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ハンディある人の夢かなえたい 日本科学未来館館長・浅川智恵子さん

ともに・共生社会めざして
ハンディある人の夢かなえたい 日本科学未来館館長・浅川智恵子さん

2021/12/28【毎日新聞】

日本科学未来館(東京都江東区)の館長、浅川智恵子さん(63)=IBMフェロー=は全盲の研究者だ。今春に就任し、未来館を「アクセシブル(利用しやすい)なミュージアム」として世界のロールモデル(模範)にすることを目標にする。障害者などマイノリティー(少数者)の生活に科学技術がどう貢献するのか。ダイバーシティー(多様性)との関連について、浅川さんに聞いた。【聞き手・明珍美紀】

――日本科学未来館は、新館長のもと、2030年に向けたビジョンに「あなたとともに『未来』をつくるプラットフォーム」を掲げました。

◆一方的に科学技術を享受するだけではなく、利用する方それぞれが、テクノロジーの進歩によって実現される新しい生活を想像し、社会実装に向けた活動に関わっていく。そんな思いが込められています。

――利用者自ら、実用化のために参加するのですね。

◆どんなに素晴らしい技術が発明されても利用されなければ、価値が失われてしまいます。私自身、長い間、視覚障害を中心に、アクセシビリティーの分野で研究開発に従事してきました。研究者という立場だけでなく社会実装を促進するために未来館の館長を引き受けようと決意しました。

――障害者にとって科学技術とは?

◆できなかったことを可能にするツール(道具)です。視覚障害を例に取ると、音声合成という科学技術がなければ、本を読む時は点字か録音されたものを聴く、あるいは人に読んでもらうことになります。実際にそういう時代が長く続いていました。それが、インターネットの普及でコミュニケーションの手段が変わりました。パソコンの画面の情報を音声で読み上げるソフトが開発され、目が見えなくてもキーボードを操作して文章を書き、メールで送ることができます。

また、携帯電話で写真を撮れるようになった時、それまでは周囲の人に聞くしかできませんでしたが、周りの風景を撮影して友人に送り、自分がいる場所を教えてもらうことができるようになりました。これからは、センサーを駆使することで、街を一人で歩くことが可能になるかもしれない。その一歩手前まで技術が進んできました。

――ご自身が開発中の「AIスーツケース」はその一つですね。

◆これは、視覚障害者の移動を補助するスーツケース型のロボットで、スマートフォンの専用アプリケーションを使って、目的地や途中経路を音声で案内します。ロボットにはセンサーが付いていて、危ない場所を回避したり、周囲の人と適切な距離を保って移動したりする機能を備え、未来館でも実装する準備を進めています。

年齢や国籍、障害の有無にかかわらず、まずは未来館が誰でも楽しめるアクセシブルなミュージアムとなり、展示を見に来た来館者が交流し、議論するような場にしたいと思っています。

多様性支える科学技術
――かつては日本では、女性の研究者は少なかったのではありませんか。

◆私がプログラミングの専門学校を経て日本IBMで学生研究員として研究を始めた1980年代半ばは、女性の研究者はごくわずかでした。仕事と生活の調和を図る「ワーク・ライフ・バランス」や女性の視点はほとんどなく、女性の管理職も少ない。そうした環境で、点字のデジタル化などの開発に取り組んでいたところ、当時にすれば(会社側も)大変な決断だったと思いますが、正式な研究員として採用されました。

入社後、米国IBMに出張する機会が多くありました。米国で驚いたのは、管理職に女性がいるのは当たり前だったこと。同僚には、さまざまな障害者やLGBTQなど性的少数者がいたので、視覚障害者の私が仕事に加わることを当然のように受け入れてくれました。ダイバーシティーに関しては日本よりはるかに先を行っているという印象を受けました。

――未来館は、国立研究開発法人の科学技術振興機構が運営しています。今回は、国が関わる施設のトップに女性が就いたことでも話題を呼びました。

◆女性であるというよりは、目の見えない自分が館長を引き受けることの方が大変ですし、新たなチャレンジです。見えない分を補うためには、周囲とのコミュニケーションを図り、多くの人々から意見を聞く。これらは同時に、これからの研究に役に立つことです。

――どのような未来を求めますか。

◆国連がSDGs(持続可能な開発目標)に掲げる「誰一人取り残さない」という理念のように、誰もが社会の一員として、自分らしく生きる権利を保障されることです。

私は目が見えないことは、自分の個性だと受け止めています。世の中にはいろいろな人がいて、そうした多様性によって社会が成り立っていることを理解してもらいたい。

科学技術は、ハンディキャップのある人の自立生活に役立つだけでなく、さまざまな困難を抱えた人の夢を実現できるツールになる可能性があります。その意味で、科学技術とダイバーシティーは密接なつながりがあるのです。

■人物略歴

浅川智恵子(あさかわ・ちえこ)さん
1958年大阪府生まれ。プールでの事故がもとで14歳の時に視力を失う。追手門学院大、専門学校を経て85年日本IBM入社。92年日本語デジタル点字システムを開発。97年視覚障害者向けにウェブページを読み上げる「ホームページ・リーダー」を開発し、世界の視覚障害者の情報アクセス向上に寄与。2004年東京大大学院修了、博士号(工学)取得。09年IBMの最高技術職であるIBMフェローに就任。14年米国赴任。19年全米発明家殿堂入り。21年4月に日本科学未来館の初代館長だった宇宙飛行士、毛利衛さんに続く2代目館長に就任。

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我が国は古から海外の文化を吸収して、日本風にアレンジしてその文化を我が国のものとして長く後世に伝えると言う文化スタイルをとり続けてきました。遣隋使や遣唐使は今から1500年も前に当時の中国へ派遣されました。隋や唐の先進技術や優れた社会制度を求めて、西暦600年頃から894年のおよそ300年間、計23回に渡り日本から遣わされたのです。帰ってきた彼らは、大和政権で古来の八百万神に仏教を同居させた「神仏」を文化とし、農耕・土木・加工技術をはじめとする当時の我が国にとってのハイテクを発展させたのです。

