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みんなちがってみんないい

才能開発


発達障害の症状は、一つのことに異常にこだわることや、普通なら気が付かないことに気が付く特徴があります。

これを長所とし、才能にまで開花させて、天才と呼ばれるようになった発達障害の人は大勢います。

むしろ、世界中で天才と呼ばれている人の多くは、発達障害であったのではないかとされています。

★アインシュタイン

天才といえばアインシュタインですが、アインシュタインはアスペルガーとLD=学習障害だったといわれています。

 ・5歳までほとんど話すことができなかった
・読み書きが苦手で、時間がかかった
・数字と自然科学には興味があり集中した
・興味がないことには集中できなかった
・仕事が長続きせず転々としていた
・コミュニケーションをとるのが苦手だった
・部屋がいつも散らかっていた。整理整頓が苦手だった
・汚い布で顔を拭いたり、服の汚れを気にしない無頓着さがあった
・簡単な数字すら覚えるのがたいへんだった

アインシュタインはLD=学習障害もあったため、子どものころは勉強ができずに苦労していたようです。大学に入学するのも、行きたかった大学にはおちて、なんとか滑り止めの大学に受かっているほどです。

そんなアインシュタインには、よき理解者の父親がいて、父親がアインシュタインの個性を認めのばしていたそうです。

LDは、知的障害はなくIQが高い場合が多いのです。このような凹凸ある才能が、天才を生み出します。

★野田あすか

人気マンガでドラマにもなった「のだめカンタービレ」のモデルではないかと噂をされる(年齢から考えると違うと思われますが)、天才ピアニストの野田あすかさん。野田さんは、自閉スペクトラム症、解離性障害であることをカミングアウトしています。 

子どものころから発達障害の症状のせいでいじめをうけて、そのせいで何度も転校することになります。そんないじめを受けるなか、夢中でとりくんでいたのがピアノ。でも、大学にもなじめず大学を中退してしまいます。そして22歳の時「広汎性発達障害」と診断されました。

それでもピアノへの想いは捨てきれず、宮崎学園短期大学に入学し、ピアノ講師の田中幸子さんとであったことで、野田あすかの才能は開花し、数々の賞を得ました。

発達障害の「興味があることには過集中する」「強いこだわりをもつ」という症状は天才の王道でもあります。

 ★黒柳徹子

「徹子の部屋」でおなじみの黒柳徹子さん。どんなゲストがきても徹子流に見事にさばいてその人となりを表現していく天才トーク。

芸能界という移り変わりが激しい世界で、トークの力だけで長年テレビに出続ける。天才パーソナリティと言われる所以です。

 黒柳さんも自らの著書「小さい時から考えてきたこと」で、自分が「読書障害」「計算障害」であり、発達障害ではないだろうかと語っています。 

 レオナルド・ダ・ビンチ エジソン ガリレオ ベンジャミン・フランクリン ウィンストン・チャーチル ネルソン・ロックフェラー ヘミングウェイ アンデルセン アガサ・クリスティー ロダン スティーブン・スピルバーグ ウォールト・ディズニー ビル・ゲイツ スティーブ・ジョブズ 天才の多くはこだわり続ける変人=偉人として紹介されます。

しかし、発達障害の少なくない人たちは学校で勉強につまずき、友達を作るときのコミュニケーションにつまずき、就労でも躓いている方が少なくはありません。 周囲が良かれと思って普通を求めれば求めるほどそのつまずきは必然となっているようにも見えます。

とびぬけたこだわりを発見したのなら、その時代の「普通」とされるレールを走る必要はないという身近な誰かの気づきが重要です。こだわりを追求できる環境があってこそ、こだわりは長所となり才能は開発されます。つまり、才能の開花は、その才能のつぼみを見つけ水をやり肥料を与え、太陽の光をあてるファン=サポーターが必要なのだと思います。

 

熱中症

いつでもどこでもだれでも条件次第で熱中症にかかる危険性がありますが、熱中症は正しい予防方法を知り、普段から気をつけることで防ぐことができます。基本は無理をしないこと。急激な温度上昇。急激な運動。あとは「この程度は大丈夫」という過信の禁物です。水分補給だけでは予防にはならないという知識も必要です。

5月から7月にかけての気温は、広い範囲で平年並の見込み。5月は、晴れると気温の高くなる日があり、6月以降は、湿度が高く蒸し暑い日がある。

と気象庁…。なのに、まだ5月なのに今日は警戒レベルです。

熱中症指数とは、温度と湿度の関係で度数を出します。気温が30度でも高地など湿度の低いところでは汗が乾いていくので暑さを強く感じませんが、気温28度でも京都のような湿度の高い盆地では汗が乾かず暑くてしかありません。この温度と乾燥の関係を度数化したものが暑さ指数(WBGT=湿球黒球温度):Wet Bulb Globe Temperature)です。

英文を読んでわかった方もいると思いますが、湿った布を巻いた温度計と球のまんま(実際は黒球)の温度計のことです。球が湿った温度計は周囲の湿度が低ければ気化熱で温度が下がります。黒球は太陽の光が強ければ温度が上がります。この二つと通常の温度との関係を度数で表したのが暑さ指数です。

暑さ指数をみて上手に熱中症を予防したいものです。

右のページに向日市の暑さ指数を新たにリンクしました。ご覧ください。

ニュース

今週末にはすてっぷ通信5月号が配布されます。昨年は2回の発行でしたが、今年は毎月発行にしようと頑張っています。ニュースというのは文字通り新しい情報です。古くなっては意味がありません。

ということで、今年は情報量は少なくても毎月発行して、利用者の保護者の方に取り組みや私たちが考えていることを発信しようと通信だけでなくブログも精力的に発信していきます。

すてっぷ通信は、webにアクセスしてもらうきっかけとして読んでもらえればということです。またwebにアクセスする環境にない方にも1か月に一度くらいは様子を知ってもらうためです。

すてっぷ通信もこのブログもどうぞごひいきにお願いします。

eスポーツ

「eスポーツ」とは「エレクトロニック・スポーツ(electronic sports)」の略称で、電子機器を用いて行う娯楽、競技、スポーツ全般を指す言葉であり、コンピューターゲーム、ビデオゲームを使ったスポーツ競技のことを指します。 つまり、複数のプレイヤーで対戦するゲームをスポーツと認め「eスポーツ」と呼びます。

