すてっぷ・じゃんぷ日記

タグ:学習支援

時計の問題

先日じゃんぷのO君が宿題で時計の問題に取り組んでいました。

時計は単純な計算問題と違い,1h=60m.1m=60sといった変換も必要です。これに数字の処理が苦手な子は混乱をしてしまいます。

O君は時計の図の問題は補助教材を用いて問題を解く,という方法を自分で持っており,「先生貸してください。」と要求をしてきました。

それを使って難なく問題を解くことが出来ています。

そもそもなぜ時計の問題でつまづくのでしょうか。時計は短針と長針が指し示す数字をそのまま読めばいいというわけではありません。時計の文字盤を読む時は「範囲」を読まなければなりません。そのため時計の読み方では以下のようなつまづきが見られます。

①短針と長針の読み方がわからない

②「何分かかりましたか」というような,時間の計算が必要な問題はわからない

 短針と長針は連動して動きます。また,60分=1時間という単位も経験したことがないもので,すぐには理解できないこともあります。細かい目盛りを追うことが苦手な子どももいるので,教材を出来るだけ大きく作成する等の工夫が必要です。

文字盤を短針と長針で色分けしたり,1枚のプリントに載せる問題を出来るだけ少なくし,目で追いやすいような工夫をし,子どもが「解けた!」という達成感を感じることが大事です。

しかし時計の問題は文章問題もあります。これはどのようにすればいいのでしょうか…それはまた次回で。

対称な図形

先日じゃんぷに来ているD君と6年生の算数「対称な図形」の問題に取り組みました。

「対称な図形」の詳細は省きますが,線対称,点対称の図形を調べたり対応する角,頂点,辺を見つける単元です。「対称な図形」に限らず,図形は学習内容が定着しにくい単元です。単純な計算とは全く違うことと,コンパスや三角定規を使った作図の問題があるため,一つ一つの問題に時間がかかります。そのため計算問題よりもこなす問題量が少なくなってしまい,定着に時間がかかる子どもが多いです。

D君も線対称,点対称の意味はわかっていますが,いざ問題となると頭の中で図形を折ったり回転させたりするので一度混乱すると頭がいっぱいになってしまいます。

一回最初に戻り,アルファベットをシートにしたものを渡して線対称,点対称の振り返りをしました。すると一旦冷静になれたからか,その後の問題はスラスラと解いています。

どの教科でもですが,自分で操作して学習することは大事だと考えました。筆者自身教員時代,教科は違いますが理科の研修を受けた時に「実感を伴った理解が子どもにとって大切」と教えてもらったことがあります。小学校学習指導要領解説 理科編にも載っていることですが,改めて思い出した瞬間でした。

読み書き障害に対応した学習支援プログラム 【じゃんぷー1】

おかげさまで、当法人の新しい発達障害対応の事業所「じゃんぷ」が10月よりオープンします。「じゃんぷ」の支援コンセプトは「エビデンス・ベースド・プラクティス」つまり「根拠に基づいた支援」です。

あちこちの事業所のホームページをみると、必ず「発達障害」児の様々な支援がうたわれており、その支援も「ソーシャルスキルトレーニング(SST)・学習支援・個別療育・集団療育」とか「TEACCH 感覚統合療法 ソーシャルスキルトレーニング(SST) 学習支援 個別療育 集団療育 預かり支援」「応用行動分析(ABA) 感覚統合療法 言語療法 作業療法 理学療法 遊戯療法 音楽療法 運動療法 ソーシャルスキルトレーニング(SST) 学習支援 個別療育 集団療育 」などなど聞いたような療育が並びます。しかし、これらのどの療法にしても正確なアセスメントを行い個別化しないと取り組めません。それは、利用する子どもたちの凸凹のパターンや凸凹の開き方が違うからです。

「じゃんぷ」でも、幼児にはSIT(Sensory Integration Therapy;感覚統合療法)や小学生にはSSTや学習支援にABA理論に基づいて取り組みますが、こういう個別化した取り組みはアセスメントや評価をしっかりとらないとやっているだけになってしまします。子どもが楽しければいいのならそんなに難しいことは言わなくてもいいのですが、それですらなぜ子どもが楽しいのか、なぜ取り組もうとしないのかという仮説や根拠が必要です。

また、どの放デイにも「学習支援」と掲げられてはいますが、どんな学習支援をするのかは示されていません。「すてっぷ」のように宿題を手伝うことなのか、「じゃんぷ」のように保護者や子どもと契約して特別の個別学習プログラムを実施することなのかで、支援の密度も手法も変わります。