先日終了した大河ドラマ『青天を衝け』の渋沢らが駆け抜けた時代もまた、わが国独自の社会体制に西洋の民主化の流れを輸入して和製立憲君主制と言う独自の政治スタイルを作り上げました。他国の侵略を防衛するために海外技術を取り入れ生産力を高め、国防に多くの国家予算をつぎ込んで、アジアで唯一植民地化を免れて主権を守り抜きました。明治維新を前後する我が国の歴史に多くの人が共感を寄せるのは、古いものを変えていくために必要なものを吸収しアレンジして独自のものにして新しいパワーにしていく姿を分かりやすく表現しているからだと思います。

1980年代の日本のデジタルテクノロジーは国内でWindowsと競り合っていたトロンOSが開発され、日本が世界に先駆けてネットワーク化したマルチプラットホームOSの花開かせるはずの時代でした。残念ながら国防力の弱い我が国は米国との同盟関係強化と引き換えに、米国経済覇権の政治圧力に負けてしまいます。しかし、そんな時代にも米国に渡って多様性社会の洗礼を受け障害者のためのAIプログラミングを学んでいた若き研究者がいました。先進国に渡り多様性を活かす社会制度とそれを支える最先端技術を学んだ浅川館長をはじめとする現代の遣唐使が子どもたちに伝えてくれるものは、我が国の古からの伝統であり未来の可能性だと思います。

Paprika

米津玄師さんのことを書いたので、パプリカの歌詞と、チームEで唄われるPaprikaの英語歌詞を調べてみました。パプリカの英訳をしたのは、ネルソン・バビンコさんです。ネルソンさんは、日本語が上手で、米津玄師さんの曲をいくつも英訳しています。英語の訳と日本語の詩を並べてみると、英訳の素晴らしさがよく分かります。なるべく曲や元の詩の意味を損ねないように訳してあります。この歌は米津さんが小さい頃野山で遊び転げた体験が原形だと言います。「あなた」と言うのは母親だという意見と、友達だという意見に分かれています。どちらにも読めると思いますが、本当に無駄な言葉がなくて良くできた歌詞だと思います。

Paprika
パプリカ

Twisting and turning down this road we go
まがり くねり はしゃいだ  みち
Running to the forest where we can play all day
あおばの もりで かけまわる
The sun shines so brightly on our country town
あそび まわり ひざしの まち
Someone`s always calling out your name
だれかが よんでいる
And when summer comes , see our shadows grow
なつがくる          かげがたつ
Always know I will miss you so
あなたに   あいたい
Come on , look up , find the first star in the sky
みつけたのは いちばんぼし
I hope tomorrow will be sunny , too
あしたも はれるかな

Paprika , when our flowers start to bloom
ぱぷりか はなが さいたら
Put the seeds into your hands and throw them in the sky
はれたそらに たねを まこう
Paprika we can make our dreams come alive
はれるや ゆめを えがいたなら
Rain or shine , we`ll find a way to play again another day
こころ あそばせ あなたに とどけ

it`s raining and pouring , the moon`s hiding away
あめに くゆり つきは かげり
I think I can hear someone crying in the shade
こかげで ないていたのは だれ
Don`t worry I promise , there`s no need to be afraid
ひとり ひとり なぐさめるように
Someones always calling out your name
だれかが よんでる
Come and count with me all the happy things
よろこびを かぞえたら あなたで いっぱい
So much joy you always bring
かえりみちを
Now it`s time to go
てらしたのは
Memories will light the way back home
おもいでの かげぼうし

Paprika , when our flowers start to bloom
ぱぷりか はなが さいたら
Put the seeds into your hands and throw them in the sky
はれたそらに たねを まこう
Paprika we can make our dreams come alive
はれるや ゆめを えがいたなら
Rain or shine , we`ll find a way to play again another day
こころ あそばせ あなたに とどけ

I will run to you
あいに いくよ
Through the forest where we played
なみきを ぬけて
Singing songs we made
うたを うたって
And I will fill both hands with flowers along the way
てには いっぱいの はなを かかえて
La-di la-di-da
らるらりら
I will run to you
あいに いくよ
Through the forest where we played
なみきを ぬけて
Singing songs we made
うたを うたって
And I will fill both hands with flowers along the way
てには いっぱいの はなを かかえて
La-di la-di-da
らるらりら

Paprika , when our flowers start to bloom
ぱぷりか はなが さいたら
Put the seeds into your hands and throw them in the sky
はれたそらに たねを まこう
Paprika we can make our dreams come alive
はれるや ゆめを えがいたなら
Rain or shine , we`ll find a way to play again another day
こころ あそばせ あなたに とどけ
Let`s all come together now , point our fingers to the sky
かかと はずませ このゆびとまれ

クラウドファンディングで放デイ建設

「放課後デイ」CFで建設 鳥栖で計画 発達障害児童ら向け

2020/12/17 05:00【読売新聞】

インターネット上で資金を募るクラウドファンディング(CF)を活用し、発達障害などの児童・生徒を一時的に預かる「放課後等デイサービス」(放デイ)の施設建設を目指す動きが鳥栖市にある。市によると、放デイは子供たちが社会性を身に付ける場として近年、利用者が増えており、市内では不足しているという。

資金を募っているのは、放デイなどの運営会社「医療福祉ホールディングス」(本社・福岡市、溝口登美子社長)。募集額は6000万円で、鳥栖市元町の約570平方メートルの土地に、木造平屋の施設建設を計画する。受け入れ定員は、未就学児対象の「児童発達支援」と合わせて1日10人を予定。事業が予定通り行われれば出資金を払い戻す「投資型」で、21日まで資金を募っている。

市高齢障害福祉課によると、市内には1日現在、今年新設された4施設を含む19施設が稼働。利用者数は近年急増し、2015年度に158人だったが、19年度は360人になった。

利用希望者の施設探しをサポートする同市の特定非営利活動法人「総合相談支援センター・キャッチ」の高尾一弘理事長(66)は「近場で見つからず、福岡県久留米市や小郡市などの施設を紹介するケースも多い」と話す。毎日通いたくても定員がいっぱいで、限られた日数しか利用ができない人もいるという。

同社執行役員で鳥栖市在住の野々下みどりさん(47)は「多くの人の賛同を得て、障害のある人や家族が暮らしやすいまちづくりに貢献したい」と話している。

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利用者360人を19施設で割ると約19人。1施設1日の利用限度は10人程度、土曜祝日含めて週6日利用で60人分。つまり、全員が週3回を超えて利用するとパンクすると言っているのです。ちなみに、週3回は乙訓の放デイ利用基準です。

