すてっぷ・じゃんぷ日記

今日の活動

5月14日(日)宇野先生講演 発達性ディスレクシアの評価と支援 その2

5月14日(日)、同法人が後援をしている「京都発達性ディスレクシア学習会」が主催する講演会に運営スタッフとして参加をしてきました。前回と同様、発達性ディスレクシア研究会の宇野 彰先生をお呼びし、「発達性ディスレクシアの評価と支援 その2」を講演していただきました。

その中で発達性ディスレクシアの子ども達の漢字指導にについての面白い指導方法があったのでここで紹介させていただきます。

例えば「湖」という漢字を教える時に、漢字を「さんずい(カタカナのシ)」「古」「月」に分け、それを使って文章にします。

例えば、「湖で シずかにすると 古い 月がみえる」

こういった文章で視覚と聴覚のどちらからの経路からも学べるようにしています。ただ講演の中で宇野先生からのデータでもありましたが視覚よりも聴覚の方が子ども達が覚えたという結果が多く、やはり聴覚法が効果があるなぁ、となったそうです。

さて、どんな文章でも子ども達が覚えるわけではありません。子ども達が覚えやすい文章と言うのがあります。それはどんな文でしょうか?次回、じゃんぷブログで紹介しようと思います。

次回は「背」という漢字を使って説明しようと思います。この方法で「背」を教える時にみなさんだったらどんな文章にしますか?一度考えてみてください。

 

ひらがなの曲線

ブログの更新が少し滞ってしまいました。子ども達は今日も元気にじゃんぷに通っています。筆者も五月病に負けずに頑張りますよ!

さて、今回も簡単な文字指導の紹介となります。以前からもここのブログで紹介している「新国語授業を変える「漢字指導」(白石範考/文溪堂/2019年)」からの引用です。

この中で白石先生はひらがな文字について以下のように書いています。

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日本語の文字は、独特の線によって構成されています。文字を美しく書くために練習するのであれば、その形を練習する必要があるのです。長い直線や画一的な円や曲線をいくらなぞっても、日本語の文字の曲線を書くための練習にはならないのです。

例えば「め」「ゆ」「つ」という三つの文字。いずれも右側に膨らんだ曲線がありますが、その形は同じではありません。

(一部省略)

線の形だけではありません。日本語の文字の中には、「とめ・はね・はらい」もあります。「い」「さ」「ふ」の文字にはいずれも「はね」がありますが、それぞれのはねの大きさや向きは違っています。

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上記のようにひらがなはそれぞれ独特の形を持っています。似ているところはありますが、やはり文字を書く練習をするのであればこれらの独特な線をかく練習をまず行う必要がありまs。

例えば「め」という字であれば、右上から左下に向かってかすかに膨らみをもたせながら下ろし、やや角をつけるように曲げた後、大きく膨らませるように書く、という「め」の独特な線の形を練習します。

ただ漫然と練習をさせるのではなく、なぞらせる前に「どの部分を意識しながらなぞるのか」を指導し、文字の練習をします。文字の特徴を意識しながら手本をなぞると、記憶の定着につながることがあります。

 

連休明け

GWが明けました。子ども達も今日から学校が始まります。リフレッシュをして元気に登校をしていると思います。

連休や長期休暇明けは子ども達はリズムを取り戻すことに集中します。発達障害のある子ども達は特にそこにエネルギーを使います。特にこのGWの期間は新年度が始まって1ヶ月ですぐに連休に入ります。4月は新しい環境が始まり、クラスや学習、場所によっては運動会の練習がすぐに始まったりと新しいことだらけで知らず知らずのうちに疲れていきます。

こういった連休明けにはよく「登校しぶり」等の問題が挙げられます。それももちろんケアをしなければなりませんが、「無理をして学校に行っている子ども」がいます。そういった子ども達は影に隠れていますが、学習姿勢等に表れることがあります。

じゃんぷに通う子ども達も今週はちょっと無理をして来るかもしれません。「しんどくなったら休憩してもいいよ」と伝えながら、学習を進めていきたいと思います。

「ちょっと待とうや」

先日のじゃんぷの休憩時間は「ぶたのしっぽ」をしました。低学年~高学年まで入り乱れてのゲームです。

そのグループは半年以上前に同じゲームをしているのですが、それぞれの発達段階の違いもあり、ルールも覚えている子、名前は覚えているけどルールを忘れた子、名前もルールも忘れた子、と様々です。ルールを覚えている子が率先してみんなに説明をしてくれてました。

ただその子は他の子どもが迷ったり悩んだりしている時についつい「早くしてよ」「長い」と言ってしまいます。本人に悪気は全くないのですが、乱暴な口調で言ってしまい時に言い合いになりそうな場面もあります。

