すてっぷ・じゃんぷ日記

タグ:視知覚

100マス計算

J君の宿題に一桁の加算で百ます計算が出ていました。教員経験のあるものは懐かしい思いで見ていました。J君は繰上りのある加算も得意です。ます計算は教員にとって忙しい時にも役に立ちます。縦横10個の数字を書きクロスした左上に加減乗除の記号を入れたら100問のトレーニングができるからです。子どもによっては10個の数字を減らせばその子の耐性に応じて出題数を調整できます。

また、普段はランダムに数字を並べるのですが、たまに数字を順序数で縦横同じ数字で出題すると加算の場合は、全て端から順番に順序数が並ぶ法則を掴んで計算せずに仕上げることに気が付く子がいます。そのほかにもかけ算なら対角線より上と下の答えが対象になることに気づいてきます。この力が観察できれば、法則を掴む9歳ころの発達に差し掛かったなと考えることができます。ただこれは直接観察が必要ですから保護者にお願いしたりします。

しかし、注意したいのは学習障害など空間認知の弱い人は縦横の位置が取れずその位置を特定するだけで、学習パワーの8割がたを使ってしまい、残り2割で計算するはめになります。空間認知力や視知覚の弱い人には一行ずつ見えるようにスリットなどのツールを与えることが大事です。このチェックを怠ると、子どもによってはせっかく計算ができても、とても時間がかかってしまい地獄の苦しみを与えることになります。子どもは、他の子はできているから、自分に努力が足りないと思ってしまい自尊感情を下げてしまいます。百ます計算出題者は子どもの凸凹の特性にご注意ください。

板書を見ながらの作業

登り人形「7/24 登り人形」の工作をしました。W君はお喋りが上手で記憶力も優れた子どもです。スタッフから、登り人形の作り方をホワイトボードに丁寧に書いているのに、W君全く違うものを作るのでなんでだろうという話がありました。手元の手順書で仕事を進めるのと、板書を見ながらの作業では天地の差に感じる子がいるのです。

発達性協調運動症(障害)については前回「11/22 発達性協調運動障害」で掲載しました。それには様々な原因がありますが、原因の一つである「見る力」について考えます。日常生活の中で、不器用さに悩んでいる子どもは意外と多いのです。のりを使えば手や机までベトベト・・・。ハサミで画用紙を切ったらガタガタ・・・。折り紙を折ればぐちゃぐちゃ・・・。これは手先の問題ではなく「見る力」に問題があるのかもしれません。

1.両眼視の問題
左右眼の視線を揃え、右目と左目に移った像を重ね合わせて一つの映像として知覚し、遠近感や立体感を捉える眼と脳の働きのことを「両眼視」といいます。この機能がうまく働かないと、遠近感や立体感を正しく把握することができないため不器用さにつながります。
2.視知覚・視覚認知の問題
形や空間の情報を分析し、それらの刺激を過去の経験に照らして解釈する力のことを「視知覚・視覚認知」といいます。この機能がうまく働かないと、遠近感や立体感を正しく把握できず、不器用さにつながります。
3.目と手の協応の問題
目から取り込んだ情報と連動して、手や身体の運動を調整する力が弱いため、正確で素早い動きができず、不器用さにつながります。視覚と運動の連動をトレーニングする「7/16 ビジョントレーニング」が効果的です。

このように、「見る力」と不器用さは様々な点で関係があることが分かります。日本では、見え方=視力と考えてしまいますが、視力がいくら良くても、視覚機能に問題があるケースも多いです。米国、カナダ、ヨーロッパには、オプトメトリストといった、視覚機能の検査・訓練を行う専門職があり、国家資格になっています。日本ではあまり聞かれませんが、アジアでも、フィリピン、韓国、中国など、オプトメトリストが認められている国、認められつつある国があります。米国では、視覚機能に問題があるために学習能力を発揮できない子どもたちや、視覚機能に問題があったり、より視覚機能を高めたいスポーツ選手、また、一般の人でも、見え方に何か異変を感じたら、まずがオプトメトリストのクリニックを訪ねるのが当たり前になっています。

私たちは調理など手順が必要なものは一人一人手順書を渡しています。それは手順を覚えておらず、作業速度が各人違うということもありますが、板書まで視線を移動させて視覚情報を短期記憶して保持したまま手元の作業に戻るということが難しい方が多いからです。もちろん板書だけで理解できる子もいますが視知覚や短期記憶が苦手な人に合わせて準備しておけば誰も困らないわけで、これが障害者差別禁止法に定められている合理的配慮(特定の障害者を対象としている施設ではただの準備不足)です。