すてっぷ・じゃんぷ日記

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強化子を探そう

C君が設定遊びの時に椅子に座らないので、どうしたものかと困っていました。するとC君がうろうろしながら本棚から絵本をとったのです。これは使えるかもと思い立ち、その絵本を渡してもらい、設定遊びが終了したら絵本を渡すという設定をしました。設定と言っても、まだスケジュールが良く理解できていないので、絵本の実物を職員が持ったままゲームを行い、C君が1回ゲームが終わるたびに絵本を渡すという方法をとりました。

するとC君何もなかったかのように椅子に座り自分の順番を待つ様になりました。恐るべし強化子の威力です。100の「座りなさいよ」の言葉かけより、100の身体誘導より1回の強化子提示で、交渉が成立するのです。私たちは視覚支援が大事だと何度も言いますが、合わせて行動の強化子(ご褒美)を鵜の目鷹の目で探すことが支援の第一歩だなと改めて感じています。

「ご褒美で釣っても、ご褒美がなくなれば動かない子になる」という人がいますが、言葉かけや強制力だけでは変わらない子どももいます。意味のわからない言葉かけや、大人の距離が詰まると自分の行動が制限されると誤解し大人を信用しなくなると双方が困ります。ご褒美だろうが何だろうが、自己決定した行動は強力です。強い自発行動が起これば、ご褒美=強化子はやがて賞賛の言葉に代替できるチャンスがあります。このプロセスを私たちは大事にしたいのです。

手伝ってください

O君は通所したての頃は好きなことが中々見つからず,結局は大人の注目を得るために不適切行動をしてしまう子どもでした。インスタントラーメンとサイダーが好きなことがわかったので,ここ1年程「山登りの後ラーメン作りね。」というプログラムを設定していました。O君にとって「大人に見てもらえる。」「好きなラーメン,サイダーが貰える。」ということがわかったので徐々に不適切行動はなくなっていきました。

室内での過ごしは休憩時間が多く,O君にとって「何をしたらいいかわからない!」という時間もありましたが最近はさみを使う活動が好きなことがわかり,牛乳パックを切ったりペーパークラフトを作る活動を取り入れています。

簡単なペーパークラフトなら一人で作れるO君ですが,しきりに「○○さん,手伝ってください。」と援助を要求します。「どうしたの?」と見に行くとまた一人で黙々と作業に取り掛かります。

結局は「先生,見ててね。」ということでした。近くにいると「手伝ってください。」とは要求しません。不適切行動もなくなり,様々な好きなことを見つけているO君ですがやはり最大の強化子は「大人の注目」なのです。

「ずっと見てるわけにはいかんけどなぁ…」と思いつつ得意なことに取り組んで「見ててね。」と要求している方が今までの姿の何倍も良いです。O君のことを褒めながら,少しずつ離れ,それでも「見ているよ。」とゆっくりO君を見守ろうと思います。

ハサミ

U君がスケジュールに書いてもいないのに「ハサミくださ~い」と言って牛乳パックを分解する作業を要求しました。U君のこれまでの自発的な要求と言えば「キッチンラーメンくださ~い」と「サイダー飲みま~す」だけだったので職員は驚いたと言います。

U君は自発的な要求が少なくて、結果、事業所から飛び出して大人の注目を集める不適切行動になってしまうので、「嫌ではない作業」に大人が注目して褒めると言うことを繰り返してきました。その結果注意喚起行動はなくなったのですが、好きなことがなかなか見つからないのは同じでした。

そんな中での「ハサミくださ~い」だったので、ハサミを使う活動が好きなことが分かったのです。お母さんに聞くと小さい時にはハサミでいろんなものを作るのが好きだったそうですが、大きくなると使わなくなったそうです。原因は不明ですが、切り出すレパートリーが尽きて飽きたのかもしれません。

たまたま、他の人が作業しているのを見てハサミ大好きが蘇ってきたようです。U君たちの好きなものを探すのには大変苦労をしています。好きなものがないと、新しいことや苦手なことに取組む際に交渉ができないからです。だんだん上手になっていくということは伝えにくいので、どうしても好きなことと引き換えの交渉が大事だからです。らーめん・サイダー・ハサミと、飽きないうちに次の好きなものを探すために、TTAP(TEACCH Transition Assessment Profile:移行アセスメントプロフィール)を使ってみようかなと考えています。

 

強化子・動機付け

事後評価の会議でM君に靴を靴箱(段ボールBOX)に入れるように取り組んでいるが全くできないと報告がありました。M君は注意が転導しやすく周囲がざわついていたり好きなものが目に着いたりすると気が散ってしまいます。

けれども、郵便物を二階の先生に渡してきてねとお願いすると、移動中に様々な刺激があるのに郵便物を届ける事ができ、「ありがとう、じゃぁ1階のN先生にこれを渡してきて」と再びお願いしても正確に持帰ることができます。これだけの目的行動がとれる人が本当に目の前の靴箱に脱いだ靴を入れる事ができないのかどうか話し合いました。

