の大阪市と8件の東京都で5倍の開きがあった。愛媛県は対象児童152人、申請件数18件だった。

特に問題なのが障害が軽度の場合だ。申請を受け付けるかどうか自治体によって線引きが異なる。

知的障害の療育手帳で最も軽い第4段階の児童について、東京都は支給対象の目安に含めていない。そのため申請すらできない状態だ。一方、沖縄県は第4段階でも対象外とはしておらず、実際に支給されている例もあるという。所得制限があるため一概に比較はできないが、対象児童数や申請件数の少ない自治体では多くの軽度障害児が門前払いされているとみられる。

申請しても「障害が基準より軽い」として却下される件数も増加傾向にあり、10年前の3倍近くに上る。発達障害の認知度が高まり申請件数が増えていることが背景にあるものの、却下率に自治体間で大きな差が出ていることは見過ごせない。

そもそも国の基準自体が曖昧だ。例えば自閉症など発達障害の2級は「社会性やコミュニケーション能力が乏しく、不適応な行動が見られるため、日常生活への適応に援助が必要」と示すだけである。

各自治体では診断書などの書類を見て支給の可否や等級を審査するが、判定医1人が担うため個人差が出るのは否定できまい。検査数値や外形で分かりやすい身体障害に比べ、発達・知的障害は判断が難しいはずだ。専門医や生活状況を知る福祉職らを加えて複数で審査するなど判定方法の見直しを求めたい。

共生社会がうたわれる中、どこに住んでいても障害児の子育てを安心してできる環境が欠かせない。対象児童を取りこぼすことのないよう制度を整え、自治体や関係機関に周知を徹底することは国の責務である。


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障害児手当、不支給が大幅増 10年で3倍近く、6割却下も

8/29(日) 【共同通信】

障害児のいる家庭に支給される国の「特別児童扶養手当」で、自治体に申請しても「障害が基準より軽い」として却下される件数が2019年度までの10年間で3倍近く増えていたことが29日、国の統計データから分かった。

申請の6割超を却下している自治体もあった。自治体の判定医の審査が厳しくなっている可能性がある。審査基準が曖昧で、判定医の個人差で左右されかねないとして、障害者団体からは基準の明確化や審査方法の見直しを求める声が上がっている。

厚生労働省の統計「福祉行政報告例」によると、09年度の却下件数は1410件だったが、19年度は3950件と2.8倍に増加した。


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これまで、親のしつけや家庭環境が原因とされていた子どもが、そうではなく生まれつきの発達障害が原因と発達障害支援法に認められて15年が経過しています。新たに障害と認められたのですから、当然、障害者手帳の発行数も特別扶養手当の支給額も膨らんで当たり前です。申請の6割を却下しているとは常識はずれの驚くべき事です。判定医の審査が厳しいとか厳しくないとか言いますが何が基準なのかわかりません。審査と言っても医学診断が基本ですから、5倍も差が出るものはそもそも診断とは言えません。個人的にせよ組織的にせよ基準や根拠のないバイアスが働いて不公平が日常的に生じているという事です。

確かに、どんな症状にもグレーゾーンは存在しますし、実はこのゾーンの人が一番多いとも言えます。だからこそ新しい障害基準ICFは社会参加の状態で支援の内容を考えるべきだと示唆しています。例え障害の程度は軽微でも、自尊感情が低く不登校傾向が見えるなら質的に高度な支援が必要です。障害が比較的重くても、周囲の理解があり意欲的に社会参加ができているなら最低限の支援で良いのです。

社会参加に支障がないのに、親が好んで子どもの障害を認めたいはずがありません。必要だから求めているのです。2級で月額3万4970円、500万円の年収の日給換算をすれば2日程度の賃金です。他の親より月2労働日程多く支援するだけの給付なのに、半分以上の申請を、この子は該当しないと却下する担当者の顔を、一度見てみたいです。

ただ、わかりやすい基準、ガイドラインを明らかにしない政府にも問題はあります。教育・福祉・医療の少なくとも2分野で特別支援や発達障害支援を日常的に受けている事、というような条件提示で2級判定は十分だと思います。診察に付き添ったり、事業所に出向いたり、相談に行けば月2日などあっという間に無くなります。そういう現実を知らない担当医や担当行政官が、勝手な思い込み(主観)で却下しているなら権力の濫用と言われても仕方ないです。

それにしても、京都府の説明は不親切です。同じ京都でも京都市は分かりやすく自閉症の適用を説明し、神奈川県はさらに丁寧です。これも、自治体格差なのです。役人はどんな説明しようが、それも自治体の権限だとはさすがに言わないでしょうが、毎年、ちっとも変わらない分かりにくいパンフを作っている自治体があるとすれば、やる気がないと言われても仕方がありません。

「いじめ自殺」学校配布タブレットの管理は

「いじめ自殺」学校配布タブレットの管理は

9/15(水) 【日テレ】

東京・町田市で小学6年生の女子児童が自殺した問題で、14日も調査が行われましたが、いじめの舞台になったと指摘されているのが、授業で使うため1人1台配布されているタブレットです。その管理の仕方に問題がありました。

小野高弘・日本テレビ解説委員国際部デスク
「去年11月、女子児童は自分の部屋で自殺しました。残された遺書には、いじめの内容と複数の同級生の名前を挙げて、『おもちゃじゃない』と訴えました。何があったのか、わかってきました。児童らは、学校から配布された1人1台のタブレットでチャットを利用していましたが、そこで女子児童について『うざい』『死んで』といった悪口が書き込まれていました」

「今回明らかになったのは、そのタブレットのアカウント管理がずさんだったということです。ログインするのにIDとパスワードが必要ですが、IDは出席番号を基本としたものでした。パスワードは全員が同じ『123456789』にしていた期間がありました。自殺があった当時含めて1年間、そうだった可能性があります」

日本テレビ・佐藤梨那アナウンサー
「出席番号は、同じクラスならみんなすぐにわかりますよね」

小野解説委員
「それにパスワードは、先ほどの数字を入れればいいので、他の人になりすましてログインができるということです。文科省は、IDは個々のものを作ってなりすましができないように、と指針を出していましたが、この学校の対応は不適切だったと言わざるを得ません」

「その結果どういう状況が生まれたかといいますと、例えば2人の児童の間で、チャット上で『○○がうざい』とやりとりしたとしても、この2人のIDとパスワードは誰でもわかるわけですから、事実上、クラスの誰でも見られる状態でした。悪口を言われた本人も、このやりとりを見られるわけです。学校でも家でもアクセスできる限り、悪口を目にし続けることになります」

佐藤アナウンサー
「いま、タブレットを使って授業を行っている学校も、多いと思います」

落合陽一・筑波大学准教授(「news zero」パートナー)
「学習のために特化したタブレットであれば、個人情報をその中に保存するわけではないので、パスワードが共通でも、運用上はそんなに問題ないのではと思います。なりすましについては、端末のIDは残るので、追跡はできるはずだと思います。これはデバイスや管理の問題というよりは、デジタル、非デジタル関係なく、いじめがオンライン上で行われても、フィジカルで行われても『先生に言うように』など、いじめを把握して対策する声掛けというのが必要だったことなのではないかと思います」

佐藤アナウンサー
「萩生田文部科学大臣は14日、『端末の管理などについて、さらにどのような対応をすべきか検討する』と話しています」

9月14日放送『news zero』より。

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タブレットの管理が悪くていじめが起こったわけではないという落合教授のコメントは正しいです。事件は、自殺した6年女子がいじめに関与している子のIDでログインし、自分を卑下するチャットのやりとり内容を知って自殺したと言うものです。他者IDでなりすましログインができなければ自殺を防げたかどうかはわかりませんが、落合教授が言うようにデジタル(ネット空間)でもフィジカル(現実空間)でもいじめは起こるのですから、その学校のいじめ防止対策や人権教育はなされていたのか、4年生から起こっていたいじめについて、担任は真摯に受け止めて対処したのかという事にメディアは注目して報道すべきです。

少なくともIDやパスワード管理の問題ではないという観点を記者が持てば、真正面からいじめの原因の取材ができるはずです。町田市教委が昨年11月の事件を未だに調査中だという事にピントを合わせるべきです。そして、子どもが一人亡くなった事件から1年近くたっても結論も出せない事態を町田市長はどう考えているのか、メディアはインタビューすらしていないのです。

最近のメディアの事件の取り上げ方はピントがずれていることが少なくありません。パラリンピックの学校連携問題も、オリンピックの総括で感染拡大と人流とは全く関係がないと結論されているのに、パラ観戦での教育的効果や子どもの感想やエピソードの取材よりも、どこの学校が感染を恐れて断ってきたかという記事に終始し、子どもの障害理解やスポーツ理解とはほど遠い、感染恐怖を煽るだけの記事を垂れ流し続けました。

