すてっぷ・じゃんぷ日記

2020年8月の記事一覧

ビニールプール

昨日O君の保護者から「昨晩寝てたらエアコンが壊れて熱中症で救急で診てもらいました」と連絡を受けました。もうエアコンがないと京都の夏は越せないようです。

夜中だけでなく、立秋過ぎても昼間の酷暑も激しく、ここは東南アジアか中東かと思わせるくらいの気温で子どもたちはずっと外に出るのをがまんしていました。実はビニールプールの購入は梅雨明けから考えていたのですが、武漢ウィルス予防でご近所の目が気になって自粛をしていたのです。しかし、低学年に一日中部屋の中で過ごせというのも不健康な話なので、遅ればせながらビニールプールを購入しました。

今日も外から嬉しそうな声が聞こえてきます。聞けば、政府は武漢ウィルスを、感染症法上の指定感染症の分類相当の見直しに入るそうです。結核と同じ2類相当からインフルエンザと同じ5類に引き下げる方向だそうです。これまでは、何が何だかわからなかった感染症の実態が、次第に明らかになり適切な予防策になることは良いことです。猛暑はまだまだ続くようなので、水浴びが気兼ねなくできるようになって欲しいと思います。

女子の身だしなみ

Nさんの支援計画の話をしているときに、今後思春期にむけて身だしなみの問題が議題に上がりました。子どもによっては女の子でも身だしなみのことが気にならない人も少なくありません。Nさんも髪は長くしたいと思っているのですが、よく洗えていなかったり、毎日の髪のケアができていないので、スタッフも「長くする前にまず身だしなみを教える必要があるな」と感じていました。

女子の場合、軽度の知的障害があっても障害のない女子と同じように身辺のことが気になることが多いです。しかし、発達障害がある女子の場合、いわゆる「女性らしいふるまい」や、身だしなみや片づけ、人づき合いなどを上手にこなせない場合があります。人から自分がどのように映っているか見えにくいからです。

さらに、第二次性徴によって身体や心の状態が大きく変化しますが、発達障害の子どもにはその変化自体がストレスになります。女性の場合は、月経時に感覚過敏の特性が強まったり、月経前症候群(PMS)の症状が重くなったりする人もいます。精神的にとても傷つきやすい思春期は、日常のちょっとしたつまずきや困難が学校生活への不適応につながることもあります。自分の気持ちを表現することが苦手な発達障害の子どもは、不安やつらさを身体症状として訴える場合があります。

身だしなみの支援策としては、良い例と悪い例が見てわかるイラストや写真などを使って、良い例と悪い例を教えます。身だしなみの整えかたについて、手順表やチェックリストを作成したりします。感覚過敏で、ゆったり服装しかダメな時は、合理的配慮を求めると同時に生徒への理解も進めてもらいます。また、身だしなみに頓着がない時は、行きつけの美容院などを作って、美容師さんを権威のあるプロフェッショナルとして紹介し、トレンド情報などを教えてもらうのも一つの方法として考えられます。

発達障害女子については国立障害者リハビリテーションセンターから簡単なリーフレットが作成されているのでお読みください。

学校お迎えでのおねがい

Nさん、学校のお迎えの時に見通しが持てなかったのか先生の気を引きたかったかのかわからないけど昇降口で座り込んで動こうとしません。しばらくスタッフ待ったのですが、他の子どもを長時間待たせるわけにもいかず、抱え上げて送迎車に運ぶことになりました。そのあとは本人は何事もなかったかのように事業所についたのですが、あまり勧められた支援ではないなと言う話になりました。

学校でもスクールバスに乗せるまでは担任の仕事であるように、放デイの送迎車に誘導するまでは先生方にお願いしたいのです。もちろん、ほとんどの子どもは自分ですすんで送迎車に乗り込んでくるのでスタッフはそれをサポートしています。ただ、不安が強かったり切り替えが苦手な子どもも少数ですがいます。こういう子どもは、それまでの経過がよくわかっている先生方にお願いしたいのです。子どもの身体が小さければ実力行使も可能ですが、こういう子どもこそ思春期に差し掛かって体力もついてくると今度は子どもの側からの実力行使が始まります。

