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ドキュメンタリー映画「帆花(ほのか)」 重い障害児と家族の日常

ドキュメンタリー映画「帆花(ほのか)」 重い障害児と家族の日常

2022年1月28日 【中日新聞】

生後すぐに「脳死に近い状態」と告げられた西村帆花さん(14)。人工呼吸器やたんの吸引などの医療的ケアを受けながら、さいたま市の自宅で両親と暮らしている。「帆花がいること自体が喜び。生活は幸せに満ちている」と母親の理佐さん(45)。そんな家族の日常を描いたドキュメンタリー映画「帆花」が、全国で順次公開されている。(佐橋大)

今月中旬、理佐さんがオンラインで取材に答えてくれた。画面に映る理佐さんの後ろで、人工呼吸器を付けた帆花さんが横になっている。ベッドの周りにはたくさんのぬいぐるみも。ヘルパーがせわしなく帆花さんのたんを吸引したり、体を拭いたりする。吸引は多いときで約十分おきに必要という。

「一日は、あっという間。その間に、帆花はサチュレーション(血中の酸素飽和度)のアラームを鳴らしたり、表情を変えたりして、いろいろなことを伝えてくれる。お互いに分かり合おうとするコミュニケーションの広がりが楽しい」。理佐さんはほほ笑む。

帆花さんは生後九カ月から自宅で生活してきた。現在は障害福祉サービスにより、三人のヘルパーが交代で週に約四十時間、帆花さんのケアに対応。残りの百二十時間以上は、理佐さんと夫の秀勝さん(45)が分担している。週三日は帆花さんが在籍する特別支援学校の先生が訪れ、一回百分の授業を実施。別の場所で訪問教育を受けている友達とオンラインを通して一緒に学習することも。帆花さんは週二回の訪問入浴サービスや、体を動かすリハビリも受けている。

厚生労働省によると、日常的にたんの吸引や経管栄養などの医療的ケアが必要な子どもは推計約二万人。昨年九月に親の負担を減らすため、医療的ケア児が通う学校に看護師を置くことなどを自治体などの責務とする医療的ケア児支援法が施行された。

しかし、帆花さんのような重い障害児のケアは誰でも簡単にできるわけではなく、ヘルパーや看護師など支える担い手が不足している。帆花さんの場合、熟練したヘルパーでないと、帆花さんが求めることが正しく理解できず、逆に体調を崩してしまうこともある。そのため、短期入所など施設でのサービスは使えない状態という。

「医療的ケアが必要な子も一人一人違う。その子がどう生きていくかという子ども側の視点で考えて、ケアに関わってくれる人が増えてほしい」と理佐さん。「帆花も一人の子ども。自分の望む生き方を普通に選べ、実現できるような世の中になればいい」と願う。

命の喜び かみ締めて
映画では、帆花さんが三歳の時から特別支援学校小学部に入学するまでの家族の歩みが映し出される。両親は、言葉を発しない帆花さんの表情などから“思い”を感じ取り、帆花さんを喜ばせたいとプレゼントを買い、動物園に連れて行き、誕生日を祝う。

理佐さんは「帆花がいてくれることで生まれる出会い、さまざまな経験を共有できる喜びもある。『いのちがある』ということのありがたさを常に感じ、ささやかな幸せを毎日かみ締めている」と話す。

※映画「帆花」は72分で、東京都中野区のポレポレ東中野で上映中。名古屋市千種区の名古屋シネマテークでは2月5~11日に公開予定。その他の上映スケジュールは映画の公式サイトへ。

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支援学校の訪問教育は、移動させることが生命のリスクになる子どもたちの教育も担っています。在宅の子どもの場合、訪問してくる教員と在宅ケアをする看護師とヘルパーくらいしか外部の人との接触はありません。見過ごされがちなのは介護する家族も子どもから離れる事が出来ないので、外部の人との接触は限定されています。まして、感染症が流行し始めると感染症が命取りになる子どもたちも多いので、訪問する人も極力制限せざるを得ません。もちろん、家族も同じです。

そんな中で、訪問教育の教員は早い時期(10年以上前)からリモートで学校の教室と子どもと家族をつないできました。今、感染症でリモート授業が当たり前になることで、様々な子どもと交流する時間は逆に増えているとも言えます。教室のモニターに映し出される訪問を受ける子どもや家族の姿を多くの人が知るようになったとは言え、まだまだ一般には知られてはいません。コロナ感染が収束して大勢で鑑賞できるようになって、この映画上映が成功することを祈ります。

ドキュメンタリー映画『帆花』

京都みなみ会館 2/25(金)~

〈独自〉濃厚接触は学校判断、休校減へ 大阪府教育庁

〈独自〉濃厚接触は学校判断、休校減へ 大阪府教育庁

2022/1/26 【産経新聞】

新型コロナウイルスの変異株「オミクロン株」の感染拡大を受け、大阪府教育庁は26日、府立学校の生徒らの感染が確認された際、濃厚接触者の判断を保健所ではなく学校で行う対応に切り替えることを決め、各学校に通知した。保健所の判断を待つための休校措置を減らし、学校活動を継続しやすくする。27日から運用する。

従来は感染が確認されると、学校で濃厚接触の可能性のある生徒や教員を調べて保健所に報告した後、保健所が濃厚接触者を特定するまでは休校としていた。保健所によっては特定に時間がかかるほか、明らかに濃厚接触者がいない場合でも、保健所の判定まで休校しなければならなかった。このために何度も休校を繰り返す学校もあり、現場から改善を求める声が上がっていた。

27日からは、陽性者に加え、学校が濃厚接触者と特定した生徒のみを出席停止とした上で、休校せずに学校活動を継続する。その上で、直近3日間で陽性者と濃厚接触者が学級の15%以上に及ぶ場合は学級閉鎖▽複数の学級が閉鎖するなど、学年内で感染が広がっている可能性が高い場合は学年閉鎖▽学校内で感染が広がっている可能性が高い場合は臨時休校-とする。府立学校だけでなく、府内各市町村や私立学校にも参考として通知する。

府教育庁の担当者は「生徒の行動を一番把握しているのは学校。各学校はこれまでの保健所とのやりとりで、濃厚接触の判断のポイントもよく分かっている」としている。(藤井沙織)

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感染者より長い濃厚接触者の待機期間「なくすことも検討を」

2022/1/26 【産経新聞】

新型コロナウイルスの新変異株「オミクロン株」が急拡大する中、感染者の濃厚接触者の待機期間について、見直しを求める声が強まっている。感染者と最後に接触したタイミングによっては、感染者の療養期間より長い最大20日間の隔離が求められるためだ。医療や介護、保育など社会機能の維持が困難になっているとして、大阪府の吉村洋文知事は26日、待機措置そのものの撤廃も検討すべきだとの考えを示した。

最大20日の隔離
厚生労働省によると、感染者は発症翌日から原則10日目まで療養。最後の3日間で回復していれば10日目をもって解除される。

一方、濃厚接触者は感染者の陽性判明後に自宅待機となり、感染者との最終接触後10日間の隔離が原則。例外として医療従事者は毎日の陰性確認を条件に出勤でき、医療従事者以外のエッセンシャルワーカー(社会機能維持者)は最終接触後6日目にPCR検査で陰性となれば解除される。

全国の新規感染者は連日、過去最多を更新し、濃厚接触者も膨大な数に上る。保育所の休園が相次ぐなどして社会活動の継続は困難になりつつある。岸田文雄首相は25日の衆院予算委員会で「科学的な知見を尊重し、社会経済活動を回す観点から待機期間の短縮を検討することが大事だ」と述べたが、吉村氏は26日、「濃厚接触者が仕事に行けず、医療機関や高齢者施設で人員が不足している。早く決断してもらいたい」と危機感をあらわにした。

府内では療養先を調整中の事例を含め、自宅待機患者が26日時点で5万6千人を超える。吉村氏は「数が増えてきたときは、濃厚接触者の待機期間をなくすことも考えるべきだ。緊急の対応として医療や介護、保育(従事者)は仕事ができる環境(を整えること)が必要だ」と述べた。

子が感染、親の待機は・・・
現行の新型コロナウイルス対策上、感染者と濃厚接触した人は検査での陰性確認を条件に、最後の接触から最短で6日目をもって自宅待機解除となる。感染者の陽性判明直後に接触を断てば早期の出勤も可能となるが、子供が感染した場合、同居する親の待機期間は長期化を余儀なくされるケースが少なくない。

「感染した娘より、濃厚接触者の親のほうが待機期間が長いなんて」。大阪市福島区の男性会社員(44)はこう憤る。

男性は妻と小学3年の長女(9)、保育園児の次女(5)の4人暮らし。17日朝に長女と次女が39度台の高熱を出し、近くの診療所の検査で陽性が判明。担当医から家族全員が自宅で待機し、保健所の連絡を待つよう指示された。

夫妻はともにエッセンシャルワーカー。娘2人は順調に回復すれば27日に療養解除、翌28日から学校や保育園へ通える。だが濃厚接触者である夫妻は27日を最終接触日として、さらに6日間の待機を求められる。2月2日の陰性確認後、翌3日に出勤できる計算だ。

区役所からは、男性か妻のいずれかが娘2人と厳密に部屋を分けて生活すれば最終接触日を前倒しできると助言された。しかし男性は「小さい子は関係なく部屋に入ってくるし、狭い家での隔離にどれだけの意味があるのか。感染したほうが早く社会復帰できる運用は、ちぐはぐに感じる」と疑問を呈す。

その後、待機を続けた男性は今月21日にのどの痛みなどを感じ、翌22日に陽性者となった。2月1日から出勤できることになり、結果的に復帰の見通しは早まった。

社会機能まひのおそれ
なぜ濃厚接触者の待機期間は感染者より長く設定されているのか。大阪健康安全基盤研究所(大安研)によると、感染者は発症後10日目までは他人にうつす可能性が捨てきれないため、濃厚接触者は感染者との最終接触日を起点にさらなる隔離が必要になるという。

大安研の朝野(ともの)和典理事長は「感染者数がインフルエンザ並みに増えており、現行の運用では社会機能がまひする」と指摘し、重症化しにくい若者と高齢者らリスクの高い人とで措置内容を変えるなど、メリハリのある対応が必要との見解を示した。

濃厚接触した医療従事者は毎日のPCR検査で陰性となれば出勤可能だが、大阪市立総合医療センター感染症内科の白野倫徳(しらの・みちのり)副部長は「検査に時間がかかり、現実的に難しい」と話し、3回目のワクチン接種を終えた医療従事者は隔離の対象外とすべきだとした。

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子どもが濃厚接触者として特定されたとき、家族全員が「濃厚接触者の濃厚接触者」だから園や学校に来てくれるなという管理者の判断は間違いだと、昨日ブログに書きました。二つ目の記事は感染したほうが濃厚接触者より復帰が早くなると言う矛盾を書いていますが、保健所の言う筋は通っているのでまだましです。一つ目の記事で、吉村知事が濃厚接触者が多すぎて保健所業務の肝心なところが止まってしまうので、学校で判断すれば済むことは学校に任せようと合理化したのは理解できます。しかし、学校に判断を任せなくとも先のような保健所でもできない規制を「協力」の名のもとに強いている様子を見ていると少し不安になります。

二つ目の記事は、エッセンシャルワーカーが濃厚接触者になるたびに休んでいては社会機能が止まってしまうという記事です。首相は「検討する」ばかりを繰り返し、混乱の根本になっている感染症類型の政令変更を行わないまま、小出しに規制を緩めるだけなので、このままで日本社会は大丈夫かと訝る人が増えているという話です。インフルエンザ相当の5類に引き下げて、ワクチン接種の推進だけに力を注げば事態は一気に改善できます。トップが間違いを正さないのですから下々の間違った判断が正されることはありません。

そんな、大人の話の中で、子どもの教育権が理不尽な「協力」の名のもとに奪われているのです。そしてこの間違いはだれも責任を取りません。「正義」のためにやったのだから、免罪されていいという理屈です。しかし、科学的でないことは正義ではありません。感染力が強いという事は、無症状の感染者が多いと言うことです。感染感受性のある人は症状が出ますが、感染感受性の弱い人は症状が出ません。しかし、症状がなくても感染させることはできます。こうして、感染感受性の高い人だけ隔離しても症状のない人は隔離しないのでどこまでも感染は増え続けると言うのが今回の感染急上昇の仕組みです。中国のように無症状の人も全て検査し陽性者を全て隔離するなら話は別ですが、社会機能がマヒする事には目をつぶらなければなりません。

障害ある子どもにオンライン家庭教師を 津田塾大プロジェクトがCF

障害ある子どもにオンライン家庭教師を 津田塾大プロジェクトがCF

2022年1月26日 【朝日新聞】

障害や学びにくさを抱えた子どもたちの学習を支援する津田塾大学(東京都小平市)のプロジェクトが、無料で利用できる「オンライン家庭教師」の実現を新たにめざしている。4月の本格的な開始に向け、クラウドファンディング(CF)で運営費を募っている。

準備を進めているのは、同大インクルーシブ教育支援室の柴田邦臣教授(48)が代表を務める「学びの危機プロジェクト」(通称・まなキキ)。2020年春から、コロナ禍の中で学習意欲がそがれたり、急速に進んだオンライン学習についていけなかったりする子どもたちに、ネット上の教材などを紹介するサイトを開設(https://learningcrisis.net/別ウインドウで開きます)している。有志の学生や院生らによる活用方法のガイドもあり、平易に、楽しく取り組めるように工夫してきた。

オンライン家庭教師を企画したのは、同大院生の浜松若葉さん(26)を中心とする大学生たち。子どもたちとオンラインでつながって学びを支えると同時に、コロナ禍で教える経験を積む場を失った学生たちにその機会をつくり、運営費からアルバイト代も出す計画という。

利用者として想定するのは、発達障害や学習障害があったり、不登校など学びにくさを抱えていたりする小学1年~中学3年生。学習を支える学生は、同大生を中心に他大学からも募集し、4月の本格的なサービス開始を予定している。

浜松さんは「障害のある子どもたちの学びを守るという趣旨に賛同いただけたらうれしい」と話す。

CFでは、障害者らの就労支援をする沖縄県の自家焙煎(ばいせん)コーヒーを主な返礼品に選んだ。CFへの出資を通して、子どもと学生、障害者の就労支援と幅広い社会貢献につながる形だ。

CF(https://www.makuake.com/project/manakiki/別ウインドウで開きます)は2月27日まで。問い合わせは同プロジェクト(050・6878・2585)。(井上恵一朗)

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一般家庭で学習塾に費やされる費用は、2018年の文科省調査では公立小学校在籍児童の平均で13万6000円です。約4割の家庭が月1万円を出費しています。公立中学校在籍生徒の平均では29万3000円。約7割の家庭が月2万5千円を出費します。もちろん発達障害の子どもたちもこの中に入っているはずですが、集団での学習では成果が上がりにくい人は家庭教師を使う家庭もあります。

しかし、そもそも学習障害があったり不注意や興味の限局などの問題があって、その障害特性を教える側が知っていないと時間の無駄になりお互いに嫌な気分になってしまう場合も少なくありません。このサービスがどれほどの支援の質を保障するかは分からないですが、少なくとも個別対応でオーダーメイドの対応をしてくれるなら素晴らしいです。オンラインでの家庭教師は増えましたし、発達障害に対応すると言うふれこみの塾もありますが、その実情はよくわかってはいません。

クラウドファンディングで資金を集め、利用者には無償で対応するとのことです。ただ、学生も経験の場として位置付けるので、必ずしもプロフェッショナルな支援ではなくその支援の質は今のところ分かりません。ただ、少なくとも先輩たちが積み上げてきたこれまでの経験を生かして学生が中心になってやろうとしていることはとても良いことだと思います。

学生の家庭教師アルバイト賃金は平均時給1800円くらいですが、返礼品のコーヒー代金も考えるとバイト料はもっと安いのだと思いますが、CFは目標額の倍以上集まっています。これで何名の志のある学生支援者を集め、延べ何時間の支援を考えているのか分かりませんが、面白いプロジェクトになりそうです。失敗は恐れないで、なんでもやってみたらいいと思います。取組んだ時間は生徒も学生もきっと貴重な財産になるはずです。

変わる部活動 学校単位から地域クラブに 指導内容も充実

変わる部活動 学校単位から地域クラブに 指導内容も充実

2022/1/25 【産経新聞】

中学校の部活動が変わり始めている。これまで教師が休日返上で指導してきた学校単位の部活動から地域単位の「地域クラブ」に変わりつつあるからだ。山形県天童市では昨年11月、市立中学4校の野球部が合同で「天童市中学生軟式野球クラブ(天童軟式野球クラブ)」をスタート。指導する町田真裕(まさひろ)代表(55)は「少子化、教師の働き方改革から生まれた新しい部活動の形。野球を通して人間育成を目指す場にしていきたい」と話す。

4中学が一つに
昨年11月、天童市立第二中学校のグラウンドには、市立の全4中学校の野球部員45人が集まった。指導者は町田代表を含めて10人。ユニホームはバラバラだが、活気のある声が一斉に響く。

夏の県大会後、3年生が引退し、各校の部員は9~14人になった。部内での練習試合はおろか、連携プレーの練習もおぼつかない状況になった。「一番少ない天童一中の部員は9人。硬式野球にいく生徒もいるが、これでは中学校で野球ができなくなる」

危機感から町田代表が中心となり天童市野球連盟などと調整し、4校の野球部を合わせた同クラブを始動させた。毎週日曜に4校の部員が1校に集まり、合同で練習する。校庭を雪が覆うようになってからは、体育館や武道場で練習を続けている。

人数が40人規模になったことで練習の幅が広がった。チーム編成が容易になり対抗戦ができるようになった。試合を運営するため、部員はルールを勉強し直し、塁審の目線を学んだ。天童市立一中1年の小座間綾士(あやと)さん(13)は「審判講習は難しかったけど、勉強になった。これからも野球をしたい」という。

幅広い指導者
同クラブには、高校野球で活躍した人ばかりでなく大学野球経験者や陸上競技経験者もいる。陸上競技経験者の天童市立一中の教諭、鈴木友輔コーチ(36)は「野球は総合スポーツ。私は走塁面で指導できますから」という。

「野球の方程式」と書いたホワイトボードを持って指導する大学野球経験者の今田(こんた)昌揮コーチ(40)は、野球と他の球技との違いを部員に丁寧に説明する。今田コーチは「試合に勝つために教えていますが勝利至上主義ではない。むしろ『勝利志向主義』です」とほほ笑む。

練習後、大勢の部員の前で「あの時のプレーだけど、どうすればよかったのかな」と今田コーチが質問する。手を上げた部員の答えに「そうだっ、その通り。それでいいんだ」と部員自らが考え気付いたことをたたえる。

部活動の意味
教師の「働き方改革」を進めるため、文科省は令和2年、「5年度以降、休日の部活動の段階的な地域移行を図る」との方針を示した。スポーツ庁は昨年10月、休日の部活動の外部委託に向けた検討を始めている。町田代表には最近、陸上やバレ―ボールなど他部や他校からも問い合わせが相次いでいる。地域クラブの取り組みが必要なのは、野球だけではないからだ。

同クラブでは雪解けを待って3月末にも、クラブ内でリーグ戦を始める予定だ。できるだけ全員が試合に出られるように工夫する。将来的には全国中学校軟式野球大会の出場も目指す。「天童市の野球をやりたい中学生に野球を続けさせたいという思いで作ったクラブ。互いに競い合い、練習試合を重ねていけば技術もきっと向上していく。野球を通して学んだことを生かせる人間になってほしいんです」と町田代表は言う。(柏崎幸三)

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前に元陸上選手の為末大さんの記事で、教師にとっても生徒にとっても地域クラブの方が主体性が高まると言う内容を掲載しました【部活動の地域移行…為末大さんが推す2つの理由:2021/12/02】。先日、教員に一律にクラブ指導を命じるのは違法だという裁判も始まりましたが、いやいや顧問をさせられている教師のもとで活動する生徒も迷惑な話です。今回は、部員が集まらない学校でやるよりみんながあちこちから集まって入部し、少年スポーツ文化を維持したいと言う強い思いを持った人たちが運営するクラブの記事です。

広いエリアをカバーすれば優秀な選手もコーチも集めやすいです。もちろん、優秀なコーチは短時間でも指導成果を上げられますし、指導される生徒も的を射たアドバイスがもらえます。クラブと学校と切り離すことで、だらだらと休みの日も一日中、学校の中でクラブをするのではなく、スポーツも遊びも勉強も、合理的に切り替える生活が期待できるのではないでしょうか。何より、自分がやりたくて集まってきていると言う点で、先の裁判の話のような、やりたくないのに職場の同調圧力でさせられている指導者はいなくなります。生徒も、学校内の関係性を引きずらずに参加したり辞めたりできるのは精神衛生上良いことです。

また、学校文化からクラブ指導のウェイトが軽くなることで、教科指導以外のところで教員能力が評価される事もなくなります。生徒指導も然りで、強いクラブの顧問が生徒指導部長を引き受けるという本末転倒な人事も減少していきます。学校職員の労働時間を減らすことが目的の地域クラブへの移行ですが、実は古い学校体質や教育体質を変えていくには最も近道の手段かも知れません。

小中学校の不登校児童が過去最多の19万人超え!コロナで学校に行けなくなった

小中学校の不登校児童が過去最多の19万人超え!コロナで学校に行けなくなった子どもたちのSOS

01/21 【週刊女性PRIME】

長引くコロナ禍のもと、子どもたちが強いストレスにさらされている。その結果、いじめや自殺として異変が現れるケースもあれば、不登校という形でSOSが出される場合もある。文部科学省によると、全国の小中学校で不登校の児童生徒数は2020年度に19万人を超え、過去最多となった(国立、私立を含む)。

不登校が増えた背景として、’20年3月の一斉休校措置から続く影響を指摘するのは、NPO法人『フリースペースたまりば』の代表・西野博之さんだ。神奈川県川崎市を拠点に、コロナ以前から子どもたちに安心して過ごせる居場所を提供してきた。

「最初に緊急事態宣言が出された’20年4月当時、学校が閉まっていました。そこへ新入学や進級の時期が重なった。一斉休校が明けてからも、友達がいないという子どもが少なくない。子どもたちにとってみれば学校がおもしろくないんです。常にマスクをしなければならず、声を出してはいけないと注意される。給食も黙って食べる“黙食”。友達と遊ぶときも、触れ合えません」(西野さん、以下同)

外出自粛が叫ばれるなかで家庭環境も様変わりした。

リモートワークで増えた夫婦ゲンカ
「リモートワークになったことで父親が家にいるようになりました。もともと不登校の子がいる家庭では、父親が仕事に行く中で不登校を気づかれずにすんだ。ところが父親が家にいると“朝、起きない”“ゲームばかりしている”子どもの姿を見て、“おまえの態度は何だ”と怒鳴ったりするわけです。さらに矛先を母親に向け、“おまえが甘やかすからだ”などと罵倒するようなケースが増えました」

混乱し、不安を感じていたのは大人たちも同じ。飲食業や宿泊業を中心に失職したり、休業に追い込まれた人もいた。親のストレスがたまると家庭内で緊張が走りやすい。

「子ども1人ではなかなか勉強しないし、オンライン授業への対応は難しいので、親が隣にいることが多く、気が抜けない。もっと“勉強しろ”と言われる。暴言を吐かれたり、手を出されることもある。そのためコロナ禍であっても、フリースペースを閉めないことにしたんです」

子どもを置いて仕事に行けない
実際、一斉休校要請が出された翌日、若い母親からこんな電話があった。

「子どもを置いて仕事に行けない。子どもとずっと一緒で、しかも3食を作らなければならない。イラついて、手が出てしまいそうだ、と」

子どもの目の前で夫婦ゲンカをすることは『面前DV』という心理的虐待にあたり、児童相談所に保護されることもある。DVまでいかなくても、「夫との関係がうまくいかない」という女性たちの相談が増えているそうだ。

厚生労働省によると、’20年度の虐待対応件数は20万5029件と前年度比で5・8%増加。初めて20万件を超え、過去最多を記録した。

「夫婦ゲンカが激しさを増し、警察が介入するケースが増えていると聞いています。こうした中で、子どもの安全を確保するための一時保護が増え、保護所がいっぱいになってしまっているのが現状です」

不登校の子どもたちを取り巻く環境にも変化が生じている。フリースクールなどに通うことで、出席扱いになるケースも増えてきた。自宅でのタブレット学習も、出席と同様にみなす学校がある。

「校長裁量ですが、出席日数が不足していても中学を卒業できるケースがほとんどです。その後、通信制高校やサポート校へ進学する子どもがとても増えました。ただし、本人がその気になっていないのに、親が先回りして手続きをあせらないことが大事。親の言いなりで入った高校を中退したり、卒業後に再びひきこもる相談が急増しています」

一方、学校現場で子どもたちと日々対峙する教師は、どう感じているのだろうか。

「マスクを着用しているので、子ども同士も、子どもと先生の間でも、相手がどんな表情をし、感情を出しているのかわかり合えないんです」

そう話すのは、小学校で講師として授業を行う渡邉信二さんだ。長年にわたり公立小学校の教諭を務めたほか、教育委員会でいじめ自殺の調査に関わった経験も持つ。

渡邉さんは、「コロナ禍で不登校が増えるのは当たり前」と言い切る。

「コロナ疲れで週に何度か学校を休むケースが目立ちます。ストレスが強まり、いじめを生むこともあります。私が関わった学校でもいじめがあり、対応に追われた担任は休職しました」(渡邉さん、以下同)

文科省の定義によると、不登校とは、年間30日以上の欠席をした児童や生徒(病気や経済的理由を除く)を指す。前述のとおり不登校の数は過去最多を更新、今では1クラスに1人以上、不登校の子どもがいる状態だ。

「それだけ子どもたちは疲れているし、コロナ禍で不安を覚えています。しかも、不登校になると、学校側は再登校させることばかりを考えてしまいがちです。問題を担任や学年任せにせず、学校として対応しないといけません」

現在、渡邉さんはいくつかの学校を回って講演をしたり、講師として小学校で授業も行ったりしている。マスクで表情が隠れ、コミュニケーションが難しい状況であっても、さまざまな工夫を凝らす。

「例えば、子どもたちは机を教卓のほうに向けて授業を受けることが多いのですが、私は子ども同士が対話をしながら授業を行うのが好きで、以前は円形に机を配置していました。現在は感染対策のためV字形に机を並べ、ほかの子の表情や息遣いがわかるようにしています」

高校の不登校は約4万人
相手の表情がわかると、子どもたちは活発に発言し始めるという。コロナ以前からの取り組みが今に生きている。

「教師が精神的な距離感や関係性を縮めようとしたら、子どもたちにはそれが伝わります」

コロナ禍では教師と子どもたちの会話の量も減っている。そこで渡邉さんはノートを有効活用する。話したいことや伝えたいことを、子どもたちに書いてもらうのだ。

「ノートを読み、子ども各自に合わせたアドバイスを書きます。どうやって1対1の関係をつくっていくのかが重要なんです。大変ですが、時間をかけます。ノートに1行しか書かれていなくても、子どもたちから読み取ったことをコメントとして書く。すると、2行に増えたりしますね」

高校の状況はどうか。文科省によると、不登校は4万3051人。特に単位制の高校で1万4175人と多い。都内を中心に、高校で出張授業や相談を行うNPO法人『若者就職支援協会』理事長の黒沢一樹さんはこう話す。

「いまやオンラインで授業を受けることがスタンダードになりつつあります。そのためなのか、友達同士での会話が減っています。さらに文化祭や体育祭などの行事を中止したり、規模を縮小して開催する高校が多かった。コロナ感染拡大で学校に行けない期間が長かったことと、みんなで一緒に何かをする体験がないまま1年が過ぎたことが不登校に影響しているのではないでしょうか」

黒沢さんは「生徒がリアルにコミュニケーションできる場が減り、孤立しやすくなっている」として、不登校や中退対策の必要性を強調する。子どもの発するSOSをどう受け止め、つらい状況を改善させるのか、大人たちの真剣さが問われている。

取材・文/渋井哲也 ジャーナリスト。長野日報を経てフリー。若者の生きづらさ、自殺、いじめ、虐待問題などを中心に取材を重ねている。『学校が子どもを殺すとき』(論創社)ほか著書多数
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一昨日は出さないと言っていたまん防ですが、昨日の感染者の増え方に腰を抜かした知事は今日にも、京都大阪兵庫で政府に要請すると言います。どんな措置をしようと増える時は増え、減る時は減るというのがこれまでの経過で明らかになっていますので感染抑制の効果は期待できません。もう、蔓延しているのだから今更防止しても意味がないという人も多いです。これを措置することで、自粛に応じ店を閉めた業者への収入補填などが政府資金で可能になると言いますが、飲食店に食材を供給する業者も周辺で店を開く飲食以外の店にも支援はないままです。

大人は、腹をくくって明けない夜はないと思えば済むのかもしれませんが、子どもは違います。その年齢にしかないイベント、その学年でしかやらない取組、子ども時代にしか楽しめない集団遊びや友達とのやり取りがあります。これらは、全て子どもの精神発達に大きな影響を与えていきます。表情のわからないマスクで対応する子どものコミュニケーションがどれほど疲れるか、少し考えれば想像がつきそうなことですが、政府はそんなことより風邪程度の感染が広がる事の方が重大なのです。半年後に迫っている選挙でやるべきことをやらなかったと言われるのが怖くて仕方がないのです。

日本は世界の中で感染率も重症率も極めて低いのに未だに欧米と同じような措置を追いかけています。世界はもう1年も前から自粛から踏み出して景気対策に切り替え、日本を残して多くの先進国は景気を回復させています。実現するはずのないゼロコロナを求めて経済を停滞させ子どもの発達の場を奪っているのに、新型コロナと「しっかり」向き合っていくと大臣は言います。変化に対応できずに決断が遅く、一度決めたら変えられない癖、我が国の稚拙な政治は戦前と何も変わっていないではないかと言われても仕方がないような気がします。願わくば子どもたちが受けたダメージが最小限になるように私たちができることは、毎日戸外で走り回って遊ぶ支援を大事にしていくしかありません。

台湾の教育制度や病に苦悩した、天才オードリー・タンの軌跡

台湾の教育制度や病に苦悩した、天才オードリー・タンの軌跡【書評】

2022.01.19【Pen】文:今泉愛子

『オードリー・タン 母の手記「成長戦争」自分、そして世界との和解』
近藤弥生子 著 KADOKAWA ¥1,980 
近藤弥生子●1980年、福岡県生まれ。編集者、ノンフィクションライター。日本語と繁体字中国語でのコンテンツ制作を行う草月藤編集有限公司代表。おもな著書に『オードリー・タンの思考 IQよりも大切なこと』(ブックマン社)。

台湾のデジタル担当大臣として活躍するオードリー・タンは、10代の頃から天才プログラマーとして知られ、15歳で友人と会社を設立。学校教育を中学で終えている。

タンはどんな風に育ち、その天才ぶりをどのように発揮してきたのだろうか?

