すてっぷ・じゃんぷ日記

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5月14日(日)宇野先生講演 発達性ディスレクシアの評価と支援 その2

5月14日(日)、同法人が後援をしている「京都発達性ディスレクシア学習会」が主催する講演会に運営スタッフとして参加をしてきました。前回と同様、発達性ディスレクシア研究会の宇野 彰先生をお呼びし、「発達性ディスレクシアの評価と支援 その2」を講演していただきました。

その中で発達性ディスレクシアの子ども達の漢字指導にについての面白い指導方法があったのでここで紹介させていただきます。

例えば「湖」という漢字を教える時に、漢字を「さんずい(カタカナのシ)」「古」「月」に分け、それを使って文章にします。

例えば、「湖で シずかにすると 古い 月がみえる」

こういった文章で視覚と聴覚のどちらからの経路からも学べるようにしています。ただ講演の中で宇野先生からのデータでもありましたが視覚よりも聴覚の方が子ども達が覚えたという結果が多く、やはり聴覚法が効果があるなぁ、となったそうです。

さて、どんな文章でも子ども達が覚えるわけではありません。子ども達が覚えやすい文章と言うのがあります。それはどんな文でしょうか?次回、じゃんぷブログで紹介しようと思います。

次回は「背」という漢字を使って説明しようと思います。この方法で「背」を教える時にみなさんだったらどんな文章にしますか?一度考えてみてください。

 

学習障害のサポート

引用元記事はこちら

~以下一部抜粋~

学習障害のサポート
 ゆうきさん本人も、学習障害があって支援が必要だ。3年生の段階でカタカナが書けず、日常で使う簡単な単語もうろ覚えだった。机の前に、座ることはできる。一回も宿題を提出したことがないのに、学校では「いい子」という評価だった。同じクラスに、かなり暴力的な子がいて、先生は、その子にかかりきりだったそうだ。

 鈴木さんが学校に相談しても、「困っていないので、支援は必要ない」と言われた。行政の施設は、学校経由でないと利用できない。鈴木さんは、独自に福祉施設に依頼し、保護者の了解を得て検査を受け、学校に「こういう傾向がある」と知らせた。みんなと同じ量の宿題はできないので、減らしてもらうためだ。

 ついに学校は動き、学習障害の専門員を頼み、ゆうきさんの授業の様子を観察した。それから宿題を減らしてもらえたものの、一時だけでまた通常の量に戻った。

 居場所では、スタッフがマンツーマンでゆうきさんに付き、一緒に学校の宿題に取り組む。ゆうきさん本人も変わり始め、「やらなきゃいけない」という気持ちになった。2時間かかっても、宿題をやり遂げようとする、その気持ちを優先しているという。

 鈴木さんは、保護者と学校に「支援学級に入るのも、ゆうきさんにとっていいのではないか」と伝えた。本人は「今の友達との関係がいいから、入りたくない」と答えた。子ども自身が決めることが一番重要だが、それまでに周りの大人がその子のためにどんな話し合いをして、どんな選択肢を用意できたかという過程も大切にしている。

 居場所が利用できるのは、小学6年生まで。これから、居場所を卒業後の「アフターケア」事業が、行政の予算に盛り込まれる予定だ。ゆうきさんが中学校に行っても、ときどきは居場所に来たいと話している。鈴木さんは、ゆうきさんが進む中学校と、入学前に個別に相談する約束も取り付けている。

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本文中にあるように、実は学習に困っていても本人が真面目で授業にも熱心に取り組んでいるが故に見逃されてしまうケースは少なくありません。さすがに「困っていないので支援は必要ない」とまではいかないでしょうが、なぜかテストの点数が取れず、担任もどのようにしたらよいかわからないままになっている、というのは今でもあるのではないでしょうか。なんとなく「学習に困難があるのだろうな」とは感じつつも具体的な支援にまで手が回らず、放課後に少し教える時間を作ったりモジュールの時間を使ってわからないところを教える、といったことで精いっぱいだと思います。

最近は学校でもコグトレをクラス全体で取り組んだり等、医療のノウハウが学校現場でも使わられることが増えてきました。しかし担任、もしくは学年団で出来る支援は限られているのかもしれません。通級は週に一回です。学習障害の専門知識を持った学習支援員を設置したり、SSWとの密な連携などがまだまだ必要なのかもしれません。「どこにそんな予算が!」と言われそうですが。

