みんなちがってみんないい
有罪判決 放課後等デイサービス「ホアロハ」
生徒に暴行 元施設長に有罪判決
12月23日 18時47分【NHK】
神戸市の児童福祉施設で、知的障害のある女子中学生の顔をたたくなどして、暴行の罪に問われた元施設長に対し、神戸地方裁判所は執行猶予のついた有罪判決を言い渡しました。
神戸市北区の放課後等デイサービスの事業所「ホアロハ」の元施設長、戸嶋清被告(45)はことし6月と8月、施設に通っていた知的障害のある中学3年生の女子生徒の顔を手のひらでたたくなどしたとして暴行の罪に問われていました。
これまでの裁判で、検察は「暴力的な手段で従わせようと安易に暴行を繰り返し、責任者にあるまじき対応だ」などとして懲役1年を求刑し、弁護側は反省しているとして執行猶予のついた判決を求めていました。
23日の判決で神戸地方裁判所の国分史子裁判官は「障害を理解し、適切な対応をとるべき管理者という立場であるにもかかわらず、指示どおりに行動してくれないことに一方的に腹を立てて暴行した。その発想は安易かつ卑劣で、話すことができない被害者の人権を軽視していて刑事責任は重い」と指摘しました。
犯行を認め、施設の廃業を届け出ていることなどを考慮して懲役1年、執行猶予3年を言い渡しました。
この施設では、元職員の長谷川聡被告(52)も同じ女子生徒の足を蹴ったとして暴行の罪に問われ、裁判で無罪を主張しています。
【市が給付金の返還求める】
神戸市は23日、「ホアロハ」が市から給付金を不正に受給していたとして、返還を求めていると発表しました。
市によりますと「ホアロハ」は去年2月からことし7月にかけて、実際に児童が利用していないのにもかかわらず利用していたかのように装い、市から給付金およそ285万円を不正に受給していたということです。
これを受けて、市は児童福祉法に基づいて、運営をしていた法人に対して、給付金に追徴金を加えたおよそ400万円の返還を求めているということです。
また、「ホアロハ」はことし10月下旬に事業所の廃止届を提出していて、神戸市は先月30日に受理しました。
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どうして、このような放デイを神戸市が認めたかはおとがめなしです。子どもに手を上げて大声で脅し、給付金の詐欺(虚偽報告)をする。こんな経営者の事業所は閉めて当たり前ですが、役人にはこれを見落とした監督責任はないのか首をかしげます。神戸市の福祉の不祥事は今回だけではないからです。福祉だけでなく、学校教育でも、教員いじめの職員が学校支配して管理職が何も言えない状況なども、昨年メディアを賑わせました。神戸市全体の行政が緩んでいると言われてもしかたがないと思います。
感染再拡大 新学期迎えた学校 感染対策を徹底して授業再開
感染再拡大 新学期迎えた学校 感染対策を徹底して授業再開
01月12日 【NHK】
新型コロナウイルスの感染が再拡大するなか、東京都内の学校では新学期を迎え、受験を控える6年生の児童もいることから、感染対策を徹底して授業を再開しています。
このうち、東京・大田区の区立出雲小学校では11日から3学期が始まりました。学校では、登校時の感染対策として、昇降口で教師がサーモグラフィーを使って児童の体温を測定し、発熱している人がいないか確認しています。
また、中学受験を控えた児童がいる6年生をはじめ、各教室では担任が1人1人、児童とその家族の体調に問題がないかどうか聞き取ったあと、児童は消毒して入室していました。12日は毎年この時期に行われている学校の開校記念の催しもありましたが、リモートでの開催となり、児童たちは教室の前の大画面を通じて校長の話を聞いていました。
また、毎年恒例の新年の書き初めの授業は、日にちを分散したうえで、スペースを確保しやすい体育館を活用し、できるだけ間隔を空けて行われていました。
学校行事にも引き続き影響が及んでいて、去年9月からことし3月に延期された6年生の1泊2日の校外学習も今後の感染状況を見ながら実施の可否を判断したいとしています。
中学受験を控えた6年生の男子児童は「受験まで1か月を切っているのでコロナだけでなく風邪などをひかないように引き続き気を引き締めて感染予防に努めたいです。行事が開かれない可能性もありますが、日頃からの友達と過ごす今の時間を大切にしていきたいです」と話していました。
関眞理子校長は「オミクロン株は感染力が強いとのことなので、小さな症状でも配慮するよう家庭に声かけしています。コロナ禍の生活に子どもたちも不安を感じているのでケアをしていきたい。健康で安全安心な学校生活を送れるよう、先生を含め、健康管理や感染対策をしっかり行うことを心がけています」と話しています。
文部科学省は厚生労働省とともに大学受験を控える受験生向けに作成した「受験生のみなさんへ」という文書をホームページに掲載していて、感染リスクをできる限り減らすための対策を紹介しています。
このなかでは体調がおかしいときには外に出ない自主的に検温をする外出は最小限にとどめるこまめな消毒といった受験生本人がとる基本的な感染対策のほか、受験生がいる家庭内で心がけることも掲載されています。
まず、家庭内で普段から心がけることとしてはお互いに体調を確認しあって症状がある場合は早めに医療機関を受診すること受験生の家族は会食など、外出先で感染リスクのある行動をできるだけ減らすこと家族での食事の際にも可能な範囲で距離を確保することなどをあげています。
また、もし、体調が悪い家族がいる場合には同じ部屋での食事や睡眠を避け、難しい場合は距離を保つ工夫をすること家族での会話の際にもマスクを着用することなどをあげています。
そのうえで文書では新型コロナウイルスは誰でも感染する可能性があり、感染した人を責めることなくみずからを守る行動を心がけるよう呼びかけています。
首都圏の1都3県の私立中学高等学校協会などによりますと、埼玉県では今月10日から千葉県では今月20日以降、東京都と神奈川県では来月1日以降、それぞれ私立中学の一般入試が行われます。
中学受験の模試や受験情報のとりまとめを行っている「首都圏模試センター」の調べによりますと今月6日の時点で、首都圏の1都3県の私立中学校の少なくとも70校以上が、新型コロナウイルスに感染するなどして試験を受けられなくなった人のため、追試を予定しているということです。
また、およそ18校は追試などの対応が可能かどうか学校に相談してほしいとしているということです。
首都圏模試センターは「今後の感染状況によっては、追試などの対応をとったり、入試について変更する学校も出てくると思うので志望校のホームページをこまめに確認してほしい」と話しています。
今月15日からは2日間の日程で「大学入学共通テスト」が行われるなど、首都圏では今後、高校入試や大学入試もピークを迎えます。
