すてっぷ・じゃんぷ日記

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言葉と機能的コミュニケーション

Mちゃんが大声で「いやだー」と叫んでいたので理由を職員から聞くと、昨日プールに入ったのが嬉しくて、今日は朝から入ろうと思い込んできたら、朝からプールはないのでつもりが崩れて大声で叫んでいたというのです。Mちゃんの大声は要求のサインなのですが、別に誰かに向かって言っているわけではないのです。大声で叫んでみたらたまたま実現したことがあったのだと思います。Mちゃんは喋るのですが、それが機能的コミュニケーションに結びついていません。

Mちゃんは冷蔵庫に向かって「ジュース」と叫んでみたり、天井に向かって「タブレットー」と叫ぶことが多く特定の人に要求することがありません。気づいた大人は、それに応えて要求を叶えるのですが、特定の大人が要求を叶えていると理解していないので大声で誰かが反応するのを待っている感じなのです。コミュニケーションは伝える人を特定することから始まります。言葉は喋れても機能的に使う事ができないのでMちゃんはとても苦労をしています。

言葉が喋れても、機能的に使う事が難しい人には絵カード要求が効果的です。渡す人を特定するからです。そして渡された人は要求を叶えるだけでなく、交渉もしてきます。「~してから~しよう」「今日はできないけど明日やろう」等の交渉を同じように絵カードで伝える事ができます。一方的な大声を出さなくてもお互いが共有できる視覚情報を使って社会ルールを教えていくことができるのです。PECSは言葉のない人だけでなく言葉はあるけどうまく使えない人にも社会ルールを教えていく第一歩になるのです。何より穏やかに伝えられるのでお互いにとって有益です。この夏はMちゃんの大好きなビニールプール遊びを使っていろんな交渉ができそうです。

 

言葉が喋れるからPECSはいらない?

Wさんが、おやつPECSを始めようとするとBOOKを投げて拒否するとスタッフの報告がありました。そして「おやつください」と言えるのだから、もう嫌がるPECSは取り組まなくても良いのではないかという話です。

カードを投げたりBOOKを投げたりするのは、それが出てくると不利益が起こるからです。あるいはそれを投げると要求が叶うからです。カードを投げた時のシチュエーションは他の子がおやつタイムなのに自分はPECSだったといいます。PECSの練習はおやつ食べるための手段ではありません。たまたま、おやつが好きだからPECSの練習に使っているだけです。WさんのPECS導入の理由は、要求を叶えるために大声を出す噛む、暴れるという表現なので、機能的コミュニケーションを教えるためでした。

今回の拒否は、おやつの時間に他の子は自分のお皿からとって食べているのだから私もそうしたいという「以前の」表現だったかもしれません。つまり、まだまだ機能的コミュニケーションは獲得されておらず、カードのやり取りの「形式」を学んだ段階ではないかと思います。叫べばおやつは出てくるのですから、カードが便利だとはまだ感じていないようです。

なんのためにPECSをしているか?言葉が喋れても大人ではなく、冷蔵庫に向かって大声を出しているだけではコミュニケーションとは言えません。言葉をしゃっべているかどうかが基準ではなく、対人機能的に言葉でもカードでも使えているかどうかです。しかし、ブックを投げつけるとは困りました。保護者の同意があるとはいえ、すてっぷ以外はPECSに取り組んでいないという弱点を抱えつつではありますが、エラー修正の良いアイデアを探したいと思います。