算数障害スクリーニング検査

今年の1月に発売された『算数障害スクリーニング検査 ~適切な学習指導は正確なアセスメントから~』(熊谷恵子・山本ゆう 著)を購入し、読みました。

本書は算数障害の背景、具体的事例、そして算数障害のスクリーニング検査用紙がついています。算数の困難がある子ども達の中には知的能力は低くないものの、認知能力のアンバランスがあり、学習障害の中の算数障害である場合があります。これらの認知能力のアンバランスさについてはWISC-VやK-ABCⅡ等の知能検査の中で明らかになることが多いですが、本書の検査でも同様に知ることが出来ると感じています。

本書の検査では子どもの算数に関する認知のアンバランスの傾向をおおまかに捉えることが出来ます。数処理が苦手なのか、数概念なのか、計算なのか…等々。それぞれの苦手への具体的な支援のポイントも書いてありました。

家庭での子どもの苦手の把握だけでなく、学校の教室で取り組み、グレーゾーンだと思われる子どもの苦手を教員が捉えるために使用してもよいかもしれないですね。

読みの支援

じゃんぷに通う子どもの中に「音読の宿題が嫌だ!」と話す子どもがいます。そういった子ども達の文章の読みを聞いていると、様々な困難が見えてきます。読み飛ばしや勝手読み(文章に書いていることと違うことを言ってしまう)、逐次読み(文字を一つ一つ拾って読む。「こ…ん…に…ち…は…?」と文章の文字一つ一つを拾って読む。「きゃ」「きゅ」等の拗音も文字を一つずつ拾うので「き」「や」と読む。)と、子どもによってそれぞれですが、どの子も読みの流暢性に困難を持っています。文章を読むことがその子にとって大きなエネルギーを使ってしまったり、文字の形と音が一致していない等、原因は様々です。

さて、根本的な支援としては「聴覚法」や「T式ひらがな音読支援」といった方法があります。それぞれの子どもによって合う合わないがありますので、じゃんぷの中でも聴覚法に取り組んでいる子もいればT式ひらがなに取り組んでいる子もいます。

ただ何よりも子どもに成功体験を積むことが大切です。普段の学校生活の中でこういった子ども達が「出来た!」と感じることが必要なのです。トレーニング以外で普段の学習と結びつけるのであれば、読んでいる1行だけが見える「リーディングルーラー」を使う、文節ごとに線を引き、まとまりが見えやすくする、教材そのものに興味がないのであればその子の興味のある題材の文章を使う…等々

普段の生活での「読めた!」そして聴覚法やT式といったトレーニング、どちらの経験も必要かな、と筆者は感じています。

アプリを使って漢字を覚えよう

じゃんぷで学習している子どもの中に,「常用漢字筆順辞典」というアプリを使って漢字の学習をしている子どもがいます。このアプリは漢字を様々な方法で検索でき,その漢字の読み方や書き順などを学ぶことが出来ます。

以前「言葉の手がかりを使って漢字を覚えよう! 投稿日時 : 2022/11/14」で紹介した子どもも今,このアプリを使って学習を進めています。個別学習の中で一年間にならった漢字のまとめ小テストをし,書けなかった,もしくは間違えた問題をこのアプリで音声検索をして正しい漢字を覚えています。

初めの方,漢字のへんとつくりが逆になっていたり,似た漢字を書いたりと「おしい!」という間違いをしていましたが,正しい漢字の書き順を順番に丁寧に取り組んでいます。じゃんぷに来て取り組む漢字の小テストも正答率が8割を超えることがほとんどとなり,成果が見えてきました。

上に挙げた子どもは継次処理が得意な子どもなので,「順番に」おちうやり方がぴったり合いました。反対に同時処理が得意な子どもには音声検索で漢字を検索させ,正しい漢字を見た上で漢字の特徴を一緒に探します。その上で漢字の作りを言葉で覚えます。イメージは「オジンオズボーン」という芸人のネタに近いような形です。

このように子どもの得意に合わせた教え方が出来るアプリが最近はよく出てきています。まさに「かがくのちからってすげー!」

活躍できる場

(クイズを作って発表しよう 投稿日時 : 11/21)の続きです。

最近はあまりのあるわり算の宿題にも挑戦しています。ご褒美だった「どうぶつずかんカード」も「もういいかな」と言っており,自立の時間になると「行くわ」と言って宿題やじゃんぷでの学習に向かっています。

さて,じゃんぷで作った「どうぶつクイズ」を「印刷してください」とお願いすることがありました。「いいけど,どうした?」と聞くと「学校で生き物係やからクラスの出し物でこのクイズ出したいねん」と話してくれました。

