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みんなちがってみんないい

その2:行動障害に有効な支援

上の図は、行動障害の人の支援を説明するのに定番で使われている資料です。有効な支援ベスト3は、1構造化支援・2コミュニケーション支援・3薬物療法です。やっかいなのは4番のキーパーソン(信頼できる人)ですが、大変曖昧な表現です。信頼できる人とはあくまで本人が決めるのです。信頼できる人とは、上位二つの支援を当たり前のように自然に支援してくれる人は必ず含まれているはずです。見通しのある環境を準備し、本人の伝えられる方法で言いたいことを聞いて周囲と折り合いをつけてくれる人がキーパーソンの条件だと思います。この二つのサポートを抜きにして、自分は信頼されているという支援者がいればそれは根拠のない妄想でしかないと思います。

しかも8割以上の有効票を得た上位2つと比べれば5割ですから、有効半分無効半分です。良いキーパーソンに当たるか当たらないかは裏表の賭けと同じ結果とも言えます。この結果からどうすれば行動障害が予防できるのかは明確です。そして行動障害の原因は何か次回に考えていきます。

その3:二つのコミュニケーション

行動障害の予防には原因を正確につかむことが必要です。この図は障害による二つのコミュニケーションの障害が行動障害の直接原因だとしています。そして環境要因としてのモノ・ヒト・コトが掛け合わされて長い年月をかけて積みあがり行動障害が形成されます。

さて二つのコミュニケーションと書きましたが、このブログをお読みの方はもうお分かりだと思います。

そうです。理解コミュニケーションと表出コミュニケーションの二つです。最近は、理解コミュニケーションは構造化支援や視覚化でずいぶん取り入れられるようにはなってきました。昔は絵カードなんて社会では使えないからと平気で言う方がおられましたが、さすがに影を潜めました。障害のない人でも記憶が定かでなかったり、すべてを知っているわけではないので書いてあるものを頼りにするのだから、聴覚入力や記憶がさらに弱い人なら視覚支援は当たり前だということがやっと広まってきたからです。

例えば以下の経験のない人がいるでしょうか。みんな物事を理解するために、忘れないために視覚支援という情報に大半頼っているのです。(1)カレンダーに予定を書き込んで、忘れないようにしていいる人。(2)《すべきこと》のリストを作って、机や冷蔵庫に貼っている人。(3)何がほしいかを伝えるときに、広告やメニューの写真を指さしたことがある人。(4)買い物に出かける前に、買い物リストを作る人。(5)「列に並んで下さい」、「入口・出口」などの標識を見たことがある人。(6)料理本のレシピを見ながら、食事を作ったことがあり、その料理を作る度に、そのレシピを繰り返す人。(7)家族への伝言を、メモに書いておく人。(8)レストランで注文を決めるとき、メニューに目を通す人。(9)子どもが歯磨きを忘れないように、チェックリストを作った人。(10)やるべきことを思い出すために、付箋紙に書いて鏡や玄関ドアに貼ったことがある人。(11)《イラスト入り組み立て説明書》を見ながら、買ってきた家具などを組み立てたことがある人。(12) 電車やバスに乗るときに、時刻表や接近情報を見る人。(13) 車を運転するときに、様々な道路標識や交通信号を見る人。(14) 新幹線や映画館で指定席に座るとき、座席の番号を切符を見て確認する人。(15) スーパーなどで買い物するとき、値札を見て買うかどうか考える人。あげだすときりがありません。理解コミュニケーションに障害があれば、もっと丁寧に支援するのは当たり前だと思います。

二つ目のコミュニケーションは最も大事なコミュニケーションです。表出のコミュニケーションです。どんなに周りのことや大人の言うことが理解できても、何も伝えることができないとすればあなたならどんな気持になると思いますか?それが毎日毎日です。永遠にその感じが続くとすればどうでしょうか?周囲のことが少々理解できなくても、自分から伝えることができれば大体のことは解決できると思いませんか?