自立心が高まって来る時は大人の一つ一つの指示が気に入らなくなり反発します。その時は「どの靴はいていくの?」等と選択をさせると嘘のように自分で移動できます。なんでもお兄ちゃんのようにできるようになりたいけど「できないかもしれない」という不安が起こる時期では、斜めに構えてなかなか挑戦しようとしません。そんなときは、まずできたことを褒めます。昇降口ではつまづいているけど教室からは一人で来た事をえらいえらいと評価します。あとは、本人次第となりますが決して人と比べてはいけません。やるべきことは分かっているのですから。

それから、障害特性から次の見通しを「消失」することがあるということを念頭に置くことです。せっかく意気揚々と教室からは今日は放デイだと思ってきたけど、昇降口の喧騒で記憶がなくなって、いつもの「スクールバス」に置き換わっている子が少なくありません。そうなると、「何故あなた方は私を放デイに拉致るの?」と誤解します。ワーキングメモリーへの保存が心配な子どもには、自分で本日のお迎えコース写真を自分で選んで昇降口まで運んでスタッフに渡します。そうなると「ご乗車ありがとうございます」とご機嫌の放課後が始まるのです。どうぞよろしくお願いします。

分離不安

昨日は始業式時期のストレスの高さを書きましたが、女子によくみられる分離不安もこの時期に顕在化しやすいです。低学年のKさんも、登校渋りがあり、あれこれ理由をあげるときりがないのですが、不安が大変高いのでちょっとしたトラブルでも行き渋りの原因になります。大人は「また、あとから理由をつけている」と思いがちなのですが、それほど不安なのだという理解が大切です。

発達障害の子どもにおいて、母子分離不安の特徴が見られることがあります。発達障害の子どもは対人関係のあり方が偏っていたリ、ものの捉え方が異なったりするため、障害のない子どもに比べて、極度な不安を感じることがあるからです。

母子分離不安は発達障害の中でも、ASD(自閉スぺクトラム症)の子どもに多いと言われています。ASDのある子どもにおける母子分離不安は、一言で言うと対人関係上の特性が原因です。ASDのある場合、親がいなくても平気という親子関係の希薄さを示す子どもがいる一方、子どもによっては極めて強い不安感を抱き、他の子どもがいるのを嫌ったり、ひと時も母親から離れられないといった神経質、過敏傾向も示す場合もあります。

母子分離不安の対処法は、発達障害が関連していようとそうでなかろうと変わりはありません。信頼でき愛着のある大人がそばにいてやさしい言葉をかけて、子どもの不安を軽減させることです。信頼できる大人との安心した関係を確保したあと、不安を感じにくくするような治療法(リラクゼーションスキル・自律訓練法等)を取り入れます。

母子分離不安が表れたからと言って、すぐさま発達障害だということではありません。母子分離不安そのものは病気ではなく、多くは「一時的に心配ごとがある」というサインだからです。母子分離不安の特徴だけでなく、子どもに他にどんな特徴が見られるのかも把握するようにします。

自立を始めた子どもには母子分離不安が生じます。親から離れ出すと誰もが不安になるものです。そうした、発達過程で生じる正常な母子分離不安も少なくありません。子どもの母子分離不安がどのようなものなのか、どう対処すべきなのか、しっかりコミュニケーションをとって把握します。。

また、甘えだと思って厳しく叱ってしまうのではなく、子どもを認めてあげ、一緒になって不安を取り除いていくことで改善することができます。子どもは安心することで、自立できるようになります。

一方で治療を要する母子分離不安もあります。分離不安のために親子の日常生活が困難であったり、就学期を迎えても不安のために学校に通えない日が続いたりするなど、症状の程度によっては医療や専門家のサポートが必要となる場合もあります。その場合、特別支援に詳しいスクールカウンセラーなどに相談してください。

2学期始業

今日は、支援学校と京都市で2学期始業式です。M君宅から「今日はもう疲れてしまったようで、お昼から放デイ行けないみたいです」と連絡がありました。短い夏季休業でも、子どもによっては、家庭生活から学校生活への切り替え時期は、ストレスが極限に達する場合もあります。