一緒にクイズを作っている時,絶滅危惧種のアレコレを調べながら「そうなんや!すげぇ!」「これは知ってたわ,先生知らんやろ~(笑)」と生き生きとした表情で取り組んでいます。そういった自分の得意を活かせる場所が学校にも出来た事が本当によかったと思います。

「自分が活躍できる場」というのは子どもの自己肯定感にとってとても大切なものです。毎週のように「今日はクイズ作りできる!?」と明るい表情で聞いてくる姿が出てきて嬉しく思います。

 

下は一緒に作ったクイズです。みなさんも解いてみてください。

「出来ない」の悪循環

「僕は〇〇が苦手で出来ないんや~」という子どもの声をよく聞きます。しかし案外それは本人の思い込みだった,ということも少なくありません。

例えば先日「国語は苦手なんや…文章読めんし…」と話していた子どもが国語のテストで高得点を取ってきました。その子は本をよく読んでおり,興味のあることに関しての知識は大人を優に超える程の知識を持っています。それだけ本を読んで内容を理解することができるので漢字を書くことは難しいにしても読解問題は解くことが出来ます。実際じゃんぷで取り組んだ時も「嫌だ~苦手や~!」と言っていた割に始めると「…あれ,出来るわ」と本人も驚いた様子でした。

さて,「出来ない」と思い込むということは周りから「出来ない」と思われていた,ということです。「ゴーレム効果」というものがあります。それは「ある人物に対して周囲の期待が低い場合、その人物は周囲の期待通りにパフォーマンスが低下してしまう」という心理学効果です。例えば仕事の中で「〇〇さんはどうせできないから…」という空気を職場で作ってしまうとその通りにパフォーマンスが下がってしまい,どんどん仕事が出来なくなる,ということです。反対に「ピグマリオン効果」というものがありますが,これは学校現場でもよく使われている言葉なので知っている方も多いと思います。

子どもは大人のことを本当によく見ています。子どもがこういった悪循環に陥らないよう,子どものことを適切に理解,評価して支援をしなければならない,と改めて感じています。

自立学習の時間

じゃんぷでは子ども達が自分で学習をする「自立学習」の時間を作っています。子ども達が自分で学習を選び,順番を決め,自分がやりやすい学習方法を確立していく力をつけるために取り組んでいます。

集中するため,時間を意識するための道具を使ったり,解きやすい方法を個別の学習の時間の中で教え,自立学習の時にそれを使って自分で学習を進めるためです。

最初はこちらで取り組む内容を決め,子どもと相談しながら調整をしています。また,1人では難しい宿題等もあるため,そういうときは「先生に質問しても良い」というルールを設けています。しかし「わからないことがあったら質問したらいいよ~」と伝えていましたが中々質問が出来なかったりどうしたらいいのかわからないまま終わってしまうことが多々ありました。

そこで子どもそれぞれに「ヒントカード」を作り,「〇〇〇を貸してください。」「教えてください」といった言葉を書き,それぞれの子どもの前に張り出しました。そして使えた言葉には花丸をしたり,ヒントカードにはない言葉を使った時はそれを書き,「今の言い方もいいね!」と評価をしています。

するとどんどん子ども達が「教えてください」「〇〇を貸してください」と自分に必要な物を借りたりわからないところを聞いたりするようになりました。

具体的にどのような言葉を使えばいいのかわからなかったようです。子ども達の吸収力はさすがです。時間の意識が難しかった子が「タイムタイマー貸してください」感覚がないと集中が続かない子が「足のマットを貸してください」わからない問題を放置してしまっていた子が「この問題を教えてください」と要求するようになりました。

分数ってどういうこと~?

じゃんぷに通う3年生の多くの子どもが分数の学習に入りました。「分数ってどういうこと~?」と悩んでいる子どもも中にはいます。

分数の概念を教える時,下の画像のように丸いケーキをイメージしてそれを分ける場合や箱の中を分ける等,様々な具体例を出すことがあります。

初めに子どもがイメージをしやすいよう,こういった具体例を出します。ただイメージをすることが苦手な子ども達にとっては全く形が違うために同じ1/8でも「どこが同じなの!?」と混乱をすることがあります。1/8にはいろいろな1/8がありますが,今後習う小数との対応関係の学習,また継次処理が得意な子どもにとっては下のような細長いものの1/8が分かりやすいことがあります。