今回の話も、いじめをどうやって防止するのかという話ではなく、目新しい学校タブレット配布に便乗して、その設定がいかにずさんであるかと言うところにフォーカスして、いじめの解決とはピントのズレたところでの不安感を視聴者に抱かせてしまいます。子どもがいじめで1名亡くなっているのですから、いじめの解明にむけた報道は、殆どが無症状の子どものコロナ感染報道よりもはるかに重要なはずです。

ただ、小学生の保護者が、あえていじめの問題を社会的に注目させるために、そして、配布を推進した文科省や政治家トップに注目してもらうためにICT教育を問題にしたなら話は別です。保護者がいじめ調査を要請しても学校も市教委も取り合おうとしなかった結果の知恵だとすれば、それは許される行為だと思います。

女子のスラックス制服、県立高で4校のみ…「防寒・ジェンダー平等」

女子のスラックス制服、県立高で4校のみ…「防寒・ジェンダー平等」から検討は広がる

9/15(水) 【読売新聞】

青森県内の県立高校(全日制)55校のうち、性別を問わずスラックスの制服を選べる学校が4校にとどまることが、読売新聞のアンケート調査でわかった。ただ、スラックスの制服の導入を検討している学校も6校あり、防寒性や機能面、多様な性へのあり方から制服選択制を進める動きが徐々に広がりつつある。(八巻朱音)

調査は、5~6月に全55校を対象に実施し、50校から回答を得た。
女子用スラックスの制服を導入している4校は、弘前高、弘前南高、三本木農業恵拓高、五所川原工科高だった。

導入を検討している6校は、八戸東高、七戸高など。検討の理由(自由回答)を尋ねたところ、「防寒の観点から必要」「性的少数者への配慮」「ジェンダー平等の観点から、制服を見直す必要性があると判断した」などを挙げた。

一方、現時点でスラックスの制服がない学校に理由(複数回答可)を問うと、「生徒から要望がない」(27校)、「閉校などで既存の制服がなくなる可能性がある」(11校)などだった。

今年4月、上北地区3校を統合して十和田市に新設された三本木農業恵拓高は、開校を機に、防寒や機能性の点から制服を新調した。新設校のため在籍は1年生だけだが、女子生徒の約1割の11人がスラックスを購入したという。

スカートとスラックスの両方を持っているという動物科学科の女子生徒は「スラックスは寒い時期に暖かく着られる。気分や気候に合わせ、はき分けている」と話す。植物科学科の女子生徒も「女だからスカート、男だからスラックスと決められていないので、着たい方を着て自分を表現できる」と喜ぶ。

七戸高は、ユニセックスの制服の導入を視野に、生徒指導保健部の教員らが制服の選択制を検討中だ。森田勝博校長は「生徒から要望があったわけではないが、スカートをはきたくない生徒も少なからずいるのではないか。着たい制服を選べることで学校生活を気持ちよく送ってほしい」と理由を語る。

弘前大の山下梓助教(国際人権法)の話「自分にとって着心地のよい制服を選べることは、自分自身をどう表現したいのかを考える姿勢を育むことにもつながる。教諭に評価される側の生徒が要望を控えることは十分に考えられるため、相談しやすいルートが整っているかを改めて見直す必要がある」

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話がややこしくなるので、防寒の制服の意義についてはおいておくとして、ユニセックスの制服があればトランスジェンダーの生徒の違和感や差別問題は解決するのかどうか全く不明です。みんな一緒の服にすることは、違いを認める事にはならないからです。むしろ、そこまでして学校の制服を着る意味があるのか訳が分からなくなってきます。性差のない衣服を着る事が、多様性を認める社会ではないと思います。

確かに、男子用・女子用どちらの服を選んでもいいというのは合点がいきます。女子の制服を着たい人や男子の制服が着たい人は生物学的な性と関係なく着られると言うのは良い方針だと思います。ユニセックス制服とは意味が全然違います。しかし、個々の生徒の嗜好性によって制服の枠組みを崩していくなら、制服など廃止すればいいと言う結論に行きつきます。

制服などやめて、標準服として提示して別に私服でも構わないというのが自然です。標準服は、中高生で格式ばったところに着ていく服を買うのはもったいないというニーズや、中高生になったという帰属意識を制服に求める親や子のニーズにこたえるものです。そんなものは着たくないと言う人もいていいよというのが標準服制度です。

制服と言うからには入学と引き換えの義務と言う枠組が残ります。ジェンダーレスだダイバーシティだと理屈を並べてユニセックス制服を作って様式だけを変えても、制服の枠組は残すというのなら、これはエセ多様性と言われても仕方ないです。信念もなく流行に流されるような中途半端なことはしないほうがマシだと思います。

パラ開催の意義。 「アギト」って何?

パラ開催の意義。 「アギト」って何?【二宮清純スポーツの嵐】

2021/09/17 【ラブすぽ 】

1964年の東京大会では出場は53人だった
パラリンピック開幕の6時間前、都内上空を7機のブルーインパルスが飛行した。
夏空に描かれた赤、青、黄の3色のカラースモークは、パラリンピックのシンボルである「スリーアギト」にちなんだものだ。

アギトとはラテン語で「私が動く!」の意味。困難なことがあっても諦めず、前に進む――。そんな意味が込められていた。1964年の東京大会でもパラリンピックは開催されたが、日本からの出場選手は53人にとどまった。

<53人はほとんどが国立病院・療養所の患者や訓練生で、仕事をしていたのは自営の5人だけ。スポーツの経験もなく、この大会のために短い練習期間で間に合わせていた>(笹川スポーツ財団HP)

日本の選手たちが一番驚いたのは、外国の選手の多くが職を持ち、結婚し、人生を謳歌していたことである。というのも、当時、日本における障害者は病院や療養所の世話になる「患者」であり、すなわち行政的には「保護の対象」でしかなかったからだ。

日本における“障害者スポーツの父”と呼ばれる故・中村裕医師は、障害者にスポーツを薦めると「障害者をさらし者にするな!それでも医者か!」と周囲から随分、反発を受けたという。まだ、そんな時代だったのである。

2011年8月に施行された「スポーツ基本法」には、<スポーツは、障害者が自主的かつ積極的にスポーツを行うことができるよう、障害の種類及び程度に応じ必要な配慮をしつつ推進されなければならない>と明記されている。

しかし、現実はどうか。こんな話を聞いた。
「私も公園でつらい思いをしたことがあります。息子が公園で遊んでいると管理人さんに“危ないから遊んではダメだ”と注意されることが多かった。それ以上につらいのが、保護者たちの視線でた。“近付いてはダメ”“見てはダメ”。そんなささやき声が聞こえてくることがあり、親としても精神的に堪えます。それも障害のある子どもの“公園離れ”の一因です。“障害”に対する理解を深め、社会を変えていかなければいけないと思っています」(※一般社団法人日本車いすスポーツ協会代表理事・坂口剛)

今回のパラリンピックで、日本がいくらメダルを獲得したところで、障害者に対する理解が深まったり、スポーツをする環境が改善されないことには開催した意味がない。
問題があれば、「私が動く!」。その意識を国民全員が共有することが肝要だ。

初出=週刊漫画ゴラク2021年9月10日発売号
※<坂口剛(さかぐち・つよし)プロフィール>
一般社団法人日本車いすスポーツ協会代表理事。1975年、福岡県出身。2006年、長男が交通事故に遭い、車いす生活になったことを機に、車いす利用者に環境のいい土地に移り住む。2009年に浦安ジュニア車いすテニスクラブ(現・車いすスポーツクラブ ウラテク)を創設。パラスポーツ参加を推進すべく、さまざまな活動に関わる。2017年には日本車いすスポーツ協会を立ち上げた。好きなスポーツは、かつてサッカーとゴルフだったが、今はテニス。

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私が動く=アギト。パラシンボルに込められた思いが伝わります。思い出したのが、「私たちのことを私たち抜きで決めないで(Nothing About us without us)」でした。国際連合の人権条約、「障害者の権利に関する条約 2006 年」採択への原動力となった、世界中の当事者の合言葉でした。障害者やその関係者が自発的に動いてこそ理解は本物になるのだと思います。

「スポーツ基本法」の「障害者が自主的かつ積極的にスポーツを行うことができるよう、障害の種類及び程度に応じ必要な配慮をしつつ推進」する主語は行政ですが、地域の公園や広場で障害者がスポーツを日常に楽しむ姿がなければ、社会は動きません。発達障害に伴うDCD(発達性協調運動障害)を持つ子にもスポーツを楽しむ権利はあります。でも、DCDのない子どもと一緒にゲームをしてもスポーツの楽しさは味わいにくいです。

