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1. 自分の気持ちや感情の認知

投稿日時: 2019/09/04 staff1

ASDなどの発達障害の人が、相手の気持ちや感情を理解することができない特徴はよく知られていますが、中には自分の気持ちや感情を認知することが難しい場合もあります。子どもに学校の様子を聞いても「特に」「別に」といった返事しか返してくれなかったりするのは思春期の場合は面倒くさいからですが、ASDの人たちの場合は自分の思った気持ちや感情を理解することができないためかも知れません。自分の気持ちや感情が理解できない場合には、読書感想文などの宿題が出た際にも自分の感想が無いので感想文を書くことができなかったり、書いてもあらすじだけになってしまうということはよくあります。

発達障害の子も感情が全く理解できないわけではなく、なんとなく理解したりぼんやりと感じていることはあるにですが、感情がぼんやりとわかっても、自分が「怒っている」のか、「不安」なのか、「悲しい」のか、「怖い」のか、「悔しい」のかの違いがわからず、ただ単に不快な気持ちとなって溜まってしまうと、いろいろな問題に発展する可能性があります。

自分の感情を自覚するのが難しい状況は、感情は有るがそれがどのような状況なのかを自分で理解することができないのです。ストレスを感じても気がつかなかったり、気づくまでに時間がかかってしまう為、ストレスなどが原因で発生する様々な心身症を発症しやすかったり、心身症になった際にも治るまで時間がかかってしまいます。発達障害の子どもが自分の気持ちや感情を理解するのが難しいのには、自分の行動として「楽しい」「怒る」「悲しい」などは有っても、それぞれ別の感情であったり、意味を持った気持ちだということを認識しておらず、基本的な喜怒哀楽を理解していないということも有ります。感覚が鈍感だと、外部から受けた情報を感じるのが鈍くなってしまうため、結果として感情の理解などにも影響が出るのだと言いう人もいます。

自分の気持ちや感情は、対人関係やコミュニケーションなどの社会経験から学ぶことも多いです。発達障害の子どもはコミュニケーションを初めとした様々な社会経験が少ないため、自分の気持ちや感情を意識する機会が少ないことも考えられます。不安や怒りなどの負の感情をモヤモヤと感じていても、当初は本人も気がつかなかったりあまり気にしないこともあります。しかし、何かのタイミングで自分の感情に気がつくと急に癇癪(かんしゃく)を起こしたように怒り出したり、溜まってしまった気持ちを受け止めきれずにパニックになることもあります。これらの場合は原因となった事が発生した後に自分の感情に気づくため、今現在ではない事に対して怒ったり、場合によってはフラッシュバックを引き起こします。フラッシュバックについては前回(8/23)に書きました。

発達障害の人は相手の気持ちを感じ取ることや、相手の思っている状況を理解することが苦手です。これは相手のとの会話の内容や、表情、仕草などから相手の気持ちを理解することが難しい場合と、自分の感情がわからないため相手の気持ちに共感することができないということが考えられます。悲しい気持ちを共感しなければならない場面でも、自分の悲しい気持ちがわからずに、状況にそぐわない言葉や仕草をしてしまいトラブルにつながってしまう事もあります。自分の感情や気持ちを感じ取ることができないと、相手や状況の共感を得ることが難しく、場にあった会話や表情などの行動をとることができなくなります。自分の気持ちや感想を聞かれた場合にも、『わからない』『特にない』といった答えになってしまい、会話が続かなくなってしまいます。本人は自分の感情が理解できないことから真面目に、『わからない』『特にない』と答えていても、周囲からはふざけているととられてしまう事もあります。

感情を感じることが難しいため、苦しい時や辛い場面でも無表情や笑顔を浮かべていたり、逆に楽しい場面でも真面目な顔やしかめっ面をしてしまうこともあります。気持ちと表情が一致しないと円滑なコミュニケーションをとるのが難しくなったり、本人の調子が悪いときでも周囲の人が気づいてあげることができなくなる場合もあります。自分の気持ちが自覚できないために、不安や苦しみなどの感情が分からず心身が悲鳴を上げていてもキャッチできないことがあります。本来ならば休息すべき部分でも休むことをしないため、結果として疲労などから体を壊してしまうこともあります。また、体を壊すだけでなく、各種心身症(ストレスなどから体に影響が現れる病気)や、二次障害としてうつ病など精神面の病気につながることもあります。なお、感覚鈍磨(感覚の受け取りが極度に鈍い状態)の特徴を持っていると、体の痛みや疲れ、暑さや寒さなどの感覚を正確に受け取ることができないため、より注意が必要です。

自分の気持ちや感情がわからない子には、周囲の人がその子の気持ちを代弁し、一緒に確認して感情認知の機会を作ります。例えば、怒っている時には「~で怒っているんだね」、楽しい時には「~は楽しいね」など話しかけて、子どもに気持ちや感情を意識できるように促します。大人と一緒にそのときの気持ちを確認することで、徐々に自分の気持ちや感情の存在に気づいていきます。ロールプレイで様々な場面を設定し、「こんな場合にどう思うか?」と、子どもと学習する方法もあります。自分の気持ちや感情を意識して表出し、周囲の人も原因の是非はともかく、感情に気づいてもらえるようになれば、ストレスでのイライラやパニックなどを起こす事はとても少なくなります。