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中学受験まで感染リスクの管理を行う、これが今の東京の実情だと言う事がよくわかる記事です。東京では平均2割程度ですが文京区や港区では4割ほどの子どもが私立中学に行くので中学受験は珍しいことではありません。全国平均で1割程度ですから、乙訓地域では各クラスで3~4名が東京港区のクラスでは15名以上が私学に進学する感じです。
大学入試では、感染や濃厚接触で共通テストが受験できなければ各大学で試験をするように通達した事が不公平になるのではないかという議論が起こっています。理由は共通テストの点数で各大学は足きりをするのに対象者はそれをスルーできるからだそうです。筆者も含め昭和生まれの約半数は試験一発勝負の世代なので事態の重大さがわからないのですが、平成生まれの人たちはすぐに気づいたようです。
それにしても、オミクロン株の症状は風邪引きと酷似していると症例も集まってきているのに、感染者数ばかりを強調しNHKも事実上他のメディアと同じく煽っている感があります。一気に広がると入院施設が対応できないからと言いますが、次の山が来ると専門家も政治家も一様に表明していたのに、以前と全く同じ発言をして無策に悪びれる様子もありません。
そもそもエボラ出血熱と同じ扱いの2類相当を、インフルエンザ並みの5類相当に修正すれば通常の対応に戻せたはずでした。結局、重症化しないという症状に関係なく制限を強くすればするほど支持率が上がるというポピュリズムがそれも許さなかったということです。沖縄はオミクロン拡大で緊急事態宣言の要請をしていましたが、重症者は僅かでした。この騒ぎ方も、世界中で広がっている感染を米軍基地の責任にして政治的に煽っている感じがします。必要以上の制限をして必要のない休校休所で子どもを巻き込まないで欲しいと思います。
学校ができることは手洗いうがいを励行することです。重症例がほとんどないのに、新しい株が出るたびに行事を止めたり特別な措置をしていては、この先教育も福祉も成り立ちません。メディアの取り上げ方も、感染者が増えた増えたと騒いで不安を煽るのは、そろそろ終わりにしてほしいと思います。大事なのは症状と予防法をデータを示して正しく説明することだと思います。
児童養護施設
児童福祉施設に入所する理由のNo.1は「虐待」です。児童養護施設に入所している子の約6割が、虐待を受けたことがあると答えています。また、障害などのある児童も近年増加していて、平成25年では28.5%の児童が障害ありとなっています。もし何らかの事情により児童養護施設に子供を預けたいと思ったときは、お近くの児童養護施設、もしくは児童相談所、民生委員・児童委員、福祉事務所、保健所、市町村保健センターへご連絡ください。秘密を守りながら、相談を受けることができます。
まずは各都道府県が運営している「児童相談所」や市町村の「福祉課」に連絡をすることが必要です。専門の職員が相談内容を聞いて、心理的検査や医師の診断・家庭環境の調査などを行います。その結果に応じて生活指導をし、必要と判断したら児童養護施設に入所という流れです。
入所理由で一番割合が多いのが虐待で、「父または母の虐待・酷使」が18.1%です。それに次いで多いのが「父または母の放任・怠惰」、つまりご飯を作らなかったり子供に無関心で世話をしないネグレクト(育児放棄)で14.7%です。特にネグレクトは、父1.8%なのに対して母12.9%と、母の方が割合が多いことが表からわかります。特に虐待を受ける児童の数については、近年急激に増加しています。児童相談所に報告される児童虐待の数は、1990年から2010年の20年で50倍以上に拡大しています。児童虐待の背景には、母親の育児ストレスが挙げられます。実際、虐待行為の6割は実の母親によって行われているというデータがあります。つまり、母親だけの理由で言えば1位ネグレクト、2位精神疾患となります。この母子への社会的セフティーネットが日本は大変弱いといます。
近年社会情勢が大きく変化しているのに、未だに母親が育児の大半を担うのが日本の社会です。自己責任論で育児の責任全部を背負ってストレスを溜め、その矛先が子供に向いてしまうこともあるのでしょう。虐待の場合は通報等により発覚し、親の意思に関係なく養護施設に預けられることが多いのですが「今のままでは虐待をしてしまう!」と苦しんでいる親が福祉施設に相談をし、一時的に児童養護施設に預けるといったケースもあります。
精神疾患は全体の12.3%です。育児ストレスやその他の原因により、親が精神疾患になり治療をしながら子を預ける方もいます。子供が病気になったら休むのも、PTA会議に出るのも母親が未だに多いので、ママ友づきあいや仕事のストレスで精神を病んでしまい、子供を施設に預ける判断をする親御さんもいます。こちらも母親が精神疾患になってしまった例が父親よりも多く、父0.6%に対して母は11.7%です。ひとり親ではない場合、父親が精神を病んでも傷病手当等を利用し、母親が仕事と育児を担当することができますが、父親が仕事をしながら育児家事をすることが社会的にまだ難しいです。
仕事や入院などで、物理的に子供と離れなければならなくなった場合も、児童養護施設の入所対象となります。仕事や入院の他には父や母が警察に捕まった(拘禁)などの理由で、養護施設に預けられるパターンもあります。経済的に子供を養育できないというのも、養護施設に子供を預ける理由の一つです。
これらの一番の問題は、障害のある子もない子も一時預かりを含めて入所できる余裕がほとんどないことです。これは虐待が増えだしてからというより、慢性的にキャパが少ないのです。特に障害のある子は児童相談所では人手の問題で預かれない事が多いので児童養護施設に一時保護になるケースがほとんどですが、私の知る限り簡単に2カ月までの一時保護が実現したケースは見たことがありません。行政も児相も他にもケースがあるからと言う理由をつけて、速やか(訴えから1週間以内)に措置されたケースを見たことがありません。お任せされる施設にしてみれば空きのスタッフをいつも複数名用意するには財政負担があるので、できるだけ絞り込んで経営しようとしますから無理もないのです。財政的制度の面から見直さないとこの問題は解決できません。障害者をできるだけ地域に戻すというインクルージョンの流れから入所施設への資金の流れがさらに弱くなったことも原因の一つかもしれません。
校則なくした中学校
「校則なし」で区立中はどう変わったか校則は誰のためにあるのか
2020/12/25 16:00【共同通信】
「校則なし」を実現した公立中学校がある。東京都世田谷区の区立桜丘中だ。服装や髪形は自由で、遅刻しても、教諭に大声で怒鳴られることはない。定期テストやチャイムもない。全国各地の学校ではいまだ、下着の色指定やツーブロック禁止など理不尽な校則がまかり通る中、桜丘中はどのように校則をなくしていったのか。前校長の西郷孝彦さん(66)に聞いた。
校則はいったい誰のため?