アメリカではすでに、国が「eスポーツ」を「スポーツ」として認めており、「プロゲーマー」が「スポーツ選手」であることを認めています。また、韓国や中国でも「eスポーツ」が非常に発展していて、市場規模も日本とは桁違いのようです。
日本はアーケードゲームでは世界に名を轟かしているのに、「eスポーツ」では後進国と呼ばれていて、「eスポーツ」という単語すら広がっていません。
「eスポーツ」が盛んな国ではプロゲーマーがサインを求められるほどその地位は確立されています。日本では、もう少し時間がかかるようですが、「eスポーツ」には他のスポーツよりインクルージョン社会を推進する可能性があるのではないかと思います。

eスポーツは他のスポーツに比べ、年齢や性別、障害の有無など気にしなくて済む可能性があると思うのです。コントローラーを工夫すれば重度の運動障害のある方でも参加の可能性が開けるし、対人関係の障害でもディスプレーの向こう側の対戦相手なら試合ができます。そんなわけで、学校の部活動・サークル活動への支援や、障害者の社会参加などに取り組む企業も出てきました。
高校生のeスポーツ大会では、知的障害を持つ生徒と健常者の混成チームが参加しました。2020年の東京五輪・パラリンピックに向け、障害者も参加できる大会など、機運がさらに高まっています。

「たかがゲーム」と考えてしまうのは、もったいない話です。今NHKで「韋駄天」というオリンピックドラマが放送されていますが、陸上競技ですらかつての日本では「たかがかけっこ」とされていたのを、嘉納治五郎をはじめとする人達が何十年も取り組んで昭和の東京オリンピック開催にこぎつけたのです。「eスポーツ」もきっと同じ道をたどるでしょう。ゲーム好きが世界を極める時代がすぐそこまで来ています。

ペアレントトレーニング

ペアレントトレーニングとは、知的障害や自閉症などの子どもをもつ保護者を対象に、アメリカで開発されたプログラムです。
はじめは、「親は子どもの最良の治療者である」という考えのもとに、支援機関で取り組んでいる子どもへの療育を家庭でもおこなうことで、療育の効果を上げたり、維持させたりすることが目的でした。

ペアレントトレーニングは現在、発達障害を持つ子どもの親を対象とした、子どもの行動を変えるテクニックを身につけるためのトレーニングとして普及しています。
ペアレントトレーニングでは、子どもの好ましい行動を増やし、好ましくない行動を減らすためのテクニックを、親が修得します。そして、子どもの困った行動や親子関係のこじれた状況に対して、まず親が関わりを変えることで子どもの変化を促し、子どもが変わることで親がさらに変わるという好循環を生み出すことを目指します。
また、トレーニングを続ける中で、親が抱えていた悩みや不安を軽減させることも、ペアレントトレーニングの重要な効果です。
ストレスで余裕をなくすと、子どもの行動を冷静に受け止められず、つい頭ごなしに叱りつけるといった不適切な関わりをしてしまうことがあります。
そして、親の不適切な関わりが続くと、子どもは「親に受け入れられていない。」などと落ち込んだり、反発して問題行動に拍車がかかったりし、親はさらに不適切な関わりを繰り返すという悪循環に陥ってしまいます。
ペアレントトレーニングは、親の関わり方を変えることで子どもの行動を変え、子育てへの悩みや不安も軽減させようというトレーニングです。

トレーニングを続けることで、親子の関係性の悪循環を解消し、より良い関係性を築いていくこともできるということで、京都府では現在保健所を中心にペアトレの講座が紹介されています。講座は短いもので5回長いもので8回程度ありますが、1か月ほど間をあけてトレーナーと2~3人の保護者のチームを形成して約半年間続けていきます。

ペアトレを受けたいとお考えの方はスタッフまでご連絡いただければご紹介できると思います。

忘れ物

「○○さーん、帰るけど忘れ物ないですかー?」「ハーイ完ぺきでーす。」5分後に帰宅の車中に連絡。「○○さーん、二階に筆箱と連絡帳忘れてますから帰ってきてくださーい」「あっちゃー( ;∀;)」

忘れ物。私も子どものころからしょっちゅう忘れます。人生のかなり多くの時間忘れ物に振り回されています。以前ワーキングメモリーの話題を掲載しましたが、相当前に経験したエピソードなんかはひとつ残らず覚えているのに、わずか1分前の記憶の保持が難しいのです。二つ以上のことを同時にやっているとものの見事に一つ以上忘れます。これは記憶する脳の場所が違うそうです。

ワーキングメモリーは長くは保持されないのですが、作業台のようなものでこっちの材料とあっちの材料をちょっとだけ置いておいて、もう一つの材料と一緒に加工するための仮置きのような感じです。ところがワーキングメモリーが弱い人はこの作業台が小さく、置いておいても狭いので机の下に落ちてしまう感じです。

無理やりこの作業台を広げようとしたり、狭いところに無理に高く積んで置いておくのは可能ですが、大変不安定ですし、その分パワーを使うので結局ほかに使うべきエネルギーがなくなって、早く疲れてしまうのです。解決策はひとつづつこなす癖をつけること、記憶を脳の外に保存する、すなわち目で見えるように視覚化することです。視覚支援とは実はワーキングメモリーの弱い人への支援の一つなのです。

「注意しようね」だけでは解決しないのです。あら?また車の中に取りに行った連絡帳を忘れていますよ。

 

読み書き障害


「読み書き障害=全く読み書きができない」ではなく、「読み書きを正確かつ流ちょうに行うことができない」状態のことです。知的な障害とは異なるため、文章の意味を理解できないわけではありません。

 「文字を見て認識することは難しいが、音を聞いて意味を理解することはできる」、「文字を拡大したり、行間を広げたりといった調整で意味の理解が助けられる」という児童生徒も少なくありません。


そうした読み書き困難を見つけ出すためには、学校でよく行われる発達検査では、読み書きの能力を測ることができません。 そこで、適切な読み書きのアセスメントを行う必要があります。 アセスメントは、子どもたちに音声教材支援を実施する根拠にもなります。

