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みんなちがってみんないい

放課後デイサービスは「3密」

先ほど、政府が武漢ウイルスの感染拡大を受け、緊急事態宣言に踏み切る意向を固めたとニュースがありました。まさか、京都府が思い直して始業式を延期することはないでしょうが、もしやと心配しています。長い春休みと新入生の対応で放デイ関係者は疲弊しているからです。表向きだけ整えても、裏方がどうなっているのか、見えない部分に負担がかかっていることも考えた施策を望みます。

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休校延長で障害児・生徒の放課後デイサービス悲鳴 3密の空間の残業「限界に近い」
毎日新聞2020年4月5日 19時40分(最終更新 4月6日 11時40分)

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、感染が広がる地域で学校の再開時期が遅れることになったが、しわ寄せを受けるのが子供たちを預かる施設や事業所だ。中でも障害のある児童や生徒を預かる放課後等デイサービスでは、密閉・密集・密接の「3密」を避けられない空間で、目を離せない子供たちと長時間過ごさざるを得ない状況が続き、関係者から「限界に近い」と悲鳴が上がる。

「きょうは何をして遊ぼうか」。福岡市内にある障害児通所支援の放課後等デイサービス事業所を3日に訪れると、部屋の隅に置かれたテーブル席で、女性職員が手足にまひがある女子生徒(16)にぴったりと付き添い、話しかけていた。言語障害もある生徒は音の出る文字盤を指して「太鼓」と答えた。 奥の3畳ほどの畳スペースでは、児童3人が職員2人と輪になってブロック遊びをしていた。約40平方メートルの室内でこの日、一日を過ごしたのは市内の特別支援学校や特別支援学級に通う小学3年~高校3年までの6人とスタッフの計約15人。子供たちには知的障害や身体障害があり、職員が目を離した隙(すき)の事故を防ぐため、部屋は常に閉め切っている。職員はマスクを着用しているが、嫌がる子供たちは6人全員が着けていなかった。

前日、福岡市は市立学校の休校期間を17日まで延長し、週末を挟んで再開時期を20日以降に遅らせると発表していた。元々は放課後の夕方のみだった預かり時間が、朝から夕方までに拡大されて1カ月。その状態がさらに少なくとも2週間は続くことになった。 「職員の残業は増え、家に自分の子を置いて来ている職員もいる。使命感でやってもらっているが限界に近い」。休校延長が決まり、事業所の運営者の女性(54)は本音を漏らす。 この女性が運営するデイサービス事業所は市内に計3カ所あり、児童・生徒計53人に対し、職員は30人。休校が始まってからはパート職員に長く働いてもらうなどして何とかやりくりしている。職員のマスクも一時不足し、消毒液は買い置きがなくなってしまった。

一般に特別支援学校は1クラスの人数も少なく、子供たちに目が行き届きやすいように児童・生徒1人当たりの教員も多く配置されている。子供たちが走り回る運動場もある。女性は「感染拡大を防ぐための受け入れ態勢としても、学校の方がはるかに環境は整っているはず」と話し、休校中の特別支援学校でも子供たちを預かってほしいと訴える。全国的には休校に伴う措置として、学校で教室などを開放し教員らが障害を持つ子供たちを預かる例はあり、文部科学省によると、3月10日現在で回答のあった102自治体のうち80自治体の特別支援学校が実施していた。

福岡県内でも北九州市は、休校期間が始まった当初の3月初めに市内に8校ある特別支援学校で実施し、各校2、3人が利用。小西友康・特別支援教育課長は「急な休校で預け先の事業所が予約できないなどの家庭もあったため、学校を選択肢の一つにしてもらった」と話す。市は4月3日、福岡市同様に休校期間を17日まで延長すると決め、学校での預かりも続けることにした。 特別支援教育を専門とする香川大の坂井聡教授は「休校延長で影響が長期化している今、教育委員会と事業所が連携し、学校でも受け入れて預かる子供の数を分散させるなど、休校中の対応を見直すべきだ。事業所だけに負担を強いると、疲弊してしまう」と指摘する。【山口桂子】

学習障害抱える児童、タブレット支えに無事卒業

学習障害抱える児童、タブレット支えに無事卒業 ノート代わりに黒板撮影、テストでも利用OK

2021年3月31日 10:30【京都新聞】

文字の読み書きが苦手な「学習障害」がある京都府長岡京市の児童が、理解を支える道具としてタブレット端末を活用し、今春小学校を卒業した。テストでの利用も認められており、国の施策で全児童生徒へのタブレット配備が本格化する中、障害がある子への対応の広がりに期待がかかる。ただ、専門家は「渡すだけでは問題が解決せず、個性に応じた補正が大切」と支援の必要性を呼び掛けている。

長法寺小に通っていた山木旬(しゅん)君(12)は、学習障害の一種「発達性ディスレクシア」と診断されている。知的能力に遅れは見られないが、漢字を枠の中に文字を収めたり、読んだりすることが苦手で、読み書きに多くの時間を要し、理解する前の段階でつまずく。「なんで自分だけできひんねやろう」と悩みは尽きなかった。

母の弥生さん(44)は、文部科学省が定める「合理的配慮」としての対応を学校と協議。文字やスペースを大きくし、ルビを打ったプリントや、ペンで触れると音声が流れる教科書に加え、6年生になるとタブレットを持参して使うことが認められた。

