すてっぷ・じゃんぷ日記

タグ:構造化支援

おやつのワークシステム

小学生のグループ指導でのおやつタイム。じゃんぷのおやつタイムは、栄養補給や休憩という意味合いより、自己選択やコミュニケーションの指導の機会です。とはいえ、子ども達にとっては楽しみなひと時。皆、このときばかりは遊びからの切り替えも良く、イソイソと用意をしてくれるのですが。自分のお皿を取って、水筒を用意して、おやつを選んで、手の消毒も…。と、おやつの準備には意外にたくさんすることがあります。

…となると、待っているのは、それぞれの動線が錯綜する、ぶつかる、腕が当たる、順番の小競り合いになる、手順が抜ける、気が逸れる…おやつが口に入るまで、長い道のりです。コロナ禍の中、接触が増えるのも避けたい。消毒など、忘れてほしくない手順もあります。

そこで、おやつの準備が、子ども達にわかりやすく、スムーズにできるように、ワークシステムを導入しました。といっても、用意したのは、机の上に敷ける布製の長いキッチンマットだけ。そこに、左から右に数字を書いて、準備の順番を示しました。あとは、実際に使うものを、そのマットに並べるだけ。このアイデアは、以前、TEACCHプログラムのインストラクターの方が講師をされた講習会で、『コンテナ式』というやり方を聞いたのをアレンジしたものです。就労支援などでもよく使われているそうです。

これは、子ども達にとてもよく理解してもらえ、①消毒 ②お皿を取る ③自分の水筒を取る ④おやつ選び、という流れが、順良く、抜けず、スムーズにいくようになりました。指導員の注意や声かけも激減し、自立的な準備場面になりつつあります。実際には、④番の、箱に入ったおやつは、指導員と一対一でチケット引き換えで選択してもらうので、4番目の手順というよりは、『終わったら次に何をするのか』というワークシステムの4つ目の要素、次の見通しのための手がかりとなっています。子ども達は、④におやつの箱が置いてあるのを見ると、『最後はおやつを選ぶのだ』とわかって、座って静かに職員の説明を待っています。

準備に余裕が出来たので、最近は、トークン制で“お手伝い”もしてもらっています。布の上に並べる物を、元の場所から集めてきてもらったり、机ふきをしてもらったりしています。布の1枚で楽に準備できるワークシステムは、準備する側にも、準備してもらう側にも、とても便利だなあと思いました。

構造化支援にまつわる現場「あるある」

構造化支援とは、簡単に言えば視覚(またはその人の得意な知覚)情報が取り入れやすいよいうに工夫された支援と言えるのかもしれません。ビギナースタッフから、この支援を見て「冷たい感じがする」という感想を言われたことがありました。ベテランスタッフなら必ず出会う現場「あるある」です。

視覚支援を優先させたいとき、聴覚情報がノイズになって邪魔な場合があります。従って、何も知らない素人さんが見た目には「声かけもしないで、絵カードだけで指示とか、手をもってカードを取らせてスケジュールを教えたりするのは、人として冷たいんじゃない?」のような、感想を持たれることがあります。

私たちは、視覚や聴覚、または触覚から情報を入れる時、自動的に集中すべき感覚に切り替わります。あるいはカクテルパーティー効果と言って、賑やかな場所で選択的に声を聞き取る力も持っています。しかし、同じレベルで様々な情報が入ってくればどの情報も取れなくなります。たとえ頑張って情報をとったにしても、それではあっという間に疲れ果ててしまうでしょう。私たちが支援している知的障害や発達凸凹のある子どもの実態は、聴覚情報が苦手かもしくは注意の切り替えや選択が難しい子が多いのです。

賑やかに楽しそうに声をかけることが、その子にとっては苦痛なこともあるのです。私たちも物事に集中したいとき「もう!声かけないで!」という事があります。要するにビギナースタッフさんは、こうした障害や心理現象を学んでいないので、こうした支援が想像できないだけなのです。

逆に、こうした支援が子どもへの「標準支援」だと思い込んで、どんな子どもにも無頓着に同じ支援をするスタッフもいます。これも、構造化支援の意味を理解していないのです。このスタッフが大勢いると、どの子も同じスケジュール、同じパーティション、同じカードが使われ、一律「なんちゃって構造化支援」が行われます。そして、先の冷たく感じるスタッフとなんちゃって支援スタッフが鉢合わせると、双方に誤解が生じて対立するのも、現場のよく「あるある」事件です。ベテランのスタッフは「もーちょっと勉強してから張り合ってね」とため息をついているのも、現場「あるある」です。