すてっぷ・じゃんぷ日記

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「譲ってあげるよ」

 すてっぷの小学生グループのみんなはブランコが大好き。公園に着くと一番にブランコに走っていきます。ただ公園に設置されているブランコは2連のものがほとんど。地域の子がいなくて空いていても、すてっぷのグループの人数では足りません。早い者勝ちとばかりに走っていく子どももいますが、最近では職員が声をかけずとも、子ども同士で「譲って」と交渉する姿が見られるようになってきました。

 先日、4人ほどのグループと職員とで、2連ブランコのある公園に出かけた時のことです。先に着いたKくんとLくんがブランコに乗って遊んでいました。遅れて到着したMくんとNくんもブランコのところにやってきました。そしてそれぞれ、ブランコで遊んでいる2人に声をかけます。MくんはKくんに「代わって」とお願いしました。まだ遊びたいKくんは「60秒したらいいよ」と答え、Mくんは了承。交渉が成立しました。

 一方のNくんも「代わって」とLくんに伝えます。Nくんはすてっぷに来て半年。この2か月ほどでグッと成長を見せ、落ち着いて交渉することが増えてきました。ですが自分の思いが通らないと泣いてしまうことがまだ見られるため、このときも職員がそばで見守っていました。「代わって」と言われたLくんは「もう少ししたらいいよ。」とNくんに答えました。NくんはLくんの言葉にしっかり耳を傾けていますが、とまどっているようでした。そこで職員がLくんに「もう少ししたらじゃなくて、KくんとMくんみたいに時間を決めたら?」と提案しました。Lくんが「30秒したら」とNくんに言うと、Nくんは「いいよ」と答えました。そしてNくんは30秒間、静かに待ち、Lくんが降りてから切り替えよくブランコに乗ることができました!

 社会性やコミュニケーションの課題がある小学生グループの子どもたちも、子ども同士で相談したり交渉したりという力が育ってきています。そこには職員のちょっとした支援に加えて、子ども同士(集団)で学び合うことが、子ども自身の成長につながっているのだと思います。

 この後、Nくんがブランコで遊んでいると、Mくんが遊び終わって空いた席をめぐって、KくんとLくんとでじゃんけんを始めました。するとNくんは2人に声をかけます。「譲ってあげるよ。」Nくんはブランコを降りました。譲ってもらった2人は「Nくん、ありがとう」と伝え、2人いっしょにブランコで遊び始めました。お礼を言ってもらったNくんの顔は、どこか誇らしげでした。

新聞じゃんけん

じゃんぷの休憩時間、「新聞紙じゃんけん」をしました。

「新聞紙じゃんけん」は一枚の新聞紙の上に立ってじゃんけんし、負けた方が新聞を半分に折りたたんでその上に立つ。それを繰り返し、新聞の上に立てなくなったら負け、というルールです。

これが中々面白く、どの曜日の子ども達も大盛り上がりです。これをやる上でただ遊ぶだけ、というわけでなく、様々な視点から子ども達の様子を見ることが出来ます。

例えば片足立ちをせざるを得ない時、体幹、バランス感覚をどこまで養われているか。勝ったら新聞を広げられるルールを追加するとどこまで理解できるか、等々

遊びの中でも子ども達の発達を見ることが出来ます。ただ楽しむことが一番です。明日も楽しく遊びましょう!

新しい仲間

 出会いの季節と言えば春。ですが、まだ肌寒かった2月に、すてっぷへ新しい仲間がやってきました。小学生のAくんは活発な子で、年上の友だちにも物怖じせず、元気に話しかけます。声が大きくなりがちで、職員が声のレベルを提示することで、小さな声で話せるように練習をしています。

 もう一つ職員が気になったのは、友だちへの誘い掛けの言葉。「○○くんはこっち、△△くんはあっちをして」と、誘うというよりも、なかば指示のような声掛けになってしまいます。年上の友だちにも同じように声をかけてしまい、「なんで決められな、あかんねん」と反発の声が返ってきます。そこで職員から、「~しよう?」や「~はどう?」といった、相手が受け入れやすい誘いの言葉に言い換えられるように練習してきました。

 先日は年上の友だちたちといっしょにボードゲームで遊びました。人数が多かったので2グループに分かれることに。Aくんははじめ違うグループだったのですが、他方がしていた『スライドクエスト』というゲームに興味を持ちました。『スライドクエスト』は箱の四方にレバーがあり、そのレバーを動かすことで箱の中のステージを傾け、駒をゴールへ動かしていくというゲームです。レバーは4つですから、当然一人ではできません。2~4人が協力してレバーを動かすのです。

 「『スライドクエスト』したい!」と伝えたAくん。グループみんなもしたいとなり、他方のグループと交代して『スライドクエスト』をすることになりました。早速Aくんは「○○くんはそっち、△△くんはこっちのレバーね。僕は2つする!」と宣言します。そこで職員が「他の子が2つしたかったらどうする?」と聞くと、Aくんは「あっ、そうか! どうする?」と自分から2人に聞くことができました。Aくんすごい!と内心驚きの職員。日々の成長が現れた場面でしたが、Aくんがやりたい!と思える遊びだったからこそ、発揮できたのだとも思います。毎日の取り組みが面白いと思えるよう工夫して、支援の機会を作っていきたいと思います。