授業中は、読み書きを別の方法に置き換えている。ノートを取る作業の代わりに黒板を撮影。アプリを使い、画像への書き込みや自動読み上げができるようにする。画面上では自由に拡大可能なため、記入しやすくなるだけでなく、1文字ずつが認識できる利点もある。「置いてかれている」と感じていた授業が、少しずつ分かるようになった。2学期からは、一部の教科ではタブレットでのテスト受験も認められ、評価対象となった。

澄んだ空が広がった今月19日。卒業式を終えた山木君は、同級生たちと笑顔で記念写真に収まった。「しんどいこともあったけれど、楽しい6年間だった」と穏やかな表情を浮かべ、将来への思いを口にした。「夢は学校の先生になること。僕みたいな障害がある人に優しく教えてくれる先生がいたので、僕もそうなりたい」

■能力・特性に応じて調整を
文部科学省が推進する「GIGAスクール構想」は、タブレットやパソコンを小中学生に1台ずつ配備する計画で、新年度から本格運用が始まる。障害がある児童生徒の情報通信技術(ICT)機器持ち込みは、自治体によって対応に差があり、活用へのハードルが軽減される可能性もある。

NPO法人「支援機器普及促進協会」(長岡京市)の高松崇さんは「視力が低い場合は眼鏡を掛けるように、学習障害がある子は、ほかの子と困り方が違うからタブレットを使うということ」と、必要性を説明する。

端末配備で、個人負担だけでなく、周囲の子や保護者が抱きがちな不公平感が、取り払われる利点があるという。その上で、「眼鏡も個人に合わせた調整が必要であるように、機器を渡せば理解できるのではなく、その子に合った補正が大切」と指摘する。機器の役割は本人の自立の支援だ。能力に応じたアプリの設定や、紙に文字を書くのと同程度の入力技術が、子ども自身で機器を使いこなす上で重要となる。

山木旬君は、ICT機器を通じた療育支援を行う放課後等デイサービス「ヴィキッズ」(向日市寺戸町)に通う。入力練習だけでなく、検索方法や、授業と日常生活に役立つアプリの使い方を学ぶ。帰宅後も、学校で撮った黒板画像で復習を繰り返し、活用技術の向上に努め、学習意欲にもつながっている。講師の岡田拓郎(たくお)さん(39)は「日進月歩の技術を使った新たなアプローチ。学習障害であることを気にせず生きていけるきっかけになれば」と見守る。


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学習障害の子どものために、デジタル教科書やICT支援にPCやタブレットの教室持ち込みを学校に提案すると「他の子どもとの公平性の問題がある」と担任から何度も断られた経験があります。眼鏡や補聴器と同じことではないかと食い下がっても、それは社会に認められているからだと取り付く島もありませんでした。社会を変えるには学校がパイオニアになることなのに、そんな気概も学校からは失われてしまったかと悲しくなりました。

福祉行政や相談事業所にも学習障害は学校や塾が対応することだと誤解している関係者がいます。学習障害は聞けばわかるが読めないとか、喋れるが書けないというもので、教科学習以前の問題ですから、当然医療や福祉も関わるわけです。眼鏡や補聴器をはじめ障害の支援機器は福祉が扱っています。視覚障害の子どもに白杖の指導をしたり点字の支援をするのは福祉か学校かと言い合うことはありません。それと同じように考えればいいのに、かたくなに福祉支援の対象ではないと言い張る担当者が未だにいるのです。

それが、このGIGAスクールでやっと学校では支援が実現しそうです。でも支援機器の使い方はその子の特性によって違います。今後も、ICT機器の使い方が他の子どもと違うと言って特別を認めない先生が現れないか若干心配もあります。しかし、こうした記事が掲載されることで、ICT支援は学習障害への当たり前の対応だという事が広まればいいと思います。新しい放デイ事業所じゃんぷでは、「発達性ディスレクシア」に特化した療育を専門的に実施しています。特性に応じた学校での対応と同じように、家庭でも特性に応じた自学自習が必要です。アセスメントを繰り返しながら、正確で持続的な支援が必要です。詳しくは075-874-5170(学びの広場じゃんぷ)までお電話ください。

発達障害の男子高校生が、カードゲームを続ける理由…普段は、他人とのコミュニケーションが苦手

発達障害の男子高校生が、カードゲームを続ける理由…普段は、他人とのコミュニケーションが苦手

 

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引用記事元が長いので割愛させていただきます。

記事ではコミュニケーションが苦手な高校生がカードゲームの中だと相手の気持ちを読もうとしたり相手の反応を見て自分の出すカードを考え、苦手なことでも好きなことの中でなら出来ることもある、と書かれていました。

じゃんぷの中や同法人のすてっぷの中でもボードゲームを用いて子ども達が遊ぶことがあります。同じようにその中で子どもたち同士でワイワイとゲームをしながらコミュニケーションを取ります。遊びの中でSST(ソーシャルスキルトレーニング)に取り組んでいる訳ですね。ブログの中でもいくつか紹介していると思います。

さて、筆者も恥ずかしながらこの年でカードゲームをしています。そこで出会う人たちの中には「コミュニケーションが苦手なんだろうな」と感じることもあります。常に自分のことばかり話す人、ずっと黙っている人(SNS上では多弁)、醬油の染みがついた部屋着のままでも気にしない人…等々