明日は表出のコミュニケーション障害と行動障害について考えてみます。

その4:表出のコミュニケーション

前回の二つのコミュニケーションで重要なのは表出のコミュニケーションだと述べました。ただ、表出のコミュニケーションと言えども誰にでも伝わるものでなければ役に立ちません。また、自発的に使えないと肝心な時に役に立ちません。

言葉での表出は、発声機能に問題がないこと、言語処理機能に問題がないこと、聴覚的短期記憶や長期記憶に問題がないことが前提です。身振りはどうでしょう?身振りはそのサインを模倣できる力や相手にもそのサインが何をさすかがわかる必要があります。絵や写真はどうでしょう?相手にものを渡せる機能と、絵が現物を表現する方法だと分かればだれでも使えますし、誰でも伝わります。つまり、意思伝達に絵カード表現は最短距離で到達できるということです。

二つ目に大事なことは、表出コミュニケーションの自発性を獲得していることです。私たちは用もなく話しかけることはほとんどありません。必ず目的があります。ところが、行動障害の方は、相手に自分から情報を与えて目的をかなえる、「自発的」な表出コミュニケーションが困難な方がほとんどなのです。

また、日常相手が黙っていると「どうしたの?」と私たちは声を掛けます。「どうしたの?」は、「何か欲しいの?」「どこか痛いの?」「何か気分が悪いの?」「何か困っているの?」「何か助けがいるの?」等の意味です。自発的な表出に困難がある人は、「どうしたの」が聞かれなければ何も表出(言えない・身振りできない・カードが示せない)人が多いのです。中には何か言ってほしそうにじっと相手の顔を見つめる人もいます。これが「指示待ち」です。つまり「どうしたの?」や「~してね」を待っているのです。

相手が自分に話しかけたり相手が自分にはたらきかけたりして、初めて伝えるもの、初めて行動を起こすものという理解をしている方が大変多いのです。この状況を想像してみてください。自分の要求を叶えるために相手が自分に話しかけてくれるのを四六時中ずっと相手の様子を見守り待つのです。万が一、話しかけてくれたにしても表出スキルが低くかったり相手の理解力が低かったりして上手く伝えられなかったらまた待つのです。実力行使する行動障害の人たちの気持ちが分かります。

適切な意思伝達は自分から起こすものだということを理解してもらうには、適切なコミュケーションスキルで意思伝達ができ要求が叶ったという経験を蓄積するしか方法がありません。日常場面では、スキルを教えるよりこの自発性を教える方がはるかに難しいと感じています。それはある程度のコミュニケーションの成功体験の回数が必要だからです。その人にもよりますが、1日100回を超えなくては文字通り話にならないと思います。つまりその人が便利だと気がつくまで生活のあらゆる場面で経験が蓄積される必要があります。

その5:丁寧にひとつずつ

私たちは表出言語を教えられた経験はありません。自然に覚えたからです。行動障害を起こしていたりその可能性のある方に表出のコミュニケーションを教えるにも自分の経験がないのです。人は自分の経験にないことを習得するにはそれなりの時間がかかります。スポーツの経験のある方や習い事をされた方ならわかると思います。さらに、人に教えられるようになるには普通にできる人より深く広く熟知する時間が必要です。

サイン言語の研修会やPECSの研修会に行って少し職場でやってみたけど子どもがうまく反応してくれなかったり成果が出なかったりして、周囲からもなんとなく疎まれている感じがしてあきらめてしまう支援者は少なくないと思います。成功している方は、家庭でも現場でも長く粘り強く取り組んでいる方です。人の発達を考えても、自発のコミュニケーションの基礎が完成するまでに10か月から18か月かかるのです。焦りは禁物です。あの手この手の工夫も必要です。

子どもが自発の表出コミュニケーションの扉を開けると驚くような速さで表出コミュニケーションを吸収していくのも事実です。言葉の獲得まで進む方もいます。言葉があったけれどもうまく使えなかった人も適切に会話ができるようになる人もいます。

