すてっぷ・じゃんぷ日記

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弁別と教材

N君がいくつかの要求カードを使うようになってきたので、二つのものを見分ける力もついてきたかととりくんでみました。まずは黄色い▲と赤い■を同じ図の上にのせるマッチング課題に取り組んでみました。(この前に下図のように木型にはめ込んで自分で正解が確認できる教材を示すべきでした)見事にできませんでした。改めてPECSのアセスメントフリー(発達段階にこだわらずに取り組める)の力を見せつけられた感じでした。

N君がカードの中から選んで要求してくるのは、音の絵本・キーボードですがこれには種類があって合計6種類ほど、おやつもシートに貼った合計6種類の中から選び出して要求します。なければブックのほかのページを探して見つけ出すこともします。けれども、無意味な二つのものの弁別は彼にとっては文字通り意味がないのです。私たちが示す弁別課題とは純粋な認知行動ではないのです。子どもは利得があるから正答するのです。そう考えると「あ、ご褒美かぁ」とひらめいたのでもう一度トライすることにしました。

昔、先輩の先生が、子犬を3つのカップの中の一つに隠し、子どもが覚えているかどうかの検査を実施した時のエピソードを思い出しました。それには全く正答しない子が、お菓子を隠すと即座に正答したエピソードです。結局、私たちは子どもの何に働きかけているのかわからずに、教材ができたできないと評価しているかもしれないのです。

 

アセスメント・フリー

言葉のないM君が離れたところにいるスタッフの写真を識別して選び、歌絵本の電池を選択したスタッフに入れ替えてほしいと絵本を持ってきたそうです。また、最近作ってもらったポータトーンの絵を識別して、ポータトーンで遊びたいと要求してきたという報告もありました。

絵カードの識別はPECSのフェイズ3です。通常「~ではなく~だ」という力は言葉の出始める1歳半で確実になってくると言われています。また、M君は視力も聴力も中等度の障害を受けているし、食事や排泄、移動も介助が必要です。でもM君は自分の要求物や、行きたい人の写真を識別して自発のコミュニケーションが取れるようになってきました。

PECSは学習理論(ABA)に基づいたものですから、発達段階や障害の状態からできるできないを最初からは判断しません。小麦抜きをグルテン・フリーというように、アセスメント必要なしのPECSはアセスメント・フリーなのです。強化子さえあれば行動変容は可能というコンセプトは、実践の成果が出ない事を、障害や発達の理由にせず、実践のやりかたに原因を求めていく必要を、支援者に教えてくれます。