すてっぷ・じゃんぷ日記

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単位の勉強にいいものがあります!! Y先生のじゃんぷ通信7

単位の勉強に苦しむ子どもたちにいいものがあります!!Y先生のじゃんぷ通信7

じゃんぷに通う子どもたちが宿題を持ち込みます。算数の宿題でお母さんたちが口をそろえて相談されることの一つに単位の計算があります。最初は1~2年生の時計が読めない、時間の計算ができない悩みです。算数科の中では「量と測定」という領域です。低学年の時間、長さ、重さから始まり、中学年の面積、体積(厳密にはL、dLは2年生から)、高学年ではすべての単位換算が出てきます。

ずっと悩み続ける中身です。色々な単位のイメージがない中で、頭の中だけで操作しようとしても、正解なのかどうかわからないので余計に定着しません。中学校に行くと、もうそこは分かりきったものとして授業が進みます。

そこで算数を研究している先生方がある道具を見つけました。 「単位計算尺」というものです。昔の先生は手作りで全員が持ち、授業の中で使っていました。現在いいものが発売されています。(写真参照)乙訓でも今の大学生が小学生だったころは使われていました。

よくかけ算で九九表に頼らないで自分で答えを見つけようと必死で覚えさせる練習になりやすいです。同じような発想で単位換算も道具に頼らないで自分で見つけようと最後は暗記に頼りがちです。まだ定着ができずに悩む時にこそ、いつも正解を示してくれる計算尺を手がかりして解くことで次第に単位の仕組みを理解していきます。

不注意がある子やイメージがわきにくい子、記憶※が苦手な子はこの仕組みがなかなか分かりにくいのです。単位のイメージを押さえながら教えることは大前提ですが、単位が複雑になってきた計算をする時には正解が分かることが大事です。(※ワーキングメモリー:換算単位記憶を呼び出して短期記憶に保持しながら換算作業を行うと、作業記憶が容量オーバーで保持できなくなる)

学習障害や発達障害の子どもたちにとって学習する時に、道具を使いながらもいつも正解が分かって、最後にはなかみの仕組みや手順に結びつけられるような支援になることが重要です。

Y先生手製単位計算尺


アーテック 単位換算定規

計算とワーキングメモリー

S君が朝から「俺、宿題するわー」と冬休みの宿題を始めました。分数の加算です。通分の意味は分かるのですが、分母を同じにする最小公倍数を見つけるのに時間がかかります。これはワーキングメモリーの問題です。頭の中で簡単な計算をしたり短時間記憶しておく機能をワーキングメモリーと言いますが、これは人によって計算回数の能力が違ったり記憶しておく単語量が違います。

小学校の場合、大きな数字は出さない代わり暗算で解を求めさせようとします。もちろん仕組みを教えるときに書き出して理解させようとしますが、実戦は暗算です。こうなるとワーキングメモリー量がものを言います。なので、暗算の苦手な子どももは書き出せばいいのです。

また、公倍数の意味さえ分かっていれば、たくさん課題を出さなくていいのです。課題をたくさん出すのは、トレーニングによって暗算が早くなるようにという訓練的な考え方からですが、ワーキングメモリーの少ない子どもは、やってもやっても早くならないし時間だけがかかり苦行でしかありません。学校の担任は、ワーキングメモリーの実態を把握してトレーニングで暗算が早くなる人かどうか調べてからにしてほしいものです。

S君には「ゆっくりやればいいよ。インターバルで少しづつやろう」とは言っていますが、量が多すぎます。意味が分かっていて暗算が弱いなら量は求めない配慮が大人には求められます。

公約数・最大公約数は『連除法』を用いれば楽に求められます。要は、連除法をして外側の数をすべてかければ最小公倍数となり、最大公約数は縦をかければいいのです。こうして書いて公倍数・公約数を見つけるのは時間がかかりますから、量を減らして意味をつかませながら計算をさせます。その方が、今後難しい問題に出会ったときに絶対に役に立つのです。

 

宿題が多すぎる!

