すてっぷ・じゃんぷ日記

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「○○くんたちと遊びたい!」

 「男の子たちと遊びたい!」支援学校小学部のJさんが、少し前までよく職員に伝えていた言葉です。Jさんは下校時間の違いもあり、支援学校の友だちとよく公園に行っていました。以前はブランコや砂場での一人遊びが多かったのですが、たまたまお出かけ先が一緒だった小学校グループの子どもたちがやってくると、職員の誘いもあり、少しずつ一緒に遊ぶようになってきました。

 そして去年の冬くらいから、自分から小学校グループの友だちと遊びたいと職員に伝えるようになりました。ちょうどコミュニケーションの課題として、要求することに取り組んでいたJさん。自分からしたいことを伝えられたことを褒め、小学校グループの友だちとの活動を増やしていきました。

 次の課題は、要求が叶わないときへの対応です。何も支援がないと、Jさんは友だちと遊べないからと大声で叫ぶなどパニックになってしまいます。そこでトークンエコノミーシステムも関連付けた、一週間の予定表を提示することにしました。曜日ごとで、支援学校の友だちと遊ぶ日、小学校グループの友だちと遊ぶ日を提示し、それぞれ友だちと遊べた時はシールを貼るようにしました。また支援学校の友だちと遊ぶときは、たいてい2つのグループがあるので、どちらのグループと一緒に遊ぶかを、視覚的な枠を提示して、自分で選んで貼るようにしました。

 最初は大声で叫ぶこともあったJさんですが、予定表の意味が分かるようになり、今では落ち着いて切り替えられるようになりました。支援学校の友だちと遊ぶ時間、小学校グループの友だちと遊ぶ時間、それぞれで自分の課題に取り組んでいます。最近は小学校グループの友だちと一緒のタイミングで「宿題する!」と職員に伝え、学習プリントにも取り組むようになりました。普段は会わない友だちですが、放課後に一緒に過ごす中で、様々な良い影響を受けています。放課後等デイサービスだからこそできる、支援の形の一つだと実感します。

自分で計画を立てる

じゃんぷに通う小6のO君は今自分で学習の計画を立てています。中学になると定期テスト等で自分で計画を立てて学習を進めていく機会が増えていきます。

自分で見通しを持って計画を立てていくことが苦手なO君は学校の提出物が遅れてしまったり忘れ物が多かったりしました。なのでまず「その日のスケジュールを先生と一緒に決める」→「次の日のスケジュールを先生と一緒に決める」→「次の日のスケジュールを自分で決める」…これをスモールステップで進んでいっています。今は「次の日のスケジュールを先生と一緒に決める」に取り組んでいます。

O君は忘れ物が多いですが注意不足や衝動性,多動性による忘れ…というわけではありません。検査等からもそれがわかるのですが,ではなぜ忘れ物が多いのかというと「何のために必要なのか」をあまり感じていないようです。

つまり自分の中で「それが必要だ」と感じていないため,優先順位が下がり持ってこない,ということです。なので今,「自分で立てたスケジュールの元に準備をし,行動する」ということをしています。それから少しずつですが,O君の忘れ物は少なくなってきています。(まだ「やる必要あるのかな?」と感じている宿題については持ってこないことも多いですが…)

自分のスケジュールを理解しなければならない,と感じたのか家や学校でやるべきこと,やりたいこと等も話してくれるようになりました。じゃんぷで手伝ってもらいたい宿題や発表の準備等,少しずつ自分のやるべきことを把握してきています。

もうすぐ中学生になりますがまだまだ遊びたい年頃です。「ゲームがしたいなぁ…」とぼやくこともあります。先日はO君が「先生,スプラトゥーンのアップデートあるの見た?めっちゃブキ増えるし楽しみやなぁ!!」と話してくれました。

…ごめんよO君。先生は今パルデア地方で冒険をしています。

「きんようび、ホットケーキ♪」

 支援学校小学部のWさんは休憩中のタブレットが大好き。お気に入りのピンク色のカバーがついたタブレットがほしいと、「ピンクのタブレットください!」と職員に伝えます。ただ友だちが使用中で、職員が「まってね」というと、「ピンクタブレット~!」と大声で叫んでしまうことがたびたび見られました。大声を出したら要求が叶った経験があったのかもしれません。