3回にわたって考える3回目です。(共同通信=小川美沙)
―校則をなくしたきっかけは。
赴任した2010年当時、桜丘中は荒れていた。服装や髪形に関する決まりがあり、教諭が声を荒らげて生徒を指導することもあったが、子どもたちを上から押さえつけたってうまくはいかないと感じていた。
学校にはさまざまな子どもがいる。「普通の子」なんて存在しない。こだわりが強い、朝起きられない、制服が着られない、学習障害や発達障害がある…。こうした個性や特性を考えずに、「靴下は白」「中学生らしい髪形」など合理的な理由がない校則を当てはめると、それがストレスになり、不登校になる。
生徒全員に「学校は楽しい」と感じてもらえるにはどうすべきかを考えると、合理的な理由のある校則は一つもなかった。それに、校則で「みんな同じ」を押しつけると、枠からこぼれ落ちた子がいじめの対象になる。
ある男子生徒は、学習障害があるためにタブレットの持ち込みを必要としていたが、別の中学では「一人だけ特例は認められない」と断られたそうだ。桜丘中で受け入れ、これを機に「全員持ち込みOK」にした。その生徒だけでなく、誰にとっても過ごしやすい環境を目指したからだ。
―学校は集団生活を送る場で、ルールは必要だとされているが。
校則ありき、ではない。生徒が自ら考え、判断する力を伸ばすにはどうするか、だ。どんな髪形や服装をするかは自分で決める。帽子をかぶって来る子もいれば、メイクをする子もいた。チャイムがないから、自ら時間を管理する。授業中に居眠りしても、注意することはない。短時間の居眠りで頭はスッキリする。教諭は授業に集中してもらえるよう工夫するようになり、居眠りも減った。
校則をなくしたもう一つの理由に、生徒に「非認知的能力」を身に付けてほしいという願いがあった。社会で活躍するためのコミュニケーション能力や柔軟な発想力など、紙の試験では測れないスキルを指す。そのために生徒に対し6つのことを実践した。①言うことを否定しない②話を聞く③共感する④触れ合いを積極的に行う⑤能力ではなく努力を褒める⑥行動を強制しない―いずれも厳しい校則とは相いれないことだった。
―生徒はどう変わったか。
「管理」されることに慣れた子は最初は戸惑うが、自由に思ったことを言わせた。「授業がつまらない」でも「こんなの将来役に立たない」でも、とがめない。その結果、教諭との信頼関係を作りやすくなったと思う。年に数回「ゆうゆうタイム」といって、生徒と教諭が一対一で自由に話せる時間を作ったが、生徒の表情が豊かになったと感じる。こうして子ども本来の、自分自身に戻していく。自分から進んで勉強しようとする生徒が多くなり、学力も身についた。朝8時から、廊下に設けられたハンモックや椅子に座って、それぞれ勉強していた。
友達に対する考え方も変わったようだ。入学当初は他人の言動を気にしてばかりで、教師に「あの子はルール違反では?」と告げ口しに来た生徒もいた。しかし、桜丘中ではそれが意味の無いことだと気づくと、「私は私、あの人はあの人」だと自分も、相手も尊重できるようになっていく。2、3年生ではいじめは全く無い。
―全国の中学、高校には、理不尽な校則がたくさんある。
中高生が不安定な思春期にあることを忘れてはいけない。合理的な理由がないルールで縛ると最初は反発する。「内申書に響く」などと言われると、生徒は意見を述べるどころか、考えることさえ諦めてしまう。ストレスがたまると、勉強にも集中できないだろう。
学校は厳しい校則を運用する一方、社会で法に触れることが「治外法権」になり、曖昧に対処されがちだ。これでは生徒を混乱させる。体罰は暴行、傷害罪で、学校の内も外も同じ法律を適用すべきだ。桜丘中でも生徒が窓ガラスを割ったら、故意であれ過失であれ必ず弁償してもらった。校則はなくても、社会のルールである法律を守らなければならないという厳しさは、生徒も実感していた。
日本は1994年に「子どもの権利条約」を批准した。12条に意見表明権を定めており、生徒がルールや学校のことについて自由に意見を述べる機会は保障されなければならないはずだ。数年前、桜丘中でも生徒手帳に一部を抜粋して載せた。子どもたちに、君たちの権利は認められ、大切にされているんだということを伝え、安心してほしかったからだ。信頼とは、そうやってつくられていくと思う。
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さいごう・たかひこ1954年生まれ。今年3月まで東京都世田谷区立桜丘中校長。著書に「校則なくした中学校たったひとつの校長ルール」
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「学校は校則を運用する一方、社会で法に触れることを曖昧に対処する。これでは生徒を混乱させる。」と言う考え方は理にかなっていると思います。学校は公共の場、社会そのものだという方が生徒は理解しやすいです。同じように、教員も学校を公共の場としてわきまえれば、生徒へのパワハラもセクハラもモラハラも犯罪として認知され、無法者は許されない土壌が作れるはずです。まだ、子どもだから、善悪が分からないから、という触法のラインが一体どこにあるのかわからないようなシステムこそ改めるべきだと思うのです。大人がしゃんとすれば子どもはまねるものです。