この道のりを試行錯誤で切り拓いたのは100年前のヘレンケラーとサリバン先生。今日、表出コミュニケーション支援が最も体系化されエビデンス(科学的根拠)が確認されている方法は、PECS以外に私たちは知りません。ただPECSも細部にわたって万能ではないし人はみな個性があり違います。一番大事なことはその人が好きなことをたくさん知っていることです。先にも述べたように私たちは表出のコミュニケーションを「教えられた」経験はありません。だから私たちも表出のコミュニケーションの学習者です。行動障害を予防し強度行動障害を軽減するコミュニケーション支援は、子どもたちに並走しながら地道に学んで伝えて、一歩一歩進むことが大事だと思うのです。

その6:虐待防止

行動障害の原因や支援方法を理解をしていないと虐待の可能性が高くなります。今回は虐待防止について考えてみます。
2012年から始まった障害者虐待防止法の最後に「養護者に対する支援等に関する施策を促進」と書かれています。また、「養護者に対する支援」という部分では、家族など養護者の虐待について触れています。家族は、もちろん愛情をもって育てていますが、介護している人の中には大きなストレスを抱えていたり、相談できる人が周りにおらず追い込まれた状態にある人がいます。これらが原因であることが多いので、虐待までに発展しないように、家族などの養護者を支援していく事が必要としています。
また、虐待が起こってしまった場合には、なるべく早く小さいうちに見つけて、虐待がエスカレートする前に被害を防いでいくことが重要です。そこで、法律の中でも早期発見・早期対応ということが重視されています。

虐待の類型は養護者・職員・使用者と分けて書かれています。

〔養護者による虐待の5つの類型〕
①身体的虐待:障害者の身体に外傷が生じ、若しくは生じるおそれのある暴行を加え、または正当な理由なく障害者の身体を拘束すること。②性的虐待:障害者にわいせつな行為をすることまたは障害者をしてわいせつな行為をさせること。③心理的虐待:障害者に対する著しい暴言または著しく拒絶的な対応その他の障害者に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。④放棄・放置:障害者を衰弱させるような著しい減食または長時間の放置、養護者以外の同居人による①から③までに掲げる行為と同様の行為の放置等養護を著しく怠ること。⑤経済的虐待:養護者または障害者の親族が当該障害者の財産を不当に処分すること。その他当該障害者から不当に財産上の利益を得ること。

〔施設・事業所(職員)における虐待の5つの類型〕
①身体的虐待②性的虐待⑤経済的虐待は養護者と同じです。③心理的虐待では、「~不当な差別的な言動」が加筆されます。④放棄・放置では、「他の利用者による①から③までに掲げる行為と同様の行為の放置その他の障害者を養護すべき職務上の義務を著しく怠ること。」が加わります。

〔使用者による虐待の5つの類型〕
①身体的虐待②性的虐待⑤経済的虐待は養護者と同じで、③心理的虐待は、職員と同じです。④放棄・放任では、「養護者以外の同居人」や「他の利用者による」となっていたところが、「~ほかの労働者による」とし、同僚・上司・部下などからの身体的、性的、心理的な虐待が起こっていることを容認したり見過ごすことが書かれています。この使用者による虐待については、障害児童も高齢の障害のある人もこの虐待防止法が適用されることになっています。

〔事業所での身体拘束・行動制限について〕
本人を落ち着かせるためにとか、周りへの影響を考えてなどの理由で本人の行動を抑制することが、本人にとってはマイナスになってしまう可能性があることや、倫理的な部分で問題になってくることがあります。障害特性などをしっかりと理解し、できる限り支援方法の共有化やマニュアル化などによって行動障害が起こってしまう前に、適切に支援することが大事です。身体拘束については、切迫性、非代替性、一時性の3要件すべてを満たすことが必要です。ただ、身体プロンプト(スキル獲得のための身体誘導で、徐々に消去していく行動支援)と身体拘束は全く違うものですから支援の専門家は行動支援の手法について良く学習をすることが必要です。
「問題行動」に対処するために、身体的虐待に該当するような行動制限を繰り返していると、本人の自尊心は傷つき、抑えつける職員や抑えつけられた場面に対して恐怖や不安を強く感じるようになります。人や場面に対しての誤った学習を繰り返した結果、さらに強い「問題行動」につながり、さらに強い行動制限を行うという悪循環に陥ります。行動障害に対する知識と支援技術を学び、支援をマニュアル化することなどによって職員全体で共有し、行動制限の廃止に向けて取り組むことが施設・事業所での障害者虐待を防止することにつながると共に、支援の質の向上にもつながります。