 そこで、こつこつトレーニング(2022/10/4)で紹介したVくんと同じように、「まって」トレーニングをすることにしました。最初の数秒から少しずつ長くして、職員と交渉して待っていたら約束を守ってもらったという経験を積んでいきました。30秒待つ練習の頃から「まって」カードといっしょにタイマーを渡すようにすると、Wさんには分かりやすかったようです。そこから時間を長くしていっても、じっとタイマーを見て待つことができるようになってきました。また同時に、ほしいタブレットを友だちが使っていたら、友だちに「ください」と要求を伝えに行くトレーニングを進めました。友だちとの交渉には職員が支援に入り、「〇時になったら交代ね」とホワイトボードに書いて示します。そしてWさんにタイマーを渡して、時間になったら交代して友だちからタブレットを受け取れた経験を積み上げていきました。

 これらのトレーニングを、要求が出るたびにこつこつと2年以上続けてきました。すると先日、驚きの成果が! Wさんが公園から帰ってくると、友だちがホットケーキを作っていました。Wさんはそれを見て、「ホットケーキください」と職員に伝えます。しかし材料はその友だちの分しかありません。職員が間に入り、友だちに「1切れください」と伝えてみました。うなずかない友だちを見て、職員が「また今度ね」とWさんに伝えると、Wさんは「きんようび、つくる!」と言いました。次の利用日が金曜日と分かって言ったのです。日をまたぐ交渉ができたのはすてっぷでは初めて。それも自分から! 「きんようび、ホットケーキつくろうね。たのしみ♪」と言って帰っていきました。

 金曜日、事業所に着くなり「ホットケーキつくり、たのしみ♪」と職員に伝えてきたWさん。一緒にホットケーキを作り、職員が勧めたシロップを断り(!)、プレーンのホットケーキを満足げな表情で食べて、お片付けまで完璧に終えました。「あー、おいしかった、ごちそうさま~♪」

外出用のスケジュール

 夏休みに計画していたものの、新型コロナの影響で延期にしていた外出に、ようやく行くことができました。外出についての詳しい紹介はまた別の記事で行うかもしれませんが、この記事では外出用のスケジュールを紹介したいと思います。

 すてっぷでは、小学生もスケジュールに取り組んでいます。活動の見通しを持ち、自立的に次の行動に移れることを狙っています。普段の日であれば、ボードにカードを貼って提示していますが、外出時は紙に印刷して提示することが多いです。外出なら1日の予定がその日に変わることはそうそうなく、また外出で持ち運ぶため紛失する可能性があるので手間のかからない紙への印刷のみにしています。雨天の場合は、まるまる違う紙を用意しておき、出発前や外出中に差し替えるようにしています。

 さて今日の外出では、今日が初めての外出の子も何人かいました。この紙のスケジュールを使うのも初めてです。他の子もあまり使ったことがなく、5年生のRくんでも久しぶりに使うこととなりました。ですがRくんはさすがです。出発前のトイレが終わるとすかさず紙を確認。今日は初めての子もいるということで、終わった活動は職員にペンでチェックしてもらうことにしていたので、他の子もそれに倣って紙を職員に見せて確認してもらいます。出発後も到着したときやお昼ご飯を食べ終わったあとなど活動が終わるたびに確認し、次の活動に向かうことができました。

 今回は職員が紙に印刷してスケジュールを提示し、終わった活動のチェックは職員がすることにしましたが、彼らの成長に合わせて、自分でチェックするようにするとともに、自分で使えるメモ帳などに切り替えることも考えています。スケジュールを使うことで、見通しを持てるようになり、また見落とすことがなく過ごせたら、その利便性を感じて、自分で使おうとする意欲が生まれます。将来は自分で予定をメモ帳に書き込み、それを自分で確認することで1日の行動が適切にできたらいいなと思っています。

「出来ること」と「手伝ってほしいこと」

久しぶりのじゃんぷ日記です。長い間期間が空いてしまい申し訳ありません…また不定期になってしまうこともあると思いますが,これからもよろしくお願いいたします。

さて,じゃんぷのK君の見せる姿が変わった,と職員間で話題になりました。

宿題に対する苦手意識があり,「やりたくないよ~」と言っていたK君がそういった言動をしなくなりました。わからない宿題や苦手意識の強い宿題は「教えてください」と,援助を求めながら前向きに取り組もうとしています。