つまり、佐賀県鳥栖市(人口7万)では相談事業所が他県まで紹介するのですから週3回という縛りはないということです。「毎日通いたくても定員がいっぱいで、限られた日数しか利用ができない人もいる」と言うのですから、行先さえあれば6日利用OKですよと言う意味です。

そのためにクラウドファンディングまでして資金を集めてすてっぷのある駐車場の半分くらいの土地に施設建設しよういうのですから大したもんです。というか住んでいる場所によって児童福祉を支える行政にこんなに差があっては不公平だなと思います。

近隣でも木津川市や精華町では放デイを毎日利用できるように他県まで放デイを紹介しているようです。誰でも放デイを6日利用できるかどうかを問題にしているわけではありません。学童保育を利用できる子どもや民間の習い事を利用できる子どもはインクルージョンの視点からそれを積極的に利用すればいいと思います。しかし、利用できるサービスが他にないのに3日しか支給されないのであれば、法の下の平等から外れていると言わざるを得ません。

 

 

学校でのいじめ厳罰化へ 自殺なら禁錮10年 仏

学校でのいじめ厳罰化へ 自殺なら禁錮10年 仏

2021/12/29(水) 【時事通信】

フランスのマクロン大統領=17日、ブリュッセル(AFP時事)
【パリ時事】フランスで、学校でのいじめを厳罰化する動きが進んでいる。

国民議会(下院)は11月、いじめ被害者が自殺または自殺未遂した場合に最大で禁錮10年と15万ユーロ(約2000万円)の罰金を科すことなどを定めた法案を可決。来年1月には上院の審議が始まる。

現行法では、いじめ加害者が13~17歳の場合は最大で禁錮2年6月と7500ユーロ(約100万円)の罰金、18歳以上の成年なら最大で禁錮5年と7万5000ユーロ(約1000万円)の罰金が定められている。被害者が自殺または自殺未遂した場合に刑が最も重くなる。刑事責任を問われない13歳未満の加害者は罰則の対象外。

教育省報道官は時事通信の取材に対し、今回の法案について「罰則の適用年齢など詳細は今後の審議で決定される」と説明した。

ここ数年はインターネットを通じたいじめが増加している。政府は来年2月、いじめ被害者のスマートフォンに届いた嫌がらせメッセージの画面内容を保存した「スクリーンショット」などを送信できる通報アプリの運用を開始予定。子供のパソコンやスマホなどを親が管理できるようにする措置も検討している。

教育省の発表によると、フランスでは全児童・生徒の6%に当たる年間約70万人がいじめの被害に遭っている。報告されていないケースも多く、今回の法案によると、実際の被害者は80万~100万人に上るとみられている。

10月には、東部アルザス地方で14歳の少女がいじめを苦に自殺した。地元メディアによれば、同性愛者であることやモロッコ人の母親を持つ人種的ルーツに関して、女友達のグループから2年にわたり暴言を受けていた。

マクロン大統領は事件を受け、11月にインターネット交流サイト(SNS)上に投稿した動画で「いじめの被害に遭っている全ての若者へ。われわれは君たちの味方だと知ってほしい」と支援を表明した。

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日本のいじめ認知件数が50万人でフランスは70万人ということは、人口比で考えると日本の3倍近い認知率となります。フランスの深刻さはそれが移民に向けてのものが多いという事です。多様性社会のトップランナーともてはやされるフランスですが、社会の鏡と言われる学校でこの有様ですから、現実にはさらに深刻ないじめや差別が存在することは容易に推察されます。

中世から近世にかけて経済でも芸術でも世界に影響を与えたフランスのプライドは今でもフランス人の中に息づいています。未だにパリでは英語が話せてもフランス語でしか応えない年配のパリジャンは少なくありません。フランス語も話せないくせにパリに来るなと言葉では言わないかわりに、こうしたイケズをするのです。こうした古い慣習の滓と、大量の移民問題を抱えているフランスの政治的な課題が合わさって差別やいじめが起こっていることが深刻なのです。

その政治的課題が学校生活にまで及んでいるゆえに、日本からすれば考えられない量刑が課されようとしているわけです。中2(コレージュ3年)で禁固2年半ですから在学中は塀の中となります。それが少年院なのか刑務所なのかはこの記事ではわからないですが、多様性社会を守り抜くためとは言えフランスの民主主義への向かい方は半端ではありません。

中国共産党によって思想弾圧や女性の凌辱という人権弾圧が今起こっているのに、糾弾する「タイミングではない」と言う政党幹部や国会議員を見ていると情けなくなります。人権侵害を知ればその非難はタイミングで発言するようなものではなく、リスクを背負ってでも声を上げるべきものだと子どもにも教えるのが人の道です。

ブロークンレコードテクニック

一度指示を出して無視(適切な行動を起こすまで子どもに注目しない)を開始したにもかかわらず、どうにもならないときがあります。そんなときはブロークンレコードというテクニック方法があります。これは、子どもが好ましくない行動をしたとき、親が「壊れたレコードプレーヤー」のように同じ指示を繰り返す方法です。CCQ=『Calm(カーム/穏やかに)、Close(クロース/近くで)、Quiet(クワイエット/静かに)の略で、親自身が穏やかに、子どもに近づいて、静かな声で指示を出すこと』で、指示を同じ言葉で正確に繰り返し伝えます。決して感情的にならず、表情をかえず、淡々と指示を出します。そんな毅然で冷静に指示を出す親の態度に子どもは「これはいくら逆らっても無理そうだ・・・」と思い、その好ましくない行動をやめます。

子どもが直ちにやめれれば、そこですぐに褒めます。このようにけして褒めることを忘れてはいけません。ブロークンレコードテクニックは親がいかに感情をもちこまず、せかさず、指示が出せるかです。指示は3分間隔で、15分から20分くらい様子を見てみましょう。子どもは親のいつもと違う行動に戸惑い、びっくりしますが、確実にインパクトを与え、いつもと違う変化を読み取ります。これはいい手ごたえです。