子どもの呼称

福祉の関係者の中には、「~ちゃん」「~くん」と呼ぶことを、人権侵害または人権侵害への傾きがあるとする見解を持つ人がいます。呼称は、そのように単純な問題ではありません。こういう指摘に対して、現場の支援者が納得できない気持ちは理解できますが、ちゃん付けが正しいわけでもありません。

呼称の問題を単純化する悪弊は、自治体職員や福祉支援者に地域住民・利用者を「お客様」と呼ばせることや、学校教育における児童生徒の男女差別を解消するための手立てとして、男女すべてを「~さん」に統一して呼ぶとするなどがあります。「お客様」は消費者主権主義にもとづくビジネスモデルにおける呼称ですから、ビジネスモデルに包摂されない地域住民やサービス利用者は、行政の主権者ではありますが金銭とサービスを交換する「お客様」とは違います。敬意をもって丁寧に接することと、お客様扱いは意味が違います。学校における「~さん」への呼称の統一というのは、差別事案を具体的にとらえて克服していこうとするのではなく、呼称の統一によって「性区別なく公平に扱っていますよ」、「君付けは上から目線だから使いません」というのは、アリバイ工作程度にしか感じないのです。だからと言って、これが全部間違いだというのも逆のステレオタイプのような気がします。もう少し呼称や敬称の問題の本質をつかんだ上で、プロとしての流儀を明確にしたいと思うからここで取り上げてみたのです。

福祉的支援における呼称の問題は、サービスの種類で区別して考える必要があります。一つは施設入所支援やグループホームのように親密圏を構成する支援サービスの中で、支援者と利用者が取り結ぶ関係性にふさわしい呼称の場合です。もう一つは、就労継続支援や就労移行支援に代表されるような、公共圏において支援するか、「公共圏に向けて」支援する時空間において支援者と利用者が取り結ぶ関係性にふさわしい呼称です。だから、この場合は呼び捨てにしたり「~ちゃん」はあり得ません。

親密圏における呼称は、関係当事者の同意に従ったいかなる呼称も、公序良俗に反しない限り、人権侵害には該当しません。ただ、支援者の優位性をテコに利用者を「子ども扱い」して呼び捨てにしたり「~ちゃん」と呼称するのは論外です。しかし、この問題の本質は呼称にあるのではなく「子ども扱い」することに人権侵害の根幹があるのです。関係者の相互了解さえあれば多様な呼称が容認されてもいいのかもしれません。ただ、利用者が施設やグループホームから地域社会のさまざまな活動(就労、買い物、外出、友人との仲間活動等)に参加する場面で呼び捨てや「~ちゃん」を使用し続けることは、人権侵害につながる問題をはらんでいます。地域社会における一般市民の受けとめ方の中に障害のある人に対する「子ども扱い」や特別視を助長しかねないからです。

「~ちゃん」の呼称が、いつの間にか人権侵害につながる恐れがあるという指摘は、呼称の問題が本質なのではありません。親密圏そのものがはらむ「割り切れないリスク」に問題の本質があります。親密圏における「暮らしの中の人権侵害」の問題には立ち入らず、呼称という表面的な問題で片づけているとも言えます。障害のある人が親密圏と公共圏のそれぞれにおいて、難しさを感じることなく、もっとも活き活きと周囲の人たちとの関係をゆたかに取り結べるための呼称を、ケース・バイ・ケースで考えるべきかもしれません。ただ、言霊文化を重んじる日本では、声に発した言葉が、相手にも自分にも良くも悪くも影響を与えると言われてきました。敬語や呼称敬称によってその関係性を持続させるという考え方は行動科学としては理にかなっており、あながち否定できるものでもありません。

