すてっぷ・じゃんぷ日記

2022年6月の記事一覧

約分が難しい…

じゃんぷに通うD君が約分に苦戦をしています。そもそも,約分を苦手としている子どもは多いですが,それはなぜでしょう?

約分とは分母と分子を同じ数で割っていくのですが,この『割れる数で割る』というのが少々曖昧で難しく感じているようです。特に計算が苦手であったりこだわりのある子どもにとっては余計にそう感じるようです。

最初はD君が公倍数,公約数を理解していないのか,と思いましたがそういうわけでもありません。それはきっちり理解していました。D君が「一気に終わらせたい。」という気持ちがあるようです。

「分数×分数」「分数÷分数」の宿題やプリントの答えを見ると「16/28」で終わっていたり,傍から見たら「まだ割れるやん!」と思ってしまいますが,D君にとってはそこで力を使い果たしてしまっているようです。

しかしそれで終わりにし,テストで×を貰ってしまうとそれはそれでD君の自己評価が下がってしまいます。

6年生の問題は問題数が多く,書くスペースも少ないです。約分の基礎である「小さい数字で割っていこう」ということを改めて教えつつ,少ない問題数でフリースペースが広い課題を準備し,定着するよう支援をしていこうと考えています。

 

「なんで、歩かなあかんの?」

 子どもの頃の思い出を尋ねられると、旅行やお出かけしたことをあげる人は少なくありません。それだけ刺激的で、やりがいのあることなのでしょう。多くの人は余暇に外出することを選びます。しかし一口に外出と言っても、必要なスキルは多岐にわたります。公共交通機関を使うこと、買い物をすること、安全に気を付けて歩くこと。これらのことを身に着けて、外出できるようになっていきます。

 盲学校高等部のAさんは、白杖を使って外を歩きます。これまでもすてっぷで、職員が安全確保しながら、近所を歩く練習をしてきました。ですがAさん自身は、「なんで、歩かなあかんの?」と、逃げ腰でした。職員は「卒業後に向けて、外を歩けるようになっていた方がいいからだよ」と理由を伝えます。が、Aさんは、「大丈夫です。卒業したら作業所が送迎してくれるから一人で歩かなくても大丈夫です」と、あっさり答えました。聞くと、ヘルパーさんとの外出の経験も少ないとのことです。

 卒業後の余暇の過ごし方がイメージできていないのでは、と思った職員は、事前にお母さんと個別支援計画で打ち合わせしてから、もう一度Aさんと話しました。ヘルパーさんと外出したら買い物したり、外食したりできることの話題になると、Aさんは「行きたい!それなら練習します」と乗り気です。それなら白杖を使って歩く練習をした方がいいね、でもせっかくだから、ヘルパーさんと行くような場所に行ってみようか、と話がまとまりました。さっそく、1か月後に近所のファミリーレストランで食事をすることに。それまではすてっぷに来たら、そのファミリーレストランまで白杖を使って歩く練習をすることになりました。

 この頃は、まだ梅雨入り前後で、天気が安定しなかった時期です。Aさんはすてっぷに到着すると、「今日は雨降ってないよ!」と報告してくれたり、「今日はこれから雨降りますか?」と確認したりと、外歩きのトレーニングにとても前向きになりました。さて、直近の目標のファミリーレストランへの外出はどうなるでしょうか。また近いうちに報告します。

フォニックス読み

じゃんぷに通う子ども達の中には英語の学習に取り組んでいる子どももいます。学習指導要領の改訂により,小学校では外国語活動が英語になり,教科として指導することになりました。

元々小学3年生の国語でローマ字を練習する小単元はあるのですが,それでも読み書きをするとなるとそれが苦手な子どもにとっては苦手感が出てくるかもしれません。

今回は「読み」という観点に絞って一つ紹介をします。

みなさんはフォニックス読みというものをご存じですか?アルファベットを覚える時,A(a)を「エー」B(b)を「ビー」と読むように教えます。ただ,アルファベットはA(a)を「ア」B(b)「ブ」のように読むいわゆる「音読み」があります。このようなアルファベットの音読みのルールを「フォニックス」といいます。

これを単語を教える時にも使います。「dog」はアルファベット読みだと「ディーオージー」と読みます。ただ,単語として読む時はそう読みません。日本語の「ド」に似ている「d」と「オ」と「ア」に似ている「o」と「グ」に似ている「g」をくっつけて「ドァグ」のように読みます。