お世辞にも「カードゲームをしたらコミュニケーションが上手になる!」とは言えませんが、一つの方法として良いのでしょう。それで友達の輪が広がり、外に出るようになった、といった事例もあります。あまり大っぴらにするような趣味ではないですが、プラスの影響を与えることもあります。ただ最近はポケモンカードやワンピースカードの大流行で普段カードゲームをやらないような層が入ってきました。普通に歓迎をすればよいのでしょうが、プライドなのか何なのか、それを排除しようとする動きがなぜかあります。所謂「陽キャ」を自分たちのテリトリーに入れたくないのでしょうが…これではまだコミュニケーションが出来るようになる、とは言えないですね。

スヌーズレン

すてっぷでは空気清浄機を稼働しています。この清浄機の正面パネルはコバルトグリーンの水流が渦巻いている様子が見えるようになっています。この輝く水流をいつまでもいつまでも楽しむ子どもたちがいます。引き込まれてうっとりするようです。私も小さいとき水道の流れに見とれたり洗濯機の渦巻きをいつまでも見ていた記憶があります。心が穏やかかになるのです。これを最近ではスヌーズレン効果というそうです。

スヌーズレンとは、オランダ語で「クンクン匂いを嗅ぐ」、「うとうとする」という用語を組み合わせた造語で、外界を探索することや心地よくまどろむ状態を示すものです。もとは1970年代にオランダで重い知的障害がある人の余暇活動として始まりました。
この活動を行う空間スヌーズレンルームには、光・音・匂い・振動・触覚の素材等、感覚を優しく刺激するものが効果的に配置してあります。
利用者はこの空間で、自ら好きな感覚を楽しみ、誰からも指示されない特別な時間を過ごします。

アロマセラピー、タッチングケア、音楽療法等の温かな治療が注目され始めた1980年代、それらを一つにまとめようという動きの中でスヌーズレンはヨーロッパを中心に発展してきました。
昨今では、世界30カ国以上に広がり、その人にとって心地よい感覚刺激を通じたアプローチをすることで、思考・感情・行動を変化させていく治療的なものとしても用いられています。
スヌーズレンを構成する要素は、(1)利用者、(2)ケアする人、(3)環境の3つです。
現在ヨーロッパでスヌーズレンルームはこのような目的で使用されています。
●重い障害や病気がある人の余暇活動
●精神障害者・発達障害児へのプレイセラピー
●認知症の老人へのケア
●心理的に不安定な人の情緒安定のため
●自発性・コミュニケーション力を養う探索活動として
●子どもたちがゆったりしたペースで過ごせる時空間として

このような使用目的でコミュニティセンターや保育園にも広がっており、日本でも様々な場所での活用が期待できます。

府立学校も連休明けまで臨時休校

先ほど、府教委のホームページで府立学校の臨時休校の再開が発表されました。当事業所もさすがに体力の限界が来ていますので、連休明けまでは午後からの開所にしたいと考えています。

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広報資料
新型コロナウイルス感染症の拡大防止のための 府立学校に係る臨時休業について
令和2年4月7日 京都府教育委員会

4月3日(金)の府立学校の再開発表後、この週末にかけて新たな感染者が20 件確認され、そのうち感染経路が不明な事案が16件見られるとともに、首都圏の ほか、大阪府や兵庫県といった近隣府県に対し、緊急事態宣言が出される見込み であるなど、感染拡大の懸念が一層高まってきています。 そうした状況を踏まえ、府立学校の臨時休業について、京都府教育委員会にお いては、下記のとおり対応することといたしましたのでお知らせします。


1 府立学校の臨時休業 感染拡大の傾向が顕著な京都市・乙訓通学圏及び山城通学圏の府立学校並び に通勤・通学で京都市との往来が多い口丹通学圏の府立学校について、臨時休 業を実施する。
(1) 対象校 府立高等学校附属中学校(3校)、府立高等学校(本校35校・分校2校) 及び府立特別支援学校(本校8校・分校1校)
(2) 臨時休業の期間 令和2年4月13日(月)から5月6日(水)まで なお、終期については、今後の状況に応じて延長することがある。
(3) 臨時休業期間中の学校教育活動 〇 週に1~2日程度の登校日を設け、児童生徒の健康観察や学習状況の確 認等を行う。 〇 部活動は禁止とするが、登校日に教員の指導の下、運動不足やストレス 解消のための機会を設けることを可とする。
(4) 学習保障 〇 登校日に課題解説、新たな課題の配付、質問の受付等を行う。 〇 可能な範囲でメール等による指示を行う。
(5) 特別支援学校について 〇 上記の内容を基本としつつ、各校の状況に応じて対応する。 〇 自宅及び福祉サービス等で児童生徒の居場所が確保できない場合には、 特例的に学校で受け入れる。その際、スクールバスは「3密」に配慮しつ つ運行する。なお、給食については提供しない。

2 臨時休業対象校以外の学校
〇 府北部地域に所在する府立学校(附属中1校、高校15校・6分校、特別支 援3校・2分校)については、感染症対策を徹底した上で、学校教育活動を 実施する。部活動については条件を付した上で実施する。
〇 学校の所在地(市・町)で感染者が確認されている場合など、感染を危惧 されるご家庭の判断で欠席する場合は「欠席扱い」としない取扱いができる 場合がある。
〇 今後の地域の感染状況の変化や児童生徒、教職員が感染した場合等は、臨 時休業することがある。