その子は今年度4年生になりました。いつかのブログでも書いたかもしれませんが、4年生になった子には「チャレンジする学年だよ」と伝え続けています。その子には「高学年になったら低学年を引っ張っていきます。その口調や態度は通用しなくなります。」と伝えています。その子の乱暴な口調や態度は無意識なもので、なんの悪気もないので「なぜ直さなければいけないのか」と思っているでしょう。ただ、そのままだと損をすることが多くなってしまい、その子の良さより悪いところが目立ってしまうようになります。そういった理由も含めて伝えています。

休憩時間の時の話に戻りますが、ぶたのしっぽの最中、低学年の子がルールがまだあやふやで職員と一緒に確認しながらゲームをしようとしている時、別の子が「まだかな~」と漏らしたときに「ちょっと待とうや」と言ってくれました。上手に理由を説明できない様子でしたが、「待とう」と思い、それが言葉に出てきたことが大きな成長のように感じます。

「今って○○していい?」

 支援学校中学部のCくんは、毎日宿題に取り組んでいます。すてっぷでは活動を優先することを前提にですが、休憩などの空き時間で宿題に取り組む際はスペースを提供しています。Cくんはすてっぷで宿題を終わらせてすっきりしたいという気持ちがあり、自立課題(パソコンなど一人で取り組む課題)とスケジュールを入れ替えて先に宿題に取り組みたいなどの交渉を、自分から職員に伝えることもありました。

 先日は学校から帰ってきてすぐに中学部、高等部の友だちと公園に行く予定でした。ですが友だちの一人が制服から私服に着替えるため、Cくんは予定外の待ち時間が10分ほどできました。もしかしたら宿題をしたいと交渉に来るかもしれないと職員がCくんを見ると、Cくんはスケジュールを公園遊びにした後、ぐるぐると室内を歩き回っていました。おそらくCくんは、自分だけのスケジュールであれば交渉に来るところ、友だちを待つという自分では時間が分からない状況だと、何をすればいいのかわからず、気持ちも落ち着かずに歩き回っているのだと感じました。ただ、友だちが着替えるのを待つという状況はこれまでも何度もあったので、Cくんも待つ時間をある程度把握できているだろう、であれば交渉も自分からできるようになるのでは、と考えました。

 そこで職員はCくんに話しかけ、まず状況を整理しました。Cくんは「Dさん、○○くん、△△さんと行きます。」「公園に行くのを待っています。」と答えます。そして職員が「なんで待っているのでしょう?」と尋ねると、Cくんは少し考え、「Dさんが着替えているから?」

と答えました。そこで職員は「Dさんが着替えるときは10分くらい時間ができるから、職員に交渉してもいいよ。」と伝えました。そして「今日みたいな場合によってできる時があるかもしれません。自分がすることだけじゃなく、お友達がすることも考えて、何ができそうかを自分で考えたり行動してみたりするのは大事な力になるよ。」と話をしました。

 職員が話をした翌週、さっそく同じ状況がやってきました。Cくんは自分のスケジュールと活動全体の予定が書かれているホワイトボードを見てから、職員に「公園の出発まで宿題していいですか?」と自分から交渉できたのです! 職員はあえて「どうして?」と尋ました。するとCくんは「Dさんが着替えを持って、着替えに行ったから。」と答えました。職員はCくんが交渉できたことをほめ、「友だちの着替えが終わったら、宿題が途中でも切り替えてね」と約束して、Cくんを宿題をするスペースへ案内しました。そして職員が「Dさん準備できたみたいだよ。」と伝えると、約束通り、宿題を途中で切り上げて、公園へ出かける準備に向かうことができたのでした。

 現在では、公園へ行く前の時間だけでなく、他の友だちを待つような状況でも、自分や全体のスケジュールを見て、宿題をする時間を見つけたら職員に交渉することができるようになりました。自分のことなら予定が分かってスケジュール交渉できていたCくんでしたが、その力を友だちとの予定の中でも発揮できるようになったことは、社会性、コミュニケーションの課題があるCくんにとって大きな前進であったと思います。取り組み前の時間にも支援のタネがいっぱいありますね。

通常級での支援

昨年12月の文科省での調査で、発達障害の可能性がある小中学生は学級に8.8% とありました。現場での実感としてはもう少しいると感じているでしょう。

文部科学省初等中等教育局特別支援教育課 特別支援教育調査官の加藤典子先生のが調査結果について書いた寄稿を読みました。最後に大事なことが書いてあったのでこちらに引用させていただきます。

