すてっぷ・じゃんぷ日記

2022年2月の記事一覧

譲らなあかんねんで!

新入りの2年生のU君が「タブレットは早い者勝ちやねん,俺が一番に取ったろ。」と言うとV君が「タブレットは障害の重い子に譲らなあかんねんで!俺らはパソコンでも漫画でも遊びいっぱいあるやろ!」と言いました。さらにその後「○○ちゃんは車いすやろ、せやから(だから)...」「○○君はパソコンとかの操作は難しいやろ、だから...」と理由の説明を始めました。

私はとても驚きました。確かにV君にはここ半年程「(タブレットに拘りのある)Wちゃんがきちんとお願いをしに来たら約束をして譲ってあげてね」と交渉の練習をするよう伝えていました。

しかしいつもは「え~」「しゃあないなぁ…」と言いながらWちゃんと交渉していたV君が,U君の言葉に同調するのではなく「違うで!」と言い切り,さらに理由まで説明したことに驚きました。

最近,小学生をきちんと理由を説明するとタブレットを障害の重い子に譲ってくれます。(平等と公平: 2021/05/20)の時は支援学校に通う友達と自分たちの配慮の違いについて「わからん!」と言っていた子ども達が「最初は嫌やったけどやっと理由わかったわ」と言っています。この中にはもうすぐすてっぷを卒業する子もいます。あと少しですが,新しく入った後輩にそんな姿を見せてくれていることがとても頼もしく思います。

予告をしてください

Gちゃんが公園から帰ってくると「タブレット~~~!!!」と大騒ぎし,Pちゃんが使っていたタブレットを取ろうとしていました。Gちゃんはタブレットの中でもお気に入りの物があり,それを他の子が使っていると「私が使うつもりだったのに~!」とパニックになります。

Gちゃんは今スケジュールで活動の見通しを持つ練習をしているところです。「きゅうけい」のスケジュールの時は「あのタブレットで遊ぼう!」と決めているのでしょう。

しかしGちゃんの好きなタブレットを他の友達が使っていても混乱しない時があります。「他の子が使ってるよ」と事前に予告をした時です。公園遊びが終わった後,「すてっぷに戻ったら何するの?」と聞くと決まって「おやつして,ピンクタブレット!」と答えます。その時に「あ~…でも○○ちゃんが音楽聞いてるかもよ~?その時はどうする?」と返すとGちゃんは「ポポちゃん?(人形の名前)おままごと?」と代替案を出し,すてっぷに着くと自分で他の遊びを始めます。

上記のように関係性が出来ている職員なら口頭のやり取りでも見通しが持てますが,最初は「すてっぷ」「タブレット」「友達の顔写真」「他の遊び」のカードをセットにして「帰ったらこれ(タブレット)したいんだよね。でも○○ちゃんが使っていたらどうする?この中から選んでね。」と練習をしていました。それを繰り返す内に練習に取り組んでいた職員とは口頭で約束が出来るようになったのでしょう。

Gちゃんの中では「きゅうけい」=「ピンクタブレットで遊ぶこと」になっています。(これは「きゅうけい」カードが抽象的なことも原因ですが…)それが突然崩されるとパニックになるのも当然です。Gちゃんが安心して過ごせるよう,事前の予告を徹底していきたいと思います。

手伝ってください

O君は通所したての頃は好きなことが中々見つからず,結局は大人の注目を得るために不適切行動をしてしまう子どもでした。インスタントラーメンとサイダーが好きなことがわかったので,ここ1年程「山登りの後ラーメン作りね。」というプログラムを設定していました。O君にとって「大人に見てもらえる。」「好きなラーメン,サイダーが貰える。」ということがわかったので徐々に不適切行動はなくなっていきました。

室内での過ごしは休憩時間が多く,O君にとって「何をしたらいいかわからない!」という時間もありましたが最近はさみを使う活動が好きなことがわかり,牛乳パックを切ったりペーパークラフトを作る活動を取り入れています。

簡単なペーパークラフトなら一人で作れるO君ですが,しきりに「○○さん,手伝ってください。」と援助を要求します。「どうしたの?」と見に行くとまた一人で黙々と作業に取り掛かります。

結局は「先生,見ててね。」ということでした。近くにいると「手伝ってください。」とは要求しません。不適切行動もなくなり,様々な好きなことを見つけているO君ですがやはり最大の強化子は「大人の注目」なのです。