若者が帰りたくなるまちを作る...0歳~100歳まで“ごちゃまぜ”の世代間交流を実現させた
若者が帰りたくなるまちを作る...0歳~100歳まで「ごちゃまぜ」の世代間交流を実現させたある病院の挑戦【群馬】
2022/01/14【FNNプライムオンライン】
群馬県の人口約5万人の小さな自治体で、地域の病院が子どもから高齢者、障がいのある人まで一体的にケアする取り組みが行われている。政府が進めようとする「地域包括ケアシステム」を先駆けて実践するこの病院とは?現地を取材した。
「0歳から100歳まで地域で支えるんです」
「ここでは0歳から100歳、すべての年齢を地域で支えるんです」
群馬県沼田市で2021年11月に開設した地域共生型施設「SONATARUE(以下ソナタリュー)」。筆者に施設を案内してくれた担当者はこう語った。
ソナタリューは1階に足湯や温泉、レストランにカフェ、アスレチック公園があり、一見アミューズメント施設のようだが、実は障がいのある人の生活や就労の拠点であり、障がいのある子どもたちの学童クラブもある。
この施設を開設したのは、沼田市にある医療法人大誠会内田病院(以下内田病院)だ。内田病院はいまから30年以上前に来るべき高齢社会を見据えて、当時としては珍しかった医療と介護の連携を開始した。
その後内田病院は福祉の分野にも進出し、いま医療・介護・福祉を一体化させた取り組みを行っている。ソナタリューもその1つであり、内田病院は人口5万人足らずの沼田市で、子どもから高齢者まで安心して暮らせるまちづくりの拠点となっている。
学童保育が足りないなら自分たちでつくる
安心のまちづくりにチャレンジしているのが、内田病院グループの理事長を務める田中志子さんだ。田中さんの父親は内田病院の創始者であり、当時としては珍しく介護分野に乗り出した。そのきっかけを田中さんはこう語る。
「父は1976年に有床のクリニックを開業したのですが、10年ほど経つと入院患者さんの年齢層が上がって長期入院になり、軽度の介護施設みたいな感じになりました。そこで父は1988年に当時始まったばかりの老健施設(※)を建てたのです」
(※)介護老人保健施設。介護が必要な高齢者の自立支援などを行う、病院と施設等との中間施設
父親を継いで理事長に就任した田中さんは、「誰もが生きがいをもって安心してくらせるまちづくりを」と福祉の分野にも進出した。
「2006年にNPO法人をつくりました。当初は自宅にいる一人暮らしの高齢者に配食をしていたのですが、子育て中の病院の職員が『学童保育が足りなくて働けない』というので、『では学童を作ろう』と。そのうち外部の子どもも預かるようになり、障がいのある子どもが大変そうだとこちらも預かることになりました。当初は公費が頂けず赤字続きでしたね」
居場所のない高齢者と子どもが”ごちゃまぜ”に
その後保育園やデイサービスも始めた田中さんは、高齢者から子ども、障がいのある人へのサービスを同じ施設内で行うことを決めた。こうして2017年に開設した「いきいき未来のもり」には、保育園、学童クラブのほか、障がいのある子どもを対象とした児童発達支援事業と放課後等デイサービス、要介護認定された高齢者のデイサービスが混在している。
田中さんはこう語る。
「施設は保育園の子どもがデイサービスを通らないと園庭に行けないような設計にしました。そうすると子どもはおじいちゃん、おばあちゃんに1日2回は会えて挨拶もできる。こうして“ごちゃまぜ”にすると、家で居場所がなくなっていたおばあちゃんが子どもたちの運動会のお花を作ったり、認知症の人が赤ちゃんと交流したり。また重い自閉症の子どもが健常者と交わる中で、普通クラスに通えるようになったりもしました」
“ごちゃまぜ”な世代間交流が生まれる施設
そして2021年11月に開設したのが前述のソナタリューだ。田中さんがソナタリューを作ろうと思ったのは、初めて障がいのある子を預かったときだ。
「お母さんたちがとても感謝してくれたのですが、『特別支援高校卒業後に住むところや働くところが無い』と言われて。それから16年が経って、障がいのある人のグループホームとショートステイをやっと始めることができたのですが、商業施設のように誰もが行きたがる施設にしようと考えたのです」
ここでは障がいのある人が健常の人と一緒にパンを焼き、足湯には園児もリハビリの人も、地域の人も観光客も来る。
「結果的に本当に“ごちゃまぜ”な世代間交流が自然と生まれるのです」(田中さん)
人口約5万人のまちが国に先駆ける地域ケア
いま政府は「地域包括ケアシステム」の構築を進めている。これは高齢者が可能な限り住み慣れた地域で自分らしい暮らしをおくることを目的としたものだ。
内田病院は、医療だけにとどまらず介護や福祉の分野まで取り組み、まさに子どもから高齢者、障がいのある人が安心して暮らせるまちづくりを行っている。
ではなぜ田中さんは、これまで難しいと思われていた包括ケアに挑戦するのか?
