すてっぷ・じゃんぷ日記

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修学旅行

C君が明日から修学旅行だと嬉しそうに話してくれました。感染症予防のために伸びに伸びた修学旅行がやっと実現するのです。しかも、一泊二日の旅行でホテル宿泊だそうです。発達障害の子どもでよく聞く修学旅行ネタは、不安で行きたくないというものが多いのですが、C君は無茶苦茶楽しみにしています。家族以外と遠くに行けるというのが楽しみだそうです。行先は和歌山方面らしく家族ともいったことがあるところだそうですが、知っているだけに見通しが持て安心していけるのかもしれません。

旅行中の集団行動がうざいとか、宿泊先の相部屋で相手と何を話したらいいのかわからないとか、自由行動で何をしていいかわからず不安だとか、ASDの子どもたちにとって見通しのない旅行は疲れるだけという子が多いのです。そのため、同じ場所に出かけてみる家族もいるくらいです。そこまでして、旅行する必要があるのかとも思いますが、参加しないという選択は普通はできないので、当事者にとっては深刻です。個室を与えてあげれば宿泊のストレスは軽減できるので、参加しやすくなると思いますが、それはそれでえこひいきだと陰口が気になるようで双方が受け入れられません。

そういう子もいるよとC君に話すと、「ふーん大変やね、僕は一日でも家族と別の場所で過ごせることがわくわくするけどな」とバスに一人で乗れないと嘆いたくせに生意気なことを言って、3000円のお土産代をどう使うかの細かな計画を饒舌に語ってくれました。良いお天気でありますように。

下校の切り替え

Z君が下校時のプラットホームで泣いて泣いて動かないという報告がありました。スクールバスに乗ったり、あちこちの放デイに行ったり、お母さんが迎えに来たり、訳が分かりませんというのが1年生あるあるです。泣くと言うのはスクールバスに乗ると言うつもりがあったからです。正しいつもり(見通し)が持てるように工夫をすることができるということです。

これを解決するのは視覚支援です。バスの写真カードを教室で渡されたときはスクールバスに乗り、放デイの送迎車の写真カードを渡されたら送迎車に乗るという経験を3週間続ければ、まず見通しはできるのでつもりはできます。視覚支援がないといつまでも混乱することになります。学校の先生方視覚支援をよろしくお願いします。放デイは送迎車の写真カードを提供します。

でも、スクールバスの行先は家でお母さんが待っています。ゆったり好きなことができます。放デイはこれに勝る魅力をまだ持っていません。知らない人は多いし、思いは伝わらないし、居場所も定まらないし、だめだめです。当面は好きな玩具やおやつを用意して、必要なら送迎車に好きなものを積んでお迎えに行きたいと思います。

 エスクァイア

反抗?

スタッフが「D君は最近自我が芽生えてきたのか、おむつ替えようと勧めるとものすごく怒って反抗します」と報告してくれました。それはどんな時に起こるのか聞くと、音楽絵本を聞いている時や扇風機の羽の回転を見ている時だと言います。そりゃ、怒るでしょうね。

もう一人のスタッフが「オムツと絵本を示して、オムツ終わったらまた絵本していいよと言うと穏やかに受け入れる時もあります」と報告してくれました。それって、自我がどうこうと言っても解決しない問題だという事です。大事なのは見通しではないかなということです。

子どもが言う事を聞かない時の理由として自我の発達を理由にされる方がいますが、自我が発達したら指示に反抗するもので、子ども側の問題だと言っているようにも聞こえます。そうではなくて、指示する大人がこれまで、本人の見通しお構いなしに指示して、本人が何も言わずに従っていたのを、やっと本人が「?」と気が付いたという事です。

言葉が通じにくい彼には、オムツと絵本を順番に示してくれる人には無理やりではないことが分かり、穏やかに対応するのではないかということです。そして、この時期こそスケージュールやワークシステムを教えるチャンスでもあります。絵でなくても2段のBOXにオムツと絵本を入れて上から順に事が終わることを伝えるのです。自我と反抗は決してセット物ではありません。

 

泣くことの理解とトランジッションカード

Jちゃんはようやくスケジュールを見て一日の流れが分かるようになってきました。それでも、何かの拍子に事業所の入り口の前で泣きだすことがあります。おそらく、何かいつもと少しシチューションが違って、見通しが持てなくなる時に泣くのではないかとスタッフで話し合いました。