3 府内市町(組合)立学校への対応 府教育委員会から市町(組合)教育委員会に対し、府立学校の対応も参考に 適切に対応するよう依頼する。

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京都・滋賀15市町、再び一斉休校 府立学校も検討
2020年4月6日 22:05

新型コロナウイルスの感染拡大を受け京都府、滋賀県内の15市町教育委員会は6日までに、同日以降順次再開する予定だった市町立の小中学校などについて、再び一斉休校することを決めた。感染者の急増や感染ルート不明者が増えていることを考慮した。京都府教委も府立学校の再休校について7日に判断する。

京都市教委は6日、市立小中高校、義務教育学校、総合支援学校、幼稚園を10日から5月6日まで再び一斉休校とすると発表。毎週登校日を設け、健康観察や学習状況の確認などを行う。宇治や亀岡、向日など山城、丹波、乙訓地域の11市町教委も6日以降順次、再休校とする。八幡、京田辺、井手の3市町を除き入学式や始業式は予定通り実施する。

滋賀県でも、感染者集団(クラスター)が発生した草津市は入学式と始業式を9日に行った後、10~19日を臨時休校にすると決めた。隣接する栗東市は8日に入学式と始業式をした後、9~19日を臨時休校とする。6日に感染者が確認された甲賀市は8~19日を臨時休校にする。8日の始業式は中止し、9日の入学式は行う。

京都府の西脇隆俊知事は6日、臨時の記者会見を開き、始業式から再開予定だった府立高と付属中、特別支援学校について、再休校の検討を府教委に要請したと明らかにした。府教委は7日に休校時期や期間、区域を判断する。
西脇知事は方針の変更について、感染ルート不明者の増加や政府が隣接の大阪府などを対象に緊急事態宣言の準備に入ったことを考慮したとし「児童生徒の健康を守るため」と強調。府北部と南部で感染状況に差があることなどから「地域ごとに異なる判断となる可能性も十分にあると思う」との見方を示した。再開を発表して間もない休校要請に「非常に迷惑を掛けた」と陳謝した。

京都、滋賀で6日までに再休校を決めた教委
▽京都市(10日~5月6日)
▽宇治市(小9日、中10日~5月6日)
▽亀岡市(8日~5月6日)
▽城陽市(小8日、中9日~10日)
▽向日市(小10日、中11日~5月6日)
▽長岡京市(小9日、中10日~5月6日)
▽八幡市(7~13日)
▽京田辺市(小6日、中7日~13日)
▽木津川市(小6日、中7日~10日)
▽大山崎町(10日~5月6日)
▽井手町(6~14日)
▽精華町(小8日、中9日~14日)
▽草津市(10~19日)
▽栗東市(9~19日)
▽甲賀市(8~19日)
※かっこ内は期間。小は小学校、中は中学校。京都新聞社調べ

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発達マイノリティーという考え方

発達障害は「障害」か 発達マイノリティーという考え方/下

西田佐保子・毎日新聞 医療プレミア編集部
2021年4月4日【毎日新聞】

「発達障害」は、先天的な脳の機能の偏りにより生じる障害の総称で、自閉症スペクトラム障害(ASD)、注意欠如多動性障害(ADHD)、特異的学習障害(LD/SLD)などが含まれます。重度のASDの作家・東田直樹さん(28)によるエッセー「自閉症の僕が跳びはねる理由」が原作のイギリスのドキュメンタリー映画「僕が跳びはねる理由」(2020年)の字幕を監修した、明治大学子どものこころクリニック院長で、東田さんとも交流のある山登敬之さん(63)は、発達障害ではなく、発達マイノリティーと呼ぶことを提唱しています。(前編「映画「僕が跳びはねる理由」で知る発達障害の誤解/上」)

発達障害は病気ではない
――山登さんは、精神的ストレスから生じるうつ病や統合失調症などの2次障害がなければ、特に発達障害に積極的な診断は必要ないとの考えをお持ちですが、その理由をお聞かせください。

◆発達障害は病気ではありません。「障害」とされているものは生物学的な特徴であり、個人差です。個人が困ることなく生活できていれば、診断の必要はないと思います。ただ、2次障害の他にも、日々の日常生活を送る上で支障があり、ご本人が悩み、周りも心配するケースなどがあります。その場合、医者がサポートできることがあれば、もちろんします。福祉のサービスを受けるために診断書が必要になるとか、そういうときも、ですね。

――いわゆる“大人の発達障害ブーム”で、その概念は広く知られるようになりました。

◆ASDであれADHDであれ、発達障害の人は、周囲の人と比べ自分にはできないことが多い、自分は周囲と違うなどと感じて、寂しい思いも悔しい思いも重ねてきています。「大人になって発達障害と診断をされて、自分の生きづらさに合点がいって、それから道が開けた」といった話ばかり注目されます。しかし、診断がついたからといって根本的な問題が解消されるわけではありません。発達障害に根本的な治療法はないのが現実ですし、必要なのは治療より支援です。マイノリティーはマイノリティーのまま生きていく。大変な思いをすることには変わりがないわけですよね。だからこそ、支援の重要性に目を向けるべきだと思います。

――ADHDの場合、薬物治療という選択肢もあります。また、不注意、多動性、衝動性などADHD特有の思考の“癖”と捉え、何らかの対策を取ることも可能ではないでしょうか。

