すてっぷ・じゃんぷ日記

2020年10月の記事一覧

PECS Ⅳ+ アプリ 今なら安い!

iPadで操作できるPECSツール「PECS Ⅳ+ 」が10月は半額セールだそうです。10,400円が5,260円です。

Facebookより
拡大・代替コミュニケーション啓発の月に敬意を表して、10月中、PECSIV+ とIHear PECS:動物のアプリが割引価格でお求めできます。

Apple®のアプリストアからご覧ください。アプリの詳細については、www.pecs-japan.com/apps からチごらんください。

また、PECS®と聞いたことがあるけど、何だろう?気になる?と思っている方、10月19日夜8時から無料でPECSの概要を開催されます。
受付は www.pecs-japan.com にあるトレーニングスケジュールからお申し込み下さい。

PECSの概要 – ZOOM®, オンライン (2020年10月)
 開催地: Zoom®
開催日: 2020年10月19日 - 2020年10月19日
日程: 20:00 - 21:30
受付開始: 19:45

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PECS Ⅳ+ は PECS からハイテクのコミュニケーション機器へ移行する際の解決策です。フェイズ Ⅰ から Ⅳ までを従来の PECS のブックを使って習得した学習者にとって、PECS Ⅳ+ はハイテク機器を使った次のステップとなります。研究で実証されいる、世界で話題の PECS を創り出したピラミッド教育コンサルタントから出た PECS Ⅳ+ は、学習者が複数の絵カードを使って文をつくることを可能にします。述語ページを含む各ページには、PECS の絵カードを 24 枚まで置くことができます。そして、それぞれの絵カードの音声を再生するシステムがアプリに内蔵されています。


PECS Ⅳ+ の特色

• マジックテープがついているタグのあるページと文カードがある従来のカラーのPECSブックと似ているので学習者の使用しているPECSブックと同じようにPECSⅣ+のブックを設定できます。

• 従来のPECSのブックと同じ方法を使ってタグのついているページから文カードに絵カードをドラッグしておとします。

• ページ間をスクロールし、タブをタップすることでページが変更することができます。

• 絵カードの絵を削除することなく、文カード上の絵の順序を並びかえることができます。

• 絵カード上の絵を取り除くにはボタンを一回押すか、各絵をブックにスワイプして戻します。

• 1000個以上のPics for PECSの絵カードが入っています。

• PECSの指導方法に含まれている一定時間遅延プロンプトによって音声表出を遅らせる機能も組み込まれています。


各ブックのカスタマイズ

• 専用の述語ページを1回タップすることであけたり閉じたりできます。

• 1枚から20枚のタグのついているページを作ることができます。

• 各ページに24枚の絵カードをのせることができます。

• 各ページのマジックテープの数、色、カテゴリーのアイコン、そして絵カードの枚数を決めることで各ページをカスタマイズできます。


絵カードのカスタマイズ

• Pics for PECSにある絵を使うか写真ライブラリから写真を追加したりウ。

• 絵カードの文字を変更する。

• 文字を絵カードの上か下かにつけたり、絵カードから文字を取り除いたりできます。

• 絵カードのサイズを変更できます。

• Pics for PECSのライブラリの機能を検索する。


音声

• カスタマイズ可能な合成された音声(AV音声シンセサイザー)を使うか、自分の声を録音することができます。

• 生徒が発語する機会を作り出すために研究で実証されている一定期間遅延プロンプトを文章に組み込んでいます。


カスタマイズするために設定されたプロファイルを選択する、または新しいプロファイルを作成する

• 絵カードを動かす方法:タップ、ドラッグ、または両方

• 絵カードの絵を削除(リセット)する方法

• 述語ページの可視性

• 左から右、または右から左の文カードの読み

• 文カードを読むタイミング:各絵カードが選択される度か、文カード完成後」に音声表出のボタンを押した時


生徒の使用状況の痕跡

• 日毎の作られた文カードリスト

• 最も使用頻度の高い絵カードの週毎、月毎の分析


ピラミッド教育コンサルタントは機能的コミュニケーショントレーニングをアプリを使ってまたは音声表出コミュニケーション機器からはじめることはおすすめしません。なぜなら、ハイテク機器はコミュニケーションには不可欠なそしてPECSの根本理念である対人相互作用を必要としないからです。機能的コミュニケーショントレーニングは従来のPECSのブックを使って始める必要があります。研究では、ほとんどの学習者は3ヶ月から9ヶ月の間にローテクのPECSの指導方法でフェイズ1から4まで習得できるとされています。

 

西山歩き

V君は西山歩きではいつもだらだら歩きなのに今日はガンガン歩いていたというので理由を聞くと、目的地での飲み物がサイダーなんだそうです。なるほどV君はサイダーが大好きです。家に送っていく時もお母さんを見るなり「三ツ矢サイダー?キリンレモン?」と催促しています。

以前、欲しいものがあることはいいことだと書きましたが、好きな飲み物や食べ物があることもとてもいいことです。好きなもののために頑張って、「よく頑張ったね」と褒められることの心地よさは、自分にも相手にも良い感情を育てます。たかが、サイダー。されど、サイダーです。

ピンチはチャンス

パソコンを遠隔操作でオフにするソフトウェアーはないかとスタッフが聞くので理由を聞くと、小学生のU君らがパソコンのゲーム時間を何度言っても守らないので強制的に終了するソフトウェアーで解決したいとのことでした。

