すてっぷ・じゃんぷ日記

タグ:フェイズ3A

PECSを続けると適応行動が増えます

P君が近頃適応行動が増加していることが報告されました。P君は言葉のない子どもです。以前はPECSに取り組んでいたのですが、フェイズ2までしかできないと言う理由で、弁別に進まず、P君の要求はだいたいわかるからという事で自然消滅的にPECSトレーニングは行われなくなったのです。

これはスタッフだけの責任ではなく、学校も家も取り組まないのに放デイだけの時間で何とかなりそうにスタッフには思えないと言う問題があったからです。それでも「コミュニケーションは権利です」を掲げるわが事業所で取り組まない理由はないし、弁別のフェイズ3aもフェイズ1と2の蓄積の上に成り立つのですからあきらめないでがんばろうということを1か月前に確認しました。

そこで、先に書いたP君の適応行動が増えているという報告でした。これまでP君におもちゃをかたずけてから帰ろうと指示すると、大声を上げて反抗していたのが、最近はさっさとおもちゃをかたずけて帰るのを待っていると言うのです。

PECSは、自発のコミュニケーション支援です。自分から相手に伝えると言うアクティブな行動です。自分がはたらきかけて環境が変容していくというのは人間にとって重要な活動です。適切な方法で要求が実現することを知ると、子どもは不適切な方法を行う必要がありません。まだまだフェイズ2のP君にどれだけのことがわかっているのか、私たちには知る由もありませんがPECSトレーニングが始まって確実に適応行動が増えていることはスタッフみんなが認めるところです。

 

4ステップエラー修正

X君は、絵カードで欲しいものを離れている人に要求できるのですが、弁別ができないために選ぶことができません。例えば、お茶よりカルピスジュースが欲しい、ボールより音楽が鳴る絵本が欲しいなどです。具体物では選べるはずですが(あまり取り組んでいません)カードでは選べそうにないとスタッフがあきらめていたからです。理由は認知レベルが弁別まで達していないだろうということです。本来PECSは「アセスメント(検査)フリー」の支援方法です。健常者を標準にした発達検査器具には反応しなかったかもしれないけれど、それがPECSの成功不成功を判断するものではないという考え方です。

X君は最近拒否が強くなってきたのはいいけれど、拒否だけではその先がありません。何が欲しいのか選ぶことができれば彼の姿はまた変わってくるはずです。具体物でできるならカードでもできるかもしれません。そこでフェイズ3Aに取り組んでみてはどうかと話し合っています。フェイズ3Aは、エラー修正が重要です。子どもが間違えたら教えることは良くありますが、修正方法が人によって違うと子どもは混乱してわかりません。修正方法を統一することでX君のフェイズ3Aのエラーが修正できないか取り組んでいこうと話し合っています。

【フェイズⅢA】
・このフェイズからコミュニケーションパートナーは一人で良い。
・要求カードを2枚に増やす段階。しかし2枚のうち1枚は必要な物、1枚は本人にとってどうでもよいもの(ダミー)にする。ダミーは本当に興味のないものを使うが、大嫌いなものを使ってはいけない。コミュニケーションカードが嫌いなってしまうから。
・欲しいものvs欲しくないもので始めて、欲しいアイテムを手に入れることと、欲しくないアイテムを避けること(分化強化)を覚える。

★ダミーのカードを渡してきたら
・人的強化子は与えずに実物を渡す。ダミーで遊んでしまったら、強化子になった可能性があるので次回からはダミーを変える。また、強化子自体も飽きてしまっている可能性も考えられるため変える。
・正しい(期待する)絵カードをブックから外せた瞬間に「そうそう!」「すごい!」など人的強化子を与える。
★ダミーを拒否したら
・4ステップエラー修正。スイッチの内容は毎回変えること。
・2~3回試行して失敗を繰り返すなら、フェイズⅡへ戻り、時間を経過してから再度スタートする。また、代替方略(絵カードの大きさを変える、カード同士を話す、空白のカードに少しずつダミーを色を加えていく、ダミーカードを小さくし、少しずつ大きさを一緒にするなど)を用いる。