取り組んできたことは,K君がじゃんぷに来た時に最初に宿題を出し,「『個別学習』の時間にするものと『自立学習』の時間にするものと分けて取り組もう」とK君に選んでもらっていました。

「これは苦手やから個別にやって…これは出来るから自立の時間にやろうかな…」と宿題をわけていくK君。

取り組む課題の見通しを持ち,苦手な課題は一緒に考えてくれる人がいる,という安心感もあったのでしょう。K君が宿題に対して後ろ向きな発言をすることはなくなりました。

夏休みの間,日記等の宿題を持ってきて「一緒に考えてください」と伝えてきました。前向きにがんばろうとしている姿勢がGoodです!!

「ひとりでできたよ」

 「わたしもできたよ」(2022/7/29)で紹介したRさん。今夏は集団遊びでワニワニパニックに毎日のようにチャレンジし、お盆休みの前には職員の支援が少し必要でしたが、ワニをたたくことができるようになっていました。

 ただお盆休みの間にすっかり忘れてしまっていたようです。お盆休みが明けてからもワニワニパニックにチャレンジしていたのですが、Rさんはみんなと並んで座れるものの、自分の番になっても固まったまま動けません。

 やはり見通しを持てないと、初めてのことが苦手なRさんには難しいのかなと、しばらくはRさんはパスすることにしました。ただ友だちとのワニワニパニックは毎日取り組み、Rさんの番になったら「Rさん」と呼び掛けるようにして、見通しを持ててできるようになるのを待ちました。

 そして昨日今日と、Rさんは自分の番でピコピコハンマーを持って立ち上がり、見事ワニをたたくことができました! それも職員の支援なしで、1人で時間いっぱいワニをたくさんたたくことができたそうです。やはり見通しを持てることがRさんにとっては大事なんだなと実感しました。Rさん、1人でできてえらいね!

「ぼくもできたよ」

 支援学校小学部のCくんは、「わたしできたよ」(2022/7/29)で紹介したRさんと同じように、今年ワニワニパニックで集団遊びにチャレンジを始めました。Cくんはごはんや自立課題など座っての活動中に、たびたび立ち歩きます。ぐるっと室内を回って戻ってきたり、ソファに行って寝転がったりと、なかなか集中して続けられないときがあります。

 ワニワニパニックも、始めた当初は同じでした。自分の番でもピコピコハンマーを手に取れなかったり、他の人の番のときも待てなかったりと、しきりに他の場所に行きたがりました。そこで職員で話し合い、違うことにチャレンジしてもいいのではという意見も出ましたが、違うことではなく同じことを繰り返して続けていこうと決まりました。その方が、Cくんが見通しを持てて、分かってできるようになるのではないかと考えたからです。

 さて、このワニワニパニックを4、5回続けて行ったところ。この間もCくんは、集団のところから、ソファを行ったり来たりといった感じでした。ですが、友だちが交代してワニをたたいているところを見ていたのか、職員がこうしてみようと見本を見せていたのを見ていたのか。次第に、笑顔でワニをたたくようになっていき、座って待てることが増えてきました。そして先日、職員がワニワニパニックを始めようと準備し始めたところ、びっくり! Cくんがすでに座って待っているのです。スケジュールも自分でワニワニパニックに変えていました。そのまま準備が出来るまで待ち、ワニワニパニックを楽しんで、「終わります」のあいさつで自分からスケジュールに戻って、好きな遊びに切り替えていきました。

 Cくんはスケジュールの学習も今年から本格的に始め、毎日同じように取り組むことで、今では自分でスケジュールを確認できるようになりました。このワニワニパニックも見通しが持てることで、最初から最後まで集団に参加できるようになりました。今は友だちとの2人で2回ずつできるようになっているので、取り組みはワニワニパニックのままで、いっしょにやる友だちが変わったり、増えたりしてもできるようにしていきたいと思っています。さてRさんも、いっしょに取り組めるようになるのでしょうか。