読み書きの困難
• 読むことが遅いと?
– 理解が不十分なままに教科書の学習が進んでいく可能性が生じます。 
– テストの問題文を読むことに時間がかかり、理解できていても解答できていない可能性もあります。

• 書くことが遅いと?
– 黒板をノートに全部写す前に消されてしまったり、書くことに極端な苦痛を感じていることもあります 。
– 試験の途中で時間切れになってしまうことも考えられます。

• その結果として?
– 理解できており、書きたいことはあるけど表現ができない、評価されない状態かもしれません。
– 学習が遅れたり、意欲をなくしてしまっている可能性もあります。

• 読み書きの速度や正確性を確認する
– 学年ごとの平均値と比べることで、個々の児童生徒の読み書き困難の状態を客観的に把握することが必要です。
– 極端に読み書きの困難がある場合、「自分の目で文章を読む」、「鉛筆を使って文字を書く」以外の 別の方法を使うこともあります。

すてっぷ では読み書き検査と発達検査を実施することができます。ご希望の方はスタッフまでお問い合わせください。

★STRAW-R(ストロウ-改訂版)小学生の読み書きスクリーニング検査
小学1年生から高校3年生までの(本事業所は小6まで)音読速度を調べることのできる速読課題や、漢字の音読年齢が算出できる漢字音読課題を検査します。本邦で唯一ひらがな、カタカナ、漢字の3種類の表記について比較できる検査であり、どの表記から練習したらよいのかの指標が得られます。さらに速読課題は文章課題を含んでおり、入試で試験時間の延長を希望する際の客観的な資料にもなっています。(1時間程度の検査)

★K-ABC II
認知尺度と習得尺度の2つの尺度からなる検査。認知面での障害や得意な部分の状況と、学力の習得の状況の両方の側面を、同時に調べて比較することができます。小学生から高校生程度までを対象にすることができます。(1時間程度×2回の検査)

読み書き障害は二つある「視覚系」「音韻系」

発達性読み書き障害のお子さんには「知的には問題がない」ため、知能検査を行い、知的発達に問題がないことを確認することが前提ということを以前書きました。

ただ、読み書き障害と簡単に言いますが、その原因メカニズムは大きく二つに分かれます。(両方あるときも稀にありますが…。)

それは、字は見えているけど読めない場合、音は聞こえているけど音のつながりが読めない場合の二つです。今回は前者の視覚系に課題のある場合について述べていきます。

「視覚情報処理に問題がある」子どもの場合、視覚認知機能や視覚性記憶を要する方法で読み書きの指導をすることは有効ではありません。例えば字を何度も書くトレーニングは効果が上がらないのです。やってもやっても覚えられないからです。

視覚的な入力での指導は困難ですが、知的には遅れがないのですから、聴覚的な入力で代償するとうまくいくことがあります。例えば、“動く”という漢字を覚えるとき、「重いものに力を入れると動く」と文字の形態を言語化して覚え、言いながら書くことで習得することが容易になります。

視覚系に躓きがあるお子さんはノートに何度も“動く”と書く通常の教育方法は、書くのが遅い上に、他のお子さんと比べると字が下手。その上、何度書いてもなかなか覚えることができません。字が汚いと怒られ、書くのが遅いと怒られ、覚えられないと怒られ、それでは文字を書くことがどんどん嫌いになってしまいます。

足に障害があり歩けない人に、何度も歩く訓練をすれば障害のない人と同じように歩けると言っているのと同じです。分からなかったとは言え全く科学的根拠がないトレーニングを私たち大人は特定の子どもたちに強いてきたかもしれないのです。

確かにトレーニングすることできれいな字が書けたり早く書けるようになる子どもはいます。しかし、考えてほしいのです。視覚系に躓きのない子が今の能力量の3割で文字を書いたり読んだりしているとしましょう。ところが視覚系に躓きのある子は8割の力を使って同じ作業をしているとすれば余力はあと2割しか残りません。学習の大事なことは得た情報から推測したり考えたりすることですが、書くことにエネルギーの大半を消費した子には、考えたり推測に充てるパワーが残っていないのです。

次は音韻系で躓く読み書き障害について書きます。

 

 

音韻系の読み書き障害

前回は「文字の形の認識が難しい」など視覚情報処理の不全について述べました。これはどちらか言うと視覚入力はしているが処理(文字認知段階)や出力(字を書く段階)に課題がある場合です。
しかし、中には、入力段階で眼球運動に偏りがあり、普通の文字の見え方とは違った見え方をしている人もいると言われています。水に浸したように文字がにじんで見えたり、目が悪い状態のように文字が二重になったり、ぼやけて見える方。文字がらせん状にゆがんだり、3Dのように浮かんで見えたりする方もいます。鏡に映したように文字が左右反転して見える方もいます。

さて、今回は「文字の音のつながり方の認識が難しい」音韻処理の不全についてです。

音韻機能とは最小の音単位を認識・処理する能力を指しますが、ディスレクシアの人の脳の特性として、音韻の処理に関わる脳の領域に機能異常があるという説が主流となっています。そのため音を聞き分けたり、文字と音を結びつけて「読む」ことが難しいと言われています。

※文字と音の変換が苦手
ひらがなの文字と音を結びつけて読むのが難しいことがあります。また小さい「ゃ」「ゅ」「ょ」「っ」や音を伸ばす「-」などの特殊音節が認識できず読めないこともあります。

※単語のまとまりを理解するのが困難
たとえば「み」「か」「ん」などのひらがなやカタカナの一音ずつは読めてもそれを「みかん」というひとまとまりの言葉として理解するのが難しいことがあります。

※聴覚記憶が苦手
言葉を音として記憶しながら読んだり話したりしますが、ディスレクシアの人の中にはこの音韻認識が弱く聴覚的な記憶が苦手な人がいます。このように処理と記憶を同時に行うことが難しいことから読むことに困難な場合があります。