「友達に会えるから楽しみ」「新しい勉強が楽しみ」という子どもがいる一方で、「教室の喧騒に耐えられるかな」「今日も突然の予定変更でしんどくならないかな」等登校への心配事が少なくない子どももいます。

2学期も平常授業になれば7校時で低学年でも授業時間が15時を越えるそうです。発達障害の子どもたちが心配しているのは、授業時間ではなく、休み時間や当番時間です。構造化されておらずイレギュラーなことが起こりやすいからです。休み時間は短くても図書室に行ったりカームダウンエリアを決めておく方が本人は安心できるようです。

大事なことはエネルギーが枯渇するまで無理をさせるのではなく、早い時期からヘルプが出せるように校内の仕組みを作っておくといいようです。本人はいつヘルプを出せばいいのか何がヘルプなのか分からないことがあるので、決まった時間に相談するように決めておくのがが一番いいようです。今日感じた良いことと気になる事を報告する時間です。何もなくても5分間は話していく約束をします。基本は言語ですが、必要に応じてコミック会話などテキストもコミュニケーションに使うとうまく表現できるようです。

興奮している時は文字でお願いします

J君が「赤いヘッドホンの音が鳴りません」と訴えてきました。「うーん、故障かなぁ、他のヘッドホーンでお願いします」「いやだいやだ赤いヘッドホンじゃなきゃ嫌だ―」とボルテージが上がって暑い狭い部屋の中で叫びだしました。J君は普段はおとなしく穏やかな人なのですが、ひとたび怒り出すと大声絶叫モードになります。

困ったスタッフは、いろいろと赤いヘッドホーンが使えない理由をJ君に説明するのですが、要は使えないと言う結論は変わらないし、興奮しているので説明の理解ができないようです。そして、またまた絶叫するという悪循環でスタッフも困り顔です。周囲の仲間もうるさくて迷惑そうにしています。

別のスタッフが付箋に「大きな声を出す人は迷惑なので、帰りは後部座席に座ります。小さな声でお願いします」とJ君との乗車の契約を文字で示しました。すると、一瞬で自分で読んで「小さな声で話します」と小さな声で話しだしました。

子どもが興奮しているときには、あれこれ話して諭すよりも文字にしてあらかじめ契約したことを示して納得してもらうようにしたほうが双方疲れなくていいと思います。ただ、文字で示す時がいつも修羅場と言うのは良くありません。文字が示されたら悪いことが起こると記憶に連合させてしまうからです。普段から文字で説明し、本人にとっていい結果の時にも文字で示しておく必要があります。子どもが怒っている時にはダメージがあっても通じるコミュニケーション手段(ここでは文字)を使います。ただし、「ビジュアルドライブ(視覚優位?支配?)」で書いたように、視覚情報はASDの方には強力な支配力があるので、禁止については多用はしないようにお願いします。

 

 

いいところを応援する服薬

最近、小学生のH君やらI君が支援学校から来ている利用者の障害について気になってよくスタッフに質問してきます。裏返せば、自分にも同じような障害があるだろうかという気づきです。質問されたスタッフはできない事だけを述べるのではなく、できることも得意な事もあるということを説明するようにしています。

コンサータ等の服薬機会も気づきのきっかけになります。服薬をしている利用者は少なくありませんが、その服薬がなんのために必要で、いつまで必要なのか、どうなれば必要なくなるのか、その年齢に応じて正しく理解している子どもは多くないと思います。最近の医師の中には保護者にだけでなく子どもにも理解が得られるように説明する医師もいますが多くはありません。保護者ですら、「お医者さんが早口で説明されたけどよくわからない」という人も多いです。発達障害対応の服薬については、まず保護者と当事者が服薬の目的を正しく理解をすることが大事です。

服薬は、生活がしやすくなったという実感を子どもが持てるようにします。その実感を掴んだ上で、生活や勉強がしやすくなるには、お薬だけの力ではなく自分の力でもだんだん解決できる方法を学ぶことなのです。発達障害のお薬は「飲んだらおしまい」ではないのです。むしろ、「飲むことから始まる」のです。