そこで、児童サービスの場合も同じ課題が浮かび上がります。支援者が子どもを名前呼びにしたり、ちゃんづけしたりするのは良くあります。特別支援の必要な子どもの場合は日常茶飯といっていいかもしれません。しかし、ここにも親密圏と公共圏、もしくは公共圏に向けた支援かどうかということが問われます。中学高校生の利用者に「~ちゃん」と呼びかけた声を、同じ場所で小学生が聞いているという状況に、あまりにも鈍感ではなかったかと思うのです。子どもへの支援者の言動は子どもの言動に乗移っていきます。家族以外からいくつになっても「~ちゃん」と呼びかけられている子どもに、公共圏での自尊感情は担保されるのでしょうか。また支援者自身がそのことを意識できるのでしょうか。さん付け君付けだけで、子どもに敬意を払うことができるわけではありません。そのことを深く理解していること、それがプロとしての流儀と言えるのかもしれません。

 

気象病

「う~ん15時から降水率60%か~ビミョ~」今日は雨が降るかどうか、梅雨の時期だからこそ外で遊ばせたいスタッフは、ヤフー天気予報といつもにらめっこしています。ところで、季節の変わり目に体調変化や気分変動があるように、気圧が下がると体調が乱れ、片頭痛や関節痛、耳鳴りなどの症状が悪化する「気象病」はご存じでしょうか。季節の変わり目と同じように自律神経のバランスの乱れが関係するそうです。

気圧の低下によって悪化する症状の多くは、自律神経のバランスの乱れが関わっています。春先や秋口などの季節の変わり目や、梅雨時の低気圧接近による気圧の低下で、以下のような症状が悪化することがあると考えられています。

①片頭痛:片頭痛のはっきりとした原因は不明ですが、血管の拡張によって痛みが生じることが知られています。過労や環境の変化などによるストレスとともに、気温や気圧の急激な変化も、痛みの引き金となります。②関節痛:気圧が下がり、相対的に体内の圧力が上がることで、関節まわりの炎症部分が圧迫されます。また、気圧の低下による血流の増加で、自律神経の痛みに対する過敏性が高まると考えられています。③めまい:気圧の低下により相対的に耳の内部の圧力が高まることで、耳の内部にある器官(蝸牛や三半規管)から内リンパ液という液体が漏れだすことで、回転性めまい(ぐるぐると回っているような感覚になるタイプのめまい)が悪化します。④耳鳴り:気圧の低下により、相対的に耳の内部の圧力が高まることで起きます。エレベーターで高層階に行くときに耳鳴りが起きるのと、同じ仕組みです。⑤過敏性腸症候群(IBS):主にストレスによって胃腸の調子が悪くなる状態で、便秘型・下痢型・混合型に分類されます。低気圧が日本に近づく春先や秋口になると、自律神経のバランスが乱れ、症状が起きやすくなります。⑥精神関連:自律神経失調症、パニック障害、うつ病、統合失調症、不安障害などの精神疾患は、自律神経のバランスの乱れを招く気圧の低下によって、悪化しやすいと言われています。尚、昔は喘息も低気圧と関係すると言われてきましたが、最近の研究によると気圧変化か心理変化かどちらかはっきりとは言えないそうです。

それぞれの症状の悪化は、気象状況の影響かどうかに関わらず、医療機関を受診して、適切な治療を行うことが何よりも大切です。治療に加えて、日頃から予防するには、自律神経のバランスを整えるトレーニングも有効です。
●ウォーキングなど適度な運動を行い全身の血行を改善する。●栄養(繊維質タンパク質)がとれる食事と、規則正しい時間に食事をして代謝を整える。●シャワーではなくぬるい湯船にゆっくりつかって汗をかきリラクゼーションする。●就寝する2時間前以降はインターネットやゲームを禁止して快眠を得て生活リズムを整える。●小集団でのレクリエーションや軽作業など計画的に軽いストレスに慣れる。
要するに、自律神経系に働きかける、運動や食や温度管理や、過剰な視覚ストレスを避けつつ日常的に調節できる範囲で仕事や勉学の負荷をかけることです。放デイにできることは、雨の隙間を縫ってみんなで体を動かすことだという事です。