こうした場合は、「活字を読めばわかる」ということにはなりませんから、聞いたり見たりしてわかる状態に持っていくことです。マルティメディア(iPadやPC)を用いて文章を読んでくれる教材やデジタル教科書(無料配布されています)を使って、読むことにかかるエネルギーをできるだけ少なくして、推論したり考えることに学ぶエネルギーが使えるようにします。記録は音声記録に残したり、キーボード入力を早くから教えていきます。ローマ字打ちは音声表現の規則性が高く、最近のデバイスは入力を予測したり読んでくれたりするのでひらがな打ちよりも教えるのが容易です。

また、読み書き障害の中には記憶力の良い子もいて、最初は教えられたことのなんでもかんでも記憶したり物事の法則性を見出したりして小学校時代をしのいでいく子がいます。しかし、中学校の時期に危機が来ます。英語の発音と綴りには簡単な法則性がありません。「A」を「ア」「アイ」「エイ」と前後につく文字でいくつも変化するからです。撥音や拗音等の日本語発音表記の法則性よりはるかに複雑です。それでも記憶力の高い子は法則性ではなく英単語や英語文書を丸ごと記憶して中学英語をしのぐ人がいます。

それでも、とうとう高校内容の記憶量は半端ではないのでここで、英語だけがガクンと急降下します。それではじめて読み書き障害が発見されるケースが少なくありません。
高校生の彼は言います。
「みんなは、僕以上に頑張っているからできるのだと思っていた」と。
「もっと早く読み書き障害のことを教えてほしかった」とも言いました。

読み書き障害の子の他者への認識は、「みんなは僕より頑張っているから読める」「僕は馬鹿だ」と勘違いしています。ちょうど目の悪い子が、「みんなも同じように見えている」と勝手に思い込んでいるのと同じです。眼鏡をかけたら「なーんだみんなはこんなに見えていたのかと」気が付きます。だから「視力検査」があるのです。
何故「読み書き検査」はないのでしょう?視力が悪くてその子だけが眼鏡をかけていやがる先生はいませんが、読み書き障害の支援にデジタル教科書などをその子だけに使うのをためらう先生は少なくありません。令和の時代こそ、読み書き障害への支援が眼鏡と同じように広まり認められる世の中に早くなってほしいです。

うちの学校では読み書きの検査をしてくれないという方は、スタッフまでご連絡ください。可能な限り読み書き検査のご要望にお応えしていきたいと思います。

空気を読む

日常生活において、他者の心を理解する能力は大切です。他者の心を理解する能力は、心理学分野においては「心の理論 (Theory of Mind)」 研究として、数多く行われてきました。文化による多少の違いはあっても、定型発達児は4歳頃にこのような能力を獲得することが現在の統一見解となっています。
また、自閉スペクトラム症児は心の理論の発達が倍ほど遅れるということもあるそうです。近年は、研究対象となる年代が広がっており、広義における他者の心の理解の学術用語としてマインドリーディングという言葉が使われます。
「空気を読む」ことについて、自閉スペクトラム症のマインドリーディングに関わるエピソードが引用されることもあります。わざとじゃないけど相手の嫌がることを言ってしまう。全体としての暗黙の意向は決まっているのに蒸し返す。空気を読むとは、相手の考えていることを読む、あるいはその集団の意図の方向性を読むと同義です。是か非か程度なら人の顔色で読めそうなものですが、相手の表情を読むのもASDの方は苦手です。欧米では空気を読めという慣用句は見かけませんが、米国の、"Read the room!"「雰囲気を読め!」という表現があるそうです。「身の回りの雰囲気を把握してから行動や発言をして」ということだそうです。以前、高文脈型コミュニケーションと低文脈型コミュニケーションについて掲載しましたが、英語という「低文脈型コミュニケーション」であっても、雰囲気というASDの方には大変むつかしい、見えも聞こえもしない他者の意図を感じ取れという言葉があるのです。

どうすればいいか?話し合って情報を共有するのが一番です。正確な情報もないのに勝手に想像するなんて、双方の誤解を作ってしまうだけです。「低文脈型コミュニケーション」でも行き違いはたくさんあるのですから、誤解が生じても、「空気を読め」なんて言わずに説明して許し合う寛容さも大事になります。

レジリエンス

レジリエンスは“Resilience”と書き「困難や苦境からの回復力、復活力」という意味です。逆境に置かれたときに早く復活できる人をResilient(レジリエント)な人と表現します。同じ状況に置かれても、すぐに回復する人もいれば、長々と引きずってしまう人もいます。
立ち直りが早い人と遅い人、何が違うのでしょうか?
誰でも、しんどい環境の中にいたら、気が滅入るものですが、「動き出せば好転するはず」と思えるポジティブな思考ができるかどうかが大事です。

このポジティブ発想やネガティブ発想は生まれつきではありません。小さい頃の身近な大人の関わりが大きく影響することが分かっています。
大人がポジティブな関わりをすると、その子もポジティブ発想を学びやすく、大人が、ネガティブな関わりをしてしまうと、ネガティブ発想を身につけてしまうのです。

「大丈夫、なんとかなる」
「この程度で済んでよかった」
「長引かせない+否定的に考えすぎない」発想を優先し、それを言葉で伝えていきます。
一方で、「もうダメだ」「最悪だ」のような言葉を慎むことです。「○○すると怖いよ」「○○したら大変なことが起こるよ」と脅さないことも大事です。
「学習性無力感」と言って、すでに“無力”を学んでしまっていると、「どうせダメだ」「ムリに決まっている」と最初から決めつけてしまうことがあります。
「無力感」は失敗経験の繰り返しで学習されます。
子どもの思考スタイルは、大人の関わりで変わります。意識的に、ポジティブになる働きかけが大事です。

身近な人間関係が励まし合う関係だと、人は強くなれます。家族の絆や友だちとのつながりが前向きだと、もし傷ついたり落ち込んだりするようなことがあっても立ち直りは早くなります。
相手の痛みや悲しみが理解できる力が身につくように、人を励ます言葉が持てるように、大人自ら、共感力を示すと、子どもの学びにつながります。

大人は先回りして、あれこれと子どもにしてあげたくなります。本当に大人がしてあげるべきことは、そこそこ失敗しない方法は教えるけれども、重要なことはつまずいてしまったときにどう対処したらいいかを教えることです。
怖いのは、失敗することではなく、その後の解決法を知らぬまま育ってしまうことです。先回りして学ぶべきリカバリーの経験を回避することではないということです。

