すてっぷ・じゃんぷ日記

タグ:コミュニケーション

言葉が喋れるからPECSはいらない?

Wさんが、おやつPECSを始めようとするとBOOKを投げて拒否するとスタッフの報告がありました。そして「おやつください」と言えるのだから、もう嫌がるPECSは取り組まなくても良いのではないかという話です。

カードを投げたりBOOKを投げたりするのは、それが出てくると不利益が起こるからです。あるいはそれを投げると要求が叶うからです。カードを投げた時のシチュエーションは他の子がおやつタイムなのに自分はPECSだったといいます。PECSの練習はおやつ食べるための手段ではありません。たまたま、おやつが好きだからPECSの練習に使っているだけです。WさんのPECS導入の理由は、要求を叶えるために大声を出す噛む、暴れるという表現なので、機能的コミュニケーションを教えるためでした。

今回の拒否は、おやつの時間に他の子は自分のお皿からとって食べているのだから私もそうしたいという「以前の」表現だったかもしれません。つまり、まだまだ機能的コミュニケーションは獲得されておらず、カードのやり取りの「形式」を学んだ段階ではないかと思います。叫べばおやつは出てくるのですから、カードが便利だとはまだ感じていないようです。

なんのためにPECSをしているか?言葉が喋れても大人ではなく、冷蔵庫に向かって大声を出しているだけではコミュニケーションとは言えません。言葉をしゃっべているかどうかが基準ではなく、対人機能的に言葉でもカードでも使えているかどうかです。しかし、ブックを投げつけるとは困りました。保護者の同意があるとはいえ、すてっぷ以外はPECSに取り組んでいないという弱点を抱えつつではありますが、エラー修正の良いアイデアを探したいと思います。

叱ってはいけない

新入生のCさんが、ちょっと気に入らないことがあると階段の上から本を投げたりするので、困っているとスタッフから報告がありました。よく観察すると、その行為をスタッフが咎めることでCさんは大人からの注目を得る利得があるよねと言う話になりました。

だったら「叱る」のは逆効果だねと言う結論になりました。では、どうするか?こうすれば大人と遊んでもらえるよということを教えていくことです。つまり機能的コミュニケーションを教えることです。ものを投げて注目を得るのではなく、大人のそばまで行って「先生あのね」でもいいし、袖を引いてもいいし、「遊ぼう」絵カードを渡してもいいし、適切に要求すれば笑顔で応えてもらえることを教えていきましょうと話し合いました。

お迎え

放デイの始まりは、学校へのお迎えです。様々な学校があり、子どもも職員もそれぞれの学校で対応に違いがあります。最も違うのは特別支援学校です。児童と教員の距離がものすごく近いのです。確かに、危険がわからずに飛び出しなどを予防する必要がある子どもも中にはいますが、安全管理とは関係なく押しなべて近いのです。自立すべき人と認識していれば少し離れたところから、そっと見守るようになります。子どもとの距離間が支援では一番重要です。これを間違えるだけで、とんでもなく重度の方に見えてしまうのです。いつも距離が近いと子どもの支援者への依存心が高くなるだけでなく、離れなければならない時に子どもの不安感が一気に高まるのです。言葉で不安を上手に表せない場合、寝転んだり、暴れたり、急に怒り出したりします。距離を離すためには、困ったことがあればその場で伝えるコミュニケーションスキルが必要です。どうも、離れられない子どもと支援者ほど適切なコミュニケーションが成立していないことが多いように見受けられます。支援者と子どもの共依存は、子どもから依存されることに無意識のうちに自己の存在価値を見出し、そしてお互いに相手をコントロールし自分の望む行動を取らせることで、自身の心の平安を保とうとするというメカニズムで進行していきます。