すてっぷ・じゃんぷ日記

タグ:注意喚起

将棋楽しかったよ

P君とQ君で将棋対局です。P君は最近家で将棋のテレビを見て勉強をしています。Q君は祖父とよく将棋をするので経験豊富です。勝負はQ君が勝ちました。やはりQ君の方が何枚も上手で,後半P君は逃げることしか出来ない状況でした。P君に感想を聞いてみると,「楽しかった!」と元気よく言います。「でも勝負は負けたよね。その時の気持ちはどうだった?」と聞きました。P君は「次は勝ちたい,でも楽しかった!」としきりに「楽しかった!」と言い続けました。P君は聞かれていることよりも、自分の関心を言うことが多いです。この時は「楽しかった!」という気持ちが強かったのだと思います。

「次は勝ちたい?」と聞くと,「それはいいからまたあの子(Q君)と将棋したい。」と答えました。彼は以前マイクラで遊んでいる時に他の子が作っているものを壊して遊んだり,設定遊び中に違うことをして「今は違うことしないで!」と他の子に言われることで他者の注目を浴びようとしていました。その結果「P君と遊びたくない~」と訴えてくる子もいました。

今日は対局中「いい勝負してるね!」「前よりも上達したね!」と声をかけられて嬉しそうにしていました。Q君とも「それここに動かすと次取られるで」「でもその後にこれで攻めようと思ってるから」とやり取りをしている姿も見られました。今日は人が嫌がることをして注目を集めるのではなく,ずっと楽しく将棋をしていました。だから彼の口からは勝ち負けよりも「楽しかった!」のだと思います。遊びで不適切な行動をするのは、それが一番注目を集める方法でしたが、適切な方法で注目を集めることが出来たP君は今週も将棋のテレビを見て勉強してくるのだと思います。

禁止型か提案型か?

Pさんは、手すりやガード用の鉄パイプにぶら下がったり滑り台のはしごを反対側からぶら下がるのが大好きです。ただ、心配なのは低緊張の子どもの場合、落ちた時に尻もちをつくと脊柱から頸椎に衝撃が大きくかかり、怪我につながりやすいことです。そうした理由で、Pさんが落下しないように安全に気を付けて欲しいと職員にお願いしたのです。

「気をつけてみてね」とお願いされた職員は、怪我をさせてはいけないと「危ないからそんなことしちゃいけません!」と注意をすることになります。していけないと言われれば言われるほどしたくなるのが子どもの常です。そして、昨日も書いたように、していいことに大人は注目しないが、してはいけないことに大人の注目が集まると気が付きます。そうなると「ちっとも言う事を聞かない子」になるのです。

機能的コミュニケーションの苦手な子どもに「~してはいけません」は百害あって一利なしがセオリー1です。していいことを「~しましょう」と伝えて、実行したら「えらいね」「良く切り替えたね」とほめちぎって注目するのがセオリー2です。

でも、昨日も書いたように、大人の注目を集める方法を大発見したPさんが、そんなやすやすとこちらの指示に従うはずもありません。大事なことは、こんな遊びをしましょうとPさんが好きな固有(筋肉)覚刺激系の力を入れるロープ遊びや坂遊びを開発してみんなで一緒に遊んで楽しいねという経験を積むことです。新しい遊びは教えるために大人が注目していますから一石二鳥です。子どもを「見てね」というのは、監視したり禁止すると言うより、そこに向かわないように新しい遊びを作って一緒に遊ぶということです。もちろん目を離さないで安全を確保する労力は同じですが、禁止型よりも提案型の方が子どもと仲良くなれます。

逃げる子

注意喚起行動については何度も掲載し、この予防方法は機能的コミュニケーションのトレーニングが有効と書いてきました。しかし、言うは易し行うは難しです。今年も利用者の注意喚起行動が生じています。新入生のOさんは、喃語様の発声はありますが機能的なコミュニケーションができません。でも、視覚的な認知は優れていて、構造化された環境では自分がすべきことを理解できます。通所して荷物を置いたり、外から帰って来て手洗い行動などルーティンな行動も教えれば正確にできます。