もし大人が、子どもの行動を管理しすぎてしまうと、その子の自立力はなかなか育ちません。子どもの頃、自分で決断をする機会が多い子は、自立度が早いということも分かっていますので、大人が先導しつつも、子どもにできる判断や決断は子どもに委ねます。

自己管理が上手になると、レジリエンスが向上するだけでなく、スランプやストレスを未然に回避する力にもつながっていきます。まずは、何で遊ぶか、何を着るか、何を持っていくかなど、自分の身の周りの簡単なことから決める習慣をつけていきます。

レジリエンスは、コツコツと積み重ねていくものです。積み上げは今からでも可能です。

ラーニングピラミッド

学習方法と平均学習定着率の関係は「ラーニングピラミッド」という図で表すことができます。学習時間が限られていて状況では、より効率の良い方法での学習がスムーズに学習内容を身につけることにつながります。学習方法を見直すだけで思わぬ効果が出ます。

ラーニングピラミッドを見ると、ピラミッドの下に行くほど定着率が高いことがわかります。では、各段階の内容について見てみると(下図)

講義を受ける(5%)
読書する(10%)
視聴覚〔ビデオ・音声による学習〕(20%)
実演を見る(30%)
他者と議論する(50%)
実践による経験・練習(75%)
他人に教える(90%)

物事を他人に教えるためには、自分でしっかりと内容を理解していなければなりません。「他人が書いた文章を読み上げるだけ」「書籍・ネットの文章をツギハギしただけ」では突っ込んだ質問をされると返答に詰まります。いろいろな方法で何度も実践経験を積み、時には失敗も経験することで教えることができるようになります。
定着率の高いラーニングピラミッド下方の学習法ほど、より自発的・能動的な働きかけが必要です。能動的に学習するためには、まず知識や興味を高め、その後話し合って理解を深めてから発表したり教えたりすれば限られた時間を上手に使った学びが進みます。

ラーニングピラミッドの中でもより能動的な「他者と議論する」「実践による経験・練習」「他人に教える」を重視した勉強方法「アクティブラーニング」が新しい学習指導要領の中で注目されています。でも、昔から「人に教えることが一番の勉強」と言われ続けているのですからいまさらという気にはなりますが、やっと公教育が注目し始めたということが重要です。

視覚支援

視覚支援は、1960年代の半ばに、米ノースカロライナ大学のエリック・ショプラー教授のグループによって始められたTEACCHプログラムで提唱された「構造化」と同じ意味です。
視覚支援の代表例はスケジュール表であり、毎日の生活や学校での学習時間割を作成し、視覚的なスケジュール表として前もって示すと、ASDの子どもは不安や混乱が少なくなります。
ASDの子どもはいつもと違う予期しない状況になると、恐怖や困惑を示すことが多いです。スケジュール表を、いつも使うリビングの壁や学校の自分の机の上などに掲示しておくと安心して次の予定に向かえます。言葉や文字が理解でいない自閉症児の場合、スケジュール表ではイラストや写真を使った絵カードが用いられます。
自閉症児者の用いるスケジュール表では、個々の行動予定は、認知レベルによって文字だけで書かれたものから、文字カードや絵カードのようにカード化されています。また、工程のある作業を行うときはワークシステムという名前でスケジュール表を作業や仕事の一部分で使うこともあります。これはワーキングメモリーという短期記憶が弱い人にも有効です。音声は消えてしまいますが、文字や絵は消えません。「何回言えば覚えるの?」と言い続けたが一回書いて示せば忘れなくなったというケースはたくさんあります。

また、「声かけ、表情や表現」を大事にしたいと思うばかりに、絵カード支援や視覚支援をためらわれる方がおられます。でも、聴覚に障害がある方と知れば視覚支援も使うでしょうし、視覚障害のある方に白杖や点字ブロックが必要ないという方もいません。ASDをはじめとする発達障害は即座に理解してもらいにくい障害です。発達期の子どもならなおさらです。発達はできないことができるようになる過程ですから、今できないことが未来にできないとは言いにくいからです。

それでも、誰が発信しても本人が理解できているかどうか、子どもの発信していることが誰でも理解できるかどうかは子どもの普段の生活に寄り添っていれば、わかることです。子どもの時期に、分からないことが長く続いたり、言いたいこと言えない状況が長く続くと、レジリエンス(逆境からの復元力)は低下していきます。

このような視覚的なスケジュールを用いることで自閉症の子どもは、「今何をすべきか」「次は何をすべきか」「最後までにはどれだけ残っているか」を理解しやすくなります。求められていることを達成したとき提示した大人も受け止めた子どもも嬉しい気持ちを交流し合います。スケジュールカードやワークシステムはあくまでも成功を支えるツールでありそれ自体が目的ではありません。

絵カード支援でいつもとても気になることがあります。大人のしてほしいことは絵や文字でしつこく示すのに、子ども側から発信する方法を与えていない場合がとても多いのです。つまり一方通行の視覚支援です。言っていることはわかるけど言いたいことが言えない状況が続くと自立することができません。自分は自分、人は人、みんなちがってみんないいを実現するにも理解と発信は一体なのだということです。

ASDの人たちが周囲の人たちと「やったね・いいね」をたくさん積み上げられるように視覚支援を利用していきたいものです。

スヌーズレン

すてっぷでは空気清浄機を稼働しています。この清浄機の正面パネルはコバルトグリーンの水流が渦巻いている様子が見えるようになっています。この輝く水流をいつまでもいつまでも楽しむ子どもたちがいます。引き込まれてうっとりするようです。私も小さいとき水道の流れに見とれたり洗濯機の渦巻きをいつまでも見ていた記憶があります。心が穏やかかになるのです。これを最近ではスヌーズレン効果というそうです。

