すてっぷ・じゃんぷ日記

2020年11月の記事一覧

就労支援

P君にASD(自閉スペクトラム症)の子どもたちに使っているジグ(作業を進めやすくする補助具)を使って自立課題に取り組んでもらいました。「できました」と言ってくれたので点検すると、不揃いな「完成物」が出来上がっていました。使った課題はボルトワッシャーナットをビニール袋に入れる20セットほどの組み立て包装です。

あっちの袋にはワッシャーが2枚入ったセットやら、こっちの袋はナットが入ってないセットやらでバラバラでした。完成品モデルは目の前に示していたし、何回かセット方法は教えはしたのですが、やっているうちになんとなくイメージで作ってしまった感じです。これはASDの子どもたちにはほとんどない間違い方ですが、短期記憶が弱く注意集中が持続しにくい人たちにはよくある間違い方です。

P君は人懐っこくて、指示に対しても「はい」と丁寧に答えてくれる高等部生です。簡単なものであっても作業が正確にできることは就労に結びつきつきます。これからP君に合いそうなジグやワークシステムを工夫して就労に結びつくように支援していきます。

他者理解と自己理解(その後)

一昨日、「他者理解と自己理解」投稿日時 : 11/17  について報告しました。毛嫌いしていたO君が自分の伴奏で楽しんでくれたことを知ったNさんは、O君にキーボードを譲ったり、「O君今何してますか」と友達を気にするようになったという話です。この話には続きがあります。

Nさんの作業課題が終わって、帰るまでに半時間ほど時間が余りました。「帰るまでの時間、キーボードを演奏したいです」とNさん。その時O君がNさんから譲ってもらったキーボードで遊んでいました。スタッフがNさんに「O君に一緒にお願いしよう」と提案しました。

なんということでしょう。Nさんが近づいてくるだけでO君は事情を呑み込んだかのようにキーボードをかたずけて渡そうとしていたのです。今までだったら猫の喧嘩みたいにお互いに威嚇していたのに「はいどうぞ」とばかりにO君は譲ってくれたのです。ギブアンドテイクがO君に理解でき、しかも自発的に譲ったところがすごいなぁとみんな感心しました。今日もO君は、視覚障害のNさんに「キーボードください」絵カードを渡し、カードをスタッフに読んでもらったNさんは「はいどうぞ」と優しくO君に譲っています。こうなってくると信頼関係とも言えるように思います。

課題設定

支援計画の事後評価の会議をしていると、時々、書いてある通りだけど書いてある課題を設定していないことがあります。これは、計画は立てるけれども日々のプログラムはそのまま続くのでスタッフのモチベーションが長く続かないと取り組めない内容があります。また、毎回課題としては書いているけれども達成できずに次回送りとされていつも評価は3段階評価の真ん中あたりでお茶を濁している評価もあります。

P君が自発的にスケジュールを見て行動できるようにというのもこの2年間同じでした。評価はいつも3段階評価の真ん中です。P君は来年の3月に卒業です。このままではきっと3月も「ほぼ達成できている」になりそうです。それなら、もう少し具体的に二つの内容なら自分でスケジュールを操作して行動できるにしてはどうかと提案しました。

いつも提示するスケジュールが多すぎるために、毎回スタッフがスケジュールを見るように促すことが定番になってしまっているのです。おやつの前の作業提示とかもっと簡単なスケジュール課題にしてはどうかと話し合いました。目標が高いか低いかは、当事者だけの問題ではなくスタッフのモチベーションの問題もあります。スタッフにもスモールステップでモチベーションが持続しやすい目標設定も大事だと思います。

 

 

他者理解と自己理解

Nさんがとても穏やかに友達と接することができるようになったという話をしました。Nさんは視覚障害があり、自分の周りに小さい子どもたちが寄ってくると不安なので「近寄らないで!」といつも厳しい声を出していました。結局それが面白くて、もっと子どもたちが寄ってきてNさんいじりが始まって、Nさんも大声で対抗するという毎日でした。

Nさんは、キーボード演奏がとても上手で以前から何度も、音楽遊びの時の伴奏をお願いしていたのですが、「嫌です」とけんもほろろに断られ続けていました。何の拍子か偶然Nさんが気まぐれに伴奏をしてくれることになり、その時に一番Nさんの邪魔をするO君も音楽遊びに参加していました。終わった後、NさんにO君らがとても楽しんで演奏していたことを少し丁寧に伝えました。

それからはNさんはO君にキーボードを譲ったり、「O君今何してますか」と友達を気にするようになりました。一緒に活動をし、他の人たちの様子を言葉で丁寧に伝えることで、Nさんの放デイの友達観が変わったようです。人が喜んでくれることに自分の値打ちを感じる、行ってみれば当たり前のことですが、この機会をどう演出するかが支援者の醍醐味です。

高学年の課題

生活型の放デイでは高学年の活動や内容づくりが難しいと何度か書いてきました。難しい理由は大人側の問題が大きいです。それは、発達障害があろうとなかろうと関係ありません。全国の学童保育所で高学年あそび問題も古くて新しい問題です。大人に依存的な低学年と、自立を模索し始める高学年とでは活動の質が変わってきます。

今日も高学年の子どもの暇つぶしに「ジグソーパズル」を課題として与えていいものかと議論になりました。好きに遊んでいいと言ってもパソコン以外は難しく、せめて静かにしてほしいのでパズルを与えるというスタッフ側。子どもにしてみれば、早くパソコンがしたいのでなんでもいいから手っ取り早い課題をするということで双方の利害が一致するのでこの「パズル問題」は見過ごされてきたのです。

しかし、これでは子ども自身も、放デイに何をしに来ているのかということになります。もちろん、ダイナミックな外遊びの提案だけでは毎日は運営できませんし、パズルでも内容やねらいによっては優れた課題になることもあります。生活型療育であっても、何のためにこの活動をしているのかスタッフが語れないような内容はNGだという話をしました。