「場所」を示す

じゃんぷではスケジュールを示す時に活動場所を表す記号を使っています。

じゃんぷではそれぞれのエリアに「ふくろう」「うさぎ」「かめ」等,子どもに馴染みのある動物の名前をつけています。

それに合ったマークをスケジュールカードにも示し,「どこで学習・活動をするのか」を子どもが見て分かるようにしています。子ども達が自分で見て,移動が出来ることも大切にしています。もちろん程度の差はありますが,定着している子どもの真似をして同じようにスケジュールを見る低学年の子どももいます。

文字を読むことが苦手な子どもでも,マークを見てどこに行けばよいかわかります。どのような子どもでも自立的に動けるような支援をしています。

一緒に考えよう!

先日じゃんぷに来ているJ君と学校で発表する文章を考えました。

学年での行事の中で発表する係になったようです。しかしJ君は意欲はあるものの不安も強い様子です。「先生一緒に考えて~」とお願いをしてくれました。

学年全員の前で発表する文章なので,J君はとても緊張しています。「どんなことを話すか。」と中心のテーマを書き,それをマインドマップにして内容を整理していきました。文章が出来上がっていく内にJ君からもどんどんアイデアが出,「ここはこんな言い方したい。」「ここでこれを言いたい。」と前向きになっていく姿が見えました。

学校生活の中での不安は子どもによって様々です。中には「教室で発表すること,間違えることが不安」という子ももちろんいます。

学習に対しての不安,そして今回のような発表といった行事に対しての不安に対して向き合い,子どもが少しでも安心できるようなことがじゃんぷでも出来ればいいな,と感じています。

山に行きたい!

 ある日のお迎え前の時間に、K君のお母さんから電話がありました。「K君が雷が怖いのですてっぷに行くのを渋っている。」というのです。確かに西のほうを見ると雲がかかっており、夕方からくもりの予報になっています。お母さんが本人に直接伝えさせたいとのことで、職員が電話でK君と話すことにしました。「K君、今日は公園でフリスビーして遊ぶ予定なんだけど来ない? 雷が怖いなら、室内遊びでもいいよ。」と職員が伝えると、意外な答えが返ってきました。

 「山に行きたい。」

 K君とは別グループの活動に山登りがあったので、「山登りに一緒に参加する?」と聞くと、K君は「うん。早くすてっぷに行きたくなってきた。」と答えました。

 その後、K君が来所してきました。来ることを渋っていたような様子は全く無く、ニコニコしていました。職員が「今日は頂上まで行く予定だよ。結構歩くけど大丈夫?」と聞くと、「頂上まで行くと何があるの?」との質問。「頂上から見える景色はきれいだよ。」と伝えると、「そうなんだ。見たい!」と言って、わくわくしている様子でした。山登りに行くと、天気予報の予想よりも早く雲が広がってきて雨も降ってきました。頂上までは行くことができませんでしたが、友達や職員といっしょに楽しそうに下山。その日の振り返りでは、「楽しかった。」と満足している様子でした。

 活動をするにあたって、見通しを持たせることや決まったルーティンがあると、子ども自身が抵抗なく参加できたり不安を解消できると筆者は考えています。いつもなら来所してから個人スケジュールやホワイトボードで視覚的に見通しを持ってもらっていますが、今回は来所前のこと。雷が苦手なK君は西の空の雲を見て、足取りも重かったのでしょう。「すてっぷでは、今日何をするんだろう?」という気持ちも重なって、不安だったと思います。今回は電話で職員とコミュニケーションが取れ、気持ちを受け止めてもらい、見通しを持てたことで来所することが出来ました。

 すてっぷでは、本人の思いや希望を受け止めてやり取りすることで、納得して前向きに活動に向かえるようにしたいと思っています。山登りに行きたい気持ちを受け止めてもらうことでKくんの心が晴れたようで、「今度は頂上まで行く!」と職員に伝えて笑顔で帰路につきました。

 

修学旅行

C君が明日から修学旅行だと嬉しそうに話してくれました。感染症予防のために伸びに伸びた修学旅行がやっと実現するのです。しかも、一泊二日の旅行でホテル宿泊だそうです。発達障害の子どもでよく聞く修学旅行ネタは、不安で行きたくないというものが多いのですが、C君は無茶苦茶楽しみにしています。家族以外と遠くに行けるというのが楽しみだそうです。行先は和歌山方面らしく家族ともいったことがあるところだそうですが、知っているだけに見通しが持て安心していけるのかもしれません。