スヌーズレンとは、オランダ語で「クンクン匂いを嗅ぐ」、「うとうとする」という用語を組み合わせた造語で、外界を探索することや心地よくまどろむ状態を示すものです。もとは1970年代にオランダで重い知的障害がある人の余暇活動として始まりました。
この活動を行う空間スヌーズレンルームには、光・音・匂い・振動・触覚の素材等、感覚を優しく刺激するものが効果的に配置してあります。
利用者はこの空間で、自ら好きな感覚を楽しみ、誰からも指示されない特別な時間を過ごします。

アロマセラピー、タッチングケア、音楽療法等の温かな治療が注目され始めた1980年代、それらを一つにまとめようという動きの中でスヌーズレンはヨーロッパを中心に発展してきました。
昨今では、世界30カ国以上に広がり、その人にとって心地よい感覚刺激を通じたアプローチをすることで、思考・感情・行動を変化させていく治療的なものとしても用いられています。
スヌーズレンを構成する要素は、(1)利用者、(2)ケアする人、(3)環境の3つです。
現在ヨーロッパでスヌーズレンルームはこのような目的で使用されています。
●重い障害や病気がある人の余暇活動
●精神障害者・発達障害児へのプレイセラピー
●認知症の老人へのケア
●心理的に不安定な人の情緒安定のため
●自発性・コミュニケーション力を養う探索活動として
●子どもたちがゆったりしたペースで過ごせる時空間として

このような使用目的でコミュニティセンターや保育園にも広がっており、日本でも様々な場所での活用が期待できます。

かたずけられない


子どもが自分の部屋を片付けられなくて、部屋がいつも物で散乱していて困っておられる方は少なくありません。散らかっている部屋にいるのに平気でいるというのは、どうしても心配になりますし、部屋を片付けて生活してほしいと思うのは当たり前です。
部屋を散らかす子どもは片付けが苦手で、言われて部屋を片付けても、あっという間にまた散らかってしまうものです。
あまりにも汚い部屋で暮らしている子どもは、もしかして病気なのではないだろうかと不安に思われる方もおられると思います。
病気でなかったとしても、部屋を片付けられない子どもは、いつまでたっても片付けられないままなのだろうかと心配になり、どうすればよいのか悩んでいる方も少なくありません。
部屋を片付けられないという病気や障害は確かに存在します。
しかしきちんと観察して、ひとりひとりの子どもに合った対応をしていくことで、片付けられない子どもも、片付けられるような方法がみつかります。
また、病気や障害とまで言えなくても、片付けられない子供に寄り添って、片付けられるようになるまで親が教えたり手助けしたりすることで、多くの子どもは片付けられるようになるものです。

なぜ子供が片付けられないのか考えてみると以下の理由が考えられます。

★必要性を感じていない
片付けをしない子どもたちの中には、『部屋が散らかって汚くなっていても気にならない』という子どもがいます。
片付けられない子どもたちは、部屋がおもちゃやゴミ袋が散乱しているような状態でも気にならず、片付けをする必要を感じていません。親が『片付けて』とか『掃除をして』と言っても、家族みんなが気持ちよく暮らすという他者の視点がわからないので掃除や片付けをしなくても良いと考えています。
★片づけ方がわからない
または、ただ単に面倒くさくて掃除が大嫌いなので、片付けができないという子ども達もいます。片付けをしなくてはいけないと感じながらも、どうやって片付ければ良いのか分からないで、結局散らかった部屋のままでいる子どもたちもいます。片付け方が分からない子どもには、大人が丁寧に片付け方を教えることで、うまく片付けられるようになります。

★ストレスが原因になっているケース
子どものストレスが原因になっているケースも考えられます。子どもの生活の中の、学校生活、家庭環境、親子関係、夫婦関係、友人関係などの中で大きなストレスを感じている場合、心に抱える問題が大きくて、その子どもの中では片付けをしている場合ではない、片付けをする気も起きないような心理状態になっているケースです。ストレスによって片付けができない子どもの場合、やはり片付けよりもその子どものストレスの原因となっている問題を、解決していく必要があります。

★病気や発達障害などによるもの
『片付けられない症候群』と言われるADHDやADDという発達障害がありますが、この障害を持っている場合、その子どもは片付けがとても苦手です。ADHDである場合は、脳の機能的な障害に原因があり、『不注意』『多動性』『衝動性』と言う特徴を伴っています。
ADHDの特徴である、うっかりミスがとても多かったり、少しもじっとしていられない性格だったり、衝動性を抑えられないなどコントロールがしにくい性質を感じられる場合は、正しく診断をしてもらう必要があります。
発達障害と診断されたら、その障害に合った支援や薬の力で、片付けられないことも含め、生活の不自由さを和らげることができます。
片付けられない子どもの中には『ため込み症候群』といわれる強迫性障害のひとつ、ホーディングという障害を持っている場合もあります。『物を集めすぎて困る』とか『捨てられない』という特徴があります。ADHD、強迫性貯蔵症のほか、ASDのこだわり等柔軟性の欠如が原因の場合もあります。
そのほか、うつ病、セルフネグレクト、統合失調症、認知症。これらの病気は、ストレスが原因で引き起こされる病気です。

片付けられない子どもが片付けられるようになるには、大人の助けが必要です。言葉を教えるように、子どもに片付けを教えていきます。
一緒に片付けを始めることで、片付けに対する重要性に気が付く機会となります。
部屋での探し物が多かった子どもなら、一緒に分類したり、整理したりする作業を通して、部屋を片付けることは生活を快適にし、物の置き場所を把握することが、便利で心地よいことであるということが分かってくると思います。一緒に片付けをしていく中で、片付けられない理由や行動の癖が分ってくると思います。つい散らかしてしまう癖を解消するための対策を一緒に工夫することで、散らかさないためには『具体的にこんな工夫をしたい』という、対策の意図も理解してくれます。
例えば、ゴミ箱の置き場所ひとつとっても、ゴミを入れやすい場所へ移動するだけで、ゴミ箱へゴミを入れる行動がかなり増えると思います。脱いだ服を床へ置きっぱなしにされないように、サッとひっかけられるフックを壁に取り付けたり、かけやすいハンガーラックを用意したりすればよいかもしれません。帽子やかばんなども、簡単にかけられるようポールハンガーやハンガーラックがあると、簡単にひっかけるだけで片付けられる仕組みを作ることができます。

