すてっぷ・じゃんぷ日記

2021年7月の記事一覧

自立課題は進化させるもの

N君の机の上に山のように自立課題の課題ケースが積まれていたので、これはどんな目的で積まれているのか職員会議で聞いてみました。いつもやっているもので一人でできるから置いてあるとのことでした。そこで、この先このN君の自立課題はどんなプランがあるのか聞くと、みんな「?」と言う反応でした。

個別課題と自立課題の違いについてよく質問を受けますが、個別課題とは、個人の能力に合わせ大人が教えたり一人で復習する課題を指します。自立課題も個別課題の一種ですが、狙いは作業が一人でできるように、一人で自立的に始めて終了できる、文字通り「自立」のための課題です。つまり、自立課題は課題の内容も変えていくし、作業の進め方も単に課題ケースを積んでおくのではなく指示書に従ったり、自分で準備をしたりして変えていくものです。

もちろん、繰り返し同じ課題をすることで速度が上がったり、正確性が向上したりすることは結果としてはありますが、速度や正確性を目的にしているのが自立課題ではありません。速度が遅いなら、それは量が多すぎたのですし、正確でないなら課題のジグ(自立的に作業ができる仕組み)の工夫が足りなかったと考えます。つまり課題を出した大人の側の問題だと考えます。課題を出す大人はN君ならどの程度の作業量をどの程度の時間で仕上げるのか、休憩を入れたほうがいいか、新しい自立課題をいつ入れるのか考えておく必要があります。

一人でできる課題がたくさんあるからたくさん積んでおくと言うのはあまり意味がありません。もちろんASDの人は繰り返しが好きですから、できるものを繰り返すのはそう苦痛でない場合が多いです。ただ、彼らも飽きたり疲れたりします。そんな様子も観察して、どれくらいの休息をしたらいいのか、何回のインターバルが良いのかも考え、変化をつけ進化をさせていくのが自立課題を提示する大人の役割です。N君には仕事が好きで元気に働く大人になってほしいというのが私たちの自立課題の最終目的です。

 

言葉と機能的コミュニケーション

Mちゃんが大声で「いやだー」と叫んでいたので理由を職員から聞くと、昨日プールに入ったのが嬉しくて、今日は朝から入ろうと思い込んできたら、朝からプールはないのでつもりが崩れて大声で叫んでいたというのです。Mちゃんの大声は要求のサインなのですが、別に誰かに向かって言っているわけではないのです。大声で叫んでみたらたまたま実現したことがあったのだと思います。Mちゃんは喋るのですが、それが機能的コミュニケーションに結びついていません。

Mちゃんは冷蔵庫に向かって「ジュース」と叫んでみたり、天井に向かって「タブレットー」と叫ぶことが多く特定の人に要求することがありません。気づいた大人は、それに応えて要求を叶えるのですが、特定の大人が要求を叶えていると理解していないので大声で誰かが反応するのを待っている感じなのです。コミュニケーションは伝える人を特定することから始まります。言葉は喋れても機能的に使う事ができないのでMちゃんはとても苦労をしています。

言葉が喋れても、機能的に使う事が難しい人には絵カード要求が効果的です。渡す人を特定するからです。そして渡された人は要求を叶えるだけでなく、交渉もしてきます。「~してから~しよう」「今日はできないけど明日やろう」等の交渉を同じように絵カードで伝える事ができます。一方的な大声を出さなくてもお互いが共有できる視覚情報を使って社会ルールを教えていくことができるのです。PECSは言葉のない人だけでなく言葉はあるけどうまく使えない人にも社会ルールを教えていく第一歩になるのです。何より穏やかに伝えられるのでお互いにとって有益です。この夏はMちゃんの大好きなビニールプール遊びを使っていろんな交渉ができそうです。

 