◆確かにADHDの場合はできないことが具体的なので、工夫のしがいがあると思います。ASDの人たちのように、コミュニケーションの仕方がわからず人間関係を築けないという方に、助言をひとつするのも難しいじゃないですか。その点で言えば、ASDとADHDでは異なります。

――先ほども「マイノリティー」という言葉が出てきましたが、山登さんは「発達障害」の代わりに「発達マイノリティー」と呼ぶことを提唱されています。

◆「セクシュアルマイノリティー」から着想しました。後から知りましたが、僕よりも前に「発達的マイノリティー」と表現している精神科医の人もいますし、最近、発達障害の著作でベストセラーを出した本田秀夫さんは、発達障害は生きづらさを抱える少数派の「種族」であると言っています。
発達障害の人は、生まれつき皆と違うから「障害」と言われてしまいます。でも、発達の仕方は人それぞれ異なります。発達が平均的集団と異なる一群に名前をつけただけですから、社会的には「マイノリティー」と考えてもよいのではないでしょうか。

ASDの人たちの進路はどう決まる?
――日本の精神医療の現場では、米国精神医学会の作成する国際的診断基準「精神障害の診断と統計マニュアル(DSM)」をもとに診断する医師が多いといわれています。DSMの第4版(DSM-4)には「広汎(こうはん)性発達障害」というカテゴリーがあり、多くのケースで知的障害を伴う「自閉症」、知的障害は伴わない「アスペルガー症候群」、一部自閉症の特徴がある「特定不能の広汎性発達障害(PDD-NOS)」といった分類がありました。しかし、13年に改定されたDSM-5からは撤廃され、ASDという単一の診断名に統一されました。そのことにより診療の場で混乱が生じませんでしたか。

◆DSM-5でASDを診断するには、「複数の状況で社会的コミュニケーションおよび対人的相互反応における持続的な欠陥」と「行動、興味、または活動の限定された反復的な様式の存在」という二つの項目を満たす必要があります。「スペクトラム」は連続体を意味しますが、これは同じASDでも特徴の「濃淡」は異なるということです。特徴が濃い、つまり障害の重さ、生活の不自由度などは人それぞれで、精神医学的に障害として同じグループになっても、必要な支援は異なるのです。
ASDは人口の約2%を占めると言われていますが、軽度の方が最も多く、重度の方が最も少なくなっています。東田さんのような、会話も困難な、いわゆる古典的な「カナー型自閉症」の数は限られます。東田さん自身も、「僕みたいな自閉症とアスペルガーみたいな人たちを一緒にして語るのはどうか」と話していました。

――ASDの治療法は確立しておらず、療育が重要になります。ASDの人の多くはいつ診断され、どのように進路を決めていくのでしょうか。

◆日本は1歳半と3歳時の検診で、子どもの成育過程をチェックしていきます。3歳検診の時に言葉が出ないなど、同年代の子どもに期待されることができない場合、公的もしくは民間の療育のサービスを受けられます。そして、保育園や幼稚園で年長のとき、就学相談を受けます(ただし任意)。重度のASDの場合は、特別支援学校や特別支援学級に通い、軽度だと、通常学級に入って、週1回程度の特別支援教育を受けることになります。

――東田さんなど重度のASDで会話が困難ながらも知的レベルが高い人が、一般の人と同じ教育を受けることは難しいのでしょうか。

◆東田さんは小学校6年生から中学校卒業までは特別支援学校に通ったけれど、ちゃんと勉強したいということで、通信制高校に入学して卒業しています。ただ、重度のASDで会話ができず、知能検査で要求する問題に答えられないと、知的能力が低いと判断されてしまいますから通常の学校に通うのは難しい。「そのような検査が彼らに適切か」「その知能を正しく数値化できるのか」という問題もあり、教育現場の状況は変わっていません。

――卒業後は、どのような道を進むのでしょうか。

◆障害者雇用枠で企業に就職する人もいます。ただ、社内で働く人たちの理解や認識はさまざまです。最初は黙って受け入れているものの、知らず知らずのうちに排除する動きが出てきて、それにいたたまれなくて出勤できなくなってしまう人もいます。また、通常の就職が現状では困難な人は、就労継続支援A型や同B型といった施設に通所しながら働きます。ただ、そこでも適応できずに家に引きこもる人もいます。

――介護する保護者などが亡くなった場合、生活をどのように続けていくのですか?

重度のASDの方々は施設に入所、もしくはグループホームに入居するケースが多いですね。介護のサービスを受けながら、アパートから福祉施設に通所する人もいます。

日本はそれこそ高齢者の介護もそうですが、家族任せの面がまだまだあるので、介護する両親の体が動くうちは子どもの面倒をみようとする。ASDの人の自立を考えたら、もっと多くの選択肢があればよいと思います。

――海外でASDの人たちはどのように見られているのでしょうか。

14年に「シンプル・シモン」というアスペルガー症候群の青年を主人公にした映画が公開されました。あの中でシモン青年は「触らないで、アスペルガーです」と書いたバッジを胸につけているんですよ。感覚が過敏なので不意に触られるとビックリしてしまうというわけです。でも、「それだけこの種の障害が社会に認知されているんだな」と思って感心しました。日本では「アスペ」といったら、「コミュ障」と同様、一種の悪口ですから事情が全然違いますよね。

――ASDの方々が個性を伸ばし、満足度の高い生活を送るためには、私たちの手助けが必要だと、東田さんも語っています。具体的にどのようなサポートをすればいいのでしょうか。