パラスポーツは、一つの種目でも何段階にも障害のレベルを分けて公平に競技ができるように設定されます。或いは、車いすバスケや車いすラグビーなどのチーム戦なら、個別の障害の重さでポイント数を決めて、チームの総合ポイント数が同じになるようにして対戦するルールとなっています。スポーツは戦う相手が同程度の条件でなければ勝っても面白くありません。トランスジェンダー選手の女子競技への参加問題がスポーツ界を賑わしていますが、そもそも性ホルモンの違いで筋力差があるもの同士が戦っても、試合をする人も見ている人も面白くないのと同じです。

DCDの子ども同士が、不器用を気にせずゲームができるコートがあったらきっとスポーツ好きになれるはずです。このパラリンピックを機に「私が動く!」必要があると思いました。サッカーでもラグビーでも、バレーボールやバスケットボールでもDCDや知的障害専用のコートとコーチが欲しいです。その前提として、放デイの子どもたちが公園に出てスポーツを楽しむ日常があり、それを普通に知っている地域の人たちの理解の広がりが大事だと思います。今日も公園でスポーツをみんなで「アギト」しよう。

「小6女子いじめ自殺」事件に向き合わなかった名物校長

「小6女子いじめ自殺」事件に向き合わなかった名物校長は、教育長に栄転した
保護者たちが校長の対応に憤るワケ

2021/09/16 【PRESIDENT Online】

昨年11月、東京都町田市の小学校で、小6の女の子がいじめを苦に自殺した。この学校はICT推進校で、全国に先駆けて「一人一台端末」を配り、校長はその旗振り役として有名だった。しかし、いじめの背景に端末の存在があったことから、校長は「いじめは解決していた」と事実を否認。保護者たちはその態度に憤るようになる。

死から2カ月半後に重大事態の発生を報告
1月19日、山根達彦さん(仮名)、山根弘美さん(仮名)夫妻は代表委員会に出席して、娘の詩織さん(仮名)がいじめを苦に自殺をしたことを学校関係者に伝えた。

参加者は、PTA役員とクラス委員を務める保護者たち。これまでさまざまな臆測が飛び交っていたが、初めて、亡くなった本当の理由を伝えることができた。それを聞いた保護者たちは学校の対応への不満を口にした。

「詩織さんはいじめられていたことを9月の心のアンケートに書いていたのに、それがいかされなかったことは残念でなりません。いまのままでは学校に不信感が募るばかりで、このまま学校に通わせていいのか大丈夫なのか、不安です」

「正直、学校側の対応には落胆しました。今回の山根さんのことは、絶対闇に葬られてはいけません。学校側はこのまま終わらせていこうとする姿勢としか思えません。山根さん親子の声、この出来事を、子どもたちを含め全世帯で共有してこそ、私たちも次に進める第一歩になるのではなかと思います」

「先日の代表委員会の場で、校長先生があの場を去ったことにとても違和感を覚えました。緊急事態宣言のなか、学校へ向かう意味がある、話し合いの場だと思い、足を運びました。これは一人のお子さまが亡くなっている、命の話なのに、一方的に漠然としたお話をされ、この話を代表委員の保護者にしか説明しない……というのは、どういうお考えのもとなのでしょうか。昨今は、先生方がとても忙しいように見て、ICTも大事だと思うのですが、もう少し本質的な学校の在り方を見直してほしいと思います。ぜひ、学校には形だけでなく、心の通った対応をお願いしたいです」

PTA会長はこうした声を「意見書」にまとめて、1月22日にA校長に提出した。1月27日という約束の期限から遅れて2月1日に返ってきたA校長の回答には、「遺族の意向に沿ってやってきた」という嘘が書かれていた。

山根夫妻は12月25日に「いじめの調査の第三者委員会を立ち上げてほしい」という要望を伝えている。しかし、A校長が「重大事態」が起きたことを町田市教育委員会に報告したのは、2月15日のこと。11月30日の詩織さんの死から2カ月半もの月日が経過していた。

2013年に制定された「いじめ防止対策推進法」では、第28条第1項に「いじめにより当該学校に在籍する児童等の生命、心身又は財産に重大な被害が生じた疑いがあると認める」事態(自殺等重大事態と呼ばれる)を「重大事態」と定義。重大事態が起こった際には速やかに教育委員会などに報告し、第三者委員会を立ち上げて調査することを求めている。A校長の対応は、法律の趣旨を無視するものだ。

「いじめで自殺は間違った噂」と保護者に説明
2月20日には全校の保護者を対象にした臨時保護者会が開かれた。ここでも詩織さんが亡くなった理由は説明されなかった。むしろA校長は、「いじめで亡くなったという“間違った噂”が流れている」と話した。

「A校長は冒頭で、『いじめで亡くなったという間違った噂が流れているので臨時保護者会を開いた』と説明されました。そして、『遺書を見て、9月にはいじめがあったことを認識していたが、10月、11月の心のアンケートには何も書いていないので、解決した。いじめと自殺は関係ない』と話されました」(PTA会長)

そして、「タブレット端末の使い方とネットトラブルの防止について」というプリントが配られた。そこには「町田市の方針で2020年11月にチャットは使用不可設定になり、本校でも使えなくなったこと」「児童のIDパスワードは家庭と学校で管理すること」などが書かれていた。

学校では昨年12月中旬、唐突に子供たちの端末のアカウントを作り直させている。

そこでは従来の方針と変わって、個別にパスワードを設定させているが、なぜ、そのように変更したのか、理由の説明は一切ない。従来のやり方に問題があったから、アカウントを作り直したのではないのか。

A校長は、メディアでの取材でICTについて「あえてルールを設けず、子供の自主性に任せて、失敗のなかで学ばせる」という方針を語っている。だが、いじめについても、端末利用のトラブルについても、どこに問題があり、どんな解決策を採ったのかを説明していない。それは「失敗のなかで学ばせる」という言葉に反しているのではないだろうか。

死から3カ月後に、初めて弔問に訪れる
2月24日。山根夫妻は、突然、A校長が副校長と6年生の担任3人を引き連れて自宅へ弔問に訪れたので、心底驚いた。これまで自宅には一切来ようとしなかったからだ。

父親の達彦さん(仮名)は、思わず「一体、どういう風の吹きまわしだい?」と聞いてしまった。詩織さんの遺影の前に無言で座るA校長らに対し、母親の弘美さん(仮名)は、「3カ月もたったのに、これまでどうしてきてくださらなかったのですか? どうして、死んでまで何もしてくれなかったのですか? 卒業まで子供たちに何をしてあげるのですか?」と泣きながら、問いかけた。

父の達彦さん(仮名)と詩織さん(仮名)。父の日の思い出のスナップ父の達彦さん(仮名)と詩織さん(仮名)。父の日の思い出のスナップ(写真=母親提供)
A校長は「私たちが本当に至らなくて、申し訳ありません。失礼な対応がいろいろあったので、謝りにきました」と説明した。「失礼な対応」とは、詩織さんの机と椅子が片付けられてしまった件を指す。詩織さんが亡くなった後、詩織さんの席に勝手に座ってしまう子供がいたため、担任のB先生が机と椅子を片付けてしまったのだ。弘美さんは「卒業まで詩織をクラスの一員でいさせてほしかった」と泣いた。

この日は加害者のC子・D子とその親も弔問に来ていた。立て続けの訪問に「今日は何かあったのかな?」と山根夫婦は顔を見合わせた。

その日に何があったかは、あとで知ることになった。この日の午前中、A校長が東京都の自治体の教育長に任命されたのだ。山根夫妻は「正式に任命されて安堵したから、弔問に来られるようになったのではないか」と受け止めた。

子供たちの心に傷を残したまま卒業
3月11日の定例の6年生保護者会では、学校側が初めて「自殺の原因の一つに、いじめがあったこと」を認め、対応を謝罪した。

事件後、詩織さんの担任のB先生は精神的に追い詰められて、学校にいけない時期もあった。謝罪した際に、副校長や6年生の担任の先生たちは目に涙を浮かべながら、深々と頭を下げていたが、「A校長だけはうんざりした様子で、下を向いてうなだれるだけで、頭を下げることはなかった」と保護者は口をそろえる。

そしてA校長は3月末に定年退職し、この4月より教育長を務めている。

詩織さんと幼なじみだった娘を持つ保護者は言う。

「詩織ちゃんが亡くなったと知ったあと、娘は一人で夜寝ることができなくなりました。夜に何度も起きて、学校であったことを思い返し、メモを取っています。熟睡できなくなってしまったんです」(加藤和江さん/仮名)

詩織さんと同じクラブ活動をしていた同級生の女の子は、卒業式が終わってすぐに全身にじんましんが出た。医師は「精神的ストレスだろう」と診断したという。学校が怖くなってしまった子供や、部屋に引きこもるようになってしまった子供もいた。