川遊び

小学生は毎日川遊びに出かけています。近くでは小泉川、遠くでは水無瀬川まで出かけます。水無瀬川の方は少し遊泳ができるのでわかったのですが、ほとんどの子どもが浮くことができず泳げないのです。仕方がないのでフローティングジャケットを装着させて浮遊感(水面に浮かぶ)の楽しさを体験させることにしました。今後は、ゴーグルで顔つけに慣れさせ、そのまま頭をつけて流されていく楽しさを経験させます。その後ジャケットを外して伏し浮きから吐き出して吸う呼吸法ができたら、あとは勝手に泳げるようになります。

しかし、揃いに揃って支援学級の高学年子どもが泳げないのが気になります。支援学級にもプール指導の時間はあるので、交流学級とダブルで泳ぐ機会があり、しかも、人数が少ないので呼吸法までの指導ならひと夏で教えられるはずです。コロナの影響があったにせよ、呼吸法は低学年で教えられたはずです。水泳はDCD(発達性強調運動障害)の子どもでも、呼吸法さえ身につければ前に進めるようになるので彼らに向いているスポーツと言われています。川遊びでぼちぼち指導していこうと話しています。

嫌な理由

夏と言えば水遊びプールの季節です。子どもたちは水遊びが大好きです。ところが、感染の恐れがあるとして学校プールは全滅です。このブログで何度も書いているように、学校プールの水は塩素殺菌されていますから、その塩素水飛沫が飛び散るプールで感染するなら、外を歩くなと言うに等しいです。さて愚痴はこの辺にして、すてっぷでは大好きな水遊びを実現するために大型ビニールプールを購入しています。小さな子どもたちはみんな大喜びです。みんなキャーキャー騒ぐので近所迷惑を気にしながらの毎日です。

ところが、Lちゃんがビニールプールに入ろうとしないのです。確か昨年は何ともなかったのに、後ろから押しても頑として跳ねのけて入ろうとしません。仕方がないのでプール横で水遊びをして過ごしました。職員で話し合ったところ、他の元気すぎる子どもと一緒にいるのでうるさすぎて入る気がしないのだろうという結論に至り、奮発して静かに遊ぶ人用のビニールプールをもう一つ購入しました。

早速新しいプールに一人で入ってもらおうと車いすから降ろそうとすると、Lちゃんはプールに足もつけようとせず、入らないのです。水が多いのが不安なのだろうかと減らしてみても入らないので、次は何も水の入っていない状況で先にLちゃんに入ってもらいました。そうすると難なく入れたと言うのです。そこに、徐々に水を入れていくとニコニコして水遊びをするのでした。

つまり、Lちゃんは水の入っているプールが嫌だったのです。空っぽで入って水を入れると何ともないことがわかって、次の日からは水が張ってあっても入れるようになったのです。Lちゃんには言葉がないので推測するしかないのですが、おそらく水の入ったプールで嫌なことがあったのかもしれません。水温が低すぎて驚いたとか、何らかの感覚的なトラブルがあって恐怖感が焼き付いて入れなくなっていたのかもしれません。言葉のない子どもが何をどう感じ取っているかを把握するのには、時間を取って様々な工夫や働きかけが大事だねと話し合いました。

集団遊びに熱中

K君が帰ってきて顔をほてらせて「今日はめっちゃ面白かったわ!」と職員に言うので、何のことかと振り返ってみると、職員入れて7名ほどで手つなぎ鬼ごっこをしたことらしいのです。暑いのに走り回ってどこが面白いのだろうと大人は思うのですが、K君には「最高!」だったのです。

学校でも地域でも集団遊びを普段しないので、みんなでギャーギャー騒ぎながら走るのが楽しかったようです。そういえば、最近暑いせいもありますが、公園で徒党を組んで遊んでいる子どもたちを見たことがありません。多くても3人程度でこじんまり遊んでいます。

サッカーチームや野球チームで大勢で練習することはあっても、集団でただ大声を上げながら走って遊ぶという経験はほとんどの子どもたちにありません。ただ職員にしてみれば「暑いから、1回だけにしてくれー」と切にお願いしたようではあります。今日も外気温は日なたは35度を超えています。集団遊びに熱中はいいけど熱中症には厳重警戒です。