すてっぷ・じゃんぷ日記

タグ:待って

待ってパニック

Cちゃんが階段のところでかなり長時間泣き続けていました。パニックを起こしたことは分かったのですが、原因は職員から聞かないとわからないので次の日に報告を聞きました。要するに、交渉が成立していたのにその交渉が打ち切られたと勘違いして、驚いて悲しくて泣き続けていたということでした。

Cちゃんはご機嫌で外で遊んで帰ってきました。ドアを開けると目の前でD君がこれまた楽しそうにタブレットで遊んでいたので、「ピンクのタブレットください」とE職員にお願いしたのです。「今D君が使っているから、先生と遊ぶか40分待つかどちらにしますか」と職員が言うので、「待ちます」とCちゃんが言うので、40分間のタイマーをセットしました。Cちゃんこれまでタイマーで待ったこともない長さですから、かなり頑張っていたのだと思います。

それを見かねて、横からF職員が「公園で遊んで来たら終わっているよ」と公園カードを示したと言うのです。それが原因で、先の大パニックが起こったという事です。待ったらできると交渉していたのに、公園に行けと交渉を破棄したのかというふうに誤解したのです。生活の中にはよくある出来事ですが、一生懸命タイマーに従って待っていたCちゃんにとっては、「公園で暇をつぶして来たら?」という指示は難しすぎるのです。良かれと思って横から出した助け舟は、大きなお世話となり沈没したというわけです。

この場合は、使っている子どもはCちゃんの事も理解できる子もいるのですから、「5分で交代してください」くらいの交渉で良かったのです。Cちゃんにはその時間を少しづつ伸ばす取組が必要ですが、いきなりは難しいですし、目の前にない場所を指示されることは、交渉は決裂したと誤解してしまうのです。というわけで、パニックは起こるべくして起こったと言う結末でした。悪気はなかったとは言え、Cちゃんごめんね。

 

 

 

してはいけないことをどう伝えるか

Qちゃんが公園で水遊びをして、服が少し濡れたのだが全部脱ぎだして困っていると電話が入りました。慌てて車で着替えをもっていきます。さて、脱いだら着替えが大急ぎでやってきたのですから、次回もきっと全部脱げば新しい服が届くのではないかという理解をしたのではないかとスタッフは悩みます。しかし、そうは言ってもご近所さんが見ています。公の場所で裸のQちゃんに「脱ぐ」「着る」の駆け引きはできません。

「濡れたら全部脱ぐ」と理解しているQちゃんに、「ここでは脱いではいけない、○○で着替えます」をどう伝えればいいでしょう?これはやはりフェイズ2以降の「待って」対応が基礎なのです。机上で待てるようになって徐々にどこでも待てるようになっていきます。つまりQちゃんは大人に嫌がらせをしたいわけではなく、待つという意味が理解できていないのです。待てばいいことがある。という経験なくして待つことはできません。あるいは待たないと目標が実現がしないという経験も必要です。フェイズ2と並行して取り組む課題「待って」はこういう意味があります。

 

待てない時にどうするか

大人が子どもに、「ちょっと待って」「~まで待って」はよく使う言葉です。スケジュールを使う人でも、その内容の準備ができていないと大人は「待って」を使います。「待って」は社会生活の上で大事なルールですが、年少のDちゃんには「待って」は意味が分からずストレスです。いつもこれからスケジュールが始まる前の戸口で「ふぇーん」と泣いてみせます。もちろん、始まりの時間の次には大好きな公園があることは知っていますが、どれくらい待てばいいかわからないからです。言葉がわかりにくく時間の感覚がない人にとっては、「待って」も「ありません」も同じように感じます。

PECSではフェーズ3で「待って」カードを2~3秒から示して時間に耐えることを徐々に教えます。しかし、スケジュールで支障のある「まって」はもっと長い時間です。ではどうするか?「待っている時間をなくしてできるだけ好きな活動、例えばバランスボール遊びやトランポリンなどで時間つぶしをすればどうか」という意見が出ました。確かに、Dちゃんのスケジュールは好きな公園遊びの前に「あつまり(始めます)」で、待つスケジュールになっています。この時間までバランスボール遊びをして皆が集まったら「はじめます」をして、待ち時間0で公園に行くというアイデアです。つまり「待ちフリー」スケジュールの提案です。さてうまくいくでしょうか?