「2月下旬に『命の授業』が開かれましたが、娘のクラスでは子供たちが『こんな授業をしたって意味がないじゃないか』『いじめだって、否定したくせに』と泣き怒りして大変だったと聞きました。結局、子供たちの心に向き合わず、深い傷を残したまま、卒業となってしまいました」(加藤さん)

詩織さんの母、弘美さんは訴える。
「私たちはかけがえのない娘を失って、何があったのか、本当のことを知りたかった。学校でいじめが起きてしまうこと、それ自体は、先生たちの責任ではないと思っています。ただ、解決に向けて子どもに寄り添ったり、原因究明に真摯に向き合ってくださらなかったことに絶望しています。学校ではいじめ自殺が起きたときに、いじめの事実を隠蔽するケースがあとを絶ちません。なぜなのでしょうか? A校長が教育長に栄転したように、学校はいじめを隠蔽した人が評価される組織なのでしょうか? ことなかれ主義を変えない限り、これからもたくさんの犠牲者が出てしまうのではないかと危惧しています」


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プレジデントオンラインの取材には、いじめの実態と自殺後の校長とのやりとりなどが詳細に報道されていました。ご両親が文部科学省にまで出向き記者会見をした背景には、学校側への不信感、学校だけに任せていたら本当のことがわからないままになるという思いが強かったのだと思います。児童が亡くなり学校に原因がなかったかどうか調べて欲しいと要請されているのに、その説明責任を怠っている時点で、行政のトップが、その対応のまずさについて詫び、責任者を処分するのが普通の社会常識です。

責任者である校長を処分もせずに満額の退職金を払い渋谷区教育長への就任を黙認する町田市長も、就任させる渋谷区長も、都の学校教育を指導する都教委や都知事も、社会的な影響を考えれば、元校長に踏みとどまるように促すのがトップに立つ者の責務であり社会的な常識だと思います。そして、前回も書きましたが、これはICT教育の指導に直接の原因があるのではありません。いじめ防止対策や人権教育がどの程度行われたのか明らかにし、学校はいじめ防止法にそって粛々と対応をしたかどうかを調査することが大事です。

ピントのズレた追及をメディアはまだしていますが、責任者たちの行動を取材することの方が先です。権力者は自分に火の粉がかかるのを嫌がります。メディアが騒ぐICT教育の問題にしてくれた方が助かるのです。渋谷区で特別公務員として区長から教育長を任命され、承認した議会がどういう対応をするのか、メディアの取材はそこに集中するべきです。そして、町田市長は関係者の責任を曖昧にせずトップの姿勢を市民に示すべきです。行政が招集する第三者委員会は時間ばかりかけて責任があいまいになる可能性があります。小学生の自殺原因だけでなく学校や行政対応の不適切さも法的に明確にしたほうが、全国で起こっている公的機関の不作為に歯止めをかけるものになると思います。

 

複数児童に差別的な発言や体罰 特別支援学級で

複数児童に差別的な発言や体罰 特別支援学級で長期間繰り返す姫路の小学校教諭

2021/9/21 【神戸新聞NEXT】

兵庫県姫路市立小学校で特別支援学級を担当していた男性教諭が、同学級の複数の児童に対し、差別的な発言や体罰を長期間繰り返していたことが20日、学校関係者への取材で分かった。学校側は17日に保護者向けの説明会を開いて謝罪。人事権を持つ兵庫県教育委員会が、厳しい処分を検討しているとみられる。

関係者によると、男性教諭は数年前に同校へ赴任し、特別支援学級を担当。受け持っている児童の障害や特徴をからかうような発言を長期間、繰り返していた。ほかにも、プール指導の際にいやがる児童の顔を無理やり水に漬けたり、羽交い締めにしたりする体罰も加えていたという。

一部の保護者から教諭の行為に対する苦情が寄せられ、学校に行きたがらない児童もいたという。学校側は別の担当者らから事情を聴き、事実関係を確認した。教諭は現在、担当から外れているという。

17日にあった保護者向け説明会では、校長が事例を挙げながら経緯を説明したという。出席者の一人は「悩みを抱える児童や親に追い打ちをかけるような言葉もあった。男性教諭の行為は許せない。もう教壇に立たせないでほしい」と憤りを隠さなかった。

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「生きてる価値ない」「二度と学校に来るな」と暴言 特別支援学級で体罰の教諭

2021/9/21 続報【神戸新聞NEXT】

兵庫県姫路市立小学校の特別支援学級を担当する男性教諭(39)が児童に暴言や体罰を繰り返していた問題で、男性教諭の暴言には「生きている価値がない」「二度と学校に来るな」など、児童の人格を否定するような内容が含まれていることが分かった。本来、児童の特性に合わせた指導が求められる特別支援学級で人権侵害といえる事態が継続していたとみられ、兵庫県教育委員会は事態を重くみて、21日付で男性教諭を懲戒免職処分にした。

姫路市教委などによると、男性教諭は2011年度に採用され、16年度に同校へ赴任。18年度から特別支援学級の担任になり、自閉症や情緒障害のある児童向けのクラスを受け持っていたという。

暴言や体罰は複数年にわたり、計6人が対象になった。児童が指導に従わない場合にみられたという。男性教諭は「なかなかうまく指導できず、かっとなった」と説明。現在、心身の不調を理由に休んでいる。

同校によると、今回の問題について同校が本格的に調査を始めたのは今年6月から。暴言や体罰により学校を休んだり不登校になったりした児童はいないという。

同校では21日、全児童に校内放送で今回の問題について説明した。今後はスクールカウンセラーの枠や人員を増やして、児童のケアに当たるという。校長は「子どもにはつらい嫌な思いをさせてしまった。安心して学校に通えるよう精いっぱい対応したい」と話した。

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「またか」です。それも二重の「またか」です。また特別支援学級・学校での体罰教員、また兵庫県での虐待事例です。少なくとも障害児への暴力や暴言は「体罰」というようなグレーな言葉をメディアは使うべきではないと思います。児童虐待、傷害罪、暴行罪、侮辱罪の容疑者扱いをすべきです。こうした教員の暴力等は「初犯」ではないことが多いです。指導力不足教員は通常学級ではすぐに破綻するので、特別支援学級の担任を任せるか、支援学校に異動を勧めるケースが少なくありません。

講師なら、辞めさせることもできますが、正規教員は犯罪を起こさない限り簡単には解雇できません。公務員の既得権限と労働組合に守られているからです。時が経つまでうつ病か適応障害の診断を受けて病気休暇をとらせ、時期を見て異動させるのです。不適切な指導を何度繰り返しても、結果的には組織が自分を守ってくれるのですから、不適切指導を繰り返している教員は、自分の問題として受け止めていません。問題が表面化しても子どもや保護者が悪いと思っています。反省しているなら同じことを繰り返すわけがないのです。

また、子どもが犠牲になっているのに自己保身を優先する管理職を目の前にする教員は、不良教員を注意するのも告発するのも馬鹿らしくなります。こうして、職場は腐っていきます。自分もこれくらいないなら、あいつよりましだと子どもへの指導の質も熱意も落ちていきます。子どもの未来を担う教員に、罰を課して襟を正させるなどは本当に残念ですが、一罰百戒しかないのだろうと思います。学校教員による児童虐待には、厳しい処分で臨むべきです。

今回は懲戒免職処分となりましたが、社会的制裁を受けたとして刑事告発は受けないのでしょうか。減給10分の1か月で1か月分(5万円程度)の処分を受けた校長は「精いっぱい対応したい」と言ったのですから、暴行について刑事告発するのが筋です。解雇しても法的な瑕疵は償われていないからです。何百の児童が正しい大人とはどう決着を付けるのか見ています。現在、県教職員人事課長のみのコメントしか報道されていません。市長が即座に見解を発表しないのは、発表するほどの人権事件ではないと考えているのでしょうか。教育長では身内を切りにくいので、職員不祥事の際は市民から選ばれた教育長の解任もできる市長が相応しいと思います。最後まで姫路市の動向を見届けようと思います。

パラリンピック ボッチャで金 杉村「勝ち続け 注目集めたい」

パラリンピック ボッチャで金 杉村「勝ち続け 注目集めたい」

2021年9月21日 【NHK】

東京パラリンピックの球技、ボッチャで日本初となる金メダルを獲得した杉村英孝選手がNHKの取材に応じ「盛り上がりを一過性に終わらせないためにも勝ち続けることで注目を集めたい」と今後の決意を述べました。

ボッチャは、赤と青のボールを投げ合って白い的球にどれだけ多く近づけるかを競うパラリンピックの球技で、杉村選手は東京パラリンピックの個人で金メダル、団体で銅メダルを獲得しました。

特に金メダルはこの競技では日本選手として初の快挙で、NHKのインタビューに応じた杉村選手は「過去の自分に打ち勝つこと、そして何よりも大好きなボッチャを思い切り楽しむことをテーマに臨んだが、弱かった自分に勝てたのが決勝の結果につながった」と振り返りました。