◆例えば、足の悪い方が重い荷物を持って階段を1段ずつ上っていれば、僕らは何をすればいいかわかります。でも、電車の中で大きな声を出して、ぴょんぴょん跳びはねている人を見かけて「どうしたの?」とたずねる人は少ないでしょう。
ひょっとすると、その人は楽しんでいるだけかもしれない。でも、その人も、東田さんと同じ生きづらさや苦悩を抱えているかもしれません。そのような、伝わりにくい、伝えにくい、ギャップをどう乗り越えるか――。

先ほど、ASDの人たちの進学や就職などについてお話ししました。まずは、彼らの存在に関心を向けること、彼らがどのように生活しているかを知ることが第一歩かと思います。

やまと・ひろゆき 精神科医、医学博士。明治大学子どものこころクリニック院長。筑波大学大学院博士課程医学研究科修了。専門は児童青年期の精神保健。主な著書に「新版・子どもの精神科」(ちくま文庫)、「子どものミカタ」(日本評論社)、「東田くん、どう思う?」(東田直樹さんとの共著、角川文庫)ほか。

映画「僕が跳びはねる理由」
公式サイト https://movies.kadokawa.co.jp/bokutobi/

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映画「僕が跳びはねる理由」が京都でも上映されます。
アップリンク京都
https://kyoto.uplink.co.jp/map
tel. 075-600-7890 kyoto@uplink.co.jp
〒604-8172 京都府京都市中京区烏丸通姉小路下ル場之町586-2 新風館 地下1階
4/16(金)~ 公開 時間未定
4/17(土) 『僕が跳びはねる理由』特別ビデオ舞台挨拶開催 時間未定

かたずけられない


子どもが自分の部屋を片付けられなくて、部屋がいつも物で散乱していて困っておられる方は少なくありません。散らかっている部屋にいるのに平気でいるというのは、どうしても心配になりますし、部屋を片付けて生活してほしいと思うのは当たり前です。
部屋を散らかす子どもは片付けが苦手で、言われて部屋を片付けても、あっという間にまた散らかってしまうものです。
あまりにも汚い部屋で暮らしている子どもは、もしかして病気なのではないだろうかと不安に思われる方もおられると思います。
病気でなかったとしても、部屋を片付けられない子どもは、いつまでたっても片付けられないままなのだろうかと心配になり、どうすればよいのか悩んでいる方も少なくありません。
部屋を片付けられないという病気や障害は確かに存在します。
しかしきちんと観察して、ひとりひとりの子どもに合った対応をしていくことで、片付けられない子どもも、片付けられるような方法がみつかります。
また、病気や障害とまで言えなくても、片付けられない子供に寄り添って、片付けられるようになるまで親が教えたり手助けしたりすることで、多くの子どもは片付けられるようになるものです。

なぜ子供が片付けられないのか考えてみると以下の理由が考えられます。

★必要性を感じていない
片付けをしない子どもたちの中には、『部屋が散らかって汚くなっていても気にならない』という子どもがいます。
片付けられない子どもたちは、部屋がおもちゃやゴミ袋が散乱しているような状態でも気にならず、片付けをする必要を感じていません。親が『片付けて』とか『掃除をして』と言っても、家族みんなが気持ちよく暮らすという他者の視点がわからないので掃除や片付けをしなくても良いと考えています。
★片づけ方がわからない
または、ただ単に面倒くさくて掃除が大嫌いなので、片付けができないという子ども達もいます。片付けをしなくてはいけないと感じながらも、どうやって片付ければ良いのか分からないで、結局散らかった部屋のままでいる子どもたちもいます。片付け方が分からない子どもには、大人が丁寧に片付け方を教えることで、うまく片付けられるようになります。

★ストレスが原因になっているケース
子どものストレスが原因になっているケースも考えられます。子どもの生活の中の、学校生活、家庭環境、親子関係、夫婦関係、友人関係などの中で大きなストレスを感じている場合、心に抱える問題が大きくて、その子どもの中では片付けをしている場合ではない、片付けをする気も起きないような心理状態になっているケースです。ストレスによって片付けができない子どもの場合、やはり片付けよりもその子どものストレスの原因となっている問題を、解決していく必要があります。

★病気や発達障害などによるもの
『片付けられない症候群』と言われるADHDやADDという発達障害がありますが、この障害を持っている場合、その子どもは片付けがとても苦手です。ADHDである場合は、脳の機能的な障害に原因があり、『不注意』『多動性』『衝動性』と言う特徴を伴っています。
ADHDの特徴である、うっかりミスがとても多かったり、少しもじっとしていられない性格だったり、衝動性を抑えられないなどコントロールがしにくい性質を感じられる場合は、正しく診断をしてもらう必要があります。
発達障害と診断されたら、その障害に合った支援や薬の力で、片付けられないことも含め、生活の不自由さを和らげることができます。
片付けられない子どもの中には『ため込み症候群』といわれる強迫性障害のひとつ、ホーディングという障害を持っている場合もあります。『物を集めすぎて困る』とか『捨てられない』という特徴があります。ADHD、強迫性貯蔵症のほか、ASDのこだわり等柔軟性の欠如が原因の場合もあります。
そのほか、うつ病、セルフネグレクト、統合失調症、認知症。これらの病気は、ストレスが原因で引き起こされる病気です。