そんな親の変化を読み取った子どもはなかば、諦め状態で、「分かった分かったもういいよ~」と言いたくなってしまうでしょう。それが狙いです。そこできちんとやめられたら、すぐに褒めて終了です。ここでも褒めることが根本にあります。決して褒めることを忘れてはいけません。指示に従えたら必ず褒めて終了にしましょう。

平成生まれは クラブに行った人以外はレコード知らないけどね

令和7年度までに小学校は35人学級へ

小学校の1クラスの定員 35人以下で最終調整 令和7年度までに

2020年12月17日 0時02分 【NHK】

少人数学級の実現に向けて、政府は令和7年度までに小学校の1クラスの定員を40人以下から35人以下に引き下げる方向で最終調整に入り、17日の閣僚折衝での合意を目指すことにしています。

小学校と中学校の1クラス当たりの定員は、義務標準法で小学1年生が35人以下、また、小学2年生から中学3年生までは40人以下と定められています。これについて文部科学省は、きめ細かな教育の実施や新型コロナウイルスの感染防止のためには少人数学級の実現が必要だとして、小・中学校ともに1クラスの定員を30人以下に引き下げるよう求めています。

これに対して財務省は、少人数学級の実現が学力の向上に与える効果は限定的であり、財源も示されていないとして否定的な対応を示し、協議が続いていました。その結果、小学校について2年生から段階的に来年度から令和7年度の5年間をかけて、1クラスの定員を40人以下から35人以下に引き下げる方向で最終調整に入りました。

政府は、来年度予算案の閣議決定に向けて、17日、萩生田文部科学大臣と麻生副総理兼財務大臣による閣僚折衝で合意を目指すことにしています。

導入に向けた議論の背景
実現すれば、小学校全体ではおよそ40年ぶりとなる1クラスの児童数の引き下げ。

導入に向けた議論の背景にはコロナ禍での感染対策に加え、学校現場に山積する課題があります。法律で定められている現在の40人学級は、1980年度に導入されてから、2011年度に小学1年生のみ35人学級となったのを除いて、この40年間変わっていません。

しかし、学校現場では、AIなどの技術の進化や国際化の流れの中で、新たな時代を見据えた学びが次々と導入されてきました。新しい学習指導要領では主体的、対話的な深い学びが求められるようになったほか、小学校5年生と6年生で英語が教科化され、プログラミング教育も必修化、今年度中には、全国すべての小中学生に1人1台端末が配られ授業での活用が求められます。

一方で、昨年度、学校が把握したいじめは初めて60万件を超え、不登校の子どもは18万人余り、暴力行為も8万件近くといずれも過去最多となっていて、外国籍の子や障がいのある子なども含めて、個々のニーズに応じた指導が欠かせなくなっています。

こうした中、OECDの調査では日本の教員の1週間の労働時間は参加した48の国と地域の中で最長となるなど、教員の働き方も課題となってきました。こうした従来からの課題に加えて議論を加速させたのが新型コロナウイルスの感染拡大でした。

全国知事会などから現在の40人学級では感染症予防のための十分な距離の確保が難しいと緊急提言が出されたほか、教育研究者などからも少人数学級の実現が強く要望されていました。ただ、公立の教員採用試験の倍率はこの20年で3分の1程度にまで下がっていて、35人学級の導入に向けては、教員の確保とともに質をどう維持するかが課題になりそうです。

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40年ぶりに義務標準法(公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律)を変えるのは画期的なのではなく、先進国としては恥ずべきことなのだろうと思います。しかし、これも経済成長に連動するものですから、何が悪かったのかしっかりと経済政策の振り返りが必要です。

30年前にバブルがはじけ、我が国が取った方針はインフレを恐れて金融を引き締めました。先進国は、金利を下げ金融を緩め続けました。その結果、米国の次の生産力を誇っていた日本は中国に抜かれます。欧米各国は国民所得を倍近くに増やし、我が国の所得は実質賃金が下がっていくという憂き目にあいました。

その原因は、「日本は借金大国」「税金を上げて借金を返し、支出を抑えて緊縮財政にする」という財務官僚の誘導にメディアをはじめ国全体がまんまと乗せられてしまったのです。その結果、市場にはお金は回らず、企業はリストラを進め非正規労働者と失業者の山が残されたのです。未だに小学生の子どもたちから「日本は貧乏なんでしょう」という声を聞く時があります。

借金(投資)はその額を超える富を未来に生み出すという視点が必要です。もしも、日本が欧米と同じような金融・財政政策をとっていれば、増えた所得の分だけ税収も増えたはずです。未来のために投資をするのに、今生きている人が貧乏になるほど返すのもおかしな話です。特に教育は、未来の納税者を生み出す国の営みです。教育は100年先の国のあり方を考えて行う先行投資です。今生きている人はもういませんから、強い想像力が必要となる事業です。

中学校の学級分も実現し、先生はどんどん雇えばいいと思います。競争率が低いと有能な人が採用できないという発想は、高学歴の人たちが言い出しそうな台詞です。それなら激しい競争に勝ち抜いた有能な官僚が生み出した「失われた20年」にはどう理由をつけるのでしょう。人口が少なくて競争率の低いフィンランドで教員は何故国民から尊敬されるのでしょう。画一的なテストだけでは人の能力は測れないのです。

 

凍える心、温め解かした感謝の言葉 駿府学園で矯正教育を受ける少年

凍える心、温め解かした感謝の言葉 駿府学園で矯正教育を受ける少年 高齢者と交流【幸せまでの距離③】

2022年1月5日(水)【静岡新聞】

「自分はずっと社会の邪魔者だと思っていた」。県内唯一の少年院「駿府学園」(静岡市葵区)で矯正教育を受ける少年(17)は、高齢者からの感謝の手紙と写真を見て自らを振り返った。他人のために尽くし、感謝されたのは初めての経験。「自分もこの社会で生きていける」。更生を信じる周囲の支えが、凍り付いていた少年の心を解き放った。

同学園で暮らす少年たちが週1回ほど、食事介助やリハビリの手伝いなどに通っているのは、近くの特別養護老人ホーム「楽寿の園」。コロナ禍が拡大してからは訪問活動を休止している。寝たきりや障害のあるお年寄りらは、少年たちを孫のように思い、再会を待ちわびている。

交流を始めたのは43年前、高齢者との関わりが更生の手掛かりになればと、学園側から相談したことがきっかけ。力仕事も快く引き受ける少年たちに、言葉がままならない入所者が「ありがとう」を伝えようと涙を浮かべて声を震わすこともあった。今では互いになくてはならない存在になっている。