「ずっと見てるわけにはいかんけどなぁ…」と思いつつ得意なことに取り組んで「見ててね。」と要求している方が今までの姿の何倍も良いです。O君のことを褒めながら,少しずつ離れ,それでも「見ているよ。」とゆっくりO君を見守ろうと思います。

外にも楽しみを

J君は自立課題とタブレットが好きな中学部の子どもです。自立課題が好きなのは恐らく「何をしたらいいのかすぐにわかる」という理由でしょう。他の子に用意した自立課題でも自分のものと勘違いして始めることもしばしばあります。

自立課題が終わった後,決まってタブレットを要求します。タブレットではYoutubeで好きな音楽を聴いているのですが,その時に体を大きく揺らしながら「う~~~~!!」と大きな声を出します。

楽しくて気分が良いから体を揺らしたり声も出すのだと思いますが同じ部屋の中には体がぶつかると転倒する子どもや大きな声が苦手な子もいます。「エネルギーが有り余っているのだろう」と思い,戸外での活動を取り入れました。

するとJ君は拒否はしないのですが散歩中職員に抱き着くようにつかまり,引っ張ってもらおうとします。J君は戸外での活動の経験が少なく,不安もあったのかもしれませんが、あまり乗り気ではありませんでした。

J君は焼きそばが大好きなので,他の子に取組んでいるように山登りの休憩時にコッフェルで焼きそばを作って食べることにしました。一度行ってみると他の子のように調理中にのぞき込んだりしないので「あんまり好きじゃなかったかな…」と思ったのですが「出来たよ~」と出すとパクパクと焼きそばを食べ始めました。「食べるのが好きなんか~い!」というオチでしたがJ君にとっては「山登りをしたら焼きそばが食べることが出来た」という経験になったと思います。

室内での活動が好きな子は戸外での活動は最低限しか取り組みません。そして、嫌いな活動には同時に大好きなものを用意することが必要だと思います。そして「まぁやろうかな」と取り組みにも参加し,褒められる経験を積み重ねていけば、好きではないが嫌いではないことが増やせるのではないかと思います。

まだまだ戸外は苦手な様子のJ君ですが,好きな焼きそばやチョコ菓子を持って山登りに向かいたいと思います。向かった先で好きなものが貰えて褒められた,という経験を積んでいく中で散歩も好きになってくれたらな,と思います。

数のたしかさ

放デイじゃんぷでは、おやつタイムは子ども達が自分で50円になるようにお菓子を選びます。いってみれば駄菓子屋方式です。電卓を使ってもOKです。それは、細かな計算は電卓に任せても、『どれとどれを合わせたら、大体いくらになるか』『残りのお金でどのお菓子なら買えるのか』という概数を考える経験には十分だからです。

 
利用を開始したとき、自分の学年も、今日の日付も「知らない」と言ったAくんがいました。宿題ではくりさがり・くりあがりの計算をしています。しかし、5このおはじきのうち2つがコップの外にあるのを見ても、コップの中にあるおはじきの数は答えられません。数の操作は手続き的に理解できるのに、数の感覚や量概念はとても未熟でした。

自立課題では、具体的に数を分けたりまとめたりする、シューボックス課題(シューズボックスタスク=靴の箱を使って課題をセッティングすることを語源にしている)を取り入れました。できるだけ実際的に数を扱う課題を取り入れてみました。もちろん、おやつも50円分選んでもらっています。

A君の自立課題は1つずつかごに分けて入れているので、棚にあるかごの数が、その日のA君の課題の数です。この間、Aくん、数の力がしっかりしてきたなあと感じるやりとりがありました。「今日は勉強する気にならへん。あんなたくさんできひん」と言っていたAくんです。

「今日の勉強、いくつあるか知ってる?」と職員が聞くと「うん。5こやろ」と。「へえ、よく知ってるね」と感心すると「だって数えたもん。」とAくん。「じゃあ、3つにしようか」と言うと「うん」「…3つやったら、べんきょう嫌だけど、する気になる」と言いました。数で交渉ができるようになり、A君も指導者も同じ見通しが持ちやすくなりました。オセロやトランプのような新しい遊びが楽しめるようになったのも、数の理解の力がしっかりとしてきた賜物です。

今日は、コグトレ※教材で『まとめる』シリーズが10枚全部できたので、王冠のついたミニ賞状をゲットしました。一緒に、これまでやったプリントを数え「こんなにがんばった」とふりかえりました。数のたしかさは、子どもの世界を豊かにすると、Aくんに教えられます。

※コグトレ=認知 ○○ トレーニング(Cognitive ○○ Training)の略称で、ここでは主に基礎学力の土台作り(覚える、見つける、写す、数える、想像する)として、認知機能強化トレーニング(Cognitive Enhancement Training)のことを取り上げています。この他に、認知作業トレーニング(Cognitive Occupational Training)、認知ソーシャルトレーニング(Cognitive Social Training)があると言われています。

 

わかりません!