落ち着きがないと、自分を振り返ることも一苦労する子どもたちだからこそ、服薬してじっくり振り返る機会を作る事も服薬のねらいです。やがて自分のことが自分で分かるようになってくれば、「今は集中のコツをつかんだので服薬は必要ないけど、試験の前は必要かも」などと医師と相談できるようになることが大事です。周囲の大人がすべきことは子どもの状態を見て服薬量が多い少ないという事だけでなく、子どもが自分で自分の状態がモニタリングできるようになることを支援することなのです。

学校や事業所の関係者が適切な協力ができるようにするには、保護者の服薬への理解と見通しが何より必要です。子どもは服薬することで「僕は病気だ」と誤解したり、「障害をなくすために服薬している」と誤解していることもあります。そんな子どもには「君のいいところを応援するために服薬は大事なんだ」と説明していくことも重要となります。

 

PECSのフェイズ2の重要性

京都PECSサークルでマニュアルの読書会がリモートで毎週行われています。会員の中には保護者の方も多く参加されて毎回20名弱の人数で90分ほどかけて開催されています。

昨日は、フェイズ2の箇所の読み合わせをしました。フェイズ1はプロンプターが要求動作の介助をしながら絵カードをコミュニケーター(カードを受け取ってほしいものをあげる人)に渡せば目の前の欲しいものがもらえることを教えます。それができるとフェイズ2は、コミュニケーターが距離をあけて遠くにいても要求カードが渡せるようにします。

子どもは、このフェーズは比較的早く理解してくれるので、私たちは次の要求カードの弁別=フェーズ3aにすぐに進もうとしがちです。しかしマニュアルには延々とトレーニングの深化を行うようにスタッフ・パーティーやお友達とのPECSタイムに取り組むように勧めているのに気が付きました。実はここがピラミッドアプローチ(PECS開発者の教育コンセプト)の神髄ともいえるところなのです。

PECSマニュアルは自閉症の子どもたちがそんなに簡単に機能的コミュニケーションが理解できるわけがないという前提で作られているのです。そして、一人として同じ子はいないのだから同じやり方や同じ時間で同じものが獲得できるはずがないという前提で作られているから、あんなに分厚い冊子になってしまったと思います。

フェイズ2はいつでもどこでも誰とでも「要求」カードが使えて合格なのです。すなわち学校でも自宅でもお友達の家でも、できればお隣さんでも使えることが重要なのです。私たちは、ついついコストパフォーマンスからコミュニケーターとプロンプターに大人を2名も使ったんだからと「厚い手をかけた」と思いがちです。違います。フェイズ2はさらに大人がスタッフ・パーティーを演出して楽しそうに本人が欲しがるものを大人同士でやり取りして本人が要求カードを出すように仕向けなさいと書いています。少なくともあと一人大人がいります。次に子どもも呼んできててスナック(おやつ)タイムやらホビー(おもちゃ)タイムやらを本人の目の前でやって本人も要求カードを出すように仕向けましょうと書いてあります。それを参加する子どもに説明する大人やらガイドする大人がもう一名必要です。

そんなこんなで、フェイズ2は子ども1人に対して3~4名のスタッフが必要になります。それだけ人的コストをつぎ込むのは、単なる訓練場面だけでは子どもは理解しないよ、楽しい場面をナチュラルな生活場面を人工的に作り出して、カードの弁別なんてまだまだできなくていいから、「ねぇねぇ、それちょうだいよ!」と相手にまとわりついて要求カードを手渡そうとする子どもを育てましょうと言いたいようです。金と時間に糸目をつけてはいけないと…。

 

 

新事業所開設

明日から日曜まですてっぷはお盆休みです。なんだかんだと言っているうちに長岡京と向日市は来週水曜から2学期始業式です。

以前から検討していた、新事業所の開設目処がやっとつきました。新事業所は児童発達と放課後等デイサービス事業の多機能型事業所です。

児童発達事業では、母子通園で、就学に向けて発達障害児童の療育と保護者支援を行います。アセスメントを重視し障害特性に応じた行動の支援に保護者の方と一緒に取り組んでいきます。