少年(17)は幼い頃に両親が離婚し、父の下で育った。兄妹はそれぞれ障害を抱え、少年自身も発達障害がある。高校までバスケットボールに打ち込んでいたが、コロナ禍で部活動が思うようにできず中退し、不良仲間と一緒に知人を殴って逮捕された。

「どんな顔をして生きていけば良いのか分からない」。目標を失って自暴自棄だった少年を変えたのは、楽寿の園の利用者との交流だった。「自分を必要としてくれる人がいる」と実感し、前を向くことができた。

敬老の日に合わせ、少年は学園内のグループ7人でプレゼントする貼り絵を制作した。デザインや色使いを決め、仲間と協力して仕上げた作品のタイトルは「支え合い」。コロナ禍で閉められたカーテンが開き、少年とお年寄りが再び交流する姿を表現した。

貼り絵を受け取った有馬良建理事長(64)は「お年寄りに心を寄り添わす彼らは、純粋な心を持っている。犯した罪の痛みを知っているからこそ、他人の痛みが分かるはず」と更生に期待を込める。

少年は2021年11月、ハローワークでとび職の仕事が見つかった。内定を出した建設会社の会長が身元引受人になってくれる。「楽寿の園のみなさんを裏切りたくない。人に役に立つことができた喜びを忘れず生きていきたい」。進むべき道は開けた。困難があっても、今度は逃げないと誓う。
(社会部・崎山美穂、写真部・小糸恵介)

<メモ>駿府学園は関東甲信越と静岡県の家庭裁判所で短期間の処分を受けた、主に14歳から17歳3カ月未満までの少年が暮らす。2021年12月24日現在、定員90人に対して入院する少年は14人。多くは窃盗や傷害・暴行、詐欺容疑で、高齢者をだました特殊詐欺の受け子もいる。

少年犯罪の背景にはさまざまな要因が複雑に絡む。学園が力を入れるのは、再犯・再非行を防ぐための居場所づくり。地元企業を招いた資格取得授業などを展開する。「楽寿の園」での職業体験は矯正教育の最終段階。43年間でトラブルはなく、連携して少年の立ち直りを支えている。
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少年犯罪を繰り返す子どもの多くが発達障害を持つと言われています。吟味しないで行動してしまう。感情のコントロールができない。何度も同じ失敗を繰り返して学習効果があがらない。相手の感情がわからない。いずれも発達障害のADHDやASDに見られる特徴です。低学力の原因が文章がすらすら読めないことで学習が苦痛になるLDの子どももおり、やってもやっても成果が上がらないので学習性無力感を持つ子どもや自尊感情の低い子どもが多いです。

そして、これまでの研究では安心できない家庭環境が、幼い子どもの脳にダメージを与え、感情をコントロールする前頭葉・言葉や文字を認識し変換する部位の機能等が著しく低下し発達障害の脳と同じようになってしまうという報告がされています。この研究は脳画像の研究から明らかになったものですが、古くはチャウシェスク症候群として知られています。

1960年代後半、ルーマニア社会主義共和国の国家元首となったチャウシェスクは人工妊娠中絶や離婚を禁止した結果、貧困と育児放棄によって産後間もなく貧困な環境の養護施設に引き取られる子どもが増えました。1989年社会主義政権崩壊後、子ども達は先進国で育てられますが、その多くは発達障害と診断されました。6カ月以上施設にあずけられた子どもには自閉症のような症状がみられ、見知らぬ人にまったく警戒心を抱かずに接近する、不注意で多動といった症状が成人期まで一貫してみられたといいます。

逆に、親子分離が6カ月以内であり、里親が育児を引き継げば、子どもは問題なく育ち、失業率も10%でした。愛着に関するもっとも感受性の高い時期は、子どもが安定した情緒的関係を築きつつある時期で、およそ6カ月から2歳頃までです。この時期に母親(養育者)との関係が断ち切られてしまうと、その影響は後々まで外傷体験として残ることは多くの専門家が知るところです。幼少期に負った心的外傷=脳機能の低下で触法行為に至った子どもたちが治療的教育で回復するのは大変険しい道のりです。しかし、駿府学園のような取組の成功例を見ると、子どもの可塑性とそれを信じて長年こつこつと実践を積み上げる関係者の愛情の深さに感動をおぼえます。

ペアレント・トレーニングその2

以前にもペアトレの有効性について掲載しました。

発達障害のある子どもに限らず、保護者の子どもへの接し方や養育態度は、 子どもの心身の発育成長にとって、大きな影響を及ぼすことが知られています。 ペアレント・トレーニングとは、保護者や養育者の方を対象に、行動理論の技法の学習、ロールプレイ、ホームワークといったプログラムを通して、保護者や養育者のかかわり方や心理的なストレスの改善、子どもの発達促進や不適切な行動の改善を目ざす家族支援のアプローチの一つです。日本に普及しているものは三つほどの流派があります。取組効果は就学前か遅くとも小学校中学年までの親子に大きな効果が得られると言われています。

精研式・奈良式ペアレントトレーニング
このペアトレーニングは最初、ADHDの子ども向けに開発されましたが 広凡性発達障害とADHDの併用診断が主になったので、自閉症スペクトラム障がいの子どもにも適用できるプログラムに改良されました。開発当初の問題点としては、無視とほめる組み合わせをしていたのですが、子どもの情緒が不安定になったり、親子関係で悪化する事例が認められたため修正を加えました。
子どもの好ましい行動→ほめる
好ましくない行動→指示の工夫
許しがたい行動→ルールを作って一貫する
この3つに分けて対応を学んでいきます。 ほめ方などそれぞれに対する対応を、学んでいくことが特徴になります。この学びは、子どもの問題行動の改善も勿論ですが、親自身の育児に対して自信回復をすることが目的でもあります。