本書の著者、台湾在住のライターの近藤弥生子は、タンの母親である李雅卿(リー・ヤーチン)が1997年に出版した手記『成長戦争』をもとに、自身の見解、タンへのインタビューを加えて、タンの軌跡を詳細に追った一冊をつくった。

近藤は、タンの核となっているものは3つあると語る。

「心臓病を克服したこと、学校教育の場で自殺願望をもつほど追い込まれたものの、教育者や協力者との出会いによって立ち直ったこと、そして、両親が自分を受け入れ支持してくれたことです」

本書には、団体生活に馴染めなかったタンが、3つの幼稚園、6つの小学校を経験し、中学校で学校教育を終えた経過が克明に記されている。

11歳で心臓手術を受けた後、体調が大きく改善したタンは、著者のインタビューに対して「体調が改善したことから始まる“身体が弱くない”人生で、自分が過去に受けた仕打ちに対して、なにか未来に向けて貢献できないかと考えた」と答えている。

タンの幼少時代、台湾では体罰が横行し、子どもたちは競争にさらされていた。

「これからの台湾を担う若い世代は、タンの両親が我が子を守ったことが、教育の現場に風穴を開けたと感じています。これまで教育によってどれだけコントロールされてきたか、わかっている人が多いのです」と近藤。

学校生活における苦難を、社会構造の問題と捉えていたタン。本書で描かれるその姿は、自身の才能を社会に役立てようとする現在のタンと見事につながっている。

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天才プログラマーを大臣に起用する台湾ってかっこいいというのが、日本のメディアの反応でした。コロナ禍の中、マスクが買い占められないようにプログラムを開発した大臣として一躍有名になりました。2016年10月にデジタル担当の政務委員に就任して、35歳での閣僚就任は台湾史上最年少と言います。

「デジタル技術とシステムによって政府の問題解決を補佐し、民間と政府のコミュニケーションの促進と強化を行う。自分の役割は特定の団体の利益のために動くことでも、政府のために政策の広報を行うことでもなく、より多くのアイデアと力を結合させる『パイプ』となることだ。」と言うのがオードリー・タンのマニフェストです。

幼い頃からコンピューターに興味を示し、12歳のときにプログラム言語を学び始めたそうですが、学校が性に合わず何度も転校しています。14歳のとき、中学を中退して自分を支えてくれる父母や教育者らの力を借りて自学自習を始めます。19歳のときに、シリコンバレーでソフトウェア会社を起業した彼(女)は、トランスジェンダーとしてカミングアウトしている世界で唯一の大臣でもあります。

彼を登用した政府の本音はわかりませんが、少なくともビニール袋の有料化で2酸化炭素が削減できると言う若手大臣の登用とは筋が違うと思います。そして、この本が、不登校でも出世できるというような単純な立身出世本ではないことは確かです。

巨大中国に飲み込まれようとしている台湾が生き残るには、強権的なものから決別して民主主義を旗印に掲げる必要があります。台湾は民主主義のシンボルとしてオードリー・タンを登場させているようにも思えます。教育の自由は民主国家の存続と市民の自由の上に成り立ちます。「自分が過去に受けた仕打ちに対して、なにか未来に向けて貢献」したいというメッセージは広く台湾の若者に広がっているはずです。

子どもの感染拡大 募る不安…受け入れ続く「放課後施設」 発熱外来も急増…3分の1が15歳未満

子どもの感染拡大 募る不安…受け入れ続く「放課後施設」 発熱外来も急増…3分の1が15歳未満

2022年1月18日【長野放送】

子どもへの感染が急拡大し、休校なども相次いでいます。長野県松本市の放課後に子どもを預かる施設は現在も受け入れを続けていて、不安を募らせています。

病院に並んだ車。発熱外来の受診者です。こちらの医師が往診しているのは子ども。病院では年明けから受診者が増えていますが、特に急増しているのが15歳未満です。15日は1人でしたが、17日は65人中22人とおよそ3分の1を占めました。

病院も対応で負担が増しています。
子どもたちへの感染拡大。新学期が始まったことが要因と考えられ、県によりますと17日時点で県内の小中高校41校が休校や学年閉鎖などの対応をとっています。

病院では「発熱やのどの痛みなど少しでも違和感を感じたら学校には行かず検査を受けてほしい」と呼びかけています。

こちらは松本市の高宮児童センターです。現在も受け入れを続けていて18日も60人が利用しました。
高宮児童センター・太田武志館長:
「学年を超えてたくさんの子どもが集まりますので、非常に危険なリスクの高い状況と心配している」
第5波では市が保護者に対し施設の「利用の自粛」を呼びかけましたが、今回はそうした要請は出ていません。センターは市に「人数を減らすなどの対応をしてほしい」と考えていますが、今は消毒や換気などこれまで通りの対策を徹底するしかないと話します。
高宮児童センター・太田武志館長:
「(学校に比べ)センターの場合、どうしても密な状態ができてしまう。子どもたちの感染のリスクが高いことを肝に銘じて職員一同、基本的な感染防止対策をやっていかないといけない」

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感染報道の典型かなと思いました。施設側が子どもを預かって不安と表現することで、「自粛の呼びかけがない」としながらも暗に利用を控えて欲しいという誘導になります。「60人が利用」と言いますが、学校ははるかに多い子どもが活動していますし、「感染リスクが高い」といいますが、子どもの集まるところの感染リスクが高いのはこの2年間ずっと変わりません。病院の発熱外来で自家用車が長蛇の列で待機して医師が巡回してくる様子を報じる事で、この感染力の強力さを表現していますが、実際にどの程度の症状なのか医師のインタビューはせず、素人の不安インタビューを報じて印象操作をします。

今回は上気道での炎症が中心なので風邪の症状です。子どもの重症者はおらず僅かに高齢者の重症例があると言う話です。ワクチン接種者にもブレークスルー感染すると言いますが、接種者の症状例に入院を必要とする重症例はありません。大阪府では、従来の2類相当の感染として扱うと、濃厚接触者の特定や措置までしなければならないのですが保健所はもう手が回らず、学校や老人施設だけにすると決めました。政府も濃厚接触者の自宅待機期間を2週間から十日に縮めました。エッセンシャルワーカーは陰性証明を前提に更に3日縮めました。今回の感染症状の多くは軽いですが子どもが多く感染するので、施設や学校の仕事では職員が濃厚感染になる可能性が高く、子どもが感染する度に濃厚接触者扱いされるとサービスはできなくなっていきます。

症状が重いなら仕方がありませんが、重症例が極めて少なく全てのエッセシャルワーカーが接種を済ませているのに接種前と対応が変わらないのは、政治家のエクスキューズ(言い訳)のためです。厳しめに対応しておけば失敗してもクレームは少ないが、規制を緩めて感染が拡大すれば因果関係がはっきりしなくても政治生命に関わると判断しているからです。これまでの制限について科学的な効果は確認されていないのに、教育関係では再び県をまたぐ修学旅行や試合などを中止し始めました。

それをならってか、飲食関係も再び規制対象になる「まん延防止等重点措置」で客足が遠のきます。ワクチン接種証明アプリで飲食や旅行をスムースにしようと言う話も雲散霧消し政治家は誰も言わなくなっています。本当のリスク管理とは子どもが受ける社会的なリスクと感染リスクの比較によって判断する施策のはずです。大は小を兼ねるというような施策なら誰にでもできる話で政治家は必要ありません。ピークアウトする2月半ばくらいまでまた我慢の季節がやってきます。

【図.知見のまとめ:子どもの COVID-19 関連健康被害 (日本小児科学会予防接種・感染症対策委員会作成)子どもは多くの場合、家庭で感染しているが、幸いほとんどの症例は軽症である。しかし、COVID-19 流行に伴う社会の変化の中で様々な被害を被っている。】

「牛乳は体にいいのか」150年論争 学校給食での提供を停止した自治体も

「牛乳は体にいいのか」150年論争 学校給食での提供を停止した自治体も

2022年1月17日【週刊ポスト】

昨年末、岸田文雄首相はコロナ禍の影響で消費が落ち込んでいる生乳の大量廃棄を回避するため、「牛乳の消費拡大」を求める異例の呼びかけに踏み切り、話題を呼んだ。牛乳というと、真っ先に思い浮かぶのが「成長や健康にいい」というイメージだ。昭和の時代には、多くの栄養を補えるといった印象が定着し、学校給食でも広く親しまれてきたが、振り返ってその“効果”を疑問視する声もある。

「母親から“背が伸びるから飲みなさい”と言われたけど、全然伸びなかった」(50代男性)
「“骨が強くなる”と言われて中学時代に毎日1リットルの牛乳を飲んでいたが、お腹がいつも緩かった」(40代男性)
「“よく噛んで飲め”と言われていたので牛乳を噛んでいたけれど、意味があったのか、いまだに分からない」(50代男性)

「牛乳は完全栄養食」と位置付けられてきた一方で、昨今は「牛乳を飲むと不健康になる」という話を耳にする機会も出てきた。都内在住の50代男性が語る。

「年末に実家に帰ったら、80代の親に『牛乳を飲むとがんになるから、孫には飲ませるな』と注意されました。コロナで健康に気を遣うようになり、『牛乳不健康説』に感化されたようです」

「骨粗しょう症になる」「がんになるリスクがある」といった牛乳不健康説も出回っている。さらに、3回目のコロナワクチン接種が近づくなかでの岸田首相の消費拡大の呼びかけに対し、「ワクチン接種後に牛乳を飲むと、免疫機能に異常が出る」といった陰謀論めいたインターネット上の書き込みまでみられた。一体、牛乳は体にいいのか、悪いのか。

「ここ15年くらいの間で論争が盛り上がり、繰り返されています」

そう指摘するのは、小田原短期大学食物栄養学科の平井千里准教授。

「近年の論争のきっかけの一つは、2005年頃から度々出版される牛乳有害説を唱える書籍の影響と言えます。それまで体にいいとされてきた牛乳に対して、“牛乳が逆に骨を脆くする”といった論がセンセーショナルに打ち出されるようになった。対する乳製品業界なども黙ってはおらず、多くの異議が唱えられて論争に発展しました」

2015年には、お笑いタレントの松嶋尚美が「牛乳を飲むと体内のカルシウムが尿で排出される」「乳製品を多く摂る欧米人は骨粗しょう症になりやすい」などの説をテレビで語り、炎上する騒ぎもあった。

学校給食でも牛乳の扱いに変化が起きている。15年、新潟県三条市は学校給食での牛乳の提供を停止した(給食時間と別に牛乳を飲む「ドリンクタイム」を設けたが、現在は停止)。

「最近では“米飯や麺類に牛乳が合わない”“そこまでして飲まなければならないものなのか”といった保護者からの意見も少なくありません。1954年に施行された『学校給食法施行規則』では牛乳の提供が定められていますが、三条市独自の判断が優先されたかたちです。論争の影響は学校給食にまで及んでいるのです」(平井氏)

遡ると、乳製品に対する論争は明治期から存在したとの視座もある。梅花女子大学食文化学科の東四柳祥子教授の研究によると、富国強兵策の一環として乳製品の摂取が注目され始めた1870年代の明治初期の段階で、安全性への疑いを持つ声もあったという。150年に及ぶ論争だが、前出の平井氏はこう見る。

「牛乳の栄養価の高さを疑う余地はありません。カルシウムやタンパク質にミネラルといった栄養素を豊富に含みます。ただし、飲み過ぎるとカロリー過多やカルシウムの過剰摂取で結石ができやすいといった不具合が起こることも考えられます。完全栄養食とは言えないが、適量を摂る分には体に悪いものではありません」

※週刊ポスト2022年1月28日号
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ここでは、牛乳が栄養食かどうかと言う議論と給食でも嗜好が大事にされてもいいのではないかという議論がごちゃ混ぜになっています。日本人の背が伸びたのが給食牛乳の成果だと言う根拠はありません。給食牛乳をしても現代の子どもの方が骨折しやすくなっているわけですからカルシウム云々の根拠にはならないです。日本の子どもの給食で牛乳を提供するという法律のおかげで、日本の畜産業が息をつないでいると言う業界の意向に押されて給食牛乳の法律は70年近く続いているのです。子どもの健康問題ではなくこの既得権益をどう考えていくかが事の本質と言えます。

筆者が給食で一番違和感を感じたのが、米飯メニューに牛乳です。食文化としてどうなのかと同僚に聞くと牛乳で米飯を炊くメニューもあるから気にしないとのことでした。世界では牛乳で米を煮るのは珍しい事ではなく、イギリスではライスプディング、ドイツはミルヒライス、インドではキール等とどれもミルク粥風で、材料は牛乳と米以外に各国様々、作り方にも違いはあれど、共通しているのは「甘い」ということです。

世界では「牛乳+米」という式には「=おやつ」という答えを出している国が多いようなので、つい米を主食にする者として、反射的に非難がましい想いがわいてきます。しかし、我が国も米にあんこをまとわせて食べていますから米に甘い味付けは日本ではありえないとは言えないなと批判はあきらめましたが、米飯メニューに牛乳が出るのと牛乳で調理するのでは意味が違うではないかと密かに思っています。

「あ~、ムリムリ」「重度障害児に眼鏡つくる意味ある?」 受診を敬遠される障害児たち

「あ~、ムリムリ」「重度障害児に眼鏡つくる意味ある?」 受診を敬遠される障害児たち〈AERA〉

1/16(日) 【AERA dot.】

障害児こそ医療が必要なのに、受診を断られるケースもあるという。適切な医療を受けるには、医療関係者や保護者たちの配慮や準備が重要になる。AERA 2022年1月17日号の記事で取り上げた。

*  *  *
「あ~、うちではムリムリ」
男性医師が明らかに嫌そうな顔を見せた。都内の女性(49)の長女(14)が幼児期に自宅で転び、おでこを切って、地元の「形成外科・皮膚科」クリニックに連れていったときのことだ。長女は知的な遅れのある自閉スペクトラム症。女性はこう振り返る。

「落ち着きがないからか、『こういう子は縫えない』と言われました。健常児だったらやってくれたと思いますが、障害児はまともな治療を受けさせてもらえないことが多いんです」

眼科も診てもらえるところが見つからず、長女が11歳のときに初めて問題なく見えていることがわかった。いま一番困っているのは歯科。近所で評判のクリニックに長女を連れていったが、嫌々診療している感じが伝わってきた。器具を口に入れて少しでも体が動いたら、即終了。2、3週間に1度のペースで通っていたのに虫歯も見逃され、長女は歯の痛みで一時食事ができなくなった。別の歯科医院に相談すると、男性歯科医は「人手は足りないし、治療中に動いて口の中を切ったら責任を持てない」と本音を明かしてくれた。

■フリーアクセスなのに
日本の医療制度の特徴の一つは、「フリーアクセス」。日本医師会のホームページには、「何の制限も受けずにどこの医療機関でも、どの医師にも自由に診てもらえて医療サービス(治療)が受けられる」とあるが、現実は、障害児はその特性から医療機関での診察や治療が難しく、受診を断られるケースもある。

脳性まひの小学3年の娘(9)がいる横浜市の女性もこう話す。
「医師の中には差別的な考えの方が多くて閉口します。娘の友人は、眼科医に『こんな重度障害児に眼鏡をつくる意味あるんですか』と言われました」

娘は脳性まひのアテトーゼ型のため、自分の意思によらない「不随意運動」があるが、理解のある医療機関は少ないという。歯科には「障害者歯科」があるので、歯並びが気になって受診したが、「障害児の中ではまだいいほうですから」と暗に矯正を断られ、通うのをやめた。

■時間とエネルギー必要
「障害のある子どもこそ、医療が必要です」
と話すのは京都市の「まさみ眼科クリニック」院長、朴真紗美医師だ。眼科領域では障害児は健常児に比べて、網膜上にピントが合わない遠視や近視などの「屈折異常」が約5倍多く、はっきりと見えていない可能性が高いため、受診がより必要だと強調する。

以前に朴さんは3年間、数カ月に1度、鹿児島の奄美大島に飛び、障害児の眼科診療をしていた。眼鏡を処方した子たちは、再診時に表情が明るくなり、言葉も増え、さまざまなことに興味を持つようになっていた。
「適切な眼鏡一つでその子の人生が変わり、家族の人生も変わる。このような医療があることを学びました」

一方で、障害児の診察を敬遠する医師たちの事情も理解する。
「障害児者の診療は何倍もの時間とエネルギーを要する上、個々の特性に合わせた技術や多くのスタッフの理解も必要です」
例えば3年前に知的障害と自閉症のある20歳の男性の白内障手術を、非常勤医として勤務する音羽病院アイセンター(京都市)で行ったときのこと。男性は大柄で片目は自傷のため失明していた。自閉症の特性で新しい場面を苦手とするため、診察室や手術室、入院病棟の様子を事前に写真で説明し、全身麻酔の導入練習だけでも数回の受診が必要だった。また、術後の感染予防対策のため、通常1泊2日の入院期間を2週間にし、病棟の看護師らは自閉症の勉強会を開くなど、病院側も受け入れ態勢を整えた。

障害者支援に詳しい川崎医療福祉大学准教授の諏訪利明さんはこう話す。
「肢体不自由の場合とは違って、障害が周囲に見えづらい自閉症や知的障害だと配慮もなく、『普通の人の基準に合わせなさい』となりがちです。障害特性として、言葉での説明が理解しづらく、自分の症状もうまく伝えられない。見通しが持ちにくいので我慢できずに待合室や診察室で騒いでしまう。感覚の過敏がある場合は治療にも配慮が必要です。治療前の準備にも診療報酬点数をつけるなど制度を整備すれば受け入れる医療機関も増えるのではないでしょうか」
(編集部・深澤友紀)
※AERA 2022年1月17日号より抜粋
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以前、新型コロナワクチンを障害者に接種する医療機関の報道で、患者を押さえつけた動画を報道側が削除したことについてコメントしました【神奈川・相模原市で障害者専用のワクチン接種会場:2021/09/28 】。治療しようとしても適切に対応できなかったとことだけが取り上げられて社会のバッシングを受けるかもしれないと考えると、積極的な治療を躊躇してしまう気持ちは理解できます。治療しないことを、医師個人の資質の問題とステレオタイプに決めつけるのも考えものです。

医師だけが、治療目的で身体を切り異物を与える権限があります。しかし、そこには効果のある治療をすることが前提なので治療をするかどうかは医師の判断によります。医師法19条で「診療に従事する医師は、診察治療の求めがあった場合には、正当な事由がなければこれを拒んではならない。」と、診察に応じなくてはならない応召義務が定められていますが、これには罰則はなく倫理規定だというのが定説です。

もちろん、先のワクチン接種時のように、当事者が嫌がっているのに押さえつけて注射をするのは現段階のオミクロン型の感染症状を見ていると過剰医療と言えます。しかし、半年前の世間の通説はワクチンを打てばデルタ型までは重症化せずに済むというものでした。医師が押さえつけてでも接種した際の心的外傷のリスクと重症化を防ぐベネフィット(効果)の比較では重症化を防ぐことが優先されたのだと思います。このようにわずか半年間でも、症状や世間の通説が変わってしまえば、リスクと効果の比率は変わってしまいます。

障害者の医療は通常よりコストがかかります。これは子どもや乳幼児、周産期医療にも言える事です。諏訪さんが言うように、コストがかかる医療を正当に評価して診療点数を決めればいいと思います。リスクはあるし人手もかかり診療点数も実態に見合わないとなれば、医師が敬遠しても無理もないと思います。社会の根本的な課題を明らかにせずに、誰かを悪者にして叩いていても社会は変わらないと思います。そして、リスクを取ってでも真剣に障害者医療に取組んでいる朴さんのような医師たちこそをもっとメディアに取り上げてほしいと思います。

若者が帰りたくなるまちを作る...0歳~100歳まで“ごちゃまぜ”の世代間交流を実現させた

若者が帰りたくなるまちを作る...0歳~100歳まで「ごちゃまぜ」の世代間交流を実現させたある病院の挑戦【群馬】

2022/01/14【FNNプライムオンライン】

群馬県の人口約5万人の小さな自治体で、地域の病院が子どもから高齢者、障がいのある人まで一体的にケアする取り組みが行われている。政府が進めようとする「地域包括ケアシステム」を先駆けて実践するこの病院とは?現地を取材した。

「0歳から100歳まで地域で支えるんです」
「ここでは0歳から100歳、すべての年齢を地域で支えるんです」

群馬県沼田市で2021年11月に開設した地域共生型施設「SONATARUE(以下ソナタリュー)」。筆者に施設を案内してくれた担当者はこう語った。

ソナタリューは1階に足湯や温泉、レストランにカフェ、アスレチック公園があり、一見アミューズメント施設のようだが、実は障がいのある人の生活や就労の拠点であり、障がいのある子どもたちの学童クラブもある。

この施設を開設したのは、沼田市にある医療法人大誠会内田病院(以下内田病院)だ。内田病院はいまから30年以上前に来るべき高齢社会を見据えて、当時としては珍しかった医療と介護の連携を開始した。

その後内田病院は福祉の分野にも進出し、いま医療・介護・福祉を一体化させた取り組みを行っている。ソナタリューもその1つであり、内田病院は人口5万人足らずの沼田市で、子どもから高齢者まで安心して暮らせるまちづくりの拠点となっている。

学童保育が足りないなら自分たちでつくる
安心のまちづくりにチャレンジしているのが、内田病院グループの理事長を務める田中志子さんだ。田中さんの父親は内田病院の創始者であり、当時としては珍しく介護分野に乗り出した。そのきっかけを田中さんはこう語る。

「父は1976年に有床のクリニックを開業したのですが、10年ほど経つと入院患者さんの年齢層が上がって長期入院になり、軽度の介護施設みたいな感じになりました。そこで父は1988年に当時始まったばかりの老健施設(※)を建てたのです」

(※)介護老人保健施設。介護が必要な高齢者の自立支援などを行う、病院と施設等との中間施設

父親を継いで理事長に就任した田中さんは、「誰もが生きがいをもって安心してくらせるまちづくりを」と福祉の分野にも進出した。

「2006年にNPO法人をつくりました。当初は自宅にいる一人暮らしの高齢者に配食をしていたのですが、子育て中の病院の職員が『学童保育が足りなくて働けない』というので、『では学童を作ろう』と。そのうち外部の子どもも預かるようになり、障がいのある子どもが大変そうだとこちらも預かることになりました。当初は公費が頂けず赤字続きでしたね」

居場所のない高齢者と子どもが”ごちゃまぜ”に
その後保育園やデイサービスも始めた田中さんは、高齢者から子ども、障がいのある人へのサービスを同じ施設内で行うことを決めた。こうして2017年に開設した「いきいき未来のもり」には、保育園、学童クラブのほか、障がいのある子どもを対象とした児童発達支援事業と放課後等デイサービス、要介護認定された高齢者のデイサービスが混在している。

田中さんはこう語る。
「施設は保育園の子どもがデイサービスを通らないと園庭に行けないような設計にしました。そうすると子どもはおじいちゃん、おばあちゃんに1日2回は会えて挨拶もできる。こうして“ごちゃまぜ”にすると、家で居場所がなくなっていたおばあちゃんが子どもたちの運動会のお花を作ったり、認知症の人が赤ちゃんと交流したり。また重い自閉症の子どもが健常者と交わる中で、普通クラスに通えるようになったりもしました」

“ごちゃまぜ”な世代間交流が生まれる施設
そして2021年11月に開設したのが前述のソナタリューだ。田中さんがソナタリューを作ろうと思ったのは、初めて障がいのある子を預かったときだ。

「お母さんたちがとても感謝してくれたのですが、『特別支援高校卒業後に住むところや働くところが無い』と言われて。それから16年が経って、障がいのある人のグループホームとショートステイをやっと始めることができたのですが、商業施設のように誰もが行きたがる施設にしようと考えたのです」

ここでは障がいのある人が健常の人と一緒にパンを焼き、足湯には園児もリハビリの人も、地域の人も観光客も来る。

「結果的に本当に“ごちゃまぜ”な世代間交流が自然と生まれるのです」(田中さん)

人口約5万人のまちが国に先駆ける地域ケア
いま政府は「地域包括ケアシステム」の構築を進めている。これは高齢者が可能な限り住み慣れた地域で自分らしい暮らしをおくることを目的としたものだ。

内田病院は、医療だけにとどまらず介護や福祉の分野まで取り組み、まさに子どもから高齢者、障がいのある人が安心して暮らせるまちづくりを行っている。

ではなぜ田中さんは、これまで難しいと思われていた包括ケアに挑戦するのか?

「沼田市は人口が5万人程度、うちも10年前は職員300人規模の医療法人グループでした。しかし現在は600人を超える職員がいます。だからこそ『こういうやり方をすると人が集まってきて、満足度が高いエリアになる』という発信ができれば、同じ規模の自治体のモデルになれるんじゃないかと。私たちは地域への反映に約20年かかりましたけど、このノウハウがあれば他の地域でも2年くらいでやって頂けるかのではないか思っているんです」

若者が帰りたい、残りたいまちづくりとは
さらに田中さんは「実はもう1つ理由があって」と続ける。

「これは本当にエゴでしかないのですが、私には子どもが3人いますが、赤ちゃんの時にとにかく可愛くて手放したくなかった。だから子どもたちが仮に都会に行っても帰ってきたい、残りたいまちを20年かけてでもつくろうというのが発端だったんです(笑)。だから誰もが楽しく働く場所があって、子どもを育てやすい環境があって、住みたくなるまちをつくろうと。おかげさまで子どもたちは皆、ふるさとに帰る予定です」

田中さんは若い職員に「要介護者を増やさないことは社会保障費を必要以上に上げないことになる。それは自分たちの未来のためなのだから、我が事としてやりなさい」と言っているという。

医療・介護・福祉を一体化させ、子どもから高齢者まで安心して暮らせるまちをつくる。そんなまちになれば、若者が帰りたいふるさとが日本中に生まれるだろう。

【執筆:フジテレビ 解説委員 鈴木款】
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医療から出発して老人介護や精神医療から就労支援にまで拡張していくケースはよく見ますし、学童保育や放デイにまで拡大していくのは、発達障害医療から放デイと言う形で最近ちょくちょくあります。町ごと丸抱えというのは地方ならではの取組だと思います。云わば地方でこうした芋づる式に必要だから作ろうと考えて実現できるかどうかは経営者次第だということです。

医療が福祉分野に拡大していくのは穿った見方をすれば、医療ニーズが変わってくる中で顧客(患者)を離さない取組とも言えますが、それが職員の新しい職域を開発し地域の雇用ニーズを作り出し地方を活性化することにつながるなら良いことです。本来なら行政や議会が動いて地域インフラの設計図は描くことが理想ですが、既得権益にがんじがらめの政治家や今まで通り路線の役所に任せていたらいつまでたっても実現しません。

医療法人が一定の資本力を得て、地域に資本投資して地域のインフラを整備していく話は、テレビでは地元の事など目もくれず合理主義を持ち込んだ儲け主義の理事らが画策していくというドラマ展開が多いのですが、田中理事長のような方もいるのだと強く発信してほしいと思います。

しかし、その起点が医療法人である必要はありません。地域で大きくなった企業は地域にたくさんの従業員がいます。その従業員の家族には子どもや老人もいれば障害のある人もいます。乙訓地域は世界に知られる資本力の強い大企業も多いです。地元の大企業が必要な地域インフラを拡大して持続可能な地域社会を作るように動き出せば、新しい共生社会のモデルを作ることも可能です。重要なのは法人トップの事業理念だということを田中理事長は教えてくれています。

感染再拡大 新学期迎えた学校 感染対策を徹底して授業再開

感染再拡大 新学期迎えた学校 感染対策を徹底して授業再開

01月12日 【NHK】

新型コロナウイルスの感染が再拡大するなか、東京都内の学校では新学期を迎え、受験を控える6年生の児童もいることから、感染対策を徹底して授業を再開しています。

このうち、東京・大田区の区立出雲小学校では11日から3学期が始まりました。学校では、登校時の感染対策として、昇降口で教師がサーモグラフィーを使って児童の体温を測定し、発熱している人がいないか確認しています。

また、中学受験を控えた児童がいる6年生をはじめ、各教室では担任が1人1人、児童とその家族の体調に問題がないかどうか聞き取ったあと、児童は消毒して入室していました。12日は毎年この時期に行われている学校の開校記念の催しもありましたが、リモートでの開催となり、児童たちは教室の前の大画面を通じて校長の話を聞いていました。

また、毎年恒例の新年の書き初めの授業は、日にちを分散したうえで、スペースを確保しやすい体育館を活用し、できるだけ間隔を空けて行われていました。

学校行事にも引き続き影響が及んでいて、去年9月からことし3月に延期された6年生の1泊2日の校外学習も今後の感染状況を見ながら実施の可否を判断したいとしています。

中学受験を控えた6年生の男子児童は「受験まで1か月を切っているのでコロナだけでなく風邪などをひかないように引き続き気を引き締めて感染予防に努めたいです。行事が開かれない可能性もありますが、日頃からの友達と過ごす今の時間を大切にしていきたいです」と話していました。

関眞理子校長は「オミクロン株は感染力が強いとのことなので、小さな症状でも配慮するよう家庭に声かけしています。コロナ禍の生活に子どもたちも不安を感じているのでケアをしていきたい。健康で安全安心な学校生活を送れるよう、先生を含め、健康管理や感染対策をしっかり行うことを心がけています」と話しています。

文部科学省は厚生労働省とともに大学受験を控える受験生向けに作成した「受験生のみなさんへ」という文書をホームページに掲載していて、感染リスクをできる限り減らすための対策を紹介しています。

このなかでは体調がおかしいときには外に出ない自主的に検温をする外出は最小限にとどめるこまめな消毒といった受験生本人がとる基本的な感染対策のほか、受験生がいる家庭内で心がけることも掲載されています。

まず、家庭内で普段から心がけることとしてはお互いに体調を確認しあって症状がある場合は早めに医療機関を受診すること受験生の家族は会食など、外出先で感染リスクのある行動をできるだけ減らすこと家族での食事の際にも可能な範囲で距離を確保することなどをあげています。

また、もし、体調が悪い家族がいる場合には同じ部屋での食事や睡眠を避け、難しい場合は距離を保つ工夫をすること家族での会話の際にもマスクを着用することなどをあげています。

そのうえで文書では新型コロナウイルスは誰でも感染する可能性があり、感染した人を責めることなくみずからを守る行動を心がけるよう呼びかけています。

首都圏の1都3県の私立中学高等学校協会などによりますと、埼玉県では今月10日から千葉県では今月20日以降、東京都と神奈川県では来月1日以降、それぞれ私立中学の一般入試が行われます。

中学受験の模試や受験情報のとりまとめを行っている「首都圏模試センター」の調べによりますと今月6日の時点で、首都圏の1都3県の私立中学校の少なくとも70校以上が、新型コロナウイルスに感染するなどして試験を受けられなくなった人のため、追試を予定しているということです。

また、およそ18校は追試などの対応が可能かどうか学校に相談してほしいとしているということです。

首都圏模試センターは「今後の感染状況によっては、追試などの対応をとったり、入試について変更する学校も出てくると思うので志望校のホームページをこまめに確認してほしい」と話しています。

今月15日からは2日間の日程で「大学入学共通テスト」が行われるなど、首都圏では今後、高校入試や大学入試もピークを迎えます。

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中学受験まで感染リスクの管理を行う、これが今の東京の実情だと言う事がよくわかる記事です。東京では平均2割程度ですが文京区や港区では4割ほどの子どもが私立中学に行くので中学受験は珍しいことではありません。全国平均で1割程度ですから、乙訓地域では各クラスで3~4名が東京港区のクラスでは15名以上が私学に進学する感じです。

大学入試では、感染や濃厚接触で共通テストが受験できなければ各大学で試験をするように通達した事が不公平になるのではないかという議論が起こっています。理由は共通テストの点数で各大学は足きりをするのに対象者はそれをスルーできるからだそうです。筆者も含め昭和生まれの約半数は試験一発勝負の世代なので事態の重大さがわからないのですが、平成生まれの人たちはすぐに気づいたようです。

それにしても、オミクロン株の症状は風邪引きと酷似していると症例も集まってきているのに、感染者数ばかりを強調しNHKも事実上他のメディアと同じく煽っている感があります。一気に広がると入院施設が対応できないからと言いますが、次の山が来ると専門家も政治家も一様に表明していたのに、以前と全く同じ発言をして無策に悪びれる様子もありません。

そもそもエボラ出血熱と同じ扱いの2類相当を、インフルエンザ並みの5類相当に修正すれば通常の対応に戻せたはずでした。結局、重症化しないという症状に関係なく制限を強くすればするほど支持率が上がるというポピュリズムがそれも許さなかったということです。沖縄はオミクロン拡大で緊急事態宣言の要請をしていましたが、重症者は僅かでした。この騒ぎ方も、世界中で広がっている感染を米軍基地の責任にして政治的に煽っている感じがします。必要以上の制限をして必要のない休校休所で子どもを巻き込まないで欲しいと思います。

学校ができることは手洗いうがいを励行することです。重症例がほとんどないのに、新しい株が出るたびに行事を止めたり特別な措置をしていては、この先教育も福祉も成り立ちません。メディアの取り上げ方も、感染者が増えた増えたと騒いで不安を煽るのは、そろそろ終わりにしてほしいと思います。大事なのは症状と予防法をデータを示して正しく説明することだと思います。

「助言しない」意識変革を

「助言しない」意識変革を

2022/1/12 【産経WEST】

「私は臨床心理士なので、具体的なアドバイスはしない」。困難を抱える子供や保護者の支援を担う心理の専門職、スクールカウンセラー(SC)への取材を重ねる中で、何度も聞いたセリフだ。だが文部科学省は問題解決のため、SCに対して保護者に助言をするよう明確に求めている。それが、なぜそうなるのかと驚いた。

SCという名称の固有の資格はなく、文科省によると、現在のSCの大半は臨床心理士の有資格者だ。臨床心理士が心療内科などで行うカウンセリングでは、相談者が自分の考え方のクセといった問題に自ら気づけるよう、本人の話に傾聴して共感を示し、内省を促す手法が主体とされる。この一面においては、「臨床心理士はアドバイスはしない」のだろう。

だが臨床心理士の資格は個人的な背景にすぎず、自治体から採用されてSCになったのなら、「SC」としての責務を全うしてもらわなければならない。文科省の有識者会議によるガイドラインは、子供にはカウンセリング、保護者には助言をするよう明記している。このガイドラインを基に各自治体が作成する活動指針も、同様のはずだ。

保護者は悩みや不安を抱え、すがる思いで相談に訪れる。それなのに、カウンセリング手法で話を聞いて共感されるだけでは、解決の糸口すらつかめない。中学生の長女が不登校になった愛知県の女性(53)は、SCから「本人が登校する気になるのを待ちましょう」と言われるばかりで、何をして待てばいいかの助言もなく不安を募らせたという。だが、取材に「臨床心理士として言えるギリギリが、『待ちましょう』だ」と答えたSCもいた。

