すてっぷ・じゃんぷ日記

タグ:スケジュール支援

お話がしたい!

じゃんぷに来ている3年生のA君は個別学習の時間,初めに「A君の話したいことを話す。」という時間を設けています。

A君は「暗黙の了解」のような目に見えないルールを感じ取ることが難しく,喋りたいことが思いつくとどんな状況であろうと話を始めてしまいます。

なのでA君は「ちょっと話したいことがあります。」と言う練習と,スケジュールの中に「A君のおはなしタイム」というものを作っています。お話をすることと,切り替える時間を視覚的に示して個別学習の時間に取り組んでいます。

決められた時間お話をし,スケジュールを示しながら「じゃ,勉強しよっか!」と指示されると,「わかった!」と言って黙々と学習に入ります。その時に「よく出来たやん!終わったらまた話聞かせてな。」と褒めています。時々「先生、あのな~」と話し始めることもありますがスケジュールを見せて「また話せる時間あるからね。」と示すと「そうだった!」と学習に戻ることが出来ています。

本人がわかるスケジュールを示すことと,それが出来た時に褒めることは学習の場面でも活用できます。先日A君は工作の話をしてくれました。次はどんな話が聞けるのかな?

交渉とスケジュール支援

J君がスケジュールを見てプール遊びは嫌なのでキーボード遊びがしたいとキーボードの絵カードを持ってきました。職員はスケジュールをその場で自在に変更するのは問題があると思ったので、プールの後にキーボードと交渉したけれど本人は納得しないので、外に行くのが嫌なのだろうからと推測して、プットイン(作業)課題のあとにキーボードではどうですかと交渉するとOKが出て交渉成立となったそうです。

この場合、職員が子どもの要求そのものは認めて交渉した点では良かったのですが、問題はスケジュール提示です。J君がスケジュールを理解しているのかと聞くと「課題」「おやつ」「課題」の3個提示位くらいは理解していると言います。それに対して「最初に納得した「プール」は嫌だとキーボードを要求している。スケジュールは交渉成立の証文のようなものだから、それを反故にするならスケジュールは成り立たない」という意見が出ました。

でも、スケジュールは理解しているという職員によく聞くと、最初にスケジュールを本人に丁寧には説明していないと言います。もしも、丁寧に説明していたら、その時点でプールは嫌だという行動があったかもしれないと言うのです。以前にもスケジュールは交渉の最終形だと書きました。(スケジュールの間違った使い方: 06/17)(好き好き交渉: 08/23

絵カードスケジュール支援は子どもの見通しを視覚化することで理解を促すものだという説明が多いですが、それだけでは、子どもによってはスケジュールボードに貼っておけば要求が実現すると思ったり、スケジュールボードから絵カードを外せば回避できると思ったりするASDの子どもは少なくないのです。

こうした誤解を予防するには、しっかりと2枚絵カードで交渉したり、要求物をしばらく待つことを教えるなど、要求と同時に適応行動も教えていく必要があります。その土台がある程度固まったうえでスケジュール支援は成り立ちます。ただ、お互いに了解したスケジュールであっても、大人も子どもも、何かの都合で今はダメだという表出はあって然るべきなので、それを教える段階がいつなのかは議論のあるところです。これは、みなさんに考えて欲しいと思います。

 

楽器遊び

Pちゃんは普段事業所に着くなり「公園公園!はじめます!」と間がありません。ところが今朝はPちゃんの目に楽器が目に入りました。「公園行きません」と朝の挨拶が終わっても外出しようとしません。楽器で遊べることは何かの経験で楽しかった思い出があるのでしょう。でも、「楽器遊び」の予告の言葉はPちゃんには入りません。通算10日ほど取り組んだスケジュールにその情報があることもまだ理解できていないようです。好きなことがいつあるのか、言葉でなくても絵や写真でわかり、「~したら~」のルールが理解できれば200%過ごしやすくなるはずです。言葉の分かりにくい人、ルールが入りにくい人にスケジュール支援は就学前療育・保育の肝と言ってもいいくらい重要です。