「沼田市は人口が5万人程度、うちも10年前は職員300人規模の医療法人グループでした。しかし現在は600人を超える職員がいます。だからこそ『こういうやり方をすると人が集まってきて、満足度が高いエリアになる』という発信ができれば、同じ規模の自治体のモデルになれるんじゃないかと。私たちは地域への反映に約20年かかりましたけど、このノウハウがあれば他の地域でも2年くらいでやって頂けるかのではないか思っているんです」
若者が帰りたい、残りたいまちづくりとは
さらに田中さんは「実はもう1つ理由があって」と続ける。
「これは本当にエゴでしかないのですが、私には子どもが3人いますが、赤ちゃんの時にとにかく可愛くて手放したくなかった。だから子どもたちが仮に都会に行っても帰ってきたい、残りたいまちを20年かけてでもつくろうというのが発端だったんです(笑)。だから誰もが楽しく働く場所があって、子どもを育てやすい環境があって、住みたくなるまちをつくろうと。おかげさまで子どもたちは皆、ふるさとに帰る予定です」
田中さんは若い職員に「要介護者を増やさないことは社会保障費を必要以上に上げないことになる。それは自分たちの未来のためなのだから、我が事としてやりなさい」と言っているという。
医療・介護・福祉を一体化させ、子どもから高齢者まで安心して暮らせるまちをつくる。そんなまちになれば、若者が帰りたいふるさとが日本中に生まれるだろう。
【執筆:フジテレビ 解説委員 鈴木款】
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医療から出発して老人介護や精神医療から就労支援にまで拡張していくケースはよく見ますし、学童保育や放デイにまで拡大していくのは、発達障害医療から放デイと言う形で最近ちょくちょくあります。町ごと丸抱えというのは地方ならではの取組だと思います。云わば地方でこうした芋づる式に必要だから作ろうと考えて実現できるかどうかは経営者次第だということです。
医療が福祉分野に拡大していくのは穿った見方をすれば、医療ニーズが変わってくる中で顧客(患者)を離さない取組とも言えますが、それが職員の新しい職域を開発し地域の雇用ニーズを作り出し地方を活性化することにつながるなら良いことです。本来なら行政や議会が動いて地域インフラの設計図は描くことが理想ですが、既得権益にがんじがらめの政治家や今まで通り路線の役所に任せていたらいつまでたっても実現しません。
医療法人が一定の資本力を得て、地域に資本投資して地域のインフラを整備していく話は、テレビでは地元の事など目もくれず合理主義を持ち込んだ儲け主義の理事らが画策していくというドラマ展開が多いのですが、田中理事長のような方もいるのだと強く発信してほしいと思います。
しかし、その起点が医療法人である必要はありません。地域で大きくなった企業は地域にたくさんの従業員がいます。その従業員の家族には子どもや老人もいれば障害のある人もいます。乙訓地域は世界に知られる資本力の強い大企業も多いです。地元の大企業が必要な地域インフラを拡大して持続可能な地域社会を作るように動き出せば、新しい共生社会のモデルを作ることも可能です。重要なのは法人トップの事業理念だということを田中理事長は教えてくれています。
福祉事業所の働き方改革
事業体が生き残る戦略の一つとして、働き方改革を進めていかなければなりません。ポイントは、3つあります。
1)長時間労働をなくす
2)休暇取得に向けた環境づくり
3)誰もが働きやすい雰囲気づくり
長時間労働をなくしていくためには、管理職の意識改革や、非効率な業務プロセスの見直し、従来慣行(利用者や関連事業所に対する非効率な業務)の改善が必要です。これは、結果的には生産性向上というメリットをもたらします。意識改革や業務設計・役割分担といったソフト面からのアプローチと、ITツールの活用・ペーパーレスといったハード面からのアプローチが「両輪」となります。
厚生労働省のヒアリングによると、年休取得が進んでいる法人では、一週間ごとのミーティングにて業務の進捗状況を所属長や同僚と共有し、仕事を個人ではなくチームで行うことによって労働者が休暇で不在となっても業務が回るよう、取り組んでいる事例がありました。労働者一人ひとりが責任感をもってしっかり仕事をすることは勿論重要ですが、仕事をチームで行い、チームの中で仕事の進行状況について情報共有することで、休みやすい職場環境へと変わってゆくのです。
トップが主導となり、休暇の取りやすい雰囲気や働きやすい環境づくりを行っていくことが大事です。
福祉現場での働き方改革の視点
離職率の低下、採用難の解消、労働生産性の向上、長時間労働の是正は、介護業界全体の共通の課題です。福祉現場における離職防止に向けた取り組み 5つのポイント
(1)「心身の不調」へのケア…腰痛予防、メンタルヘルスケア
(2)「支援観の違い」への対策…理念・指針の浸透
(3)「働き方」への固定概念の払拭…短時間勤務、時間単位年休、時間帯の固定
(4)「就労後ギャップ」の防止…入社前に誠実な情報の開示
(5)「持ち味の理解」と「承認」…多様性を許容し良い所に着目。事実+意味づけ
離職につながる長時間労働の是正については、昨今の働き方改革の流れもあり、一定の改善がみられている事業者もあるようです。単なる業務の削減はサービスの低下に直結する懸念があり、見直しを行う業務は慎重に検討するべきです。特に利用者に接する部分は、過剰と思われるサービスを除き、施設の「魅力」や「付加価値」になりますので、そこの見直しは必要最小限にとどめ、申し送りや会議・書類の作成といった、利用者に接遇しない業務や運営管理に関する部分について、手順を踏んで着実に業務効率化を推進していくことが大切です。
福祉現場における長時間労働の是正 5つのポイント
(1)「過剰サービス」の削減…「したい」と「できる」の見極め
(2)スタッフの意識改革…奉仕の心による「自主的な残業」の功罪
(3)デジタル化、ペーパーレス…効果絶大!
(4)申し送り、会議の短縮化…重要事項のみとし、残りは各自で確認
(5)定時退社の為の工夫…「仕事の再分配」と「職員間の連携」
中でも、デジタル化、ペーパーレス化による業務効率化は、介護福祉業界においては特に効果が大きいものと思われます。有給休暇の消化や、勤務間インターバル制度の施行などによって、従業員の勤怠の管理が複雑になります。デジタル化による管理の効率化は、今後多様なスタッフが納得して働いていく環境をつくっていくにあたり、従来以上に有力な切り札になります。働き方改革は、福祉業界にとっても待ったなしの経営課題です。全職員で改善状況の進捗を共有しながら、粘り強い取り組みが必要です。
手続きの遅れで長期の通所待ち
療育施設に通えず、空白の4カ月 福岡市で長期手続き常態化
