すてっぷ・じゃんぷ日記

「『よせて』って言えたよ!」

 小学生のUくんは5月からすてっぷに通い始め、3か月ほど経ちました。緊張も解けてきたのか、だんだんとUくんらしさが見られるようになってきました。

 先日は小学校グループが2つに分かれて、Uくんのグループは公園に行ってきました。もう一つのグループはボードゲームを終えて一足先に休憩へ。休憩時間はテレビゲームをすると言っていたUくんでしたが、公園から帰ってきたところに、先に休憩していた友だちがしているタブレットが目に入り、「タブレットがしたい!」と気持ちが変わったようです。ところが自分が続きをしたかったタブレットはすでに友だちが使 っていました。するとUくんは「なんでできないの」と泣き出してしまいました。

 実はUくん、すてっぷの過ごしの中で、要求が叶わないと思うと声を上げて泣き、適切に要求することが難しいという姿が見られます。このときも職員が「友だちがテレビゲームをするのはどう?」と提案すると、Uくんは「する」と答えました。切り替えはできたUくんでしたが、「じゃあ(先にゲーム機の準備をしている)友だちに『寄せて』とお願いしに行こう」と言われると、「できない!」とより大きな声で泣きだしました。

 大きな声で泣いていると、自分から動かなくても、要求が叶ったという経験があったのかもしれません。Uくんは自分から伝えに行くという行動に拒否感を示します。そこで職員は、Uくんをゲーム機が見えない場所に誘導し、カームダウンの時間を取りました。「落ち着いたらおいで。いっしょに伝えに行こう」と声をかけると、しばらく泣いていたUくんでしたが、泣き止んで職員のところにやってきました。1回目はいっしょに行くのを嫌がり、またカームダウンエリアに戻りましたが、2回目はすっと職員と一緒に友だちのところへ行きました。そして「どうしたらいい?」と職員に尋ねました。職員が用意していたメモ(『よせて』と書いていました)を見ながら、テレビゲームの手を止めUくんの方に向いてくれていた友だち(事前にお願いしていました)にUくんは見事!「よせて」と言うことができました。

 無事成功体験で終えられたUくん。このときばかりと職員も大いにほめました。子どものネガティブな行動に大人が反応すると、ネガティブな行動がより増長する場合があります。このときはUくんのポジティブな行動(落ち着いた状態で自分から友だちのところに行こうとしたところ)に注目して支援したことで、成功体験に繋げられたのだと思います。

 帰る時間になり、テレビゲームを終えようとした時も、「まだしたかったのに」と切り替えづらかったUくんですが、帰りの車で職員に「次は最初から(よせてと)言う」と落ち着いて伝えられました。自分から『次はこうしよう』と気づくことができたUくん。少しずつ成長しています。