すてっぷ・じゃんぷ日記

タグ:視覚支援

合理的配慮

読み書きの合理的配慮について調べていた時興味深い資料があったので紹介をします。

【読み書きに苦戦する子どもたちのために~ディスレクシアと合理的配慮~】

上記のリンクではディスレクシアの当事者の話や,教室で出来る様々な合理的配慮について紹介をしています。興味のある方はぜひ読んでみてください。

さて,筆者が特に気になったのは視覚認知の困難の項目とそれに関わる合理的配慮です。視覚認知が困難な子どもは文字が歪んで見えたり揺れて見えたりすることがあります。そういった子どもへの合理的配慮として,文字のフォントについてのことが書いてありました。

「 プリントを作成するときには、認識しやすく、実際に筆記する形と近い形のフォントを選択する。」とあります。筆者が教員時代,学級通信や夏休みの宿題等,プリントを作成する時に「可愛いフォントの方がいいだろう!」という単純な思考でプリントを作っていました。その時に学年主任の先生から「(筆者)先生のクラスの〇〇さんは視覚認知に困難があるんだから教科書体の方がいいんじゃない…?」と教えてもらったことを思い出しました。

わかっているようでわかっていなかった,と感じた瞬間でした。下記の画像のようにユニバーサルデザインの書体もあります。細かなことに気をつけながら学習支援をしなければならない,と感じた時のことを改めて思い出しました。

 

 

「場所」を示す

じゃんぷではスケジュールを示す時に活動場所を表す記号を使っています。

じゃんぷではそれぞれのエリアに「ふくろう」「うさぎ」「かめ」等,子どもに馴染みのある動物の名前をつけています。

それに合ったマークをスケジュールカードにも示し,「どこで学習・活動をするのか」を子どもが見て分かるようにしています。子ども達が自分で見て,移動が出来ることも大切にしています。もちろん程度の差はありますが,定着している子どもの真似をして同じようにスケジュールを見る低学年の子どももいます。

文字を読むことが苦手な子どもでも,マークを見てどこに行けばよいかわかります。どのような子どもでも自立的に動けるような支援をしています。

お話がしたい!

じゃんぷに来ている3年生のA君は個別学習の時間,初めに「A君の話したいことを話す。」という時間を設けています。

A君は「暗黙の了解」のような目に見えないルールを感じ取ることが難しく,喋りたいことが思いつくとどんな状況であろうと話を始めてしまいます。

なのでA君は「ちょっと話したいことがあります。」と言う練習と,スケジュールの中に「A君のおはなしタイム」というものを作っています。お話をすることと,切り替える時間を視覚的に示して個別学習の時間に取り組んでいます。

決められた時間お話をし,スケジュールを示しながら「じゃ,勉強しよっか!」と指示されると,「わかった!」と言って黙々と学習に入ります。その時に「よく出来たやん!終わったらまた話聞かせてな。」と褒めています。時々「先生、あのな~」と話し始めることもありますがスケジュールを見せて「また話せる時間あるからね。」と示すと「そうだった!」と学習に戻ることが出来ています。

本人がわかるスケジュールを示すことと,それが出来た時に褒めることは学習の場面でも活用できます。先日A君は工作の話をしてくれました。次はどんな話が聞けるのかな?

強化子を探そう

C君が設定遊びの時に椅子に座らないので、どうしたものかと困っていました。するとC君がうろうろしながら本棚から絵本をとったのです。これは使えるかもと思い立ち、その絵本を渡してもらい、設定遊びが終了したら絵本を渡すという設定をしました。設定と言っても、まだスケジュールが良く理解できていないので、絵本の実物を職員が持ったままゲームを行い、C君が1回ゲームが終わるたびに絵本を渡すという方法をとりました。

するとC君何もなかったかのように椅子に座り自分の順番を待つ様になりました。恐るべし強化子の威力です。100の「座りなさいよ」の言葉かけより、100の身体誘導より1回の強化子提示で、交渉が成立するのです。私たちは視覚支援が大事だと何度も言いますが、合わせて行動の強化子(ご褒美)を鵜の目鷹の目で探すことが支援の第一歩だなと改めて感じています。

「ご褒美で釣っても、ご褒美がなくなれば動かない子になる」という人がいますが、言葉かけや強制力だけでは変わらない子どももいます。意味のわからない言葉かけや、大人の距離が詰まると自分の行動が制限されると誤解し大人を信用しなくなると双方が困ります。ご褒美だろうが何だろうが、自己決定した行動は強力です。強い自発行動が起これば、ご褒美=強化子はやがて賞賛の言葉に代替できるチャンスがあります。このプロセスを私たちは大事にしたいのです。

視覚支援

Nちゃんが「公園に行こう。」と誘われても「嫌だ~」と言っています。状況はNちゃんがスケジュールを確認後,他の子がゲームをしている様子が目に入り,そちらに向かってしまった,という経緯です。

Nちゃんは小学校支援級の子ども達が外遊びやゲームをして盛り上がっているのを見ると「楽しそう!」と思って参加しようとする姿が見られます。

そちらに意識が向かい,スケジュールのことを忘れてしまったのでしょう。職員から「スケジュール見たでしょ,公園に行くよ。」と言われても「スケジュールを見たこと」を忘れているので言葉で言われても何が何だかわかりません。

口で言っても埒が明かないのでNちゃんのスケジュールをもう一度見せました。すると「行ってきまーす。」と準備を始めました。

自分のスケジュールを確認すると「あ,そうだった。」と思い出しました。

耳で聞いたことを頭の中で整理して情報を理解することは意外と難しいものです。Nちゃんは言葉は発するので「口で言っても動けるだろう」と思っていまいますが,案外理解していないことの方が多いです。

しかし視覚的に支援すると耳で聞くよりも目で見て「○○をする。」「○○君(さん)と一緒に遊ぶ。」等の情報が入りやすいです。初めからそれをしておけばNちゃんも「嫌だ~」と言わずに済みました。視覚支援は当然のことですが,改めて大事な事だ,と感じました。ごめんねNちゃん!