放課後等デイサービス事業では、主に発達障害の小学校高学年・中学生の学習支援と療育支援を実施します。特に学習障害の方の学び方の支援に力を入れたいと考えています。場所は阪急西向日駅の近くで、利用者の送迎はありませんので、利用者の通所意欲と保護者の協力が必要となります。

開所は10月を予定し、申込など詳しい内容については、来月に正式に発表する予定です。

 

縦割り集団

子どもの縦割り集団の教育的効果については、多くの先達によって語りつくされています。しかし、今日では地域で生の縦割りの子ども集団を地域で見つけること自体が稀有な時代となってしまいました。学校の中では、人工的に兄弟学級やら交流やらを組織してますが、それも感染予防の昨今ではソーシャルディスタンスの名のもとに取り組みは希薄になっていると聞きます。

学童保育の中ではこの縦割りが、子どもの「管理技術」として利用される場合が多く「ジュニアリーダー」とか「リーダー会議」とか聞くとトラウマで「気分が悪くなる」という大人も少なくありません。後遺症の原因は子どもたちの遊びニーズに基づいた自然な自治ではなく、大人の介入が多かった所以かもしれません。

新しく入ってきた新1年のE君をボーリングゲームにどう迎えるかと言う話を中2のFさんと小6のG君で話し合っているのを目にしました。話の内容はあらかじめ誰が何をするかの役割分担です。普段は大人が仕切って話している内容ですが年少者が入ってきて自分たちで仕切りたくなったのだと思います。きっと達成感があったのだと思います。帰り際にG君が「話し合いができてうれしかった」と珍しく人との関係行動を振り返って気持ちが高揚したことを伝えてくれました。

 

ボーリング&外食

久々の外出企画でボーリングと外食をしてきました。ボーリングはバンパーをつけてのガーターレスですがそう簡単に得点は上がらないです。小学生なら100点そこそこそこです。でも、最初はレーンが壊れる!と思う位の投球がなんとかスムースに投げられるようになってきました。

投球補助スロープも借りることができたので、D君も自分でボールリターンストックからボールをスロープまで運んで転がすことができました。自立して転がせれば達成感は100倍です。

そのあとは、回転寿司で昼食。20皿も食べちゃう人や、牛カルビ寿司ばかりを6皿も食べちゃう人や、何故か寿司は頼まず巨峰シャーベット一点狙いの人やら、不思議注文も多かったですが、みな満足したようです。若干名消費税を読み違えて予算をオーバーする子どもがいたので、次回は消費税計算付き電卓を持参する予定です。

反抗?

スタッフが「D君は最近自我が芽生えてきたのか、おむつ替えようと勧めるとものすごく怒って反抗します」と報告してくれました。それはどんな時に起こるのか聞くと、音楽絵本を聞いている時や扇風機の羽の回転を見ている時だと言います。そりゃ、怒るでしょうね。

もう一人のスタッフが「オムツと絵本を示して、オムツ終わったらまた絵本していいよと言うと穏やかに受け入れる時もあります」と報告してくれました。それって、自我がどうこうと言っても解決しない問題だという事です。大事なのは見通しではないかなということです。

子どもが言う事を聞かない時の理由として自我の発達を理由にされる方がいますが、自我が発達したら指示に反抗するもので、子ども側の問題だと言っているようにも聞こえます。そうではなくて、指示する大人がこれまで、本人の見通しお構いなしに指示して、本人が何も言わずに従っていたのを、やっと本人が「?」と気が付いたという事です。

言葉が通じにくい彼には、オムツと絵本を順番に示してくれる人には無理やりではないことが分かり、穏やかに対応するのではないかということです。そして、この時期こそスケージュールやワークシステムを教えるチャンスでもあります。絵でなくても2段のBOXにオムツと絵本を入れて上から順に事が終わることを伝えるのです。自我と反抗は決してセット物ではありません。

 

