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原始反射

赤ちゃんが産まれてすぐ、突然前触れもなくビクッとすることがあります。この動きは「モロー反射」と呼ばれています。
モロー反射とは、赤ちゃんが大きな音などの急な刺激に対して驚き、手足を大きくびくつかせ、何かに抱きつこうとする反射のことをいいます。オーストリアのエルンスト・モロー医師が発見した新生児特有の「原始反射」の一つといわれています。

赤ちゃんの顔を正面にして寝かせ、頭を支えて少し引き起こし、急に支えていた手を緩めると、赤ちゃんは誰かに抱きつき守ってもらおうと手を突っ張ります。本能的な反応なので、無意識のうちに行っているものです。モロー反射は、赤ちゃんの神経が未発達な生後4ヶ月頃まで見られます。この反応がなくなる頃に、首すわりなど首の動きが可能になるといわれています。

神経の発達過程の一つともいわれており、何度も繰り返しビクッと反応する赤ちゃんもいれば、気づかない程度の反応の赤ちゃんもいます。モロー反射は、赤ちゃんの意志とは関係なく反応するので、寝かしつけて布団に降ろしたときのわずかな刺激や、大人が気にしないような音でも反応してしまいます。それがきっかけで急に目を覚まし、大泣きしてしまうケースが多く、何度も繰り返すことに頭を悩ませる方も少なくありません。

モロー反射は、赤ちゃんが母親から離れないように探している仕草ともいわれ、咄嗟に手を伸ばしてもママが見つからないことで泣いてしまうという説もあります。そんなときは、お腹の中にいた頃のような、体を丸めた姿勢で抱きしめてあげます。落ち着きを取り戻して、再び寝てくれることもあります。

また、頻繁にモロー反射を繰り返し、続けて眠ることができないときは、おくるみを使うのがおすすめです。慣れないときは、少し大きめのバスタオルか、専用のおくるみを使うと良いです。モロー反射には個人差があり、手を伸ばしたまま声を出すなど、親が少しびっくりするほどの反応を見せる赤ちゃんも少なくありません。

モロー反射が激しいと、よく点頭てんかんや低血糖、頭蓋内出血を疑うことがありますが、親の手を掴めば治まったり、おくるみを巻いて落ち着いたりする場合はあまり心配がないといわれています。普段の様子が変わりなければ、様子を見ます。心配な場合は、1ヶ月検診などのときに医師に聞いてみると良いです。

点頭てんかんの場合、足を伸ばして手を上にあげ、体を曲げるという特徴的な症状が出ます。思い当たる反応がある場合や、それ以外で普段と異なる反応があったり、抱っこをしても治まらなかったりする場合は、小児科に一度相談します。
また稀ですが、モロー反射がなさ過ぎる場合は、新生児黄疸のひとつである核黄疸や、まったくない場合は鎖骨骨折をしていることもあるといわれています。

モロー反射をはじめとする原始反射は発達状態のバロメーターです。この点から、原始反射が強く残存している場合、脳機能への問題が考えられます。そしてそれが発達障害の兆候である可能性もあるといわれます。モロー反射が長く続くということは、外からの刺激に毎回反応してしまう、つまり刺激に対して敏感な状態が続くと解釈できます。そのため、以下の発達障害のような傾向が見られることがあります。
・音や光をはじめとする刺激に対する感覚過敏
・ADHDの症状がみられる(多動、不注意、衝動性)
・社会的未熟さ(新しい状況・環境への参加対応が難しい)
必ずしもモロー反射が長く続く=発達障害である、というわけではありません。しかし、モロー反射をはじめとする原始反射が長く続けば続くほど何らかの問題がある可能性が高まります。いざというときのために、日頃から子どもの動作をよく観察したり、場合によっては記録したりすることが大切です。

モロー反射とは0~4ヶ月で見られる原始反射の一種です。大きな刺激を受けた時に身体をびくっとさせ、両手を広げてしがみつくようにする動作は赤ちゃんならではのとても可愛らしい動作です。また、ただかわいい動作であるだけでなく、モロー反射をはじめとした原始反射は子どもの発達状態の一つの重要な指標となります。原始反射の始まりと終わりの時期や動作の特徴などで子どもの発達状態に問題がないか気づくきっかけになることがあります。

またこの原始反射を統合する運動を促すことで発達障害の症状の軽減を図ろうという民間療法もありますが、エビデンスは確立していません。ただ、この考え方は昔からよく似た発想での治療法がいくつもありますので、あながち無視はできません。要は運動によって正しい動きを作っていくことは身体の発達に良いことですし、不器用と言われる子どもたちが楽しみながら運動を学ぶはとてもいいことだとは思います。