すてっぷ・じゃんぷ日記

タグ:感情の表出

「行けないの、かなしい」

 「○○くんたちと遊びたい!」(2023/11/4)で紹介したJさん。週間スケジュールで見通しが持てることで、落ち着いて過ごせることが増えてきましたが、自分の要求が伝わらないと泣き叫ぶような大きな声を出すことがまだ見られます。

 そういうときは感情カードで、落ち着いて他人(はじめは職員から)に伝えていくことに替えていきます。ただ感情カードを見せるだけでは、なかなか自分から伝えることにはつながりません。実際にJさんも、感情カードを見て絵の意味は分かっても、使う(伝える)ことの意味はなかなか分かりませんでした。

 そこで職員がJさんの気持ちを受け止めることからはじめました。先日「公園に行きたくなーい!」と叫びながら帰ってきたJさん。まずは職員が「お話しよう」と向き合っていっしょに座ります。職員が「どうしたの?」と聞くと、「公園行きたくない!」とJさんは答えます。すかさず職員は「行きたくないんだね」とJさんの気持ちを受け止めます。次第に落ち着いてくるJさん。職員が「どうして?」と聞くと、「寒いから」とJさんは答えました。職員が「そうだね。寒いね」と共感し、「ジャンパー着ていこううか」と言うと、Jさんはジャンパーを取りに行き、着るとそのままお出かけに向かっていきました。次のときも同じように「寒いから」と公園に行きたくないことを伝えるJさん。ですが前回よりも穏やかにやり取りでき、この日は室内での勉強に活動を変えました。

 そうしておだやかにやり取りすることが増えてきた中で、「(小学生グループの)買い物、行きたい」と伝えてきたJさんに、気持ちを受け止めながら感情カードを見せると、Jさんは自分から「かなしい」と感情カードを示しながら答えました! 今では「かなしい」や「ざんねん」などおだやかに自分の気持ちを伝え、気持ちを受け止めてもらうことで、交渉や切り替えに向かえることが増えてきたJさん。この数か月で一気に成長した姿を、日々見せてくれています。

ちゃぶ台返し2

Iさんとインターン学生(すてっぷではインターン学生を受入れています)でオセロをしていました。どちらも女性で和やかにゲームは進みました。Iさんはいつものんびりとした口調で受け答えをする女子なので、みんなから好かれています。結果は、Iさんの負けとなりました。その途端、Iさんはオセロ板を無茶苦茶にかき回したそうです。

職員は、Iさんでも悔しくて感情を露わにすることがあるんだと、驚きと共にある意味ホッとしました。インターン学生はIさんにオセロ版をかき回した理由を聞くのですが、「やりたくなかった」とぽつりというだけで意味が分からなかったと言います。おそらく「(負けてしまうなら)やりたくなかった」と言いたかったのでしょう。

インターン学生は、こうした時どうしていいかわからなかったと言います。お話ができる子どもなのに突然爆発する感情に驚くことは職員でもあります。こんな時は、感情の表出を否定しないことです。「そんなことしても伝わらない」と否定して言うのではなく、「怒っているのはよくわかったよ」「くやしかったよね」と感情の種類を教えます。

その感情が「悔しい」という事が共有できれば、その表現は「くやしー」「はらたつー」と言えばいいことを教えます。一緒に怒る練習をしてみます。子どものうちに感情全てを内面で処理することは求めるべきではないです。まず、言葉にしてみる事で大人が「そうだね悔しいねぇ」と調整してあげればいいことです。だけど、ボード板をぐちゃぐちゃにするような「ちゃぶ台返し」は禁止ですと教えていきます。