すてっぷ・じゃんぷ日記

「リクエストは『ハッピーバースデイ』だね」

 支援学校高等部のHくんは音の鳴るおもちゃが大好きです。特に好きなのが、音の出る絵本。ボタンを押すと、様々な楽曲が鳴ったり、ものによっては鍵盤がついていて、押した音階の音が出るようになったりしてします。Hくんはそれを耳に当てながら、ボタンの位置も覚えているようで、ボタンを見ずに押して、曲を変えながら楽しんでいます。すてっぷには音の出る絵本が6種類くらいあるのですが、Hくんはそれぞれの写真を見分けて、カードで職員に「ください」と伝えます。職員が間違って違う絵本を取り出しても、以前のように怒るように激しく拒否するのではなく、手でそっと押しのけて「違う」と伝えられるようになりました。

 Hくんは、3年ほど前まで、自発的なコミュニケーションと言えば、実物を手に取ることが結果的に要求だったり、座り込むことが結果的に拒否だったりでした。それがPECSの練習を続けることで、この1、2年でコミュニケーション能力がぐっと伸びました。今では歌の出る絵本やおやつ・ジュースなどさまざまなカードを使い分けて職員に伝えられるようになり、拒否も落ち着いて伝えられることが増えています。

 要求や拒否など自発的なコミュニケーションが増えると、職員にもチャレンジする余裕が生まれます。先日、たまたま友だちが「今日は僕の誕生日やで」と職員に言っているところに、歌絵本を持ってやってきたH君。職員がHくんに「ハッピーバースデイかけて」とお願いしてみました。職員は拒否するかな?と待ち構えていたのですが、Hくんはボタンを見ずにポチッ。「ハッピーバースデイ~トゥユ~♪」と曲が流れました。Hくんが「ハッピーバースデイ」が分かってリクエストに応えてくれたことに、職員はびっくりしながらも、いっぱい褒めました。

 他にもHくんは、半年ぶりにキーボードで遊んだときに、以前約束した通りの準備を自分ですることが出来ました。半年前の約束を覚えていたことに驚いた職員。職員側が全部準備していた3年前では気づかなかった強みを、今のHくんはいっぱい発揮しています。