英語のアルファベットの音とそれが繋がった時にどのように読むのかを教えるのが「フォニックス」です。

じゃんぷでは一部の子どもに英語の音読みのパターンを教えています。少しずつ英単語が読めるようになってきた子どももいます。このように英語の読みを指導しても良いかもしれません。

犯人は誰?(「犯人は踊る」)

 すてっぷで取り組んでいるボードゲームの1つに、「犯人は踊る」というゲームがあります。様々な効果とそれを現すイラストが書かれたカードを、ババ抜きのように一人ずつ自分だけが見えるように持って、順番に1枚ずつ出していきます。1枚だけある犯人カードを持っている人を当てられれば勝ちですが、犯人カードを持っている人も最後まで当てられなければ勝ちになります。この犯人カードが、他のカードの効果で、ババ抜きのようにランダムでぐるぐるまわったり、交換されて行ったり来たりしているので、毎回展開が変わります。その中で、犯人を当てられるのかという楽しさのあるゲームです。

 先日も、Eくん、Fくんと職員との3人で、この「犯人は踊る」で遊びました。(3人以上でできるというのも、このゲームのよいところです)。最初に、必ず入れるカードと、ランダムで入るカードを揃えます。それをまた混ぜて、3人で配ります。少しややこしい準備ですが、ルールブックに書いてあるので、EくんとFくんはそれを読んで、自分たちで準備します。準備ができると、さぁ開始。第一発見者のカードを持っている人から順番が始まります。このとき、どんな事件が起こるか言ってスタートするのですが、これが十人十色。冗談のように大げさに大きな事件を言ったり、身近で起こりそうな小さいことを言ったり、それが事件?というような日常的なことを言ったりします。要するに適当に言えばよいフレーバーなのですが、中にはそれが言えない子もいます。それがよい訓練となる場合もありますし、事前に職員から「言ってもいいし言わなくていいです」とフォローすることもあります。

 さてゲームがスタートすると、犯人捜し。ですが、それぞれの持つカードはめまぐるしく変わっていきます。Eくんは、手札を見れるカードを使って、Fくんの手札を見ます。次にFくんは交換カードを使って、自分が持っていた犯人カードをこっそり職員に渡しました。職員は何の効果もないカードを出して、順番を回します。すると次のEくんはずばっと探偵カードを出して、「あなたが犯人ですね」と職員を指しました。見事、推理的中! 職員はEくんに「どうしてわかったの?」と尋ねました。するとEくんは、「だって、もともとFくんが持ってたの見てたから」と答えました。つまり、それを交換して職員の手に渡ったのだろうと考えたのです。職員はすかさず「すごいね!」と、Fくんの考えを読もうとがんばったことを褒めました。

 他人の考えを読むということは、なかなか簡単なことではありません。すてっぷの多くの子が、まだまだ練習中です。実際に今回のケースでも、E君はF君の考えを読めたとは限りません。自分ならこうするだろうと置き換えて考えたのかもしれません。ですが、少なくともEくんはFくんの考えを読もうとがんばった結果、犯人を当てられました。この「犯人は踊る」で遊ぶ中で、自然と他人の考えを読もうとがんばる姿がいっぱい見られるので、どんどん褒めていきたいと思います。

「わり算の筆算」は手順が多い!

わり算の筆算に対して「苦手だ!」と感じる子どもは多いです。

わり算の筆算は手順が複雑です。

①たてる

②かける

③ひく

④おろす

という4つの手順が必要となります。数をこなすだけでは解決することが難しいです。できるまで繰り返書いて覚えるだけでなく,体を動かすことで手順を覚えていく方法があります。

①たてる②かける③ひく④おろすという手順をラジオ体操のように大きな動作で覚えていきます。①たてるのときは大きく上に手を上げ、②かけるのときは腕でXを作ります。③ひくのときはひき算のマイナスを表すように腕を横に伸ばし、④おろすときは下に向けておろします。
動作の際には必ずそれぞれの動きの言葉を「たてる!かける! ひく! おろす!」というように唱えます。

手順が複雑になればなるほど学習が苦手な子どもは問題を解くまでの途中でパワーを使ってしまい,疲弊ばかりしてきます。上記のように机上の学習だけでなく,少し体も動かしながら取り組んでみてもよいかもしれません。

(参考・引用 「子どものつまづきからわかる算数の教え方」 監修:平岩幹男 著:澳塩渚(合同出版) 「小学4年生までのつまずき総ざらえ算数レスキュー隊」(岩崎書店)