鳥取式ペアレントトレーニング
兵庫教育大学から生まれたトレーンングで、自閉症スペクトラムの子どもを対象としたトレーニング法です。今は、鳥取県だけではなく島根県、岡山県、兵庫県、埼玉県。沖縄県などの連携している、支援センターなどで受けることが出来ます。効果としては、子どもの特性や発達の状態の認知を知る。親子のコミュニケーションを楽しめるようになる。子どもが目標を達成しやすくするための、視覚支援や環境環境の方法を知る。子どもの支援法を他の人に伝える方法を知る。このような効果を目的にしています。グループワークでは
褒め上手・観察上手・整え上手・伝え上手・教え上手
などに分けて、説明していきます。子どもの問題行動を抑えるのではなく、適応行動を開発していくという発想です。環境調整と代替行動を中心に学び、最終は子どものサポートブックを作成し、家庭でも使える療育プログラムを一緒に作成して、家庭内療育をすすめていきます。このプログラムも、親の育児への不安の解消や憂鬱な気分の改善を目的としています。

肥前式ペアレントトレーニング
国立肥前療養所(現在の独立行政法人肥前精神医療センター)で開発された我が国初のプログラムです。もともとは、知的障害のある子ども向けに開発されたプログラムでしたが、現在は知的障害のない子どもにも提供されているプログラムです。親が子供に対して出来るようになってほしい行動を決めて、プログラムを通してそこへ向かうようにしていき、家庭内で取り組んだ行動を観察記録を行っていきます。効果としては発達障害をある子どもの問題行動の改善や、生活でのお困りごとの改善を行うと同時に、親が子どもの行動を理解することや、育児の自信の回復、親のストレス軽減がねらいです。

京都府では、何年も前から保健所などが提唱していますが、なかなか広がりません。小さな子の保護者の場合、保健所から声がかかる事イコール障害の宣告という誤解が多く、保健士さんたちも手をこまねいているのです。さらに、民間でやるには財政的な裏付けが弱く、指導者が少なすぎることも課題です。発達障害は知的遅れのない子どもも含めれば1割ほど存在します。グレーゾーンの子どもも含めれば3割が幼少期に行動の問題を抱えています。三人に一人なら決して珍しいことではありませんし、できれば全ての親に学んでほしいのです。ペアトレは親の変容をねらうもので、その変容が幼少期からの行動問題の予防に大きな効果をあげ、結果、子どもの自尊感情を育てることなのです。

このトレーニングは育児に対する自信もつき、発達障害の子どもを持つ保護者の方にはぜひ受けてほしいプログラムです。確かに、グループワークや家庭での実施など、大変そうに感じられるようですが、育児の考え方がかわると毎日がとても楽になります。療育とペアレントトレーニングは車の両輪です。育児で大変な保護者のかたの考えかたをほぐして、一緒に考えていき子どもの成長とともに、保護者のかたのストレス軽減にもなるので、必ず育児が楽しくなると思います。本事業所でも3人そろえば実施できますのでお声掛けください。

特別支援学校の教室不足

段ボールで間仕切り特別支援学校の教室不足深刻「設置基準の策定は悲願」

2020年12月16日 19時16分【毎日新聞】

その教室は「壁」で二つに分割されている。壁といっても、既製の間仕切りにプラスチック板や段ボールをつなぎ合わせたもので教職員の手作りだ。教室不足を補うためだが、それぞれの「教室」は横幅3メートル程度。6人分の机や椅子、教材を置くと、残りは大人が1人通れるほどしかない。壁と天井には50~60センチほどの隙間(すきま)もある。「音に敏感な子もいるんですが……」。庄司伸哉校長は顔を曇らせた。

東京都江戸川区の特別支援学校「都立鹿本学園」は、知的障害の小・中学部と肢体不自由の小・中学部、高等部があるが、全106学級のうち18学級が分割教室を使っている。開校は2014年。設計段階で想定していた学級数は知的障害51学級、肢体不自由33学級だった。しかし、現在の児童・生徒数は455人で開校当初から約80人増え、学級数は知的障害61学級、肢体不自由45学級に増えた。教室が足りなくなり、16年度ごろから普通教室に手製の間仕切りを設置したり、図工・美術で使う特別教室や会議室など8室を普通教室に転用したりしてきた。

だが、校内の「過密化」は避けられない。それによってストレスを感じる子どももいるという。今年はコロナ禍が追い打ちをかける。感染すれば重症化しやすいといわれる基礎疾患がある子どももいる。十分なスペースが取れない中、マスクを外す給食の時間は特に細心の注意を払う。庄司校長は「けがや事故が起きやすい状況にあるし、災害など有事の際の誘導も不安が拭えない」と打ち明ける。こうした問題は全国各地で起きている。学校の整備が、児童・生徒数の増加のペースに追いついていないためだ。

19年度の全国の国公私立特別支援学校数は1146校で、この10年で116校増えた(約11%増)。一方、19年度の児童・生徒数は14万4434人で2万7399人増(約23%増)。障害種別に合わせた専門的な教育を求める保護者が増えたことなどが要因とみられる。顕著なのは全体の9割を占める知的障害の子どもの数だ。視覚障害、聴覚障害、肢体不自由などの子どもがほぼ横ばいなのに対し、右肩上がりが続く。

特別支援学校の学級編成標準(上限)は、義務標準法で小・中学部は1学級6人、高校標準法で高等部は8人(重複障害の学級はいずれも3人)。児童・生徒が増えれば学級数は増える。例えば小・中学部の場合、6人なら1学級だが7人になれば学級数は2になる。文部科学省調査では、全国の公立特別支援学校の教室不足数は計3162室(19年5月1日現在)に上り、分割・転用教室などでしのいでいるのが現状だ。

なぜ特別支援学校でこんなことが起きているのか。小中学校や高校には学校教育法の規定に基づき設置基準が定められ、自治体などの学校設置者が新設する場合、児童・生徒数に応じた校舎の面積、普通教室や特別教室など校舎に備えるべき施設などが決まっている。既存校にも「努力義務」が課される。

しかし、特別支援学校には設置基準がない。そのため想定を超える児童・生徒数を受け入れ過密化が進んでも解消するための法令がないのだ。文科省担当者は「小中学校や高校に比べて在籍者の年齢幅が大きく、障害種別も多岐にわたるため一律に作ることが難しかった」と説明する。

これからの教育の在り方について議論している文科相の諮問機関「中央教育審議会」(中教審)は来年1月にも出す答申で、特別支援学校の設置基準の策定を国に求める見通しだ。全国特別支援学校知的障害教育校PTA連合会の茨田一矢会長(47)は「設置基準は歴代会長が求め続けてきた悲願だった。現場の声も取り入れながら、実態に応じた環境づくりにつなげてほしい」と期待を込める。