すてっぷを利用している小学生のほとんどが「宿題の量が多い」「苦手な練習が多すぎ」と悲鳴を上げています。また、低学年のうちはいいのですが、高学年になってくると宿題に向かうたびに「できなさ」に向き合わされる辛さが半端ないと訴えています。

理由はほとんどが、言語性ワーキングメモリーの少なさ所以の読み書き障害か、視空間性ワーキングメモリーの少なさ所以の算数障害です。中学年以降からはただ読めるだけでなく、すらすらと読めないと書き写しもしんどくなってきます。他の子どもは読む中で単語の音と意味が短期記憶から長期記憶に保存されるので、それを呼び出してきてどんどん読む速度が速くなりますが、いつまでも拾い読みの人は長期記憶にも単語が保存されないので遅いままです。

算数の速度は事物ファイルシステム・量的イメージシステムという視空間性ワーキングメモリーに左右されます。パッと見て3~4個が認識できるようになると数の分解も可能になります。例えば、7+5の「5」を3と2に分解して10と2という繰上りができそのうちに「5は3と2」などの長期記憶ができるようになります。そうするとすらすらと計算できてしまうのですが、この視空間性ワーキングメモリーが弱いといつまでたっても分解合成で指を使ったりしないと答えが出ないので長期記憶に保存されず他の子どもとどんどん水が開きます。

10ある力を他の子どもは学年が増すにつれ長期記憶が助けるので4か3の力で読んだり計算しているのですが、それがいつまでたっても低学年児と同じように10の力を使うとすれば、量が多くなれば処理できなくなるに決まっています。学習は、練習よりも意味が理解できているかどうかに力点を置いてほしいです。排水量の少ないシンクを思い浮かべて、水は出しすぎないように、どうかよろしくお願いします。

 

 

学校お迎えでのおねがい

Nさん、学校のお迎えの時に見通しが持てなかったのか先生の気を引きたかったかのかわからないけど昇降口で座り込んで動こうとしません。しばらくスタッフ待ったのですが、他の子どもを長時間待たせるわけにもいかず、抱え上げて送迎車に運ぶことになりました。そのあとは本人は何事もなかったかのように事業所についたのですが、あまり勧められた支援ではないなと言う話になりました。

学校でもスクールバスに乗せるまでは担任の仕事であるように、放デイの送迎車に誘導するまでは先生方にお願いしたいのです。もちろん、ほとんどの子どもは自分ですすんで送迎車に乗り込んでくるのでスタッフはそれをサポートしています。ただ、不安が強かったり切り替えが苦手な子どもも少数ですがいます。こういう子どもは、それまでの経過がよくわかっている先生方にお願いしたいのです。子どもの身体が小さければ実力行使も可能ですが、こういう子どもこそ思春期に差し掛かって体力もついてくると今度は子どもの側からの実力行使が始まります。

自立心が高まって来る時は大人の一つ一つの指示が気に入らなくなり反発します。その時は「どの靴はいていくの?」等と選択をさせると嘘のように自分で移動できます。なんでもお兄ちゃんのようにできるようになりたいけど「できないかもしれない」という不安が起こる時期では、斜めに構えてなかなか挑戦しようとしません。そんなときは、まずできたことを褒めます。昇降口ではつまづいているけど教室からは一人で来た事をえらいえらいと評価します。あとは、本人次第となりますが決して人と比べてはいけません。やるべきことは分かっているのですから。

それから、障害特性から次の見通しを「消失」することがあるということを念頭に置くことです。せっかく意気揚々と教室からは今日は放デイだと思ってきたけど、昇降口の喧騒で記憶がなくなって、いつもの「スクールバス」に置き換わっている子が少なくありません。そうなると、「何故あなた方は私を放デイに拉致るの?」と誤解します。ワーキングメモリーへの保存が心配な子どもには、自分で本日のお迎えコース写真を自分で選んで昇降口まで運んでスタッフに渡します。そうなると「ご乗車ありがとうございます」とご機嫌の放課後が始まるのです。どうぞよろしくお願いします。

実行機能

R君に回るコマのペーパクラフトを提案すると、「えーめんどくさい」と返事が帰ってきます。仕方がないのいでスタッフが一緒に手伝い、パーツの切り出しだけを指示すると、できるのです。彼は別に不器用だから、嫌がっていたのではないのです。もちろん、自分勝手というわけでもありません。モノを作る見通しができないので暗闇の中を歩いているような感じなので「めんどくさい」のです。