 

子どもへの診断告知

子どもに自分の障害について早い時期から告知していくことは必要なことだと言われています。ただ、診断名だけを告知しても、障害受容はできません。近視を説明するのに近視だというだけでなくメガネやコンタクトを装着させることで、なるほどと思わせるような支援の有効性とセットで教える必要があります。告知は子どもに諦めさせたり大人に従わせたりするためではありません。それでは診断名を否定的なものと考えてしまいます。診断名を知っても苦手なものは苦手です。子どもの苦手な理由を聞いて支援策を考えることが大事です。困難な状況であっても具体的支援で乗り越えるしかないのです。告知で何とかなるという発想は、治療方針を示さず当事者が聞いたこともない病名を告げて患者が安心すると言っているのと同じことです。「ADHDだから気をつけろ」とだけの注意は具体的な助言ではありません。これは「多動で不注意だから注意しろ」と言っているのに過ぎません。どうすれば集中できるのか、失敗をどうリカバリするのかを具体的に教える必要があるのです。

A病院では自閉傾向、BセンターではLD。C心理士はADHDと、結局のところよく分からないままでは、子どもに伝えようがありません。診断や評価は支援のためにあります。逆に言えば支援に結びつかない診断や評価は価値の低いものでレッテル貼りです。支援内容が具体的に出てこない診断名だけの診断・評価では、やればできると子どもに思わせるのは無理です。最初に、得手・不得手とその理由(見方・考え方のクセ)を具体的に見きわめます。子どもの見方・考え方のクセは、親にはあまりにも身近すぎて見えにくいです。子どもの考え方のクセを教えてほしいと事前にはっきりと伝えて、医療機関・療育機関・教育機関での評価を利用してみましょう。

子どもへの告知(医学心理学教育)の最も重要な部分は診断名を伝えなくてもできます。特性に合わせた具体的支援から始めるのです。親の判断はLDだったけれど医学診断は軽度精神遅滞だった、親の判断はADHDだったけれど医学診断は自閉症だった、ということは良くあります。子どもに診断名を伝えた後で修正の必要が生じると親子ともども混乱します。診断名を子どもに伝えるのは熟練した専門家の判断を受けてから行います。

赤ちゃんは、誰に強制されたわけでもないのに毎日努力を続けて這い立ち歩行へと進んでいきます。子どもというのは、本来、誰に言われなくても前へ進んでいきます。大人が邪魔し続けて、前に進むことへの希望を奪わなければ前へ進むのです。子どもが診断名を言い訳のように使うとしたら、その子は言い訳をする以外に自分の心を守る方法を手に入れていないのかもしれません。子どもにも達成可能な、人からも歓迎される具体的な方法を教えてあげてください。子どもの意欲を引き出すのは説得ではなく達成感です。

ASDやADHDは病気ではありませんから、治す必要はありません。でもそのために不都合が生じないための工夫や努力は大切です。でも最も大事なことは、子どもたちに何かの技術を教えるのは、子どもたちのやり方は間違いだから正しいやり方を教えるのではないということです。ASDが人口の99%を占める世界があったなら、研修の参加者が「187名が主催者発表でした」ではなく「まぁ200くらい?」なんて平然と表現する曖昧さや、「会話は、興味なくても相手に注目して、キャッチボールのように話す」という変なこだわりは、きっとASDの皆さんにあきれられてしまうでしょう。私たちの教えているのは「多数派のやり方」です。ASDの皆さんの感じ方も一つの真実だけど、みんなの暮らしやすさのために多数派のやり方に合わせるワザを使って欲しいということです。この続きは明日。