2020/12/27 06:00【西日本新聞】
「長男が4カ月間、幼稚園にも療育施設にも通えず自宅で過ごしている」。転勤で福岡県外から福岡市に転居した男性(30)が西日本新聞「あなたの特命取材班」に声を寄せた。長男(4)は発達障害があり、転居前は認定こども園と並行して、治療と教育を行う療育施設に通っていた。ところが転居後は福岡市が求める療育施設の利用手続きが進まず、それを理由に幼稚園にも通えない状態に。取材すると、福岡市独自の療育システムの課題が見えてきた。
男性の長男が療育を受け始めたのは2歳11カ月。転居前の自治体で認定こども園に通いながら、定期健診で言葉の遅れを指摘され、発達検査などを経て、療育施設に週3日通所した。言語聴覚士による言語療法や集団療育を受け「発語も少しずつ増えた」という。
転勤が決まると、転居後の療育が円滑に進むよう施設側が引き継ぎ書を作成。成育歴や検査結果、発達状態などが詳細に記された。
9月初めに転居。すぐに福岡市に療育施設の利用を申請すると「指定医の診断が必要」で、受診日は2カ月後の11月と告げられた。予約の空きが出て9月末に受診が早まり「自閉スペクトラム症」と診断されたが、その後の手続きがなかなか進まない。並行して幼稚園や保育所にも利用を打診したが「療育センターに相談を」と全て断られた。年末にようやく手続きが終わり、年明けから施設に週5日通えることになった。
「子どもの発達にとって大事な時期なのに4カ月間も待たされ、ずっと自宅で過ごさせるしかなかった。福岡市は『子育てしやすい街』じゃなかったの?」。男性は憤る。
* *
福岡市にある未就学児向けの療育施設は26カ所。市こども発達支援課によると、利用には市内3カ所の「児童発達支援センター(療育センター)」に常駐する医師の診断が必須だ。他の医師の診断や療育手帳があっても、指定医の診断は免除されない。利用計画の作成や利用施設の決定も市が一括して行う。いずれも福岡市独自の仕組みだ。同課はその利点を「未就学児の発達障害の診断や判定は難しく、指定医が一括して診断すれば支援の公平性を担保できる」と話す。
近年、全国的に未就学児の療育施設の利用申請が急増。福岡市では10年間で倍増し、申請から診断まで平均1〜3カ月の待機が常態化している。市は2024年度をめどに新たな療育センターを開設予定だが、申請数の増加に体制整備が追い付かない状態だ。
他の自治体も医師の診断などを基に利用の可否を判断するが、多くは医師を指定せず、臨床心理士などの意見書でも可能だ。利用計画も民間の相談支援事業所が作成し、利用施設も保護者が選ぶなど柔軟に対応する。北九州市は「個人差はあるが申請から利用開始まで1週間程度」という。
さらに福岡市は施設数も他都市に比べて少ない。北九州市は67カ所、熊本市は79カ所。利用料の全額を公費で負担する鹿児島市は125カ所に上る。
国は発達障害の「早期発見、早期療育」を掲げる。厚生労働省障害福祉課は早期療育の利点を「子どもの発達に良い影響を与える上、保護者の不安や孤立感を取り除くことができる」と指摘する。
野口幸弘・西南学院大元教授(特別支援教育)は「福岡市は管理を重視しすぎだ。今回の事例も含め子どもの療育を優先しながら本人や家族の様子を見ることが大切だ。子どもの成長と家族の幸せを何より重視する支援を基本とすべきだ」と話した。 (本田彩子)
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京都府も5年前に、こども発達支援センターの初診が3か月以上の待ちがあると批判を浴びた事があります。しかし、今回の場合は診療ではなく手続きです。管理に縛られすぎだという意見ももっともですが、他地域では制度の趣旨(人為的な無支援状態を作らない)をふまえて手続きは利用と並行しながら間に合わせていくというふうに柔軟に運用しているわけです。人が少ないとか、申し込みが多いからなどと言っても、就学前児を1か月以上待たせる理由にはならないと思います。
もちろん、受け止める施設がどこも空きがないというならわかりますが、手続きの段階でこんなに待たせるというのは人権侵害だという感覚が担当者にないからできる事なのかもしれません。かつては役所仕事だった事を、利用計画として民間の相談支援事業所が作成できるようになったのは、手続きを早めてサービスを迅速に届けようという趣旨もあったからです。
ただ、民間だからサービスが早くなる訳ではありません。現在、相談支援事業はパンク状態です。仕事が混んできたからと言って簡単には増員できないことや、採算が合いにくい仕組みだからです。一つには、障害や福祉に関する豊富な知識、その地域でのキャリアがものをいう仕事なので個人の力量が問われます。二つには、個人の力量が大きく問われる割には相談利用者一人にいくらという歩合制だという事です。
のべ200人(回ではなく人)を相談支援してやっと一人分の人件費が賄えるのです。年間稼働が250日で、午前午後に分けて500枠とすれば、一人につき2.5回分の相談量です。家庭訪問をし、学校や園の様子を見学に行き、作った利用計画を説明するだけでもう足りません。もちろんこの中には、計画文書を作り予定を合わせキャンセルに応えて再調整する時間を含んでいます。
もちろん一人につき時間を長く取ればもう少し丁寧な相談活動ができますが、歩合制なので収入は減ります。個人的な感覚では、相談員一人につき年間のべ120人くらいが限界だと感じていますが、収入は4割減を覚悟しなければなりません。これでは小さな事業所は維持ができません。
相談事業は時間と質の両方のバランスをとる仕事です。時間が極端に少なければ相談の質は悪くなるけれど、極端に多いからと言って質の高い相談支援ができる訳でもないです。相手によっても全く違います。だからこそ、この仕組みの見直し(相談員一人当たりの担当数制限)に併せて、収入の一部固定制(新規増額部分)を取り入れるなどの改革を行うならば、新た事業所の立ち上げも期待できると思います。
「あ~、ムリムリ」「重度障害児に眼鏡つくる意味ある?」 受診を敬遠される障害児たち
「あ~、ムリムリ」「重度障害児に眼鏡つくる意味ある?」 受診を敬遠される障害児たち〈AERA〉
1/16(日) 【AERA dot.】
障害児こそ医療が必要なのに、受診を断られるケースもあるという。適切な医療を受けるには、医療関係者や保護者たちの配慮や準備が重要になる。AERA 2022年1月17日号の記事で取り上げた。
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「あ~、うちではムリムリ」
男性医師が明らかに嫌そうな顔を見せた。都内の女性(49)の長女(14)が幼児期に自宅で転び、おでこを切って、地元の「形成外科・皮膚科」クリニックに連れていったときのことだ。長女は知的な遅れのある自閉スペクトラム症。女性はこう振り返る。