特に発達障害の子どもにみられる、読み書き障害(音韻障害を主とするもの)にどうアプローチするのかは、学校でも知らない先生のほうが多いです。じゃんぷは、認知特性だけでなく音韻意識の流暢性アセスメントをして、この問題に本格的に取り組もうとしています。おそらく、京都府の放デイでは初めての取組になるかと思います。

今回から、「じゃんぷ」の目指す支援について少しづつ紹介していきます。

 

読み書き指導どうしましょう

自粛開けの新学期が始まって、放デイスタッフはお迎えの際に利用者の子どもたちの担任の先生方に御挨拶をしています。そこで、昨日掲載したような子どもたちの視覚支援による見通しの持たせ方をお互いに交流したりもします。

小学校では、特別支援学級の担任の先生とお話しすることが多いですが、そこで話題になるのが、子どもたちの読み書きの学習の進捗です。全般的に遅れのある子どもには、発達に合わせた課題を与えていけばうまくいくので、そう大きな問題にはならないのですが、発達性読み書き障害が疑われる子どもの場合は、子どもの見方からずれが生じてしまう事が少なくないので、少し情報を交換するくらいでは、今後の学習指導の見通しが持てないことが多いです。

先日もR君の書きの指導についてどうすればいいか、考えあぐねているという話を先生から聞きました。「どうすればいいんでしょうねー」と言われるので、「生活型の放デイは行動の問題については療育的アプローチができます。ただ、学習障害への支援はいくつか提案できますが、取り組みの機会はあまりないので是非学校で取り組んでください」とお願いしました。

読み書き障害の支援の全国的な傾向は東高西低のようです。関西にも大阪医科大学LDセンター等の民間センターはあります。しかし、関東は市川のLD・Dyslexiaセンターが筑波大陣営、四ツ谷のスマイルプラネットは学芸大陣営と連携しています。そして、港区には老舗のディスレクシア支援団体であるNPO法人 EDGE(エッジ)がLD支援の詳細な研修まで引き受けています。そんなわけで、読み書き障害の支援策は民間からの情報量の多い関東の先生方は関西の先生方より良く知っているのかもしれません。関西でも急速に読み書き障害の存在と最新の支援策を広げて現場の先生方に知ってもらう必要があります。

 

 

感覚刺激

今まで日本での特別支援教育では「余計な刺激は除去すること」が重要だとされてきました。しかしアメリカでは適切な刺激は学習に必要な支援だとして実践しているのです。2015年に行われたセントラルフロリダ大学の研究で「*ADHD(注意欠如多動症)の子どもたちは学習時に体を動かす必要があり、それによって学習成果が伸びる」ということが科学的に証明されたそうです。その研究によりなにかの感覚刺激を教育に取り入れることは、集中力を保つ有効な手段であるということがわかってきました。

*ADHD(注意欠如多動症)とは、「集中力が続かない」「忘れっぽい」などの不注意・「落ち着きがない」「じっとしていられない」などの多動性・「思いついたら周りに関係なく行動してしまう」などの衝動性を特徴とする発達障がいのひとつです。一昔前までよくない行動とされてきた「貧乏ゆすり」も感覚刺激の一つで、最近では「貧乏ゆすりによってセロトニン分泌が増加して気持ちの安定が得られる可能性があること、気持ちが落ち着かないときに気を紛らわせ、ストレスからの回避行動になっている」という研究報告もされています。

しかし「感覚刺激入力による学習支援」のためのツールが、日本ではまだまだ開発されていません。そもそも学校教育の現場でそういったものを必要とする意識が低かったため、広がっていないのが現状です。低学年だと鉛筆をかじる子も多いですが、そういった子は噛むことからの感覚刺激で心の安定を図っているのです。アメリカには噛むことを想定した鉛筆キャップなども存在します。外部刺激が苦手な子どもには、机に取りつける仕切りも必要です。

そのほかにも、触ることによって気持ちが落ち着いたり集中できたりするクーシュなどいろんなものが医療や福祉の分野では開発されています。Harklaの着圧(重みのある)ベストは深部感覚を刺激し、自閉症やADHD、感覚障害を持つ子どもに落ち着きを与える効果があったり、同社のブランケットは睡眠障害を軽減する効果もあるとされます。子どもの感覚に注目してみると新しい可能性が見えてきます。