自立課題

自立課題に多くの子どもが取り組んでいます。自立課題の報告で一番多いのが「Dさん ◇●△ができるようになりました」という内容についての報告です。こちらから聞かない限り最初から最後まで自立的に作業ができたかということはほとんど報告されません。スタッフの関心が自立課題の中身、つまりプットインであったりマッチングであったり分類であったり文字検索の出来不出来だからです。

自立課題は、認知レベルを上げることを目的にした課題ではありません。自立課題の目的は、将来、就労するにしてもしないにしても、人からあれこれ言われて作業をするのではなく、ワークシステムを整えて工夫さえすれば、一人で作業ができる人になってもらうためのトレーニングなのです。

よく、この人は重度だから横に人が寄り添えばいい、そしていつの間にか寄り添う事が重要だと本末が転倒して考えられるようになることもあります。重度の人でも思春期を境に自尊心が芽生えてきます。しかし、自分でできることがなければ自立に向かうための自尊心のエネルギーは、注目を集めようと不適切な行動で人の気を引いたり、一つ一つの課題が「できないかもしれない」と怖くなって大声を出して拒否したり暴れたりする行動に向かってしまう事があります。或いは、全てを人任せにして気力をなくしてしまったような姿を見せる人もいます。

自立課題で最も重要なのは3つです。いつ自分が課題に向かうかわかって始めようとする事。課題はどこまでやればいいか自分でわかる事。課題が終わったら自分で終了して次のやるべきことに一人で向かうことができることです。「一人で始め、一人で向かい、一人で終わって次に向かう」これができれば、その人のできることに応じて仕事量や時間は違いますが一人で成し遂げることができます。

スタッフに最初に話し合ってほしいことは、一人で始め、続け、終われたかどうかです。内容は自立的にできる内容であったかどうかが大事で、前より難しいものであっても一人でできなければその内容は不適切なのです。このワークシステムに適応する力さえ身につけば「ご苦労さま」「ありがとう」「よくできたね」とねぎらう事ができます。このような毎日があってこそ、初めて自尊心は育てられていくのだと思います。自立課題は、一人で自信をもってやれているかどうかが大事なのです。一人でできていない部分があれば、何故できなかったのかどうすればひとりでできるのかをスタッフで話し合うことが大事です。寄り添うというのはお互いが向かい合う関係ではなく、同じ方向を見て並んで歩む関係だと思います。

チューペットと山登り

休日プログラムになると夏の午前中は山登りをします。歩行不安定な人や低学年は麓の光明寺を散策します。山頂の「第2鉄塔」までは片道40分ほどかかりますが、たいていは中間の「分岐点」まで20分歩いて登ります。休憩を入れたら往復1時間程度の行程です。

山登りと言っても、「分岐点」まではコンクリートの作業道を上がっていくだけなので大したことはないのですが、汗をかいて登った後の山風が心地いいのを感じて欲しいです。と、子どもたちには勧めても「うざい」「暑い」「めんどい」と一蹴されます。

それでも、山登りの後のチューペットの味は子どもたちとも共有できます。キンキンに凍らせたチューペットを2つに折って分け分けし合って頬張るあの共感性は格別です。PAPICOのモソッと横に引きちぎる分割感よりチューペットのパキンと割れる潔さ、PAPICOの終始シャーベット感よりチューペットの最初のカチカチ感の方が、皆に愛されています。

終業式

今日は、長岡京・向日市の終業式。お迎えに行くと先生方みんな嬉しそうに子どもたちを送っています。感染予防と度重なる日程変更の中でようやくたどりついた1学期終業です。ただ、学校が平常通り授業をしたのは2か月もなく通常の半分くらいの授業時間だったと思います。感染予防のため行事もなくプール授業もなく、子どもたちは楽しいかなと思うのですが、友達がいるから楽しいといいます。対人関係の苦手な子どもは、運動も演奏も話合いも遊び時間も「蜜」にしない全体への配慮があったから登校できたかもといいます。