簡単に言うと作業の段取りや順番がたてられないのです。段取りをイメージしたり計画を心の中でシミュレーションする認知過程を実行機能と言います。よく、お喋りは流暢で、あれこれの構想を口では言うのですが、実際に行動させるとうまく動けない人や、口では大きなことを言うけど見通しがないので周囲に迷惑をかけてしまう人は実行機能が弱いと言えます。原因はワーキングメモリーと深い関係があると言うのが仮説です。

たかがコマづくりの、単純なペーパークラフトですが、特定の物を作り上げるとなると苦手意識が強い人が多いです。こういう人には、構造化支援して最後まで見通せるようにしてワークシステムを作ってあげるか、そもそも終わりのない自由作品をアートする楽しさを味わってもらうなどの支援が必要です。

掛け算

長い春休み、宿題プリントも出ています。2年生のA君は、山盛りの漢字と掛け算のドリルです。「4×=28」の前でA君は無言で唸っています。同じ手の問題が20題ほど並んでいます。しかも毎日・・・。「これ使えばいいよ」と掛け算のマトリックス表を渡しました。「ありがとう」とA君。でも家では「こんなもん使えるかーい」とプライドにかけて使わないそうです。

そもそも、掛け算を記憶するのは誰でもできることではないということが世の中にはあまり知られていません。記憶は短期記憶から長期記憶に渡されていくのですが、その前にワーキングメモリ回路があり、3つの回路があると推測されています。視空間スケッチパッド・エピソードバッファ・音韻ループです。この音韻ループは音声の記憶回路です。これに、掛け算の記憶と演算は関係しています。

そして、これら3つの回路は独立しつつもお互いを補完し合います。だから聴覚記憶や音声だけに頼るのではなく視覚記憶にも意味記憶にも働きかければいいのです。「九九の表なんか幼稚」ではないのです。音韻ループの回路が弱ければ視空間スケッチパッドの強みを生かせばいいのです。エピソードバッファにおいて掛け算の意味が分かって記憶されているならば、決してカンニングではないのです。やがてはそのマトリックス表と指の動きが記憶され音の記憶に結び付くはずです。

 

 

 

冬休みの宿題

小学校も今日から冬休み。学校の先生方とも良いお年をと言葉を交わして「お迎え」をしてきました。子どもたちは「早く宿題を終わらせて楽しく冬休みを過ごしたい」とそわそわしています。その一方で「どうせまた苦手な繰り上がり下がりの計算問題があるから憂鬱やねん」「憂鬱なものからさっさと終わらせたいねん」と話します。

学校は相変わらずドリル一本やりの宿題が多いです。それがワーキングメモリーの弱い子どもたちに学習性無力感を与えるものだとは知らないようです(知ってたら問題ですが…)子どもの嫌うドリル学習をいくらやってもワーキングメモリーは鍛えることはできません。脳は楽しいという情動で学習が成立するからです。

もちろん速音読や暗算やNバックトレーニングはワーキングメモリーを鍛えます。ワーキングメモリーを鍛えることは物事の段取りや見通しの力というプランニングの力も伸ばしていきます。つまり人に頼らないで過ごせるのですから、生活の自由度は増大します。自由に生活ができれば、自尊感情は当然高まります。

しかし、ここで、鶏が先か卵が先かの話をしていてもしかたがありません。要するに苦手な音読や暗算とは思わせずにワーキングメモリーを鍛える楽しい学習をどう演出するかです。デジタルデバイスを利用してゲームのようにトレーニングする機器も出ています。高額ですし、誰にでも効果があるのかどうか確認できないので、お勧めはできないのですがいくつか商品化されているものもあります。http://www.cogmed-japan.com/

ワーキングメモリー 05/07」でも書きましたが、この力は生活に欠くことができません。ワーキングメモリーのピークは30歳だそうですからどの子も伸ばせる可能性があることは確かです。

赤が改善状態の悪化したもの 黄色が不変 緑が更に良くなったもの