すてっぷ・じゃんぷ日記

タグ:他者理解

人の気持ちになる

みんなでおやつ作りをしていた時の事です。R君がおやつ作りに参加せず、暗い顔をしてソファーに寝そべっていました。当然、他の小学生たちは「R君何してるん?」と声をかけます。それを見ていた2年生のS君がみんなにそっと言います。「R君、さっきブチギレて暴れていたから、自分でカームダウンしてはんねん。落ち着けるまでそっとしてあげてな」と。すると、他の小学生たちも「そうなんかー」と納得してR君に声をかけるのをやめました。

2年生でこんなに上手にカームダウンの説明が他の仲間に出来ていることに職員は驚きました。S君は最近通所してきた子どもで、見かけも実際の言動も穏やかな優しい2年生です。こんなに穏やかな子どもの何が課題なのかわからないと、職員から疑問があがっていました。家庭の主訴によると、学校で友だちにいじられるとブチ切れて、その後自己イメージが悪くなって集団参加ができないとのことでした。なるほど、S君はR君の姿を見て自分を投影していたのです。

大人は、子どもに人の気持ちになってみなさいと言いますが、実は簡単なことではありません。人の気持ちになるには、自己体験と他者の様子を重ねた時が最も深く理解できます。もちろん、道徳をテキストとして理解することは理由や規則を理解する6歳前後の発達の力があればできますが、心情として理解するには自己理解や他者理解の力が不可分です。悲しい体験の心情をS君はソファーで落ち込んでいるR君にかぶせました。「そっとしてあげて」と周囲の仲間に促せたのはS君だからできたのだと思います。そして、そんな体験の多い子どもたちだからすっと理解したのは、嬉しいような悲しいような複雑な気持ちになりました。

理由を考える

悪くないのに「ごめん」て言うか? : 01/20)でのQ君が,Yさんと職員でドッジボールを楽しんでいました。Yさんは鬼ごっこが好きで,「鬼ごっこしたい!」と提案をしましたがQ君がシュン...と黙ったので「じゃあドッジボールはどう?先生と3人でチームを回しながら遊ぼうよ」と別の提案をしてくれました。

するとQ君は「それなら一緒にやろうかな!」と乗り気になり,楽しく遊ぶことが出来ました。

振り返りの時に「今日は積極的に遊んでいたけど何か理由はあるの?」と聞くと「うーん…」と考え込んで,「前に先生が言ったようにルールのある遊びが好きなんかな,鬼ごっこは嫌やけど色鬼とか高鬼は楽しかったし。」と話してくれました。「やっぱりそう思う?じゃあ次鬼ごっこの提案があった時は『何かルールのある鬼ごっこやったらいいよ!色鬼とか!』って話してみたら?」と職員が提案してみると,「ちょっと考えてみるわ。」とQ君は話してくれました。

以前はすぐに「わからん!」と言っていたQ君が自分で理由を考えようとしていたことに驚きました。Q君はナラティブストーリー(ソーシャルストーリー)に取り組んでから時間を守るようになったり低学年の友達と優しく接してくれるようになりました。まだまだ形式的な他者理解ではあるけれど,この理解に支えられて,友達に断るときの「理由を考えてみたら?」という提案が役に立ったのかもしれません。

引き続きQ君と社交マナーの背景にある他者理解に取り組み,ロールプレイなどにも取組んでいこうと思います。

自分のことは分かっている

W君が、新一年生のサポートシートを見て「何々?落ち着きがない?あー俺と一緒や、すぐに立ち歩く、そうやねん俺もじっとしてられへんねん」 なるほど、こういうふうに第3者的に記述してあると、他者のことであっても、自分との共通点はすぐに分かります。でも、人に言われると頑として認められなかったりするのですが、実は良くわかっているのです。※サポートシート=子どもの特徴や支援方法を示したシート。

また、友達と自分の違いも良くわかっていて、「X君、もう2年たつけど俺の名前覚えてへんで、俺も相当物覚え悪いけどX君はすごいなぁと思うわ」と言ってると向こうでX君が「石好きのあいつなぁ」とW君のことを噂している声が聞こえてきました。「なっ。俺のこと『石好き』と呼んでるやろ」人のことも良く観察し、いつも自分と比べているわけです。てことは、私たちスタッフもしっかり観察されているわけです。今度はスタッフの特徴をこっそり聞いてみます。