もちろん取材では、子供の抱える問題の原因を見立て、積極的に助言するSCにも出会った。メールで連載への感想を寄せてくれたSCの女性(56)も、保護者との面談のたびに必ず助言をするといい、「子育て期はあっという間。保護者の悩みに今、対応して解決しなければならない」と話した。だが、そんなSCはむしろ少数派だとの声もあった。

SCには心理分析の知識だけでなく、教員と連携するためのコミュニケーション能力などさまざまな資質が求められる。財務省は今年度、各省の事業の有効性や効率性を調べる「予算執行調査」で、SCについて「資質の向上が最需要事項」と指摘した。

だが、「うまく助言できない」のではなく「助言しない」と決めているのであれば、資質以前の問題だ。文科省と自治体は今一度、SCの職務内容を周知徹底してほしい。SC側も、学校にかかわる専門職として求められている役割が何かを改めて考え、意識を変える必要があるのではないか。(藤井沙織)

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傾聴して指示はしない、カウンセリング理論の基本です。ただ、保護者は生徒と親子関係にあり保護者が影響を与えている場合があるとは言え当事者ではないですから、「助言しない」という理由が不明です。「子どもに助言しない」と言う助言はありですが、親にも教員にも助言しないと頑なに拒むカウンセラーがいるとすれば、その方自身が社会性の課題を抱えていると考えるべきです。そもそも導入時から臨床心理士を学校に迎え入れるのに、傾聴だけするカウンセラーで教育相談に役に立つのかと言う議論がありました。

この懸念を抑えて押し切ったは、かつての文化庁長官河合隼雄さんの力が大きいです。不登校や引きこもり相談のパイオニアであった河合さんが臨床心理士会をてこにSCを定着させたという経緯があるのです。秘密を守ることは子どもとの信頼関係を築く第一歩ではありますが、全てではありません。他の大人とも情報共有することを子どもが安心して理解できるようにするのもSCの仕事です。

SCには生徒のカウンセリング業務以外にコンサルテーション(助言)業務が課されています。対象は保護者と学校関係者です。ところが、この人たちに向かって「助言しない」と言ったら業務放棄です。一度決めたら修正できない「お役所仕事」で全ての公立学校にSCを文科省は置いたのですが、とうとう現場の不満が爆発し、財務省の経費削減路線と合わさって「SCは役に立たない」大合唱が始まったわけです。

SC採用の際に臨床心理士会の心理士ならフリーパスと言う採用の仕方にも問題があります。今は少なくなりましたが、子どもの特性によっては傾聴が役に立たないことを知らない臨床心理士もいるのです。そして、子どものカウンセリングと関係者への助言はセットにして効果が上がるのは当たり前のことです。助言しないと言うSCは辞めてもらえばいいのです。制度そのものと運用(採用方法)の問題をすり替えないでほしいと思います。

ボードゲームの「先生」に転身 元小学校教員が専門店

ボードゲームの「先生」に転身 元小学校教員が専門店 三郷

2022年1月11日 【朝日新聞】

大人も子どもも楽しめるボードゲームの魅力を発信する店が埼玉県三郷市にある。店主の小野貴弘さん(48)は元小学校教員。クラス活動にボードゲームをとり入れたことがきっかけで「どっぷりはまって店まで出してしまった」。各地の愛好者が店に集まり、交流の場にもなっている。

みさと団地センターモール商店街の一角にある「さいころテーブル」。棚には約300種類の国内外のボードゲームやカードゲームが並び、購入したり有料で遊んだりできる。「ゲームというと勝敗を競うイメージが強いけど、一緒にミッションを達成する全員協力型もある。自分に合ったゲームを案内します」と小野さん。

2019年6月に開店する前は、約20年間、都内の小学校に勤めていた。ボードゲームとの出会いは8年前。発達障害などのある子どもが通う少人数学級を担任した時、ボードゲーム好きの同僚に勧められてクラス活動にとり入れてみた。すると、「子どもたちが見違えるように生き生きしたんです」。

推理系のカードを使って駆け引きする「ハゲタカのえじき」では、勝ち負けで驚くほど盛り上がる。それだけでなく、感情の起伏の激しい子どもでも、ルールを学んで気持ちを抑えられるようになる。コミュニケーション力と社会性を育む効果を実感し、「こんな面白いものがあったのか」と小野さん自身が夢中になった。

やがてボードゲームを紹介するブログを開設し、豊富な知識と解説がネットの話題に。「自分のやりたいことを追求したい」と思い切って19年3月に教員を辞め、3カ月後には自宅近くの団地の空き店舗を見つけて開店にこぎつけた。

異例の転身から2年半余り。この間、コロナ禍で休業した時もあったが、看板に「3さいから99歳まで」と掲げた通り、客層はじわじわと拡大しているという。

土日祝日は親子連れ客が多いが、平日の夜は大人の客が中心となる。いつしか愛好者が連絡を取り合って毎週金曜日に集まるようになった。

昨年12月17日の夜は30~40代の男女11人が参加。小野さんお勧めのボードゲームを楽しんだ。

話をやりとりしながら違うお題のカードを持つ人を当てるコミュニケーション型ゲーム「ワードウルフ」では、プレーヤー同士の心理を探り合うスリリングな会話が熱を帯びた。

春日部市から参加した30代男性は「初めてのゲームでも、店主がわかりやすく説明してくれる。気配りも上手で、さすが元小学校の先生です」と話す。

小野さんにとっても、店が小さな社交場となることは想定外だったそうだ。「ボードゲームは人が顔を合わせてはじめて成立する。ある意味でぜいたくな時間を提供しているのかもしれませんね」

店は通常、火・水定休。詳細はホームページ(https://saikoro-table.com/別ウインドウで開きます)。(米沢信義)

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良い先生だったのだろうという事がよく分かります。40代前半で教員に見切りをつけて店を出すあたりがかっこ良すぎます。ボードゲームやカードゲームにはまり込む大人は結構いますが、感心したのはボードゲーム屋一本で店を開いたところです。場所代一人15分100円で20席程、平日は16時から22時までの6時間、席稼働率が3分の1なら1日2万円の売上です。20日間営業で40万円、固定経費と新しいボードゲームを仕入れたら一人でギリギリ生活の勘定です。教員時代の収入は得られません。それでも店を開くなんてかっこいい!

放デイで、ボードゲームをたくさん用意して社会性を育みますというキャッチはあちこちで見かけますが、ボードゲームだけで社会性が育めるなら苦労はないです。ただ、子どもが自発的に興味を持つ遊びは学びが多いというのは事実です。そして最も必要なのは、子どもが興味のあることを度真剣に取組んでいる大人の存在です。子どもは遊びでも仕事でも真剣な大人が好きです。ジャンルはそれがボードゲームだろうがサッカーだろうがなんでもいいのです。その大人がやる事喋ることが全て憧れになります。

こうした大人の存在をカリスマティックアダルトと呼びます。ちょっと性格変だけど岩石にめちゃくちゃ詳しい先生や、Nゲージを語らせると一日中しゃべっている爺さんや、野山に行くと滅茶苦茶元気になる野外親父とか、引きこもっているけどファイナルファンタジーの生き字引と言われるおっちゃんなどはその道の子供の絶大な支持を受けています。そうですか小野先生やっぱり学校やめて道を究めますか。そうだろうなぁ。

国立に立ち上がったスカイツリー パラ閉会式「多様性の象徴」に

国立に立ち上がったスカイツリー パラ閉会式「多様性の象徴」に[連載・ツリーとともに](2)

2022/01/07 【読売新聞】

昨年9月5日午後8時、新宿区の国立競技場。13日間にわたって世界中の人々を魅了した障害者アスリートたちによる祭典・東京パラリンピックの閉会式が始まった。

国旗の掲揚や君が代の斉唱が厳かに終わった後、各国選手団の旗手が入場。横たわった東京スカイツリーのオブジェに近づき、手のひらサイズの円形の鏡を次々に貼り付けていく。

無数の鏡でキラキラ光るスカイツリー。パフォーマーたちが引っ張り起こそうとするが、あえなく倒れてしまう。多くの人たちが加わり、さらに選手たちの声援が後押しとなって、スカイツリーはついに立ち上がった。全ての違いが輝く街「ダイバーシティー」の完成。それを祝うように、スタジアムから一斉に花火が打ち上がった。

鏡は大会で輝きを放った選手たちの象徴で、選手たちが東京の街に輝きを与える――。総合演出を手がけた小橋賢児さん(42)は式を見届けると、「あらゆることをやりつくした。みんなの願いが通じたようだ」と感涙にむせんだ。

考え抜き行き着いたのは「調和のとれた不協和音」
パラリンピック閉会式の演出依頼は突然だった。本番まで1年もない時期、スマートフォンに大会関係者からメッセージが届いた。「まさか自分が……」と鳥肌が立った。

子役の頃から俳優として活躍してきた。ただ、俳優業をこのまま続けることに不安を抱き、27歳で休業。米国へ留学した。大陸を横断中、フロリダ州で野外コンサートに出掛けた時のこと。みすぼらしい服装の人もそうでない人も、いろんな肌、いろんな国の何万という人たちが体を揺らしてともに音楽を楽しんでいた。「違いを持つ人たちも、互いに共鳴しあえる場が作れるんだ」。演出の世界へ進み、10年あまりの歳月が過ぎていた。

パラリンピックという、異なる障害を持つ選手たちが競い合う場をどう表現するか。数週間考え続け、たどりついたテーマが「調和のとれた不協和音」だった。強さや速さを追い求めるだけではなく、個々の違いをありのままに出すことで、人々が感動を共有できる場になるはず、とのメッセージを込めた。

東京スカイツリーなら国立のフィールドで
このテーマを国立競技場のフィールドで形にする方法は、大道具の職人にいたるまですべての制作スタッフから意見を募った。

あるスタッフが口にした「東京スカイツリーなら、高いところから広く選手の活躍を届けられる」というアイデアに思わず膝を打った。

新型コロナウイルス感染防止のため、海外からやってくる選手たちは、競技以外は選手村から出ることさえ許されない。閉会式で東京の街並みを出現させれば、選手たちをそこへ案内できる。ツリーの白いフォルムは、何色にも染まる「多様性の象徴」にも見えた。ツリーのオブジェの周りにカラフルな毛糸やフリル、バルーンでビルや花々、橋を作り、個性を表現した。

本番を迎えるまで、ゲストの出演交渉が決裂したり、コロナ禍で出演者が大勢集まる機会が減ったりと多くの困難に直面した。それでも「楽しむことが大切」という信念は曲げず、現場のスタッフたちには笑顔で接することを心がけた。

スタッフや出演者らは、障害者のために振り付けを工夫し、夜遅くまでパフォーマンスの練習を繰り返すなど、要求に応えてくれた。「違いを認め合い、心からやりたいことができるのは素晴らしい」と心の底から感じた。

大会後、3年後に催される大阪・関西万博のイベント統括を任せられた。「また人生を豊かにするような、出会いが生まれるといいな」。どうやってもう一度、世界に日本をアピールしようか、心を躍らせている。

歌舞伎にも 絵本にも
東京のシンボルとなったスカイツリーは、イベントにとどまらず、舞台や書籍など幅広い分野で登場するようになった。

ツリー開業を前に、浅草の隅田川沿いに仮設された芝居小屋「平成中村座」では、歌舞伎の演目中、舞台奥の大扉が開くと、隅田川越しにスカイツリーが借景になる演出が行われた。

また、2012年出版の絵本「ゆめのスカイツリー」(金の星社)では、子どもたちが夢で見たという、パリのエッフェル塔を肩車したり、月に届くほど背が伸びたりするツリーが描かれている。16年リオデジャネイロ五輪の閉会式では、東京をPRするショーでツリーの模型が登場した。

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オリパラ閉幕からほんの3か月程しかたたないのに、遠い過去のように感じます。それでも、競泳男子100平山口の世界新金メダルやボッチャ杉村の金メダル、メダリストにはならなかったけどパラアスリートの奮闘に対する感動は鮮明に覚えています。パラの開会式も閉会式も世界的に高い評価を得たのも嬉しいことです。

裏舞台で懸命に働いていた関係者の方々の思いもこの記事で知ることができました。オリパラ開会前は、障害者いじめに関与していたという演出者の話で炎上して開催そのものが危ぶまれていましたが、パラのイベントでしっかりリカバリーできて胸をなでおろした関係者は少なくなかったと思います。

思えば開催を前にして、オリパラの開催を危ぶむような報道が続きました。森会長の不適切発言も議事録をよく読むと、女性は優秀な方が多いので、今度も女性理事を入れてほしいという趣旨の発言でした。女性の話が長いという旨が趣旨ではないことは全文を読めば分かることですが、メディアはこれを切り取って書き立て、オリパラ反対の政治家たちも後に続きました。

気になるのは、フェミニズムや少数民族擁護、少数者の権利擁護の看板が大きな政治家ほど、20世紀にあり得ない女性権利の侵害や民族弾圧、人権侵害について批判の発信が弱いことです。たかがオリパラの会長発言とは言いませんが、森会長を罵ったメディアや政治家が、アフガンのアクンザダ師や中国の習近平について執拗に批判している姿は見たことがありません。タリバーンや中国共産党の人権侵害を暴き非難しても視聴率や支持率向上にはつながらないからだと思います。こうして、同じ事でも一方を非難し、他方は非難しないことを二重基準=ダブルスタンダードとか二枚舌とかいいます。

オリパラをはじめとするスポーツ競技は多様性社会を保障する民主主義の象徴でもあります。冬季北京五輪は来月ですが、パラ開催式に中国がどんな演出をするのか見てみたいものです。片方で人権蹂躙や国際法を平気で破りながら、もう片方で民族自決と国際平和などと嘯く二枚舌は共産主義国家や独裁国家のお家芸です。多様性社会を映し出したスカイツリーはこうした二枚舌の言動も包み隠さず映し出します。

伴走者が陸上トラックの内側を走る理由 ~パラ陸上伴走者・中田崇志

伴走者が陸上トラックの内側を走る理由 ~パラ陸上伴走者・中田崇志

1/5(水) 【ニッポン放送】

黒木瞳がパーソナリティを務めるニッポン放送「あさナビ」(12月29日放送)にパラ陸上伴走者・パラスポーツメッセンジャーの中田崇志が出演。伴走者として走る楽しさ、また気を付けていることについて語った。

黒木瞳が、さまざまなジャンルの“プロフェッショナル”に朝の活力になる話を訊く「あさナビ」。12月27日(月)~12月31日(金)のゲストはパラ陸上伴走者・パラスポーツメッセンジャーの中田崇志。3日目は、伴走者として走る楽しさ、また気を付けていることについて―

黒木)伴走者としての楽しさはどういうところにありますか?

中田)「選手が力を出し切れるように走れたな」と思えたときは嬉しいです。自分1人であれば、自分がいま苦しいかどうかは自分でわかります。でも選手が苦しいかどうかは外から見るだけなので、難しいです。「いまここでスパートしても、選手は最後まで持つかな」などと思うのですけれど、そこをいつもの練習のなかで、「こうなれば選手が苦しい」ということが感じ取ることができると、本番でもうまく行きます。

黒木)そのときの阿吽の呼吸みたいなものはどうやって培うのですか?

中田)伴走ロープが2人の呼吸を合わせてくれるのです。伴走ロープが、あるとき「グッ」と固くなることがあります。選手が疲れて来ると、腕の振りが小さくなり、「あれ、いつもと変わった」ということが、その瞬間に感じるのです。

黒木)固くなったときに。

中田)伴走ロープはただの「もの」ではなく、2人の間をつないでくれるものなのです。

黒木)走っているとき、中田さんの場合は、選手の内側に入るというころです。選手が縁石を踏むのが怖いと伺いましたが、それはどういう意味ですか?

中田)400メートルの陸上競技場のトラックは、内側に10センチくらい出っ張っている縁石があるのです。

黒木)10センチもあるのですか。

中田)そうなのです。踏んでしまうと転倒する可能性もあります。だから視覚障害の選手をあえて外側にして、私が縁石のギリギリを走るようにしています。そうすると選手は安心して一歩を踏み出せるのです。内側を走る方が距離は短くなるのですが、外側であれば安心して走れます。どちらがいいかは、選手によって異なります。

黒木)縁石は10センチもあるのですか、怖いですね。

中田)私たちがメダルを獲ったアジア大会でも、1位の選手が最後の200メートルで内側に一歩入ってしまって失格になりました。

黒木)そういうこともあるのですね。

中田)ですので、私たちは伴走者が内側を走ることにしています。

黒木)日本では、伴走者が内側を走ることが多いのですか?

中田)世界では半々くらいです。意外なことに、短距離の選手は伴走者が内側の方が多いです。ものすごいスピードで走るので、一緒にコントロールするのが難しいのですね。

黒木)そうでなくても危険を伴う、早さを競い合う陸上競技ですからね。

中田)早さも大切ですが、何よりも選手が安心して安全に走れるということが最も求められることです。

黒木)中田さんはいろいろな経験をなさったアスリートでいらっしゃるのですけれど、どなたでも伴走者になれるのですか?

中田)伴走者に資格はありません。黒木さんもいま、視覚障害の人と走ろうと思えばすぐに走れます。大会も出られます。

黒木)具体体に、どういうことを声かけなさっているのですか?

中田)走るときには大きく2つあります。まずは安全面。コースで、「30メートル先、右90度カーブです。20メートル、10メートル、5、4、3、2、1。はい曲がります。はい曲がり終わりました」というような声かけが1つです。

黒木)コースの状態ですね。

中田)もう1つは、周りの選手の状況を伝えています。「ケニアの選手があと10メートルまで迫って来ましたよ。ちょっとずつ迫って来ました。もう少し、ジワジワ追いかけて来ますよ」というように実況する場面もあります。


中田崇志(なかた・たかし)/ パラ陸上伴走者・パラスポーツメッセンジャー

■1979年・宮城県仙台市出身。
■中学時代に陸上競技を始め、大学時代には日本インカレ・3000m障害で7位入賞。
■東京学芸大学卒業後、NTTデータに勤務しながら、陸上競技を継続。
■2003年にパラ陸上長距離の伴走に取り組む。
■2004年、高橋勇市選手と共にアテネパラリンピックに出場。マラソンで優勝。
■2012年、ロンドンパラリンピックでは、和田伸也選手と共に出場。5000mで長距離立位初となる銅メダルを獲得した。
■2021年の東京パラリンピックでは、パラ陸上にかかわるきっかけとなった髙橋勇市とともにパラトライアスロンの伴走者として出場を目指した。
■パラ陸上における百戦錬磨の伴走者であり、パラ陸上のスペシャリストである。

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この記事を読んだとき、聴覚的支援も視覚的支援も同じだなと感じました。聴覚的支援は視覚に比べ聴覚が相対的に優れた方に、視覚的支援は聴覚に比べ視覚が相対的に優れた方に行う支援です。感覚的には真逆の支援ですが、認知的には同じ支援です。声掛けをするとありますが、要するに周囲の状況や今後の見通しを聴覚で伝えるか視覚で伝えるかの違いで、伝えていることは同じです。

伴走者が内側を走って縁石で躓かないようにというのも、環境の調整として構造化したり嫌な刺激を少なくする配慮を支援者が先回りしているASD支援に似ています。視覚障害者への伴走ロープの役割は、ASD者にとっては支援者への発信です。表出コミュニケーションの絵カードであったり感情表出であったりするのかもしれません。ASD者の表現で支援者は適切な支援が提供できます。逆に言えば、伴走ロープや表出コミュニケーションツールがなければ相手の体調や思いを知る術もないということです。

「伴走者に資格はありません」「視覚障害の人と走ろうと思えばすぐに走れます。大会も出られます」とは言いますが、それは中田崇志さんが縷々説明したように、支援を提供する人に適切な支援ができ、伴走ロープがあってこそだという事を忘れてはならないと思います。もちろんその他の障害の支援でもこれは同じ事です。誰でも支援はできますが、前提条件は個性に合わせた環境調整と支援を受ける側に表出手段があることです。

凍える心、温め解かした感謝の言葉 駿府学園で矯正教育を受ける少年

凍える心、温め解かした感謝の言葉 駿府学園で矯正教育を受ける少年 高齢者と交流【幸せまでの距離③】

2022年1月5日(水)【静岡新聞】

「自分はずっと社会の邪魔者だと思っていた」。県内唯一の少年院「駿府学園」(静岡市葵区)で矯正教育を受ける少年(17)は、高齢者からの感謝の手紙と写真を見て自らを振り返った。他人のために尽くし、感謝されたのは初めての経験。「自分もこの社会で生きていける」。更生を信じる周囲の支えが、凍り付いていた少年の心を解き放った。

同学園で暮らす少年たちが週1回ほど、食事介助やリハビリの手伝いなどに通っているのは、近くの特別養護老人ホーム「楽寿の園」。コロナ禍が拡大してからは訪問活動を休止している。寝たきりや障害のあるお年寄りらは、少年たちを孫のように思い、再会を待ちわびている。

交流を始めたのは43年前、高齢者との関わりが更生の手掛かりになればと、学園側から相談したことがきっかけ。力仕事も快く引き受ける少年たちに、言葉がままならない入所者が「ありがとう」を伝えようと涙を浮かべて声を震わすこともあった。今では互いになくてはならない存在になっている。

少年(17)は幼い頃に両親が離婚し、父の下で育った。兄妹はそれぞれ障害を抱え、少年自身も発達障害がある。高校までバスケットボールに打ち込んでいたが、コロナ禍で部活動が思うようにできず中退し、不良仲間と一緒に知人を殴って逮捕された。

「どんな顔をして生きていけば良いのか分からない」。目標を失って自暴自棄だった少年を変えたのは、楽寿の園の利用者との交流だった。「自分を必要としてくれる人がいる」と実感し、前を向くことができた。

敬老の日に合わせ、少年は学園内のグループ7人でプレゼントする貼り絵を制作した。デザインや色使いを決め、仲間と協力して仕上げた作品のタイトルは「支え合い」。コロナ禍で閉められたカーテンが開き、少年とお年寄りが再び交流する姿を表現した。

貼り絵を受け取った有馬良建理事長(64)は「お年寄りに心を寄り添わす彼らは、純粋な心を持っている。犯した罪の痛みを知っているからこそ、他人の痛みが分かるはず」と更生に期待を込める。

少年は2021年11月、ハローワークでとび職の仕事が見つかった。内定を出した建設会社の会長が身元引受人になってくれる。「楽寿の園のみなさんを裏切りたくない。人に役に立つことができた喜びを忘れず生きていきたい」。進むべき道は開けた。困難があっても、今度は逃げないと誓う。
(社会部・崎山美穂、写真部・小糸恵介)

<メモ>駿府学園は関東甲信越と静岡県の家庭裁判所で短期間の処分を受けた、主に14歳から17歳3カ月未満までの少年が暮らす。2021年12月24日現在、定員90人に対して入院する少年は14人。多くは窃盗や傷害・暴行、詐欺容疑で、高齢者をだました特殊詐欺の受け子もいる。

少年犯罪の背景にはさまざまな要因が複雑に絡む。学園が力を入れるのは、再犯・再非行を防ぐための居場所づくり。地元企業を招いた資格取得授業などを展開する。「楽寿の園」での職業体験は矯正教育の最終段階。43年間でトラブルはなく、連携して少年の立ち直りを支えている。
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少年犯罪を繰り返す子どもの多くが発達障害を持つと言われています。吟味しないで行動してしまう。感情のコントロールができない。何度も同じ失敗を繰り返して学習効果があがらない。相手の感情がわからない。いずれも発達障害のADHDやASDに見られる特徴です。低学力の原因が文章がすらすら読めないことで学習が苦痛になるLDの子どももおり、やってもやっても成果が上がらないので学習性無力感を持つ子どもや自尊感情の低い子どもが多いです。

そして、これまでの研究では安心できない家庭環境が、幼い子どもの脳にダメージを与え、感情をコントロールする前頭葉・言葉や文字を認識し変換する部位の機能等が著しく低下し発達障害の脳と同じようになってしまうという報告がされています。この研究は脳画像の研究から明らかになったものですが、古くはチャウシェスク症候群として知られています。

1960年代後半、ルーマニア社会主義共和国の国家元首となったチャウシェスクは人工妊娠中絶や離婚を禁止した結果、貧困と育児放棄によって産後間もなく貧困な環境の養護施設に引き取られる子どもが増えました。1989年社会主義政権崩壊後、子ども達は先進国で育てられますが、その多くは発達障害と診断されました。6カ月以上施設にあずけられた子どもには自閉症のような症状がみられ、見知らぬ人にまったく警戒心を抱かずに接近する、不注意で多動といった症状が成人期まで一貫してみられたといいます。

逆に、親子分離が6カ月以内であり、里親が育児を引き継げば、子どもは問題なく育ち、失業率も10%でした。愛着に関するもっとも感受性の高い時期は、子どもが安定した情緒的関係を築きつつある時期で、およそ6カ月から2歳頃までです。この時期に母親(養育者)との関係が断ち切られてしまうと、その影響は後々まで外傷体験として残ることは多くの専門家が知るところです。幼少期に負った心的外傷=脳機能の低下で触法行為に至った子どもたちが治療的教育で回復するのは大変険しい道のりです。しかし、駿府学園のような取組の成功例を見ると、子どもの可塑性とそれを信じて長年こつこつと実践を積み上げる関係者の愛情の深さに感動をおぼえます。

学校でのいじめ厳罰化へ 自殺なら禁錮10年 仏

学校でのいじめ厳罰化へ 自殺なら禁錮10年 仏

2021/12/29(水) 【時事通信】

フランスのマクロン大統領=17日、ブリュッセル(AFP時事)
【パリ時事】フランスで、学校でのいじめを厳罰化する動きが進んでいる。

国民議会(下院)は11月、いじめ被害者が自殺または自殺未遂した場合に最大で禁錮10年と15万ユーロ(約2000万円)の罰金を科すことなどを定めた法案を可決。来年1月には上院の審議が始まる。

現行法では、いじめ加害者が13~17歳の場合は最大で禁錮2年6月と7500ユーロ(約100万円)の罰金、18歳以上の成年なら最大で禁錮5年と7万5000ユーロ(約1000万円)の罰金が定められている。被害者が自殺または自殺未遂した場合に刑が最も重くなる。刑事責任を問われない13歳未満の加害者は罰則の対象外。

教育省報道官は時事通信の取材に対し、今回の法案について「罰則の適用年齢など詳細は今後の審議で決定される」と説明した。

ここ数年はインターネットを通じたいじめが増加している。政府は来年2月、いじめ被害者のスマートフォンに届いた嫌がらせメッセージの画面内容を保存した「スクリーンショット」などを送信できる通報アプリの運用を開始予定。子供のパソコンやスマホなどを親が管理できるようにする措置も検討している。

教育省の発表によると、フランスでは全児童・生徒の6%に当たる年間約70万人がいじめの被害に遭っている。報告されていないケースも多く、今回の法案によると、実際の被害者は80万~100万人に上るとみられている。

10月には、東部アルザス地方で14歳の少女がいじめを苦に自殺した。地元メディアによれば、同性愛者であることやモロッコ人の母親を持つ人種的ルーツに関して、女友達のグループから2年にわたり暴言を受けていた。

マクロン大統領は事件を受け、11月にインターネット交流サイト(SNS)上に投稿した動画で「いじめの被害に遭っている全ての若者へ。われわれは君たちの味方だと知ってほしい」と支援を表明した。

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日本のいじめ認知件数が50万人でフランスは70万人ということは、人口比で考えると日本の3倍近い認知率となります。フランスの深刻さはそれが移民に向けてのものが多いという事です。多様性社会のトップランナーともてはやされるフランスですが、社会の鏡と言われる学校でこの有様ですから、現実にはさらに深刻ないじめや差別が存在することは容易に推察されます。

中世から近世にかけて経済でも芸術でも世界に影響を与えたフランスのプライドは今でもフランス人の中に息づいています。未だにパリでは英語が話せてもフランス語でしか応えない年配のパリジャンは少なくありません。フランス語も話せないくせにパリに来るなと言葉では言わないかわりに、こうしたイケズをするのです。こうした古い慣習の滓と、大量の移民問題を抱えているフランスの政治的な課題が合わさって差別やいじめが起こっていることが深刻なのです。

その政治的課題が学校生活にまで及んでいるゆえに、日本からすれば考えられない量刑が課されようとしているわけです。中2(コレージュ3年)で禁固2年半ですから在学中は塀の中となります。それが少年院なのか刑務所なのかはこの記事ではわからないですが、多様性社会を守り抜くためとは言えフランスの民主主義への向かい方は半端ではありません。

中国共産党によって思想弾圧や女性の凌辱という人権弾圧が今起こっているのに、糾弾する「タイミングではない」と言う政党幹部や国会議員を見ていると情けなくなります。人権侵害を知ればその非難はタイミングで発言するようなものではなく、リスクを背負ってでも声を上げるべきものだと子どもにも教えるのが人の道です。

ハンディある人の夢かなえたい 日本科学未来館館長・浅川智恵子さん

ともに・共生社会めざして
ハンディある人の夢かなえたい 日本科学未来館館長・浅川智恵子さん

2021/12/28【毎日新聞】

日本科学未来館(東京都江東区)の館長、浅川智恵子さん(63)=IBMフェロー=は全盲の研究者だ。今春に就任し、未来館を「アクセシブル(利用しやすい)なミュージアム」として世界のロールモデル(模範)にすることを目標にする。障害者などマイノリティー(少数者)の生活に科学技術がどう貢献するのか。ダイバーシティー(多様性)との関連について、浅川さんに聞いた。【聞き手・明珍美紀】

――日本科学未来館は、新館長のもと、2030年に向けたビジョンに「あなたとともに『未来』をつくるプラットフォーム」を掲げました。

◆一方的に科学技術を享受するだけではなく、利用する方それぞれが、テクノロジーの進歩によって実現される新しい生活を想像し、社会実装に向けた活動に関わっていく。そんな思いが込められています。

――利用者自ら、実用化のために参加するのですね。

◆どんなに素晴らしい技術が発明されても利用されなければ、価値が失われてしまいます。私自身、長い間、視覚障害を中心に、アクセシビリティーの分野で研究開発に従事してきました。研究者という立場だけでなく社会実装を促進するために未来館の館長を引き受けようと決意しました。

――障害者にとって科学技術とは?

