すてっぷ・じゃんぷ日記

2020年1月の記事一覧

仲直り

終わりの会がなかなか始まらずGくんがいらいらして、隣に座っているHさんをたたいてしまいました。叩くことの機能分析は、ここから手っ取り早く離れるためには、周囲の人を叩けば「おいおいお隣さん何もしてないでしょ」ということでG君がその場から離され、G君の要求は実現します。

言葉のないG君から叩かれたHさんは意味が分からないから恐怖です。「怖かった」と告げるHさんを「怖かったなぁ」とスタッフは慰めるしかありません。それでもいろいろG君と取り組んでいるうちに思ったほど怖くないことに普通は気づいていくものですが、場面理解が苦手で誤解して決めつけてしまう傾向の強い子どもの場合は一緒にいることが苦痛になるので関係改善が難しくなります。

考えられる解決策は感覚の快状況を自然に共有する空間の提供です。例えば並んでブランコする等が一番いいように思います。動的(働きかけて得られる)快を共有することで関係を改善する方法は結構大きくなっても通用する手段です。ただし、G君の機能的コミュニケーション訓練も日常的に取り組むことが求められています。

負けと癇癪

C君は、ボーガンシュートゲームで得点が最下位になって、ショックで床にひっくり返って泣き叫んで癇癪を起しました。発達に関係なくASDの子どもの中には勝ちにこだわって1番じゃないと嫌、負ける可能性があるから勝ち負けのあるゲームやらないという子が少なくありません。勝ちが優れていて、負けが劣っているというデジタルな価値観でプロセスは関係ありません。自分の感情だけに翻弄されて相手がどう感じているかも無頓着です。周囲が嫌がっているのに大声でつまらない議論の勝ち負けにこだわる人の幼少期も、きっと勝々価値観に支配された子どもだったのかもしれません。

勝ったり負けたり、人によって勝てるものと負けるもの、いろいろあるんだという多様性を学ぶためには、小さい時期から「負けるが勝ちゲーム」をお勧めします。偶然性のあるカードゲームやくじ引きじゃんけんなどがいいでしょう。負けた人から1番。勝った人は最後の順位です。「負けた人いちばーん」とみんなでたたえます。つまり、勝ち負けの基準を変えてしまうのです。こうして負けるが勝ちを経験すると意外に負けに平気になってきます。というか、その程度の価値観しかないのに生死の境目みたいに苦しんでいたという事です。幼少期から「負けるが勝ちゲーム」に色々バリエーションをつけて取り組んでみることをお勧めします。

代替行動分化強化 2

不適切な行動の対応については、何度か書いてきました。子どもが不適切な行動をしたとき、もっとも重要なことは、その行動は罰があるということを教えるより、他の方法で利得が得られることを教えることです。

言葉の分かりにくいA君が、B君の大声がうるさいので叩いた時、スタッフがとるべき行動は、叩かなくても大声を止められる方法をA君に教えることです。でも、もっとも良くみられる指導は「B君にごめんなさいは?」です。音声模倣ができる人なら「ゴメンナサイ」と言うかしれません。でも「ゴメンナサイ」の意味は通じていません。なぜなら、叩けばB君が黙るからです。つまりA君の叩く行動は要求を実現しているからです。学習したことは、叩いた後大人が指示したら「ゴメンナサイ」を言うことです。

発達障害のある人の問題行動に関しては、『機能的コミュニケーション訓練』という代替行動分化強化(DRA=Differential Reinforcement of Alternative behavior)の手続きが有効です。これは、問題行動と同じ機能(目的)を持つ社会的に適切な行動(カードコミュニケーション)を分化強化するという手続きです。(声がうるさいから)助けて」カードを大人に示せば、スタッフがB君を遠ざけてくれるようになれば良いわけです。もちろん、突然の行動ですから少々の代替行動の訓練で、完璧な学習は困難かもしれません。行動問題を予測して予防することも大事です。でも事が起こったら、お詫びの音声模倣をさせるよりは、即座に「助けて」「やめて」カードをスタッフに渡す行動を教えた方が、不適切行動を減らせる可能性があります。

子どもの考え方

ボウガンのおもちゃで的当てをして遊んでいます。空き缶にあてて倒すのですが、空き缶の中に重りを入れておいて倒れにくいものを倒すと高得点が得られます。認知レベルが9歳を超えると、倒れやすい力点は支点(接地点)から最も離れた場所だという事に気が付きます。見えないものを見る力(理屈)です。それより前の段階だと経験数に裏打ちされていきます。てっぺんに当てたら倒れることが多いと学んでいきます。当て方にも子どもたちの考え方が反映されていて面白いものです。

代替行動の分化強化

食事介助の必要なG君はこのごろやたらお腹が減ってくるらしく、ご飯がたりないと、机を蹴って要求します。これに対しスタッフが、「おなか減ってるねーおかわりするねー」と対応するのはアウトです。机を蹴ったら、おかわりが出て来るという行動が強化されるからです。机を蹴ったなら、おかわりカードか「欲しい」カードを持たせて後方から手を介助して介助者に渡させます。その行動ができたら「はいどうぞ」と少量提供して、もう一度カードを手元に置いて要求行動を促して同じ行動ができるように何回も行います。行動を起こして意味を伝えてくる方ですから、行動は必ず代替することが可能です。この方法は色々応用できます。