設置基準できても「努力義務」になる可能性
だが、特別支援学校の設置基準ができても教室不足解消に直結するとは限らない。小中学校や高校と同様、既存校に関しては「努力義務」になる可能性があり、現状の教室不足の解消は各都道府県の取り組みがカギとなる。

文科省の19年調査で教室不足数243、16年調査からの増加数72といずれも全国最多だった熊本県。知的障害の子どもが通う特別支援学校高等部の生徒数が熊本市と周辺地域で特に増えたため、11年に県立特別支援学校整備計画を作って環境改善を進めてきた。しかし、小・中学部や県内全域でも特別支援学校に通う児童・生徒数が増えてきたため19年に計画を改定した。

現在、県内の国公立特別支援学校は22校。計画では、教室の分割や転用をしても5年間で教室不足が解消しない見込みの7校については高等部を丸ごと県立高校の校舎内に移すなどして24年度までに教室不足を「ゼロ」にする目標を立てた。

改修などが必要になるため移転費用は数十億円規模になる見通しで、高等部が移転していった後の校舎で老朽化に伴う改修などが必要になれば、さらに工費がかかる可能性がある。国は20~24年度を教室不足解消の「集中取り組み期間」として、改修費の補助率を3分の1から2分の1に引き上げた。県教委担当者は「設置基準があった方が整備する際の設計の根拠になるが、限られた予算でどこまで反映できるか。既存校に関しては経過措置が必要だ」と話している。

通常学級での「インクルーシブ教育」推進を
中央教育審議会の答申を受け、文部科学省は特別支援学校の設置基準の策定に着手するが、どのような設置基準が望ましいのか。今後の特別支援教育はどうあるべきか。日本大文理学部の高橋智教授(特別支援教育)に聞いた。

高橋教授は設置基準について「子どもの成長や発達を保障する観点から設ける必要がある」と述べ、盛り込むべき項目として、児童生徒数・学級数の上限▽在籍者数・学級数に応じた校舎面積▽最低限備えなければならない特別教室▽必要な多機能トイレや給食施設――などを挙げる。同時に施設改修費などへの国の十分な予算措置も必要と訴える。

一方、特別支援学校で児童生徒数の増加に伴う過密化が問題になっている要因として、子どもが障害の有無にかかわらず一緒に学ぶ「インクルーシブ教育」への対応の遅れを指摘する。比較的軽度の障害の子どもに対しては、小中学校で通常の学級に在籍しながら一部の授業は別の教室で受ける「通級指導」がある。文科省によると、通級指導を受けている児童生徒数は2019年5月現在、約13万人で10年前から約2・5倍に増えたものの、現場では専門性のある教員の不足にあえいでいる。

高橋教授は「国が進めるインクルーシブ教育の体制が学校で整っていないために、発達に課題のある子どもたちが特別支援学校へ行く“玉突き現象”が起きている。設置基準という大枠は必要だが、子どもたちがどこでもきめ細かな教育を受けられる体制を整えなければ、抜本的な解決にはならない」と話している。

<特別支援学校の教育環境の整備に関する答申素案>
・国が特別支援学校に備えるべき施設などを定めた設置基準を策定する
・教室不足の解消のため、国は学校の新築や増築、他校の余裕教室を活用するなどの集中的な施設整備の取り組みを進める
・既存校で設置基準を満たさない施設が使えなくなる事態を避けるため、国が必要な手当てを講じつつ、設置者は可能な限り基準に適合させるための措置を講じるよう努める

教育現場では今、複雑・多様化する社会に対応できる資質・能力の育成や個に応じたきめ細かな指導が求められている。そのためには、どのような教育体制を構築すべきなのか。中央教育審議会(中教審)が来年1月にも出す答申に盛り込まれるとみられる主な項目のうち、特別支援学校の環境整備▽小学校での教科担任制導入▽高校普通科改革▽通信制高校の質の保証――について、関係する現場の実情や課題を4回にわたって報告する。【千脇康平、田中理知】

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政府は17日、公立小学校の学級編成基準(上限)を現在の40人(1年は35人)から35人に引き下げることを決めたことを昨日掲載しました。来年度以降、2年から学年ごとに移行し、5年間をかけて全学年で実現することになるそうです。

その陰で、特別支援学校の1学級の人数や教室の大きさを定める設置基準の法制化が足踏みをしています。記事にもあるように、仮に法制化されても小中学校と同じように既存学校は努力義務となる可能性も高いというのがなんとも情けないです。

ただ、特別支援学校の教室不足は、記事のように専門教育志向の増加やインクルーシブ教育の未整備だけでなく人口の都市集中があります。保育所不足問題も特養不足問題も人口の都市集中が背後にあり家族や就労形態の変化があります。都市の賃金の高さと利便性を求めて人口は集中します。その分都市の税収は地方より多いのですから、便利な分は都市が負担するというのが合理的なのですが、教育等公共サービスには国の法基準に沿うという縛りがあります。

本来、この基準は地方財源に関係なく公的なサービスを公平に行うために作られているものですが、都市が公共サービス改善の遅れの言い訳をするために使われる向きも否定はできません。基準がないから改善の優先順位は低くなるというわけです。都市は公共サービスの不具合を国の責任にして、国は全国の要望が出揃ってからと地方格差を改善の引き延ばし理由に使います。こうした地方と国がもたれ合う仕組みはおかしいという議論の中で出てきたのが道州制です。

道州制とは. 「中央集権型国家」から「真の分権型国家」へ. 都道府県に代わって、より広域の単位で新たな地方自治体(道州)を設置し、国から広範な権限と財源を移管する制度です。こうしても東京一極集中をはじめとする都市集中問題が解消できるかどうかは分からないですが、少なくとも1億2千万人の住むところが同じ環境のはずがないので、もう少し住民に近い場所で政治が動き、状況に応じた分配を素早く行う仕組みは必要です。それにしても支援学校だけが教室を半分に仕切って何年も授業しているのは、障害者差別とも言えますから、基準云々の問題ではなく自治体が応急処置で改善すべきことだと思います。

伴走者が陸上トラックの内側を走る理由 ~パラ陸上伴走者・中田崇志

伴走者が陸上トラックの内側を走る理由 ~パラ陸上伴走者・中田崇志

1/5(水) 【ニッポン放送】

黒木瞳がパーソナリティを務めるニッポン放送「あさナビ」(12月29日放送)にパラ陸上伴走者・パラスポーツメッセンジャーの中田崇志が出演。伴走者として走る楽しさ、また気を付けていることについて語った。

黒木瞳が、さまざまなジャンルの“プロフェッショナル”に朝の活力になる話を訊く「あさナビ」。12月27日(月)~12月31日(金)のゲストはパラ陸上伴走者・パラスポーツメッセンジャーの中田崇志。3日目は、伴走者として走る楽しさ、また気を付けていることについて―

黒木)伴走者としての楽しさはどういうところにありますか?