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通常の学級には、発達障害を含む障害があるだけではなく、教育上特別な支援を必要とする児童生徒が在籍していることを前提に、学級経営や授業づくりを行うことが必要であるとともに、学校全体として個々の児童生徒の障害の状態等に応じた指導内容や指導方法の工夫を、組織的かつ計画的に行うことが求められています。

また、令和4年3月に公表された「特別支援教育を担う教師の養成の在り方等に関する検討会議」報告において、「特別支援教育の考え方は、特別支援教育分野の専門性向上や進展のみならず、また、障害の有無にかかわらず、教育全体の質の向上に寄与するものである」と示されていることからも、特別支援教育を基盤とする校内支援体制の構築と充実は重要な意味をもっています。


全ての教職員が児童生徒に対する配慮等の必要性を共通理解するとともに、全ての児童生徒がお互いの特徴を認め合い、支え合う関係を築いていけるよう、児童生徒の多様性を踏まえた学校づくりや学級づくりを進めていくことが重要です。

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引用した部分に書いてある通り、通常学級の中にも特別な支援を必要としている子どもがいる、ということを前提に学級経営をしなければならない時代です。

しかし特別支援に力を入れている学校と、それが出来ない学校の二極化がされているように思えます。通常級では担任が出来なかった教諭や、講師をとりあえず支援級にあてがう学校が今でもあります。また、通常級の担任であっても支援が必要なことはわかりつつもどうしたらよいかわからないまま一年が進む、こともあります。(中には様々な理由をつけて個別支援をしたがらない教員もいますが…これは論外ですね。)

教室の中に特別支援が必要な子がいるのであれば全員にすればよいのです。必要のない子は必要ない、と自分で判断も出来るでしょう。いじめ等に繋がる、といった消極的な理由で特別支援を避けるのではなく、積極的に特別支援を用いる教員が増えてほしいと思います。

今までの学習が通用しない「分数」

特別支援教育士資格認定協会が発行している「LD/ADHD&ASD 2023年4月号」に分数について面白い記事がありました。分数の難しさについて2つのポイントを教えてくれています。

1つめの難しさは、分数はさまざまな点で整数とは異なる点にあります。小学校学習指導要領解説算数編(文部科学省 2017)で「小数が十進位取り記数法で表されているのに対して、分数は二つの数の関係で一つの数が表されており、構成する単位が分数によって異なることに着目する必要がある」と説明されているとおり、分数は整数・小数とは異なり、10進法が当てはまりません。たとえば、同分母同士の分数の大小判断では整数的な理解で解決することができますが、異分母の分数だと整数的な理解では対応できず、分数的な理解が必要となります。すなわち、整数は1つの数で1つの量をあらわすという明確な関係がありますが、分数では分子と分母という2つの数を使うことによって、初めて1つの量を示すことができる点に特徴があります。


2つめの難しさは、子どもたちが生活の中で理解している分数と算数で習う分数のズレにあります。子どもたちは就学前の年長児から1、2年生において、分数概念として、全体から部分に分割するインフォーマルな知識は獲得していることが知られています。たとえば兄姉には多めに、弟妹には少なめに分けるような、等分配ではない生活経験をとおして、「“半分にする”とか“等しく分ける(分配する)”という行動を獲得しています。


一方、学校で習う分数は、小数同様、1以下の端数(はしたの数)を扱う学習として位置づけられています。そのため、このインフォーマルな知識を算数でうまく活用できません。幼児は生活体験の中で、丸いケーキを3人で分けたときと4人で分けたときの1人分が多いのはどちらなのかをすでに知っているにもかかわらず、分数を学習した後に「1/3と1/4はどちらが大きいか」という問題に誤答してしまいます。

このように分数は今まで学習してきたことが通用しないことが多いです。そのため子ども達が混乱して勉強が嫌になったり、本質を理解しないまま学年が上がりつまづいてしまうこともあります。現在は分数パズルなどの視覚的に大きさがわかりやすい道具もあります。そういったものを活用して子ども達が混乱しないような授業をしていきたいですね。

トランプの神ゲー「たこやき」

「たこやき」について→ https://omocoro.jp/kiji/268690/

 じゃんぷの休憩時間に新しいゲームを取り入れました。「たこやき」という日本発祥の比較的新しいトランプゲームです。2人~3人でするゲームで、戦略性はなくほとんど運によって勝負が決まるゲームです。

簡単なルールについては上記のリンクの記事を見ていただきたいのですが、これがかなり子ども達にウケが良く、大盛り上がりをしました。

ただ順番を数えるといっても年齢や発達段階の違う子ども達です。毎回1から数える子もいれば大体の見当をつけて数字を数える子もいます。能力に差はあれど、それがゲームの結果に左右されずに楽しめる良いゲームでした。またいろんな曜日の子ども達と楽しんでみたいと思います。

 

当たったらホームラン!