片付けられない子どもが片付けられるようになるには、大人の助けが必要です。言葉を教えるように、子どもに片付けを教えていきます。
一緒に片付けを始めることで、片付けに対する重要性に気が付く機会となります。
部屋での探し物が多かった子どもなら、一緒に分類したり、整理したりする作業を通して、部屋を片付けることは生活を快適にし、物の置き場所を把握することが、便利で心地よいことであるということが分かってくると思います。一緒に片付けをしていく中で、片付けられない理由や行動の癖が分ってくると思います。つい散らかしてしまう癖を解消するための対策を一緒に工夫することで、散らかさないためには『具体的にこんな工夫をしたい』という、対策の意図も理解してくれます。
例えば、ゴミ箱の置き場所ひとつとっても、ゴミを入れやすい場所へ移動するだけで、ゴミ箱へゴミを入れる行動がかなり増えると思います。脱いだ服を床へ置きっぱなしにされないように、サッとひっかけられるフックを壁に取り付けたり、かけやすいハンガーラックを用意したりすればよいかもしれません。帽子やかばんなども、簡単にかけられるようポールハンガーやハンガーラックがあると、簡単にひっかけるだけで片付けられる仕組みを作ることができます。

部屋が汚いと怒るのに、部屋をきれいにしても褒めないでいるという事も多いです。怒られて仕方なくする片付けと、片付けたら褒められるという片付けだと、片付けをした時の気分がよいものになるか悪いものになるか、ずいぶん違ってきます。『片付けを始めた時』『片付けをしている時』『片付けが終わった時』など、こまめにほめて、子どもの片付けへのやる気を引き出していきましょう。
逆に、もし片付けが上手くいかなくても、怒ったり嫌味を言わないことが重要です。ほめるという大人の行動は、片付けが嫌いな子どものやる気を引き出していきます。みんなの一員として、子どもに『お手伝い』として役割分担を与えましょう。お手伝いのご褒美としては、『褒めること』が最もよいのですが、なかなかお手伝いをしてくれない子どもには、お手伝いの分担をこなしたら、例えば何か好きなことをしてよいというご褒美などを与えると、お手伝いも続けられるようになります。
片付けられない子どもには、それぞれ違った理由や原因があります。
親が子どもを見守り、必要な時に必要な助けをタイミングよく差し出し、子どもに寄り添っていくことで、片付けられない子どもも少しずつ片付けられるようになります。
片付けは教えていかなければならないものであると意識して、ひとつひとつ褒めながら教えてあげるとうまくいきます。

 

絵カードセンター

絵カードセンターは、自閉症支援に特化した絵カードのサイトです。絵カードの作成とダウンロードができ、絵カードの作り方・使い方など関連情報も提供中。自閉症の子どもを持つご家庭や特別支援に関わる先生は、ぜひ絵カードセンターを活用してください。視覚支援、PECS(ペクス)の絵カード、TEACCH(ティーチ)構造化の絵カードにも使えます。

絵カードメーカー (楽々絵カード作り)

絵カードメーカーでは、自閉症の子どもに使う絵カードが簡単に作れてダウンロードできます。一日のスケジュール表やカレンダーでよく使うイラストが揃っています。スマホで撮った写真からでも絵カードが作成できます。文字入れも自由自在。絵カードのサイズは、3種類から選べます。

PECSの絵カードはiPadアプリのPECSⅣ+を購入するとバーチャル絵カード(アプリ上のみ使える絵カード)が実装されていますが、PECSⅣ+のPECSが使えない人や、実物ブックも使う場合には絵カードを作る必要があります。個人的な経験では1年目で300単語程度を使うようです。そんなときにパパっと作れたらなぁと思う事はしょっちゅうです。また、名詞はほとんど写真で済むのでまだ良いのですが、動詞や形容詞等汎用性の高い単語は絵カードとなり、できるだけ家庭や学校でもそろえたいのですがなかなか一致しません。市販のアプリでも帯に短し襷に長しのものも多いです。こんなWebが出てきたことはうれしい限りです。ぜひ使ってみます。

発達性協調運動障害児の手先の不器用さ改善

確率共鳴現象で発達性協調運動障害児の手先の不器用さ改善、畿央大学などが検証

2021年4月5日【大学ジャーナルオンライン】

畿央大学の信迫悟志准教授らは、武庫川女子大学、明治大学、慶應義塾大学と共同で、コンパクトな確率共鳴装置を手首に装着することで、発達性協調運動障害を有する児の手先の器用さが改善することを明らかにした。

発達性協調運動障害(DCD)は、麻痺はないが協調運動技能の獲得や遂行に著しい低下がみられる神経発達障害の一類型。学校生活・日常生活やスポーツ活動の様々な運動スキルに不器用さが現れ、自己肯定感・自尊心の低下や不安障害・抑うつの増加といった心理面への影響も懸念される。DCDの頻度は学童期小児の5~6%と非常に多く、その過半数が青年期・成人期にも協調運動困難が残存するとされる。

一方で、身体への微弱な機械的ランダムノイズ刺激による感覚・運動機能の改善は、古くから知られている。この改善は確率共鳴(SR)現象と呼ばれ、健常者に加え脳卒中後片麻痺患者・パーキンソン病患者・脳性麻痺児でも観察されている。しかし、DCDを有する児に対する介入報告は極めて少なく有効性は不明だった。

