すてっぷ・じゃんぷ日記

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読みの二重ルートモデル

先日の宇野彰先生の講演の中で「読みの二重ルートモデル」の話が出ました。筆者自身、それについてよく理解していない部分がありましたが、Y先生から「読み書きの苦手を克服する子どもたち(発行 文理閣 著 窪島務 滋賀大学キッズカレッジ)」を貸していただき、その中に詳しく記してあったためここに紹介します。あくまで2005年の著書であり、現在とはまた考え方が変わっている部分もあると思いますが大変参考になります。

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「読み」の現在の主要理論

大脳が文字を処理するメカニズムには、大きく視覚的処理から単語意味に向かうルート(語彙ルート)と文字と音韻との対応関係の規則によって処理するルート(音韻ルート)の2つがあります。通常は2つのルートを同時にバランスよく使用しています。
しかし、失語症や学習障害では語彙ルートに至る経路に障害があると音韻ルートに依存する処理が中心となり、音読はできるが意味がわからない、不規則文字が読めないことが生じます(語彙性読み書き障害)。音韻ルートが障害されると語彙ルートに依存する処理が行われ、意味はおおむね理解されても読み誤りが多くなります(音韻性読み書き障害)。意味の誤読が生じることもあります。背景に記憶関連の際害や処理の自動化の障書が想定されています。


トライアングルモデル(コンピュータモデル)
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トライアングルモデルは、コンピュータによる読み処理の計算モデルであり、その特徴からコネクショニストモデル、並列分散モデルともよばれています。このモデルは、二重ルートモデルのように系列的に機能を極在化したモジュールを仮定せず、文字、意味、音額の3つのユニットが並列的な関係を構成します。中間層で情報の処理が行われます。漢字の読みでも意味だけでなく、文字の読み知識が関与していることを証明しました。二重ルートモデルが、獲得性読み障書の病理モデルであるとすれば、トライアングルモデルは正常な読み学習モデルを基本とする構造から、その一部の障害をコンピュータでシミュレーションします。発達性読み書き障害のモデルとしては有効かもしれませんが、まだ多くの検討課題があるようです。とりわけ、発達主体の要因、書くことなどは要因として想定されていません。
二重ルートモデルはアナログ的モデルとしてまだ有効性を保っています。二重ルートモデルは、成人の脳障書がモデルとなり、病理的視点に立脚しています。トライアングルモデルは、正常成人の読み能力をモデルにしています。しかし、いずれにしても、「発達」の視点が弱く、「発達的ディスレクシア」という場合でも、成人モデルを子どもに当てはめただけという場合がしばしば見られます。