 「ぼく、野球苦手やねんなぁ…。」とつぶやいたのは、小学生のBくん。Bくんは野球に限らず、苦手だと思っているものや遊びが多く、また拒否しやすい傾向があります。すてっぷに来た1年前くらいから、野球にも少しずつ取り組んできました。当時、職員がBくんに苦手な理由を聞くと、「ぼくは、投げることが下手やねん。」「グローブでボール も取れない。」「バットで打つこともできない。」といった否定的なイメージが。それがこの1年取り組んできた中で、少しずつ抵抗なく遊べるようになってきて、ティーバッティングも以前より打てるようになって喜ぶことが増えました。友だちから「キャッチボールしない?」と誘われても、「ぼくは、絶対しない!」と強く拒否していたBくんでしたが、最近では、誘われると「いいよー。」と返事してキャッチボールに向かう姿も見られます。

 先日も、友だちと一緒にティーバッティングをして遊んでいました。Bくんのバッティングも上達しましたが、他の友だちも上達していて、この日は友だちがホームランを連発。「ホームランやー。すごいなぁ。」と感心するBくん。それに続けてとバッティングにチャレンジしましたが、その日の調子はあまりよくなく、友だちほどボールを飛ばせませんでした。バッティング後、「ぼく、野球苦手やねんなぁ…。」と、久々のBくんのつぶやき。見るとBくんは肩をがっくり落としていました。

 そこで職員は一計することにしました。次のティーバッティングの取り組みの日。普段は公園やグラウンドなどの広く空いた場所で取り組みますが、その日は高架下のコンクリートの壁の前にティーを置きました。壁までの距離も、普段のホームランの距離の半分くらい。いつもと違うセッティングに子ども達には?が浮かびます。職員は「今日は壁に当たるとホームラン!」と説明すると、子ども達は狙え!ホームランと言わんばかりに次々とバッターボックスへ。Bくんも意気揚々とバッティングにのぞみ、1回目は3球中1球が見事壁に! 「ホームランだよね?やったー。」と喜ぶBくん。2回目では、なんと3回とも打ったボールが直接壁に当たって3連続ホームラン!「3回連続や!(ヤクルトスワローズの)村上選手みたいや!」とBくんは大喜びでした。

 普段のティーバッティングでは、やった!ホームラン!と言っても、小学生の遊びのことですので、プロ野球みたいにフェンスを越えたといった視覚的にわかりやすいものではありません。Bくんも、これはホームラン?と疑問に思うことが何度もあったでしょう。今回Bくんがホームランを打てた!と実感できたのは、「当たったらホームラン」という視覚的にわかりやすいルールにしたことが大きいと思います。いつもの遊びとは違うやり方やルールにチャレンジすることで、普段とは違う楽しみが生まれます。そこで成功体験を積めたり、感じた事を職員や友だちに伝えたりすることも、子どもの力になっていくのではないでしょうか。

そのうちじゃなくて今すぐがいいの♪

最近Tiktokで「新しい学校のリーダーズ」の「オトナブルー」が流行していますね。Tiktokを知っている子ども達からちょくちょく話を聞くこともあります。タイトルはその曲の歌詞ですが、本記事の内容とはほとんど関係ありません。すみません。

子どもが「〇〇をしたい!」と遊びやゲームを要求した時に「宿題をしてから」「やることをやってから」と約束することがあります。このブログで何度も書いている応用行動分析(ABA)の理論を基に、「してほしい行動」にアプローチし、それを行動した結果として「良いこと」がある=強化としているのです。

ただ子どもの発達段階によっては「~~をしてから」ということ自体が難しいことがあります。特にASDの傾向がある子どもは「0(出来ない)か100(出来る)」しか見えていません。「今できない」=「できない」となってしまうのです。つまり「そのうち」じゃなくて「今すぐ」がいいのです。そういった子にどれだけ「後から出来るよ」と伝えても良い強化には繋がらないこともあります。

そういった子にはまず「したいこと」を思い切りさせます。「したいこと」がひと段落ついた後、ほんの少しの量でいいので「してほしい行動」を提示します。この約束が子どもがパニックになる前に提示できることが一番良いですね。

基本的なセオリーは抑えつつ、子どもによって支援の形を変えることが特別支援には必要な視点だと考えています。ただ公教育ではそれが薄まってきているように思えます。これについてまたY先生と話したのでそれも後日ブログに書く予定です。