「今度はこおり鬼!」

 「いっしょにあそぼ!」(2023/2/7)で紹介した支援学校小学部のPさん。友だちのことが大好きで、今日は友だちと遊べるかな?と思いをはせて帰ってきます。すてっぷに着くと、まずは自分や友だちの予定が書かれているホワイトボードを確認。下校時間の都合でPさんが先に公園に行くことが多いのですが、友だちと遊べることを心待ちにしていて、「〇〇くん、もう来る?」と職員に尋ねる姿も見られるようになってきました。

 友だちとの遊びは、職員が支援しながら行っています。鬼ごっこは職員との1対1からスタート。最初は逃げるだけだったのが、タッチされたら鬼が交代して、今度は自分が追いかけるということが理解できるようになってきました。職員が付いて、友だちと一緒に鬼ごっこすることにも最近取り組んでいて、今は「こおり鬼」にチャレンジしています。鬼の交代がなくPさんにとって分かりやすい中で、こおりの人を助けたり、逆にこおりになっているところを友だちに助けてもらったりと、友だちと関わりながら遊んでいます。

 先日のこと、Pさんは一足早く大きなU公園へ行き、友だち達は学校が終わって集まり次第、近くのV公園へ行くことになっていました。すてっぷに帰ってきたPさんはいつも通りホワイトボードを確認。するとPさんは、「1番U公園、2番V公園!」と職員に伝えました。最初にU公園に行って職員と遊び、次にV公園に行って友だちと遊びたいと伝えたのです。Pさんが自発的に伝えられたことを職員はほめ、友だちの来る時間に合わせてU公園からV公園に移動しました。V公園は比較的狭い公園で、「田んぼの田」をすることに。Pさんはいつもの鬼ごっこのように田のエリアに気づかず逃げていきます。ですが職員がPさんに田のエリアを注目させると、友だちの動きをまねながら、田のエリア内をぐるぐる逃げ回るようになりました。次は大繩での八の字跳び。これも始めはその場跳びになっていたのですが、後半は友だちの動きをまね、外から縄に入ろうと伺うように。職員がタイミングを教えることで、見事縄に入って一度跳んでから外に出るという、八の字跳びの動きができて、友だちと一緒に続けることができました。

 学校が違っても一緒に遊べる場を作れることが放課後等デイサービスの強みの一つだと紹介してきましたが、そこで発揮される子どもの能力のすごさには改めて驚かれるばかりです。それと同時に、その機会を逃さないためには、適切に支援できる能力が必要であり、職員としては身を引き締まる思いがします。Pさんの保護者の方によると、Pさんは家でも姉妹やその友だちも意識して、いっしょに遊ぼうとする姿が見られるようになってきたそうです。Pさんを初め、すてっぷの子どもたちが豊かな放課後を過ごせるよう、励んでいきます。

「7が一番出やすいんだ!」

 学問に興味を持つきっかけは、どんなところに転がっているかわかりません。さかなクンが海の生き物に興味を持ったのは、友だちがノートに書いてきた、タコの落書きだそうです。筆者も数学が好きですが、好きになった理由の一つは、小学校の算数ルーム(算数の少人数授業用の教室)に貼ってあった「サイコロを2個転がして、出目を足したときに一番出やすい数はなんだろう?」というポスターでした。おもしろかったのは、ポスターに答えが書いてあるのでなく、考えてみようという出題形式だったことと、回答するときは文章ではなく、実際にサイコロを転がして試して結果で答えてもよいと書かれていたことです。さいころを何回転がしたらいいんだろうと疑問に思った筆者は算数教室の先生に聞きに行きました。すると先生は「1000回くらいかな」と答えました。100回くらいは試して記録したのですが、明確な違いが出ず、そのときはあきらめてしまいました。中学校で改めて確率の学習があって答えが分かってからも、ずっと記憶に残っています。

 さいころ2個の出目を足すということは、さいころを使った遊びでけっこう採用されています。ルールの凝ったすごろくで見ることもありますし、家族で遊べるテレビゲームで有名な「桃太郎電鉄」シリーズの急行カードなどもそうです。すてっぷにあるボードゲームでも、「カタン」は毎回出目を足しますし、「ハンデをあげる」(2022/6/17)で紹介した「街コロ」でも必要な時があります。「街コロ」でおもしろいのは、はじめはサイコロ1つを振ることから始まることです。途中で「駅」という物件を買うと、次の番からサイコロ2つを振ることが「できる」ようになります。つまり、自分や他の人の状況を見て、サイコロ1つの出目と、サイコロ2つの出目を足した数の確率をそれぞれ考えて、どちらにするかを決めることになるのです。

 先日、「街コロ」に取り組んだ中学生のVくんも、「サイコロ2つだと、何が出やすいんだろう」と職員に尋ねてきました。職員はホワイトボードに1~6を縦、横にそれぞれ書いてマトリックスにして、足した数を書いて教えました。「7が一番出やすいんだ!」と見てわかったVくん。その後も「3は出にくいなぁ。9と10はそれぞれは出づらいけど、合わせたら出やすいな(9と10どちらかが出たらよい物件があり、確率は36分の7になるということです)」と考えながら取り組みました。

 事業所でボードゲームに取り組むときは、様々な狙いを持って設定しています。勉強に結び付く、または勉強の成果を発揮するということばかりではありませんが、楽しく遊ぶ中で無理なく勉強の要素を使うということは、前向きにとらえ、興味を持てるようになる一つのきっかけになるかもしれません。ボードゲームに限らず、取り組みの1つ1つが、子どもたちの興味を引き出せるように、工夫して設定していきます。