「落ち着きがないからか、『こういう子は縫えない』と言われました。健常児だったらやってくれたと思いますが、障害児はまともな治療を受けさせてもらえないことが多いんです」
眼科も診てもらえるところが見つからず、長女が11歳のときに初めて問題なく見えていることがわかった。いま一番困っているのは歯科。近所で評判のクリニックに長女を連れていったが、嫌々診療している感じが伝わってきた。器具を口に入れて少しでも体が動いたら、即終了。2、3週間に1度のペースで通っていたのに虫歯も見逃され、長女は歯の痛みで一時食事ができなくなった。別の歯科医院に相談すると、男性歯科医は「人手は足りないし、治療中に動いて口の中を切ったら責任を持てない」と本音を明かしてくれた。
■フリーアクセスなのに
日本の医療制度の特徴の一つは、「フリーアクセス」。日本医師会のホームページには、「何の制限も受けずにどこの医療機関でも、どの医師にも自由に診てもらえて医療サービス(治療)が受けられる」とあるが、現実は、障害児はその特性から医療機関での診察や治療が難しく、受診を断られるケースもある。
脳性まひの小学3年の娘(9)がいる横浜市の女性もこう話す。
「医師の中には差別的な考えの方が多くて閉口します。娘の友人は、眼科医に『こんな重度障害児に眼鏡をつくる意味あるんですか』と言われました」
娘は脳性まひのアテトーゼ型のため、自分の意思によらない「不随意運動」があるが、理解のある医療機関は少ないという。歯科には「障害者歯科」があるので、歯並びが気になって受診したが、「障害児の中ではまだいいほうですから」と暗に矯正を断られ、通うのをやめた。
■時間とエネルギー必要
「障害のある子どもこそ、医療が必要です」
と話すのは京都市の「まさみ眼科クリニック」院長、朴真紗美医師だ。眼科領域では障害児は健常児に比べて、網膜上にピントが合わない遠視や近視などの「屈折異常」が約5倍多く、はっきりと見えていない可能性が高いため、受診がより必要だと強調する。
以前に朴さんは3年間、数カ月に1度、鹿児島の奄美大島に飛び、障害児の眼科診療をしていた。眼鏡を処方した子たちは、再診時に表情が明るくなり、言葉も増え、さまざまなことに興味を持つようになっていた。
「適切な眼鏡一つでその子の人生が変わり、家族の人生も変わる。このような医療があることを学びました」
一方で、障害児の診察を敬遠する医師たちの事情も理解する。
「障害児者の診療は何倍もの時間とエネルギーを要する上、個々の特性に合わせた技術や多くのスタッフの理解も必要です」
例えば3年前に知的障害と自閉症のある20歳の男性の白内障手術を、非常勤医として勤務する音羽病院アイセンター(京都市)で行ったときのこと。男性は大柄で片目は自傷のため失明していた。自閉症の特性で新しい場面を苦手とするため、診察室や手術室、入院病棟の様子を事前に写真で説明し、全身麻酔の導入練習だけでも数回の受診が必要だった。また、術後の感染予防対策のため、通常1泊2日の入院期間を2週間にし、病棟の看護師らは自閉症の勉強会を開くなど、病院側も受け入れ態勢を整えた。
障害者支援に詳しい川崎医療福祉大学准教授の諏訪利明さんはこう話す。
「肢体不自由の場合とは違って、障害が周囲に見えづらい自閉症や知的障害だと配慮もなく、『普通の人の基準に合わせなさい』となりがちです。障害特性として、言葉での説明が理解しづらく、自分の症状もうまく伝えられない。見通しが持ちにくいので我慢できずに待合室や診察室で騒いでしまう。感覚の過敏がある場合は治療にも配慮が必要です。治療前の準備にも診療報酬点数をつけるなど制度を整備すれば受け入れる医療機関も増えるのではないでしょうか」
(編集部・深澤友紀)
※AERA 2022年1月17日号より抜粋
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以前、新型コロナワクチンを障害者に接種する医療機関の報道で、患者を押さえつけた動画を報道側が削除したことについてコメントしました【神奈川・相模原市で障害者専用のワクチン接種会場:2021/09/28 】。治療しようとしても適切に対応できなかったとことだけが取り上げられて社会のバッシングを受けるかもしれないと考えると、積極的な治療を躊躇してしまう気持ちは理解できます。治療しないことを、医師個人の資質の問題とステレオタイプに決めつけるのも考えものです。
医師だけが、治療目的で身体を切り異物を与える権限があります。しかし、そこには効果のある治療をすることが前提なので治療をするかどうかは医師の判断によります。医師法19条で「診療に従事する医師は、診察治療の求めがあった場合には、正当な事由がなければこれを拒んではならない。」と、診察に応じなくてはならない応召義務が定められていますが、これには罰則はなく倫理規定だというのが定説です。
もちろん、先のワクチン接種時のように、当事者が嫌がっているのに押さえつけて注射をするのは現段階のオミクロン型の感染症状を見ていると過剰医療と言えます。しかし、半年前の世間の通説はワクチンを打てばデルタ型までは重症化せずに済むというものでした。医師が押さえつけてでも接種した際の心的外傷のリスクと重症化を防ぐベネフィット(効果)の比較では重症化を防ぐことが優先されたのだと思います。このようにわずか半年間でも、症状や世間の通説が変わってしまえば、リスクと効果の比率は変わってしまいます。
障害者の医療は通常よりコストがかかります。これは子どもや乳幼児、周産期医療にも言える事です。諏訪さんが言うように、コストがかかる医療を正当に評価して診療点数を決めればいいと思います。リスクはあるし人手もかかり診療点数も実態に見合わないとなれば、医師が敬遠しても無理もないと思います。社会の根本的な課題を明らかにせずに、誰かを悪者にして叩いていても社会は変わらないと思います。そして、リスクを取ってでも真剣に障害者医療に取組んでいる朴さんのような医師たちこそをもっとメディアに取り上げてほしいと思います。
スマホ・ゲーム利用と不登校
不登校・・・スマホ・ゲーム利用「条例、ルール化を」 大阪市の松井市長
小中学生がスマートフォンやオンラインゲームに依存するのを防ごうと、大阪市の松井一郎市長は15日、スマホの使用時間を条例でルール化することも視野に、実効性ある対策を検討するよう市教委に指示した。
松井氏は同日市役所で開かれた会議で、不登校の要因の一つがスマホやゲーム依存であるとの実態が紹介されたことを受け、「夜は何時までとか、条例でルール化したらどうか」との考えを示した。
