すてっぷ・じゃんぷ日記

タグ:読み書き障害

どうぶつずかんを読もう!

宿題への苦手意識が強いA君がここ最近積極的に宿題に取り組んでいます。

A君は読み書きが苦手で,文字を読む,書くことにエネルギーを使ってしまい,その後の「思考する」ことがとてもしんどい様子でした。宿題の取り組む量を減らしたりするもののこれまで積み重なった苦手意識は中々拭えるものではありませんでした。

A君は動物にとても興味があり,家で図鑑などを読んでいるようです。わからない漢字は教えてもらいながら夢中になって読み,大人でも知らないような知識をたくさん持っています。

そこで宿題の取り組みにトークンシステムを用い,「スタンプが5つ溜まったらどうぶつシールと簡単な図鑑をもらえる」ということにしました。

それで目を輝かせ,今A君は積極的に宿題に取り組んでいます。

トークンのどうぶつ図鑑は筆者が作った稚拙な物ですが,とても喜んでくれています。ご褒美を渡したとき,書いてある文章を読ませるようにしています。おおよそ3年生までの簡単な漢字を用いていますが真剣に読み,「そうやったんや~!」と感想を言っています。

こういったことから少しずつ漢字の読みに興味を持ってくれないかな…と思っています。やはり学習の引き出しは興味から,と改めて感じた瞬間でした。

あまりのあるわり算

先日じゃんぷに通っている小3の子どもの宿題で以下のような問題が出ていました。

その子は最初答えを「8きゃく」と答えていました。「あまりのあるわり算」の単元では文章問題の答え方が2パターンあります。最初は下の画像のように「〇個できて△あまる」といった答え方と初め紹介したような「〇個必要」といったものです。

文章を読むことが苦手な子どもにとって文章の意味の違いを理解し,答え方を変えることはすぐに出来るものではありません。その時は問題を2つのパターンに分けました。

1.「〇個できて△あまる」と答える問題だよ!

2.「答えに+1する」問題だよ!

このように子どもがわかりやすいように整理し,宿題に取り組みました。本来は「いくつ必要なのか」を読み取り,問題の意味を違うことを考えさせることが目的なのですが,読み書き障害のある子どもにとってはそこでつまづいてしまい,苦手感を持つきっかけになってしまうかもしれません。まず本人がわかりやすいように問題を取り組めるよう支援し,その後ゆっくり問題の意図を理解できるように今回は支援をしました。

読み支援のステップ

読み書きを苦手としている子どもを支援する時,少しずつステップを踏み,その子が苦手としている部分を細かく把握するようにしています。読み書きを苦手としている子どもでも,出来るところと出来ないところがあります。そこを把握し,効果的なトレーニングをするようにしています。

ひらがなが正確に読めなかったり,読み間違いがあったりする場合にはまず「正確に」読める練習が必要です。それも見て瞬時にわかることが必要です。(読み支援と語彙 : 05/13)でも書きましたが,「ねこ」を音のまとまりとして読めるのか,文字を拾って「ね」「こ」と読むのかということです。ただ,前回も書いたように読み書きが苦手な子どもの場合知っている語彙が少ないこともあります。その時は言葉と意味を絵とマッチングさせる等をして語彙の支援から入る必要があります。

文字をまとまりとして読めれば,「ねこ」という文字を見ると猫の姿や鳴き声が瞬時にイメージできるようになります。2文字の言葉が読めるようになったら3文字,4文字…と徐々に増やしていきます。

この後文章の読みに繋がっていきますが,まずひらがなを正確に読むことが最も重要です。ただ子どもはどうしても疲れが溜まります。疲れさせないようタイミングを見計らいながら支援に取り組んでいます。

(出典、引用:「ディスレクシア発達性読み書き障害トレーニング・ブック 著 平岩幹男 発行 合同出版 2018)

読み支援と語彙

じゃんぷに行っている読み支援の一つとして「単語を音のまとまりとして読むトレーニング」に取り組んでいる子がいます。

これは例えば「ねこ」を「ね」と「こ」ではなく,「ねこ」と音のまとまりで読む練習です。

一般的には「ねこ」という文字を見た時に「ねこ」という音のまとまりとして読み,ねこの姿を思い浮かべます。それは「ねこ」を知っているからですね。音のまとまりとして読むためにはその単語を知っている,つまり語彙に入っていることが必要になります。

読み書きが苦手な子どもは読むことに対して疲弊し,どんどん文章を読まなくなります。その分語彙が少なくなってしまうことが多くあります。そして音読等,学校での学習に苦手感を持つことがあります。

いきなり文章…ではなく,まずは単音,そして2文字,3文字とスモールステップで読みの練習をし,そして語彙の意味も教えるようにしています。語彙の意味を教える中にもステップがありますが,それはまた後日…

(出典、引用:「ディスレクシア発達性読み書き障害トレーニング・ブック 著 平岩幹男 発行 合同出版 2018)

宿題プリントを考える

放デイに通ってくる子どもたちの多くは学校から宿題を持って帰ってきます。ブログでの宿題ネタは2年間で50タイトル近くありますが、その中で学校にお願いしていることは、個性のある学習特性に合わせた宿題を出してほしい!自学自習になる宿題を出してほしい!自尊感情が高まる宿題を出してほしいということです。3つもあるのかと思われそうですが、(宿題は自学自習 01/15)でも書いているように、同じことを違う側面から言っているに過ぎません。

B君が、「先生助けてください」というので見に行くとクロスワードパズルのプリントです。「こいのぼりをあげる日は?って書いてあるよ」「う~ん春かな夏かなぁ」問題が読めないだけでなく、暗に祝日をさしている意図も読めません。B君には知的な遅れもありますがディスレクシアの問題も抱えている人です。学校では学校でやらせたことを宿題にしているだけだと言われます。五十音が不確かな子どもに、例えこれを学校で一度やったからとしてもできるほうがミラクルです。プリントは低学年の自習用のプリントで良く使うものですが、低学年用といえどもLD用には作られていません。教えたから覚えているだろうという先生の自信はどこから湧いてくるのでしょう。

他にも、ワーキングメモリーが弱い高学年の子どもに、繰上りのある計算問題を低学年用だからと出してくる鈍感さには首をかしげたくなります。その問題が自力で終了できないこと、電卓を使って回答しても電卓の練習にはなるがそれ以上でも以下でもなく、知的な遅れのないC君には屈辱の時間でしかないことが理解できないのだと思います。担任は難しくないものをと「善意」で通常(読み書き障害のない子ども用)の低学年プリントを宿題に転用しますが、読み書きの問題は知的な遅れとは違うのです。知的障害とは質的に違う読み書き障害のことを知ってほしいと切に願います。

障害の状態は一人一人違うのでオーダーメイドがいいですが、支援学級には最高8人の子どもがいますから全てとは思っていません。読み書き障害用のプリントはたくさん市販されているのでその中のチョイスでもかまいません。少々の手助けは必要にしても、基本は一人でできる事が大事なのです。