旅行中の集団行動がうざいとか、宿泊先の相部屋で相手と何を話したらいいのかわからないとか、自由行動で何をしていいかわからず不安だとか、ASDの子どもたちにとって見通しのない旅行は疲れるだけという子が多いのです。そのため、同じ場所に出かけてみる家族もいるくらいです。そこまでして、旅行する必要があるのかとも思いますが、参加しないという選択は普通はできないので、当事者にとっては深刻です。個室を与えてあげれば宿泊のストレスは軽減できるので、参加しやすくなると思いますが、それはそれでえこひいきだと陰口が気になるようで双方が受け入れられません。

そういう子もいるよとC君に話すと、「ふーん大変やね、僕は一日でも家族と別の場所で過ごせることがわくわくするけどな」とバスに一人で乗れないと嘆いたくせに生意気なことを言って、3000円のお土産代をどう使うかの細かな計画を饒舌に語ってくれました。良いお天気でありますように。

下校の切り替え

Z君が下校時のプラットホームで泣いて泣いて動かないという報告がありました。スクールバスに乗ったり、あちこちの放デイに行ったり、お母さんが迎えに来たり、訳が分かりませんというのが1年生あるあるです。泣くと言うのはスクールバスに乗ると言うつもりがあったからです。正しいつもり(見通し)が持てるように工夫をすることができるということです。

これを解決するのは視覚支援です。バスの写真カードを教室で渡されたときはスクールバスに乗り、放デイの送迎車の写真カードを渡されたら送迎車に乗るという経験を3週間続ければ、まず見通しはできるのでつもりはできます。視覚支援がないといつまでも混乱することになります。学校の先生方視覚支援をよろしくお願いします。放デイは送迎車の写真カードを提供します。

でも、スクールバスの行先は家でお母さんが待っています。ゆったり好きなことができます。放デイはこれに勝る魅力をまだ持っていません。知らない人は多いし、思いは伝わらないし、居場所も定まらないし、だめだめです。当面は好きな玩具やおやつを用意して、必要なら送迎車に好きなものを積んでお迎えに行きたいと思います。

 エスクァイア

反抗?

スタッフが「D君は最近自我が芽生えてきたのか、おむつ替えようと勧めるとものすごく怒って反抗します」と報告してくれました。それはどんな時に起こるのか聞くと、音楽絵本を聞いている時や扇風機の羽の回転を見ている時だと言います。そりゃ、怒るでしょうね。

もう一人のスタッフが「オムツと絵本を示して、オムツ終わったらまた絵本していいよと言うと穏やかに受け入れる時もあります」と報告してくれました。それって、自我がどうこうと言っても解決しない問題だという事です。大事なのは見通しではないかなということです。

子どもが言う事を聞かない時の理由として自我の発達を理由にされる方がいますが、自我が発達したら指示に反抗するもので、子ども側の問題だと言っているようにも聞こえます。そうではなくて、指示する大人がこれまで、本人の見通しお構いなしに指示して、本人が何も言わずに従っていたのを、やっと本人が「?」と気が付いたという事です。

言葉が通じにくい彼には、オムツと絵本を順番に示してくれる人には無理やりではないことが分かり、穏やかに対応するのではないかということです。そして、この時期こそスケージュールやワークシステムを教えるチャンスでもあります。絵でなくても2段のBOXにオムツと絵本を入れて上から順に事が終わることを伝えるのです。自我と反抗は決してセット物ではありません。

 

泣くことの理解とトランジッションカード

Jちゃんはようやくスケジュールを見て一日の流れが分かるようになってきました。それでも、何かの拍子に事業所の入り口の前で泣きだすことがあります。おそらく、何かいつもと少しシチューションが違って、見通しが持てなくなる時に泣くのではないかとスタッフで話し合いました。