そこで、トランジッションカード(スケジュールを見てきてねカード)を渡して「今日は何があるかな」と言ってスケジュールボードへの移動を促すようにしました。この作戦で、Jちゃんは、ほとんど泣かなくなりました。要するに、悲しいから泣くと言うより、分からないから泣いていたということです。もちろんJちゃんは言葉がないわけではありませんが、言葉が機能的に利用できることをまだ知りません。それよりも、泣くことで解決した事が多かったのだと思います。たまに要求が実現するので繰り返そうとすることを間欠強化行動と言います。ギャンブル依存もこの一種です。

案の定、公園からご機嫌で帰ってきたJちゃんがまたまた玄関の前で大声で泣きだしました。トランジッションカードをスタッフが渡すのを忘れていたのです。他のスタッフが気付いてカードを渡すと、スケジュールに行っておやつがあることがわかって泣き止んだのでした。ここで重要なことは、毎回繰り返される行動であっても、スケジュールやトランジッションカードが頼りになるということは忘れてしまう子がいるという事です。そして身についた行動(トランジションカードで移動する)が理解を助けるという事です。あべこべみたいですけど、Jちゃんは、わかることができることにつながるのではなく、できることがわかることにつながるのです。行動が認知を助けるのです。

 

 

 

早く帰りたい!

ニューフェイスに新1年生のNさんOさんがやってきました。Nさんスプーンで自分でご飯食べるのとても上手です。Oさんが課題が終わってお昼になると自分のかばんからお弁当出して「いただきまーす」。グッドジョブ!自分でできることがたくさんあります。

でもNさんOさんにしてみれば、今日は、兄さん姉さんたちの騒がしい部屋でいきなり6時間も過ごすの大変だったと思います。せめて絵カードではなく写真スケジュールくらいは示せばよかったです。Oさん何度も脱出を企てたけど阻止されて玄関の前で怒っていました。療育施設ではお昼食べたら帰るルーティンですから、Oさん自分でかばん背負って「なんで帰れへんねん!」って怒るの無理ないです。なんとか視覚支援の方法考えてみます。

待つこと

「待つこと」とは、スタッフに求められていることです。集団指導の時、子どもが何らかの理由で予定に従えなかったり向かうのが遅かったりすることが良くあります。ほとんどは同じ子であることが多いです。そんなとき、大人は「またか」と思ってしまいます。でもそれはきっと従えない子どもの方も「マタカ」と思っているのです。

コミュニケーションが苦手だったり、リーディングマインドが弱いと日課の切り替え場面で混乱する人がいます。理由としては、一つは次に何をするのか分からない場合。二つ目は、やる事は分かっているけど「やらされるかもしれない」という大人の強制力に不安を感じてしまう場合です。三つ目は、その不安を解消する質問や援助や交渉のコミュニケーションができない場合です。

実は一つ目と二つ目は裏表なのです。やる事がわかっていれば自発的に行動を起こしたことで大人に褒められるので、それが動機となって良い循環ができて習慣になります。やる事がわからないと、大人にいつも依存して行動することになり自発行動を行う機会がありません。ややゆっくり行動を始めていても「早く」とか「行くよ」など、現在の行動へのやや否定的な評価が多くなり褒める機会が作りにくいのです。

また、ゆっくりの行動する理由には、見通しがないまま行動をする不安感情があり、促しの指示には「いや」「まだ」「やめて」という拒否が起こり易い心理状態にあります。ここで、「行くよ」「はやく」などと指示しようものなら不安が強ければ強いほど過剰に反応して、表出コミュニケーションの弱い人は拒否するしか方法がありません。子どもの「いや」「まだ」には、切り替え時に見通しが「わからない」不安と「やらされる」不安に満ち溢れています。

「次はこれをするよ。終わったらこれがあるよ」という見通し情報を本人が理解できるモードで示し、気長に待てば、行動を起こした時に褒めることができます。人は行動に自分の利得がある場合にのみその行動が強化されます。同じ行動をしても利得がなければ弱化・消去します。子どもの利得の多くは大人に承認されたり褒められる事ですが、人によっては「お気に入り」の獲得からアプローチする場合もある事を理解しておく必要があります。

「待つこと」で自発行動を重視するのは良い行動を強化(持続)したいからです。そして、その人の理解し易い方法で情報提供できていれば、自発行動は起こりやすくなり、理解しにくい情報提供なら拒否行動は増えるという大原則にいつも立ち戻る事が大事です。