「あのね、ここはゲーセンじゃなくて療育施設なんだけどな」と呻いてしまいました。スタッフがPCを止めたい理由は、U君が時間通りに動いてくれないと他の子どもの送迎時間が遅れるからです。子どもに言っても言っても言うことを聞いてくれないのは、放デイでは当たり前のことです。皆が困るということが想像できない子や、約束を忘れてしまう子が通所してくるのが放デイだからです。

こうした事例に取り組んで成果を出すのが報酬をもらっているプロの証です。リモートでゲームを物理的に切ってもU君の問題は何も解決しないし、自尊感情も育ちません。まずは、理由を説明し契約をして契約を履行すればボーナス点として延長時間が次回以降に貯金として与えられ、履行しなければ次回はPCはないという約束をすればいいのです。トークンエコノミーに取組む良いチャンスを生かしてほしいと思います。

スケジュールの前に教えるべきこと

スケジュールの支援10/6 のところでも書きましたが、スケジュールの理解はPECSではフェーズ3bだと書きました。スケジュール理解は「義務と報酬」の関係の理解が基本とも説明しましたが、もう少しわかりやすい説明がいると言われていますので、書き加えたいと思います。

生活に沿わせようとして、親切心でスケジュールを導入しても、かえって混乱する子どもがいます。新入所・入学の時期、療育教室や支援学校や学級の教室の個別スケジュールエリアに貼るスケジュールカードは、最初は次の場所に移動する1枚から慎重に進めていく事が必要です。

スケジュールカードの手順は、貼ってある絵カードを「これからやることスペース」に貼り付けるか、やるべき事を忘れそうな子どもなら行くべき場所(机等)に移動して貼り付け、終わればそのカードを剥がして持って戻り「おしまいボックス」に片付けます。(「スケジュールボードに戻る」というトランジションカードは「戻りなさい」と言う言葉の代わりのキューに過ぎず、フェイディング方法がなく、子どもにも支援者にもスケジュールの意味(自立性)を形骸化させ、結果的にプロンプト依存を強化しているように思います。)

もちろん初めてスケジュールを見る子どもの中には、一目スケジュールを見れば一日の流れを理解する子もいます。しかし、ASDの子どもは対人相互性の理解やコミュニケーションに課題を持っているので、このスケジュールの意味に大人との契約だという事は理解できていないのです。こうした子どもは、嫌なスケジュールを落としたり、投げたりします。

これは、スタッフに「嫌」を訴えたいからではありません。カードが無くなればやらなくていいと理解するからで、要求や交渉のコミュニケーションの存在を知らないからです。つまり、スケジュールを不適切に扱う子は、表出のコミュニケーションレベルがとても低いと考えるべきで、まずはそのレベルに合わせて取り組む必要があるのです。

絵カードの不適切な扱いの後でスケジュールボード上で交渉をする人もいますが、子どもによっては不適切に絵カードを扱えば嫌いなカードがなくなった・後回しになったという学習にならないかどうかの注意が必要です。

世間では、構造化支援=スケジュール提示と思われがちですが、その子の表出コミュニケーションレベルに合った、契約・交渉のトレーニングが必要です。それがスケジュール2枚提示の場合もあれば、1枚絵カード指示のこともあるし、それと並行して表出のコミュニケーショントレーニングに取り組まれなければ、大人と子どもの関係はちぐはぐなままとなります。

ビギナー支援者は支援グッズの意味を考えずに先輩の支援の真似をしがちですが、スケジュールよりも先に教えるべき表出のコミュニケーションの課題がないか、良く考えてから支援する事が重要です。

好きなものがあることはいいこと

先日の懇談会で、T君が習い事を嫌がるので困ったという相談を受けました。T君の欲しいものがあるか聞くとゲームが欲しいとのことでした。それではゲーム機やゲームソフトをご褒美にして習い事に通わせてはどうかとお話ししました。

すると、ゲームを与えてしまうとやめなくなってかえって家の中の親子の争いごとが増えそうで気が進まないとのことでした。ゲーム時間親子摩擦事象は、大抵の家庭で日常茶飯に生じている問題ですから、世界中で沢山の解決アイデア事例が蓄積されています。また、ゲームをするためにお手伝いをしたり、勉強をしたり親が仕向けることが、物を与えないと行動しない即物的で自制の効かない人になってしまわないか心配だという保護者の気持ちもよくわかります。でも、「ご褒美子育て」を貫いたから、即物的で自制の効かない人になったという例は見た事がないです。

むしろ、幼少期に必要以上の我慢を強いられたり、親の気分で一貫性のない物の与え方をされて、大きくなってから自制が効かず、いろいろ問題を抱えている人の方が目につきます。欲しいものを与えることは悪いことではありません。約束を守れば報いはあるということを小さな時期からしっかり教えることが人への信頼感や自尊心を育てると思います。特に相手の気持ちを推し量ることが苦手な子どもたちには、目に見えるものが大事なように思います。思いやる気持ちは褒められた経験から育ちます。

私たちが困ってしまうのは、好きなものが見つからない、やりたいことが見つからない人です。元気な人をコントロールすることは容易ですが、欲しいものやりたい事が見つからない人の行動変容はとても難しいです。ゲームにしろガンプラ(「機動戦士ガンダム」のシリーズに登場するモビルスーツ、モビルアーマーと呼ばれるロボットや戦艦などを立体化したプラモデルのこと)にせよ、子どもに欲しいものが沢山あることは、子育て上、とてもラッキーなことだと考えると、色々なアイデアが湧いてくると思います。