すてっぷ・じゃんぷ日記

2023年2月の記事一覧

注目するポイントを見極めて!

昨日の記事(左手は添えるだけ 2023/ 02/15)の続きです。今回は具体的な事例を紹介します。

2週間ほど前、自立学習をしていたRさんが「教えてください。」と質問して来ました。内容は算数の引き算の筆算です。繰り下がりの必要な問題とそうでない問題がバラバラに混ざっているプリントでした。Rさんが質問してきたのは「28-14」という問題で、プリントには十の位の「2」に斜線を引き、一の位の「8」に10をつけていました。それまでは繰り下がりの必要な問題だったので同じ処理をしたのでしょう。一の位だけで「18-4」の式になってしまい、「???」と混乱したようです。「一の位を見てみ、繰り下がりじゃなくてそのまま引けるでしょ。」と伝えると、「なんだそういうことか~」と理解した様子で自立学習に戻っていきました。

その1週間後、Rさんが同じ内容の宿題が出ていたようでまた「教えてください。」と質問をしに来ました。内容は同じです。繰り下がりが必要ない問題で繰り下がりの処理をし、混乱した様子でした。前回と同じように「一の位を見てみ、そのまま引けるでしょ~」と伝え、「あ、そうだった~」と理解して戻っていきました。

Y先生と相談し、Rさんが同じ内容の宿題を持ってきた時には「一の位を見て引けるか引けないか、そこだけに注目をさせよう。」と決めました。「一の位」をキーワードとし、そこには大人が注目をさせる。Rさんが「引ける?引けない?」を考えるようにします。子どもが何に困っているのか、どんな支援をしたら自分で出来るのかを整理し、支援をしていくことが大事ですね。

左手は添えるだけ

「左手は添えるだけ」

SLAM DUNK(作・井上雄彦 集英社)という漫画の有名なセリフです。主人公のバスケ初心者である桜木花道がシュートの練習をする時に主将からもらったアドバイスが「左手は添えるだけ」です。バスケのシュートをする時にいろんなアドバイスをもらいますが、桜木にはこのシンプルなアドバイス一つだけを徹底して頭に入れさせ、練習に打ち込みました。

じゃんぷで子ども達に学習を教える時も同じです。子ども達にあれやこれやと教えても情報量が多くて処理しきれず混乱してしまいます。それよりも学習のポイントの要点を抑え、シンプルにした方が子ども達も頭に入りやすいです。

また、教える時の要点だけでなく、ホワイトボードを使うときも出来るだけシンプルにし、子ども達に抑えてほしいポイントに注目出来るよう配慮をしています。

子どもがわからない様子を見せた時、ついつい「この教え方だったらどうだ」「この方法なら」といろいろと手を出してしまいがちです。しかしその子がどのやり方が得意なのかを分析し、子どもが混乱する前に成功体験が積めるよう支援をしていくことが大事です。「シンプル・見える化」が重要ですね。

今度は友だちと

 「いっしょにあそべたよ」(2023/2/10)で紹介したように、Qさんは友達との集団遊びをする機会がなかなか作れませんでした。支援学校小学部のメンバーはこの冬はボールシュートにチャレンジ。「ボールシュート改」(2022/11/29)で紹介したトトロの口のゴールに向かって、ボールを投げてシュートする遊びに集団で取り組んできました。

 Qさんもタイミングを見つけて、この集団遊びに参加することはありました。友だちがボールを投げるのをニコニコと見ている様子はなんとなく感じられたのですが、いざQさんの番とボールを渡しても、ポイっと端に投げるばかりで、いっしょに遊べたとはなかなか言えませんでした。

 ところが、「いっしょにあそべたよ」の経験があってから、Qさんに変化が。職員と1対1でボール遊びをしていると、職員がボールを投げる様子を見て、身構えるように手を動かします。そしてボールを受け止めて投げ返すとき、職員を見て投げているようです。そこでボールシュートのゴールを出してみると、Qさんの投げたボールがゴールに向かって飛んでいきました。これには職員みんなが驚きました。休憩時間に友だちからの関わりで生まれた遊びがきっかけで、相手やゴールを意識し始めたように感じました。