最近1年生のRちゃんが「言うことを聞かない!」と話題になっています。到着時に到着処理の手順を見せても靴を脱ごうとしない,歩いている時に違う方向に向かっている場所とは違う方向に行こうとする等です。

同じようなことが学校でも起こっているようで,お迎えに行くと「Rちゃん言うこと聞かないんです。」と学校の先生も話しているようです。

そんな話を聞いたので一旦Rちゃんの立場になって考えてみました。Rちゃんは機能的言語の見られない子どもです。こちらの言っていることもどの程度理解しているかはわかりません。なので言葉で指示されてもいまいちわからないでしょう。そして文字も読めないので到着処理の手順書を見せられても恐らく理解は出来ません。(一応絵も入っていますが視覚優位の子でも抽象化された絵だけでは100%理解できるものではありません。)なので言葉で指示されればもっと「わかりません!」となるのは当然です。

ではどのように約束するのがいいか考えてみました。まず散歩の時に手を繋いで歩いてほしいのなら,親子が手を繋いでいる写真を見せて「これで歩こうね。」と約束をすれば出来るのではないかと提案しました。結果は成功し,Rちゃんは約束通り手を繋いで歩きました。

到着処理の手順についてはスモールステップで進めようと考えています。Rちゃんは「公園に行きたい!」という思いが強いです。なので「○○が終わったら公園に行けるよ」と交渉をしようと思います。まずRちゃんに「公園に行きたいです。」と公園の写真で要求をさせ,「じゃあ連絡帳を先生に渡して,鞄をロッカーに入れてからね」等,到着処理の一つを指示し,それから公園に行きます。それが出来るようになったら少しずつ手順を増やしていきます。

指示の仕方も鞄を片付けている写真にする等,試行錯誤しながら交渉も取り組もうと思っています。さて,Rちゃんがどのように変化するか楽しみです。

お世話がしたい!

来年3年生になるI君は先輩のお兄さんお姉さん達のことが大好きです。「一緒に○○しよう。」と誘われたらついて行き,先輩たちが荒い口調で話すと真似をして同じように口調が荒くなります。最近は同年代の利用者が増え,同じ年代の友達も出来ています。それも嬉しいようで「一緒にサッカーしよう!」「すてっぷに着いたらマイクラで○○しよう!」と楽しく話している場面が多く見られました。ちなみに同年代の友達は丁寧な口調で話すので,そのグループにいるときはI君も丁寧に話します。

最近,来年度から通う放デイを探すため就学前の子どもが体験に来ています。ここ1~2週間程立て続けに体験,見学の子どもが続けてきました。I君が来る曜日と被るので,体験の際はI君を含めたグループで設定遊びをすることが多いです。

するとI君は「準備は何をしたらいいですか?」と聞いてきました。すてっぷに到着したら真っ先に「パソコンする時間ある?」と言っていたI君が設定遊びの準備を優先したのです。そして体験の子が緊張して入りにくそうにしていると「一緒に遊ぼう」「おいで,ここに座るんだよ」と,お世話をする姿も見られました。

すてっぷには「振り返り」といってその日の行動や感情を言語化する時間があります。その時に「どうして積極的に準備してくれたの?」「誘導してくれて助かったわ,ありがとう!なんで誘導しようと思ったの?」と理由を聞いていましたが,今までは上手く話すことが出来ず「なんでかな~?」と言っていたI君でした。しかし先日理由を聞いた時は「ちっちゃい子だったから…」と少し話してくれました。「小さい子だったから僕がリードしなきゃ!ってことかな?」と返すと「多分そういうこと」と答えてくれました。

年上の先輩たちに引っ張られながら遊んでいたI君が同年代の友達,そして自分より下の友達…と集団が変わるにつれて様々な姿を見せてくれています。ついつい同じ集団で活動を組んでしまいがちですがI君のぐんぐん成長している姿を見て,多様な集団を組んで交流することって大事だな…と反省をしました。I君ありがとう!