◆できなかったことを可能にするツール(道具)です。視覚障害を例に取ると、音声合成という科学技術がなければ、本を読む時は点字か録音されたものを聴く、あるいは人に読んでもらうことになります。実際にそういう時代が長く続いていました。それが、インターネットの普及でコミュニケーションの手段が変わりました。パソコンの画面の情報を音声で読み上げるソフトが開発され、目が見えなくてもキーボードを操作して文章を書き、メールで送ることができます。

また、携帯電話で写真を撮れるようになった時、それまでは周囲の人に聞くしかできませんでしたが、周りの風景を撮影して友人に送り、自分がいる場所を教えてもらうことができるようになりました。これからは、センサーを駆使することで、街を一人で歩くことが可能になるかもしれない。その一歩手前まで技術が進んできました。

――ご自身が開発中の「AIスーツケース」はその一つですね。

◆これは、視覚障害者の移動を補助するスーツケース型のロボットで、スマートフォンの専用アプリケーションを使って、目的地や途中経路を音声で案内します。ロボットにはセンサーが付いていて、危ない場所を回避したり、周囲の人と適切な距離を保って移動したりする機能を備え、未来館でも実装する準備を進めています。

年齢や国籍、障害の有無にかかわらず、まずは未来館が誰でも楽しめるアクセシブルなミュージアムとなり、展示を見に来た来館者が交流し、議論するような場にしたいと思っています。

多様性支える科学技術
――かつては日本では、女性の研究者は少なかったのではありませんか。

◆私がプログラミングの専門学校を経て日本IBMで学生研究員として研究を始めた1980年代半ばは、女性の研究者はごくわずかでした。仕事と生活の調和を図る「ワーク・ライフ・バランス」や女性の視点はほとんどなく、女性の管理職も少ない。そうした環境で、点字のデジタル化などの開発に取り組んでいたところ、当時にすれば(会社側も)大変な決断だったと思いますが、正式な研究員として採用されました。

入社後、米国IBMに出張する機会が多くありました。米国で驚いたのは、管理職に女性がいるのは当たり前だったこと。同僚には、さまざまな障害者やLGBTQなど性的少数者がいたので、視覚障害者の私が仕事に加わることを当然のように受け入れてくれました。ダイバーシティーに関しては日本よりはるかに先を行っているという印象を受けました。

――未来館は、国立研究開発法人の科学技術振興機構が運営しています。今回は、国が関わる施設のトップに女性が就いたことでも話題を呼びました。

◆女性であるというよりは、目の見えない自分が館長を引き受けることの方が大変ですし、新たなチャレンジです。見えない分を補うためには、周囲とのコミュニケーションを図り、多くの人々から意見を聞く。これらは同時に、これからの研究に役に立つことです。

――どのような未来を求めますか。

◆国連がSDGs(持続可能な開発目標)に掲げる「誰一人取り残さない」という理念のように、誰もが社会の一員として、自分らしく生きる権利を保障されることです。

私は目が見えないことは、自分の個性だと受け止めています。世の中にはいろいろな人がいて、そうした多様性によって社会が成り立っていることを理解してもらいたい。

科学技術は、ハンディキャップのある人の自立生活に役立つだけでなく、さまざまな困難を抱えた人の夢を実現できるツールになる可能性があります。その意味で、科学技術とダイバーシティーは密接なつながりがあるのです。

■人物略歴

浅川智恵子(あさかわ・ちえこ)さん
1958年大阪府生まれ。プールでの事故がもとで14歳の時に視力を失う。追手門学院大、専門学校を経て85年日本IBM入社。92年日本語デジタル点字システムを開発。97年視覚障害者向けにウェブページを読み上げる「ホームページ・リーダー」を開発し、世界の視覚障害者の情報アクセス向上に寄与。2004年東京大大学院修了、博士号(工学)取得。09年IBMの最高技術職であるIBMフェローに就任。14年米国赴任。19年全米発明家殿堂入り。21年4月に日本科学未来館の初代館長だった宇宙飛行士、毛利衛さんに続く2代目館長に就任。

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我が国は古から海外の文化を吸収して、日本風にアレンジしてその文化を我が国のものとして長く後世に伝えると言う文化スタイルをとり続けてきました。遣隋使や遣唐使は今から1500年も前に当時の中国へ派遣されました。隋や唐の先進技術や優れた社会制度を求めて、西暦600年頃から894年のおよそ300年間、計23回に渡り日本から遣わされたのです。帰ってきた彼らは、大和政権で古来の八百万神に仏教を同居させた「神仏」を文化とし、農耕・土木・加工技術をはじめとする当時の我が国にとってのハイテクを発展させたのです。

先日終了した大河ドラマ『青天を衝け』の渋沢らが駆け抜けた時代もまた、わが国独自の社会体制に西洋の民主化の流れを輸入して和製立憲君主制と言う独自の政治スタイルを作り上げました。他国の侵略を防衛するために海外技術を取り入れ生産力を高め、国防に多くの国家予算をつぎ込んで、アジアで唯一植民地化を免れて主権を守り抜きました。明治維新を前後する我が国の歴史に多くの人が共感を寄せるのは、古いものを変えていくために必要なものを吸収しアレンジして独自のものにして新しいパワーにしていく姿を分かりやすく表現しているからだと思います。

1980年代の日本のデジタルテクノロジーは国内でWindowsと競り合っていたトロンOSが開発され、日本が世界に先駆けてネットワーク化したマルチプラットホームOSの花開かせるはずの時代でした。残念ながら国防力の弱い我が国は米国との同盟関係強化と引き換えに、米国経済覇権の政治圧力に負けてしまいます。しかし、そんな時代にも米国に渡って多様性社会の洗礼を受け障害者のためのAIプログラミングを学んでいた若き研究者がいました。先進国に渡り多様性を活かす社会制度とそれを支える最先端技術を学んだ浅川館長をはじめとする現代の遣唐使が子どもたちに伝えてくれるものは、我が国の古からの伝統であり未来の可能性だと思います。

浦安市議会「手洗い条例」可決 コロナ禍長引く中で環境整備を

浦安市議会「手洗い条例」可決 コロナ禍長引く中で環境整備を

12月23日【NHK】

千葉県浦安市の市議会は、コロナ禍が長引く中、効果的な手洗いの習慣と環境を整えたいと今月、「手洗い条例」を可決しました。

浦安市の「より良い手洗い環境づくりの推進に関する条例」では、「手洗いは誰もが容易に実践できる効果的な感染症などの予防策」だとして市や学校の役割などを定めています。

具体的には、小中学校の手洗い場で直接、手で触れずに水道が使える「自動水栓」が現在は38%の普及にとどまっているのを拡大させていくことや毎月15日を「手洗いの日」と定めて手洗いへの関心を高めることなどに市が取り組んでいくとしています。

そして、条例をつくる際の調査の中で、遊びたい気持ちが先立って手洗いがおろそかになったり、見ていないときちんと手洗いをしなかったりする子どもたちがいることがわかったとして、学校などが感染症や食中毒を防止するための手洗いの重要性を伝えていくことで、学級閉鎖などにより学びの場が失われることを防ぐとしています。

手洗いに特化した条例は全国初とみられるということで、提出者の西川嘉純議員は、「新型コロナの影響が長引く中であらためて市全体で手洗いへの意識を高め、感染拡大防止につなげたい」と話しています。

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さらっと聞けば、ごく普通のニュースに聞こえますが、よく考えてみると市議会で議決して地方の法律にするようなことだろうかと思いました。予防のため手洗いはエチケットなのだからそんな大げさにと言われるかもしれません。しかし、この2年間、感染予防をめぐっての建前と本音の乖離が政治とメディアの中に何度も見られました。オリパラの観戦では千葉県は教育的な意味で積極的に児童に観戦を進めてきましたが、スタジアムなど屋外観戦に近い状態でも、児童が感染したら責任が取れるのかとメディアは世論を誘導し、結局途中で感染源は分からないままですが感染者が出て断念した経緯があります。そのオリパラの取材打ち上げで報道クルーが酒場で騒ぎ批判を浴びると言う事件がありました。

また、同じ千葉で副知事をはじめ県会議員らがスポーツ懇親会の忘年会で、酒場に長居した事が発覚してわざわざ陳謝する報道がありました。オミクロン型の拡がりはあるが重症化例はないし、感染は収まってきたと言うのが大方の本音だからという向きもあるでしょうが、公の建前に晒されると本音は言えない状況です。このように、建前と本音がかけ離れた状況で、建前をさらに突き進めるような条例制定は相応しくないと考えるのが政治の役割だと思います。

予防啓発を推進すること自体に異存はありません。しかし、エチケットやマナーに属する事柄が「地方の法律」と言える条例になじむのかということです。手洗いは予防のためのエビデンスもあり、建前とは言いませんが、家庭や学校での躾に関する内容まで、議会で条例化する必要があるのかどうか考えた議員はいたのでしょうか。啓発するだけなら、役所や学校のトップダウンで十分ですし、水栓の自動化の予算は議会で議論すればいいことです。罰則はないから良いという事ではなく、条例はそれなりに市民の意識や行動を拘束する法律であることは間違いないです。

条例制定は地方自治の権限ですが、だからと言ってなんでも条例化すればよいと言うものでもありません。先日否決となった外国人投票条例も、公平や平等という建前ばかりが前に出ていますが、外国人を入れて国防を左右する意見決議を地方議会に要請されてはまずいと、本会議になってはじめて気が付くと言う頼りない地方議会もあるのですから、市民の監視は欠かせません。政治家は市民にばかりあれこれお願いするのではなく、どこの病院でもワクチン接種ができるように医療に働きかけ、行政はその施策が速やかにできるようにすることこそ、最も予防効果があがるのではないかと思います。

「不登校の子が学校に関心」 eスポーツの教育活用、米領事館が発信

「不登校の子が学校に関心」 eスポーツの教育活用、米領事館が発信

2021年12月22日 【朝日新聞】

eスポーツと聞くと、テレビゲームのプロが高額賞金の大会で技を競うイメージがある。だが、米国の高校や大学では、チームスポーツとして採り入れ、教育ツールにしているという。この取り組みを紹介するウェブセミナーを開いた名古屋米国領事館EducationUSAアドバイザーの田中里佳さんに聞いた。

――eスポーツと教育。どう結びつくのですか。

eスポーツはテレビゲームと思われがちですが、デジタルコンテンツと考えれば教育とつながるのではないかと思います。

教育ツールとしてのeスポーツは、チームスポーツであることが前提です。生徒や学生がチームを組み、コンピューターゲームでどう攻略して成果を上げるか、ほかのチームとどう競うかを考え、議論しながら取り組む。先生やコーチがサポートします。野球のような、ふつうのスポーツと一緒です。

例えば、米国務省と北米教育eスポーツ連盟(NASEF)によるプログラム、ファームクラフト2021では、子どもたちは農場をつくるゲームに挑戦します。土地を整備し、種や苗を育て、収穫までを競います。農業生産技術をゲームで疑似体験をしながら、アグリビジネスの進め方を学ぶことができます。その他にも文化遺産を保護しながらゲームスキルのレベルアップも出来るような国際ビデオゲーム開発競技大会「ゲームジャム」なども開催されました。

ゲームに挑戦することで、チームの仲間やサポートする大人たちと関わりながら、論理的な思考(クリティカル・シンキング)やコミュニケーション能力、協調性、自分の感情をコントロールする自律や自己管理能力を育てていく。さらには、プログラミングなどのITに触れる入り口になればと考えています。

――ウェブセミナーでは米国の大学や高校が積極的にeスポーツを採用していることが紹介されました。どんな効果を期待しているのですか。

一つの例ですが、不登校の子どもがeスポーツのチームに参加することで、学校生活に関心が持てるようになりました。ふつうのスポーツや勉強が得意でなくても、ゲームなら入りやすい。家にいてもできるし、学校へ行く動機付けにもなる。チームで人間関係も学べるし、自信も持てるようになり自己肯定感が高まる。北米にはeスポーツの公認クラブがある大学も多く、奨学金もありますから、ITやAIに携わるデジタル技術者、ウェブのデザイナー、ゲームの開発者など、キャリア選択や自分自身の可能性を広げることにつながります。

一人で引きこもってテレビゲームをやっているのではなく、社会に積極的に関与できる人材を育てることが狙いです。

――なぜ名古屋米国領事館がeスポーツと教育のセミナーを開いたのですか。

米国政府はeスポーツを進める目標として「世界的な共感を高め、地域や国のつながりや理解を築き、深める」「クリティカルシンキングのスキルを奨励することで民主主義の原則を強化する」ことなどを掲げています。eスポーツが、民主主義の根幹を支える能力を育むという考え方です。

日本ではセミナーが最初の取り組みですが、米国政府はすでに台湾、インド、韓国、ニュージーランド、メキシコなど多くの国で教育eスポーツの交流に取り組んでいます。

教育eスポーツは、これまで紹介してきた効果にとどまらず、英語を習得するのにも役立つことも強調しておきます。今回のセミナーは学校の先生向けに教育eスポーツを知ってもらうことが目的でしたが、今後は日本と海外の学生がeスポーツで交流する機会をつくっていきたいと思っています。(聞き手・鈴木裕)

◇教育ICTツールとしてのeスポーツ・ウェビナー

9~11月に計3回、教員や教育行政の担当者らを対象に開かれた。名古屋米国領事館と北米教育eスポーツ連盟(NASEF)日本本部が主催。米国の高校や大学での教育eスポーツの現状や可能性、eスポーツのフィジカルとメンタルケアなどについて専門家が話した。

11月14日には、米国大使館が後援して「eスポーツ国際教育サミット2021」(主催・北米教育eスポーツ連盟日本本部)が開催された。国内の高校での教育eスポーツの取り組みの紹介のほか、高校生たちが現代社会が抱える様々な課題をeスポーツを活用し解決するアイデアを発表する「eスポーツ・クリエイティブ・チャレンジ」があった。
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デジタル王国のアメリカは百歩先の感があります。日本も半導体産業が伸びている頃は、破竹の勢いでコンピュータ産業もあらゆる分野に伸びて米国ゲーム界まで進出していました。ところが、30年前頃を境目にして、貿易摩擦の名のもとに米国に開発や進出を阻まれ、国内産業は日銀の異常な金融引き締めと政府の借金キャンペーンで産業活動そのものが30年間足踏みしました。その結果、日本の未来を背負うデジタルベンチャー企業は息の根を止められたと言っても過言ではありません。

その証拠に、日本に圧力をかけた米国はGAFA(グーグル・アップル・フェイスブック・アマゾン)というベンチャー巨大企業を登場させ中国を除いて世界制覇を成し遂げようとしています。キャッシュレス化をはじめとしたデジタル化をいつまでたっても先導できなかった役所にも責任があります。従来通りこれまで通りの役人根性が、既得権益を結果として擁護してしまい、社会のデジタル化を遅らせてしまいました。未だに、デジタルゲームの善悪を論じているのも、デジタル先進国から三十年間遅れをとった証拠とも言えます。

そんな日本でアメリカ大使館による教育eゲームのサポートとは、何とも情けない気もしますが、気を取り直して追い付け追い越せの大和魂と言うと古臭いですが、ここは日本の教育界とeスポーツ界に奮起してほしいと思います。「クリティカルシンキングで民主主義を育てたい」とすっと表現し、民主主義は論理的なものというのも言い得て妙です。ちょっと日本の教師には真似できそうにない台詞ですが、次世代の子どもたちが表現してくれることを期待して、学校公認のeスポーツクラブがあちこちに誕生すればいいなと思います。

「勉強ばかりしてないで、ゲームしなさい」四国新聞のメッセージ広告が話題

「勉強ばかりしてないで、ゲームしなさい」四国新聞のメッセージ広告が話題 「最高にロック」「凄い勇気」

2021/12/21【神戸新聞】

「勉強ばかりしてないで、ゲームしなさい」。香川県の地元紙、四国新聞の12月20日付朝刊にこんなメッセージ広告が掲載されました。子どものスマートフォンやゲームの利用時間を制限するとした香川県独自のネット・ゲーム依存症対策条例(ゲーム条例)を念頭に置いたもので、広告出稿元のゲムトレ(東京都渋谷区)は「子どもたちがサンタさんに欲しいものを「ゲーム」とお願いできるように、ゲームが障害ではなく、教育としての魅力があることを伝えたいと考えました」「ゲームを障害と考える一側面だけではなく、クリアすることで育まれる自己肯定感や世界中のユーザーとつながり感じる多様性など、正しくゲームと向き合うことで生まれる学びがあります」としています。

同社の小幡和輝代表が広告にふれたツイートには「最高にロックですね!」「かなり挑戦的な広告だなぁ」「香川県で広告出す勇気も凄いです」など賛同の声が上がり、いいね!は1万5千超。香川県民はこのメッセージ広告をどう受け止めたのでしょうか。

ゲムトレはゲームを使った教育事業を手掛け、主力事業の「ゲムトレ」では、ゲームを「楽しく脳を鍛える習い事」と位置づけ、子ども向けのゲームのオンライン講座を提供しています。同社サイトによると、例えばオンラインゲームの「FORTNITE」(フォートナイト)では、過度なグロテスク表現がなく、認知力や情報処理能力が向上するとしています。

話題になった15段の新聞広告は、文豪夏目漱石が東京帝国大学(現在の東京大学)を卒業後、当時、低俗と見られていた小説家としてデビューし、代表作『吾輩は猫である』などで文化人になったことに触れ「ゲームの捉え方も変わりはじめた」と述べています。続けて、ゲームのプレイを通じて得られる試行錯誤や仮想空間上での達成感の分かち合いを挙げ、「ゲームは人生を豊かにする力がある」と訴えています。小学低学年も読めるよう漢字にふりがなも打っています。

香川県のゲーム条例は家庭内でのゲームの利用時間を制限する全国初の条例として2020年4月施行。罰則規定はありませんが、18歳未満のゲーム時間は平日1日60分、休日90分、スマホの利用は中学生以下が午後9時まで、それ以上は午後10時までという目役を定め、保護者にルールを守らせる努力義務を課しています。報道によると、この条例の内容や制定過程に問題があるとして、県内外から反対の声が上がっており、香川県弁護士会は廃止を求める会長声明を出している他、県内の大学生が「条例は憲法違反」として、県を相手に損害賠償を求めて提訴しています。

ゲムトレのサイトによると、小幡代表は10年間の不登校を経験しましたが、その間、ゲームを通じて多くの友人に恵まれ、大会への出場を通じて自己肯定感を高められたといい、それが起業につながったと記しています。今回のメッセージ広告については、「ゲーム好きならば誰もが一度は言われたであろう、この言葉を反転させました。伝えたいメッセージは、世代間の価値観や文化の違いにより子どもたちが苦しめられているということ。子どもは野球を頑張ることと同じようにゲームを頑張っています。なぜ、野球は評価されるのに、ゲームは悪とされるのでしょうか」などとコメントしています。

メッセージ広告は、東京メトロ丸ノ内線新宿駅メトロプロムナード内でも12月26日まで掲示されています。

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<広告掲載文 全文>【ゲムトレHP

「勉強ばかりしてないで、ゲームしなさい」
と言われる未来があるかもしれない。

かつて、小説や漫画は毒と捉えられていた時代があった。あの夏目漱石も、小説家デビュー当時は「帝大出身のエリートが低俗な職業に就いたもんだ」と嘲笑されたと言う。しかし、今はどうだろう。人々の心を掴み、人生の糧となっている。

同様にゲームの捉え方も変わりはじめた。プレイしながら試行錯誤を繰り返して、自分の成長を実感。難しいステージをクリアすることで、自己肯定感が高まる。仮想空間上で世界中のユーザーと分かち合う。ゲームは、人生を豊かにする力がある。

日本初のゲームのオンライン家庭教師「ゲムトレ」では、特別な体験で子どもの成長をサポート。楽しみながら、力を伸ばせるように心がけています。成長の新しいステージへ一緒に進みませんか。

②東京メトロ丸ノ内線新宿駅メトロプロムナード内
掲載期間:2021年12月20日(月)~12月26日(日)
※駅係員へのお問い合わせはご遠慮ください
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香川県のゲーム条例は、昨年大阪市も巻き込んで話題になりました。大阪市松井市長がすでに規制を始めるかのような報道内容でしたが、松井市長は「現場からの声はあるけど、まずは専門家を交えてエビデンスを検証してから」と答えており、記事のミスリードだったようです。「ゲーム障害」が国際診断基準に収載される予定ですが、最近になって国際的にも、その妥当性に疑義が投げかけられています。現実に治療介入が必要なゲーム依存の患者もいれば、問題なくゲームと共存する人が圧倒的多数であることも事実で、「障害」の原因だと煽ることで新たな差別・偏見の起源になる恐れもあります。

しかも、この広告自身はゲムトレ社の学習ソフトの宣伝なのですから目くじらを立てるような話ではありません。しかし、コロナ禍の下、ゲームに向かう時間が増え運動時間や学習時間が減ってて困っている家族がいることもまた現実です。引きこもりのトレードマークのようにゲームが受け止められているのは問題ですが、一概にゲーム万歳とは言えない人たちもいることは忘れてはいけないと思います。

とは言え、ゲムトレ社の社長自身も10年間の不登校経験者ですから、彼の言う事にも説得力があります。なんでも新しい娯楽は批判されるけど、確かな文化や職業になっているものは小説だけではありません。高速大量印刷社会から、世界を駆け巡るデジタル情報社会の中で、遊びもまた、テクノロジーによって高度化し、時代の人々のモノになっていきます。テレビの見過ぎが自閉症や微細脳損傷を誘発すると真面目にいわれた昭和の頃を思い出します。

昭和の子どもたちにテレビは害だと言ってきた今の高齢者かつての親たちが、毎日テレビ漬けで、テレビの垂れ流す情報を鵜呑みにしてコロナ禍で煽り報道の片棒を担がされたのも事実です。その結果、公園遊びも野外活動も、競技場でのオリパラの観戦すら否定され家籠りを余儀なくされた子どもたちに、今度は「ゲーム障害」だとエビデンスもなく煽るこの循環はどこかで断ち切る必要があります。そういう意味でゲムトレ社のメッセージは、子どもたちへの救いの言葉にも読めるのです。

発達障害の子が相談に回答…ネットで開設、悩む親に

発達障害の子が相談に回答...ネットで開設、悩む親に「当事者の思い」代弁

2021/12/20 【朝日新聞】

発達障害がある子どもが「先生」となって、同じ特性の子を育てる親の悩み相談にネットで応じる「でこぼコ・ラボ」が、今秋始まった。我が子には聞けない当事者の思いを知ることで、特性への理解を助け、親子間の関係をさらに深めてもらう狙いがある。

「ゲームがやめられず、取り上げるとけんかになる」。発達障害の息子を持つ親が「でこぼコ・ラボ」のウェブページに投稿すると、「先生」から「ちゃんと勉強した時間の分、ゲームができるルールを作る」「取り上げるのではなく、他のもので興味を引く」などの助言が返ってきた。

回答するのは、発達障害の子どもの学習支援教室「よつばCOLORS」(奈良市)に通う児童・生徒約100人。教室のスタッフだった 綾(あや) 美津子さん(53)らが今年10月、親が子どもの気持ちを理解するのを支援しようと、会員制ウェブサービスとして始めた。

背景にあるのは、発達障害のある子どもが周囲の理解が得られにくく、親も孤立しがちという現状だ。綾さんは「親は我が子の特性を自分で何とかしないといけないと、思い詰めてしまう」と指摘する。

全国の自治体では、発達障害の子を育てた経験がある親らが相談を受け付ける「ペアレントメンター」制度を導入しているが、綾さんは「子どもから思いを聞くことで、納得できることもある」と、サービスを思いついたという。

多く寄せられるのは、宿題や不登校など、学校や日常生活に関する悩み。子どもたちの回答は、それぞれの心情や経験に基づいたもので、利用した親たちからは「元気が出た」などの声が上がっている。

回答する子どもは、学習支援教室の言語能力トレーニングの一環として、質問に答えている。回答に「いいね!」と反応を返す機能もあり、「人の役に立てた」という達成感から自信を得る効果もあるという。

 綾さんは「子どもたちもしっかりと考えていることを知ってもらい、子どもの主体性に任せてみようと思ってほしい」と期待。発達障害に詳しい楠凡之・北九州市立大教授(臨床教育学)は「子どもの意見を聞くことで、我が子への見方や関わり方を冷静に振り返る機会になる」と評価している。

会員登録は無料。問い合わせは「でこぼコ・ラボ」を運営する「アンラベル」(06・6136・5609)。

発達障害  脳機能の障害で、対人関係を築くのが苦手な「自閉症スペクトラム障害」、衝動的に行動しがちな「注意欠陥・多動性障害(ADHD)」、読み書きや計算が難しい「学習障害(LD)」などがある。「こだわりが強い」「順番を待つのが難しい」などが特性。文部科学省の2012年の調査では、公立小中学校の通常学級に通う児童生徒の6.5%が、発達障害の可能性がある。

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事業所の中でも、大人にとって困った子ども行動の原因を、あれこれ大人の立場から話し合うのではなく、本人はどう思っているのか聞いてみるようにしています。とても、いい取り組みだと思います。もちろん、回答する子どもは当事者ではないので確実な答えではないけれども、子どもがどう考えるのかという視点に立ち戻れるので、とても参考になると思います。

回答する子どもは子どもで、親と言うものはそんなことを心配したり、考えたりするものかと第3者的な支援で考える事ができます。普段は自己フィードバックの弱い子どもで、家ではうまく行かない事でも、このサービスでは上手く回答できるかもしれません。そういう意味で双方で学び合えると言う対等の関係がとても素敵だなと思います。

こうした関係は、事業所内でも作れたら良いなと思います。利用者の親子の考えていることが全然違う事は良くあることです。これは別に障害のありなしは関係ないことですが、親同士で話すと少し客観的に子どもが見られたり、子ども同士で話し合うと「うちの母親もいっしょや」という共感も得られます。それが他人の子だが、よく似た特性の子どもならその論理は参考になるし、腹を立ててばかりいたのが冷静に見られるなと思います。こんな素敵なシステムを考え出した綾さんも素晴らしいと思います。

放課後デイ再編 子ども本位のサービスに

社説:放課後デイ再編 子ども本位のサービスに

12/19(日) 【京都新聞】

障害のある子どもが通う「放課後等デイサービス」などの通所支援について、厚生労働省が事業所のタイプの再編など制度の見直しを進めている。保護者のニーズの高まりを受け、事業所数、利用者数は近年、ともに急増している。半面、質が低かったり、習い事のような特定のプログラムに偏ったりしたサービスも問題となっている。

支援を受ける子どもの視点に立った見直しとなるよう議論を深めてほしい。

障害児通所支援サービスには、未就学児向けの「児童発達支援」と、小中高生向けの「放課後等デイサービス」がある。関連法の改正で2012年度に制度化された。療育手帳や身体障害者手帳が必須ではなく、発達障害などの子どもも受け入れる。全国で計約40万人が利用している。事業所の設置基準が緩やかで株式会社など営利法人も参入し、子どもが身近な地域で支援を受けられるようになったのは歓迎されよう。

一方で、利益優先の事業者や不適切なケアが後を絶たない。給付金の不正受給や、職員による子どもへの虐待行為も発覚している。サービスの質の向上に向け、厚労省は、事業所のタイプを、運動や認知、コミュニケーションなど多様な面で発達を促す「総合支援型」と、理学療法士によるリハビリなど専門性の高い「特定プログラム特化型」の二つに再編する方針だ。

テレビを見せるだけなどの単なる預かりや、塾やピアノなどの習い事のような支援は公費の支給対象から外すという。ただ、事業所からは「サービスからの除外の線引きはどうするのか」「必要とする保護者もいる」などと困惑の声も上がっている。ジム機能や音楽療法など独自の特徴を打ち出したサービスを提供し、子どもの発達支援につなげている施設もある。適切な支援の在り方について、現場の実態や専門家の意見も踏まえて判断する必要があろう。

国や自治体による継続的な監視、指導も求められる。

今回の見直しでは、サービスの利用上限日数に自治体間でばらつきがあるのを是正する方向だ。現在は、障害の状態などに応じて市町村が判定しているが、平均で月5日しか認めない自治体もあれば、20日以上のケースもあり、不公平感が出ている。このため、全国共通の判定の指標やガイドラインを新たに設けるという。

負担額は、児童発達支援が19年10月から無料化され、放課後デイサービスも原則1割で上限が決められている。学校や自宅との間の送迎を行っている事業者も多く、利用しやすい。そうした背景もあってサービスの需要が高まっているとみられるが、保護者の意向だけでサービスを多く利用することは子どもの主体性を損ねてしまう、との指摘もある。子どもの利益のため、家庭と事業所、計画作成の担当者が連携をより深められる制度を目指してもらいたい。

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地元紙も社説で取り上げるくらいですから、先日の厚労省の検討会議の報告は通常の改定を通り越えた提言だったのだと思います。しかし、まず改定ありきという焦りが見え具体性に乏しいので、地方行政にしてみれば、類型をどこで線引きするのかはっきりしません。放デイ利用者の中に占める理学療法士を必要とする肢体不自由児の絶対数そのものは少なく、最も多いのは発達障害の子どもです。ここへの、専門的なプログラムができるのは理学療法士ではありません。行動療法士や言語聴覚士も必要な職種だとは思いますが、子どもに対応する人材を育てる養成学校は少なく、そもそも児童に対応するにも、教育や保育の専門性に対応した経験をもつ人材は少ないです。いったい何を想定して専門的プログラムと言っているかはっきりしないままです。

放課後デイは、小規模ですから何人も専門家は雇用できないので大きな発達療育センターのように先輩からノウハウを教えてもらう機会もありません。検討会の言っていることは理想的ではありますが、絵に描いた餅とも言えます。専門的な療育を提供するうえで資格は確かに必要ですが、資格があれば適切な療育が提供できるわけではないからです。こうした、専門家周りの環境も同時に考慮していく丁寧さが必要です。そして何よりも、給与が低すぎる事が、専門性の高い人材が集められない理由でもあります。

学習塾と学習障害支援の違いをどう見極めるのかも不明です。そもそも、学習の問題は学校に任せるべきだと言う、発達障害に学習障害が明記されていることも知らないような自治体職員もいる中でこの区別が科学的な視点で行えるとは思えません。学習障害支援は、自前で知能検査や発達性読み書き障害の検査を行ったアセスメントを前提にして、個別に療育の支援計画が実施されていることが最低条件だと思います。こうした障害支援のルーティンを踏まえたうえでの適切な線引きが行われることを期待します。

一番の問題は、9割は税金を使う公的な支援なのに、サービス利用回数があまりにも違う不公平と、その違いについて地方行政が説明責任を果たさないことです。利用者増が先か新規事業者参入が先かは鶏卵の堂々巡りですが、質の良い支援ならニーズに応じてどんどん提供すれば良いのです。児童期の質の良い投資は必ず未来に納税で返ってくるからです。

大事なことは監督する行政が低品質な放デイを認めず、質の高い放デイを優遇する方略を持つことです。国のレベルで言えることはせいぜい専門資格を持つものがいるかどうかまでしか言えません。しかし、現場を知る行政なら、何が適切な支援かどうかは見ればわかるはずです。現場に足を運びマニュアルの字面に頼らない確かな視点が行政に求められています。質が低い放デイがあるのは民間参入が原因ではなく、行政に見抜く力が不足していたと言うべきです。

障害者のスポーツ取り上げて

障害者のスポーツ取り上げて

2021/12/18 【産経WEST】

東京パラリンピックでお世話になったNPO法人「アダプテッドスポーツ・サポートセンター(ASSC)」の高橋明さんに誘われ、大阪市舞洲障がい者スポーツセンター(大阪市此花区)で開かれた「i-ボッチャ ぷっちょ杯2021」をのぞいた。

改めて簡単に説明すると、ボッチャはジャックボールと呼ばれる白い目標球に向けて赤と青のボールを投げ合い、より近づけた方が勝者となるルール。もともとは欧州で、脳性まひなどの比較的重度の障害者向けに考案されたが、年齢や障害の有無に関係なく誰でも参加できるインクルーシブ(包括的)なスポーツとして注目されている。

大会は今回が4回目。インクルーシブを示す「i」が大会名の冒頭についている通り、障害者だけで編成したチーム以外にも、健常者のチームや混成チームも参加。選手3人の合計年齢が約250歳のチームもあり、東京パラで脚光を浴びたボッチャの盛況ぶりを肌で感じることができた。ASSC副理事長で「愛ボッチャ協会」代表の岡田良広さんは「東京パラが終わってから、学校や自治体からの問い合わせが増えている。協会の審判を派遣し、体験学習会などを開催している」と話す。

今年話題になった言葉に贈られる「現代用語の基礎知識選 2021ユーキャン新語・流行語大賞」の年間大賞には、米大リーグ、エンゼルスで活躍した大谷翔平選手の「リアル二刀流/ショータイム」が選ばれたが、東京パラのボッチャ個人で金メダルを獲得した杉村英孝選手の必殺技「スギムライジング」もトップテン入りした。

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オリパラ開催の効果で、全国各地でパラスポーツの普及が大々的に言われ始めています。ボッチャの金メダリスト杉村選手の活躍も国民にスポーツが引き出す人間の可能性を見せつけてくれました。先ごろは京都府議会で京都府ボッチャ協会のプレゼンテーションが行われ、いわゆる障害者のスポーツではなく障害のある人もない人も一緒に取り組めるユニバーサルスポーツとして普及を議会に説明がされました。

スポーツを国を挙げての取組にすると、スポーツを政治利用する危惧が言われますが、一方でスポーツにアクセスしにくい障害者や身体の弱い方にも参加できるようにすることは、公共の福祉の役割でもあります。ボランティアはどんなスポーツにも必要ですが、障害者が参加するスポーツにはたくさんのボランティアが必要です。

しかし、ボランティアや個人寄附だけでは競技場や競技場への移動支援の整備までは資金的に手が届きません。欧米では、資金力のある企業や篤志家がスポンサーになって障害者スポーツは支えられていますが、企業が巨額の寄付をして民間団体を支援する土壌は我が国には十分育っておらず公的な支援がもっと必要で議会や各自治体の力量が問われています。

障害者スポーツは民主主義の花開く中でこそ育つものです。冬季五輪の北京開催について、民族弾圧やジェノサイドを隠す中国共産党に民主主義国から批判が続いています。誰もが公平にスポーツに参加するためには思想信条、性別や民族、障害のあるなしで政治的に差別されることがあってはなりません。いったい、中国政府は北京冬季五輪のパラリンピックをどんな思いで開催するのでしょう。パラリンピックの開催で人権弾圧を覆い隠すようなことは許されません。障害者スポーツは民主主義の最高レベルの到達点でもあるからです。

 

特別支援教育の教職課程 コアカリ作成へ議論始まる

特別支援教育の教職課程 コアカリ作成へ議論始まる

2021年12月16日【教育新聞】

特別支援学校の教師の専門性向上のため導入が検討されている、特別支援学校教諭免許状の教職課程コアカリキュラムについて、文科省の「特別支援教育を担う教師の養成の在り方等に関する検討会議」の下に設置されたワーキングループ(WG)が12月16日、初会合を開き、コアカリキュラム作成に向けた議論を開始した。今後、障害種ごとに設けられたサブWGでの議論を踏まえ、来年3月をめどに素案を取りまとめる。

今回のコアカリキュラムは教育職員免許法・同施行規則に基づき、全国全ての大学の教職課程で共通的に履修すべき資質能力を示すもので、特別支援学校学習指導要領を根拠とする自立活動、知的障害のある子供のための各教科等、重複障害者に関する教育課程の取り扱い、発達障害を位置付ける。

