すてっぷ・じゃんぷ日記

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ボタンキラキラBOX2号機(改良型)

前回、VOCAが使えるようになるには、まずボタンに興味を持つことが必要で、そのための玩具の開発が必要(ボタンキラキラBOX1号機: 04/22)と書きました。しかし、1号機のボタンはパナソニック製で頑丈ではあるのですが、イルミネーションセットのボタンには適していないオンオフ切り替えのオルタネイトスイッチです。また、Rちゃんは机のものはなんでも投げるので固定しやすい安価なボタンを探していました。

探せばあるものです。アーケードゲーム機用の直径6cmドーム型スイッチが12V LEDランプとモーメンタリのマイクロスイッチ付きで460円という手ごろな値段で売り出されていたのです。ボタン自体も押せば光るパターンと押せば消えるパターンの両方の設定ができます。後者は通常ボタンが光ったままで興味は持たせやすいですが電池がすぐに消耗するので前者にセットしています。そしてかごを机にくくりつければボタンは動かすことができないので投げられることもありません。

さて、これでRちゃんにボタン押しに興味を持ってもらう事はできるでしょうか。これでだめなら部屋中がイルミネーションで光るボタンを考えようかと思っています。法人は大赤字なのにヒットしない玩具開発にいくら注ぎ込む気かと背中に突き刺さる職員の眼差しが痛いです。

 

ボタンわんこ2号機

VOCAで行き詰っています。実は前回書いた(VOCAセットできました! 2020/11/03)記事では、ボタンを押すと声が出るという因果関係をいきなり理解するのは難しいから、ボタンを押せば変化が起こることを理解してもらおうと「ボタンわんこ1号機」を作ったのです。でも、「ボタンわんこ1号機」はボタンを押し続けないとわんこが動き続けないので全く興味を示さず失敗しました。

今回はその反省のもとに、リレースイッチをつけてボタンを押せば5~6秒わんこが動く「ボタンわんこ2号機」を開発しました。これはボタンを押すだけでスイッチが入りっぱなしになる自己保持リレーと一定時間がきたら回路を閉じるタイマーリレーの二つを組みあわせたものです。この組み合わせのリレーは「Akozon 時間遅延リレー DC 12V 1〜10秒 タイマーモジュール 遅延コントローラボード 可変タイマー スイッチ」というリレースイッチ名でAMAZONに1種類だけ売っていました。1個1000円とわんこの2/3の価格でしたが他に選択肢がないので購入しました。

さて満を持して開発した「ボタンわんこ2号機」でしたがこれもみごとに撃沈されました。Cちゃんは手が動かせるので、ボタンくらい押せるだろうと高をくくっていたのですがうまくいきません。机の上にあるものは全て床に落とすもの、線状のものは口に入れるという習慣がどうしても邪魔をします。ボタンを机の上にのせると払い落すし、わんこのリモコンコードが見えると口に持っていき噛んで離さないのです。

ボタンは強力両面テープでテーブルに固定し、リモコンケーブルーは手に届くところでは見えないようにカバーしておけば何とかなりますが、わんこの動きを見ようともしないのが何故だかわかりません。周りに大人がいすぎて大人の反応の方が面白いのかもしれません。工夫は続けていきますが固定器にしろカバーにしろマイナーバージョンアップなので成功するかどうか微妙な雲行です。

今後は、「ボタンキラキラBOX1号機」を開発しようと考えています。ボタンを押せばLEDイルミネーションが5~6秒チカチカ光るボタンシステムです。開発費ばかりかかって、なかなかヒットしない。次第にスタッフの視線が冷たくなるのを背中で感じていた。心苦しかった。だが、
「誰もやらないなら、オレがやる・・・」
プロジェクトXの気持ちです。

アフォーダンス

Eちゃんが、なかなかVOCAボタンが押せないのは何故なんだろうという話をしました。Eちゃんは手を振る常同行動があって、それがあるので身体プロンプトでボタンを押させようとしても無理があるというものでした。Eちゃんは物を持つ手としての機能がまだ十分でなく、つかめば投げる、人がいれば叩く(と思っているかどうかは分からない)ようにしか使えないともいうのです。

では、滑り台に登るときEちゃんは手すりを離しますか?と聞くとそれはないと言います。手すりはEちゃんに登ることをアフォーダンスされているのです。アフォーダンスとは与えるとか引き出すという意味です。変化を起こすスイッチは押すことをアフォーダンスするのですが、Eちゃんには音が出るくらいではアフォードされないのだと思います。もっと、圧倒的な変化をスイッチがアフォードしてくれる必要があるのです。

その点、体をアフォードする大型遊具はよくできています(当たり前ですが)。ブランコの鎖はつかむから漕げるし、シーソーのハンドルもつかむから足でけることができます。生活の中のもののアフォーダンスをデザインする事が支援だと言っても過言ではないです。だからどうするって?う~ん。とりあえずは動くおもちゃとかピカピカ光るスヌーズレンボックスのスイッチに押しボタンを使う事かなぁなどと話しています。押し続けられないから、離しても数秒回路がつながっているタイマー回路の制作が難しいのです。う~ん。

VOCAの意味

VOCAは、Voice Output Communication Aidsの略で音声出力会話道具が直訳になるでしょうか。大事なのはOutput(アウトプット)=出力というところです。言葉のない人の音声言語の代わりに使う道具という意味合いが重要です。人は、人から促されて喋ることはほとんどありません。自分が必要な時に自分で喋るのです。

XさんのVOCAの使い方は、先生が手にVOCAを持った時に「おかわり」と、Xさんがボタンを押しに行くという報告がありました。「え?それって『大人がおかわりと言いなさい』と言った時だけ喋れという指導と同じですよ」と他のスタッフが言いました。その通りです。自分から音声出力する=自発性言語を育てるはずのVOCAが受け身(応答性言語)の道具になっているのです。

肢体不自由の人は移動・食事・排泄など依存的になることが多いです。しかし、電子機器などを使えば、自分の意志を伝えることは可能なことからVOCAが生まれました。もちろん最初は身体プロンプト(後ろから手を添えて操作させる)をするなどしてVOCAの意味を教える必要があります。ただ、教え方は自発性を担保する教え方でないと、そばに人がいないと伝えられないとか、VOCAを人に持ってもらわないと使えないようになってしまいます。本人が操作しやすい位置にVOCA専用台を作る等いろいろ工夫して、自分だけの力で操作できる環境を整えようと話し合いました。

VOCAセットできました!

前回「VOCA 09/15」に掲載したように、LさんにVOCAに取り組んでみてはどうかというお話をお母さんにしました。Lさんにはボタンの意味を理解してもらうために、お散歩犬玩具をケーブルでつないでボタンを押せば鳴きながら歩く、手を離すと止まるというセットを作りました。そこからボタンを押せば変化が起こることを伝えようという事です。

それと並行しながら、ボタンを押せば「もっとー」とか「おかーさん」とか「せんせーい」と呼び声を録音して、手遊びをするとか、散歩に出かけるとか、おやつのおかわりをするなどのVOCA(Voice Output Communication Aid)に取り組んでもらいます。何と言っても学校の生活時間が一番長いので、学校で取組んでもらえるようにお母さんからお願いしてもらいます。ただ、おもちゃのボタンなのですぐに潰れるかもです。