生活リズム

G君がパソコンのキーボードを壊しました。理由を聞くとタイピング練習をしている時に公園に行っていた友達がぞろぞろと帰ってきて部屋がうるさくなり,集中できなくてイライラしたから,と話してくれました。

G君は子どもの大きな声が苦手で,イヤーマフを要求することはありましたがそれでイライラし,物に当たるということはありませんでした。

思えばG君は去年の11月辺りから休日のプログラムの時,起きられなくて欠席したり遅刻して来ることが何度かありました。生活リズムが乱れ,それが気持ちにも関係しているのかもしれないと考え,G君と話しをしました。

生活リズムと情緒の関係についてまだよく理解できていない様子でしたが,最近の睡眠時間と気持ちの変化について一緒に記録を取り,G君が自己理解できるよう工夫しながら支援をしたいと思います。また,春先の体調の変化が睡眠を妨げる場合もあるので,ドクターと相談することが大事だと青年期を迎えたG君に話していこうと思います。

僕猫飼ってるんだ

(教えて! : 2021/10/26 )でのA君ですが,最近は友達に自分が飼っている猫の話をしたくてしょうがないそうです。A君が猫を飼い始めたのは半年以上前のことで「今更なんだけど~」から始まるのがお決まりです。

話しかけた友達が「かわいい?」「名前は?」と聞くと嬉しくなり,饒舌になるA君ですが,そこから話を広げることはまだ難しいようです。話しかけた友達が「そうなんだ」と答えるとそこで終わりになり,A君は独り言を話し出して自分の世界に入ります。

しかしA君はそれだけではなく,友達や職員がその話に興味を持って「僕は猫も好きだけど犬も好きだなぁ」「私は犬を飼ってるよ」と話を振ってもあまり興味がないようで最終的に「A君、聞いてる!?」と言われるまでがオチになっています。

他人に聞いてもらえる喜びを感じるようになり,自分から話しかけるようになったA君に新たな課題が見えてきました。まずはナラティブストーリー(ソーシャルストーリー)で「自分の話をしたい時は、相手の話も同じくらい聞いてあげると聞いてもらえることが多い」ことを教えようかな,と考えています。

任せたよ!

仕切る : 01/29でのV君がBさんに「僕,人に教えるの苦手やからBさんが卒業までにW君にマナーを教えてよ」とお願いをしていました。Bさんは「卒業する私よりもV君が教えた方がいいんじゃないの?」と答えました。V君は「みんなそう言うやん~!」と言いつつ「しゃーないかなぁ…」と少し納得している様子でもありました。

前回は職員から「仕切ってほしい」とお願いされると「うーん…」と悩んでいたV君ですが,先輩に言われるとやる気を見せます。職員等,大人からの声掛けも大事ですが,先輩や友達からの声掛けは大きな力を持っています。大好きな6年生の卒業が近づくにつれてこれからの自分の役割について真剣に受け止めているようです。

「やっぱりW君は苦手やなぁ」と言っているV君ですが,先輩達に後押しをしてもらって少しずつやる気が出てきているようです。V君,任せたよ!

 

缶がありません!

職員がK君に「アルミ缶を20本持ってきて缶潰しをしましょう」と作業課題の指示を出しました。するとK君はアルミ缶数本と,ペットボトルを十数本持って来ました。職員が「ペットボトルじゃなくてアルミ缶だよ。」と指示を出してもK君は動こうとしません。

職員がアルミ缶のある倉庫を見に行くとアルミ缶は底をついていて、K君が持ってきた分しかありませんでした。K君は「アルミ缶が少ししかないけど20本って指示されたから足りない分はペットボトルを持っていくか」と判断したのでしょう。

倉庫にアルミ缶を取りに行った時,あるいは「ペットボトルじゃなくて~」と言われた時に「ありませんでした。」「できません。」といったことをK君が職員に伝えることが出来たらすぐに解決できたと思います。

K君は機能的言語のみられない子ですがiPECSを用いてコミュニケーションを取ることが出来ます。しかし,こうした場合に援助を求めることができません。作業課題で欠品を職員に「ありません。」「○○が△個足りません。ください。」といった練習はしているのですが、汎化はしていないようです。機会をとらえて練習が必要だと感じました。

