すてっぷ・じゃんぷ日記

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カームダウンエリアは世界の常識

V君が顔を真っ赤にしてプンプン怒って職員に訴えてきました。パソコンのUSBマウスが反応しないと言います。「そうか,使えないマウスもあるから全部試してみてね」と職員が言うと,余計に大きな声で「全部試した!」と叫びます。仕方がないので,V君のパソコンをみると,そもそもUSBのプラグをパソコンのLANジャックに突っ込んでいました。『そら動かんわ・・・』と職員。

「V君。ちょっと頭冷やしてきた方がいいね」と職員は今説明しても理解できないだろうからと,カームダウンを勧めました。「わかった」とその場から離れました。少しして落ち着いた様子でV君が帰ってきたので「さっきの自分のこと振り返ることできるかな」と聞くと,「マウスが動かへんから,マイクラできないと興奮してパニクって,他のマウスを試すこともジャックの位置が違う事も調べんかったけど,どうしようもないから嘘ついた」と言います。

「よく自分の事が振り返れてすごいなぁ。V君良くわかっているんだね。でも学校でもこんなことあるよね。どうしてるの?」と職員が聞くと,「俺,パニクりそうになったら,教室から出て頭冷やそうとするねん」「おお,すばらしやん」「でもな,先生がどこ行くねんって止められるから,余計にごちゃごちゃになるねん」とのことでした。

「そら,先生に事情を説明しなあかんわな。『頭冷やすからどこどこに行くけどいいですか』って言わなあかんわな」と話しながら職員は,『今時,カームダウン支援を知らない先生がいるのだろうか』と思ったそうです。カームダウンすれば,大人が何も示唆しなくてもこんなにクリアに振り返りができるのですから,カームダウンエリアを用意してあげて欲しいものです。東京五輪のような大それた部屋でなくていいのです。廊下の物陰でも教室の片隅でも人の視線を感じない工夫がしてあるだけでいいのです。よろしくお願いします。

東京五輪・パラリンピックピクトグラム(絵文字)の「カームダウン・クールダウン」

なんで?

「最近Q君がタイマーが鳴っているのに無視してやり過ごすんです」とか「Q君みんなと一緒にけった(缶蹴り)とかしようとしないんです」などとスタッフが子どもの行動が理解できないと質問するとき、「なんで?」って聞いたのかと返すようにしています。特にASDの子どもの場合、その行動が不適切なのかどうかも意識していない場合が多いからです。

また、子どもたちに「どうして?」と聞かないスタッフの気持ちには、その場はまずいとか、悪いことだと気が付いていないなら責められたと思い傷つくかもしれないとか気を使っているのです。

その場がまずいなら、さっきのこと後で聞くから教えてねと予告すればいいのです。また、気が付いていないなら「ああ そういうことか」と素直に気が付くか、「わからん」と理解できないかどちらかです。ASDの子どもたちはとても合理的で、理屈さえわかればはっきり言った方が納得するし、逆に遠回しな言い方にはピンとこずかえって誤解をしたりします。

そして、「なんで?」と聞かれることで、彼らが「なんでやろ」と考えてくれる機会を作るところに意味があるのです。子ども達が自分を振り返ってみる機会は、こんなスタッフの問いかけが契機になったりするのです。スタッフには、「ああ、そういう考え方もあるね」という子ども観が広がる機会ともなります。