すてっぷ・じゃんぷ日記

タグ:エラー修正

友達との約束

PちゃんはiPadでゲームをすることが好きな子です。特にピンクのカバーを付けているiPadにはお気に入りのゲームが入っている様で,他の子がそれを使っているのを見ると天井に向かって「ピンクタブレット~~!!!」と大声を出してパニックになってしまいます。その度に適切な要求行動に修正をする「やり直し」をお願いしています。

U君がピンクタブレットを使っている時はPちゃんはパニックになりません。落ち着いて「貸してください」とお願いをしに行きます。ここ半年程,U君にPちゃんがピンクタブレット使いたいと適切に要求してきたら拒否しないで『17時になったら僕と交代してね』と交渉する様に取り組んでもらいました。Pちゃんには交代の練習,U君には交渉の練習と言うことで半年間積み重ねてきました。今は,PちゃんはU君との交渉の意味が分かり,U君が「時間になったから僕に貸して」と言うとPちゃんは「どうぞ,ありがとう」と言って渡すことが出来るようになりました。

すると先日,C君がピンクタブレットを使っているとPちゃんは「ピンクタブレット~!」と叫んだのですが,C君がU君と同じように「この時間になったら交代してね」と交渉をするとPちゃんは時間ぴったりに「どうぞ,ありがとう」と渡したのです。U君と約束をする経験を積んでことが他の友達に対しても出来るようになりました。これにはC君も他の職員も驚いたそうです。適切な行動をした時に褒めればその行動は強化されていきます。ABA(応用行動分析)の成果を目の当たりにした瞬間でした。

喋らないで作業します。なんで?

Nさんは視覚障害がありますが作業ができます。点字も使ってマッチング作業や組み立て作業の学習をしています。ただ、Nさんはおしゃべりが大好きなので、作業中もついつい職員に話しかけてしまいます。職員もついつい応えてしまって、その結果作業の精度が落ちてしまう事が少なくありません。職員は、Nさんには「喋らないで作業をします」と伝えているので、覚えてないわけはないと言います。でも、話してしまうのですから、理由は何だろうと言う話になりました。

そもそも、Nさんは、何故作業中にお喋りしてはいけないか理解しているだろうかという話になりました。Nさんが間違わないで作業をするという理解をしているかどうかは聞いてみないとわからないという結論になりました。晴眼者の場合は見て自己フィードバックできますが、Nさんの場合は職員が間違いを指摘するしかありません。しかも「間違ってたよ」では何がどう間違っているのかわからないので、手で触らせて間違いの確認をして、自分で修正するという過程が必要です。これも広い意味では4ステップエラー修正と言えるかもしれません。

つまり、間違っていることを触覚を通して伝え、どうしてこうなったかに気付かせることで、初めて作業には注意や集中が必要で、おしゃべりすると間違いやすいと自覚ができるのだと思います。そして、間違わずに完成したら一緒に大喜びして褒めてあげることで修正指導は初めて成り立ちます。大人は声を掛けたら注意ができたと簡単に思っていますが、見えないとか、聞こえないとか、聞こえても理解できないとか、個々の障害を配慮した上での修正でなければ、修正にはならないことをNさんが教えてくれているのだと思います。

 

エラー修正

J君は作業を終了したら、ご褒美に好きなものを飲んでいいことになっています。ただ、作業終了したことが職員に分かるように「作業終了したよ」報告を絵カードで行ってから、職員が作業内容を点検してOKがでたら、作業終了となるのですが、J君は作業が終わると「ジュースください」カードを持ってきます。ワークシステムも作って「ジュースください」の前に「終わりました」カードがあるのに何故かそこを飛ばして「ジュースください」カードを持ってくるのだそうです。

何回修正しても覚えないというので、どんな修正をしていいるのか聞いてみました。間違えると「やりなおしましょう」とワークシステムに身体プロンプトで向かわせ「終わりました」を持ってこさせて、「ハイOK」ということで次の「ジュースください」絵カードに進ませると言うのです。