理由を考える

悪くないのに「ごめん」て言うか? : 01/20)でのQ君が,Yさんと職員でドッジボールを楽しんでいました。Yさんは鬼ごっこが好きで,「鬼ごっこしたい!」と提案をしましたがQ君がシュン...と黙ったので「じゃあドッジボールはどう?先生と3人でチームを回しながら遊ぼうよ」と別の提案をしてくれました。

するとQ君は「それなら一緒にやろうかな!」と乗り気になり,楽しく遊ぶことが出来ました。

振り返りの時に「今日は積極的に遊んでいたけど何か理由はあるの?」と聞くと「うーん…」と考え込んで,「前に先生が言ったようにルールのある遊びが好きなんかな,鬼ごっこは嫌やけど色鬼とか高鬼は楽しかったし。」と話してくれました。「やっぱりそう思う?じゃあ次鬼ごっこの提案があった時は『何かルールのある鬼ごっこやったらいいよ!色鬼とか!』って話してみたら?」と職員が提案してみると,「ちょっと考えてみるわ。」とQ君は話してくれました。

以前はすぐに「わからん!」と言っていたQ君が自分で理由を考えようとしていたことに驚きました。Q君はナラティブストーリー(ソーシャルストーリー)に取り組んでから時間を守るようになったり低学年の友達と優しく接してくれるようになりました。まだまだ形式的な他者理解ではあるけれど,この理解に支えられて,友達に断るときの「理由を考えてみたら?」という提案が役に立ったのかもしれません。

引き続きQ君と社交マナーの背景にある他者理解に取り組み,ロールプレイなどにも取組んでいこうと思います。

友達との約束

PちゃんはiPadでゲームをすることが好きな子です。特にピンクのカバーを付けているiPadにはお気に入りのゲームが入っている様で,他の子がそれを使っているのを見ると天井に向かって「ピンクタブレット~~!!!」と大声を出してパニックになってしまいます。その度に適切な要求行動に修正をする「やり直し」をお願いしています。

U君がピンクタブレットを使っている時はPちゃんはパニックになりません。落ち着いて「貸してください」とお願いをしに行きます。ここ半年程,U君にPちゃんがピンクタブレット使いたいと適切に要求してきたら拒否しないで『17時になったら僕と交代してね』と交渉する様に取り組んでもらいました。Pちゃんには交代の練習,U君には交渉の練習と言うことで半年間積み重ねてきました。今は,PちゃんはU君との交渉の意味が分かり,U君が「時間になったから僕に貸して」と言うとPちゃんは「どうぞ,ありがとう」と言って渡すことが出来るようになりました。

すると先日,C君がピンクタブレットを使っているとPちゃんは「ピンクタブレット~!」と叫んだのですが,C君がU君と同じように「この時間になったら交代してね」と交渉をするとPちゃんは時間ぴったりに「どうぞ,ありがとう」と渡したのです。U君と約束をする経験を積んでことが他の友達に対しても出来るようになりました。これにはC君も他の職員も驚いたそうです。適切な行動をした時に褒めればその行動は強化されていきます。ABA(応用行動分析)の成果を目の当たりにした瞬間でした。

アイコンタクト

Gちゃんと一緒にその日の山登りで食べるラーメンとお菓子を選んでもらおうと買い物に行きました。すてっぷから近いドラッグストアに,Gちゃんはルンルンでお買い物に行きました。

機能的コミュニケーションの弱い子なので,会話での確認は難しいですが,「たけのこの里」を取ると一度職員の顔を覗き込み,次にサッポロ一番を取るとまた職員にアイコンタクトを取ってきました。「これでいい?」の合図です。

以前までは欲しいジュースがあったら冷蔵庫に向かって「ジュースください!」とお願いしていたり,自分がのりたい車に乗れるよう配車表の顔写真を動かしたりしていたGちゃんが,大人の了解がいる行動には確認を求めるようになってきたのです。

視線が合うようになってきた:2021/10/21でも書きましたが,適切なコミュニケーションをした時に褒める,ということを繰り返してきました。最初はご褒美のお菓子と褒め言葉でしたが,褒める事を続ける中で、大人の評価を意識できるようになってきたのです。最近ではGちゃんが「ルールが分かりにくい子ども」から「適切に教えればルールが守れる子ども」という見方に変わってきています。