また、障害の有無や年齢、性別に関係なくプレーできるスポーツとしてボッチャが注目を集めていることについて「東京大会が競技を知ってもらうきっかけになったことはうれしいが、この盛り上がりや勢いを一過性に終わらせないためにも、選手としては勝ち続けることで注目を集めていきたい」として今後の決意を述べました。

そのうえで「競技者としてこれからも成長していきたいし、障害がある方々が自分もやってみようかなとか、頑張ろうかなというような前に一歩進むきっかけになることができたらいい。目の前の試合を一つ一つ大事に戦ったその先にパリパラリンピックがあると思っている」と3年後を見据えていました。

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ボッチャは、白玉(ジャックボール)に近い球が多い方が勝ちと言う単純なルールですが、相手の玉を弾き飛ばしたり相手の得点進路を妨害したりと、攻防の駆け引きがあり初心者から上級者まで楽しめるスポーツです。京都では京都市障害者スポーツセンターが来年の1月に23年目のボッチャ大会を開催します。京都府では特別支援学校が東京オリパラを迎えるために取組んできています。

ボッチャは、小学生から高齢者まで取組めるスポーツで、縦12.5m横6mで丁度テニスコートの半分の広さがあればゲームができます。放デイでもコートがあれば簡単にチームゲームができるのでコロナ騒ぎが静まれば、京都府のボッチャ協会などにお願いして教えてもらうのも良いと思います。京都ではトヨタ自動車の販売店が協力してくれています。ボッチャと言えば車いすの競技のようにイメージしますが、歩ける人でも楽しめる競技なので、子どもたちと一緒に取り組んでいけたらいいなと思います。

不安和らげる工夫を 障害者に「専用ワクチン会場」

不安和らげる工夫を 障害者に「専用ワクチン会場」

9/23(木) 【テレビ朝日】

新型コロナワクチンの接種率は21日時点で、全人口のうち67.2%が1回目を終えました。2回目は55.1%と、アメリカの接種率を超えました。

こうしたなか、神奈川県相模原市は今月、障害者専用の接種会場を設置しました。接種と受けるのは、知的障害や精神障害がある人たちです。

障害者対応の経験がある医師と看護師が対応し、ゆとりを持って打てるよう、予約の間隔も15分ほど空けられています。

付き添いの親:「病院だと狭かったりするので、車いすの利便性などを考えて打つのを考えちゃうんですけど」

付き添いの親:「他の方やスタッフに気を使って頂くこともあると思うし、この子がどういう状態かも分からないので、心配もされるかなとか」

付き添いの親:「暴れてしまう子は押さえつけるので、時間がかかってしまう。(接種を)先生の方から断られてしまうこともある。今まで、それでなかなか打てない。良かったです」

22日は約90人が、接種を受けることができました。

相模原市ワクチン接種推進課・成澤正成主査:「障害のある方や家族からすると、安心して接種をしたいという思いもある。一人ひとりに寄り添った、安心して受けられる環境を整備していくのが、我々には求められているのかな」

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私たちの事業所にも、知的障害児の親が安心して子どもに接種を受けさせることができる医療施設はないかという問い合わせがあります。小さな時期は押さえつけられたけれども小学生以上になると親の力では押さえつけるのは無理だと言うケースです。今回の新型コロナ予防接種で顕在化しただけで、他にも身体が大きくなってから必要なワクチンはあります。3年生から追加接種の日本脳炎や女子なら6年生からのHPV、任意だけどインフルエンザやおたふくかぜや髄膜炎ワクチン接種もあります。

今回は、蔓延防止の観点から障害のある人の予防接種がクローズアップされましたが、痛かった思い出のある病院や白衣を見るだけで診察室にも入らない子どももいます。注射針のあるものは受けられないと言うことで、点滴すら難しいのです。もちろん生命にかかわる場合は、ベットに拘束してでも接種します。子どもの新型コロナワクチンについては、基礎疾患がなければ小学生は軽微な風邪ひき程度なので接種の必要がないという医師もいますが、困っているのは中高生の知的障害の人たちですし、他の接種でも困っているのです。なんとかインシュリン注射針のような痛みのない注射針が標準仕様になってくれないものでしょうか。

神奈川・相模原市で障害者専用のワクチン接種会場

神奈川・相模原市で障害者専用のワクチン接種会場【新型コロナ】

2021/09/15【TBS】

新型コロナワクチンの集団接種会場に行くのが難しい障害者を対象に、神奈川県相模原市では専用の会場を設けて接種を行う取り組みを行っています。

記者
「相模原市では、障害者専用の接種会場が毎週水曜日、設けられています」

この取り組みは障害があり、多くの人が集まる会場では接種が難しい人に安心して接種を受けてもらおうと、相模原市が今月から始めたものです。車いすや知的障害のある人たちが、親に付き添われて接種を受けていました。

付き添いの親
「障害があって普通の接種会場ではできないので、こういうところがあってありがたい」
「スムーズに打ててよかった。障害があるので、落ち着いてできるほうがいいのかなと。親も気を遣わなくていい」

相模原市ワクチン接種推進課 成澤正成主査
「安心して受けられる接種会場はないかという声があったので、そういう経緯から会場を設けた」

相模原市では、専用の会場であわせて300人ほどの接種を予定しているということです。

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発達・知的障害者の接種イラスト、ご褒美…不安和らげる工夫を

2021/9/13【毎日新聞】

発達障害者や知的障害者の家族の中には、新型コロナウイルスのワクチンを本人にどう接種してもらえばいいのか悩んでいる人もいる。接種の意味や手順が分からず、気持ちが乗らなくて時間通り会場に行けなかったり、注射器の針を見てパニックになってしまったりする可能性もあるためだ。

静岡県在住のイラストレーター、むらまつしおりさん(28)は、重度の知的障害がある弟の裕樹さん(24)が8月までにワクチン接種を受けた様子を軽いタッチの漫画で描き、インスタグラムなどで紹介している。

裕樹さんは、行き慣れた通所施設やかかりつけ医ではワクチン接種を受け付けていなかったため、自治体の集団接種会場でワクチンを打つことになった。

会場に行けるか不安だったが、切り札になったのは紙のカタログ。無料で配布される冊子で、商品などが掲載されている。裕樹さんは紙の感触が好きで、接種会場へはカタログを手に出かけ、スムーズに接種が受けられた。

漫画では、医師の問診の間、カタログを見て心を落ち着かせた裕樹さんの様子を描いている。裕樹さんの接種当日に、しおりさんとともに付き添った母由美子さん(56)は「カタログが心の安定剤になった」と振り返る。

1回目の接種では、由美子さんが職員に障害があることを伝えると介助に加わってくれた。2回目では職員が対応を引き継いでくれて、接種の待ち時間から終了まで別室で対応してくれたという。待機中は、マスクをとろうとする裕樹さんを、しおりさんとともに制止する場面も。由美子さんは「1人で対応していたら大変だったので、娘や職員がいてくれて心強かった」と話す。

知的障害や発達障害のある人の中には、ワクチンを接種する意味や手順を理解できない人もいる。また、痛みに敏感で、感情を抑えられずにじっとしていられないこともある。言葉や文字よりも視覚で理解する方が得意な傾向があるため、接種の流れをイラストや写真など、目で見て分かりやすく説明する方が効果的な場合もある。

自閉スペクトラム症(ASD)の当事者の家族らでつくる埼玉県自閉症協会は、ワクチン接種の流れを示したイラストの表をホームページで公開している。

ASDの人は、自分がこれから何をするのか見通しが持てないと不安になることが多い。そこで、検温▽座って待つ▽問診▽注射――といった一連の接種の流れをイラストで分かりやすく表した。接種後の副反応の様子を指さしで自分から伝えられるよう、「肩が痛い」などの体調を表すイラストを並べたものもある。

表は会長の小材由美子さん(59)が、自閉症と重度の知的障害がある長男(35)向けに試行錯誤して作成したものだ。小材さんは「イラスト表はあくまで一例。伝わりやすいイラストや見せ方は一人一人違うので、これを参考にして本人に合った方法を見つけてほしい」と話す。

障害者専用の接種会場を設ける自治体もある。東大阪市では、マスクを着けられないなどの事情で一般の集団接種会場やかかりつけ医での接種が難しい障害者を対象に、市立障害児者支援センターで集団接種をしている。接種には、普段から障害者の治療や支援にあたる医師や看護師が携わる。担当者は「落ち着いた環境で安心して接種できるようにしたい」と話す。相模原市なども、障害者を対象とした臨時の接種会場を設けている。