分数の概念がわからず,「数の小さい方から並べなさい」という問題で「1/2,1/3,1/4,1/5」と分母の数が小さい順に並べることもよくあります。こういった具体物の操作や視覚的な支援があるとよりわかりやすく分数の概念を教えることが出来ますね。

クイズを作って発表しよう

「どうぶつずかんを読もう!: 10/13」で紹介した子どもと,休憩時間にみんなで遊ぶ取り組みについて一緒に考えていました。「〇〇君が今まで集めた動物図鑑でクイズ作って,クイズ大会をしてみたら?」と話すと.「いいよ!やろうやろう!」と言ってくれました。

読み書きが非常に困難な子なのでみんなの前で文章を読む,ということは嫌がるかなと思ったのですが…とても乗り気になってくれました。

今まで集めた動物図鑑カードを持ってきて,個別学習の中でクイズ作りをしました。「2年生もいるから選択式にしたほうがいいかな…」「難しいから〇問正解した人にはボーナスのおやつプレゼントとかしたいな」「ラッコの数とか俺もびっくりしたからみんなも驚くんじゃないかな」…たくさんのアイデアを出してくれました。

動物の名前書いてくれないかな~と思い,問題のテーマとなる動物の名前を書く欄を作ったのですが,「ラッコ」を書いて力尽きたようで「後は先生が書いて…」となったのですが…それでも苦手な文章読みを頑張って何回も練習し,みんなの前で発表してくれました。

下の画像はその子と一緒に作ったクイズの原稿です。文章は文節ごとに空白を作り,該当学年まで習った漢字を使いつつも読み仮名をつけています。単語のまとまりを意識して読む練習にも繋げています。

文章問題のポイント

算数の文章問題で悩む子どもは非常に多いです。

文を読んで内容を想像し,頭の中で数の操作をしながら計算式を立てる…という複雑な処理をしています。文字を読むことが苦手な子,計算が苦手な子や書くことが苦手な子にとって一つの事に力を使うことに加えてたくさんの情報を頭の中で整理していかなければなりません。

考えることが難しくなり,授業中「お客さん」状態になってしまうことも少なくありません。授業者としてはそうならないよう配慮しているつもりが後でノートを見てみたら全然考えさせることが出来ていなかった,ということもあります。(筆者もそんな教員でした。反省です…)

じゃんぷでは子どもが学校の授業の中で「お客さん」にならないように学習支援もしています。3年生の「何倍でしょう」という単元はほとんどが文章問題なので「この単元嫌や~」となる子どもが多かったです。

ある子どもは計算式の想像が難しいですが聴覚記憶が良く,「〇〇の時は△△!」とパターンで覚えることが得意な子どもです。こういった子どもには下のような板書をし,文章を一緒に読んで「何倍でしょうがあったから?」「わり算!」「2倍です、と書いているから?」「かけ算!」と文章のパターンを教えました。すると想像がしやすくなったのか「何倍でしょう」の文章問題は解けるようになっています。基本的にテープ図等,視覚的な支援が多いですが子どもの特徴によって支援内容を考えることも大切です。

(板書が撮れておらず教材研究中の汚いメモしか残っていませんでした。ご了承ください。)

子どもが見通しを持ちやすい教材を

先日ある子どもが下の画像のようなプリントを持ってきました。

 

よく見るようなプリントです。ただその子どもは学習に対してかなり強い苦手意識があり,また読み書き,計算も相当にしんどい気持ちを持っています。

わり算を一問解くだけでしんどくなってしまう子どもが50問あるプリント(一面で50問なので裏表合わせて100問ですね。)を見たら「終わらせたい!」という気持ちより「しんどい、やりたくない!」という気持ちが勝ってしまうようです。さらに書くことにも困難があるため小さいスペースに計算をして書く,ということがどれだけしんどいことか,想像は容易いです。

しかし「宿題はやらねばならぬ」と思っているようです。なので下のように10問ずつのプリントに分けました。

 

一枚のプリントに見える情報量を少なくしています。また,「全部一気にやる必要はないから,今日は〇枚進めようね」と本人の負担にならない程度に取り組む枚数を決めて学習に臨んでいます。「これなら出来るわ!」と自分から学習に切り替える姿も見られてきています。数が膨大で終わる見通しが持てなかったのが,「この方法なら出来る」と見通しを持てたようですね。中学3年生の国語「握手(井上ひさし)」に登場するルロイ修道士ではありませんが,「困難は分割せよ」と声をかけたいものです。

言葉の手がかりを使って漢字を覚えよう!