話し合った結果、何故郵便物は運べるのに自分の靴は目の前の靴箱に入れられないかの推測は二つでした。一つは、部屋に入るときは全員が入ってきて、玄関口がざわつくので気が散りやすいことです。この際、玄関口の子どもたちがいなくなってから、プレイエリアが視界に入らない場所で取組むことにしました。

もう一つは、郵便物が一人で運べるのは、人が好きなM君にとっては二階の先生の場所に行くこと自体が動機になり、先生に会う事が強化子になっているということです。靴をBOXに入れても彼にとっては利得はないので学習しないという推測です。したがって、彼のお気に入り絵本を通所後はすぐに手に取ろうとするで、これを強化子にして、BOXに靴を入れる→絵本を与えるというルーティンで支援すればどうかという話をしました。

障害の重い人にはマンツーマンで介助をすることが多いので、できそうなことでも介助者がやってしまいがつです。実際にできるように支援しようとすれば、動機や強化子を把握して自発行動を引き出す必要があります。支援学校の子ども中心につけられる「個別サポート(Ⅰ)」とは介助行動の加算ではないのですが、日常生活動作が全介助を要する人が対象とあるので、障害を固定化して見てしまいがちです。

 

先輩はつらいよ

外遊びの科学的根拠12/02」で掲載したように、B君C君は外遊びに行こうかと誘うと、「え~」となるのでビタミンDを強化子にして外遊びに誘い出しています。しかし、そんなことをしなくても「高学年のプライド」とという素晴らしい強化子を発見しました。

低学年のD君が「鬼ごっこがしたい」と言うと二人とも、「ええよー」と頷くので、「あんたら いつもとちゃうやん」とスタッフは思っていました。しっかり走り回って全員つかまって帰りましょうかという雰囲気の中、スタッフが言ってみました「もう一回しようか?」BC君そろって「却下!」と言います。「Dちゃんどうする?」と聞くと、「もう一回やりたい!」BC君揃って「しょうがないなー もう1回やろか」ということになりました。

延長戦も終了し、「さぁ 帰ろ帰ろ」と言うBC君の背中にD君が「もう一回したい」と声を掛けました。 さすがに「え~~もう帰ろうや~」と絶叫します。スタッフがD君に「D君どうする?」と聞くと「もう一回したい!」「このようにD君はリクエストしていますが…」とスタッフが言うと、「ほんな やろかぁ」と3回目も肩で息しながら付き合う高学年二人でした。先輩はつらいよ。

おやつ

「昨日は山歩きをして、たくさん歩きました」「1年生もたくさん歩いてくれました」とスタッフから報告がありました。「おやつは食べた?」「いつも通りのおやつです」そこはちょっとスペシャルなおやつにしたほうがいいよと話し合いました。

放デイの日課はとかくマンネリ化しやすいものです。同じ道、同じおやつでは必ず飽きが来ます。飽きて当たり前です。ちょっと頑張ったかなぁと思うときは、その子が好きそうな味のおやつや飲み物を持っていくのがコツです。おいしかったという満足感と活動体験が心理的に連合するように準備するとわりと飽きがこないものです。

おやつだって、うまく使えば大事な支援の助っ人になってくれます。決まった時間に決まったおやつを出すのがおやつの時間と考えていては、ちょっともったいないという話でした。おやつの出し方にもメリハリをつけて活動の中に組み込みます。

 

西山歩き

V君は西山歩きではいつもだらだら歩きなのに今日はガンガン歩いていたというので理由を聞くと、目的地での飲み物がサイダーなんだそうです。なるほどV君はサイダーが大好きです。家に送っていく時もお母さんを見るなり「三ツ矢サイダー?キリンレモン?」と催促しています。

以前、欲しいものがあることはいいことだと書きましたが、好きな飲み物や食べ物があることもとてもいいことです。好きなもののために頑張って、「よく頑張ったね」と褒められることの心地よさは、自分にも相手にも良い感情を育てます。たかが、サイダー。されど、サイダーです。

注意喚起も強化子に

C君がゲラゲラ笑ったり大きな声を出して自立課題をしているといいます。「今日は、来た時からテンションが高かった(興奮していた)」「だんだん収まってきたが利用者が増えてくるとまた声が大きくなった」「テレビのコードなども抜くので音がうるさいのではないか」スタッフの言いたいことは2つです。「調子が悪いから声が大きい。音がうるさいから不適切な行動が出る。」ということです。

この論は対応するスタッフには問題はないというものです。子どもの不適切行動の大半は親や大人に向けられているものです。子どもの不適切行動が起こったら、まず大人の対応を振り返る習慣が必要です。誰にだって快・不調の波はありますし、ざわざわしてるところはいらいらするものです。しかし、だからっと言って大声をあげたりコンセントを抜いたりはしません。コミュニケーション能力があるからです。

でも、不適切な行動を繰り返している子どもには、こうした注意喚起行動が大人を引き付けるのに手っ取り早い方法となります。こうした行動が予測されるなら、一緒に座って作業を教える場面を作って「大人の適切な注目」を得る場面を作ったほうが安定してくるものです。「やることがないから」注意喚起するという理由で自立課題を与えたりするのは逆効果です。注目を得たいのですからスタッフの適切な注目を強化子にする課題を考えるべきなのです。