すてっぷ・じゃんぷ日記

タグ:白杖

「レストランに行ったよ!」

 「なんで歩かなあかんの?」(2022/6/28)で紹介したAさん。梅雨で天気がぐずつく中、雨の降らない間をねらって歩行練習に精を出しました。外食の目標にしているファミリーレストランにも、練習で入口まで行ってみました。白杖でさくさく歩きますが、広い歩道では左に傾く癖があります。すぐそばで見守る職員が、癖が出たら指摘するようにして、歩行練習を重ねました。

 さあ、いよいよ外食の日。当日は幸いなことに、雨の心配はなさそうな曇り空です。Aさんも出発する前から、「カルボナーラ食べたい」「シーフードピザ食べたい」と楽しみな様子。事前にメニューを職員が読んでいっしょに確認してから出発しました。歩行練習の甲斐があって、スムーズに歩くAさん。そばで見守る職員が手助けすることなく、ファミリーレストランに到着しました。

 レストランに到着すると、店員さんもやさしく対応してくれました。まずAさんのために、点字のメニューを出してくれました。Aさんは点字を読んで、料理名と値段も一緒に確認していきます。シーフードピザがないことがわかると、すぐに「じゃあソーセージピザにする」と決定。店員さんを呼んで、注文します。「ジュースもありますか?」とAさんが聞くと、店員さんは「ドリンクバーがあります」と答えます。Aさんはすぐに「(ドリンクバーに)マスカットジュースはありますか?」と尋ねます。すると店員さんもすぐに「Qooって知っていますか?そのマスカットジュースがあります」と丁寧に答えてくれました。

注文の料理が届くまで、ドリンクバーにジュースを取りに行ったり、点字のメニューを見たりして過ごしたAさん。

「これ(点字メニュー)があるので、何があるのかよくわかって嬉しいです。良い思い出になりました。ありがとうございました。」

と料理を運んできてくれた店員さんにお礼を言ってメニューを返していました。楽しみだったソーセージピザも、せっかくの機会だからと職員に続いて、Aさんも自分でピザカッターを使って切ってみます。外食を満喫できた帰りもまた、白杖を使って自分で歩いて帰りました。

 今年は異例な速さでの梅雨明けになりましたね。梅雨が明けて1週間は、夏を思わせるほどの暑さが続き、すてっぷでも屋根のない場所への外出は控えました。今は戻り梅雨のようで、すこし暑さがましになったので、曇り空の下、公園へ。外出の楽しみがあると、やはりモチベーションは上がります。夏休みも、もうすぐ。また外出の計画を立てて、お知らせしていきます。

「なんで、歩かなあかんの?」

 子どもの頃の思い出を尋ねられると、旅行やお出かけしたことをあげる人は少なくありません。それだけ刺激的で、やりがいのあることなのでしょう。多くの人は余暇に外出することを選びます。しかし一口に外出と言っても、必要なスキルは多岐にわたります。公共交通機関を使うこと、買い物をすること、安全に気を付けて歩くこと。これらのことを身に着けて、外出できるようになっていきます。

 盲学校高等部のAさんは、白杖を使って外を歩きます。これまでもすてっぷで、職員が安全確保しながら、近所を歩く練習をしてきました。ですがAさん自身は、「なんで、歩かなあかんの?」と、逃げ腰でした。職員は「卒業後に向けて、外を歩けるようになっていた方がいいからだよ」と理由を伝えます。が、Aさんは、「大丈夫です。卒業したら作業所が送迎してくれるから一人で歩かなくても大丈夫です」と、あっさり答えました。聞くと、ヘルパーさんとの外出の経験も少ないとのことです。

 卒業後の余暇の過ごし方がイメージできていないのでは、と思った職員は、事前にお母さんと個別支援計画で打ち合わせしてから、もう一度Aさんと話しました。ヘルパーさんと外出したら買い物したり、外食したりできることの話題になると、Aさんは「行きたい!それなら練習します」と乗り気です。それなら白杖を使って歩く練習をした方がいいね、でもせっかくだから、ヘルパーさんと行くような場所に行ってみようか、と話がまとまりました。さっそく、1か月後に近所のファミリーレストランで食事をすることに。それまではすてっぷに来たら、そのファミリーレストランまで白杖を使って歩く練習をすることになりました。

 この頃は、まだ梅雨入り前後で、天気が安定しなかった時期です。Aさんはすてっぷに到着すると、「今日は雨降ってないよ!」と報告してくれたり、「今日はこれから雨降りますか?」と確認したりと、外歩きのトレーニングにとても前向きになりました。さて、直近の目標のファミリーレストランへの外出はどうなるでしょうか。また近いうちに報告します。