すてっぷ・じゃんぷ日記

子どもの学びを支える親の会「すぷらうと」訪問記

困り感を持つ子どもの保護者のピアカウンセリング・サークル

子どもの学びを支える親の会「すぷらうと」6/12訪問記

日曜の朝10時、公民館に三々五々にお母さんたちが集まってきました。参加者は会長の山木さんら8人のお母さんたちとゲストの私たち2名です。最初は子育てに関わる公民館活動の報告がありました。その後、私たちの自己紹介と訪問の経緯を話しました。

放デイを経営している私たちのNPOでは、発達性読み書き障害に特化した支援が地域に必要だと感じ、専門支援の児童発達・放デイ「学びの広場じゃんぷ」を昨年秋に新たに開設。職員は特別支援教育や発達障害支援の出身で、学習障害の子どもや通級教員とのやり取りは多いが、乙訓の保護者と情報交換した経験は少なく、学習障害児の親の思いを知る機会を得たいと考えてきた。そんな時に新聞記事(学習障害抱える児童、タブレット支えに無事卒業: 04/03)で地元に学習障害児の親の活動があると知った。たまたま「すぷらうと」のアドバイスをしている坂根先生が教員時代の仲間だったので早速取次をお願いした。という経緯を話しました。

それから、参加された全てのお母さんから子どもたちの様子を聞かせてもらいました。みなさんとても話し上手で、何度もここで話されていることが良くわかりました。小学2年から中学高校生までの子どもたちとお母さんたちのこれまでの経験や苦労を聞きました。みなさんお話になるのは特支級入級時の様々な葛藤でした。そして、一堂にお話になるのは、登校渋りなどはなくなって今は安定しているが、落ち着けばそれいいのだろうかという悩みでした。

発達障害のある子どもたちの支援級への入級のほとんどの理由は、登校渋りなど通常学級での不適応からです。中には積極的に特別支援学級入級を希望する山木さんのご家族のような場合もありますが、多くは入級希望をしたわけではないが、子どもの安心できる居場所を作らなければ何も始まらなかったというのが共通の思いのようです。けれども、親の気持ちの中では釈然としない思いもあり、それを受け止めてくれるのが「すぷらうと」の一番大きな役割のように思いました。入級した後もその思いは進化と深化を続けており、一人で背負うには重すぎる思いが、聞いてもらう事で整理がつくこともあると言われます。

私たちも保護者支援で特に必要だと感じているのが、保護者同士のピアカウンセリング(以降略称「ピアカン」)です。しかし、放デイや学校職員の仕事の中心は子どもに対する支援です。よく、放デイや学校でピアカンを推奨する先進事例が紹介されたりしますが、ピアカンは当事者である親同士の営みですから、それを第3者が組織するのは簡単ではありません。親同士の自発的なものとは言うけれど、持続性のあるものを作るには必要な条件があります。

ピアカンを実施するには、ある程度の発達障害の基礎知識や、ピアカンのカウンセリングマインドが必要です。参加者の序列化などが生じて苦痛なものにならないように、これを支援するコーディネーターの存在も欠かせません。様々な条件をクリアするには、一事業者では難しく、「すぷらうと」のような自助団体が乙訓に立ち上がるのを待つしかないなと思って半ばあきらめていました。

ところが、「すぷらうと」は2016年すでにに立ち上がり5年間も長岡京市で活動を積み重ねておられたのです。山木さんの御長男が小学1年(現在中1)の時、ひらがなが全く覚えられず、親が必死になって手を押さえ、姿勢を正させて「鬼の仕打ち」をしていた時期があったそうです。全く効果が上がらず、別の方法を探して情報を集め、診断を受けたら、発達障害の一つで、読み書きが苦手な「学習障害」とわかりました。これは、親1人が「鬼」になるくらいでは解決できる問題じゃないと思ったそうです。そして、何より思いが共有できる仲間がほしかったのでこの会を作ったと言われます。

毎月の会合は、講師を招いた勉強会と、参加する親同士の情報交換会です。会を続けて課題に感じているのは、発達障害の理解を周囲にどう広げるかです。多動で、不注意で、姿勢が悪い我が子について、他の保護者から叱って正すように求められることも少なくないそうです。聴覚や感覚の過敏性。普通には見えない行動にも意味があるので目を向けてほしい。同じ家族の中ですら意見が異なったり、「何も問題ない」「大丈夫」と気休めの言葉に心が折たりする時もあるけど、思いを分かち合って前向くことで新しい絆を作ってきた「すぷらうと」は、この地域になくてはならない存在になっています。

この会の後、山木さんにインタビューをするのですが、話が盛り上がり過ぎて書ききれないので、機会を見てまた掲載したいと思います。今回の障害福祉等報酬改定でペアトレを児童発達や放デイで実施するように保護者1名800円程度のグループ相談加算が報酬に新設されました。ペアレントトレーニングを契機にして、高まり合った親同士でピアカンが始まれば、持続可能性が高いことは様々な調査研究で分かっています。「すぷらうと」のような自助団体が地域にあれば、ピアカンを求める親の居場所にもなっていきます。一事業所、一団体の力は小さいですが、お互いが連携しあい、共通の思いを束ねることができれば大きな力になっていくと思います。

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