市内では旭区が平成26(2014)年に、スマホやゲーム機を午後9時以降は使用しないなどのルールを決定。校長判断で各校で適用されているが、市教委として統一したルールは定めていない。松井氏は、使用制限に強制力を持たせたり罰則をつけたりすることは難しいとの認識を示した上で「理念的なものにはなるが、(大阪市として)ルールを作ったよというのが(不登校を減らすのに)大事なのかもしれない」と述べた。
スマホやオンラインゲームの使用制限をめぐっては、香川県が子供がインターネットやゲーム依存になるのを防ぐ全国初の条例制定を目指している。今月10日の検討委員会ではスマホやゲームは「平日は1日60分まで」などとする条例素案が示されたが、ネット上でも賛否が分かれるなど物議をかもしている。
2020.1.15産経新聞--------------------------
この記事は、松井市長の言ったことがすぐさま条例化されるように見出しに書いていますが、市長の言ったこととはかなり異なり産経新聞の勇み足に読めます。ただ、前回も掲載したように(1/13ゲーム障害)オンラインゲーム依存が深刻であることは事実です。ただ、不登校の一因がゲーム依存なのか、不登校になる子がゲーム依存になりやすいのかよくわかっていないのも事実であり、ゲームだけを悪者にしても解決はできないと言われます。
重要なことは家庭での対応であることは間違いがなく、この支援を公の子どもが守るべきルールだよと言うだけでなく、ペアトレなど実質的な子育て支援を強め、学校でゲーム障害や睡眠障害の健康教育に力を入れるべきことは、大阪市や香川県だけでなく国民的に差し迫った課題であることは間違いがありません。
人を励ます言葉
日テレ・森アナの箱根実況が話題2位の創価大へ向けた言葉にネット涙「胸に刺さりました」
2021年1月3日 14:51【スポニチ】
日本テレビが3日に放送した「第97回東京箱根間往復大学駅伝・復路」(前7・50)で、フィニッシュ地点の実況を担当した同局・森圭介アナウンサー(42)のコメントがネット上で話題になっている。
往路で優勝を飾っていた創価大は10区・小野寺勇樹(3年)が3分19秒のリードを持って栄光のゴールを目指したが、21キロ手前で駒大の石川拓慎(3年)にかわされた。創価大は9区までトップを守っていたが、ゴールが目前に迫った10区で駒大に抜かれ、初の総合優勝を惜しくも逃した。
終盤、小野寺は最後の力を振り絞って2位でフィニッシュ。小野寺の力走を見ながら森アナは「初めての往路優勝がありました。初めての総合優勝には届かなかった。目標は総合3位でした。目標達成とみれば、うれしい準優勝。ただ、悔しい準優勝となったか」と伝えた。
そして「“2位で悔しい”と思えるチームになった」。
最後は「創価大学、準優勝!この悔しさを来年につなげます!」と結んで、小野寺のゴールを称えた。
この実況にネット上では反響が続々。「綿密な取材と寄り添う心があって出てくる言葉だと思う」「胸に刺さりました」「日テレ森アナの実況の言葉がどの立場の選手にも寄り添ってくれるのがまた泣ける、、!」「森アナの一言で涙腺崩壊」「ゴール地点の森アナの実況だけで泣けた」「感動しました!」「素敵」などと相次いでいた。
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2冠の駒大・大八木監督、指導転換も変わらぬ選手愛
2021年1月3日20時18分【日刊スポーツ】
<第97回箱根駅伝>◇3日◇復路◇箱根-東京(5区間109・6キロ)
駒大の大八木弘明監督(62)が、チームを今季の大学駅伝2冠に導いた。
平成だけで21回も「大学3大駅伝」を制した名監督だが、08年の箱根を最後に勝てない時代が続き、09、18年には箱根のシード権を逃すなど、指導方針に悩んでいた。時代の流れに苦しみながら、選手との接し方を変えて、また新しい黄金時代を築こうとしている。
◇ ◇ ◇
時代の流れか-。昔のように、愛情を持ちながら、怒鳴っても、選手はついてこなくなった。大八木監督は「今は、昔のやり方ではやめてしまうから」と笑う。代名詞である「男だろ!」の喝で有名な闘将だが、コミュニケーションの取り方を変えてきた。
昔は「怒る」と「褒める」の割合が「8・2ぐらい。今は5・5ぐらいになったかな」。焼けた肌に鋭い視線と迫力の声だが、最近は表情が柔らかくなった。緊張感は保ちながら、過度に萎縮をしないように心掛ける。黄金時代を築いた頃は選手から声をかけるのを待っていたが、それも違う。自ら積極的に「何があった?」「いい練習だったな」「元気がないな?」などと声をかける。
年齢の壁にも立ち向かった。若い時は朝練習に自転車で毎日、選手の走りについていったが、低迷した時はできてなかった。これでは熱意が伝わらないのでは-。そう深く反省した。最近は朝練習では自転車で選手の伴走をする大八木監督の姿がある。
選手からは「第2の父」と慕われ、選手のことは「息子たち」と呼ぶ。監督業は「子どもを育てているようなもの」と話す。LINEもアカウントは持っているが、「文字だけで状況が分からないから、そういうの好きな方じゃない。電話とか直接会って話をしたい。声のトーンとか話し方で察するものもある」。時代の変化とともに変わる姿勢もあるが、“息子”に対する愛情はずっと変わらない。62歳。「個人で日の丸を付ける選手を育てる」ことも目標。指導の意欲は衰えていない。【上田悠太】
◆大八木弘明(おおやぎ・ひろあき)1958年(昭33)7月30日、福島県生まれ。会津工卒後、川崎市役所などを経て83年に24歳で駒大夜間部に入学。1年で5区区間賞、2年は2区5位、3年で2区区間賞を獲得。4年は年齢制限で出場できず。卒業後はヤクルトで活躍。95年に母校のコーチとなり、助監督を経て04年から監督に就任。主な教え子はマラソンの元日本記録保持者の藤田敦史、東京五輪代表の中村匠吾ら。
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今年も熱いレースでした。逆転劇は「男だろ!」声援名物の大八木監督の檄から始まりました。最近の選手に合わせて質問を待つことから声をかける監督に変わった。怒鳴らなくなった優しくなった。などとメディアは勝因を邪推しますが、朝練で自転車伴走を再開したことが「男だろ!」檄と結びつくのだと思います。檄を飛ばされたとき、監督と練習したあの日を選手は思い出し、勇気を振り絞って走るのだと思います。
森アナウンサーの実況に皆が共感を寄せたのは、それほどこのレースがすばらしい逆転レースだからです。しかし、実況では負けたチームも引き立てるワードが必要です。無冠のチームがコロナ禍で練習に練習を重ね、トップに躍り出たがゴール直前で力尽きたことを、「“2位で悔しい”と思えるチームになった」と表現したのです。森アナウンサーの言葉は誰の心にも強く届きました。
人を強く励ます言葉は、その言葉が過去を振り返るきっかけとなり、その過去の事実が重ければ重いほど、勇気と感動を与えてくれるのだと思います。