ところが先週頃からたて続けに注意喚起の逃げ出し行動が始まりました。担当者の視線が外れたとわかるとその場から逃げ出すのです。逃げる行先を考えているわけではありません。追いかけてくれるのを期待した注意喚起行動です。これは、大人に気持ちが向いてきている成長の証拠でもあるのですが、表出言語がない場合に起こりやすい行動で、長い人は思春期くらいまで続く人もいます。こうした不適切行動が起こる前に適切な要求方法を教えられれば良かったのですが、間に合いませんでした。

子どもと長く付き合う人には「本人の言いたいことはだいたいわかるから」となかなかトレーニングの必要性に気付いてもらえません。大事なのは、受け手が子どもの要求を理解することではなく、本人自身が言葉でなくても伝わって便利だと感じて使ってくれる本人側の伝達手段なのです。玩具で遊ぼう・ブランコで遊ぼうと伝えられたら、逃げる必要はないのです。ただ、逃げる行動は遊ぼうと言う表現だけでなくて、子どもにとってはとても魅力的でエキサイティングな遊びですから、注意喚起行動とセットになるとそう簡単には消去できないです。でも体が大きくなってどこまでも逃げられるようになると魅力的だから仕方がないとは言っていられません。

大人と遊びたいときに逃げれば、大人が振り向いてくれる確率は高まりますが、戸外や道路では危険な行動です。室内でも外に逃げる方が大人のリアクションが大きいので強化されやすいです。しかも、分化強化されやすい(たまに逃亡が成功するから何度も繰り返す)行動なので、大人は四六時中注目せざるを得なくなり、更に悪循環を形成していきます。Oちゃんには、PECSを導入しましょうと御家族と話していた矢先なので、家族の方にもトレーニングを受けてもらい、取り組みを開始したいと思います。

好きなものがない?

K君が朝から「食欲ないねん」と言います。昨日も「おなかすかへん」とお弁当に少ししか手を付けないまま一日を過ごしました。聞くと「これから行く習い事が憂鬱だから」だと言います。でも、昨日はその言動のおかげでスタッフ全員から「大丈夫か」「どっか悪いんちゃうか」「そろそろ食べられるか」などと結構注目を集めることができました。

もしかして、K君何か行き詰っている?疑惑が会議で持ち上がりました。K君は高学年にも受けがよく低学年や障害の重い人にも優しい子どもです。でも、K君には好きなことがあまりないのです。体を動かすことや、特定のアニメは好きですが、高学年ではやっているインスタでのカメラ撮影やサッカーや戦国話は興味がありません。かといって低学年の遊具遊びやゲームはもう飽きています。でも、彼が好きなものがなかなか見つからないのです。

何か好きなものを探さないといかんなという話はスタッフ間ではされているのですが、なかなか見つからない中での、今回の出来事でした。

注意喚起も強化子に

C君がゲラゲラ笑ったり大きな声を出して自立課題をしているといいます。「今日は、来た時からテンションが高かった(興奮していた)」「だんだん収まってきたが利用者が増えてくるとまた声が大きくなった」「テレビのコードなども抜くので音がうるさいのではないか」スタッフの言いたいことは2つです。「調子が悪いから声が大きい。音がうるさいから不適切な行動が出る。」ということです。

この論は対応するスタッフには問題はないというものです。子どもの不適切行動の大半は親や大人に向けられているものです。子どもの不適切行動が起こったら、まず大人の対応を振り返る習慣が必要です。誰にだって快・不調の波はありますし、ざわざわしてるところはいらいらするものです。しかし、だからっと言って大声をあげたりコンセントを抜いたりはしません。コミュニケーション能力があるからです。

でも、不適切な行動を繰り返している子どもには、こうした注意喚起行動が大人を引き付けるのに手っ取り早い方法となります。こうした行動が予測されるなら、一緒に座って作業を教える場面を作って「大人の適切な注目」を得る場面を作ったほうが安定してくるものです。「やることがないから」注意喚起するという理由で自立課題を与えたりするのは逆効果です。注目を得たいのですからスタッフの適切な注目を強化子にする課題を考えるべきなのです。