その中では、「心理、生理及び病理」「教育課程及び指導法」といった内容について、障害の領域ごとに、学生が理解すべき内容を示した目標を設定する。その際、全国の大学で共通的に修得すべき資質能力を示すという目的に照らし、統一感のある表現とする、達成してほしい目標をできるだけ具体的に示すなどの工夫を行う。来年2月の第2回会合では、障害種ごとのサブWGが検討結果を報告し、意見交換や調整を行う方針。

樋口一宗委員(松本大学教育学部学校教育学科教授)は「特別支援教育制度が始まって10年以上がたつが、そもそも導入の背景には、障害の重度化、重複化、多様化が挙げられる。免許制度は障害種別に構成されており、各障害種についての専門性はもちろん必要だが、重複、多様の結果としての子供たちの困難に、臨機応変に対応できる教師の姿が求められている」と、これからの課題を述べた。

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今頃、特別支援学校教諭の共通カリキュラムを検討しているとはびっくりしました。だから、支援学校や支援学級の教員に、発達障害や構造化支援の基本的な中身を知らないような方が多いのだと思います。それにしても、特別支援学校教諭免許は存在するわけですから、これまでこの免許をとった方は大学でどんな授業を受けていたのかと思います。

教育とも免許とも関係ないですが、京都府で強度行動障害の研修会報告を見ていて感じたことがあります。報告している、京都ライフサポート協会は京都の中でも自閉症支援・構造化支援の老舗の拠点事業所とも言えます。福知山学園もそれを追いかけている入所を中心とした事業所です。この報告では、構造化支援や表出コミュニケーション支援(PECS)を重視しているのです。

行政と先進事業所がタイアップして、毎年こうした研修を重ねているのですが、一向に地域に広がる気配がありません。教育も同じです、行政と先進実践校がタイアップして、全国で毎年何百回と公開授業や研究会が開かれますが、構造化支援も表出コミュニケーション支援も広がる気配がありません。つまり、行政も教委も笛吹けど現場は踊らないという図式があるのです。

それぞれの職員が、科学的な根拠を知り、実践の常識だと考えられることが必要です。そういう意味では免許の基礎となるコアカリキュラムを検討することはとても重要です。今の香港は知りませんが、10年前までの香港の学習指導要領にはPECSに取組むことと書いてあったことを思い出します。結局、公的に必要な事として新しい支援が認められることが大事だと思います。現場で科学的な根拠のあることについて、その是非を再び問うようなことは子どものためになりません。

障害者雇用した芽ネギ農園の気づき・驚き・感動…絵本に

障害者雇用した芽ネギ農園の気づき・驚き・感動…絵本に

12/16(木) 【日本農業新聞】

静岡県浜松市で障害者を積極的に雇用して芽ネギなどを生産する京丸園での実話を基に描いた絵本「めねぎのうえんのガ・ガ・ガーン!」が発売された。題名の「ガ・ガ・ガーン」とは、代表の鈴木厚志さん(57)が障害者と出会っての気付きや驚き、感動を表している。

京丸園は、高齢者や障害者など多様な人がそれぞれの役割を発揮できる「ユニバーサル農業」を実践する。従業員94人のうち、22人が障害者だ。

絵本は、特別支援学校の先生が、障害のある生徒を「働かせてほしい」と連れてくる場面から始まる。鈴木さんは障害者に農作業は難しいと考え、ある職人技を見せて断ろうとする。だが先生は、生徒でもできるようにする工夫を提案する。これが最初の「ガ・ガ・ガーン」で、その後も鈴木さんはさまざまな気付きや発見を基に、誰もが働きやすい農園を作り上げていく姿を描いている。

鈴木さんは「親子で障害について考えるきっかけになってほしい。農業者に向けてのメッセージも込められている」と話す。

著者は絵本作家の多屋光孫氏。合同出版、48ページ、1980円。17日に、鈴木さんや多屋氏が出席してのオンライントークイベントを開く。

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支援学校の作業場面では当たり前の課題分析を用いた支援方法ですが、伝統を重んじる農家には革命的なアイデアだったのでしょう。もともとはファーストフードなど熟練者でなくても言葉がわからない外国人労働者でも働けるように開発された手法です。仕事はいくつかの作業で構成されています。業務を構成する作業工程を明確にし、支援対象者がどの工程でつまずいているのかなどを把握、分析することを課題分析といいます。工程の分け方は、業務の複雑さや支援対象者の理解度により異なります。

鈴木さんは、支援学校の山田先生が二人の生徒を連れてきたことによって、自分の農場の合理化にも気づいていきます。障害者を雇用することが職場の効率を高める事と結びついているのです。この絵本は、障害者雇用とは何かを端的に表現して大変分かりやすい物だと思います。子どもと一緒に障害理解やノーマライゼーションを知る機会として読むのもいいし、個人経営者など自営業の方に読んでもらって障害者雇用を考えてもらうきっかけを作るにも良い本だと思います。

合同出版社のWEBにこの本のサンプルがあるので、お読みください。

めねぎのうえんのガ・ガ・ガーン! 
多屋光孫 (著, イラスト)
出版社 ‏ : ‎ 合同出版 (2021/12/3)
発売日 ‏ : ‎ 2021/12/3
大型本 ‏ : ‎ 48ページ
寸法 ‏ : ‎ 18.2 x 0.5 x 23.7 cm

京丸園株式会社
〒435-0022 静岡県浜松市南区鶴見町380-1

 

 

チーム学校 独自予算でAI活用、学校で子供支援 神戸市が全国初

チーム学校 独自予算でAI活用、学校で子供支援 神戸市が全国初 

12/14(火) 【産経新聞】

福祉的な支援が必要なのに見過ごされている子供の存在を人工知能(AI)を使って可視化し、具体的な支援につなげる取り組みが一部の自治体で始まっている。神戸市は全国で初めて独自に予算を付け、今月から本格的な活用をスタートした。鍵を握るのは、教員と教員以外の専門職が連携する「チーム学校」の取り組みだ。支援が必要とされた子供については専門職が集まる「チーム会議」で検討し、知恵を出し合う。

神戸市が活用するのは、大阪府立大の山野則子教授(児童福祉)らが開発した「AIスクリーニングシステム(YOSS)」。複数の教員が、欠席・遅刻▽身だしなみ▽健康▽いじめアンケート-など約40項目について、気になる程度を点数で入力する。データをもとに全員の状況を「スクリーニング会議」で確認し、チーム会議で検討するかを判断する。

AIはあらかじめ、全国の支援の成功例やうまくいかず事件化した事例の特徴を学習。会議での判断をサポートするとともに、必要な支援のレベルについて①学校内での支援②子供食堂など地域資源の活用③行政機関や福祉制度の活用-の3パターンから提案する。

神戸市ではYOSSを18の小中学校で試験導入し、今月から来月にかけて約7千人を対象にスクリーニング会議を実施する。教育委員会の担当者は「支援が届いていない子供がいるなら、きちんと把握すべきだ。まずは継続し、効果を検証したい」と話した。

背景には、学校で「ちょっと気になる」程度の子供が見過ごされがちだという現実がある。同府泉大津市立戎(えびす)小はAIは使わないものの、神戸市と同じ40項目のスクリーニングシートを活用し、教員の経験や勘に頼らない丁寧な検討が行われている。

「友人とのトラブルが多く、よく怒られている。無気力で自己肯定感も低く、『先生はいつもおれを悪者にする』と言っている」

今年7月に同校で行われたチーム会議。ある男子児童について担任が相談すると、教頭や生活指導担当の教員、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー(SSW)らが、よりよい関わり方の検討を始めた。

会議で決まったのは、児童に「頑張っているな」などのポジティブな声かけを学年の教員全員で意識的に行うこと。出席したSSWの神谷直子さんは「子供は『いろんな大人が自分を見てくれている』と感じることが重要。あいさつや声かけだけで、ガラッと変わることも多い」と話す。

同校では低めに設定された基準点を超える児童を幅広くチーム会議で取り上げ、問題が深刻化する前に「予防」することを目指している。同校の男性教員(34)は「しんどさが表に出ていなかった子供に目が向くようになった」と手応えを口にした。

■「チームで決定」へ意識改革を

山野教授らの研究によると、小中学生のうち約30%が虐待や非行、不登校などにつながる要因を持っている。だが実際に自治体の支援対象となっているのは10%ほど。問題はあっても深刻化はしていない「グレーゾーン」にいる残りの子供を発見し、最初に手をさしのべられるのは学校だけだ。

だがこうした支援を多忙な教員だけが担うのは困難で、スクールソーシャルワーカーら専門職と協力する体制が必要だ。しかし、多くの学校では専門職の配置が不十分で、山野氏は「対応をチームで決定する文化が学校組織にないことも問題だ」と指摘する。

一方政府では、自治体の教育・福祉・医療部門などが持つ子供たちの情報をデータベース(DB)で共有し、支援に生かすことを視野に、11月にデジタル庁など4府省庁によるプロジェクトチームが発足した。組織間の連携がないために虐待などが見過ごされた事例は後を絶たず、DBは子供の状況を可視化する「スクリーニング」の切り札として期待されている。

ただ、現場で支援を行う「人」が育っていなければ情報は生かせない。山野氏は「目の前の問題への対応だけでなく、10年後、トラブルを予防できる社会になるよう考えてほしい」と話し、まずは専門職と協力する「チーム学校」の意識を学校現場に根付かせることが不可欠だと訴えている。(西山瑞穂)

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学校の不祥事続きの神戸市は、学校の力だけに頼るのではなく機械も使って学校改革に立ち上がろうとしていることは、良いことだと思います。もちろん端末処理する教員の問題意識の持ち方には左右されるとは思いますが、それは今までも同じですし、記録が残ることで状況をどう見ていたかが記録に残って次に生かせます。また、現場が正しい評価をしている証拠も残るので、管理職や上層部が見落としたり隠蔽した場合も明らかになります。このデータ管理は、校内管理ではなく、教員のオンラインシステムにのせて教委が管理すべきかと思います。

ただ、一つだけ心配なのは、AIが判定していないが気になる子どもがいるとき、近未来ドラマのように人間以上にAIを信用してしまう事が起こらないかどうかです。もちろん、このAIの導入は、失敗事例データをプログラムに学習させて手作業のスクリーニングの穴を埋めるものですからより精密なものにはなるのでしょうが、精密に疑わしいものをピックアップするので、件数が増えてしまい再確認に手間取り、教員が直感的につかむ緊急性のあるものを見落としてしまうことになっては本末転倒です。

それでも、学校現場がAIを通じて専門家とチームを組んで、学校の風通しを良くしていくことにつながれば素晴らしいことです。機械の力を借りてでも、虐待や非行、不登校につながる子どもをあぶり出して支援しようとすれば、特別な事でなく日常に必要な支援として定着し、発達障害の特性を起因とした行動問題への支援にも生かされていくものと思います。

知的障害のある長男殺害 母に懲役3年執行猶予5年

知的障害のある長男殺害 母に懲役3年執行猶予5年 京都地裁

12月13日 【NHK】

去年7月、京都市で重い知的障害のある17歳の長男を殺害した罪に問われている母親に対し、京都地方裁判所は「長男の受け入れ施設が見つからず、将来に絶望を抱きかねない状況だった」として執行猶予のついた有罪判決を言い渡しました。

京都市左京区の無職、坂山文野被告(54)は、去年7月、自宅のマンションで重い知的障害があり、総合支援学校高等部に通う長男のりゅうさん(17)の首をベルトのようなもので絞めて殺害したとして、殺人の罪に問われています。

裁判の中で、母親は長男を殺害したことを認めましたが、弁護側は当時、精神障害の影響で心神喪失の状態だったとして無罪を主張し、検察は懲役5年を求刑していました。

13日の判決で、京都地方裁判所の増田啓祐 裁判長は、「将来に大きな可能性のある17歳の尊い命を奪ったことはあまりに痛ましい結果だ。ノートに犯行をためらう内容を記すなど、限定的とはいえ、犯行を思いとどまる能力は残っていた」と述べ、心神喪失の状態ではなく、心神耗弱の状態だったと指摘しました。

そのうえで、「重い障害のある長男の介護に疲弊し、さまざまな手段を講じたが、卒業後の受け入れ施設が見つからず、将来に絶望を抱きかねない状況だった。動機の形成過程には同情の余地が大きく、自らも殺害を認めて反省している」として、懲役3年、執行猶予5年の判決を言い渡しました。

【事件の経緯】。
事件が起きたのは去年7月17日の夜、京都市の自宅マンションで、母親の坂山被告が17歳の長男に睡眠薬を飲ませ、ベルトのようなもので首を絞めて殺害したとされています。

検察や弁護側の陳述によると、被告はひとり親で、自らもうつ病を患いながら、重い知的障害のある長男に加え、認知症の兆候のある高齢の母の介護もしていたということです。

被告が事件の前に悩んでいたのが、総合支援学校高等部を卒業したあとの長男の進路です。事件の2週間前、卒業後の就職先を探すため、京都市内の就労支援施設を見学しましたが、1人でのトイレが難しいなどの理由で、受け入れは困難だと断られました。

事件前日には、支援学校の担任と進路について面談しましたが、具体的なアドバイスが得られなかったと感じ、将来への不安を募らせたといいます。事件当日にも別の就労支援施設を見学しましたが、送迎に対応していなかったため、利用を断念しました。

その日の夜、風呂を出たあとの着替えの際に、長男が服を破いたり、被告を抱えて放り投げようとしたことで将来への絶望感をさらに深め、犯行に至ったとみられています。事件のあと、自殺未遂を図った被告はノートに遺書を書き残していました。

そこには、「何かもう疲れてしまいました。将来のことを考えると、誰に託したらいいか答えが出ず、連れていきます。ごめんなさい。ちゃんと育ててあげられなくてごめんなさい。残ったお金は少しでも障害者のためになる何かに使ってください」と記されていました。

【同級生だった保護者は】。
裁判を傍聴した子どもが同じ支援学校の同級生だった竹口宏樹さんは、「事件は起こるべくして起きたのかも知れないし、なんとかできたのかなとも思うので、僕自身、後悔や反省があります。判決の中にもご家族ご友人の名前が出てきましたが、そういう人たちとなんとかつながって、今後の人生を、しょく罪もありながらも全うしてほしい」と話していました。

また、卒業を来年3月に控える竹口さんの息子の進路もいまだに決まっていません。竹口さんは、「大変な家はたくさんありますが、もう無理となったときに、安心して暮らせる体制がつくれる、何も情報が無い人にもアクセスできる福祉がどこでも行われることがいいのではないかと思います。進路について、どういう支援ができるか考え続けてほしい」と話していました。

【専門家“支援体制づくりを”】
今回の事件について、国の障害者支援施策の調査や研究に携わってきた社会福祉法人「横浜やまびこの里」の志賀利一 理事は、「命が失われた事実を重く受け止め、福祉、医療、教育の立場からしっかりと事件を振り返って検証し、予防策を考えていくことが大切だ」と指摘しています。

そのうえで、「障害者福祉の現場で専門的な支援が提供できる施設や事業所を増やすことが必要で、都道府県や政令指定都市単位で計画的に整備していくなどの体制づくりを進めていくことが求められている」と話していました。

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30年前社会福祉の基礎構造改革が議論されていたときに懸念されたことが起こっています。戦後、長い間続いていた措置制度を契約制度に転換し、国民の自助と事業所など民間のサービスを活用し、少子高齢社会の進展に伴う社会福祉の支出の増大を抑制し、民活導入によって社会福祉の制度を構造から改革しようとしたのがこの政策です。

確かに、財政的な問題も背景にありましたが、行政が全て引き受けてしまう事によって、既得権限の中にいて競争のない世界ではサービスの中身が良くならないと言う問題がありました。民間企業が参入しやすくすることによって利用者目線で経営が行われるようになり、サービスは量的にも質的にもかなりの改善がなされたのは事実です。児童通所についても放デイ利用者が爆発的に増えているのは、民間を参入しやすくした結果です。

ただ、その一方で、障害者も地域で暮らすというノーマライゼーションの名のもとに、障害者の入所施設を経営しても収入が増えないような傾斜政策で、家族では支えきれない重度の方たちの行き場がなくなる現象が起こっています。つまり、儲けの薄いところ、儲けが今後見込めなくなるところはサービスが減るという問題が起こるのです。もちろん措置制度の時代も重度の方の施設は恒常的に不足していました。民間が参入できるようになってから障害者サービスは量的に増えているのは事実です。しかし、市場原理が働いて障害の軽重によって格差が拡がっているのは事実です。

また、重度の方にはデイサービス事業がありますが、これは10時から16時までのサービスで、就学期のように放デイサービスがないので夕方や休日は家族が介護しなければならない問題があります。そして、儲けの薄いところ、つまり行動障害など重度の利用者の入所施設は公立経営をするとか補助金を出すなどの施策を政府がさぼってきた結果が今回のような事件の背景にはあります。

また、基礎構造改革の一番大きな間違いは、我が国の家族の自助力はどんどん核家族化によって低下しているのにこの政策を進めていることです。一人親家族や家族の高齢化、家族の収入の減少などにより、とても成人の障害者を扶養するような余裕がない家庭が増えているのです。児童一人当たり10万円を家庭に給付をするくらいで「分配した」などと言っている場合ではありません。必要なのは僅かな分配ではなく、児童がいてもいなくても、障害者が家族にいてもいなくても、同じように暮らせる公平な社会です。

障害福祉、「聖職」の使命感では燃え尽きる 補助金で確実な賃上げを

障害福祉、「聖職」の使命感では燃え尽きる 補助金で確実な賃上げを

2021年12月10日 【朝日新聞】

岸田政権は介護や保育、看護、障害福祉で働く人たちの賃金を3%程度引き上げる方針を掲げています。これらの分野における待遇の低さといった問題は改善されるのでしょうか。連載の7回目は、社会保障法が専門の伊藤周平・鹿児島大教授に障害福祉について話を聞きました。

伊藤周平さんの三つの視点
1)障害福祉の人材不足を解消するには、賃金の引き上げとともに人員基準の改善が必要
2)福祉職の専門性は高い。「聖職」という考えで使命感に頼っていては燃え尽きる
3)福祉は公共財。公的責任として、国の補助金で人件費を確実に上げるべきだ

――政府は、障害福祉の職員の賃金を3%、月額で9千円程度引き上げる方針です。人材不足の解消につながるでしょうか。

人手不足の背景には、賃金の安さだけではなく、労働のきつさがあります。特にコロナ禍になってからは、職員が少ないなかで、マスクを障害のある人につけてもらったり消毒をしたり、感染症対策をしながら障害のある複数の人を支援しなくてはならず、さらに仕事がきつくなっている。賃金を上げることが効果がないわけではありませんが、一番の問題は、国が定める職員の人員基準が低いことです。

例えば、障害のある人が入所する施設で、日中の生活介護を行う場合、支援を必要とする程度が低い利用者では、6人に対して支援員1人以上。支援の程度が高い利用者でも3人に対して支援員が1人以上という基準になっています。これでは一人ひとりへのきめ細かなケアや、外出まで手が回らない、という声を聞きます。障害のある人は世代が広く、障害の特性も多様で個別性が高く、なかにはパニック障害などを伴う人もいて、高齢者介護や保育よりも体力的にきつく、人手不足は深刻かもしれません。

人件費だけに使える国の補助金の仕組みを
せめて、職員1人が利用者2人を支援する基準にすべきでしょう。もちろん、国の基準よりも手厚い配置にすることはでき、実際そうしている事業者も少なくありません。ただ、独自の財源からの持ち出しで職員の賃金を支払うため、経営が苦しいのが実情です。国は人員基準を見直し、必要なお金を投入すべきだと思います。そうしなければ、賃金を上げても抜本的な人材不足の解消にはならないでしょう。

政府が障害福祉の職員を、障害のある人が基本的な生活をするのに不可欠な「エッセンシャルワーカー」と認識しているなら、賃金の引き上げと同時に人員基準を改善することが必要です。

――政府の会議の資料では、介護分野の職員の賃金は29万3千円、全産業では35万2千円(いずれも基本給に残業代や手当、賞与を含めた月収換算。役職者を除く)とされ、大きな開きがあります。

待遇を考えるのであれば、基本給で比較すべきで、仮にこの数字で比較するとしても29万円は平均でしかなく、実態とかけ離れているように思います。また、手当や賞与をひっくるめての数字で、高齢者施設などで働く介護職員も含まれています。きちんとした基礎統計を土台に議論を進めてほしい。

今回の賃上げは、まずは来年2月から9月までといわれていますが、時限付きなら一時金くらいにしかならないのではないでしょうか。少なくとも、全産業並みにすべきで、上げ幅が1けた少ないといってもいいでしょう。今回の経済対策は場当たり的な印象をぬぐえません。

――高齢者介護については、賃金の引き上げが保険料や利用者負担に跳ね返りかねないとの指摘もありますが、障害福祉についてはどうなのでしょうか。

原則65歳以上の人がサービスを利用する介護保険制度の総費用は、国・都道府県・市区町村が負担する公費と、40歳以上の国民が払う保険料、利用者が事業者に払う利用料から成り立っています。一方、障害福祉は、保険料はなく、公費である税金と利用者の自己負担からなっています。ただ、自己負担は軽減措置もあってほとんどない状況で、利用者への負担につながるのは一部です。賃金アップをしやすいともいえます。

――賃金を上げれば公費負担が増えることになりますが、財源はどこから捻出すればいいのでしょうか。

福祉は、それがなかったら生きていけない人の暮らしを保障する公共財です。保育も介護もそうですが、人の命を守る仕事は本来、市場原理に任せず、公的責任のもとで提供されるものです。障害福祉は、2003年3月までは「措置制度」で、自治体がサービスを提供し、措置費で人件費を出していました。支援者の賃金も公務員並みでした。

しかし、財源不足などで、市場原理が導入されると、利用者と事業者の契約でサービスが提供されることになり、自治体の責任が縮小されました。民間事業者の参入が悪いとは思いませんが、報酬が「売り上げ」という仕組みになり、人件費を抑制し、結果的に労働条件を悪化させた一面も否めません。

そこで私が提案するのは、報酬ではなく、人件費だけに使える国の補助金の仕組みをつくり、賃金を保障することです。報酬の中から事業者の判断で人件費を決めるわけではなく、また、すべての事業者が等しく人件費を受け取れます。一般的に人件費は、報酬の7~8割ですが、4~5割という例もあるのです。

また、今の報酬制度では、資格や職種など一定の要件を満たした事業者への処遇改善加算はありますが、すべての事業者には該当しません。事務も煩雑で申請を控える事業者もあります。

「財政が厳しい」といわれますが、命を守る仕事です。政治の決断と政治家の覚悟が問われています。

――障害福祉の職員の待遇が低いのはなぜなのでしょうか。

障害者支援は、女性や家族が無償で担ってきた歴史があり、だれにでもできると思われがちだからでしょう。障害者への差別や偏見もあって、家族自身が、家族が行うものだという意識も強い。でも本当は、コミュニケーションをとり、マニュアル通りにはいかない一人ひとり違う個別性にどう対応するかが問われます。その人らしい生活を維持するという専門性の高い仕事です。

ただ、医療のように疾病が治るという明確な物差しがなく、目に見えづらく数値にもしにくいので、評価が難しい。経験がものをいう仕事ですが、経験を積む前にやめていく現状では、専門性の検証もできない。専門性を高めるために研修に参加したり、制度を勉強したりする余裕がないのも問題です。

――今後の政府の議論に求めたいことはありますか。

(政府が11月に設置した)公的価格評価検討委員会で、現場で働く職員の意見を直接きちんと聞くべきです。その上で、なぜ障害福祉の現場で、労働環境が貧しい体制になっているのかを分析し、人員基準を見直してほしい。

福祉職は聖職ともいわれ、お金ではなく使命感で仕事をする意識が強い。新型コロナウイルスへの対応も、献身的な努力で乗り越えていますが、それだけでは限界です。職員の使命感や情熱に頼っていては、燃え尽きてしまう。命を守る人たちの待遇を上げるために集中的に公費をつぎこむべきで、それが政治家の務めではないでしょうか。(聞き手・森本美紀)

いとう・しゅうへい 1960年生まれ。専門は社会保障法。88年、労働省(現厚生労働省)入省。鹿児島大学法科大学院教授などを経て2017年4月から同大学法文学部法経社会学科教授。鹿児島市障害者自立支援協議会委員も務める。著書に「社会保障法 権利としての社会保障の再構築に向けて」など。

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例えば当法人の常勤職員の賞与を入れた今年の給与平均額は税込33万円ですから全職種の平均まであと一息です。ところが利用者をこれ以上増やすとなると職員をもう一人必要としますので、ほぼこれが上限という事になります。ここ1年は発達障害のニーズに合わせた新事業所を立ち上げましたがコロナの影響で利用が伸びなかったために人件費分が回収できず夏のボーナスは見送られています。法人の利益はなく赤字ぎりぎり経営でも全産業の平均給与額に届きません。人材は地域福祉・児童福祉の財産と思い、無い袖を振るようにして捻出しているのが実情です。

同情するなら金をくれとはよく言ったものです。3%アップを岸田首相が施策にしているそうですが、9千円上昇したところで、高騰する燃料代に消えていきそうです。この賃金は、日本の未来にまで深く関与しています。低賃金で福祉業界に寄り付く若者はよほど志が高い人で、多くの人は敬遠していきます。その結果、低賃金でも働いてくれる外国人の導入がもうそこまで見えています。

先月、岸田政権はいきなり外国人労働者の受入れを緩和する方針を打ち出しました。低賃金でも働く外国人を様々な力仕事=エッセシャルワークにつかせることは、産業界全体の賃金も抑え込んでしまい、賃金が上がらなければ消費も生産量も伸びず、20年以上続いたデフレからも脱却できません。その結果、求人倍率が下がり労働市場は買い手市場になりさらに賃金が抑え込まれる結果になります。せめて、この業界の平均賃金が1割アップすれば若者はもう少し流れ込んでくるでしょうが、3%アップではそれは望むべくもないというのが現場の感覚です。

オンラインは苦痛…発達障害抱える学生の“コロナ禍の学び”守るには

オンラインは苦痛...発達障害抱える学生の''コロナ禍の学び''守るには

2021/12/9 【西日本新聞】

「雑音が多くて苦痛」「情報を整理できない」...。新型コロナウイルスの感染拡大でオンライン授業が普及する中、感覚過敏などの特性から困難を感じている発達障害の学生は多い。大学側には障害者の生活上の障壁をなくす「合理的配慮」が求められるが、対応の格差は大きく、学ぶ権利を保障する取り組みは道半ばだ。 (斉藤幸奈)

「授業に付いていけなくて、昨年は1年間で8単位しか取れなかった」。そう肩を落とすのは福岡県内の私立大に通う注意欠陥多動性障害(ADHD)の20代の男子学生。好奇心旺盛でやる気はあるが、時間の管理が苦手。オンライン授業になってリポートによる評価が増え、授業ごとに締め切りも提出方法も異なるため混乱し、提出が間に合わないことが多かった。

対面授業では集中して話を聞くことができ、単位も取得してきた。オンラインだと、教科書とパソコン画面両方に目を向けるのが難しく、双方向性もないため内容がなかなか頭に入らない。大学の相談窓口に障害の特性を伝え、課題は授業中に口頭で知らせるだけでなく、メールでも伝えてほしいと要望したが「実行してくれた教員は少なかった」という。

こうした学生は各大学で目立つようになった。熊本大大学院教育学研究科の菊池哲平准教授らが3月に発表した全国の大学に対する調査(回答率31・5%)では、オンライン授業の影響で発達障害がある学生からの相談が例年より増加していると回答した大学は28・4%に上った。

「大学からのアナウンスに一貫性がなく情報の整理ができない」「画面に並ぶ友達の顔が気になって集中できない」などの相談があった。半面、必要な配慮について「全教員・職員に周知した」大学は13・9%にとどまる。

日本学生支援機構の調査(昨年度)によると、障害がある学生を支援する専門部署がある大学は全体の2割程度で、支援体制のばらつきも課題だ。福岡県の大学でこうした学生の相談に応じる公認心理師の入濱直美さんは「相談先が分からず支援につながっていない学生もいる。専用の窓口と専門知識がある担当者を置くことが望ましい」と話す。

一方、大教室での集団授業が苦手な学生らは、ストレスが減って成績が上がった事例もある。菊池准教授は「発達障害がある学生が抱える悩みは多岐にわたり、それぞれに応じた対応が必要だということがコロナ禍で改めて分かった。理解を深めるきっかけにしたい」としている。

合理的配慮 障害がある人にとっての社会的障壁を取り除くために、過度な負担にならない範囲で変更や調整を行うこと。障害者差別解消法で規定。国公立大では「義務」、私立大は「努力義務」だが、今年5月に法改正され、2024年までに私立大でも義務化される。公共交通機関や行政、災害時の避難所などでも提供が求められている。

授業録画を許可、提出期限延長…迅速だった九大の対応
発達障害がある学生への支援に力を入れるのが、九州大(福岡市)だ。「インクルージョン支援推進室」が専門窓口となって学内の調整や授業の担当教員との橋渡し役を担い、成果を上げている。

コロナ禍でも迅速に対応した。オンライン授業では集中力の持続が難しいという学生に、録画を許可、録画した教材の配布も行った。感染が拡大する以前から、授業内容の事前伝達▽視覚的に情報が取得しやすい掲示の工夫▽提出期限の延長-など、特性に応じた合理的配慮に取り組んできた。

コミュニケーションや雑談が苦手な学生は、友人や先輩からのアドバイスを受ける機会が少ないことから、学生による支援組織「ピア・サポーター」も活動。リポートを書くときの“力の抜き方”など、教員では教えられないことを助言している。

同推進室長の田中真理教授(教育心理学)は「合理的配慮に関する取り組みは『支援』と捉えられがちだが、教育の一環。共に学ぶことで他の学生も実体験として多様性を感じ、学びになる。こうした考えを学内に根付かせることが最も大事だ」と強調している。

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リモート学習は発達障害の人には教室講義より集中しやすいだろうと思っていたら、私たちには気にならない音声ノイズが気になって集中できない人もいると言う話から、そう言えば教室の蛍光灯のノイズが嫌だと言っている子がいた事を思い出しました。気になったのは、教科書と画面を見比べるのが苦痛と言う話ですが、教室で黒板やホワイトボードと手元の資料やノートを見るのはもっと大変です。おそらく、共有画面を使って巧みにプレゼンができない教授の教科書や資料だけを読んでいるような授業が頭に入らないと言っているのでしょう。それは、どんな人だって頭に入らないです。

他の学生の視線が気になると言うのも、学生PCからギャラリー画面をOFFにできないならわかりますが、通常のリモートソフトは発言している人だけを写すことは可能ですから、予めリモートソフトの使い方を教えていないのではないかと思います。発達障害の学生の相談やニーズに対応する、大学の支援室はこの10年でどんどん増えていますが、教員の頭が追い付ていないとも言われています。たしかに高齢になってからリモート操作がどうのこうのといわれても、助手が手伝ってくれないとリモート講義がうまくできないのは無理ないなとも思います。

ただ、大学には年間100万を超える授業料を納めているのですから、教授がPC操作が苦手だから我慢してほしいではすまされない話です。オンライン授業になってレポートが増えて書けない問題は発達障害の学生にとっては深刻です。好きな事ならいくらでも書けるけど、興味のないことについては全く欠けない人から、定型の設問に答えるテストは得意だが、持論もおりまぜて論じることは高校時代に教えてもらっていないので融通が利きにくい人は大変です。何から書いていいかわからないという理由で、書けないまま放置して最後に首が回らなくなって留年・退学という学生はこれまでも少なくありません。

九州大のように支援室が機動的に動いて、画一的でなく個性に合わせて支援を打ち出してくれると、発達障害学生にとっても心強いです。助けを求める事が苦手な彼らには、プッシュ型でオーダーメイドな支援が求められています。オーダーメイドとなると「合理的配慮」とは言えないという学校がありましたが、合理的かどうかは金銭的時間的な枠組はあるでしょうが、工夫の度合い、アイデアに枠組などありません。何がヒットするか当事者だってよくわかっていない場合も多いのですから、様々な工夫の手数が必要です。そして、発達障害の彼らに分かりやすい授業に工夫することは必ず学生全体の利益にもなります。診断がなくても段取の悪い学生や、不注意の多い学生はたくさんいます。大学教育のユニバーサルデザインはみんなの役に立つはずです。

 

「冬のうつ」注意 夏場は普段通りだったのに… 日光浴・適度な運動を

「冬のうつ」注意 夏場は普段通りだったのに... セロトニン分泌減が要因、日光浴・適度な運動を

12/8(水) 【中国新聞】

冬になると、気力が湧かない、いくら寝ても眠い、食べ過ぎる…。そんな心身の異変は、冬季うつ病のサインかもしれない。一般的なうつと異なる症状もあり、夏場には元気になることも多いため気付きにくい。日光を浴びる機会が減ることが一因で、巣ごもり習慣が付いた新型コロナウイルス禍では特に注意したい。