研究グループは、6~11歳のDCDを有する児30名(平均年齢9.3歳)にSR現象を用いた二重盲検介入研究を実施。児の両手首に装着された振動触覚デバイス(SRデバイス)による振動触覚ランダムノイズ刺激によってSRを提供し、手先の器用さテスト(微細運動機能テスト)を行った。その結果、SR装置によってSR現象を付与している際に、DCDを有する児の手先の器用さが有意に向上した。

ただし、SRによる改善効果はその直後のSRを提供しない際に持ち越されなかった。今後は、SRの提供時間の長さやSR装置装着中の運動の種類と「持ち越し効果」との関連についての研究が必要としている。

論文情報:【Frontiers in Neurology】Influence of stochastic resonance on manual dexterity in children with developmental coordination disorder: A double-blind interventional study

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発達性協調運動障害(DCD)の子どもは、「ミルクを飲むときにむせやすい」「寝返りがうまくできない」「ハイハイがぎこちない」など、乳児のうちからその兆候は現れてきます。保育所や幼稚園に通うような幼児期には、「階段の昇り降りが苦手」「はさみがうまく使えない」「着替えが遅い、難しい」など、さまざまな形で症状が現れます。

DCDの頻度は6~10%と高く、小学校の30人学級ならクラスに2、3人はいる計算になります。注意欠如・多動性障害(AD/HD)の約30~50%、限局性学習障害(LD)の子どもの約50%に見られ、自閉症スペクトラム障害(ASD)と併存することも多くあります。そして、この障害は大人になっても、50~70%と高い頻度で残存するとされています。

これまでも発達障害のある子どもに不器用さが見られることは認識されていましたが、そのような症例が単独にも存在し、発達障害の子どもたちを理解し、支援していく上で重要であることが、近年専門家により指摘されています。発達性協調運動障害(DCD)の子どもたちの「不器用さ」は、生活の場面でも、学習の場面でも、本人の心に大きな負担となります。不器用さは、専門家ですら脳の機能障害と理解している人は少ないために周囲からの支援は受けにくく、逆に、保護者や教師から間違った対応がなされて、事態が悪化するケースがあります。

例えば、「縄跳びが飛べない」「縦笛が吹けない」「字をマス目に収められない」、そのような子どもに対して、教師も保護者も「練習が足りない」「怠けている」「だらしない」「何度も繰り返せば、必ずできるようになる」として、反復練習を強いる指導をしがちです。本来は発達障害の一種であることを理解した上で、ていねいな説明と適切なサポートや合理的配慮を行うべきなのに、挫折感や屈辱感を与えるような訓練が繰り返され、結果として本人の自尊感情が大きく損なわれます。

どんなに運動が下手でも、体を動かすことが嫌いな子どもはいません。比較されることがなく、“ここでは下手でもいいのだ”とわかれば、子どもたちは安心して運動にチャレンジします。小さな目標であっても、それを達成した喜びは子どもを前向きな気持ちにさせます。その環境の一つが、DCDの子どもたちが比較的多い放デイと言えます。運動が苦手で学校では外野に追いやられ、ボールが回ってこないのでスポーツの楽しさを得ないまま高学年になる子どもが少なくありません。そうした子どもたちにとっての放デイでのスポーツは、外野の声を気にせず安心してスポーツが楽しめる条件があります。

そして、今回の研究成果は、手先の不器用さにアプローチするデバイスの開発でした。これはもともと内視鏡手術などで敏感な感覚を必要とする道具として開発が進められていた技術です。DCD支援のセオリーは粗大運動から微細運動にというもので、いきなり細かな手先の運動から入るのは禁忌なのですが、このデバイスがあれば器用さが増すというものです。残念ながらこのデバイスがないと効果は持続されないのでさらなる研究が待たれます。

学童保育のありかた

学童保育(乙訓では留守家庭児童会)は「地域で子育てする」制度で、「子どもは放課後に育つ」視点を持った地域事業とも言えます。嘱託職員や派遣労働の職員が人材となる中で、子どもが自ら通いたくなる学童保育にするためには、教育福祉家庭の連携以前に学童保育の運営方法を検討する必要があると言われています。
「子ども主体の学童保育」の理念を掲げ、地域の指導員会議や研修会をもち、理念をどう具体化するかに腐心する中で、親も子も次第に学童保育に好感を寄せ始め大型の学童保育所も好評を得ているという報告もあります。その中身は、保護者の多くが、「外遊びが多く」「手づくりおやつは美味しく」「子どもは楽しく通えている」、「子どもの気持ちを大切にしてくれる職員」が多く、「楽しい行事が増え」、「家庭との連携」も「トラブルへの対応」も適切にされていると評価しています。ステークホルダー(利用者)を大切にする方法を抜きにしてどんな組織も発展はありません。
良い学童保育は、①学童保育運営に責任を持つ法人等の正規職員の採用で学童保育実践の持続可能性を図ること、②正規職員を核にした責任ある運営体制を創出すること、③保育内容をお仕着せのものから子どもと共に作り出すものに転換すること、そのために、④職員間の連携を深めること だとしています。
学童保育を「子どもの生活」を守るための地域拠点として位置づけ、家庭と深く連携し、学校との連携も図る、「福祉と教育をクロスボーダー」できる位置に置くことによって、居心地のよい子どもの居場所を創出し、親子関係の修復、家庭や地域の再生にも寄与できるのではないかといわれています。そのためには、利用者=ステークホルダーの意見聴取や運営への参加は欠かせません。