予防接種に詳しい「はしもと小児科」(東京都八王子市)の看護師、伊藤舞美さんによると、発達障害や知的障害のある子どもは先の見通しがはっきりしないと不安になることが多いが、接種の手順をイラストで示してあげることで和らぐことが多いという。また、注射を打つ前で緊張しがちな時は、「お昼ご飯は何を食べたの」などと尋ねて気をそらす▽接種後に褒めたり、ご褒美をあげたりする――なども恐怖感を取り除くために有効になることが多いという。

逆に絶対にしてはいけないのは、何も説明しなかったりうそをついたりして接種を受けさせることだという。本人はだまされたと思い、保護者も医療者も信頼をなくすため、今後の受診などにも影響する場合がある。

接種部分の痛みを和らげるため、麻酔の効果があるシートを活用することも勧めている。伊藤さんは「痛みを我慢するのが当たり前になってしまっているが、工夫をすることで痛みを取る方法があることも知ってほしい」と話す。【中川友希】

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障害がある人も安心してワクチン接種を 専用会場設置 相模原市

2021年9月8日 【NHK】

障害がある人に安心して新型コロナウイルスのワクチンを接種してもらおうと、相模原市は8日から専用の会場を設けて接種を始めました。

相模原市は、障害がある人が大規模接種会場などふだんと違う環境になると混乱してしまうなど、ワクチン接種が難しいケースもあることから、安心して接種してもらうための専用の会場を設けました。

会場となった市立障害者支援センターには、予約をした人たちが保護者と一緒に訪れ、医師が接種を受ける人たちに体調などを尋ねたあと、次々とワクチンを接種していました。

対象となるのは療育手帳などを持つ相模原市の12歳以上のおよそ3000人で、市では今後、毎週水曜日にそれぞれ96人を限度にワクチン接種を行うことにしています。

子どもに付き添って予防接種に訪れた40代の母親は「息子は障害の特性で周囲に合わせるのが難しく、落ち着いた環境で接種ができるのは助かります」と話していました。

相模原市新型コロナウイルスワクチン接種推進課の成澤正成さんは「障害のある方も含め、希望する方全員に安心してワクチン接種を受けてもらえるよう取り組みたい」と話していました。

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9月24日に、9月23日のテレ朝の報道(不安和らげる工夫を 障害者に「専用ワクチン会場」09/24)を、注射が怖い子どもたちの事として掲載しました。ところが、9月27日にはテレ朝のホームページから動画も一緒に記事が消えていました。テレ朝が配信しているANN系メディア各社のホームページからも全て削除されていました。おそらく、視聴者が大勢クレームをつけたので取り消したと推測できます。けれども、何もコメントしないで記事そのものを削除するのは、人のことはあれこれ言うのに自分のことになると口を閉ざすようで潔く見えません。

相模原市の専用会場設置について記事に取り上げたのはNHKが最初です。それを見て、TBSやテレ朝の順序で取材をしたという事でしょう。おそらくASDと思われる男子が暴れるのを押さえつけて接種している場面に一部の視聴者が反応したのだと思います。同じ内容のTBS動画のコメントに、虐待だとか嫌がっているのにというコメントが散見されるので掲載後に問題の箇所をカットして編集し直したのかも知れませんが、これについてもTBSのコメントは何もありませんでした。

毎日新聞の報道のように視覚支援など様々な工夫をして支援者が努力することはとても大事です。だた、支援者の努力が必要ですと書けば解決するのかというと、それだけではすぐには上手くいかない人がいるのも現実です。押さえつけての接種はけしからんと言うのは簡単ですが、それを突き付けられた支援者や医師らからは、任意なのだから嫌がって暴れる人は接種しないという見解を引き出してしまうだけです。しかし、それでは障害のある人もない人も健康に暮らせる社会を作るという目標には到達できません。

クレームをつける人たちの中には、そもそも接種そのものが無意味だと思っている方や、ワクチンの副反応が危険だと考えている方もあり、ワクチン接種の不安を煽る目的でクレームをつけているのかも知れません。しかし、映像を見て純粋にひどいじゃないか、かわいそうじゃないかと思う方もいたと思います。以前にも書いたように、今回のワクチン接種の報道で障害者医療の課題が社会に顕在化しただけのことで、必要な接種や点滴、怪我の治療についての問題は、コミュニケーションに障害のある人たちと家族がずっと抱えている問題なのです。クレームをつける人たちはそれも虐待だとは言えないと思います。

本来は、テレ朝はそのことを端折らずに報道すべきでした。NHKやTBSも綺麗に建前だけ報道するだけでなく、当事者や家族が本当に困っていることを解決するために、取材を続けて欲しいと思います。そのうえで毎日新聞で報じたような知恵がみんなに広がればいいと思います。テレビは事実を切り取って報道するので、詳しく説明できない事もありますが、たくさんの人に訴える力は絶大なのですから、コミュニケーション障害を持った方と医療の問題を煽るだけの目的のクレームやバッシングの圧力に負けないで事実を取材してほしいと思います。

3歳虐待死 摂津市「暴力放置」判定も「緊急性低い」と判断変えず

3歳虐待死 摂津市「暴力放置」判定も「緊急性低い」と判断変えず

2021/9/28 【毎日新聞】

大阪府摂津市のマンションで8月、新村桜利斗(にいむらおりと)ちゃん(3)が熱湯をかけられて死亡した事件で、市は母親から交際相手の松原拓海(たくみ)容疑者(24)=殺人容疑で逮捕=に関する暴力相談を受けた5月、児童相談所と協議し、桜利斗ちゃんの家庭について「第三者の暴力を放置している」と判定していた。ただ、桜利斗ちゃんにけががないことなどを踏まえ、「緊急性は低い」との判断を変えなかったという。

森山一正市長は28日に記者会見し、「男児の命を救えなかったことを重く受け止めている。児相に『(一時保護を含め)担当してくれ』ともっと強く言えなかったかとの思いはある」と説明。大阪府に設置される検証部会に協力するとともに、市も対応の是非について内部で調査する考えを明らかにした。

市によると、母親から5月6日、松原容疑者について「子供のほおをたたいた」と相談を受けた。母親は以前から「育児放棄」の疑いがあるとして見守り支援を続けてきた経緯があり、大阪府吹田子ども家庭センター(児相)と協議し、暴力を止められない対応も育児放棄に当たると判定したという。

しかし、松原容疑者は家庭訪問した市の担当者に「もう手を出さない」と約束。桜利斗ちゃんの母親の知人らからは6月に虐待を疑わせる訴えがあったものの、母親との面談を重ねる中で桜利斗ちゃんにけがが確認されなかったことから、市と児相は一時保護などの対応は取らなかった。桜利斗ちゃんは8月31日、熱湯をかけられたことに伴う熱傷性ショックで死亡した。

今回の事件では、市と児相が「緊急性が低い」との判断を変えなかったことから府警と情報共有していなかった。森山市長は「警察との連携は避けて通れない」と述べ、情報共有のあり方を検討する方針も示した。【郡悠介、高橋昌紀】

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3歳虐待死「行政対応の検証必要」 大阪知事が第三者部会を設置意向

2021/9/24 【毎日新聞】

大阪府摂津市のマンションで3歳の男児が熱湯をかけられて殺害された事件を受け、吉村洋文知事は24日、医師、大学教授、弁護士ら5人による第三者部会を来週にも設置し、行政機関の対応が適切だったかどうか検証する考えを示した。

吉村知事は記者団に「事件には胸が痛み、言葉がない。児童相談所(児相)も情報を共有していた案件であり、悲惨な事件を防げなかったのか検証する必要がある」と述べ、部局に指示を出したことを明らかにした。

府内では、児童虐待に関する全件の情報を児相と警察が共有する「全件共有」を行っている。しかし、今回の事件では、児相ではなく、摂津市が対応する「市町村担当事案」になったため、全件共有の対象にはなっていなかった。吉村知事は「なぜ今回は児相(が担当する)案件にならなかったのか、市町村担当事案でも全件共有しなくていいのかについても検証する」と語った。【矢追健介】

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「たっくん、いや」虐待死3歳が再三SOS 悲劇防げず知人悔い

2021/9/23 06:30【毎日新聞】

大阪府摂津市のマンションで8月、交際相手の息子だった3歳の男児に熱湯をかけて殺害したとして、大阪府警は22日、同居していた無職の松原拓海容疑者(23)を殺人の疑いで逮捕した。

亡くなった新村桜利斗(にいむら・おりと)ちゃんは事件前、「SOSのシグナル」を幾度となく発していた。虐待を疑った周囲は行政に一時保護を求めていたが、悲劇を防ぐことはできなかった。母親の知人らは「桜利斗は何も悪くない。大人が幼い命を救ってあげられなかった」と悔やんでいる。