広島市に住む20代の会社員女性は大学生の時、10月から真冬にかけて頭がぼーっとしてうまく思考ができなくなった。日中も強い眠気に襲われ、ひどいときにはいったん寝ると起き上がれず、枕元のスマートフォンにも手を伸ばせなかった。駄目だと分かっていてもご飯などの炭水化物を食べ過ぎてしまい、一晩で3合の米を空にすることもあった。

冬季うつ病は季節性感情障害とも呼ばれる。気分の落ち込みや意欲低下などは通常のうつ病と同じ。しかし睡眠や食欲については真逆で、過眠や過食に陥る。春になると治まり、夏場は逆に、そう状態になる人もいる。この女性も夏は普段通り生活できていたため「まるで冬眠しているみたいでした」と振り返る。

大学卒業後、もりた心療内科クリニック(中区)を受診し、冬季うつ病と分かった。女性は学生時代ストレスを抱え、冬場は外に出る機会が少なかったという。森田幸孝院長は「主に10月から翌3月にかけ、2年以上続けて症状が現れるのが特徴。比較的女性が多い」と話す。

冬季うつ病は北欧など高緯度で冬の日照時間が短い地域に多い。国内でも、日照時間が短い日本海側の地域に症状を訴える人が多いとする調査結果もある。国立精神・神経医療研究センター(東京)睡眠・覚醒障害研究部の栗山健一部長は「日光を浴びないとセロトニンの分泌が減り、気分や意欲が落ち込んでしまう」と指摘する。

セロトニンは脳の神経伝達物質で、心の安定や頭の働きを促す。部屋にこもったり、日照時間が短かったりすると分泌が進まず、眠気も強まる。不足を補うため炭水化物を欲し、食生活も乱れる。もともと抱えるストレスと重なると、仕事や家庭生活などに与えるダメージは大きくなる。

栗山部長は「回復には、まず外に出て日光を浴びる習慣を付けることが大切」とする。朝はカーテンを開けて、日光を浴びることを勧める。また、室内で専用の照明器具の光を浴びる高照度光療法でも、セロトニン分泌につながる。近年は市販でも同療法向けの器具が増え、目覚まし時計付きもあるという。

さらに必要なのは適度な運動とされる。日中の散歩や通勤通学時に歩く距離を増やすことで、生活リズムも整い、眠気も感じにくくなる。食事もタンパク質の多い肉や魚、乳製品などをバランス良く取りたい。セロトニン生成を促す「トリプトファン」というアミノ酸を含んでいるからだ。

森田院長は「コロナ禍で外に出なくなった分、気付かないうちに症状が現れているかもしれない。規則正しい睡眠に気を配り、おかしいと感じたら受診してほしい」と呼び掛けている。

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発達障害のある人は、セロトニンやドーパミンの働きに弱さがあって、不注意や気分障害、睡眠障害等が起こりやすいと言われています。日光を浴びる時間が減ってくるこの時期はいろいろと行動の問題も起きやすいようです。障害の有無に関係なく気分障害が起こりやすくなる時期なので、神経伝達物質の働きに弱さを持っている人は、意識的に日中戸外に出て活動することが大事だと思います。

うつなのに食欲があり炭水化物が欲しくなり過食するというのは興味深い話です。冬眠を必要としない進化をとげる前の時代の行動がDNAに刻み込まれていて、日光を浴びる時間が短くなってくると遺伝子のスイッチが入って、冬眠に備えるエネルギーの蓄積行動と、春までエネルギーを温存するための省エネ行動(うつ状態)が発動されるのでしょう。

もっと興味深いのは、日中外に出て活動するとタンパク質に含まれるトリプトファンがセロトニンを合成し、セロトニンは脳の松果体でメラトニンに変換され、メラトニンは睡眠を正常にするサイクルを作り出すという見事な体内メカニズムです。その結果、DNAの冬ごもりスイッチが切れて炭水化物の大量摂取行動を止めるとともに、省エネのうつ状態から復活して活動的になるわけです。

つまり、冬眠をせずに365日活動する猿の祖先に進化するプロセスは、冬の日光浴の時間増によってアミノ酸から神経伝達物質を生成する生化学的な進化に裏付けられているわけです。このことは、人間と言えども祖先の野生動物時代の生命維持システムをベースに持っているという事をわきまえる必要があるということです。ITだのデジタルネットワークだのと言っていても、身体は生命体の摂理によって駆動していることを理解して、心身の健康と日々の活動の結びつけて考えていきたいと思います。

教員確保に退職した経験者を再び採用する制度導入へ 山梨県

教員確保に退職した経験者を再び採用する制度導入へ 山梨県

12月06日 【NHK】

優秀な教員の確保が全国的な課題となる中、県は介護や育児で一度教員を退職した経験者を再び採用する制度を新しく導入する方針を示しました。

文部科学省によりますと、令和元年度に実施された公立学校の教員採用選考試験の全国平均の倍率は3.9倍と前の年度を下回っていて、近年、全国的に倍率の減少が課題となっています。

6日、県議会で行われた2日目の代表質問で、「未来やまなし」の議員が、こうした状況を受けて、介護などの家庭の事情で退職した教員経験者の再雇用について、県は今後どのように取り組んでいくか質問しました。

これについて、県教育委員会の三井孝夫教育長は、山梨県では平成28年度から昨年度までの5年間で、83人の教員が介護や育児を理由として定年を待たずに退職していると明らかにしました。

そのうえで、「確実に優秀な職員を確保するという視点から、教員経験者が再び学校現場で活躍できる仕組みを作ることは非常に有効だ」として、一般の選考検査とは別に、介護や育児の理由で山梨県で退職した経験者を再び採用するための新たな制度を設ける方針を示しました。

県によりますと、新たな制度では、一般とは違う受けやすい形の試験の形式にすることを検討していて、早ければ来年度からの実施を目指すということです。

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倍率が下がった理由から人材確保を考えず、若手がダメなら退職教員で補充しようとする安易な発想で持続可能な人材確保ができるか疑問です。学校には教師になりたくても、講師をしながら採用試験の勉強ができないハンディがあって、採用されない有能な若手だってたくさんいるのですから、まずそこに手を付ける気はないのでしょうか。確かに、倍率が下がれば採用される職員の学力的なレベルは落ちます。しかし、ペーパーテストの得点が高くても、ブラックな学校や保護者との対人関係に疲れ果てて数年で辞めていく教員も少なくありません。

教委が今やるべきことは、教員が定時で帰宅でき、有給休暇も平日で消化できるように補充人員を学校にそろえておくことです。少々賃金が安定していても、無報酬で時間外労働を強いられるような働き方が続いたままでは、人手不足の今日で採用倍率があがるほうが不思議です。授業時間と準備時間が半々くらいで、生徒指導もチームでクラス指導にあたる体制を作ったり、保護者クレームも専門職を置いたりチームで受ける体制を作らないと今の学校は「やってられない」のです。

倍率低下から、新しい学校を作ろうと言う夢を語るのではなく、職場がブラックすぎて子育てや介護が続けられなかった退職職員をまたぞろ採用しようと言うのですから、退職教員がそのまま集まるはずがありません。現在の再任用制度を使って教員を継続する人材に優秀な人材が残りにくいのは、そうした教員の多くは燃え尽きてしまっているからだと言われます。辞めた職員の声を生かして、教育は百年先の投資なのですから、資金も投入して夢のある働きやすい職場を作るべきです。

最年少26歳「タンクトップ市議」「多様な個性を認めて」豊岡市議会

最年少26歳「タンクトップ市議」「多様な個性を認めて」豊岡市議会で初当選 高校生が選挙カーのアナウンスで応援

12/5(日) 【神戸新聞社】

兵庫県北端に位置し、東京23区の面積よりも広い市域に人口わずか8万人の兵庫県豊岡市。10月24日に投開票があった市議選の選挙期間中、市内では黄色の通学帽子をかぶった小学生たちが候補者のポスター掲示板の前にわらわらと集まっている光景が見られた。見上げる先にはあるのは、タンクトップ姿で上腕二頭筋を強調し、微笑をたたえた青年、荒木慎大郎さん(26)のポスターだ。保守色の濃い地域で異色の存在だったが、議員定数24のうち、上から7番目の1989票を獲得し、同市議会で初の20代、史上最年少で初当選を果たした。タッグを組んだのは選挙権を得たばかりの18歳の高校生。選挙カーのアナウンスを担当して支えた。珍しい2人組、一体何者?

市内約500カ所に設置された掲示板の最上段中央に貼られたポスター。顔よりも筋肉の面積の方が大きく、NHKの人気コーナーのフレーズ「筋肉は裏切らない」が思い浮かぶインパクトだ。太陽の光が降り注ぐ背景には、よく見るとなぜか小さなハトがたくさん飛び交っている。

「目を引きたくてマッチョなポスターにしましたが、筋肉は僕のほんの一面です」と、にかっと笑う荒木さん。タンクトップと短パン姿で街頭にも立ったが、「人にお願いする格好じゃない」と指摘されスーツ姿に切り替えた。

選挙前の同市議の平均年齢は65・4歳。荒木さんの倍以上だ。鍛え上げた筋肉を見せびらかしたいわけではなく、「都市部に比べて固定観念が根強い田舎だからこそ、多様な個性を認めてもらいたい。こんな姿でも選挙に参加できると若い人にも知ってほしかった」と思いを語る。

荒木さんは9歳のときに父親を亡くし、市内の母親の実家で暮らし始めた。野球のスポーツ推薦で市外の名門高校に入学するも、寮の同部屋の先輩から激しいいじめを受け、中退。地元に戻り、市内の通信制高校に編入した。大学では陸上部の円盤投げで全日本学生選手権に出場するなど好成績を収めた。

祖父が脳梗塞で倒れたことをきっかけに予防医療や健康増進に関心を抱くようになり、3年前に初心者や女性など誰でも気軽に運動できることをコンセプトにしたスポーツジムを市内にオープンさせた。

さらに、同世代の仲間とともにまちおこし団体も設立。同市では高校卒業後、大半が進学や就職で地元を離れる。「帰ってきたいと思えるようなまちにしたい」と思うともに、「若者は少数派で、声が届きにくいのではないか」と考えるようになったという。

選挙戦では「誰でも(選挙に)出やすくなるように」と低予算を心掛けた。広大な市域を巡るのは限界があるため、通常選挙カーの上部に設置する看板はやめて、市内全域に掲示されるポスターづくりに注力した。

ポスターの効果は大きく、興味を持った高校生らがインスタグラムを閲覧。活動中の様子をライブ配信すると、多いときには120人以上のアクセスがあった。リクエストのあった場所に駆け付けると、高校生が集団で待ってくれていることもあった。

選挙カーのアナウンスを担当したのは高校3年生の女子生徒(18)。荒木さんのジムに母親とともに通っている縁で、荒木さんと地元のまちづくりについて意見を交わすことも多く、トレーニング中に市議選に立候補することを聞いた。最初は「落ちたときに傷ついてほしくないし、『やめときんせえ』って止めました」という。

熱い思いを聞くうちに「友達として応援したい」と、放送部の経験を生かすことを考えた。ただ、自身が選挙活動に参加すること自体を悩んだという。「(荒木さんが)『高校生を利用している』とマイナスの印象を与えないか」「地盤の地元の(人たちの)許しがないといけないのでは」と迷惑をかけることを案じた。

「18歳選挙権」が導入されて以降、高校生にも投票を呼び掛ける動きは広まっているが、高校生が候補者の応援など選挙活動自体に携わることは珍しい。

学校に報告すると、過去にない例で心配されたが、学校からは「学外での個人の活動で、学校が制約することではない」との回答を受けた。学校構内での選挙活動は禁止されているため、注意をしながら、「友達が選挙に出るから応援する」と友人には説明。「周囲から変な子と思われたら嫌だな」という気持ちもあったが、選挙カーで通り過ぎた際に塾の窓から顔を出してくれたり、インスタライブを見てくれたりと、肯定的に受け取ってくれたという。

特にある日の出来事が特に印象的だったという。赤信号で選挙カーが止まった際、停車中はアナウンスしないことがマナーとの教えに従って黙っていたが、薄暗い中で目を凝らしてこちらを見ている制服姿の人影を発見。静かに「お待ちかねの荒木慎大郎がやって来ました」と発してみると、駆け寄ってきて、「待ってました、がんばってください」と言われた。親を連れて講演会に訪れてくれる子もいたという。

「学校で選挙の話はタブーな雰囲気だけど、荒木君のおかげで話しやすくなった」と振り返る。まだ選挙権を持っていない世代に選挙への関心を持ってもらうきっかけにもなったという。「今回は考えをよく知る人だから本人を応援したけど、(今後は)公約を見ていきたい」と話した。

地元の自治会代表の男性(66)は「ポスターは彼らしい気もした」というが、タンクトップ姿での街頭演説は面食らったという。

「地域では当初、『10年早い』『地域の会合にも出ていない』という声もあったが、若いからこそ30年後の地域を考えてくれるのでは」と、徐々に期待感に変わっていったという。荒木さんの投げた問いかけは、少しずつ地域の有権者を揺さぶっていった。

全国で20代の市議は69人(7月1日現在)で、全市議の0・4%にすぎない。 荒木さんは「若者の声を市政に反映し、議員の仕事がどういうものかも伝えていきたい」と抱負を語る。(石川 翠)

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全国の高3の生徒数は約100万人です。団塊世代の70歳は約200万人で18歳はその半分です。さらに総選挙の平均投票率は18歳は4割、70歳は6割ですから、実際の投票数では40万対120万で3倍の差があります。政治家にしてみれば政策に対する票数の見返りは1:3なのでどうしても高齢者向けの政策提案になるのは無理もないことです。そうした中で、18歳が選挙運動に参加していけば、18歳の投票行動は増え投票数の格差は減少していくとは思います。

20代の政治家がいても欧米では何も不思議ではありません。日本の地方議員は年寄りが多すぎるのです。地方議会の仕事が若者にできないような中身でもありません。年寄り向けの政策を言う代議士がいるなら構成比率は少なくても若者代表のような代議士も必要です。ただ、日本の地方政治は金まみれ利権まみれのところが、若者の参政を阻んでいます。今回の新潟の選挙区での裏金要求話も、そのやりとりの真偽は別としても比例復活を狙うならと数千万の金がかかると言うのはあながち嘘ではないような気がします。

現総理のお膝元、広島県の選挙買収事件では、県会議員から町村議員にいたるまで賄賂と知って受け取ったと公判で議員たちが証言しています。選挙で金が議員間を飛び交うのは当たり前という証拠です。議員歳費はその自治体の市民の平均年収とし、政治活動は市民が手弁当で運営するくらいのほうが、政治屋がなくなり透明性があって良いのかもしれません。

国の方向を提案する政党政治は必要ですが、地方議員は選挙のたびに支持政党がかわるくらいの無所属政治家で良いと思います。得票を巡って政治利権が生じ組織腐敗が続くのは、政党組織にいると不正や不公平を必要悪と考える様になり、告発がしにくいからだと思います。日本の未来を支える18歳を地方政治に巻き込むには政党や政治利権と無関係の若者政治家の登場が必要です。

負い目感じる母親「手が掛かる子を預けている」学校に声上げられず 姫路・特別支援学級の暴言・体罰

負い目感じる母親「手が掛かる子を預けている」学校に声上げられず 姫路・特別支援学級の暴言・体罰

12/4(土) 【神戸新聞NEXT】

兵庫県姫路市立城陽小学校で特別支援学級の担任をしていた元教諭の男性(39)が差別的な暴言や体罰を繰り返していた問題で、過去に元教諭が担任する学級に在籍していた男児の母親が3日までに神戸新聞社の取材に応じた。男児が元教諭から叱責(しっせき)されているのに気付きながら母親として声を上げられなかったといい、「安易に放置した管理職や、子どもの弱みにつけ込んだ元教諭を許すことはできない」と言葉を振り絞った。(井上 駿)

この問題が学校内で発覚してから間もなく半年となる。「息子は今は元気に通っているが、心の傷は本当に癒えたのか不安は消えない」と胸の内を明かす。

男児は集団行動が苦手で「クラスメートの邪魔をしてはいけない」と支援学級を選んだ。普通の子どもより大変だろうから、「学校に手が掛かる子を預けている」という負い目があったという。

元教諭が担任になってから、男児は「また怒られてん」と不満を漏らすようになった。本人は怒られた理由を理解できておらず、違和感が残った。息子からのSOSに気付きながら「我慢しようね」と慰めることしかできなかったという。元教諭の補助役で、暴言や体罰を管理職に告発した女性職員を慕っていたため、何とか通い続けたという。

理解できない理由で児童を叱り、親に説明もない。元教諭は支援学級には合っていないように感じたが、担任が代わることはなかった。「また怒られるから言わないで」と息子に頼まれ、学校側に苦情を言えなかったという。

女性職員は2018年度から少なくとも7回、学校側に実態を訴えたが、管理職は確認もせず、事実上放置したことに今でも納得できずにいる。

「なぜ学校はすぐに動いてくれなかったのか」「なぜ、他にも見聞きした教職員がいたのに訴えは届かなかったのか」

学校の説明会で何度も疑問をぶつけたが、現校長からは「口頭注意で直ると思っていた」という言葉しか返ってこなかった。

発覚後、個々の教員は児童のケアに一生懸命取り組んでいると感じる一方、管理職は責任を十分果たしていないように映り、わだかまりは消えない。

現在、市教育委員会が弁護士ら外部委員による検証委員会をつくり、原因や背景の調査、関係者へのヒアリングを進めている。母親は「学校現場の体質や歴代の管理職の責任まできちんと明らかにしてほしい」と願っている。

【姫路市立城陽小学校の特別支援学級での暴言・体罰問題】担任だった元教諭(39)が2018年以降、児童6人に「生きる価値がない」などの差別的な暴言や、体を押さえつけるなどの体罰を繰り返していたことが発覚。元教諭の授業をサポートする女性職員が管理職に少なくとも7回相談したが、管理職は市教育委員会に報告したり、確認したりせずに事実上放置。今年6月、女性職員が元教諭の問題行為を記録したメモを校長に提出したことで学校側が調査を始め、県教委が計34件を認定し懲戒免職とした。

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学校だからと言って暴言・体罰と言う軽い言葉を使わないでほしいです。懲戒免職になった職員は扱いの難しい児童だから児童虐待したのではないです。もともと、人権のことなど感じていない職員だったと思います。問題は管理職や自分は関係ないと頬かむりしている市教委だと思います。こうした、乱暴狼藉を働く職員は通常学級ではすぐに問題になります。それを、支援学級などに配置換えして、記事にもあるように「面倒を見てもらっている」という保護者の切ない気持ちに胡坐をかき何年も居座らせることにこそ問題があるのです。

虐待をする職員はあってはならないことですが、こうした職員の配置を考える管理職やそれを許している市教委の方がはるかに悪辣だと思います。しかも、秘密裏にではなく、職員が何度も校長に報告しているのに放置しているのですから、公然と児童虐待を管理職が認めているところに、この問題の根深さがあります。

今回の件で、管理職は減給だといいますが、暴行罪を隠蔽して犯罪をほう助したのですから同罪で懲戒免職でも誰もおかしいとは言わないでしょう。こうして一罰百戒で示しをつけ、人権意識の欠如した管理職を更迭して学校DVをなくすしかありません。「体罰」などと児童の側にも若干の問題があるかのような表現は控えるべきです。また、この教員は免職されて当たり前で、これで贖罪にはなりません。市教委はこの教員を暴行罪で刑事告訴をすべきです。

香港、「国安法」1年で5500人が学校を去る

香港、「国安法」1年で5500人が学校を去る

Posted December. 03, 2021 【東亜日報】

去る1年間で、香港で中学・高校を辞めた生徒と教師が5000人を超えたことが明らかになった。学校を辞めた生徒10人に6人は香港を離れると明らかにした。香港で反政府的な動きをした香港市民に最高で無期懲役刑を科す香港国家安全維持法(国安法)の施行などで、香港の社会環境が国安法施行の前と大きく変わった影響とみられている。

2日、香港メディア「HK01」などによると、香港の中学・高校の校長の会である香港中学校長会が1日に140の中学・高校を対象に調査した結果、2020~21学年度の1年間で生徒4460人と教師987人が学校を辞めたことが明らかになったと伝えた。1校当たり平均32人の生徒と7人の教師が辞めたことになる。1年前の調査で生徒2700人と教師498人が辞めたが、大幅に増加したのだ。

特に、学校を辞めた生徒の中で2643人(約59.2%)は香港を離れて外国に行くと明らかにした。中学校長会は、「学校を辞めて他国への移民を選択する教師も7倍以上増えた」とし、「この1年間の生徒と教師の離脱が非常に深刻な状況ということは明白な事実」と懸念を示した。

このような事態の理由として、国安法の施行で香港の全般的な社会環境が抑圧的になり、教育政策やカリキュラムも親中一色に変わり、生徒と教師が失望したためと分析されている。新型コロナウイルスの感染拡大を阻止するために中国と香港間の往来が制限され、中国本土の生徒が香港の学校に通えないことも影響を及ぼしたとみられている。中学校長会は7月にも当局に、「多くの生徒と教師が海外に出ている」とし、対策を要請した。

金祺容 kky@donga.com
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香港は人口が750万人で、中国共産党の民主化運動の弾圧以降、昨年だけで9万人が香港を離れたと言う統計が8月にされました。香港当局は、留学やビジネスで離れているだけだと言いますが、もう香港政府はどっぷり中国共産党に支配されていますから真偽のほどはわかりません。人口の1.2%程度とは言え、日本の人口比で言えば京都市140万人が丸ごと移住していることになります。

そのうち、中高生5000人、教員1000人近くが香港から離れて行ったというのです。そして、その6割が英国をはじめ海外に移住したと言うから深刻です。乙訓の中学生全員が海外に移住したことになります。中国共産党は、そこまでしても冬季オリンピックの前に民主主義を破壊したかったのでしょう。

中華民族などと言う学術的にカテゴリーのない民族をでっちあげ、宗教と言葉と民主主義を取り上げて中国が世界の中心だと露骨な中華思想を周辺国だけでなく果てはアフリカ、中南米にまで押し付けます。それにしても香港を捨てる生徒の気持ちは如何程でしょう。家族の意向とは言え、自分の親族や友人とも離れる人生を送ることになります。子どもたちにそんな思いまでさせている中国政府の蛮行に国会決議一つできない我が国の議員達はどうなっているのかと思います。

部活動の地域移行…為末大さんが推す2つの理由

部活動の地域移行…為末大さんが推す2つの理由 指導員確保や保護者負担にも持論

2021年12月2日 【福井新聞】

部活動の未来をどう切り開けばよいのか。スポーツの社会的価値を探求している元陸上男子400メートル障害選手の為末大さん(43)にオンラインで聞いた。

-週末の部活動をスポーツクラブなどが担う地域移行が始まっている。
「2点の理由で賛成だ。一つは労働環境の側面。これまでの部活動は教員の長時間労働で成り立っていた。私がインターハイ(全国高校総合体育大会)で優勝した時、教わった先生には『ダイ』という私と同じ名前の子どもがいた。先生が3年間で費やした時間は、息子さんより私の方が長かっただろう。家庭を犠牲にする職業にさせてはいけない」

「2点目はスポーツ・文化活動の場を維持するためだ。少子化は大きな流れであり、学校単位で部活動を維持するのは無理がある。かといって部活動を廃止して全てを民間クラブにすると各家庭の経済格差がそのまま出てしまう。米国がそうだ。よって、週末移行分も含め週10時間ほどは行政が資金的にカバーする。それ以上は市場に投げて、希望者がお金を払って参加する2段階の仕組みを提案したい」

-国のガイドラインに基づき活動時間短縮が進められている。競技力が落ちないか。
「運動部は長時間練習が当たり前だった。しかし私の経験から言って週10時間ほどが発育の面でも競技力を高める上でも適切だ。早いうちから一つの競技に特化させるのも、セカンドキャリアなど将来を見据えると本当は良くない。2競技をするとか、スポーツと文化活動を両立するとか。学業も大事にしてほしい」

「練習が過熱する理由の一つに全国大会がある。欧州では全国大会を禁じ地区大会までとしている国がある。福井なら『北信越大会まで』のイメージだ。これらの国ではむしろ競技力が上がっている」

-地域移行に伴い、金銭的負担が増えることに違和感を覚える保護者もいる。
「教員の犠牲を減らすため認識を変えてもらうしかない。一方で、国として財源の創出も考えていくべきだ。最近の議論で可能性があるのはプロスポーツを対象にしたベッティング。試合の勝ち負けを賭けるギャンブルだ。欧州に続き、米国も解禁へ動いている。国が認める代わりに、収益の一部は次世代の育成に使う規定を設ける」

-人材や資金力に差があり、スムーズにクラブ移行できない地域、競技も出てくる。
「地域の力が試されている。これからはクラブの存在を理由に引っ越しする家庭が増えると予想する。ポイントは企業や行政職員の副業だ。地域のために働く日を提供できないか。ドイツの数万人都市で見た事例では、陸上クラブの先生が新聞記者だった。3日間は記者、2日間はコーチ。その間も企業から給料が出る。実質的なスポンサーだ。コーチだけど普段はJA職員です、消防士です、といったように、企業や行政も子どもの育成のために時間を融通し合う。部活動にやりがいを持つ教員もたくさんいるわけで、教員の副業も認めていく。福井県でそういうモデルができるといい」

「部活動改革は10年後、20年後の日本全体の選手強化にも響いてくる大きな話だ。従来の形に固執しては絶対に成立しない。前向きに、新しい方向をみんなで見いだしたいですね」

為末大(ためすえ・だい) 1978年広島市生まれ。法政大卒。現役中の異名は「走る哲学者」。陸上男子400メートル障害の日本記録保持者。2001年と05年の世界選手権で銅メダルを獲得し、五輪は00年シドニー大会から3大会連続で出場した。著書に「諦める力」「逃げる自由」など。

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為末さんの意見は明快で合理的です。生徒指導の一環として部活動は有効と言う意見が現場では根強いですが、それは一部の教師だけに言える事であり、どの教員にも共通するものではありません。部活動がないと生徒指導ができないという発想自身が貧困で、学習を通じて、ホームルームを通じて生徒指導は行うことが原則です。そうすると、教職員のあれこれの多忙さを原因にして生徒指導どころではないと言う意見が出てきますが、まずは、勤務時間のかなりの割合を割く部活動を校務から外さない限り時間的余裕など生まれるわけがありません。

また、練習は週10時間くらいが最も効果的だし、小さな時期は多様なことに取組むべきだと言うのもいちいち納得です。全国大会を政策的に廃止してはどうかと言うのも、優れた提案だと思います。長期休業中に家族旅行より優先される部活動、試合に明け暮れる運動部の姿は世界の中でも異常です。多感な思春期の時期にわざわざ家族から遠ざけるこの文化は家族の絆を弱めているとさえ言われます。全国大会がなければ、何とか協会だの役員会への忖度だのと言う、大人の事情のために子どもが振り回されることも少なくなるでしょう。

副業としてコーチができるように行政や企業に働き方改革を求めるというのもぶっ飛びの提案です。つまり、スポーツ指導が好きな大人もいるから、本業の勤務時間を減らして人材を生かし、その経済的負担を自治体や企業が持つと言う大胆な発想です。たぶんこれが、近未来の新しい働き方なのだと思います。一つの仕事に執着するもよし、複数の仕事をこなすのもよし、そういう社会になれば子どもたちも一つの所属に縛られるのではなく、自分で選んだ好きな場所で学んだりスポーツしたり遊んだりしてよいという価値観が育つのだと思います。

「ノーマーク」の子を見つけ支援に 箕面市、成果を報告

「ノーマーク」の子を見つけ支援に 箕面市、成果を報告

2021年11月30日【教育新聞】

こども庁データ子どもの貧困教育格差箕面市
教育・福祉など子ども関連のデータを教育委員会に一元化した大阪府箕面市の担当者が11月26日、こども庁の創設を目指す自民党議員有志の勉強会に登壇し、これまでの成果を報告した。集約した情報を定点観測することで、見守りや支援が必要であるにもかかわらず、学校で対象として認識されていなかった「ノーマーク」の子どもを発見し、支援につなげることができたと話した。

箕面市は2016年度、教委の子育て担当部門に新たに「子ども成長見守り室」を設置。市独自の調査も活用し、学力・体力、生活状況のほか、生活保護の受給状況、給食費の滞納状況などの多方面にわたるデータを収集・集約し、さらに時系列で変化を追跡できる「子ども成長見守りシステム」を構築した。

このシステムでは子どもの状況を「生活困窮判定」「学力判定」「非認知能力等判定」の3要素で判定した上で、さらにその3要素を掛け合わせ「子どもの状態の総合判定」を行い、重点的な支援が必要な順に「重点支援」「予防的措置」「見守り」に振り分けている。判定は定例で年2回行うほか、必要に応じて個別に行うこともあるという。

今回の勉強会に登壇した箕面市教委の松澤ひとみ氏によれば、18年後半に「重点支援」の対象と判定された児童生徒のリストを学校に提供して支援状況を確認したところ、そのうち25%が「見守りの対象ですらなかった」。学校では特に気になるところのない「おとなしい子」と認識されていた子どもが、システム上では、学力や一部の非認知能力の数値が乱高下する不安定な状態であることが示されたという。

また、不登校傾向など学校現場での「小さな気付き」に対し、子ども成長見守りシステムの客観的なデータを照合することで、必要な見守り・支援につなげることができたという。とりわけデータを継続的に収集していくことにより、学力が急激に悪化したなどの兆候を見逃さないようになったことを、成果として挙げた。

勉強会の参加者からは「子どもは本当に、調査に正しく答えているのか」という質問があった。松澤氏は「データから読み取れる特徴が、学校現場の認識と一致していて驚かれることがある。思ったよりも正直に答えてくれている印象だ」としつつも、「全て最も悪い選択肢に丸を付ける子どもも確かにいるが、それも一つのメッセージだと思っている。本当はSOSを出したいが、大人を信じていないのかもしれない」と応じた。

勉強会の共同事務局を務める自見英子参院議員は「あるべき姿から考えて(子ども成長見守りシステムの構築を)スタートさせている。国や他の市区町村の中で、どう取り入れていけるか考えたい」と話した。

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非認知能力(英語ではnon-cognitive skills)とは、IQや学力テスト、偏差値などのように点数や指標などで明確に認知できるものではないけど、子どもの将来や人生を豊かにする一連の能力のことです。やり抜く力、目標に向かって頑張る力、自制・自律性、自己肯定感、他者へ配慮、コミュニケーション能力、論理的な思考力などが該当します。

幼児教育で著名な東京大学名誉教授の汐見稔幸氏は、非認知能力を魚捕りで例え、罠をひたすら作り続ける集中力、罠を改善したり罠を仕掛けるポイントを考える直感力、魚が取れなくてもあきらめない忍耐力、失敗してもまあいいかと思える楽天性、友達と協力する力、間違ったことをしたら素直に謝ることができる正直さ、これらが非認知能力であると述べています。

こうした、数字で表すことのできない能力は座学では学べません。遊びや主体的な学びの中で「地頭」として身についていくものです。記事では、こうした能力に課題のある子どもは、学力や素行などでピックアップできないけれども、やがて顕在化していくので早い時期からマークしておくことが大事だという事です。

子ども庁など役所を増やしても、文科省や厚労省があるなら余計に動きが取れなくなるような気がします。結局、政治家のアピールのための施策のようにも感じますが、取りこぼし易い子どもをフォローするこのシステムは優れていると思いました。学力と素行に問題がない子を教師は可もなく不可もなくと見過ごしがちですが、実はしんどいと言えずに、または、しんどいことにも気が付かずに過ごしている子がいるのです。

杉咲花主演『恋です!』担当P、“障害を枷にしない”新しい恋愛ドラマに挑戦

杉咲花主演『恋です!』担当P、「障害を枷にしない」新しい恋愛ドラマに挑戦【インタビュー前編】

2021年11月30日 【中日新聞】

女優の杉咲花が主演する日本テレビ系ドラマ『恋です!~ヤンキー君と白杖ガール~』(毎週水曜 後10:00)。ORICONが発表する秋ドラマの満足度調査でも常に上位をキープ。杉咲演じる弱視の盲学生・ユキコとヤンキーでありながら一途にユキコを想う森生(杉野遥亮)の恋に“胸キュン”はもちろん、2人や取り巻く人々たちのほっこりあたたかな人間ドラマも毎週、反響を呼んでいる。このほど、森雅弘プロデューサーにインタビューを行い、“障害をラブストーリーの枷(かせ)にしない”という原作の軸を大切にした今作へのこだわりや、制作の裏側を語ってもらった。

今作はWEB連載での閲覧数累計が2000万PVを突破した人気漫画『ヤンキー君と白杖ガール』(うおやま/KADOKAWA)を実写化。まず、この作品ではユキコの“障害”を恋の障壁、枷として描いていない。2人が乗り越えていくことになるハードルのすべては、知らなかったこと、わかろうとしないこと、わかりたいけどわからないことから生まれ、それでも歩み寄って考えることが大切だと教えてくれているようでもある。