京都市と支援学校はすでに8月1日から夏休みに入っています。大山崎は7日が終業式。長岡京・向日市はお盆をはさんで2週間後19日に2学期始業、続いて支援学校・京都市が24日から最後に大山崎が26日からです。お休みくらい統一してよと言うのが放デイの本音です。というのも休業中のプログラムはスタッフにとっては結構過酷なのです。

9時半から各家庭にお迎えの車が回り、10時からお天気が良ければ山や公園に行きお昼になっていったん事業所に戻ってお弁当を食べて最高気温に達する頃の14時頃からお天気がいいならもう一回外出で公園で水遊びか室内遊びなどをして、終了が16時過ぎです。1回目の送りが終了するのが17時頃、延長で残っている利用者は18時過ぎから2回目の送りで全て完了するのが19時頃です。通常はこの日程が猛暑の中30日続くわけです。今年はそれがばらばらと20日間続くので子どもの生活リズムを整えにくいのです。

長期休業中で一番大事なのは、放デイでも家庭でも生活リズムの確立です。このリズムでお互いの息が合わないといろいろと各人が抱えている問題が顕在化してくるのです。がんばります!

周知の事実

スタッフのCさんが「子どもたちが食事中しゃべりすぎます」と言われたので、みんなが「?」となって、食事中にこどもはおしゃべりするのが当たり前だし、不注意な子どもの集団ならなおさらお喋りなのは仕方がないと言う反応でした。

テレビを見ている人ならすぐに「武漢ウィルス感染予防は食事中の沈黙が大事」とわかるのですが、若い人はテレビはそんなに見ないのです。無症状者の検査で陽性反応が出ても「感染者数がまた増えた」と毎日煽りまくるテレビからの「不安の感染」は、視聴していなければ「感染」しません。だから、予防が大事と言う意味がすぐには伝わらず、食事中おしゃべりが止まりそうにない子どもに「マナーとして注意してほしい」と伝わったのです。Cさんの真意は、「感染拡大中」は食事場所を分散して、壁に向かって食べさせたいという事でした。

これは実践現場ではだれにでも言えることですが、本人が当たり前だと思っていても周囲の人は必ずしもそうは思っていないことがよくあるのです。それを放置しておくと、組織内がだんだん疑心暗鬼になってしまうので、小さなことでも違うなと思った事は言いやすい職場づくりが大事なのはいうまでもありません。ただ、その時に違う考えが存在することも享受しなければなりません。

テレビ等大メディアが流す情報の信頼性が問われている今、テレビが報道しても誰もが見ているわけでも信じているわけでもないという事が、当たり前だと考える心得が、めんどくさい話ですが必要なようです。

課題分析・機能分析

Bちゃんにどのようにすれば線の中に色を塗ることが指導できるかという質問がスタッフからありました。スタッフが教えようとしているのは、ハートのマークに線をはみ出ずに色を塗って欲しいということです。「線を太くしてみたらどうか」「線を物理的に超えないように高くしてはどうか」「線の外は色がぬれないようにハートマークを切り出して色を塗らせてはどうか」といろいろ考えました。

対象者が目標を達成するために、スモールステップで行動を考えていくことを課題分析と言います。課題を順番に小分けにして教えることは支援者の工夫やアイデアが大事です。課題分析ができたら大事なことはあと一歩で完成するところから取り組むことです。つまり完成形を知ってもらうことです。それができたらもう一つ前から取り組むようにします。大人は一番初めから取り組ませようとするものですが、それでは目標が遠すぎることが少なくないからです。これをバックワードチェイニング(逆行連鎖化)といいます。身辺自立課題などではよく使う手法です。ズボンを膝まではあげておいて後を子どもに任せるやり方です。

ただ、道具や教材の教え方の工夫だけでなく、どうすればBちゃんが「やったー」「またやってみたい」と思えるかです。これを機能分析といいABC分析などが知られています。このブログで機能分析をしつこく取り上げているのは、子どもがその行動を利得に感じているかどうかが一番大切なことだからです。いくら上手に教えてもまた自分でやろうとしないなら再現性がない支援なのです。どうしても、我々は手元だけを切り取って考えてしまいがちです。子どもの行動を変容させたいなら、この両者の分析が大事なのです。