じゃんぷに通っている子どもの中に,「漢字が中々覚えられない」と感じている子どもがいます。その子のテストを見てみると白紙回答の問題は一つもありませんでした。

へんとつくりが逆になっていたり,形の似た別の漢字を書いていたり等,何となく形は覚えているようです。なので「読めるけれども書けない」といった状態になっているのです。

こういう場合,「言葉の手がかり」を使って順番に漢字の形を覚える方法が合っているかと思われます。下の画像のようなプリントを用意します。プリントに書いている通りに「ななめ、じゅう」「ななめ、よこ、たて、よこ」と聴覚記憶を頼りに漢字を覚えていきます。

これは小池敏英先生,雲井未歓先生が出している「遊び活用型 読み書き支援プログラム(2013 図書文化)」の本に詳しく載っています。興味のある方は是非ご一読ください。

11月6日(日)発達性ディスレクシアの評価と支援

先日,JR長岡京駅近くのバンビオ1番館にて「発達性ディスレクシアの評価と支援」の講演会を行いました。

同法人が後援をしている「京都発達性ディスレクシア学習会」が運営するものです。

本年 1 月に京都発達性ディスレクシア学習会の設立総会を行いました。総会では我が国の読み書き障害研究の第一人者の宇野先生に記念講演をしていただき,今度は評価から具体的支援について実践現場での対応を再度講義をしてもらえるよう宇野先生にお願いをしました。宇野先生からも「京都で皆さんに直接話をしたい」とのことで、今回の講演会の開催となりました。今回は会場とリモートのハイブリッド型とし,会場参加24名リモート参加31名、合計55名の参加でした。

さて,本公演では「指導」と「支援」を以下のように位置づけた上で宇野先生にAVLTと聴覚法についてのお話をして頂きました。

●発達性ディスレクシアにおいては、読み書きをできるようにするのが指導

●読み書きが困難な状態ではあるものの、サポートを受けて読み書きの困難さが不利にならないように配慮する(漢字へのルビ振り、音声化、板書された文字列を無理に写さなくてよい、試験時間の延長、などなど)のが支援

読み書き障害のある子どもが成功体験を積み重ねながらどのように学習支援をしていくか,を教えて頂きました。

参加して頂いた方々にはすてっぷ,じゃんぷの職員以外に乙訓地域の通級指導教室の教員や小,中学校の教員,またその知り合い等々で京都以外の教員の方もリモートで参加していました。

この乙訓地域を中心として発達性ディスレクシアに関心を抱く様々な職種,見解を持つ方々と研究交流の輪が広がればいいなと感じています。

以下参加して頂いた方々の感想の一部です。

〇お話いただきありがとうございました。通級に来ている子の指導で困っていたことに光が見えました。拗音、促音の指導を今日からやってみようと思います。(小学校通級指導教員)

〇この度はありがとうございました。聴覚法実施の方法、それに向けてのアセスメント、実施後の指導の流れ(どこまで到達したら次の段階に進むか)等、具体的に教えていただき、大変勉強になりました。(小学校教員)

〇102モーラの再評価のこと。これは大変だなと思って指導をしていたけれど、練習する前と後で比較しないと効果がわからないって、当たり前だけれど、そこまで気に留めていなかったなと反省。
聴覚法の指導の必須条件と成功体験を積ませることが大切ということ。
最後に話された学会との距離感、言葉を選んでおられましたが、LD学会のシンポジウムで感じていたことだったので、その通りだなと思いました。(小学校通級指導教員)

T先生とY先生のお茶の間話~国語編~

筆者とY先生で教材研究をする中で「授業のユニバーサルデザイン」について話し合っています。

「じゃんぷに通う子ども達に対して限られた時間の中でどのようにしたら学習の要点を掴ませることが出来るのか。」ということを話している中でこれから3年生の子ども達が学習するであろう「モチモチの木」を中心に教材研究をしています。

国語の教材を読む時,物語文であれば「中心人物」説明文であればそれぞれの段落ごとの「中心文」を子ども達に考えさせます。

文字を読み,その内容を想像することが苦手な子ども達にとって,学校の一斉授業では内容が今一つ理解できていないまま授業が進むことがあります。じゃんぷではそうならないよう,上に示したような「要点」を子ども達に示し,それが理解できた状態で学校の学習に臨めるように支援をしています。