実写化の大きな理由について森氏は「なにより、原作の漫画がおもしろく、かつ、今の時代にピッタリだった」という。「王道のラブコメでありながら社会的マイノリティが主人公。社会的マイノリティの恋愛モノは昔からありますが、障害の持つネガティブな部分を切り取って、ハードルとして恋愛ストーリーのために使っていた。しかし、この原作はそれとは全く違っていたのが新鮮だった。二人が出会い、それぞれの「弱さ」があるからこそ、互いを認め合い、前向きにパワフルに生きている。それが凄く時代に合っていると感じました」とこの作品との出会いから手応えを感じていたそう。

だからこそ制作する上では、視覚障害について綿密な取材を行い、リアルを反映した。「実際に当事者の方と会って、話してみた感覚や彼らがなにを望んでいるかを大切にしたいと思いました。どんな人間でも枷はあるし、確かに(身体的な)障害だって枷ではある。ただ、話を展開する上でそれだけにフォーカスするのではなく、弱視として生きる主人公は“世の中との付き合い方”で健常者とは違う部分はありながらも、みな同じ人間ということを大事にしています」と矜持を明かしている。

■視覚障害がある3人の“視え方の違い”をリアルに再現
そして、実際に取材をして森氏が驚いたというのが「一口に“視覚障害”といっても、その人ごとに視え方が違う。例えば、ユキコは光と色がぼんやりわかる程度の弱視だが、同じく盲学校の同級生である空(田辺桃子)は視野が欠損するタイプの弱視、青野(細田佳央太)は生まれたときからの全盲とそれぞれに視え方が違う。3人はそれを見事に演じ分け、わかりやすく“視えない演技”ではないけれど、関係者の方からはすごくリアルだと言っていただいてます」と胸を張る。

具体的には「それぞれの視覚障害について、実際に視覚障害がある盲学校の先生にも指導していただきました。全盲の先生に細田くんが習い、杉咲さんと田辺さんは、弱視でも違う視え方をする先生御二方をそれぞれをモデルにしながら、それぞれの役の「視え方」を設定しました。現場でも、杉咲さんは自分の役の視界に合わせたメガネを作り、リハーサルではそれを付けて演技の確認をしています」と細やかな役作りが、それぞれのキャラクターに深みを与えている。

森氏も「最初は3人も不安だったと思うが、本当に見事に演じています。視覚障害のキャラクターを演じているということを忘れてしまう位、役への理解が進んでいると感じます」と感心している。

これから物語は第2章として、ユキコと森生の未来や夢へと話が進んでいく。そのなかで、どのようにキャラクターたちが動きをみせていくのか期待が高まるが、後編では、各キャストの起用理由について話を聞く。

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同じ障害名でもみんな違うというのはその通りだと思います。身体障害は車いすや装具の状態で見れば何が不自由なのかだいたいの予測はつきます。それでも、どの程度の身体感覚があるのかは本人でなければ分かりません。どう見えるのかはどう感じるのかと同じで本人にしか分からないのです。ドラマの中で、森生の元カノが白杖を持っていれば周囲の人から優しくされて不公平だと言ったことに、ユキコはそれだけで視覚障害の自分を理解されているとは思わないと反論します。

白杖は晴眼者には視覚障害者のシンボルではあるけども、視覚障害者にとっては移動のためのツールでありそれ以上でもそれ以下でもないのです。むしろ、世の中に溢れる視覚情報がどれほど視覚障害者に一人で理解できるようになっているのか考えれば、ほとんど皆無と言った方が正しいのでしょう。また、理解できるもの(聴覚情報化など)が極めて少ないと言っても視覚障害の状態によって違いがあります。

同じように、発達障害もASDやADHD、LDとありその程度や、ミックスの仕方も様々ですが、周囲の人から見ただけでは分かりません。そして、本人がカミングアウトしても障害を言い訳にしているなどとひどい言葉を投げかけられる人もいます。同じ障害でも人によって違います。支援の仕方も違うし、さまざなオーダーメイドの工夫が必要です。『恋です!』が問いかけているのは視覚障害のことだけでなく、社会が障害をどうとらえたら幸福な社会が作れるかということかもしれません。

目からウロコのドイツ流教育「小学4年の成績で人生の進路が決まる」

目からウロコのドイツ流教育「小学4年の成績で人生の進路が決まる」

11/25(木) 【NEWSポストセブン】

冬以降の感染「第6波」が懸念されている新型コロナ禍。昨年、記録的に少なかったインフルエンザの流行とともに、なおも警戒・注意が呼びかけられている。こうした新しい感染症の拡大は、大人だけでなく、子供の成長にも少なからず影響を与えている。昨年から今年にかけて、学校の臨時休校やオンライン授業への切り替えなどが相次ぎ、子供たちの中にも不安が広がった。親にとっても、学校より家で過ごすことが増えたことで、子供たちの勉強の進み具合や、やる気をなくすことを心配する声が多くあがっている。

しかし、コロナ禍も、それに伴う自粛や行動制限も、個人にはどうすることもできない。むしろ、この逆境や負担をマイナスと考えるのではなく、乗り越えるべきハードルだと考え、ポジティブに変えていったほうがいいのかもしれない。

その参考になるのがドイツでの教育システムだというのが、現地在住20年を超える留学コーディネーターのキューリング恵美子氏だ。キューリング氏は、近著『ドイツ人はなぜ「自己肯定感」が高いのか』の中で、「みんなが揃って進級する」日本とは正反対の、生徒一人ひとりの能力や志向によって学校や進路を変えるドイツの教育制度について解説している。

小学1年で留年もある! 「みんなちがって、みんないい」
キューリング氏によれば、ドイツの教育では、子供一人ひとりの発達状態や学習テンポを重視しているのだという。

「ドイツで小学校へ入学するには、『入学適正検査』を受けなければなりません。これは、小児科医が発育状態を見るもので、入学して『勉強する』環境に対応できるか、身体的・精神的側面の両方をチェックするのです。

もし、小学校へ行くのにはまだ早いと判断された場合、授業時間が短く少人数制の入学準備学校(クラス)を勧められます。この検査で入学が1年遅れたとしても、保護者の受け止め方は、決してネガティブではありません。むしろ、早く入学して授業についていけないよりは、準備が整ったタイミングで入学するほうが良いと考えます。そのため、小学校の入学時に年齢が上の生徒がいるのは珍しいことではありません」(キューリング氏、以下同)

入学した後も、無理をして進級させることはない。

「年2回出る成績表の結果により、小学1年生から留年があります。成績や子供の能力について先生と保護者が面談し、相談のうえで留年が決定します。しかし、留年もネガティブな意味合いではなく、授業についていけないのなら無理して進級するのではなく、その子に合ったペースで確実に学習させるための仕組みなのです」

まるで詩人・金子みすゞの「私と小鳥と鈴と」の名フレーズ「みんなちがって、みんないい」を地で行くような話だが、まさに一人ひとりが自分に合った学び方をすればいい──そんな考え方がドイツでは当たり前のようだ。

嫌がりながらする勉強は「逆効果」
さらにドイツの教育制度では、小学校の4年間を終えると、その最終成績によって進路が3つに分かれる。卒業後すぐに職業訓練を受けて働く場合と、職業専門学校などを経て事務職や専門職になるためのコース、そして大学進学を目指すコースになる。

つまり、10歳時点での成績で、人生の進路が決まってしまうのだという。
「そのため、親も子供も、無理せず現実を受け入れていきます。他人と競争する、他人と比較するのではなく、留年や転校を恥じることもなく、その子供に合った最適な道を見つけていけばいいという考え方です。

一般的にドイツ人は、特に小さなうちは成績が悪くても親は子供を責めず、いかにその子が納得して能力に合わせて学べるかを考えて支えます。子供にはそれぞれの長所や能力があり、嫌がりながらする勉強に意味はなく、むしろ逆効果になると考えています。

ちなみに、ドイツを代表する文豪のヘルマン・ヘッセは1回、トーマス・マンは2回留年をしているそうです」(キューリング氏)

ドイツでは10人中9人が「学校生活に満足」
他人と比較するあまり、子供に過度なプレッシャーをかけることになれば、かえって子供の「自己肯定感」を下げることにもなりかねない。「ほかの子は頑張っている」「平均より成績が悪い」などと周囲との比較や競争ばかり強調しすぎると、思うように成績が伸びなかった時、子供たちは深く傷つき、学校に行くのも嫌になってしまう可能性もある。

興味深い調査結果がある。内閣府の「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」(2018年)によると、「あなたは、学校生活に満足していますか」の問いに「満足」「どちらかといえば満足」と答えた日本人は65.1%で、調査した7か国中で最下位だった。それに対して、ドイツは87.9%と調査国中で最も高かったという。

子供の能力に合わせた学習環境を整えて、能力以上の強制を課さないドイツの教育システムは、一見残酷に見えながら、「人生は成績がすべてではない」「あなたはあなたのままでいい」ことを幼いころから教えてくれるもののようだ。

むしろ、家庭で過ごす時間が増えた今こそ、親子のつながりを強めて、子供たちの「自己肯定感」を高めるチャンスかもしれない。親も、子供の成績に一喜一憂することなく、子供にとってベストの進路を考えるきっかけにすればいいのではないか。

【参考サイト・文献】
内閣府「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査(平成30年度)」
『ドイツ人はなぜ「自己肯定感」が高いのか』(キューリング恵美子著・小学館新書)

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このドイツの教育システムは戦前の日本の複線型教育のモデルでもありました。戦前の日本は、初等教育を終えると、旧制中学校、高等女学校、実業学校と進路ごとに早期分岐する教育制度でした。戦後の単線型教育制度への改革は、性別や階層によってその後の進路が早期分断される制度の見直しとして、教育の「民主化」、つまりアメリカ流の機会均等がねらいでした。戦後も何度か、このドイツモデルが日本で注目されたことがありますが、教育の機会均等を掲げる憲法との整合性がないので複線型を復活させようと言う向きには動きませんでした。

ドイツの義務教育は、大学進学を目指すなら8年制(もしくは9年制)のギムナジウム、それ以外は職業訓練への道へ進みます。実科学校とよばれるレアルシューレは6年制で卒業後は全日制の職業学校へと進み、職業訓練を受けて公務員や技術者となります。手工業系の職人(美容師、板金工、パン屋など)を目指す場合は5年制のハウプトシューレとよばれる基幹学校へと進学、卒業して、職業学校入学資格を取得する必要があります

この、ギムナジウム・実技学校(レアルシューレ)・基幹学校(ハウプトシューレ)の三分岐型システムがドイツの教育制度の大きな特徴です。学校間での転学は、基幹学校からギムナジウムへの転学はほとんど例がなく、実科学校からギムナジウムへの編入を目指す生徒はいますが難易度も高いので、ほとんどが就職の道へと進むそうです。

今日ドイツでは、国内に増加する移民の子供たちの不十分な教育環境が学力格差を生み出し、ドイツ全体の学力低下が懸念されていたり、グローバル化に伴い、国際基準に合わせるため、ギムナジウムの修了年次を下げたりと試行錯誤の教育改革が行われています。また、教育制度で選別を強めると学力は子どもと親の責任となり、教え方や環境の問題となりにくいのです。今の日本も結局は経済格差が学力格差を形成しているのはドイツと変わらないですが、少なくともチャレンジの機会はあるし、教え方や環境支援によっては高学歴への道もあるわけです。

それでも、ドイツの子どもの自尊感情が高いのはうらやましい限りです。選別をしてでも人と比べなくてもいいと言う安心感を優先するのか、経済力による階級格差をなくす民主主義課題を達成するのかどちらかを選べと言うのは難しいと思います。ただ、この記事はドイツの教育制度のメリットだけを取材しており、デメリットについては触れていないので正確な情報とは言えないです。

 

「息子の人生変えてくれた」 クライミングで恩返し パラ選手の母、京都に施設計画

「息子の人生変えてくれた」 クライミングで恩返し パラ選手の母、京都に施設計画

2021/11/24【毎日新聞】

パラクライミング世界選手権で9月に金メダルを獲得した選手の母親、濱ノ上(はまのうえ)輝(てる)さん(60)=京都府京田辺市=が健常者だけでなく、障害者やその家族、子育て中の母親など“誰もが安心して集える”ユニバーサルなクライミング施設を計画している。進行性の目の難病を抱える息子を育て上げた濱ノ上さんは「還暦を迎えた今、育児に悩んだ経験を生かし、息子の人生を変えてくれたクライミングを通じ、社会に恩返しできたら」と話す。

濱ノ上さんの長男はパラクライミングの日本代表、濱ノ上文哉さん(31)。網膜色素変性症という進行性の難病で弱視のため、視覚障害者の視力などの程度に応じた分類上のB2クラスで競技をする。

病気が判明した中学1年生の頃は日常生活にさほど支障はなかったが、大学受験を控えたころに病状が悪化した。文哉さんは振り返る。「テストの文章問題が見えにくく、時間内に読み切れなかったり、自転車で運転していて溝に落ちたり、生活面に少しずつ不自由な変化がありました」

同じころから親子関係も悪化し、険悪な状態が続いたという。

濱ノ上さんが、役に立つのではないかと文哉さんに本を差し出せば、視力の低下で簡単には読めないと突き返された。親子の会話は減り、怒らせて物が飛んできたこともあった。濱ノ上さんは「病状を受け入れなければならない息子の不安の全ては理解できない。それでも、母親として何かサポートしたいと歯がゆい思いを何度もしました」と話す。

衝突を繰り返しながらも、文哉さんは大学を無事卒業し、就職が決まった。その半年後、東京転勤になった。親離れ、子離れした東京で、文哉さんは転機を迎える。視覚障害のある仲間に誘われて、2016年にクライミングに挑戦した。「障害に関係なくホールド(突起物)をつかんで登る競技で、障害者も健常者も関係のない雰囲気が、僕にはとても居心地がよかったですね」と文哉さん。ぐんぐん上達し、翌年には日本代表に選ばれた。以降は世界選手権に挑戦を続けて、今年9月に念願の金メダリストに輝いた。

そんな息子の成長に、濱ノ上さんは「子育ては終わった」と実感した。そして「何か社会に恩返しがしたい。それなら、息子が居場所を見つけたクライミングを通じて交流の場を作りたい」と考え、約3年前から計画を温めてきた。

自他ともに認めるバイタリティーあふれる濱ノ上さん。文哉さんの病気が見つかった40歳代の時に、医学的な知識を付けようと、看護専門学校を受験し、准看護師の資格を取った。現在も産婦人科のクリニックに勤務する。そのスキルを生かし、親子関係がすっかり改善された文哉さんにも協力してもらい、今回の計画を進める。

施設は、京田辺市に来年2月に開業予定だ。約85平方メートルの広さで、種目別に、高さ8メートルの「リード」用の壁2面と、高さ4メートルの「ボルダリング」用の壁3面を設置する。専門スタッフを配置し、「オートビレイ」という自動巻き上げ式の命綱を準備し、1人でも安全にクライミングを楽しめるようにする。

施設のバリアフリーにかかる費用の一部をクラウドファンディング(https://camp-fire.jp/projects/view/495549)で募っている。

今月末までのクラウドファンディングで集めたお金は、多目的トイレなどバリアフリーにかかる費用やベビーシッタールームの整備に使う。子連れの母親らの利用を歓迎しており、准看護師の濱ノ上さんと、助産師の長女が世話をしたり、相談に乗ったりする。

濱ノ上さんは「障害のある当事者や家族、コロナ禍で不安が募っているお母さんたちなど、誰もが気軽にクライミングを楽しみ、ほっとできるような交流の場を作っていきたいです」と意気込んでいる。【生野由佳】

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クライミングで気分を晴らそうという一見奇抜な提案ですがそれくらいクライミングは誰にでも開かれたスポーツだと言う裏返しでもあります。ユニバーサルスポーツとしてクライミングを思いついた人は頭の柔軟な人なんだと思います。クライミングは自分の体一つで壁に向かい合うスポーツです。見えない人も、壁や岩の手掛かりの様子を晴眼者(ナビゲーター)と確認しながら、自分のペースで自分自身の目標に向かって高く登ることができます。障害者向けに特別にデザインされたものではなく、障害のある人もない人も同じルールで一緒に楽しめる面白さがあります。

クライミングに勝ち負けはありません。対戦相手や飛んでくるボールもありません。安全はロープや厚いマットにより確保されています。失敗を恐れずに思い切り体を動かせば良いのです。仲間と気持ち良く汗を流し、自分で答えを探し、自分の力で壁と対峙する自分だけのクライミングはユニバーサルスポーツ所以というより、自分の中で高見を目指すスポーツ本来の姿なのだと思います。

京田辺市に施設を作るとのことなので、完成すれば一度子どもたちと利用してもいいかなと思っています。ボール運動や集団遊びとはまた違った味のスポーツの楽しみ方が伝えられるかもしれません。

スクールロイヤー 法律で問題解決助けるアドバイザー

スクールロイヤー 法律で問題解決助けるアドバイザー

2021/11/24【産経WEST】吉田 智香

いじめ、虐待、不登校、校則違反-。学校現場は日々、さまざまな問題に直面している。教職員だけで解決するのが難しい場合は、「スクールロイヤー」と呼ばれる弁護士が相談に乗り、法的な視点から、事態の収拾に向けて具体的な対処法をアドバイスする。問題が深刻化するのを防ぐとともに、疲弊する学校現場の負担を軽減する。そのニーズは年々、高まっている。

「気になる生徒がいるんですが、ちょっといいですか」。2学期のある日の午後、東京都内の私立中高一貫校。非常勤の社会科教師でスクールロイヤーでもある神内聡(じんない・あきら)さん(43)に、男性教諭が声をかけた。神内さんが応じると、教諭は最近の生徒の様子や人間関係について説明し始めた。

弁護士資格を持ち、同校だけでなく複数の学校でスクールロイヤーを務める神内さんが期待されているのは、法律の専門家としてのアドバイスだ。例えばいじめであれば、学校や自治体の取り組みを示した「いじめ防止対策推進法」に基づく対応が前提。厳密に法を適用するだけでなく、個々のケースに応じた再発防止策も提示する。家庭で虐待を受けている可能性があれば、児童相談所の弁護士と連携し、家庭環境を整えるための法的な手続きをアドバイスする。

「子供だけでなく、先生にも『楽になった』『相談してよかった』と思ってもらえたとき、やりがいを感じる」。神内さんはそう話す。

本来ならいじめは、ないことが理想だろう。だが、「教師が生徒の人間関係を把握しようと努力しても、いじめを完全に防ぐのはきわめて難しい」と神内さん。だからこそスクールロイヤーには、起きてしまったいじめを適切に解決する手腕が求められるという。

そう思うようになった背景には、自身の苦い経験がある。以前は学級担任をしていた神内さんは、放課後などに積極的に生徒と雑談し、いつでも相談しやすい態勢を心がけていた。だが卒業後に生徒たちと会った際、「今だから話せるんですが」と、いじめに該当するような事実を告白された。気を配っていたつもりが、在学中はまったく気付けなかった。

神内さんによると、子供同士のトラブルは、誰が先に手を出したのか分からなかったり、複数の加害者の間に主従関係があったりと一筋縄ではいかないケースも多い。ときには被害者が「この加害者だけは許せない」と訴える場合もある。判断に迷って事態が長引けば、傷が深まることもある。そんなときこそ、スクールロイヤーの出番だ。

学校現場でのニーズは高まっている。文部科学省の平成31年3月の調査では、市町村教育委員会の76%が「法的な専門知識を有する者が必要」と回答した。

国は令和2年度から、都道府県と政令市の教育委員会が弁護士に相談する際の経費に普通交付税を活用できるようにし、弁護士の意見を聞くための金銭的なハードルを下げている。

弁護士相談 9割超メリット
国の動きに先立ち、独自にスクールロイヤーの制度を導入した自治体もある。平成25年度から取り組む大阪府は現在、11人の弁護士をスクールロイヤーに委嘱している。

学校は市町村教委を通じて相談を依頼。スクールロイヤーは法律事務所などで学校関係者と面談し、問題解決について助言する。年に数回、エリアごとの相談会も開かれている。

「子供の持ち物を壊した加害者を特定できない」「子供とトラブルになった相手の親の連絡先を教えるよう保護者に要求された」…。府教育庁小中学校課によると、令和2年度に小中学校から寄せられた相談は129件に上った。

このうちいじめが深刻化する恐れがあるなどの25件については、さまざまな専門職が集まって対応を協議するケース会議が開かれた。相談制度を活用した学校へのアンケートでは、9割超が「メリットを感じた」と回答したという。

保護者から学校に対する要求やクレームが増え、学校がしなければならないこと、そうではないことを法的根拠に基づいて整理することもスクールロイヤーの役割の一つだ。学校現場からは「法的な裏付けが得られたことで、自信を持って対応できた」との声が上がっているという。

トラブルの予測段階から支援
テレビドラマなどで広く存在が知られるようになったスクールロイヤー。各地で配置が進みつつあるが、厳密な定義はなく、さまざまな形がある。

教員免許を持ち、教諭を兼任する神内さんのような弁護士は全国的にもまれで、教育委員会や学校法人が各地域で適任と思われる弁護士をスクールロイヤーとして委嘱し、個々の相談に応じて法的な観点から助言するスタイルが主流だ。また、教育委員会が弁護士を職員として採用しているケースもある。

日本弁護士連合会は平成30年、文科相に「『スクールロイヤー』の整備を求める意見書」を提出。その中でスクールロイヤーを、「子どもの最善の利益を念頭に置きつつ、教育や福祉等の視点を取り入れながら、法的観点から継続的に学校に助言を行う弁護士」と位置づけ、トラブルが実際に発生していなくても、予測される段階から活用するよう求めている。

一方、文科省は令和2年12月に「教育行政に係る法務相談体制構築に向けた手引き」を公表。弁護士に依頼できる業務として、法的なアドバイスのほか、保護者との面談への同席などを挙げている。

公立中学校や教育委員会で生徒指導やいじめ問題に対応した経験のある鳴門教育大大学院の阪根健二特命教授(学校教育学)は、「いじめ問題などに苦慮している学校にとって、法律の見地から助言するスクールロイヤーは、頼りになる存在だ」と語る。

例えば校内で生徒が法に触れる問題を起こしたとしても、学校は普段の態度や性格、問題に至る背景を考慮し、生徒の将来に傷がつかないような「教育的な観点」から解決を図ることが多い。厳格な法律の適用は教育現場にはなじまないとされ、阪根さんは「かつては弁護士の力を借りようという発想がなかった」。

弁護士はむしろ、いじめや事故などの被害にあった子供や保護者の代理人として学校の責任を追及する立場に立つことが多く、学校と弁護士の関係は「決して良好ではなかった」という。

だが、学校側が対応を誤ることで被害者をよりいっそう傷つけ、訴訟問題に発展するケースも増えてきた。事態が深刻化する前に弁護士の意見を聞くことは「対応を考える上で役立つ」とみる。

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これまで子どもを預かる預けられる関係は善意で成り立っていました。それは学校だけでなく保育所や学童保育所、幼稚園なども同じです。ただ、行先を利用者が選べる民間はお互いの信頼関係等を理由にサービス先を変える事ができるので、事は学校ほど深刻化しません。また、法的に解決する課題があるなら早い段階でお互いに弁護士を代理人に任せることもできます。

ところが公的なサービスはこれが難しくなります。双方が善意と言う建前を崩さずに話をすると、仮にどちらかに落ち度があってもそれを隠して表面的に解決しようとするからです。実際に法的に課題のある学校の指導は存在するし、通常の苦情を通り越し法的に問われるべき保護者クレーマーも存在します。しかし、民間のように契約関係にない公立学校では、双方に信頼がなくてもこれからも付き合わなければならないというジレンマがあります。

そんな中では、困難な事例でなくても双方が引き下がるのを待つと言う、腹の中の読み合いの関係が続きます。置いてきぼりは子どもです。スクールロイヤーは学校専門家の一人として、学校の対応のあり方を法的な視点でバックアップしてくれるなら、無意味なやり取りを相当減らすことができます。お互い様志向という日本型対人行動は大事にしていきたいですが、慣習を重んじるばかりに子どもが等閑になるなら、法の下に平等という社会の仕組みを学校に持ち込むことを躊躇すべきではないと思います。

厳戒の修学旅行 接種有無聞けず、対策徹底

厳戒の修学旅行 接種有無聞けず、対策徹底

2021年11月22日 【中日新聞】

新型コロナウイルスの感染状況が落ち着いてきたことを受け、度重なる延期を余儀なくされてきた修学旅行が再開されつつある。中学校では人混み回避で定番の「京都泊」を避ける学校が増えた。プライバシーへの配慮から、学校側は生徒のワクチン接種の有無を確認していないため、「全員接種済み」を前提としない感染対策で、「最後の思い出作り」に臨んでいる。 (久下聡美)

「車内では水分補給以外はマスクを外さず、ホテルでの食事も黙食を心掛けてください」。五月から四度の延期を経て二十~二十二日まで二泊三日で岐阜、石川、福井県を旅行している浜松市八幡中学校は、出発前の集会で生徒が注意点を確認した。実行委員長の三年山田菜摘さんは「春も夏も延期になり不安だった。やっと実現できる」と笑顔を見せた。

例年は京都・奈良を巡り歴史や伝統文化に触れてきたが、人流の多い大阪に近い京都は回避し、北陸方面に切り替えた。それでも二学期の始業式を前倒しして出発を予定した八月下旬には石川県に「まん延防止等重点措置」が発令中で、再々延期した九月は全国的な感染急拡大に重なった。三年主任の鈴木寿美江教諭は「感染状況が見通せず、県内と県外を並行して旅行先選びを進めた」と振り返る。

十二歳以上へのワクチン接種は進んだが、事情があって接種できない生徒への差別につながりかねないため、教員が生徒に接種の有無を問うことは控えている。大坪由典校長は「(修学旅行に参加する)三年生の何人が接種済みかは把握できない。検温とマスク、手洗いの徹底が基本」と語る。体温が三七・五度以上の生徒は参加を見合わせ、バスの乗車人数は定員の約半分に抑えた。

学校向けの旅行を担当する遠州鉄道旅行営業課の小澤嘉巳(よしみ)さん(57)は「行き先や行程、部屋割りを慎重に行い、陽性者が出た場合の対応も想定している。飲食や入浴の場面では、他の観光客など不特定多数との接触がないよう場所を貸し切るなど、安全を第一に考えた旅行を提供している」と話している。

◆陽性対応想定 近距離が顕著
コロナ禍では「修学旅行のマイクロツーリズム(近距離旅行)化」も顕著になった。JTBによると、二〇一八年度は関西、首都圏、沖縄が多かったが、二十一年度は、出発地と同じエリアを旅行先とする学校が増えている。陽性反応が出ても保護者が迎えに行きやすく、保健所を含めた緊急時の連携もスムーズという利点がある。浜松市内の中学校でも、修学旅行が再開され始めた十月、県内や岐阜など中部地方が目立った。

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学校は社会の同調圧力が最大圧でかかる所だと言う事です。本来の仕事以外にこうした周辺部分の仕事の煩雑さがブラックだと教員人気を落とす原因にもなると言います。昨日一昨日の観光地は観光客でごった返しています。しかし、10月に入ってから、観光客は増え続け感染者は減り続けています。テレビも感染者の話は一切取り上げなくなり、外国人入国もいつの間にか枠が広げられ、ピリピリしているのは学校と政治家だけと言うのが現実です。

つまり、世の中の人はもう感染は収まったので旅行はOKだと考えている方が大勢だという事です。名古屋工業大の開発したAIは、東京都の場合、年内は感染者が50人以下と減少傾向が続き、年末ごろから忘年会や帰省の影響などで感染者が増え始めますが、来年1月中旬のピークでも370人と予測します。感染対策を続けることが前提ですが、ワクチン接種の効果が大きく作用するとAIは計算するのかもしれません。今冬の第6波は東京だけでなく、全国的にも第5波の5分の1~10分の1に抑えられると言います。

様々な感染パターンを考えて旅行計画を立てている学校教員には頭が下がりますが、京都の街にもたくさん修学旅行生が戻ってきています。周囲の批判が気になるのは分かりますが、エビデンスもないクレームを恐れて自己規制するのは間違いですし、生徒への教育的影響も考えるべきかもしれません。また、ワクチンは結果として集団感染を減らす効果はありますが、自分の感染予防のために接種するものですから、接種したかしないかなど神経質に担任が気にする中身でないように思います。

のぞみがこども料金無料へ JR東海「家族で一緒に旅を」

のぞみがこども料金無料へ JR東海「家族で一緒に旅を」

2021年11月19日【FNNプライムオンライン

JR東海は、東海道新幹線「のぞみ」の12歳未満の子ども料金を、期間限定で実質無料にすると発表した。

実質無料となるのは、2021年11月24日から12月19日までの期間限定で、JR東海のエクスプレス会員で、大人と一緒にネット予約した場合のこども料金。

たとえば、東京 - 新大阪間の指定席を大人と予約した場合、子ども料金7,250円が乗車したあとに全額キャッシュバックとなる。

JR東海はコロナの需要回復とともに、のぞみが2022年3月に運行30周年を迎えるため、企画したという。

利用者「すごく助かりますね。子どもが2人もいるので、結構移動が大変なのでうれしいです」

利用者「子育て世代に対して、応援という意味でそういったサービスがあると、また行こうかなというきっかけになる」

コロナ禍で利用者が減っている鉄道各社だが、ほかにも、“お得”なサービスはこのようなものがある。

小田急電鉄は2022年の春から、ICカードを利用した小学生の子ども料金を全区間で一律50円にすると発表。
東急電鉄は60歳以上の人を対象に、11月の1カ月間、2,000円で乗り放題の乗車券を発売。1,000人限定の販売に対し、4,000人が応募したという。

石本沙織アナウンサー「小田急電鉄はこれをすることで2億5,000万円の減資にはなるんですが、それでもやはり『子育てしやすい沿線の実現を』ということでできたということです」

加藤綾子キャスター「小さい時からたくさん乗ってると、親しみを持ってもらえるっていうような良さもありそうですね」

石本アナウンサー「大人になってからも『やっぱりこの沿線で住みたいな』とかにつながりますよね。東急電鉄は沿線に高齢者が多く住んでいて、コロナも少し落ち着いたので『皆さんに外出してほしい』という思いで始めたそうです」

明治大学・齋藤孝教授「青春18きっぷとかありましたから、シルバーきっぷみたいなものもいいですね。鉄道会社って先を見てやるんですよね。沿線に街を作っていくっていうところまで見越して鉄道をつくったりするので、これも将来を見越しての案だと思いますね」

石本アナウンサー「ちょっと運賃を下げてでも、鉄道に乗ってそこでお金を落としてほしいという思いもあるかもしれませんよね。東急電鉄はこれから高齢者だけではなく、子育て世代などへのお得な提案もしていくということです」
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最近、車の移動が便利なのか子どもが電車に乗る経験が少なくなっているように感じます。確かに、遠出をするときなどは大人の半分とは言え結構な出費なるし、迷子や忘れ物を気遣うくらいなら車で出かけるほうがいいという選択も多いのかもしれません。特に新幹線は、子どもなら憧れの乗り物の一つではありますが、兄弟なら東京 - 新大阪間を往復すれば大枚3枚が飛んでいきます。

JR東海のエクスプレス会員で、大人と一緒にネット予約した場合とえらく条件がついているように読めますが会員になるのは無料です。登録もスマホで10分もあればできてしまいます。詳しくは「スマートEX」のHPを閲覧すれば分かりやすく案内されています。

小田急は全区間子ども50円と言うから太っ腹です。新宿から箱根湯本や江の島まで500円以上かかっていたのがほぼ1割で行けてしまうのです。往復4時間たっぷり電車の旅が楽しめて100円です。関西はまだこういうアナウンスは聞きませんが、阪急系列なら姫路あたりまで、近鉄なら伊勢や名古屋まで行けます。往復するだけなら子どもだけで電車旅をさせても高学年ならそう心配はいりません。ぜひとも関西でも鉄道会社は子どもたちに太っ腹を示してほしいものです。

大谷翔平、米大リーグMVPに イチロー以来、日本選手2人目

大谷翔平、米大リーグMVPに イチロー以来、日本選手2人目

2021年11月19日【毎日新聞】

米大リーグ最高の栄誉である今季の最優秀選手(MVP)が18日(日本時間19日)発表され、ア・リーグでは投打の「二刀流」で活躍したエンゼルスの大谷翔平(27)が初めて選ばれた。満票で選出された。日本選手としては2001年のイチロー(マリナーズ)以来20年ぶり2人目の快挙で、大谷は「すごくうれしい。支えてくれたみなさんに感謝したい」と喜びを語った。