 もちろん、まだチャレンジは2回ほど。毎回ゴールに向かって投げているというわけでもなく、まだまだ職員と遊ぶ中で、できているかどうか確認していく必要があります。それでも友だちと共有できる遊びに一歩踏み出したQさん。友だちとのボールシュートにチャレンジする機会をぜひ作ってみたいと思っています。

SNSってさぁ…

「Tiktokは悪いことばかりじゃありません! 投稿日時 : 02/06」でも少しSNSのことに触れました。最近のスシロー等のこともあり,特に18時以降にじゃんぷに来る子ども達とSNSのことについて話すことがあります。

基本的には「理解できないよね~」と話していますが,「なんでそういうことをするのかな」という話題になりました。「目立ちたいから」「いいね!をもらえるから」「かっこいいことやと思ってるから」…普段あまり喋らない子も含めていろんな意見を出してくれました。

これからSNSは更に発展していきます。じゃんぷに通っている子ども達もそれに全く触れない,ということは恐らくないでしょう。しかし暗黙のルールや決まり,目に見えない相手等,SNSにはここに通う子ども達が苦手としていることが多いです。実際現在のSNSにも特に必要ないのに他人を攻撃したり,自分を存在感を上げるために他人を貶めるような書き込みをする人はいます。そういった人たちが承認欲求のためなのか,精神的に未熟なのかどうかはわかりません。ただそれがイメージの低下に繋がったりすることは事実です。

子ども達と学習以外の場ですが社会的なことを話しが出来たことは大きな意味があったように思います。

「いっしょにあそべたよ」

 「いっしょにあそぼ!」(2023/2/7)で紹介した小学生のUくんは、1年生のときからすてっぷに通っています。設定遊びなどは小学生のお兄さんお姉さんたちといっしょに取り組むことが多かったのですが、支援学校の友だちとも一緒の場で過ごしてきました。Uくん曰く、「お兄さんお姉さんに教えてもらった」そうですが、当時のお兄さんお姉さんたちよりも自然に、どの友だちにも分け隔てなく関わっていたように思います。Uくんには感覚過敏があり、友だちの状況によっては嫌がることもありましたが、我慢するのではなく友だちだから伝えようとする姿も見られました。

 また、Uくんは友だちの素晴らしいところを見つけるのも得意。「いっしょにあそぼ!」(2023/2/7)のPさんのことも、「Pちゃんはおにごっことかだるまさんがころんだが分かってなかったけど、分かるようになって交代できるようになったんやで」とお母さんに報告したそうです。そしてお母さんからそういった報告を聞いた職員はほっこり、ということが何度もありました。

 先日、取り組みも一通り終わり、ゆっくりと休憩していたときのことです。支援学校小学部のQさんは言葉でのコミュニケーションは難しく、身振り手振りで「ください」「いらない」と伝えることを職員と練習中。また遊びを見つけることが難しく、友だちと関わる機会をなかなか作れませんでした。このときも座って一人で休憩していたQさん。職員は遊びに誘おうと「ボールする?」とQさんに声をかけていました。すると近くにいたUくんが、「Qさんはボールよりもクッションがいいやろ」と、丸い大きめのクッションを持ってきたのです。そしてそのまま、クッションをQさんに渡しました。初めはポトッと落とすだけだったQさんですが、それに対してUくんは「お~!」と反応し、またクッションを渡してきます。するとQさんはUくんをしっかりと見てクッションを両手で受け止め、すぐにUくんの方へ両手で押し返しました。それを見ていた小学生の友だちが「僕もやる!」と加わり、職員と合わせて4人でクッションパスの遊びの輪が。QさんはUくんや友だちが渡してくるクッションをしっかり見て、自分に来たらUくんだけでなく友だちの方にもクッションをはじき返します。パスを受け止めた小学生たちの「やったー!」という声で遊びが盛り上がり、Qさんも遊びの雰囲気を楽しみました。

 Uくんの友だちに対する理解のし方やかかわり方は、小学生の後輩たちにも良い影響を与えています。それは支援学校の友だちのことに限らず、小学生同士でトラブルが起きがちだった関係が、ここ数か月で随分と柔らかなかかわり方に変わってきました。今の小学生たちにとっては、Uくんが「教えてくれるお兄さん」になっています。