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1. 要保護児童対策地域協議会

投稿日時: 2019/11/18 staff3

「児童虐待防止法」が2000(平成12)年に施行され、それ以降、様々な防止施策が講じられてきました。しかし、2013(平成25)年に公表された「第9次報告」によると、この間も保護者からの虐待により50人(親子心中を除く)近い子どもが毎年のように貴重な生命を失っていると報じられています。特に残念なことは、同報告の中に子もの人権を守る立場にある児童相談所や健全な発達を保障する立場にある保健センター等の専門機関が関与していたにも関わらず、子どもが虐待死しているという事例が数多く見られたことです。

国はこのような実態を踏まえて早期対応や早期介入等を行う児童相談所の機能強化に努めてきました。加えて、近年では児童虐待の防止に関係する連携が必要なことから、要保護児童対策地域協議会(以下「要対協」)の設置を促し、体制強化を図り設置率はほぼ100%近くになました。しかし、その要対協が関わっていながら虐待死したケース数は第9次報告によると14例、全死亡事例(54例)に対する割合は約25%を占めています。この数値は要対協の有効性について疑問を持たざるを得ない数値です。

本事業所でも、各市町の要対協のメンバーとして参加することがありますが、「誰が鈴をつけるか」と言う責任所在のはっきりしない会話が多いのが気になります。もちろん児童やその保護者との接触を日常的に持つ保育所や学校はその矢面に立ちますが、対象家族への指導権限があるのかというと何もないわけです。あくまでも、利用側とサービス提供側という関係で、子どもの支援はしますが、親を指導する立場にはありません。また、この国の法体系は、事案が生じてから動き出す仕組みで、予防的な視点が抜け落ちています。また、相談事業はあくまでも保護者が利用するもので、その押し売りはできません。「もっとも相談してほしい保護者が相談してくれない」のです。

児童虐待は、リスク要因が様々な形で複合して発生しているだけでなく、支援を阻むような要因(情報把握の凸凹など)も少なくないため、その支援が非常に難しい問題です。また対応機関である児童相談所だけでなく、地域の要対協でも職員の専門性、機関による児童虐待の認識の差異などが加わるため、支援者にとっては非常にストレスフルな問題です。調整者として職務についた行政職員はこうした状況に置かれ、自らの能力不足もあって辛い状態におかれます。

こうした状況を軽減するためには、ノウハウを持っている外部コンサルタントの力が有効です。大阪市では、行政事情を十分に認識した上で、外部コンサルタントを導入する方針をだされた。それが「SV(スーパーバーイザー=虐待事案専門相談職)の要対協への派遣事業」です。この派遣事業にはいろいろなメリットがあり成果も上がっています。さらに「地域の医師が参加できないため専門的意見が聞けない」や「法的な問題がよくわからないから不安である」といった場合、派遣されている区の担当SVがそうしたケースに対応できる専門家を呼ぶことが出来るということでも有効です。児童虐待は確かに難しい問題ですが、まったく歯が立たない問題ではありません。それは問題を解く人間の質的、量的確保や社会資源の充実で改善されるし、短期的には不足分をいかに補うかは、子どもの人権をどのように行政や地域が考えているかによって大きく変わってきます。