今Gちゃんにスケジュール支援をしています。以前とは違い,スケジュールを勝手に動かすことはありません。少しずつ練習を重ね,定着をさせていこうと思います。

先輩の姿を見て学ぶ

新しくすてっぷに来た2年生のY君はとても穏やかな子ですが,中々自分の気持ちを言い出せない子です。マインクラフトが好きなようですが,遠慮をしているのか友達がしているのを後ろから眺めています。職員が「一緒に遊んでもいいよ」と促しますが「見てるだけでいい」と答えます。

そんな中,同じ2年生のZ君が「一緒にマイクラしよう」と誘ってくれました。するとY君は少し考えて「やる!」と言ってZ君と一緒にマイクラを始めました。

Y君が最初見ているだけだったのはパソコンの操作方法がわからなかったから,ということでした。それをZ君に伝えると,「僕教えるから一緒にやろうよ」と誘ってくれたのです。

今まで先輩のことが大好きで,誘ってもらいながら一緒に遊んでいるだけで楽しかったZ君が初めて自分から友達のことを「一緒に遊ぼう」と誘いました。Z君自身は「なんで誘ったのか?」と上手く理由を話すことは出来ませんでした。しかし,きっと今までの先輩の姿から「こうしたら友達は喜んでくれる!」と学んだのでしょう。

友達と遊んだ方が楽しいやん

設定遊びが終わった後,W君が「スマブラ(ゲーム)をしてもいいですか?」と聞いてきました。W君は宿題が嫌いなので,事業所で宿題をやりたがらないのですが,今は「終わったら好きなゲームが出来るよ」という約束で頑張っています。シャイなW君ですが,とても大好きなゲームなので「ゲームがしたい!」と積極的に申し出てきました。

すると1つ上のR君が「僕も一緒にやっていい?」と聞いてきました。初めは「パソコンでゲームする」と言っていたのですがW君が「スマブラしたい!」と言っているのを聞くと少し考えて職員に聞いてきたのです。許可をすると2人で協力しながら配線等の準備をし,楽しくゲームをしていました。

後からR君に「最初はパソコンしたいと言っていたのになんで変えたの?」と聞くと「あのゲームは友達と一緒にやって面白いやつやから」と答えてくれました。普段は口が悪い,と責められがちなR君ですが友達のことを思って行動する一面も持っていたのです。

今すてっぷに通っている小学6年生の子ども達は3月で卒業をします。「一気に6年生卒業しちゃって大丈夫かな?」と思っていましたが,今日の姿を見て安心をしました。

“書いて覚える学習”に必要な力 Y先生のじゃんぷ通信11

「書いて覚える学習」に必要な力 Y先生のじゃんぷ通信11

学校の宿題には漢字ドリルを毎日書いて覚える宿題がどの学校にもあります。確かに我々親世代も、小さい頃は書いて覚えることを経験しています。書いて覚えることに何の疑問も持たないのが当然かもしれません。

先日「読み書き障害」の研修会があり、その中で発達性ディスレクシア研究会理事長の宇野彰先生からこんなことを教えてもらいました。
実は“書いて覚える学習”の中には次の5つの力を同時にやっているということでした。
①形態をとらえる「視知覚の力」(目で漢字等の文字の形をとらえる) 
②とらえた形を覚えておく「視覚記憶」の力(目で見たものを短時間覚える力)
③だいたいは読めるので「音の記憶」の力(音としても記憶する力)
④意味も分かるので「意味の記憶」の力(その漢字の意味も記憶する力)
⑤「筆順の記憶」の力

子ども達がノートに書く作業はじつはこんなに多くの力を使っているのです。ほとんどの子ども達は大人と同じように無理なくこなしていますが、この力のどこかで困っていると、それをカバーするのにエネルギーを使いすぎて、他の力にも影響が出てきている子どもたちがいます。

・「えーと、『せ』という字はどんなんやった?」と思い出すのに2秒ぐらいかかります。
・漢字を写すのに、ドリルの手本を何回も見直さないといけない。
・ノートに書いているうちに、一本線が足りない字になってしまう。
などなどの様子が見られます。こんな時に「ちゃんと見なさい」「書いたら覚えるはず」と言っても解決しません。

宇野先生は、5つの力を同時に使うことがうまくいってない時は「分けて学習する」といいと言われます。放課後デイじゃんぷでは、その子の困りに合わせてどの力を使いやすくするかを見つけながら取り組めるようにしています。子ども達の見せる様子から、こんなことをアドバイスしていると次は紹介していきます。