部屋が汚いと怒るのに、部屋をきれいにしても褒めないでいるという事も多いです。怒られて仕方なくする片付けと、片付けたら褒められるという片付けだと、片付けをした時の気分がよいものになるか悪いものになるか、ずいぶん違ってきます。『片付けを始めた時』『片付けをしている時』『片付けが終わった時』など、こまめにほめて、子どもの片付けへのやる気を引き出していきましょう。
逆に、もし片付けが上手くいかなくても、怒ったり嫌味を言わないことが重要です。ほめるという大人の行動は、片付けが嫌いな子どものやる気を引き出していきます。みんなの一員として、子どもに『お手伝い』として役割分担を与えましょう。お手伝いのご褒美としては、『褒めること』が最もよいのですが、なかなかお手伝いをしてくれない子どもには、お手伝いの分担をこなしたら、例えば何か好きなことをしてよいというご褒美などを与えると、お手伝いも続けられるようになります。
片付けられない子どもには、それぞれ違った理由や原因があります。
親が子どもを見守り、必要な時に必要な助けをタイミングよく差し出し、子どもに寄り添っていくことで、片付けられない子どもも少しずつ片付けられるようになります。
片付けは教えていかなければならないものであると意識して、ひとつひとつ褒めながら教えてあげるとうまくいきます。

 

学童保育のありかた

学童保育(乙訓では留守家庭児童会)は「地域で子育てする」制度で、「子どもは放課後に育つ」視点を持った地域事業とも言えます。嘱託職員や派遣労働の職員が人材となる中で、子どもが自ら通いたくなる学童保育にするためには、教育福祉家庭の連携以前に学童保育の運営方法を検討する必要があると言われています。
「子ども主体の学童保育」の理念を掲げ、地域の指導員会議や研修会をもち、理念をどう具体化するかに腐心する中で、親も子も次第に学童保育に好感を寄せ始め大型の学童保育所も好評を得ているという報告もあります。その中身は、保護者の多くが、「外遊びが多く」「手づくりおやつは美味しく」「子どもは楽しく通えている」、「子どもの気持ちを大切にしてくれる職員」が多く、「楽しい行事が増え」、「家庭との連携」も「トラブルへの対応」も適切にされていると評価しています。ステークホルダー(利用者)を大切にする方法を抜きにしてどんな組織も発展はありません。
良い学童保育は、①学童保育運営に責任を持つ法人等の正規職員の採用で学童保育実践の持続可能性を図ること、②正規職員を核にした責任ある運営体制を創出すること、③保育内容をお仕着せのものから子どもと共に作り出すものに転換すること、そのために、④職員間の連携を深めること だとしています。
学童保育を「子どもの生活」を守るための地域拠点として位置づけ、家庭と深く連携し、学校との連携も図る、「福祉と教育をクロスボーダー」できる位置に置くことによって、居心地のよい子どもの居場所を創出し、親子関係の修復、家庭や地域の再生にも寄与できるのではないかといわれています。そのためには、利用者=ステークホルダーの意見聴取や運営への参加は欠かせません。

8050問題

8050問題とは1980、90年代頃にひきこもりの子を持った家庭が、年月を経て、高齢化し、80代の親が50代の子を養う現象の事を言います。
8050問題が深刻化してしまったのは原因を若者問題・しつけ問題と浅薄にとらえてしまった政策の誤りだといわれています。
ひきこもりは、「社会復帰させる」「更生させる」事として捉えられたこと。そして、ひきこもりは単なる、「親のしつけ不足」や「若者に良くある心理」として考えられたからです。だから、ひきこもりの本人やその家庭は恥ずかしくて、悩みを打ち明けられず、改善する場所を見いだせずに現在に至ったのです。自治体や研究者はひきこもりの年齢が40歳以上にも調査結果がでていたのに、「若者自立・挑戦プラン(2003年)」という若者政策を出してしまい、修正しなかったのです。これらが結果的に8050問題につながるひきこもりの長期化をもたらしたと言われます。
ひきこもりは職場や学校での精神的なトラウマから起こる病気といっても過言ではありません。国の政策は実質、そのトラウマのある場所に戻そうとするのですから成果が上がらなかったのです。
8050問題の状況下にある家庭に良くある特徴は、ひきこもりを恥だと感じて、他者の協力を得る事が出来ない事です。その為、一向に子どもが現状から何もできない状況に陥ります。まずは、ひきこもり本人と、その家族がその悩みを打ち明けられる場所を全国的に設ける事が必要です。そして、「どこかに就労しなければならない」という事にこだわらず、働かなくても人はつながれるし生きていけるという選択肢を増やすことが重要です。現在、働く事は企業に勤める事だけではなく、支援を受けながら働く可能性は広がっています。その様な選択肢をひきこもりで悩む人に合わせて考えていける場を作る事こそが重要だと言えます。

 

 

発達障害のある子どもの家庭教師

発達障害のある子ども専門の家庭教師が増えています。「教育を十分に受けさせたい」という保護者は多いのですが、学校の現場には、特別支援教育の知識や経験がある教師の数が十分ではないことも背景にあるようです。

例えば、注意が散りやすい子どもには、上手な家庭教師なら90分の授業の間、教材を次々と変えていきます。集中力を途切れさせないための工夫です。ASDの場合こだわりが強い子が多いので、じっくりと向き合って、潜在能力を引き出すことが大事です。

発達障害の診断を受ける子どもが増え、保護者のニーズも高まり「発達障害コース」を設けた塾は次第に増えてきています。授業では生徒ごとの特性に合わせて、視覚優位を生かしたカラフルな教材を使ったり、歴史をうまく覚えられない子には歴史上の人物が載ったカードでゲームをさせたり、計算の苦手な子には教材に玩具のブロックを使ったりします。

教える側には、大学で心理学や特別支援教育を学んだ人や、身内に発達障害の人がいて育てた経験がある人などがいるところが信頼できるでしょう。料金は1時間あたり6千円~1万円ほど。教材をたくさんそろえ、個人にあった教え方が必要ですから市販の教材では間に合わないことも少なくないからです。環境が変わると混乱する子が多いので、同じ先生が担当することが多いです。