職員にもエラー修正が必要なことがわかりました。やり直しは身体プロンプトするけど、身体プロンプトをフェードアウトしてリピートしないまま次に進ませていたのです。この修正の仕方だと、本人は「ジュースくださいカード」を自分で持って行く→やり直しと言われて身体プロンプトで「終わりました」カードを持たされ職員に渡す→自分で「ジュースください」カードを渡す→ジュースが飲める、と言う順序で理解したはずです。

つまり、身体プロンプトされるところが、新たに彼の「ジュースください」のルーティンに入っただけなので、何回修正しても、職員のいう「間違」いが生じているのだと思います。そして、修正介入を受けた後は結果的に何度もジュースが出てくるのですから、とても強力に強化されていると思います。この場合は、身体プロンプトで修正を行ったら、そのあとすぐに一人で作業の終わった場面から始めさせて正しい順番で行動するリピート行動が必要だと思います。

このエラー修正は、順番を修正するためにできるところまで戻ってプロンプトしていくのだから、バックステップエラー修正かなとも思うのですが、リピートをするあたりは4ステップエラー修正にも思えるのですがどっちでしょうか?どなたか教えてください。とりあえず職員の修正は選択の間違いですから4ステップエラー修正です。

 

大声の件

大声の件はこのブログで何度か(大声の原因 01/06)(うるさい 2020/11/27) 取り上げてきています。今回も、PECSのフェイズ3BができるようになってきているJ君ですが、何かの拍子で大きな声で奇声を上げるのがPECS獲得後も変わらず、何故だろうと職員の疑問に上がりました。

何か要求があれば、J君は絵カードを職員に渡してくるので、あの奇声は要求ではなく癖なんだろうかとか、職員をおちょくりたいのではなかろうかとの推測がされています。癖と言うなら人がいなくてもするでしょうが、無人の時や何か自分が好きなことで取組んでいる時はありません。

おちょくるというのは、対象者が困ることを楽しむというものですが、特定の方に向けているという感じではないです。最初は、スタッフの新人が多い時に奇声が多いと思ったのですが、ベテランがいても同じような感じです。よく観察すると、彼が奇声を上げるとベテランさんはスルーして無視をしているのですが、パートさんは彼が奇声を上げるとたまらず彼に「大きな声やな」等と反応しているのです。そうなると、回数が増える感じです。

これは推測ですが、要するに暇なので遊んでほしいというサインではないかということです。声がどんどん大きくなるのは、たまーにヒットするパチンコ理論と同じで、無視すればするほどたまーに反応があると行動がバースト(爆発)するのではないかという理屈です。

この仮説の下に明日から3週間、奇声にはエラー修正で取り組むことにしました。奇声が出たらやりなおしで「遊ぼう」絵カードをもってきて彼の大好きな真似遊びをして最後PECSブックで何が欲しいか聞くことにします。さて、理解してもらえるでしょうか。ベースライン(現在の奇声回数)を調べてから取り組みます。

知らんし…

P君が、以前、パソコンで遊ぶ時間はタイマーで決めようとスタッフと約束(契約書)したのにタイマーをかけずに遊んでいました。スタッフから「一緒に約束したことなのに契約違反だよ」と指摘されているのに、P君が「知らんし」と言ったので、「契約書もあるのに、その言い方はないだろう」とスタッフが叱ったという報告がありました。

契約書を作るのは、P君が約束そのものを忘れてしまうので作るのですが、今回のP君の「知らんし」発言は二つの意味があります。「約束を忘れてたのだから、その場面では知らなかった」「契約書を見せられたら、思い出したけど、だからどうしたらいいか知らない(わからない)」ということです。スタッフが思うほど、指摘したスタッフへの挑戦的な気持ちは、P君にはさらさらなかったと思います。

P君に悪意はないと思われるので、叱るのではなくエラー修正でいいと思います。「知らん」というのではなく「忘れてごめんね」「忘れないようにするにはどうしたらいいか一緒に考えてほしい」と言えばいいことを教えることです。併せて、指摘してくれた時に「知らん」というのは相手を誤解させるからNGワードだよと教えればいいと思います。真意を伝えるコミュニケーションは双方難しいものです。