すてっぷ・じゃんぷ日記

タグ:感覚統合

遊具や椅子からずり落ちる

小さな子どもだと時々遊具からずり落ちて、擦りむいたりすることがあります。もちろん、大人がしっかり見守ってけがをしないようにすることが一番大事ですが、決まった子どもがケガすることが少なくいない場合は、その子どもの低緊張を考えて支援する必要があります。そして、低緊張なら小さな時期からエビデンス(科学的根拠)のある運動療法を提供します。

発達障害や知的障害、ダウン症、プラダーウィリー症候群など、様々な障害がありますが、共通して見られる症状に『低緊張』があります。もともと筋肉や靭帯などの組織的に緩い場合もあるでしょう。しかしそれだけで説明がつかない程に低緊張の傾向が多いです。

発達障害の子どもの場合『感覚の統合不全』という状態だと表現されることが多いです。様々な感覚を上手く処理出来ないということです。感覚を上手く統合できないということは、上手く出力できないということです。動作をしたり姿勢保持するためには、様々な感覚が入力されてから、それらを統合して出力に繋げていきます。そこに何らかの問題があると考えます。従って、低緊張の治療は筋力アップとは違います。感覚統合はそれぞれの筋肉の動きや感覚の調和を図る事と言えます。

低緊張だと疲れやすいです。筋緊張が低いので、動くための準備が出来にくい状態です。そのため動こうとするとエネルギーが必要です。エイヤっ!と力を入れないと動けません。だから疲れやすいという特徴があります。よく寝ころぶ傾向にある子どもや、「疲れたー」という子どもは、低緊張である場合が多いです。

姿勢が悪いのも特徴です。姿勢を保持するための筋活動が弱いことも原因です。座っていても崩れてくる、もたれかかる。机に伏せる。立っている姿勢もシャキっとせずフラフラしている。ダラダラしているイメージです。適切な出力が出せないため姿勢を保つことが困難となる、と考えられます。もちろん、筋力そのものが弱いことも少なからず見られます。立位では、足からの影響もありますが、背中を反らせて骨盤と体幹を安定させようと過剰な努力をしています。

偏った姿勢保持では、特定動作の過剰努力による筋緊張の亢進状態が作られます。運動した後や自転車を長距離漕いだ後などに、筋肉痛ではなく、筋肉に力が入った状態を感じたことがあると思います。過剰な努力は高緊張を作る、と言えます。

バランスも悪く、極端に転びやすいです。筋出力も弱く、適切なバランス反応も弱いため、すぐに転んでしまいます。例えば滑り台を駆け下りる、段差からジャンプして降りる、といった場合、足や体幹の力で支えることが苦手なため止まれません。それで、わざと転ぶことでブレーキとしている子どももいます。

バタバタ動きも見られます。適切な力の配分が出来ていないため、滑らかに動けません。1つの関節を固定させて次の関節を動かす、体幹→肩、肩→肘、肘→手首、手首→手指というように、より末梢のコントロールは中枢側が固定されていなければ出来ません。一生懸命に動きたい気持ちは伝わってきますが、それでも上手く動けていない。すごく不器用に見えます。階段なども体のクッションがきかないのでドンドン音を立てて降りてきます。

モジモジ・ウロウロは多動の要素ですが、これにも低緊張が絡んでいることがあります。低緊張で姿勢を保つ筋肉に上手く力を入れられないため、モジモジと動いて姿勢を保とうとします。ウロウロと動き回ることもあります。ゆっくり歩けずに走る子もいます。

低緊張とは、その子がもともと持っている特徴です。発達障害を持つ小学生や中学生でも、足関節が柔らかい子やアキレス腱が硬い子がいます。成長して筋肉も大きくなり、幼児期程の特徴が薄れたとしてもある程度残るのではないかと思います。幼児期に適切なアプローチをすることで、筋力や動き方は修正できます。動き方が変われば使っている筋肉が変わりますので、過剰な努力を減らしたり、不器用さを軽減できます。神経発達は、20才で100%とすると、5才で約80%、6才で約90%の神経系が発達する、と言われています。子どもは日々成長ですので、出来るだけ早い段階で関わることが出来れば、より良い効果が期待できるとはずです。

なぜ子どもは崖登りが好きなのか

子どもは不安定な場所での移動が好きです。道端の溝蓋の上や境界ブロックの上を歩いたり、コンクリ階段の手すりの上に上がってわざわざ歩こうとしたり、斜面を見ると走って上がろうとしたり、手ごろな樹木を見ると登ってみようとしたり、一見エネルギーの無駄遣いみたいな行動をします。

でも、これは前回「11/18感覚統合アプローチ」に書いたように身体と脳の統合的発達にはとても必要な行動です。不安定なところで平衡感覚(前庭覚)を使いながら、全体の力の調整をとりつつ必要なところで瞬発力(固有覚)を発揮して走破していく突破していくことによって、脳と身体の発達の基盤的システムの高次化を達成します。コンピューターでいうなら基本プログラム(WindowsとかmacOSなど)を走らせる前段階の電源やCPUやメモリーやキーボードやモニターなどの統合的な調整をするオペレーションシステム(OS)のバージョンアップと言えます。

なんのこっちゃと思われる方は、10か月頃の赤ちゃんが何度も立ち上がろうとする行動等、遺伝子にもともと仕込まれている発達行動にスイッチが入っているから、子どもはわざわざ「できそうでできなさそうなことをする」と言えばイメージができるでしょうか。てなことで、子どもが崖を上ったり下りたりするのは意味があるという話です。そして現代には、その発達の土壌である崖がなかなかないので、支援者は手ごろな崖を求めて彷徨うわけです。