すてっぷ・じゃんぷ日記

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文字が好きになる支援

R君が最近漫画の本を家で読んでいると聞きました。文字を見るだけで嫌悪感をあらわにしていたR君が漫画の吹き出しを読んでいるというのです。しかも、クリスマスのプレゼントのR君のオーダーは漫画本だそうです。えー字が嫌いだったのではないの?字をみたらイライラするんじゃないの?とこれまでのR君を知っている職員はびっくりです。

以前【発達検査でわかる事:10/20】でも書きましたが、遊ぶ仲間が変わり興味が増えるにつれ自分から文字を読むことが増えた印象があります。その変化に同期して認知力が向上したという知能検査の結果が出たのです。以前ブログに掲載した読み書きに障害のあるドローン操縦士の髙梨智樹さんは、オンラインゲームにハマり知らない相手にチャットを打つのが楽しくてローマ字入力が身についたそうです。R君も友達とマイクラ等でパソコンを使う事が多くなってから文字への抵抗が薄れてきています。しかも、R君には発達性読み書き障害はなかったので上達はあっという間でした。

R君が文字を嫌うようになったのは、スタンダードな文字の教え方をしたからです。通常、ひらがなを教える時、読めたらすぐに書けるように文字を練習させます。これは伝統的な「書いて覚える」という指導法です。R君の場合それがいけなかったのです。R君はASDでこだわりがあります。文字を見ると自分のこだわりで下から書いてみようとしたり、そっくりに書かないと気に入らないのでものすごく書写速度が遅くなり、その分練習量が確保できません。

そして、書き順についても周りの大人が「ちがうちがう」とダメ出しを連発します。ASDの低学年児に「ちがう」「まちがい」「ダメ」「✕」はご法度です。文字の練習のたびにこだわりが認められず、ダメ出しが続けられたR君は「文字なんて嫌だ」となったわけです。ところが、友達と共通の遊びでPCを使ったり将棋に興味を持ったりする中で文字にアクセスしないわけにいかなくなったのです。好きな事なら頑張れたというわけです。

そんなわけで、ひらがなカタカナも簡単な漢字もR君は自学自習で好きなことを支えに自分で獲得したのです。きょうだいの読んでいる漫画も面白いことに気づいたようです。漫画は全て文字にルビがふってあるので知らない言葉でも読めるし、絵で何となく意味がつかめるからです。こうしてR君は今も新しい言葉を仕入れて「勉強が楽しく」なってきたそうです。

周囲の大人はてっきり発達性読み書き障害があると思っていたのです。ASDの特性を考慮していない文字の教え方が原因で、文字を嫌っていたとは夢にも思いませんでした。自分の感情にも気づかず、言葉でもうまく表現ができない低学年期のASD児の行動は大人に誤解されやすいのです。我々も専門家でありながら2年もそのことに気づかず、発達性読み書き障害を疑っていたのですから、R君には申し訳ないと思っています。そして、まさか遊び集団を変えることで勉強が楽しくなるきっかけを作るとは思いもしませんでした。

字が読めることができれば新しい知識はどんどん入ってきます。今回の検査数値の急激な上昇もこのことと無関係ではないようです。もともと、低学年の時も文字を読む力はあったけれど、新しいことを学習する力が弱かったのです。こだわりへのダメ出しに過敏に反応していたのです。ASD児への教え方の王道は好きなジャンルから攻めることです。それは、どの子も同じですが、特にASD児はこの事が重要だと改めて思いました。

好きなものがない?

K君が朝から「食欲ないねん」と言います。昨日も「おなかすかへん」とお弁当に少ししか手を付けないまま一日を過ごしました。聞くと「これから行く習い事が憂鬱だから」だと言います。でも、昨日はその言動のおかげでスタッフ全員から「大丈夫か」「どっか悪いんちゃうか」「そろそろ食べられるか」などと結構注目を集めることができました。

もしかして、K君何か行き詰っている?疑惑が会議で持ち上がりました。K君は高学年にも受けがよく低学年や障害の重い人にも優しい子どもです。でも、K君には好きなことがあまりないのです。体を動かすことや、特定のアニメは好きですが、高学年ではやっているインスタでのカメラ撮影やサッカーや戦国話は興味がありません。かといって低学年の遊具遊びやゲームはもう飽きています。でも、彼が好きなものがなかなか見つからないのです。

何か好きなものを探さないといかんなという話はスタッフ間ではされているのですが、なかなか見つからない中での、今回の出来事でした。

話がしたい

U君が、話がしたくて友達に話しかけるのだけれども、何度も同じ話なので困っているとの報告がありました。U君は、YOUTUBE等も好きなのですがマニアックな話なのでみんながついていけません。それに、話の展開が彼の興味だけで進むので、話をしているというより、一方的に聞かされている感じでしんどくなるというのです。

何かゲームや作品など双方で共有できる意味の枠組みがあればいいねという提案がありました。けれども、U君はゲームの勝ち負けがとても気になる人で、ゲームは話題にしにくいということで没、作品といっても彼は結構不器用なので物を作ること自体好きじゃないということでした。

それなら、彼が昔興味があった写真はどうかなということで、インスタグラムを使う提案がありました。それは名案だとなったのですが、「いいね」の数を気にしだすと大変そうなので、事業所内に写真コーナーを作ってそれを話題にして話をするようにしようということになりました。うまくいくかしら。

余暇を探す

Q君は暇な時間が上手に過ごせません。ブロックを組み立てるとかyoutubeを見るとかキャラクターを並べるとかの興味のあることがあまりないので、大人の注目を集めるようないたずらをします。PCの電源を引き抜いたり、ドアから出たり、仲間の作業の邪魔をします。

余暇の過ごし方は、本人の好きなことを保障します。しかし、好きなことが大人の注目を集めることとなると目が離せなくなります。余暇とは余った暇と書きますが実は大変重要な意味を持ちます。自分の楽しみを実現する時間です。もちろん、対戦スポーツなど人を必要とするものもありますが、基本的には一人で楽しめる活動がないと自立が困難となります。

Q君はロゴや文字などの書写の能力がありそうなので、レタリングやカラーリングの作業が好きにならないだろうかなどと話しています。考えてみれば、本来、余暇の内容は本人が決めるもので、他人が余暇の内容を考えてあげるというのも不思議な感じですが、人がいなくても一人で過ごせるというのは思春期以降の大切な力です。Q君の余暇が見つかるように、彼の強い力を生かせるものを考えていこうと思います。

新入生

車で迎えにいたら、新入生のC君拉致られたと思ったのか、車の中で大泣きです。事業所についてもしばらく泣いていましたが、パプリカをみんなで踊りだすと途端に機嫌を直してニコニコ踊りだしました。好きなことがあるとそれを支えにしたり、みんなと仲良くなれるので大丈夫です。今日はお天気はよかったですが、とても風が強い日でした。ウィルスも一緒に吹き飛ばして欲しいです。