その2:特性は長所でもある

支援者が子どもに伝えるべき事柄は個々の具体的な困難への対処方法です。それは子どもが実践可能で、効果的でなくてはなりません。手助けと自分の工夫で、毎日の暮らしが安定する!嫌なこと・困ることも、やりようで変えていける!こうした経験を子どもにもたせてから告知は始まります。自閉症の特性は不都合の原因となる場合も多いものですが、人間としての長所でもあります。興味が偏る裏返しは、好きなものには集中でき探究心も高いところが長所です。自分の特性は長所でもあると告知の前に伝えて置くべきことです。叱られてばかりの暮らしの中で取ってつけたように誉められても子どもはそれを信じられません。「自分の特性は長所でもある」という認識は「やりようはある」という実感と不即不離のものです。

やりようはあるという実感・長所でもあるという実感を、毎日の生活の中で、個々の具体的事柄に関して積み重ねていくこの第一段階が、子どもへの告知の基盤です。これを子どもに充分に経験させるには支援者に技術力が必要です。この段階では診断名の告知は必要ではありません。この具体的対応を教える段階を充分に経験しているか否かが、告知が支援となるか、意味のない宣告となるかの分かれ目です。

親だからわが子に合った育児ができるなんて絶対にありません。子どもが自分の良さを発揮するために特別な工夫を必要としているように、特別な工夫を必要とする子どもを育てる親にも特別な工夫が必要です。子どもがその工夫のために支援者を必要としているように、親もまた支援者を必要としています。自閉症協会や親の会、保健所や発達障害支援センター、或いは発達障害の知見に詳しい地域の福祉事業所にも連絡を取ってみることをお勧めします。学校にも相談部門がありますから聞いてみましょう。ただし、担当者によって腕が違うのは病院やいろんな技術職と同じで、ある意味当たり前のことです。親同士の情報も参考にしましょう。この続きは明日。

その3:告知のタイミング

告知はとても個別性が高いものです。子どもの支援・親の支援・生活学習環境等を検討して方法を探ります。診断名告知に積極的に取り組んでいる専門家の中でも、どの時期が良いのかは様々です。幼児期からできるだけ早く診断名告知をしたほうがいいという専門家もいれば、問題が噴出しているときこそ診断名告知の好機だという専門家もいます。つまり、答えはなく、それぞれの対象の子どもの状況や環境、専門家のポジションやその背景によっても違うのです。これも必ずというわけではないないですが、前回述べたように支援の効果を子どもが知っていることは告知の理解には有利だという事です。だからといって、場合によっては詳しい告知から入った方が効果が上がる人もいます。

子どもへの診断名告知の判断を親だけが引き受けていくというのはとても荷の重い作業です。必ず医師や心理士、教育関係者等専門家のサポータを作ってから始めます。また文字情報を処理する能力が相応に高い子どもで、診断名に関してもしかしたら既に知っているのかもしれないと思われる場合や混乱なく受け止めるだろうと予測される場合には、ASDの子どもたちは自分のペースで文字情報を手がかりに情報処理をしたほうが理解も納得もしやすいので診断告知に関する書籍を与えて予習してもらうことも有効です。想像力の問題のために一度思い込んだ事柄を修正するのが苦手な子どもたちなので、その意味でもひとりでじっくりと情報で吟味することが有効な場合も多いからです。書籍を渡してもらう場合には、今、目の前で読めと迫ることはしないで、自分のペースで情報処理するようにゆったりと構えて取り組みましょう。また情報を渡す際には、後ろ向きな感想も含めいろいろのことを思ったり話し合ったりすることは大事だと必ず伝えていくことが必要です。

また、告知は1回で済むものではなく、サポーターが協力して少しづつ違う角度から複数回行います。また節目節目にバージョンアップもして伝えていくものです。ここまで読んでお分かりの方も多いかと思うのですが、子どもへの発達障害の告知とは、医師の特権行為というより子どもへの教育なのです。子どもが一つ一つ自分について知っていくプロセスを支援することが大事だからです。これを心理学的医学教育といいます。

ここまで書いたことは、日本のASD告知のオーソリティーでもある吉田友子医師のホームページを参照しています。書籍資料や講演会情報などアクセスしてみてください。http://i-pec.jp/