そこで、トランジッションカード(スケジュールを見てきてねカード)を渡して「今日は何があるかな」と言ってスケジュールボードへの移動を促すようにしました。この作戦で、Jちゃんは、ほとんど泣かなくなりました。要するに、悲しいから泣くと言うより、分からないから泣いていたということです。もちろんJちゃんは言葉がないわけではありませんが、言葉が機能的に利用できることをまだ知りません。それよりも、泣くことで解決した事が多かったのだと思います。たまに要求が実現するので繰り返そうとすることを間欠強化行動と言います。ギャンブル依存もこの一種です。

案の定、公園からご機嫌で帰ってきたJちゃんがまたまた玄関の前で大声で泣きだしました。トランジッションカードをスタッフが渡すのを忘れていたのです。他のスタッフが気付いてカードを渡すと、スケジュールに行っておやつがあることがわかって泣き止んだのでした。ここで重要なことは、毎回繰り返される行動であっても、スケジュールやトランジッションカードが頼りになるということは忘れてしまう子がいるという事です。そして身についた行動(トランジションカードで移動する)が理解を助けるという事です。あべこべみたいですけど、Jちゃんは、わかることができることにつながるのではなく、できることがわかることにつながるのです。行動が認知を助けるのです。

 

 

 

早く帰りたい!

ニューフェイスに新1年生のNさんOさんがやってきました。Nさんスプーンで自分でご飯食べるのとても上手です。Oさんが課題が終わってお昼になると自分のかばんからお弁当出して「いただきまーす」。グッドジョブ!自分でできることがたくさんあります。

でもNさんOさんにしてみれば、今日は、兄さん姉さんたちの騒がしい部屋でいきなり6時間も過ごすの大変だったと思います。せめて絵カードではなく写真スケジュールくらいは示せばよかったです。Oさん何度も脱出を企てたけど阻止されて玄関の前で怒っていました。療育施設ではお昼食べたら帰るルーティンですから、Oさん自分でかばん背負って「なんで帰れへんねん!」って怒るの無理ないです。なんとか視覚支援の方法考えてみます。

待つこと

「待つこと」とは、スタッフに求められていることです。集団指導の時、子どもが何らかの理由で予定に従えなかったり向かうのが遅かったりすることが良くあります。ほとんどは同じ子であることが多いです。そんなとき、大人は「またか」と思ってしまいます。でもそれはきっと従えない子どもの方も「マタカ」と思っているのです。

コミュニケーションが苦手だったり、リーディングマインドが弱いと日課の切り替え場面で混乱する人がいます。理由としては、一つは次に何をするのか分からない場合。二つ目は、やる事は分かっているけど「やらされるかもしれない」という大人の強制力に不安を感じてしまう場合です。三つ目は、その不安を解消する質問や援助や交渉のコミュニケーションができない場合です。

実は一つ目と二つ目は裏表なのです。やる事がわかっていれば自発的に行動を起こしたことで大人に褒められるので、それが動機となって良い循環ができて習慣になります。やる事がわからないと、大人にいつも依存して行動することになり自発行動を行う機会がありません。ややゆっくり行動を始めていても「早く」とか「行くよ」など、現在の行動へのやや否定的な評価が多くなり褒める機会が作りにくいのです。

また、ゆっくりの行動する理由には、見通しがないまま行動をする不安感情があり、促しの指示には「いや」「まだ」「やめて」という拒否が起こり易い心理状態にあります。ここで、「行くよ」「はやく」などと指示しようものなら不安が強ければ強いほど過剰に反応して、表出コミュニケーションの弱い人は拒否するしか方法がありません。子どもの「いや」「まだ」には、切り替え時に見通しが「わからない」不安と「やらされる」不安に満ち溢れています。

「次はこれをするよ。終わったらこれがあるよ」という見通し情報を本人が理解できるモードで示し、気長に待てば、行動を起こした時に褒めることができます。人は行動に自分の利得がある場合にのみその行動が強化されます。同じ行動をしても利得がなければ弱化・消去します。子どもの利得の多くは大人に承認されたり褒められる事ですが、人によっては「お気に入り」の獲得からアプローチする場合もある事を理解しておく必要があります。

「待つこと」で自発行動を重視するのは良い行動を強化(持続)したいからです。そして、その人の理解し易い方法で情報提供できていれば、自発行動は起こりやすくなり、理解しにくい情報提供なら拒否行動は増えるという大原則にいつも立ち戻る事が大事です。