「たっくん、いや。たっくん、いや」。知人らによると、桜利斗ちゃんはよく、たどたどしい言葉でこう訴えていた。逮捕された松原拓海容疑者は「たっくん」と呼ばれていた。桜利斗ちゃんは帰宅することを拒むような仕草を見せたこともあったという。

桜利斗ちゃんの母親は夫と離婚後の2018年10月、桜利斗ちゃんとともに大阪府内の別の自治体から摂津市内に転居。20年秋ごろから松原容疑者と交際し、同居を始めたのは事件の約3カ月前だったとされる。

知人らはマンションに遊びに行った際、松原容疑者が桜利斗ちゃんを怒鳴ったり、物を投げつけたりしている姿を目撃。顔に不自然な傷を確認したこともあった。21年6月には「虐待の可能性がある」と考え、摂津市役所の家庭児童相談課に桜利斗ちゃんの一時保護を求めていた。

市によると、母親と桜利斗ちゃんは以前から「行政による継続的な見守りが必要な母子」とされていた経緯があり、支援担当者が毎月1~2回、母親と面会を重ねていた。

母親も5月初旬、「交際相手が子どもに手を出した」と相談していたが、松原容疑者が市側に「もう手を出さない」と約束していたという。市の担当者は「緊急的な危険があるとは考えていなかった。対応に問題はなかった」と話した。

人なつっこい性格で周囲の人気者だったという桜利斗ちゃん。母親は4月、自身の写真共有アプリ「インスタグラム」に、「プレゼントもめっちゃ喜んでくれてよかった」とのメッセージを投稿。3歳の誕生日を迎えた桜利斗ちゃんがケーキの前で手を広げ、笑顔をふりまく写真も添えられていた。知人の一人は「あんなにかわいい子を救えず、悔しい気持ちしかない」と語った。【木島諒子、清水晃平】

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森山市長はこの期に及んでも、当時の役人の判断を間違っていたとは言いません。子どもが一人死んでいるのに、周囲の住民は予測がついていたから通報しているのに、市長が役人を守ろうとする意味が分かりません。吉村知事は第三者委員会を持って責任を検証するという暢気なことを言っています。まずは、この時の責任者や関係者を行政の長として処分すべきだと思います。森山市長は、市の虐待担当の担当者と責任者を、吉村知事は児相の今回の担当者と責任者をまず更迭すべきです。

組織の長が直接できることは人事しかないのですから、まず、市民に対して責任ある態度をとるべきだと思うなら役人の更迭です。解雇せよと言っているのではなく、業務の失態を指摘し配置換えをすればいいのです。もちろん格下げは仕方がないことですが、それくらいの責任を果たすべき地位と給与を与えているはずです。その責務が結果的に果たせず市民の信頼を失っているのですから更迭は当然です。

おそらく府に見習って摂津市も第三者委員会をと言い出すかもしれませんが、それでは役人は痛くもかゆくもないのです。しかも、今回のような事件は、会議をするほどの中身ではないはずです。母親だけでなく知人も訴えてきた時点で、仮に児相が取り合わなくてもいくらでも方法はあったはずです。問題は摂津市の担当者の姿勢です。幼児への暴力は死に直結します。暴力の存在を認めた時点で、役所は警察に届けるべきでした。松原拓海容疑者が市の担当者に「もう手を出さない」と約束したから許したという、小学生並みの対応を容疑者にしています。

普通なら、この時点で担当者から報告を受けた責任者が通報を決断するべきですが、漫然と部下に任せていたのですから、更迭されて当たり前なのです。メスを獲得するため少なくない野生の大型動物は子殺しをします。松原拓海容疑者はそれと同等です。野生の衝動に突き動かされて理性など働いていないのです。理性のない人に約束など通じない、そんな基本的な判断もできなかった役人には、二度と同じ部署で働いてほしくないというのが普通の市民感情だと思います。

不登校の子は「タブレット貸与」対象外

不登校の子は「タブレット貸与」対象外の学校も オンライン授業に参加させない理由

2021/09/30 【AERA2021年10月4日号】

新型コロナウイルス感染を恐れて「自主休校」する子どもと、以前から不登校の子とで学校の対応が分かれるケースが見られるという。AERA 2021年10月4日号はその現状を取材した。
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不登校の子どもたちへの対応も学校によって違う。

小学4年の娘が3年前から不登校の女性(44)は9月中旬にツイッターで、「不登校児にはオンライン授業を提供してくれない」という書き込みを見かけた。そのときは「娘の学校はまだオンライン授業さえ始まっていない」と思ったが、その直後、自主休校の児童向けに授業のオンライン配信が始まっていたことを知った。担任に連絡すると、「タブレット貸与は不登校児は対象外。外部の機器からは個人情報の関係で授業は見られない」と言われた。

「担任とは信頼関係が築けていたと思っていたのに、見捨てられたのかとショックだった。娘にどう説明したらいいのか」

小中高校生の保護者らでつくる「全国学校ハラスメント被害者連絡会」(東京都)は、オンライン学習をめぐって一部の学校が特定の子どもに差別的対応をしていることについて9月末までネットアンケートを実施し、実態調査を進めている。同会共同代表の郡司真子さんはこう指摘する。

「排除のタイプは2種類あって、一つはタブレットを配布されないケース。もう一つは、通常級に通う軽度発達障害などで手のかかるお子さんが『タブレットを配布したので学校にこないでください』と言われたケースも。排除された子どもは『自分はダメなんだ』と思い、自死に追い込まれてしまう場合もあり、大きな問題です」

登校再開につながる

不登校の子どもをオンライン授業に参加させない理由は「ますます登校しなくなるから」といったものだという。一方で、オンライン授業が登校へとつながったというデータもある。

青森市では一斉休校中だった昨年4~5月にかけて市内全校でオンライン授業を実施したところ、中学では不登校の生徒の74.5%が参加し、このうち92.5%が登校再開の5月25日以降も登校した。同市教育委員会の担当者は言う。

「登校を再開した子どもへの聞き取りでは、新しい学習形態に興味を持ったことや、周りの子どもの目を気にせず参加できたこと、決して勉強が嫌いではないことがわかりました」

熊本市も、昨春のオンライン授業は特に不登校の児童生徒に対して有効だったという。そこで今年9月、登校が難しい児童生徒を対象にオンライン学習支援事業を始めた。「支援校」のオンライン授業に参加してもらい、必要な場合は支援校の教員から個別指導も受けられる。在籍校のオンライン授業で学ぶことも可能だが、勉強が遅れている場合などは支援校の授業のほうがより手厚い指導を受けられるという。同市の遠藤洋路教育長はこう語る。

「すべての子どもたちに教育の機会を提供することが私たちの使命。多様な選択肢があるということは、子どもたちが居場所をたくさん持てるということです」
(編集部・深澤友紀)

※AERA2021年10月4日号より抜粋
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自主休校の児童向けに授業のオンライン配信が不登校児は対象外と平気で言える教員の頭の中を覗いてみたいです。手のかかる児童にタブレットを配布してやるから学校に来るなというケースも、ホンマかいな?またメディアのでっち上げと違うか?と思うくらい超非常識な学校もあるようです。それってリアルにいじめです。

不登校児にリモート学習をさせたら、そのまま学校に来ないのではないかという理屈にはエビデンスがあるわけではなく、担当の教員の感覚でものを言っているだけです。科学的な根拠もないのに勝手にルールを作るのは、新型コロナの予防策でもわかるように、わが国固有の特性です。

そして、実施後検証もしないので、一度決めたことを延々と続けるのです。人流抑制や飲食店の営業制限と何の関係もなく感染者は増減しているから自粛策は効果があるのかねと言った麻生発言を、尾身会長も八割叔父さんも知らん顔です。

1億人を巻き込んでも、一度決めたことが正しいかどうか振り返ることもできないのです。緊急事態宣言に閣僚として関わったくせに、後出しジャンケンのような発言をする麻生さんもどうかとは思いますが、知らん顔して振り返りもしない専門家チームなら科学者とは言えないと思います。

リモート学習が登校再開につながればいいですが、それにはデータが少なすぎて楽観的な期待のようにも思えます。一番大事なのはリモート学習と対面学習でどんな違いが出るのか調査をきちんとしてほしいと思います。

学力はどう変わるのか。コミュニケーション力には違いが出るのかどうか、対面学習と学力結果が同じなら、それは教え方の問題なのかどうか。そろそろ、感覚だけで判断して人心を惑わすような話は、教育界からはなくしてほしいと思います。子どもが振り回されて可愛そうです。

「聴覚障害者だけの利用禁止」は差別? ロープウェイ対応

「聴覚障害者だけの利用禁止」は差別? ロープウェイ対応めぐり議論・・・運営会社「早急に対策を」

2021年09月30日【J-CASTニュース】

横浜・みなとみらい地区に誕生したロープウェイが、「聴覚障害者だけでは搭乗できない」と伝えているとして、対応を疑問視する投稿がSNS上に寄せられた。

ロープウェイの運営会社は、緊急時に音声で案内を伝えられないためだと、搭乗禁止の理由を説明した。差別とは考えておらず、障害者だけで乗る要望があるため早急に対策を行いたいとしている。