ただ学年が上になるにつれて学習内容はどんどん抽象化されていき,複雑になっていきます。「モチモチの木」でいえば中心人物の「豆太」は臆病な子どもで,ある一つの場面で勇気ある行動をしますが,最後は「豆太」の臆病な行動の一文で締めくくられています。

この単元では

(1)言葉を手掛かりに、場面の様子や豆太の心の変容を想像豊かに読み取ることができる。
(2)叙述に基づいたり自分の経験と照らし合わせたりしながら感想を述べることができる。

簡単に言うと「豆太の気持ちの変化を想像する」「豆太の性格は?」といったことを考え,子ども同士で考えを伝え合ったりします。「豆太は臆病なままなのか?」という問いで授業をすることも多い本単元です。これについては桂 聖先生の「Whici型課題」の授業モデルがとても面白そうだったので,一番下の画像でそれだけ紹介しておきます。

じゃんぷでは「豆太のしたかったこと」「豆太がしたこと」を子ども達に示し,授業に臨ませよう,ということになりました。

Y先生と話している中で子ども達が授業の中で所謂「お客さん」にならないよう支援をしたいね,と話をしていますが中々結論が出ません。「授業のユニバーサルデザイン」等,私たちも学ぶべきことがまだまだあると感じる日々です。

あまりのあるわり算

先日じゃんぷに通っている小3の子どもの宿題で以下のような問題が出ていました。

その子は最初答えを「8きゃく」と答えていました。「あまりのあるわり算」の単元では文章問題の答え方が2パターンあります。最初は下の画像のように「〇個できて△あまる」といった答え方と初め紹介したような「〇個必要」といったものです。

文章を読むことが苦手な子どもにとって文章の意味の違いを理解し,答え方を変えることはすぐに出来るものではありません。その時は問題を2つのパターンに分けました。

1.「〇個できて△あまる」と答える問題だよ!

2.「答えに+1する」問題だよ!

このように子どもがわかりやすいように整理し,宿題に取り組みました。本来は「いくつ必要なのか」を読み取り,問題の意味を違うことを考えさせることが目的なのですが,読み書き障害のある子どもにとってはそこでつまづいてしまい,苦手感を持つきっかけになってしまうかもしれません。まず本人がわかりやすいように問題を取り組めるよう支援し,その後ゆっくり問題の意図を理解できるように今回は支援をしました。

物語文の読み支援

じゃんぷの個別指導の時間,国語の教科書の物語文の読み支援に取り組んでいます。

場面ごとのカードと,挿絵のカードに分け,文にあった挿絵をマッチングさせたり,その後に物語の順に並べる,といったことに取り組んでいます。

物語文を正確に読み取るには場面を読み取ることが大切です。場面とは

・時間の変化

・場所の変化

・人物の変化

上記の3つから見分けることが出来ます。そういった言葉に線を引いたり,パソコンで文字を太くしたり等,注目がしやすいように読みます。読むことが苦手な子もいるので場合によっては大人が読むこともあります。

物語文は話の流れを正確に読み取ることが必要です。子ども達が学校で「この話分かるよ!」と思いながら学習できるように支援をすることも大切にしています。もちろんすべての子どもに合う…というわけではありませんが,読み支援の一環として紹介をします。

漢字の組み立て

じゃんぷでは漢字の読み書き支援として,「遊び活用型読み書き支援プログラム」というものを使っています。

主に「漢字の組み立て」を使っています。学校では漢字の形から偏と旁(つくり),書き順等覚えることがたくさんあります。学年が上がるにつれて覚える漢字の量が増え,形も複雑になっていきます。

「漢字が書ける」ということは部分的に分けていくと,

 

・「形」がわかる。

・「読み方」がわかる。

・漢字の「意味」がわかる。

 

といったことに分けることができます。更に細かくすると書き順等も出てきます。つまり,様々な脳の機能を使って漢字を覚え,書くことが出来るようになります。

読み書きが苦手な子どもたちにとってそういったことに脳のエネルギーを多く使います。そこにドリルでの反復練習等,さらに力を使うことが出てくると脳がヘトヘトになってしまいます。

じゃんぷで使っているソフトでは,漢字を偏と旁(つくり)を中心に3~4個のパーツに分け,書き順に沿って組み立てていくものです。

これを使って大まかな書き順を知り,漢字と読みの一致の練習をしています。

これを使って「この漢字はもうわかるで!」「この漢字を書けるようになったで!」と話してくれる子どももいます。じゃんぷではスモールステップを踏んで,少しずつ子どもたちの学習支援を進めています。