作文を一行も書けなかった小学生が原稿用紙一枚書けるようになったり、漢字が書けなかった中学生が漢字テストで平均点を取れるようになったり、通信簿がオール2だった中学生の生徒が2年間でオール4以上になって進学校に進んだケースが紹介される一方、うまくいかなかったケースはなかなか拡散されないので、どこのどの先生の指導がいいかどうかは何とも言えません。

全国展開をしているアークスタイル(大阪市)は派遣する専門の家庭教師の数は都市部でも足りず全国的に不足しているのではないかと言います。また、関係者は、家庭教師はただ遅れを取り戻すだけでなく、その子どもが何が得意で何が苦手かを正しく理解し、自尊心を尊重する指導を目指すことが大事だといいます。

学校では一律に授業を進めなくてはならず、カバーしきれない部分もあります。個別の対応を必要とする子がいる中、こうした家庭教師や塾の重要性はますます高まるのではないかと感じます。

学習性無力感

「学習性無力感」は、失敗や嫌な経験をしたことが原因で何をしてもうまくいかないとあきらめてしまい、仕事や勉強に対してやる気がおきない無気力状態に陥る状態を指す言葉で、以前このブログにもレジリエンス=「困難や苦境からの回復力、復活力」で掲載しました。

さまざまな失敗経験をする中で、大きなストレスや苦痛を感じたことが原因で意欲が低下していきます。「自分にはできない」「何をしても無駄」だというあきらめの意識が芽生えて、仕事や勉強に取り組むことができない学習性無力感に陥ります。周囲からは「だらだらしている」「さぼっている」などと思われていますが、本人はなんとかやる気を出そうと葛藤しています。そのため、周囲に理解されにくくますます無力感が強くなるといわれています。

学習性無力感の原因は大きく4タイプに分けられるそうです。
1 完璧主義の人は何事にも100%で取り組むためエネルギー切れしやすく、ケアレスミスでさえ気にする傾向が高いため、負のループにはまりやすく、学習性無力感になると考えられます。
2 やる気や達成感に関係する脳内物質のドーパミン・アドレナリン・セロトニンは睡眠中に調整されます。そのため、睡眠時間が少なくなったり眠りが浅いと脳内物質の調整が不十分で、ささいなきっかけで学習性無力感に陥るといわれます。
3 幼い頃から大人の言うがままで、自分で意思決定をせずに大人になった人は、大人になっても現実の自分と向き合えず、学習性無力感に陥りやすくなります。このタイプは人生の節目(就職・結婚・子育てなど)ごとにつまずく人がいるそうです。
4 幼児期に虐待や過酷なイジメにあった、恋人や配偶者からDVを受けたなど自己否定をされ続けたことがあるタイプの方は、潜在意識で「何をしても無意味」「自分が認められることはない」などと考えているために学習性無力感に陥ります。この4番目のタイプには学習障害など発達障害の子どもたちが支援のない学習環境で苦手を強いられる状況に置かれていても同じように無力感に陥ります。
タイプ別に示しはしましたが、簡単に分けられない事も事実です。無力感が続けば生活リズムも乱れるでしょうから睡眠も不十分になる事もあります。また、環境変化に柔軟に対応しにくい自閉症圏の方なら1番も関係しやすいし、過集中のADHD圏の方なら2番もあてはまるというように発達障害の方はこの学習性無力感にハイリスクで陥りやすいということです。

回復の手立ては簡単ではありませんが、確実に達成可能な小さな目標を持たせ、一歩ずつ少しずつ実行させていくことです。本人に「できることがある」ということを認識させることで、自己肯定感を強めます。これを繰り返していくことで自己肯定感を持たせ、自信を取り戻してもらうことで学習性無力感を改善することができます。周囲にはサボっているように見えていても本人は一生懸命闘っているので「がんばれ」は激励にはならないので、温かく見守ることが大事です。

自閉症圏の方をはじめとする完璧主義タイプはすべてのことに対して100%を求めます。考え方として「70%達成できれば合格」と大人が誘導することで、「ほどほどの感覚」を学んでもらいます。
「何がしたいのかわからない」という悩みを持っている人は今後の目標を考えることが苦手です。今後の目標もなく学習や仕事に向き合っていればいつか行き詰まります。目標を持って学習や仕事に向き合ってもらうために、好きなことを実現する短期中期の目標や見通しを構築する支援をしましょう。
やる気や達成感の源である脳内物質のドーパミン・アドレナリン・セロトニンは睡眠によって調整されるので、睡眠時間を確保する手立てが必要です。最初は薬の力を借りて睡眠をしっかりとり生活リズムを整えることも可能なので、医師に相談してみましょう。

学習性無力感の原因は完璧主義、生活の乱れ、目標の未確立、つらい経験の4タイプがあります。また、学習性無力感になると意欲が低下して挨拶や発言をしなくなり、周囲からだらだらしていてサボっているように見えます。学習性無力感の人には、叱咤や激励よりも成功体験を積み重ねられるように工夫し支援しましょう。

プログラミング教育

2020年から小学校でプログラミング教育の必修化が発表されました。
プログラミング教育の必修化を推進する背景として、Webエンジニアをはじめとする情報技術(IT)者の人材不足があります。調査によると、2020年に37万人、2030年には79万人のIT人材が不足すると予測しています
2015年に総務省の調査研究によると、2013年以降から子ども向けのプログラミング教室が増えているそうです。
そして、IT人材の不足に対応するため、総務省は2025年までにIT人材を新たに100万人育成する方針を発表しており、プログラミング教育が推進されています。保護者の反応としては、プログラミングを実際に勉強した人はプログラミング教育の必修化に賛成し、自分の子どもにもプログラミングを勉強させたいと思っているようです。
このブログでも書きましたが、マインクラフトもプログラミング教育として役立つと掲載しましたが、他にも実際にロボットを動かしたりと様々な企業が参入して面白い教材を開発しています。少なくない放デイの事業所もマインクラフトやプログラミング教育を導入しています。今後10~20年で、私たちの知っている半分の職種がAIで動く機械にとってかわられ、新しい職種が生まれるといいます。私たち大人も産業再構成に柔軟に対応していく必要がありそうです。