「スタッフが同乗することで搭乗はできる」とも説明
このロープウェイ「YOKOHAMA AIR CABIN」は、日本初の都市型循環式をうたい、2021年4月22日に開業した。JR根岸線・桜木町駅前と赤レンガ倉庫などがある新港地区の運河パークを結んでいる。

投稿は、2021年9月28日にツイッターなどに寄せられ、聴覚障害者がロープウェイに行ったとき、「耳の不自由なお客様へ」と題する資料があったとした。

この資料では、ロープウェイが緊急停止したときは、客が乗る各キャビンに音声のみで案内しているため、聴覚障害者だけでの搭乗は遠慮してもらっているとあった。ただ、スタッフが同乗することで搭乗はできるので、希望があれば窓口の筆談で応じるとして、理解を求めている。

これに対し、ツイッター上などでは、聴覚障害者とみられる人たちから、「こういうことを突然、でかけ先で知ることはショック」「スキー場のゴンドラやリフトは乗れるのに」「でも、これは差別だよね」などとロープウェイ側に疑問や批判が相次いだ。緊急時の案内についても、キャビン内に電光掲示板を設置したり、スマホなどで客に知らせたりできるのではないか、との意見も出ていた。

聴覚障害者用の資料について、ロープウェイを運営する泉陽興業(大阪市)は30日、東京支社の担当者がJ-CASTニュースの取材にこう説明した。

「何らかのアクシデントでロープウェイが途中で停止して救助に向かうとき、コントロールセンターの監視室と各キャビンとは無線による双方向通信でやり取りして、お客様の不安を取り除くことにしています。やり取りが伝わらなければいけませんので、スタッフが資料をお見せしてご案内しています」

「タブレットを貸し出して連絡する準備を進めている」
聴覚障害者がロープウェイに来たときは、付き添いがいるかどうか確認しており、いない場合、「もしよろしければ、スタッフが同乗します」などと伝えているという。事前の連絡なく、いきなり行っても同乗の対応はしているそうだ。スタッフは、手話を勉強中のため、筆談ボードを持って同乗するとしている。

「障害を持つ方に対しましては、搭乗を遠慮していただくという意識はなく、楽しんでいただきたいという気持ちは一緒です」として、障害者への差別であることは否定した。

聴覚障害者だけで乗りたいという要望もあるとして、対策を行う考えも明らかにした。

「タブレットを貸し出して、万一のときはそれで連絡するようにする準備を進めています。できるだけ早く、単独やグループで乗れる手はずを整え、ご案内したいと思っています。SNSやメールなどで客に知らせるとすれば、個人情報の取り扱いについて説明しなければいけませんので、あまり現実的ではないと考えています」

なお、ロープウェイの公式サイトでは、車椅子や歩行補助器具を使用している人も、安全のために1人以上の付き添いをお願いしている。こうした人たちにも、タブレットを貸し出すようにしたいという。

神奈川県内の聴覚障害者2団体から「話が聞きたい」との申し入れがあったため、10月1日に東京支社で会う予定だといい、今回の件についても話し合われる模様だ。

(J-CASTニュース編集部 野口博之)

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障害というくくりで差別かどうかと判断することは、話を難しくするだけです。障害のある子どもと外出すると、公共交通や遊園地で様々な「お断り」に出くわしますが、これは差別かどうかと言い始めるときりがなくなります。リフトだって子どもでも乗れますが、乗せるかどうかは保護者の責任です。事故があったときに乗せたほうが悪いなんて言い出すと「お子様単独の利用はお断り」となります。

今回問題になっているリフトは観光用の閉鎖型カプセルであって、仮に停止して救出が必要になれば、それなりの対応ができるはずです。地上と連絡が取れなければすぐさま支障が起こるとは考えにくいです。聴覚障害者はそういうリスクは理解しているし、乗せた会社が悪いなどとは言いません。当事者が差別だと感じ、第3者もそれに同意する人が少なくないなら、先回りした会社に差別の意図がなくても、障害を理由に差別をしたことになります。

ただ、知的障害や行動障害のある人たちの程度によっては、単独の乗車を断るこることは差別にはならないと思います。もちろん提訴される可能性はありますが、それは子どもやお年寄りなどその人の乗車能力を見て危険回避することは人権の侵害にはあたらないからです。しかし、障害と名がついているからと一律に断るのは差別です。当事者に障害ゆえのリスクが理解できているかどうか、ということも差別かどうかの判断にはなると思いますが、これを論じ始めるときりがなくなります。結局はその地域の文化にも左右されるのかもしれません。差別されたと感じたなら、声を上げるべきですが、そう簡単な問題でもないように思います。

店長、また話しに来たよ 河内長野の駄菓子店再開

店長、また話しに来たよ 河内長野の駄菓子店再開

2021/10/02 【読売新聞】

発達障害抱え経営 常連の子どもたちも笑顔
緊急事態宣言が解除され、行動制限が緩和された1日、休業していた河内長野市錦町の「駄菓子や ほうかご」が再開した。店は発達障害のある田仲 訓さとし さん(41)が、2年前から店長として切り盛りする。子どもたちが安心して過ごせる場所となっており、田仲さんが宿題や悩みなどの相談に乗ることも。店内は再び子どもたちの笑顔であふれている。(吉田誠一)

田仲さんは、中学生の時にぜんそくを発症して入院、病院の院内学級を卒業した。体調が回復した後、新聞配達やスーパーなどでアルバイトをしていた。

もともと人との会話が苦手で、24歳の時に発達障害の一つ、アスペルガー症候群と診断された。それでも就職しようと、何度も電器店の面接を受けたが、うまく返答できず採用されなかった。

その後定職には就いていなかったが、「雇ってもらえないのなら、自分で商売をしよう」と考えた。幼い頃、楽しみながら過ごせた駄菓子店が市内でなくなっているのに気づき、2019年6月、自宅近くの空き店舗を借りて、「ほうかご」を開店した。

店内は駄菓子を並べるだけでなく、子どもたちが遊べる場所として大型のゲーム機を置き、自宅からソファやテーブル、椅子を持ち込んだ。トランプや折り紙などもそろえた。販売する駄菓子はアメやチョコ、グミ、スナックなど約150品目。毎月、大阪市内まで仕入れに出向く。

店には放課後、近くの子どもたちが訪れる。〈常連〉は20~30人。「店長聞いてえな。今日学校でな」と話し始める子どもたちに笑顔で向き合い、宿題を教えることもある。

河内長野市内の女子児童(11)は「家から近く、気軽に立ち寄れる」。別の児童(11)も「お菓子を食べながら、店長に学校であったことをいっぱい聞いてもらえる」とうれしそうに話した。

コロナ禍だった昨年春は「子どもが感染しないように」と休業した。今年も5月と8月下旬から9月まで休んだ。店を再開した1日、店内にはたくさんの駄菓子が並び、訪れた子どもたちが田仲さんとの再会を喜んだ。今後も十分換気をするなどしっかりと感染対策をして営業する。

田仲さんは「子どもたちが大人になり、懐かしんで来店してくれるまで頑張って続けたい」と意気込む。

営業は平日午後3時~5時半、土日と祝日は午後1時~5時半。木曜定休。

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昭和の時代、駄菓子屋は子どもの社交の場でした。学校から帰ってきたら10円玉を握りしめて、タコせんべいにソースを塗ってもらい、くじ引きで一攫千金のプラモデルを狙ってギャンブラー気取りで毎日ハズレの紐を引いていました。店主の多くは高齢者で、めんどくさそうに応対し、時間を見計らって「あんたら大声で近所迷惑やから、公園に遊びに行き!」と金のなさそうな子どもは追い払われたものです。

若者の店主は見かけませんでしたが、そういう人がいても良いかもしれません。どれだけ収益が上がるのか気にはなりますが、安物のお菓子と玩具に引き付けられた子どもらが集まってくるなら、失われた地域コミュニティーの再生が期待できます。なんでもかんでも、何とかセンターや事業所でなくても、自然なコミュニケーションを子どもが学ぶ良い機会にもなると思います。

最近、チラホラと自宅の軒先に箱を並べて土日だけ店を開く様子を住宅街に見つける事があります。収益目的と言うよりは、子どもとのコミュニケーションを楽しむ趣味的なお店なのかと思います。昔はこの他にもミニカーを走らせているプラモデル屋さんや、自転車屋さん、手芸屋さん、卓球屋さん等子どもがたむろするお店がありましたが、採算が取れないのか後継者問題なのかほとんど見かけなくなりました。お店は地域再生のための大事な場所です。