満票で選出
MVPは新人王、投手のサイ・ヤング賞などと同様、全米野球記者協会所属の記者の投票で決まる。各球団の本拠地から2人ずつがプレーオフ前までに投票。15球団あるア・リーグは30人が投票した。大谷は、ともに最終候補に入った48本塁打で本塁打王のゲレロ、45本塁打のセミエン(いずれもブルージェイズ)の両強打者を抑えての受賞となった。

大谷は今季、投手として9勝2敗、防御率3・18、156奪三振、打者では打率2割5分7厘、46本塁打、100打点、26盗塁の好成績を残した。本塁打はリーグ3位、盗塁は同5位。選手間投票による両リーグの年間最優秀選手にも選ばれたほか、打撃のベストナインに相当するア・リーグのシルバースラッガー賞(指名打者部門)やコミッショナー特別表彰も受けている。

大谷は岩手県出身。岩手・花巻東高から13年にドラフト1位でプロ野球・日本ハムに入団。14年にプロ野球史上初の「2桁勝利、2桁本塁打」を達成し、16年には10勝、22本塁打で初めて投手、指名打者の両部門でベストナインを受賞した。18年にエンゼルス入りし、同年に4勝、22本塁打で新人王。193センチ、95キロ。右投げ左打ち。【ロサンゼルス福永方人】
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イチローや松井秀もなし得なかった、大谷の快挙とは…MVPの今季「受賞」一挙紹介

11/19(金) 【読売新聞】

米大リーグ、エンゼルスの大谷翔平(27)が18日(日本時間19日)、アメリカン・リーグの最優秀選手(MVP)に選ばれた。日本人では2001年のイチロー(マリナーズ)以来2人目の快挙だ。異例の投打「二刀流」で大リーグを席巻したことが高く評価された。本塁打王を2本差で逃すなど、主要タイトル獲得はならなかったが、シーズンオフは一転、受賞ラッシュに。今季の大谷の様々な「受賞歴」を紹介する。(読売新聞オンライン)

この日のMVPは、全米野球記者協会の代表者30人の投票で決まるもので、単に「MVP」と言えばこの賞のことを言う。大谷はこの日までに、これ以外にもMVP級の賞を数多く受賞していた。

10月26日には、コミッショナー特別表彰を受けた。これは毎年、誰かが表彰されるものではなく、それにふさわしい選手がいなければ選出されない。実際、創設24年目で大谷は16例目だった。日本人は05年のイチロー(マリナーズ)に次ぐ2人目。ロブ・マンフレッド・コミッショナーは「大谷が成し遂げた歴史的な業績をたたえる必要があると感じた」と述べた。

また、選手間投票と、米国の二つの野球専門誌で、両リーグを通じた「年間最優秀選手」に選ばれた。選手間投票では、ア・リーグの最優秀野手の栄誉も受けた。ポジション別の最強打者を選ぶ「シルバースラッガー賞」もア・リーグ指名打者部門で受賞。チームのMVPと最優秀投手にも選ばれた。

月間MVP(ア・リーグ野手部門)は6、7月に連続で選ばれた。日本人が月間MVPを2度受賞するのは、野茂英雄、伊良部秀輝に次ぐ3人目だが、連続受賞も、野手で2度以上選出されるのも初めてだった。イチローや松井秀喜でも2度の受賞はなかったということだ。

さらに、6~7月にはリーグ週間MVPにも2度選ばれた。オールスターには、指名打者(DH)部門で、ダントツの支持を集めファン投票で選出。選手間投票で投手としても選ばれる前代未聞の快挙となった。

歴史的な活躍は、野球界以外からも、高く評価された。
米タイム誌は9月、大谷を「世界で最も影響力がある100人」の1人に選出した。投手をしながらのシーズン40本塁打、20盗塁以上の活躍を「ベーブ・ルースでさえなしえなかった」とし、ファンやメディアに対する紳士的な対応も評価した。

また、スポーツや音楽の分野で活躍する人を支援する「服部真二文化・スポーツ財団」は、世界に挑戦する若者を表彰する「服部真二賞」に大谷らを選出。財団理事長を務めるセイコーホールディングスの服部真二会長は「誰からも愛される野球人としての素晴らしさを感じる」とたたえた。

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前回、オールスターでの二刀流実現でも大谷選手を掲載しました(大谷、球宴での二刀流が決定: 07/06)。前回も書きましたが、大谷選手の魅力は、球界の誰もが支持しない二刀流を貫いて渡米したことです。もしも、これが日本の球団のままだったらどうだろうとも思います。何でもやってみよう。やってみなけりゃ分からない。という大谷選手の振舞から、ファンはアメリカンドリームを感じたに違いありません。

大谷選手を見ていて思うのは、二刀流を貫くという硬い意志を感じるよりも、怪我をして手術をしてもオールスター後にホームラン競争から離脱してしまっても、何とかなるさという柔らかに立ち直る復元する弾力性を強く感じます。肩ひじを張らずにとはまさに大谷選手の事を言っているようです。

心理学の世界ではこれを「レジリエンス」と呼び、例えば、戦火のような最悪な環境に育っても力強く育つ子どもの一群があり、この研究から今日の精神医学や教育に活かせるものはないかという事が注目されています。逞しいと柔らかいは別の質を表す言葉ですが実は復元力と言う点ではどちらも必要な要素なのだと思います。柔らかなアメリカンドリーマーがどこまで行くのか楽しみです。

AI❎アダプティブラーニング「すらら」、放課後等デイサービスでの導入が200事業所を突破

AI❎アダプティブラーニング「すらら」、放課後等デイサービスでの導入が200事業所を突破

2021年11月18日【ICT教育ニュース】

すららネットは17日、同社のAI❎アダプティブラーニング「すらら」を導入する放課後等デイサービスが200施設を突破したと発表した。

放課後等デイサービスは、学校に通学中の障がい児に対し、生活能力向上のための訓練や社会との交流促進などを行い、放課後の居場所づくりを推進するためのサービスで、2012年に児童福祉法改正により制度化された。

近年、将来の就職を見据えた就労準備型の同デイサービスが増えており、就労準備には学習支援が不可欠と考える同デイサービス経営者が増えてきていることから、「すらら」の導入が進んでいるという。

また、複数事業所を運営する法人が複数拠点で「すらら」を導入する事例が増えていることも導入校増加の要因になっており、同デイサービスでの導入は約1年半で2倍に増え、11月10日に200施設を突破した。

「すらら」を導入している同デイサービスのスタッフは、学習支援の面では未経験ながらも、子どもたち一人ひとりに寄り添い、多方面から支援を実施。

その結果、子どもたちの学習や意欲に効果が現れ、時間を忘れて集中して学習する児童・生徒の姿が見られるようになった。

未就学児童が2桁の繰り上がりのある足し算まで学習を進め、学習面の不安なく小学校に進学する例や、意思表示はできるものの発話がほぼない中学生が黙々と「すらら」学習を行って成績向上させたといったケースも数多く出ているという。

「すらら」小学校低学年版は、子どもの発達科学研究所の監修のもと、一般の児童はもちろん、学習障がいなどの発達の課題を持つ児童でも取り組みやすく、学力を伸ばしやすいよう、カリキュラム構成や画面の見やすさ、説明の理解しやすさを考慮して制作されている。

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前回の(放課後デイサービスは2類型へ厚労省方針:10/26)でも掲載したように、こうした学習支援をただの「学習塾のような」事業所とみて放デイ認可はしないのか、2類型の一つ「特定プログラム特化型」事業所とみるか境界線は曖昧です。学習支援の面では未経験な職員がICT学習ソフトを用いているのなら特化型とは言えないので、認可を得たいならもう一つの類型である総合支援型事業所の特色の一つとするのだろうと思います。

しかし、放課後のわずか2時間ほどの間に学習ソフトでの支援時間が占める割合がどれくらいになれば「学習塾のような」事業所とみなされるのかは不明です。それでも、下手な学習塾より、学習障害支援も念頭に置いたこの学習ソフトを用いたほうが、はるかに合理的に学習ができる子どもが多いだろうというのは想像に難くないです。ただ、発達性読み書き障害の場合、このソフトがどの程度障害に合わせたカスタマイズができるのかは明示されていません。

今日のICT学習ソフトはインターネットにつながれて、膨大なビッグデーターから学習内容や到達の傾向を類型化して個に応じて支援することが可能となっています。人の手が入らなくてもAIを用いてカスタマイズが可能となってきているのです。そういう意味では、一昔前の、PC学習機とは質的に全く違う学習機器に進化する可能性があります。教育界でもデジタルインフラは海外資本に占有されていますが、学習ソフトくらいはわが国独自のAI学習ソフトが開発され普及することに期待が集まっています。

残念なことにこうしたAIソフトが、様々な力量の人が教えるより有効な場合が多いということが現場では知られていません。学力の低い子どもにはいつも人がついて学習を支援をしてもらっている姿があります。しかし、そのままではいつまで経っても自分で学習に向かうという体制にはなりません。自学自習の経験を積み上げるためにも、良質の学習ソフトが支援現場で利用される機会が増えれば良いと思います。

加賀まりこ「自閉症の息子と向き合うパートナーを見続けて・・・〈生まれてきてくれてありがとう〉」

加賀まりこ「自閉症の息子と向き合うパートナーを見続けて。だから言いたい〈生まれてきてくれてありがとう〉」

11/16(火)【婦人公論】

現在発売中の『婦人公論』11月24日号の表紙は女優の加賀まりこさんです。11月より公開の映画『梅切らぬバカ』で自閉症の息子を持つ占い師・珠子を演じている加賀さん。自身のパートナーの息子も自閉症であることから、どうしても入れたかった台詞があるそうで――。発売中の『婦人公論』から記事を掲載します。
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◆パートナーの息子がもってきてくれた役
私はテキパキして口調が強いけど悪気はないとか、しっかり者の役が多かったけど、今回の映画『梅切らぬバカ』は自閉症の息子をもつ地味な占い師。夫がいなくなってから二人で生活していて。隣の家族や地域との関わりを通じて、息子の自立を模索していくのね。

偶然なんだけど、パートナーの息子が自閉症なの。監督(和島香太郎)に45歳になるそういう子どもがいるって話したらびっくりしてた。私たち夫婦のことをまったく知らないからね。

あの子がこの役をもってきてくれたのかな。塚地武雅さん演じる息子の忠さんのような感じだもん。いつもあらぬほうを見てるのよ。視線を合わせないの。でも目はすごく綺麗。澄んだ瞳で、純真で。その子がいたから映画で塚地さんと自然に親子になれたのね。

パートナーと最初に会ったのは、三浦友和さんと共演した1980年のテレビドラマ『しあわせ戦争』。

86年の『男女7人夏物語』では、私が明石家さんまさんの義理の姉役で、関西弁の台詞を猛特訓したの。その時のディレクターだった。

◆監督に「入れてね」って言って
98年の『ハムレット』の公演中に彼と一緒に仕事する話があって、舞台を観にきたの。私が55歳の時ね。「あ、コイツ、いい顔になったなー」って思った。それから「つき合って」って言うんだけど、なかなか「うん」と言ってくれない。

でも彼をノックし続けたの。息子さんのことも、若くして離婚したのも知ってたからね。お母様が年取って弱ってきて、孫の面倒みきれなくなったし、彼の仕事は忙しいし。預けたいと探してたら見つかったの、いい学園が。それが5年後ね、私が60歳。彼、54歳。で、やっと「いいよ」って。(笑)

その学園には両親を亡くした60歳の人も元気に過ごしてる。それを見ると安心よね。救い。どうしたって親は先に逝くからね。忠さんを施設に入れるって決めた時も将来が不安だからだし。

パートナーは障害がある息子と向き合って変わったから、人間としての成長の糧になってるのよ。「息子に感謝ね」っていつも言ってる。あの子のためにと思い、あの子の力になりたくて頑張ったことがいっぱいあるのよね。忍耐強いし、優しい。

私はそれを見てるから、『梅切らぬバカ』で、忠さんに、「生まれてきてくれてありがとう」っていう台詞を言いたかったの、どうしても。監督に台本の段階で、「入れてね」って言って。

この映画を観て、障害がある人たちに優しい眼差しを向けてくれると、やった甲斐があるなぁ。忠さんは作業場でお菓子の箱作ってる。ああいうふうに仕事しながら生きていってほしいよね。

(構成=小西恵美子、撮影=鍋島徳恭)
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京都での上映館はTジョイ京都1館だけですが、月曜でも8割の入りでこの手の映画では良く入っていると思います。主役が加賀まりこ、塚地武雅。脇を固めるのが渡辺いっけい、森口瑤子、徳井 優、高島礼子のベテラン陣ですから安心して観られるというのも観客を動員するのか知れません。

桜切るバカ梅切らぬバカからとったタイトルですが、桜は切ったら木が弱るから切らぬ方が良く、梅は枝を落とせば良い実がなるというのが「常識」だが、邪魔でも梅の枝は切らぬというのが映画のテーマです。グループホームに入れた息子が地域に迷惑をかけ、反対運動につながっていく中で、住民が「私たちはただ普通の暮らしがしたいだけです」と拡声器で訴える声に「普通って何だろう」という疑問が湧いてきます。

障害者を良く知らない人は、障害者は怖い、障害者は自分の近くにはいない方がいいと思い、身近に知った人は、別に近くにいてもいいと思い始める両者のコントラストを映画は描きます。福祉法人の人がいつも申し訳なさそうに住民に詫びているのが辛いのと、塚地さんのASD役が上手すぎて個人的には鼻につくという向きはありますが、どこの街でも起こりうるグループホームをめぐる軋轢ですから是非ご覧になって、「普通」を考えるきっかけになればと思います。

妊娠、相談しやすい環境必要 知的障害者への支援提言

妊娠、相談しやすい環境必要 知的障害者への支援提言

2021年11月16日 【朝日新聞】

約2年前に佐賀県武雄市で起きたトイレのタンク内に出産直後の女児の遺体が放置され、知的障害のある母親(当時23)が逮捕された事件を受け、県が設置した検証会議の報告書がまとまった。妊娠を自覚しながらも周囲に相談できないまま命が失われた事件を検証し、障害者への支援や性教育の必要性を提言した。

報告によると、母親は2019年12月に武雄市の自宅トイレのタンクに女児を産み落とし、死亡させた。約1カ月後、トイレのくみとり業者が遺体を見つけ、事件が発覚した。20年、死体遺棄の罪に問われた母親に対し、佐賀地裁で懲役1年2カ月執行猶予3年の判決が言い渡された。

県はこれを虐待事案に認定し、大学教授や弁護士、医師など6人で構成される検証会議を設置した。当事者やその家族、保健所や特別支援学校などに聞き取りを重ね、20年11月~21年9月に6回にわたり会議を開いて報告書をまとめた。

報告書によると、母親は通った特別支援学校の同級生の男性と卒業後に交際。事件の4カ月前に検査薬で妊娠を確認して男性にも伝えたが、互いに誰にも伝えなかった。母親と父親となった男性には軽度の知的障害があったという。

報告では、①知的障害者に対する性教育と支援のあり方②知的障害者とその家族に対する支援の問題点、を挙げている。

①では、特別支援学校では妊娠したら病院を受診し、身近な人に相談するように教えられていた。だが今回、母親は妊娠が体に与える影響や赤ちゃんを育てることを理解できておらず、たとえ性教育を受けても日常生活で行動に移すのは難しい場合があると指摘している。

②では、複数の関係機関が母親の妊娠に気づけなかったことを指摘し、障害者の障害の度合いが中程度なら福祉サービスが充実している一方で、軽度の場合は本人からの相談が無いと手厚い支援をする機会が少ないとしている。

例えば、障害が軽度だったこの母親の場合、特別支援学校卒業後、国と県が業務を委託する障害者就業・生活支援センターが中心となって支援することになっていた。だが、あくまでも就業に関する支援が主で、本人からの相談が無いためプライベートな問題にまで踏み込んで支援して妊娠を把握することができなかったとした。

また、母親と同居する姉と弟の一人も母親より重い知的障害を抱えており、「比較的障害が軽度な母親に(対し母親の)両親が関わる機会が少なく、母親は両親と気軽に相談などができる関係性が築けていなかった」としている。

こうした事情を指摘したうえで報告書は、特別支援学校の卒業時に相談先をまとめた冊子を配ったり、妊婦らを支援したりする「子ども家庭総合支援拠点」を全市町に設置するように働きかけていくことなどを提言。相談しやすい環境づくりの必要性を訴えている。

報告書を受けとった県の担当者は「事案は母親が父親以外の誰にも相談できず、周りも誰も気づかないなかで起きた。相談しやすい環境や、周囲が気づいて支援に結びつく態勢の整備に努めたい」と述べた。(松岡大将)

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学校での性教育は時間通りにスライドを見せて一方的に説明してしまえば終わりというものが少なくありません。家庭や地域の生活感が薄れ、出産・子育て、介護や看取りは日常の事なのに子どもの目からはどんどん遠ざかります。今回の事件は知的障害があるからというより、カプセル化した家族や人との関係性の希薄さが原因で、そういう意味では最近の児童虐待の原因と同じように思えてなりません。

障害者や青年が相談しやすい環境といっても、私が相談員だから話してみなさいという人が何人いても話す気にはなりません。支援は小さな時期から何度も享受して上手くいった体験があるから関係性があるから受けようという気になるもので、いきなり深刻な内容を相談するには障害がなくてもハードルが高すぎます。まずは、身近な細かな困り事で何度も支援を受け相談して良かったという経験が大事です。

高等部の軽度知的障害と言われる生徒の場合、中学までは一応自立して生活やコミュニケーションができていた人も少なくありません。通所支援も受けたことのない人もいます。進路先の支援学校は高等学校よりははるかに仕事や暮らしのことについて教えてはくれますが、実生活のことまでは対応ができません。また、卒業してアフターケアーが業務として行われるわけでもなく、仲間も相談相手にはなりにくい場合が多いです。

子どもの頃から、支援を受けながら大人になっても相談できるようには現在のサービスシステムは設計されていません。生活を支える時には子どもの時に支援してもらって上手くいった経験がものを言うのではないかと思います。人生の伴走者としての支援サービスのシステム設計が必要なのだと思います。

特別支援学校のICT環境整備を共生社会モデルに 文科省会議

「特別支援学校の環境整備を共生社会モデルに」 文科省会議

2021年11月11日【教育新聞】

教育格差特別支援教育
特別支援教育の新たな学びに対応した学校施設の在り方を検討する、文科省の有識者会議の第2回会合が11月11日、オンラインで開かれ、ICT活用を見据えた学校施設の整備をテーマに、中野泰志臨時委員(慶應義塾大学経済学部教授)が報告した。中野臨時委員は、特別支援教育でのICT活用は困難さを軽減するためにいち早く進められてきた経緯に触れながら、視覚障害や聴覚障害など多様な障害を包括できるインフラ整備が教室内外で必要だと指摘。「特別支援学校の環境整備は共生社会のモデルとなるように進めるべきだ。一般社会をけん引する特別支援学校を目指してほしい」と提言した。

オンラインで行われた特別支援教育の施設の在り方を検討する会議
新たに設置された「特別支援教育の在り方を踏まえた学校施設部会」(部会長・上野淳東京都立大学名誉教授)では、▽特別支援学級と通常の学級の子供が共に学ぶ活動への対応▽ICT利活用による特別支援教育の質の向上▽医療的ケアが必要な児童生徒への対応――などについて議論を進めている。

国立特別支援教育総合研究所で主任研究官などを務めた中野臨時委員は、視覚障害や聴覚障害などのある児童生徒にとって、AI活用のナビゲーションシステムなどを搭載したICT機器は欠かせない重要なツールになっているとして、教室だけでなく学校のどこでもスマホでネット接続できる環境が必要だと指摘。こうした障害種別に応じて必要な機材が活用できる「情報保障」として、高速ネットワークや電源に加え、遮光カーテンや静かな環境への配慮も求められると強調した。

さらに非常時に聴覚障害者に文字で知らせるデジタルサイネージや、主体的な学びのためには寄宿舎などでも学習できるネット接続環境なども必要になると説明。「多様な障害を包括できる環境整備を進めて特別支援学校を共生社会のモデルとし、一般社会をけん引する形を目指してほしい」と提言した。

 これに対する質疑では、委員から「小中学校の1人1台端末は進んでいるが、障害のある子供に同じタブレット端末が配られがちで、配慮についてどう考えるべきか」「ICT環境整備について、普通学校での展開と特別支援学校の展開についてどう考えるか」といった質問が出された。

中野臨時委員は「障害の特性に応じた端末が配られているかというと、必ずしもそうなっていない。通常学級に在籍する子供も授業場面で使えるような個別の合理的配慮は不可欠だと思う。また、ICT環境整備については、理念として特別支援学校が模範になるべきで、まず重点的に整備して地域の学校に広げる形が望ましいと思う」と答えた。

同部会では、来月にかけて先進的な施設を視察した上で議論を重ね、今年度中に報告書を取りまとめて、同省の学校施設整備指針の改訂に反映させる。

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中央官庁で話されている事と、地方の現場では意識の格差を大きく感じてしまいます。高等部の生徒には10年以上前から、就学奨励費として親の代理で学校が申し込めば誰でもタブレット端末が購入できるようになっていましたが、それでも学校のWiFi環境が悪くてわざわざ無線ルーターを教室までに持って行って接続するような事が続きました。それでも、小中学生には配布されず、少ない学校予算の中からタブレットや周辺機器を購入していました。

今でも、学校中がWiFi環境にある所は数えるほどだと思います。それなのに、個々の障害にカスタマイズされたICT機器だのAI活用のナビゲーションシステムだの防災に役立てるデジタルサイネージ(電子看板)だのを学校環境に用意してはどうかという提案が現場とはあまりに違ってぶっ飛んでいて驚きました。そもそも、個性や障害に応じてカスタマイズするにもその知識を持つ人が配置されていません。

現場とかけ離れたあまりにも能天気な話とは思いましたが、障害のある人の学校にこそICTが縦横無尽に活かされることは賛成です。全ての子どもが端末を携帯し個性に応じてスケジュールやコミュニケーションデバイスとして使えるならどんなに素敵だろうと思います。ただし、教員の「便利遣い」ではさすがにカスタマイズやオーダーメイドの道は開けません。テクノロージーの普及と開発にはその道のプロフェッショナルが各校に複数は必要です。

15歳少女「エスカレーター右側しか乗れない」苦悩

15歳少女「エスカレーター右側しか乗れない」苦悩
「どいて」「なんで右に立ってんだよ」と言う人も

2021/11/10 【AERA dot.】

埼玉県で、10月1日に全国初となるエスカレーターに立ち止まって乗ることを求める条例が施行され、ひと月が経った。条例には賛否両論があったが、世の中には身体に障害を抱え、エスカレーターの片側にしか立って乗れない人もいる。その当事者である15歳の少女の現実と、両親の願いとは。

横浜市に住む高校一年生の林姫良(はやし・きら)さん(15)。生まれてすぐに脳に異常が見つかり、生後6カ月で頭部を手術した。左半身に麻痺があり上手に動かせず、歩く際はバランスを取りながら足を運ぶ。握力も、左手はとても弱い。

本来、2人乗りのエスカレーターは2列に立って、手すりを持って乗るという前提で設計されている。異常で緊急停止した際の転倒を防ぐためだ。だが、日本や世界各国では急いで歩きたい人のために片側空けの習慣が根付いており、過去には鉄道会社やメディアが乗り方のマナーとして推奨していた時期もあった。2000年以降はメーカーや業界団体などが立って乗るよう呼び掛けるようになったが、片側空けをマナーのようにとらえている人は今も多い。

身体を守るのも簡単ではない
姫良さんの住む横浜市を含め、関東は左側に立ち、右側を歩く人のために開けるのが一般的になっている。だが、姫良さんは左手でしっかり手すりをつかめない。

「もし姫良が左側に立っていて、エスカレーターが異常などで緊急停止したら、間違いなく転倒してしまいます」
父の正和さん(52)と母の太佳子さん(54)は、そう口を揃える。歩いて追い抜く人にぶつかられたら、転倒してしまう可能性もあるという。さらに転んだ時に手をついて身体を守る、ということも姫良さんには簡単ではない。

姫良さんは、「右側にしか乗れない」のだ。
脳の病気のためうまく思いを表現できないことがある姫良さんだが、エスカレーターに右側空けの慣習があることは理解している。

実際、小さいころから右側に立っていて、後ろから舌打ちされたことはしょっちゅうあったという。時には「どいて」と怒られたり、「なんで右に立ってんだよ」と言い捨てて去っていったりする人もいた。

誰が姫良さんを注意するか、後ろにいたグループがひそひそ話していたこともあった。本来の乗り方からすれば、右側に立つことは正しく、姫良さんが怒られる筋合いは何もないのだが、現実はそうではない。

エスカレーターに乗る際はいつも、親が左側、姫良さんが右側に並んで立つようにしている。後方から来た人に、事情を説明することもあるためだ。だが、姫良さんが小学校低学年くらいの頃、突然、左側の太佳子さんの一段下に移ったことがあった。

「小さいなりに、怖いと感じたんだと思います。大人だって右側に立つのは勇気がいることで、今でも後方から足音が聞こえると、怒られはしないかと私自身も怖く感じますし、長いエスカレーターだと不安がより大きくなります。姫良は今も人が多い時や、後ろから歩いてくる人の気配を感じると、遠慮して左側に移ろうとしてしまうんです」

と太佳子さん。人が多いときはしばらく乗るのを避け、タイミングを見計らって空いてから乗るようにしているという。

ヘルプマークを着けてはいるものの、効果はてきめんとは言えない。
「姫良は、ぱっと見では障害があるとはわからないので、右側に立っている事情が何かあるんじゃないかとはなかなか想像してもらえないんだと思います」(太佳子さん)

立ち止まって乗る文化の定着願う
埼玉県の条例が各地に広がって、エスカレーターに立ち止まって乗る文化が定着してほしいと願う両親だが、一筋縄ではいかない現実も理解している。取材中、正和さんと太佳子さんは「すぐには無理だと思う」「難しいですよね」という言葉を何度も口にし、考え込んだ。

苦悩は尽きないが、それでも両親の思いは切実だ。
姫良さんは赤ちゃんの時に、ハイハイした経験がない。左半身が麻痺していたため、できなかったのだ。物心もつかない幼少期から懸命のリハビリを続け、やっと立って歩けるようになった。

正和さんは当時を思う。
「リハビリの先生がスパルタで、小さな姫良はいつも泣きながら頑張ってきたんです。あのときの頑張りがなかったら大きくなっても歩けなかったでしょうし、エスカレーターにも乗れていなかったと思います。

今でも、ペットボトルのふたを、持ち方を工夫して開けるようになるなど、ハンディを抱えながらも頑張って生きていて、親として娘から教わったことはたくさんあります。だからこそ、障害がある人のことを知ってほしいですし、ハンディがある人が安心してエスカレーターに乗れる時代が来てほしいと、声を大にして言いたいんです」

太佳子さんも続ける。
「いつか姫良が親の手を離れる時、世の中がどうなっているか。姫良だけではありませんが、難しい障害がある人がいるということを、ひとりでも多くの人に知ってほしいです。知ってくれれば、時間はかかったとしても、少しずつ社会も変わっていくのではないかと思います。

エスカレーターを歩かない文化が根付くことが一番の希望ですが、まずは右側に立っている人がいたら『邪魔だ』と思うのではなく、何か事情があるのかなと思ってくれる社会になってほしいと願っています」

社会が変わらなければならない
当の姫良さんは、がまんしがちで弱音を吐かない性格もあってか、エスカレーターを歩く人たちへの考えや自分の願いは、今のところ言ったことがない。これからも、言わないかもしれない。

ずっと静かだった姫良さんだが、取材が終わった後、正和さんが「親がいなくなっても姫良はひとりで頑張っていけるかな」と聞くと、ニッコリ笑って「うん!」と答えた。

泣きながらリハビリを頑張った赤ちゃんが大きくなり、ずっと頑張り続けながらいつか親元から巣立つ。その時、どんな社会を作れているだろうか。(AERAdot.編集部・國府田英之)
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急ぐ人は元気なんだから、階段を走って上がりましょう。エスカレータ前にでっかく書いておけばどうかとすら思います。そもそも、右側空けの関東圏、左空けの関西圏、2014年のアンケート調査によると、「左に立つ」が57%、「右に立つ」は13・1%で、左に立つ関東方式が圧倒的に多く、右に立つ関西方式は少数派だそうです。

関西の左空けは、1970年開催の大阪万博のとき、他国の慣習にならって右立ち、左空けを呼び掛けたらしいです。最初の左空けは第二次世界大戦中で、ロンドンの地下鉄構内が防空施設とされたことからです。ドイツ軍の空襲で急ぐ人のために左側を空けたことに始まっています。それが世界各地に広まり、左空けの国が多かったために、日本もそれに合わせたそうです。

一方、東京では大阪よりも遅く、1980年代後半から片側空けが始まりました。左立ち、右空けが一般化したのは、古来の左側通行の歴史にしたがったからだと考えられています。日本の左側通行は、武家社会から始まったとされます。刀を持った武士が右側通行をすると、鞘さやが当たってトラブルが起こりがちだったため、これを防ごうと左側通行になったそうです。どうでもいいトリビアでしたが、時代や文化によって片方の空け方もまた文化なのです。バリアフリーの時代なのだから、エスカレータは止まって乗り、急ぐ人は階段を使えという文化になって当然です。

元看護師は「更生の道が相当」 無期懲役判決で横浜地裁

元看護師は「更生の道が相当」 無期懲役判決で横浜地裁

2021/11/09 【産経新聞】

横浜市の旧大口病院(現・横浜はじめ病院、休診中)で平成28年、入院患者3人の点滴に消毒液を混入し中毒死させたとして殺人罪などに問われ、9日の判決公判で無期懲役(求刑死刑)を言い渡された元看護師、久保木愛弓(あゆみ)被告(34)。横浜地裁の家令和典裁判長は量刑理由について「公判で自己に不利益な事情を含め素直に供述し、反社会的な傾向も認められない」とし、「死刑を科することがやむを得ないとまでは言えず、生涯をかけて更生の道を歩ませるのが相当だ」と述べた。

家令裁判長は久保木被告の責任能力について「犯行時は(発達障害の一種の)自閉スペクトラム症の特性があり、うつ状態にあった」と認定した一方、弁護側が主張した統合失調症の影響は否定。「『勤務時間中に自身が対応を迫られる事態を起こしたくない』という犯行動機は了解可能で、違法な行為であることを認識していた」として、完全責任能力があったと認めた。

被害者3人のうち1人が終末期患者ではなかったことに触れ「苦痛の中で生命が奪われ、被害結果は極めて重大」と非難。「看護師としての知見と立場を利用した犯行で計画性も認められ、動機も身勝手極まりない」と断じた。

一方、犯行動機の形成過程については、情状酌量の余地を認めた。被告は「終末期医療を中心とする大口病院であれば自分でも務まる」と考えて勤務を開始したが、患者の家族から怒鳴られて強い恐怖を感じ「視野狭窄(きょうさく)的心境に陥った」と認定。「このような動機形成過程には、被告の努力ではいかんともしがたい事情が色濃く影響している」と指摘した。

また、公判の経過とともに被告が贖罪(しょくざい)の意思を深めていったことも重視。「被告人質問では償いの仕方が分からないと述べていたが、最終陳述では死んで償いたいと述べるに至った」と認め「他者に対する攻撃的傾向もなく、更生可能性も認められる」と結論づけた。

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判決は、『勤務時間中に自身が対応を迫られる事態を起こしたくない』と、家族と対応するのを避けるために薬殺したと殺人の動機をASDの特性から説明しました。そして、被告を「公判で自己に不利益な事情を含め素直に供述し、反社会的な傾向も認めない」し更生可能性があるとして無期懲役を言い渡しました。ASDの人たちが陥りやすいロジックを公判は分かりやすく説明したと思います。

福祉・医療・教育の対人サービスで、対人関係に困難のある人が働くことになると、強烈なストレスを感じることになります。相手の立場に立って言動を考える事がとても難しいからです。その結果、対象者からも同僚からも上司からも叱責や嘲笑の対象になりやすいです。そして、誰に相談することもできず真面目さゆえに限界まで働き続け、やがて精神を病んでいきます。

もっと早く、幼少期からASDが見つけられ、支援を受けて成功した経験を持つことができれば、きっと違う進路を見つけ、真面目さと几帳面さが活かされる職種につけたはずです。医療や教育職は試験のハードルは高いのですが、記憶勝負の所があり対人関係の躓きを見つけるようなシステムを現段階では持っていません。椅子に座った採用者との面接で対人関係障害を見抜くことは不可能に近いです。

しかし、向き不向きという職業適性が客観的には判断ができたとしても決定するのは本人です。だからこそ、小さな時期から自己フィードバックのトレーニングを受け、支援を享受する様々な体験が必要です。自分の適性と働く将来の姿を考えていくキャリア教育は全ての子どもに必要ですが、中でもASDの子どもたちには最も必要な教育だと言えます。ASDの特性に関わる公判の過程を知れば知るほど、発達障害のある人の支援について幼少期からの途切れない支援の重要性を感じます。