中田)「選手が力を出し切れるように走れたな」と思えたときは嬉しいです。自分1人であれば、自分がいま苦しいかどうかは自分でわかります。でも選手が苦しいかどうかは外から見るだけなので、難しいです。「いまここでスパートしても、選手は最後まで持つかな」などと思うのですけれど、そこをいつもの練習のなかで、「こうなれば選手が苦しい」ということが感じ取ることができると、本番でもうまく行きます。

黒木)そのときの阿吽の呼吸みたいなものはどうやって培うのですか?

中田)伴走ロープが2人の呼吸を合わせてくれるのです。伴走ロープが、あるとき「グッ」と固くなることがあります。選手が疲れて来ると、腕の振りが小さくなり、「あれ、いつもと変わった」ということが、その瞬間に感じるのです。

黒木)固くなったときに。

中田)伴走ロープはただの「もの」ではなく、2人の間をつないでくれるものなのです。

黒木)走っているとき、中田さんの場合は、選手の内側に入るというころです。選手が縁石を踏むのが怖いと伺いましたが、それはどういう意味ですか?

中田)400メートルの陸上競技場のトラックは、内側に10センチくらい出っ張っている縁石があるのです。

黒木)10センチもあるのですか。

中田)そうなのです。踏んでしまうと転倒する可能性もあります。だから視覚障害の選手をあえて外側にして、私が縁石のギリギリを走るようにしています。そうすると選手は安心して一歩を踏み出せるのです。内側を走る方が距離は短くなるのですが、外側であれば安心して走れます。どちらがいいかは、選手によって異なります。

黒木)縁石は10センチもあるのですか、怖いですね。

中田)私たちがメダルを獲ったアジア大会でも、1位の選手が最後の200メートルで内側に一歩入ってしまって失格になりました。

黒木)そういうこともあるのですね。

中田)ですので、私たちは伴走者が内側を走ることにしています。

黒木)日本では、伴走者が内側を走ることが多いのですか?

中田)世界では半々くらいです。意外なことに、短距離の選手は伴走者が内側の方が多いです。ものすごいスピードで走るので、一緒にコントロールするのが難しいのですね。

黒木)そうでなくても危険を伴う、早さを競い合う陸上競技ですからね。

中田)早さも大切ですが、何よりも選手が安心して安全に走れるということが最も求められることです。

黒木)中田さんはいろいろな経験をなさったアスリートでいらっしゃるのですけれど、どなたでも伴走者になれるのですか?

中田)伴走者に資格はありません。黒木さんもいま、視覚障害の人と走ろうと思えばすぐに走れます。大会も出られます。

黒木)具体体に、どういうことを声かけなさっているのですか?

中田)走るときには大きく2つあります。まずは安全面。コースで、「30メートル先、右90度カーブです。20メートル、10メートル、5、4、3、2、1。はい曲がります。はい曲がり終わりました」というような声かけが1つです。

黒木)コースの状態ですね。

中田)もう1つは、周りの選手の状況を伝えています。「ケニアの選手があと10メートルまで迫って来ましたよ。ちょっとずつ迫って来ました。もう少し、ジワジワ追いかけて来ますよ」というように実況する場面もあります。


中田崇志(なかた・たかし)/ パラ陸上伴走者・パラスポーツメッセンジャー

■1979年・宮城県仙台市出身。
■中学時代に陸上競技を始め、大学時代には日本インカレ・3000m障害で7位入賞。
■東京学芸大学卒業後、NTTデータに勤務しながら、陸上競技を継続。
■2003年にパラ陸上長距離の伴走に取り組む。
■2004年、高橋勇市選手と共にアテネパラリンピックに出場。マラソンで優勝。
■2012年、ロンドンパラリンピックでは、和田伸也選手と共に出場。5000mで長距離立位初となる銅メダルを獲得した。
■2021年の東京パラリンピックでは、パラ陸上にかかわるきっかけとなった髙橋勇市とともにパラトライアスロンの伴走者として出場を目指した。
■パラ陸上における百戦錬磨の伴走者であり、パラ陸上のスペシャリストである。

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この記事を読んだとき、聴覚的支援も視覚的支援も同じだなと感じました。聴覚的支援は視覚に比べ聴覚が相対的に優れた方に、視覚的支援は聴覚に比べ視覚が相対的に優れた方に行う支援です。感覚的には真逆の支援ですが、認知的には同じ支援です。声掛けをするとありますが、要するに周囲の状況や今後の見通しを聴覚で伝えるか視覚で伝えるかの違いで、伝えていることは同じです。

伴走者が内側を走って縁石で躓かないようにというのも、環境の調整として構造化したり嫌な刺激を少なくする配慮を支援者が先回りしているASD支援に似ています。視覚障害者への伴走ロープの役割は、ASD者にとっては支援者への発信です。表出コミュニケーションの絵カードであったり感情表出であったりするのかもしれません。ASD者の表現で支援者は適切な支援が提供できます。逆に言えば、伴走ロープや表出コミュニケーションツールがなければ相手の体調や思いを知る術もないということです。

「伴走者に資格はありません」「視覚障害の人と走ろうと思えばすぐに走れます。大会も出られます」とは言いますが、それは中田崇志さんが縷々説明したように、支援を提供する人に適切な支援ができ、伴走ロープがあってこそだという事を忘れてはならないと思います。もちろんその他の障害の支援でもこれは同じ事です。誰でも支援はできますが、前提条件は個性に合わせた環境調整と支援を受ける側に表出手段があることです。